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BIM積算とは?従来積算との違いと3つの導入メリット
2026.10.09
BIM積算は、建物の3Dモデルに登録された部材の情報を使い、数量の拾い出しや費用の計算を効率化する方法です。
ただし、BIMソフトを導入するだけで、全ての積算作業が自動化されるわけではありません。正しく活用するには、入力する情報のルールや業務の進め方を整える必要があります。
この記事では、BIM積算の仕組みやメリット、従来の積算との違い、活用できるソフト、導入時の注意点を分かりやすく解説します。
最後まで読むことで、BIM積算でできること・できないことを理解し、自社に導入すべきか判断できるようになるでしょう。
BIM積算とは|工事に必要な数量や費用を算出すること
BIM積算とは、3次元のBIMモデルに含まれる設計情報を活用して、建設工事に必要な数量や費用を効率的に算出するプロセスを指します。
従来は、設計図や仕様書から必要な工事量を手作業で拾い出し、工事費用を見積るという時間集約的な業務でしたが、BIM積算では、BIMモデルから数量情報を取得し、単価や積算項目と適切に連携することで、数量拾いや積算業務の効率化が期待できます。
ただし、精度はモデルの詳細度や属性情報、数量算出ルールなどに左右されます。
なお、株式会社 綜合積算の宮川 剛氏(以下、宮川氏)は以下のように述べています。
「BIM積算は、BIMモデルに含まれる形状や情報を使って、数量算出などの積算作業を効率化する方法です。ただし、BIMそのものは積算のためだけの仕組みではなく、建物の情報を蓄積するデータベースという位置付けです。そのデータを積算にも活用していく、という考え方になります。
また、BIMモデルから自動的に数量を取得できるのは、モデルが正しく作られていることが前提です。全ての積算項目をBIMだけで処理できるわけではなく、主要な仕上げや構造などBIMと連動できる部分を効率化しながら、細かな項目は従来どおり積算者が確認・算出していく形が現実的です」(宮川氏)
また、株式会社フローワークスの横関浩氏(以下、横関氏)の見解によると、以下の通りです。
「設計の初期段階からBIMで繰り返し確認・検討しながら、設計の解像度を上げていける点がBIM活用のメリットです。
BIMモデルから数量や概算、省エネ性能などを早い段階で確認できれば、行政の結果を待つことなく、設計者自身が何度もプランを見直したり、デザインを工夫したりできます。
設計施工を行う会社では、詳細な積算でなくても、設計と同時にある程度の概算が出るだけで大きなメリットがあるでしょう。
BIMを使って積算や省エネ計算などをフロントローディングし、設計初期から繰り返し検討できることに価値があると考えています」(横関氏)
そして、公益社団法人 日本建築積算協会の森谷 靖彦(以下、森谷氏)は以下と言います。
「BIM積算は、BIMを通じて建築データを活用する具体的なユースケースの一つです。 BIMモデルには建物の形状や設備、区画などのデータがあり、それらを各種データベースや業務ツールと連携させることで、積算をはじめとするさまざまな業務に活用できます。
BIMを普及させるには、「BIMだから便利」という説明ではなく、積算など具体的な業務を一つひとつ挙げて、「今より業務が楽になりそう」と実感してもらうことが重要です」(森谷氏)
BIM積算と従来積算との違い
従来の積算業務は、2次元の図面から数量を手作業で拾い出すため、非常に時間がかかり、人為的なミスが発生しやすいという課題がありました。計算誤りや拾い漏れが生じる可能性が常につきまとい、特に複雑な構造の建物では確認作業に莫大な時間を要します。
一方、BIM積算では、モデルに適切に入力された部材や属性情報から数量を集計できるため、手作業による数量拾いの一部を効率化できます。
ただし、モデル化されていない項目や施工上の割増などは、別途確認・補正が必要です。
参照:日本建設業連合会「設計 BIM モデル作成ガイド(第1版)」
さらに、設計変更が発生した際に、従来は該当部分の数量を再度手作業で拾い直していたのに対し、BIMモデルを修正すると、モデルと連動した数量集計表も更新できます。
数量と積算項目や単価が適切に連携されていれば、変更後の概算費用を速やかに再計算することも可能です。
このリアルタイム性により、設計段階での意思決定が迅速化し、プロジェクト全体の効率が向上します。
「正しいBIMモデルができていることが前提ですが、内部仕上げの数量算出が中心です。
内部仕上げは積算業務全体の30〜40%程度を占め、そのうち主要な床・巾木・壁・天井などの数量算出を30%程度削減できれば大きな成果だと考えています。
次に効率化できるのは構造で、コンクリート・型枠・鉄筋などがBIMと連動できれば、RC構造の積算時間も30%程度削減できる可能性があります。
積算業務全体ではBIMを活用することで10〜20%程度効率化できれば大成功という認識です」(宮川氏)
「BIMモデルが正しければ、そこから正しい数量を取り出せるため、積算業務の20%以上を自動化・効率化できる可能性があります。まずそこが現実的な目標といえるでしょう。
しかし、BIM積算を進めると、積算に必要な情報をどこまで設計側がBIMモデルに入力し、どこからを積算側で補うのかという役割分担の議論が生まれます。
設計側に積算用の情報入力まで求めると負担や責任が集中するため、設計と積算の双方で作業範囲を整理することが必要です」(横関氏)
直接型と連携型の2つの積算手法
BIM積算には、企業の体制や案件の性質に応じて選択できる2つのアプローチが存在します。
BIMソフト内で直接積算処理を実施する「直接型」と、BIMソフトから専門の積算ソフトへデータを連携させる「連携型」です。
各手法にはメリット・デメリットがあり、設計段階や企業の戦略に応じて使い分けることで、最大の効率化を実現できます。順番に解説していきます。
直接型BIM積算
直接型BIM積算は、RevitなどのBIMソフト内で直接積算処理を実施する手法です。BIMソフトの数量集計機能を活用して数量を算出し、必要に応じてアドインツール等で機能を拡張することもできます。
この手法の最大の利点は、設計と積算の連携がシームレスで、リアルタイムの反映が可能という点です。設計者がモデルを修正した時点で、積算データが自動的に更新されるため、デザインと原価管理の同時進行が実現します。
概算段階での利用に向いており、複数案の比較検討にも極めて有効です。企画・計画段階のBIMモデルの詳細度が低い場合でも、大まかな概算を算出することが可能です。
一方、デメリットとしては、ソフトの拡張機能に依存するため、カスタマイズの自由度に制限がある場合があります。既存の複雑な積算基準への対応が難しい場合もあり、全社的な積算プロセスへの対応には工夫が必要です。
連携型BIM積算
連携型BIM積算は、BIMソフトから専門の積算ソフトへデータを連携させる手法です。既存の積算ソフトを生かしながら、BIMのメリットを享受できるという大きな利点があります。IFC形式やダイレクトリンクなど複数の連携方式があり、企業の技術環境に応じた選択が可能です。
この手法は、公共工事の積算基準準拠が必要な場合に特に適しており、詳細設計から精積算段階に最適です。既存の積算基準に対応した複雑な計算ロジックを積算ソフトが持っているため、精密な積算を実現できます。
既存の積算ソフトや単価データを継続して活用できる可能性があります。
BIMデータとの項目対応や連携ルールの整備が必要であり、導入期間は既存環境や対象範囲によって異なる点には注意が必要です。
また、データ変換時の情報損失やファイル管理の複雑化に注意が必要です。特にIFC形式での連携では、変換プロセスで一部の情報が失われる可能性があるため、事前の検証と運用ルールの整備が不可欠です。
BIM積算の4つのメリット

BIMモデルの作成ルールや積算データとの連携方法を適切に整備することで、数量拾いの効率化や積算精度の安定化が期待できます。
単なる作業効率の向上に留まらず、設計・施工・原価管理の最適化により、プロジェクト全体の効率が大きく向上します。ここからは、主要な4つのメリットについて詳しく見ていきましょう。
積算作業を大幅に効率化できる
BIM積算の導入により、従来の手作業による数量拾いが自動化されます。国土交通省のモデル事業では、概算業務全体で51%、数量算出工程で約70%の削減が報告されています。
従来は、ルーチンワークである数量拾いに膨大な時間を費やしており、担当者の負担は非常に大きなものでした。
例えば、2次元の構造図からExcelへの入力作業は相当な労力を要していた実例もあります。BIM積算によってこうしたルーチンワークが激減することで、担当者はより高度な分析業務に時間を割くことが可能です。
複数案の概算を比較しやすくなるため、設計初期の意思決定やコスト調整の迅速化に役立ちます。結果として、手戻りの抑制や検討期間の短縮につながる可能性があります。
さらに、内製している数量拾いの工数削減が期待できます。一方、外注費への影響は契約形態によって異なり、BIMモデルの整備やソフト導入などの費用も含めて判断が必要です。
積算精度が向上し、ミスを削減できる
自動抽出により、人的ミス(拾い漏れ、計算誤り)の削減が見込めます。
従来の手作業では、複雑な図面から見落としが生じたり、計算段階で誤りが発生したりする可能性が常に付きまとっていました。
数量拾いのルールや入力項目を標準化することで、担当者による作業のばらつきや転記ミスを抑えやすくなります。ただし、モデルや集計条件の設定には専門的な判断が必要です。
BIMモデルに設定された属性情報を活用することで、統一された基準での積算が実現され、組織全体の積算精度が均等化されます。積算精度が安定すれば、見積時の数量誤差や原価の見落としを抑えやすくなります。その結果、採算管理や設計変更への対応を支援できる可能性が増えるでしょう。
使用するソフトや共通データ環境に変更履歴・版管理機能がある場合は、モデル更新の経緯を確認しやすくなります。
工事金額が大きい案件では、わずかな数量差でも金額への影響が大きくなる可能性があります。ただし、BIM積算の費用対効果は、案件数やモデル作成コスト、対象工種なども含めて評価するようにしましょう。
「部屋や仕上げの取り違え、寸法の入力ミス、桁間違いなどの単純なヒューマンエラーを減らせます。
積算には、平面図上に躯体や間仕切り、部屋などを配置して拾う”配置積算”と、部屋ごとにX・Y・Zなどの寸法を入力して拾う”個別積算”があります。
BIMと連動することで、配置積算では部屋や仕上げの取り違えを、個別積算では寸法や桁の入力ミスは減るでしょう。例えば5mを50mと入力し、25㎡の部屋を250㎡として計上してしまうようなミスのことです。
一方で、BIMの結果を信じすぎることで、従来なら積算者が図面を見て気づいていた不足を見逃す恐れもあります。
例えば、法規に絡む部分の入力漏れやキープランとBIMモデルの齟齬があったとしても、BIMモデルに入力されている情報を基に拾ってしまうと、ミスが発生します。積算者が、設計者に質疑を出すべき項目を見逃すリスクもあるでしょう」(宮川氏)
「BIM積算でミスを減らすには、まず元となるBIMモデルの正しさを担保することが重要です。
さらに、今後はAIがBIMモデルの作成を支援し、モデルの間違いをチェックして、場合によっては自動で修正するようになると考えています。
たとえBIMで数量算出を自動化しても、積算側が”本当に正しいのか”と一つ一つ全て確認していては、自動化の意味が薄れてしまいます。
BIMによる自動化だけでなく、品質管理(QC)やAIによるチェックを組み合わせ、積算側がある程度安心して使えるデータにすることが重要です」(横関氏)
設計変更を積算結果へ迅速に反映できる
BIMモデルと数量集計を連動させている場合、モデルの修正内容を数量に反映できます。さらに、数量と積算項目・単価が適切に連携されていれば、変更後の概算費用を速やかに再計算できます。
変更による影響をリアルタイムに把握できるため、適切な対応判断が可能です。「この設計変更にはどれくらいのコストがかかるのか」という問い合わせに、即座に数値で答えることができるようになるため、クライアント提案時の信頼度が大幅に向上します。
複雑な構造変更でも即座に費用への影響を数値化可能であり、多数の変更要望がある難易度の高い案件ほど、その効果は顕著です。このように、BIMモデルとコスト情報を適切に連携することで、設計案の比較やコストシミュレーションにも活用できます。
コストシミュレーションを実施できる
設計の早期段階で複数の案についてコスト比較検討が可能になります。材料変更や仕様変更による原価への影響を定量的に把握できるため、設計段階でのコスト最適化が実現し、不利益な設計決定を事前に回避できます。
BIMモデルとコスト情報を連携することで、目標コストを設計プロセスの中で継続的に管理するTVD(Target Value Delivery)などの手法の支援も可能です。
BIMモデルを積算ソフトや工程管理システムなどと連携することで、設計・コスト・工程に関する情報を関連付けて管理しやすくなります。
さらに、企画段階での複数案検討から詳細設計段階での仕上材選定まで、あらゆる設計決定にコスト情報をリアルタイムで組み込むことができるため、原価意識の高い設計プロセスが実現されるのです。
BIM積算の4つのデメリット

BIM積算導入には大きなメリットがある一方で、実装には相応の課題があります。
導入にはシステム、体制、人材育成に総合的な投資が必要であり、短期的には負担が増加する場合も存在します。ここからは、BIM積算の4つのデメリットについて解説していきます。
BIMモデルの属性情報を整備する必要がある
BIM積算を行うには、材料や規格など、数量算出・積算項目との関連付けに必要な情報の整備が必要です。必要な情報をBIMモデルに設定する方法のほか、積算ソフトや外部データベースで補完する方法もあります。
新規プロジェクトでも手間がかかりますが、既存プロジェクトでは事後的な属性情報の追加作業が大きな負担となります。
属性情報の入力ルール統一が難しく、標準化に向けた業界の取組みが課題です。
国土交通省の建築BIM推進会議や関係団体では、属性情報の標準化やBIMを活用した積算・コストマネジメント手法の確立に向けた検討が進められています。一方、現状では企業やプロジェクトによって入力・分類ルールが異なる場合があります。
BIMモデルには形状や仕様などの多様な情報を持たせられますが、入力ルールや分類体系が統一されていない場合、積算に利用できる形へ整理するための時間と工数が必要です。
特に注意すべき点は、入力作業の工数が削減効果を上回るリスクがあるということです。設計段階で充実した属性情報を入力することで、積算段階での効率化が期待できますが、その前提条件である属性情報の入力が過度な負担となっては本末転倒です。
従って、属性情報の入力ルールを極力簡潔に設計し、効率化できる部分に絞って実装することが重要になります。
「積算する立場からすると、まずはその部材が何を示しているのか認識できればよいと考えています。
例えばBIM上で「間仕切り1」としておき、それが「LGS65型+石膏ボード12.5mm両面張り」といった仕様であることは、BIMと連動した先で設定しても構いません。
詳細な情報はどこかで設定する必要がありますが、それをBIMの中で行うのか、連動先で行うのかは問わないという考えです。
BIMでは間仕切りの位置や数量を拾い、詳細な仕様は外で分解する形にすれば、設計者側の負担も軽くなるでしょう」(宮川氏)
「ハウスメーカー、アトリエ系設計事務所、組織系設計事務所など組織ごと、あるいは住宅や医療施設など、プロジェクトごとに必要な情報は異なります。
大手設計事務所やゼネコンが扱うような大量の属性情報を、中小の設計事務所まで同じように持たせる必要はありません。
そのプロジェクトで何にBIM積算を使うのかを逆算して、必要最低限の情報だけをモデルに持たせ、詳細情報は外部データベースに置いてひも付ける方法が効率的です。
必要な人が、必要なときに、必要な情報だけを取り出せる仕組みにすることが重要で、属性情報だけでなくモデルの形状についても細かくしすぎない方が扱いやすいと考えています」(横川氏)
ソフト間で互換性の問題が生じることがある
BIMソフトと積算ソフトを連携させる際、IFC形式でのデータ変換時に、一部のデータが失われる可能性があります。BIMソフトと積算ソフトのバージョン違いで、予期しないエラーが発生する場合もあり、問題の原因特定に時間を要することも否定できません。
特殊な形状(自由曲面の壁など)ではBIM側での表現と積算側での連携が困難な場合があり、そうした場合には手作業での対応を余儀なくされます。ベンダーサポート体制により、問題解決にかかる時間が異なるため、導入前の企業評価が重要です。
複数ソフトの組み合わせで検証が必要になり、導入の複雑性が増加する傾向にあります。
ただし、互換性の改善に向けた継続的な開発が進められており、IFC形式の仕様向上やダイレクト連携機能の拡充により、こうした課題は段階的に解消されています。導入を検討する際には、最新のバージョン情報とベンダーのサポート体制を確認することが重要です。
既存の積算基準に合わせた調整が必要になる
BIMから算出した数量が、「公共建築数量積算基準」や企業独自の数量算出ルールと一致しない場合があり、集計条件や計算ロジックの調整が必要になります。
特に重要な課題として、積算基準では欠除条件(例:間仕切下地の開口0.5㎡以下は欠除なし)が設定されていますが、BIMは実数量を算出するため、この差異を埋めるための調整が必要です。
建築、土木、設備など業種別の基準への個別対応も課題となり、複数業種を扱う企業ではなおさらです。
国土交通省のモデル事業では、公共建築数量積算基準とBIMによる実数量の計算方法の違いにより、3%未満の数量差が生じた項目も確認されています。ただし、差の大きさや費用への影響は対象項目によって異なります。ソフトのカスタマイズに時間と費用がかかり、投資回収期間が長期化する傾向も抑えておきましょう。
初期導入コストと運用体制の整備が必要になる
ソフトウエアのライセンス料、ハードウエア投資、コンサル費用など、初期投資が必要です。従業員の教育・訓練にも相応の期間と費用が必要であり、社内体制の整備(ルール策定、品質保証体制など)に工数がかかります。
導入準備や投資回収に必要な期間は、企業規模、対象業務、既存システム、教育範囲などによって異なります。そのため、対象業務を限定した試験導入を行い、削減工数や積算精度などを確認しながら段階的に対象を広げることが重要です。
BIMデータと積算ソフトの連携方法
BIMデータを積算ソフトに連携させる方法には複数の方法があり、導入環境と目的に応じた選定が重要です。いずれの方法も、データ品質と運用ルールの確立が重要です。
IFC形式を利用して連携する
IFC形式は、国際標準フォーマットとしてBIMモデルを異なるソフト間で交換するための形式です。BIMモデルをIFC形式でエクスポートし、積算ソフトでインポートすることで、ソフト間の独立性が高く、複数のソフトの組み合わせが可能になります。
このアプローチの最大の利点は、BIMソフトと積算ソフトを自由に組み合わせることができるという柔軟性です。
IFCを利用すると、特定ソフトの独自形式だけに依存せず、別のソフトへ形状・属性情報を受け渡しやすくなります。ただし、元ソフト固有の編集機能や設定まで完全に移行できるとは限りません。
注意点として、情報損失のリスクがあるため、事前に変換品質の検証が必要です。ダイレクト連携と比較すると、データ変換に要する時間が長い場合がある傾向にあります。
しかし定期的なバージョン更新により、互換性が改善されており、IFC連携から双方向連携への開発が進行中のため、今後さらなる改善が期待されます。
ダイレクトリンク機能を利用する
ダイレクトリンク機能は、BIMソフトと積算ソフト間で、リアルタイムなデータ連動を実現する手法です。IFC変換時の情報損失が少なく、精度が高い連携が可能になります。
データ変換にかかる時間がIFC連携より大幅に短いため、リアルタイム性が求められる業務に最適です。
ソフトメーカーが提供する直結機能のため、サポート体制が充実している傾向にあり、問題発生時の解決が比較的早いというメリットもあります。BIMデータを修正することなく連携できるメリットもあり、フローが簡潔です。
実務では、ダイレクトリンク機能の導入により、大幅な時間短縮と連携精度の向上を実現することが報告されています。ただし、対応するソフトの組み合わせが限定されるため、ソフト選定の自由度が制限される場合があります。
Revit、Archicad等の主要BIMソフトに対応した積算ソフトが存在しますが、マイナーなBIMソフトの場合には対応製品がないことも否定できません。導入前に、利用予定のBIMソフトに対応した積算ソフトが存在するかを確認することが重要です。
BIM積算の導入の5つのステップ

BIM積算の導入は、段階的に進めることが重要です。各ステップでの検証と調整が重要であり、設計と積算の連携が成功の前提条件となります。
ここからは、実務的な5つのステップについて解説していきます。
導入目的と対象業務を明確にする
BIM積算導入の最初のステップは、経営層と現場のコンセンサスを取り、具体的な導入目的を定義することです。全社的な導入ではなく、効果が期待できる業務から段階的に開始することが重要です。
コスト削減、精度向上、リードタイム短縮など、測定可能な目標を設定します。対象業務の範囲(建築のみか、土木も含めるか等)を具体的にすることで、初期段階での取組み範囲を限定できます。
最終ゴールを「全部門を一気通貫させたBIMプロセスの確立」に置く戦略が有効です。
段階的な目標設定により、各段階での成果を可視化でき、経営陣の理解も得やすくなります。実例では、建築積算とコスト算出を主業務とする企業が、段階的なBIM積算導入を推進し、継続的な改善を通じて効果実現を目指しています。
BIM、積算ソフトと連携方法を選定する
現在の業務環境と将来のIT戦略を踏まえた総合的なソフト評価が必要です。複数ベンダーによるデモンストレーションと比較検討により、導入事例や他社の評価を参考にして、適切なソフトの組み合わせにしましょう。
連携方法(IFC、ダイレクトリンク等)の技術的な実現可能性を事前に検証することが重要です。既存積算ソフトの継続使用の可否も重要な判断基準になります。
複数のベンダーを訪問し、実装の難易度やサポート体制を詳細に確認することで、後々のトラブル回避につながります。
実務では、Archicadのデータから見積書を短時間で作成できるツール「BI for ARCHICAD」を導入し、継続的な改善要求を送りながら、ベンダーと長期的なパートナーシップを構築する事例も報告されています。
モデリングと属性情報の入力ルールを設定する
設計部門と積算部門が協力して、詳細なルールを策定することが必須です。属性情報の定義(何をどのレベルで入力するか)を統一し、BIMモデルの作成仕様(オブジェクト粒度、階層構造等)を標準化します。
専用オブジェクトの設計(例:床の形描画で必要部材が自動発生)も有効な工夫です。ルール遵守のための教育プログラムと品質チェック体制を構築することで、運用の安定性が確保されます。
積算に必要な属性を増やすほど自動集計できる範囲は広がりますが、設計者の入力負担も増加します。そのため、利用目的と設計段階に応じて、必要な情報の範囲を定めることが重要です。
ソフト側の機能制限やテンプレート活用で、ルール遵守を強制する仕組みを検討することで、人手による確認作業を削減できます。定例会議(月2回程度)での意見交換を通じた継続的な改善も効果的です。
一部の案件で試験的に導入する
初回の試験導入では、既存の積算結果と比較でき、対象範囲や難易度を管理しやすい実案件を選びます。複雑な案件を対象とする場合は、検証項目を限定し、必要な支援体制を整えることが重要です。
設計から竣工まで、全プロセスでの効果を検証することで、現場での実装性を確認できます。試験結果と経営的な採算性を総合評価して、本格化の判断基準を設定します。
初期段階では発注項目数の6~10%程度の出力に限定される現実を想定しておくことが重要です。過度な期待値を避けることで、失敗時のモメンタム喪失を防ぐことができるはずです。
導入効果を検証して本格運用へ移行する
試験導入で設定した指標に基づき、客観的な効果測定を実施します。作業時間削減、精度向上、コスト改善など、定量的な効果を確認することが重要です。
試験導入で抽出された課題の解決方法を確定させ、本格運用に向けた社内体制の最終調整を実施します。
帝国不動産株式会社(旧 株式会社アーキテクト・ディベロッパー)の検証事例では、発注項目184項目のうち137項目、74.5%を出力できる段階まで改善し、実用化への目処が立ちつつあったと報告されています。
役員層への理解の浸透が本格化するための前提条件であり、経営層の支援がなければ継続的な運用が困難になります。
段階的な展開計画を策定することで、全社への導入を計画的に進められるでしょう。賃貸用集合住宅の企画から施工まで全領域を手掛ける企業では、3カ月の準備期間を経た検証プロジェクトから本格導入へと進み、設計と積算をワンモデルで一気通貫させたBIMプロセスの確立を実現している事例も報告されています。
BIM積算に活用できる主要ソフト5選
BIM積算の導入には、複数の選択肢があり、各ソフトに異なる特性があります。企業の業務内容と戦略に応じた選択が重要であり、複合的な機能を持つものと専門特化型ソフトの組み合わせも有効です。ここからは代表的な5つのBIM積算ソフトについてご紹介していきます。
Revit|数量集計に対応した総合BIMソフト
オートデスク社提供のRevitは、統合BIMプラットフォームとして、設計から積算まで建築プロジェクト全体を一元管理できます。
豊富な数量集計機能と、カスタマイズの自由度が高く、インスタンスパラメーターで仕上情報の設定が可能です。
業界での導入実績が多く、情報リソースやサポート体制が充実しているため、導入後の運用がしやすい傾向にあります。ダイレクト連携機能による他ソフトとの高精度な連携が実現し、多くの積算ソフトがRevitとの連携機能を備えています。
初期学習コストと運用負荷がやや高い傾向ですが、双方向連携の開発により、さらなる効率化が期待されています。
Archicad|設計と数量把握を支援するBIMソフト
グラフィソフト社提供のArchicadは、欧州発祥のBIMソフトで、設計プロセスと数量把握が統合された設計思想が特徴です。直感的なUI設計で、設計者による属性入力がしやすく、ゾーンスタンプ機能で部屋の仕上情報を効率的に管理できます。
設計主体の業務に適している傾向があります。日本市場でも採用実績が増加しており、ローカルサポートも充実してきています。
Archicadのデータから見積書を短時間で作成できるツール「BI for ARCHICAD」など、積算連携に特化したアドインも提供されており、積算向けのカスタマイズ機能が特徴です。ダイレクト連携での精度向上により、積算ソフトとの連携が改善されています
HELIOS|構造・仕上・見積作成に対応した建築積算ソフト
HELIOSは、日本の建築積算基準に最適化された統合積算ソフトです。BIMデータとの連携機能を備え、従来の積算ソフトからの移行がスムーズで、構造、仕上、見積の統合管理により、実務的な利便性が高いのが特徴です。
IFC連携とダイレクト連携の双方を実装しており、国内で広く利用されているためローカルサポートが充実しています。既存の積算基準との親和性が高く、導入期間が短い傾向にあります。
アドイン概算システム「COST-CLIP」により、設計初期段階での活用も可能です。双方向連携機能の開発で、さらなる業務効率化が期待されています。
Tekla Structures|構造分野の数量算出に強いBIMソフト
トリンブル社提供のTekla Structuresは、構造特化型BIMソフトで、鉄骨、RC、鉄筋などの構造部材の数量算出に極めて高い精度を実現します。複雑な構造体の自動積算機能により、構造分野での効果が最大になります。
鉄筋工事などの詳細な納まり検討をBIM段階で実施可能であり、構造技術者との親和性が高く、設計検証機能も充実しています。構造分野以外への対応は限定的ですが、公共工事での採用実績が増加しており、橋梁やトンネルなどの大規模構造物プロジェクトに最適なソフトです。
COST-CLIP|設計初期の概算コスト算出に特化したソフト
COST-CLIPは、設計初期段階での概算コスト算出に特化した軽量ソフトです。Revit、Archicad上で動作するアドイン型システムで、詳細設計前の企画段階での複数案比較検討に最適です。
コストを意識したBIM設計を推進するニーズに対応し、導入が簡単で、短期間での効果実現が可能です。BIMモデル完成度による精度差が大きく、詳細な積算には不向きですが、他ソフトとの組み合わせで、企画~詳細設計全体の効率化が可能です。
継続的なバージョン更新により、機能強化が進行中であり、設計段階でのコスト意識の醸成に有効なツールとして注目されています。
BIM積算を実務で活用する際の3つの注意点
BIM積算の実運用では、自動化とチェック機能の適切なバランスが成果を左右します。ソフトの自動化機能だけに依存せず、入力支援機能と人による確認・調整を適切に組み合わせることが重要です。
属性情報の入力ルールを統一する
ルール統一がないと、同じ部材でも異なる数量が算出される可能性があります。設計部門と積算部門の定期的なミーティングで、ルール遵守を確認し、属性情報の入力チェックリストを作成して品質保証体制を構築することが重要です。
ルール違反時の対応手順(修正、再積算等)を事前に定義し、ソフト側の機能制限やテンプレートや入力チェック機能を活用し、ルールに沿った入力を支援する仕組みも検討します。複合壁の構成(下地と構造体の分離)等、部位別の定義統一が必須です。
月2回程度の定例会議での継続的な改善が効果的であり、組織全体でのルール遵守意識の醸成が重要になるでしょう。
BIMモデルだけでは算出できない項目を確認する
BIMモデルから直接取得できるのは、主に部材の形状・属性・数量情報です。材料費、労務費、機械器具費などを算出するには、取得した数量に歩掛かりや単価を関連付ける必要があります。
また、共通仮設費、現場管理費、一般管理費等は、適用する積算基準や工事条件に基づいて別途算定します。
参照:国土交通省「公共建築工事共通日積算基準」
自動抽出結果に対する手作業による補足項目を明確にしておくことで、漏れを防止できます。表面仕上などの情報の一部は連携できないため、別途入力が必要な場合があります。
実務では、BIM積算は直接工費の抽出に限定し、他項目は従来方法を継続する運用が現実的です。チェックシートの活用により、漏れを防止する仕組みを構築することで、確実な積算が実現されます。
積算基準で定義される補正係数等の適用も、人手による確認が必須であり、自動化の過度な信頼は禁物です。
「BIMで対応できる細目は、積算内訳全体から見ると感覚的には5分の1程度です。金属工事、仕上げユニット工事、直接仮設などは手作業が残ります。
内部仕上げでも、床・壁・天井といった主要な仕上げはBIMと連動できますが、カーテンボックス、折上げ天井、ライニング、洗面台などの一品物・雑物まで、全てBIMモデルに入力して連動させる必要はないと考えています。
こうした項目は、従来どおり積算側で拾う方が現実的です。
RC造であれば、パラペットや「あご」など意匠図にしか表現されない部分のコンクリート量・型枠・鉄筋があり、BIMモデルだけでは数量を出し切れません。
そのため、BIMから算出できる部分と手作業で補う部分を分けて考える必要があります」(宮川氏)
「BIMで全ての数量を算出することを目指す必要はないと考えています。細かな部材や一品物まで無理にモデル化すると、設計側の入力負荷が大きくなり、BIMモデル自体も重くなります。
BIMで効率化できる部分はBIMから取り出し、それ以外は外部データや従来の方法と組み合わせるという役割分担をするとよいでしょう。
BIMモデルだけに情報を集中させるのではなく、必要な情報を外部と連携して使える状態にした方が効率的です」(横関氏)
積算基準に沿って担当者が数量を確認・補正する
「公共建築数量積算基準」や発注者・企業が定める数量算出ルールに照らし、BIMから取得した数量の定義や計算方法が一致しているかを確認します。また、必要に応じて、JASSなどの標準仕様書や設計図書との整合も確認しましょう。
設計図との照合により、BIMモデルの漏れや誤りを発見し、確認結果に基づき、補正が必要な場合はBIMモデルか積算データを修正します。確認・補正の工程を標準化し、作業時間を最小化する工夫が重要です。
公共事業では積算基準との整合が必須のため、丁寧な確認が不可欠です。代用入力やモデリングの問題点の把握も確認工程の重要な役割であり、実務担当者の経験と知見が最大限に活用される領域です。
まとめ
今回は、BIM積算の仕組みや従来の積算との違い、導入によって得られる3つのメリットについて解説しました。
BIM積算とは、建物の3次元モデルに登録された部材の種類や数量、仕様などの情報を活用して、工事費を算出する方法です。図面から数量を一つずつ拾う従来の積算と比べて、作業の効率化、入力ミスの削減、設計変更への対応のしやすさが期待できます。
一方で、BIMソフトを導入するだけで、全ての積算作業が自動化されるわけではありません。正確な積算を行うためには、モデルに必要な情報を登録し、設計部門と積算部門で入力ルールや作業の流れを決めておく必要があります。
また、導入には費用がかかるほか、BIMを扱える人材の育成や、既存の積算ソフトとの連携も課題になります。そのため、最初から全ての業務を切り替えるのではなく、一部の工種や小規模な案件から試すことが大切です。
BIM積算の導入を検討している方は、まず現在の積算業務における課題を整理し、どの作業を効率化したいのかを明確にしましょう。自社の目的や体制に合わせて段階的に取り入れることが、導入を成功させるための第一歩です。
最終更新日:2026-10-28
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