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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

四国地方整備局における建設DX、BIM/CIMの取り組み

2025年6月30日

はじめに

四国地方整備局ではデータとデジタル技術を活用し、社会資本整備や公共サービスの改革を推進するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、働き方を改革し、建設業の生産性の向上を図りつつ、インフラへの住民理解を促進し安全・安心で豊かな生活を実現するため、「四国地方整備局インフラDX推進本部会議」を設置し(図-1)、「四国地方整備局インフラDX推進ロードマップ」に基づき(図-2)、各部局が横断的に連携してインフラ分野のDX推進に取り組んでいる。

図-1 四国地方整備局におけるインフラDX推進体制
図-1 四国地方整備局におけるインフラDX推進体制
図-2 四国地方整備局インフラDX推進ロードマップ
図-2 四国地方整備局インフラDX推進ロードマップ

 
 

BIM/CIM取り組み状況

2023年度からのBIM/CIM原則適用により、四国地方整備局直轄事業における同年度のBIM/CIM活用件数は業務89件、工事110件と、前年度実績の約3倍へと急増している(図-3)。
 
しかし、現段階では発注者から提供できる3次元データは限られており、設計間や設計~工事の間のデータ連携は十分ではない。
これを補うため、スピード感を持ってストックの拡大に努めていくとともに、それを確実に後工程へ引き継ぐデータシェアリングを徹底する。

図-3 四国地方整備局におけるBIM/CIM活用状況
図-3 四国地方整備局におけるBIM/CIM活用状況

 
 

BIM/CIM活用事例

四国地方整備局の直轄工事におけるBIM/CIM活用事例を紹介する。
 
橋梁下部工事において、鋼矢板設置箇所付近に存在する既設の平張りコンクリートが、鋼矢板圧入時の施工機械と干渉することが判明した。
そこで、GNSSアンテナで取得した位置情報をARに反映させて正確な位置でBIM/CIMモデルの対象物を現地に反映させることができるシステムを採用し、3Dモデルの施工機械をARにより可視化し現地で支障状況を確認した(写真-1)。

写真-1 施工機械と既存構造物の干渉をARで見える化
写真-1 施工機械と既存構造物の干渉をARで見える化

 
その結果、CAD図面による資料作成や測量による杭打ち作業などを省力化できたことで、従来の作業工数と比較すると約7割の縮減効果が図られ、受発注者間の協議も円滑に進めることができた。
 
また、別の工事では3次元計測技術を用い、出来形管理に活用した(写真-2)。
少ない人数で計測できること、写真としての活用もできることから、管理の効率化につながるなど、施工現場での、省力化・効率化に向けたBIM/CIM活用が始まっている。
さらに、法面工の工事の例では、吹付 法枠工の出来形管理に3次元計測技術を活用した(写真-3)。
従来はロープによる高所作業者4名でテープ測量を行っていたが、3次元計測では2人での作業と大幅な省力化とともに測量時の安全性向上につながった。

写真-2 橋脚の3次元出来形計測とヒートマップ
写真-2 橋脚の3次元出来形計測とヒートマップ
写真-3 高所作業における3次元計測技術を活用した出来形管理
写真-3 高所作業における3次元計測技術を活用した出来形管理

 
 

人材育成

BIM/CIM原則適用を効果的に進めるためには、それぞれの役割を担っている発注者、コンサルタント、建設会社が一体となって取り組む必要がある。
 
四国地方整備局においては、職員向けBIM/CIM研修に加えて、受注者(設計者、施工者別)向けのBIM/CIM講習会のほか、次世代の担い手となる学生向けのDX体験学習や出前講座も実施している(写真-4)。
 
今後もデジタル技術を十分に理解し、日常使いできるスキルを身につけることを目的に人材育成の取り組みを充実させていく。

写真-4 出前講座(高知工科大学)
写真-4 出前講座(高知工科大学)

 
 

i-Constructionモデル事務所の取り組み

四国地方整備局のi-Constructionモデル事務所である松山河川国道事務所においては事業情報プラットフォームを活用し事業監理の効率化を図っている(図-4)。
 
従来、用地・調査設計・工事の各担当課で、協議事項などを保存しており、担当者不在の場合に最新の情報を入手するのに時間がかかるなど、業務遂行が非効率となっていた。
そこで各段階の協議事項などをBIM/CIMモデルとともにGISツールを用いてクラウド上で一元的に管理・共有することにより、「事業情報の可視化」、「確実な情報共有・管理」が可能となった。
 
今後は事業進捗管理での活用や維持管理などの場面を踏まえた高度なデータ活用の検討を行っていく予定である。

図-4 事業情報プラットフォーム
図-4 事業情報プラットフォーム

 
 

おわりに

BIM/CIMの活用を加速させるには、受発注者共にその有用性を理解し、活用していくことが重要である。
 
3次元モデルの視覚的な活用による合意形成や理解促進については一定の効果が得られているが、3次元設計データのICT建機や施工管理での活用など後工程での活用に加えて、属性情報を活用した数量自動算出や3次元モデルと2次元図面の連動、鋼橋の設計から工場製作へのデータ連携などの各種試行により作業の自動化、効率化を推進する。
 
これまでに得たBIM/CIMを活用したマネジメントの知見を地域のコンサルタントや建設会社、地方公共団体とともに展開することで、建設業の働き方改革を進め、中長期的な担い手確保など四国全体の建設業界の課題解決に向け取り組んでいきたい。
 
 
 

四国地方整備局 企画部 技術管理課 技術検査官
木村 崇

 
 
【出典】


建設ITガイド2025
建設ITガイド2025



東北地方整備局におけるDX推進の取り組み

はじめに

東北地方は少子高齢化が進む中、近年各地で甚大な自然災害が相次ぎ、災害時の迅速な対応や国土強靱化対策の加速が急務となっています。
また、豪雪・過疎地域を多く抱えているため、インフラの維持管理や除排雪体制などにおける担い手不足が東北6県に共通する課題となっており、継続的・安定的に企業を維持していくためには、生産性の向上は避けては通れない喫緊の課題です。
 
これらの課題解決に向けて、東北地方整備局では、2016年度から「働き方改革の推進」「生産性向上の推進」「担い手の育成・確保」の三本柱からなる「東北未来『働き方・人づくり改革プロジェクト』」を官民連携で取り組んでいます(図-1)。

図-1 東北未来「働き方・人づくり改革プロジェクト2024」
図-1 東北未来「働き方・人づくり改革プロジェクト2024」

 
 

DX推進の取り組み

(1) インフラDXの推進体制

2021年度に、整備局全体が一体となって取り組む「東北地方整備局インフラDX推進本部」を設置しました。
現状の働き方における3つの課題(既成概念・場所・ペーパー)に着目し、課題解決に向けて「離れた空間をデジタルで共有」、「誰でもすぐに現場で活躍」、「オフィスに現場を再現」、「ワンチームでDXを推進」の4つの挑戦テーマを設定して、データとデジタル技術を活用した社会資本整備や公共サービスの提供、除雪作業の効率化に向けた技術開発、人材育成や担い手確保などさまざまな取り組みにチャレンジしているところです。
 

(2) BIM/CIM原則適用

BIM/CIMの取り組みは2012年度からスタートし、橋梁や水門、トンネルなどを中心に積極的に進め、2023年度から原則適用となり、整備局独自の取り組みとして、詳細設計や工事に加えて、大規模構造物の予備設計も対象としています。
 
受発注者双方の経験者も増え、3次元データの蓄積も進んでいます。
好事例を通じて経験者を増やし「特別なもの」から「普段使いのツール」とし、さらに「使いこなす」ことで3次元データ活用を図っていきます。
 

(3) 3次元情報活用モデル事業

i-Constructionモデル事務所である鳴瀬川総合開発工事事務所では、3次元情報活用モデル事業「鳴瀬川総合開発事業(宮城県加美郡加美町)」において、大規模かつ長期にわたるダム事業の特性を踏まえ、調査・設計段階からBIM/CIMモデルを活用した事業監理に取り組んでいます。
具体的には、GIS情報共有基盤ベースの流域モデル(流域全体の地形・地質モデル)上に地すべりモデル、原石山・残土受入地モデル、構造物モデルなどのBIM/CIMモデルを統合し、情報共有プラットフォームを構築して、2022年度から事業監理プラットフォームを運用しています。
現在は、事業に関する各種資料や工事記録、現場写真などの情報を蓄積・共有を図っている段階です(図-2)。

図-2 事業管理プラットフォーム(鳴瀬川総合開発事業)
図-2 事業管理プラットフォーム(鳴瀬川総合開発事業)

 
また、整備局独自の取り組みとして「3次元情報活用モデル事業」を管内20事務所・29事業で行っており、新技術導入を加速化させるとともに、3次元データの “普段使い”の実践を図っているところです(図-3)。

図-3 3次元情報活用モデル事業
図-3 3次元情報活用モデル事業

 

(4) 東北インフラDX人材育成センター

発注者(自治体含む)および受注者に対する3次元データ・デジタル技術の知識習得(研修・実習など)を目的に2022年度末に「東北インフラDX人材育成センター」を開所しました。
DX人材育成センターは「人材育成機能」、「技術交流機能」、「情報発信機能」の3つの機能を兼ね備え、特に「人材育成機能」としては、3次元設計データトレーニング施設、除雪グレーダ・バックホウのシミュレーターブースなどを配置し、受発注者双方の集中的な技術向上および担い手確保に向けた体験などの取り組みを実施しています(図-4)。
 
2023年度の1年間で、研修やセミナー、体験会などで総勢約1,270名の利用がありました。
今後も人材育成センターを活用した研修・セミナーの高度化を図り整備局職員や自治体職員、民間企業の人材育成にもこれまで以上に取り組んでいきます。

図-4 東北インフラDX人材育成センター
図-4 東北インフラDX人材育成センター

 

(5) 官民連携した取り組み

整備局や東北6県、仙台市、建設業者団体、学識者で構成する「東北みらいDX・ i-Construction連絡調整会議」を2016年度から開催しています。
具体的な取り組みとして、地元企業における生産性向上の取り組みを支援するため「ICTサポーター制度」を創設し、2年間で約600件の活動実績がありました。
工事情報共有システム(ASP)や遠隔臨場、BIM/CIM・ICT建設機械施工用3次元データ作成、3次元計測技術などに関する技術支援や相談が多い状況となっています。
 
また、ICT施工導入の投資メリットを地元中小企業の企業経営者クラスの方に直接理解していただき、ICT施工活用の普及・拡大につなげることを目的に「地元経営者向けセミナー」を開催しています(写真-1)。
さらに、次世代を担う若手技術者の育 成に向けて、「i-Construction新技術体験学習会」を開催しており、2023年度は東北6県の中・高・大学生、延べ約500人を対象に実施し、3次元設計データ、VR・MR技術、遠隔臨場など建設業の最新技術に触れてもらっています(写真-2)。
今後も、官民連携した取り組みを継続・拡大させ、地域建設業のイメージアップと担い手確保へつなげていければと思います。

写真-1 地元経営者向けセミナー
写真-1 地元経営者向けセミナー
写真-2 i-Construction新技術体験型学習会
写真-2 i-Construction新技術体験型学習会

 
 

おわりに

インフラ分野のDXを推進し、受発注者双方の働き方を変革してデジタル技術を普段使いし、インフラまわりをスマートにしていくことで、いかなるときも地域住民の生活、社会活動、経済活動を支えるための環境を、インフラを通じて継続的に社会へ提供していくことが重要だと考えています。
 
東北地方整備局としては、今後も、生産性向上や働き方改革、担い手の育成・確保など、官民連携をさらに強化・充実させながら東北地域のインフラDXの取り組みを進めてまいります。
 
 
 

国土交通省 東北地方整備局 企画部

 
 
【出典】


建設ITガイド2025
建設ITガイド2025



近畿地方整備局におけるBIM/CIMの取り組み― BIM/CIM取り組み内容と人材育成について ―

2025年6月26日

はじめに

生産年齢人口の減少、災害の激甚化・頻発化、社会資本の老朽化という社会的背景を受け、生産性向上の取り組みをこれまで以上に加速することが必要となってきました。
そこで国土交通省は今後2040年度までに少なくとも省人化3割、すなわち1.5倍の生産性向上を目指す新たな取り組みを「i-Construction2.0」としてとりまとめ、省人化、持続的なインフラ整備、建設施工プロセスの自動化などを推進していくことを決定しました。
その取り組みにおいてBIM/CIMは必要不可欠な技術であり、今後も引き続き活用方法について検討いたします。
 
近畿地方整備局ではインフラDXをさらに推進していくため、2024年3月に個別施策の目指す姿、工程などを「近畿インフラDXアクションプログラム」(図-1)としてとりまとめました。
本稿では、アクションプログラムに策定した近畿地方整備局におけるBIM/CIMの取り組みについて紹介します。

図-1 近畿インフラ DX アクションプログラム
図-1 近畿インフラ DX アクションプログラム

 
 

BIM/CIMの取り組み

これまでは、紙図面や手作業により事業(調査・設計・測量、施工、維持・管理)を実施してきましたが、BIM/CIM(3次元モデル活用、DS(Data-Sharing )の実施)を活用することで、建設生産システムの効率化・高度化を図る取り組みを実施しています(図-2)。

図-2 BIM/CIM 活用の目指す姿
図-2 BIM/CIM 活用の目指す姿

 

BIM/CIM原則適用

2023年度より全ての詳細設計、工事でBIM/CIM原則適用となり、業務・工事で 3次元モデルの活用を推進しています。
3次元モデルについては、発注者が活用目的を明確にし、受注者がモデルを作成することで、業務・工事での活用を推進します。
 
BIM/CIMを有効に活用するためには、各段階での検討事項などをしっかりと次の工程に共有していくことが重要です。
「電子納品保管管理システム」を活用して受注者が希望する参考資料を発注者が速やかに貸与、DXデータセンターを活用して有償ソフトウエアを安価に利用できる仕組みの提供、事業全体にまたがる情報を地図上で検索・表示できるプロジェクト監理ツール(図-3)の試行運用(浪速国道:淀川左岸延伸部)、これらDSを実施することにより、将来の本格的なデータマネジメント実現に向けた第一歩として、発注者が受注者に確実に前段階のデータを共有できるよう取り組んでいます。

図-3 プロジェクト監理ツールイメージ
図-3 プロジェクト監理ツールイメージ

 

3次元データの活用

設計段階で構築された3次元モデルを活用し、ICT土工の工事発注時の効果的な活用手法を検討しています。
具体的には3次元モデルにリンクした2次元図面の抽出、工区分割後の概算数量の自動算定、さらには工事積算データへの変換などを検討しておりBIM/CIMモデル活用が進むことで、発注者としての工事発注の効率化、円滑化が期待できます。
 
近畿地方整備局のi-Constructionモデル事務所である豊岡河川国道事務所においては、台帳附図の代わりとなる3次元モデル(通称:豊岡モデル)の検討を行っています。
豊岡モデルは、将来の維持管理およびデータ一元管理を目的としています。
 
一般的な3次元モデルはデータ容量が大きく、高性能なPCなどの環境が必要だという課題がありますが、豊岡モデル(図-4)では現場で使いやすい3次元の線で構成される軽量な3次元モデル(Dラインデータ※)で作成しています。
またモデルを統合プラットフォームとして活用するために、点群・3Dラインデータと維持管理に必要な情報を納めたフォルダーを一元管理することで、3Dラインデータのモデル(橋梁など)をクリックすると、ひも付けられたフォルダーが立ち上がり、効率的に維持管理データを取得できるようモデル検討を進めています。
 
※3Dラインデータ:点群データのうち、橋梁・擁壁・法面などの道路施設を3次元の線データで表現し、データ容量を小さくしたもの

図-4 豊岡モデル
図-4 豊岡モデル

 
 

人材育成

近畿地方整備局では2020年に「近畿地方整備局インフラDX推進本部会議」を設置し、インフラ分野のDXの推進に取り組んでいます。
 
その中でインフラ分野のDXに関する人材育成として人材育成支援部会を設置し、ICT活用、無人化施工などと合わせてBIM/CIMに関する各種研修などを開催し人材育成に努めています。
 

BIM/CIM研修

BIM/CIMによる建設現場の生産性向上について理解を深めるとともに、3次元モデルの基本操作、業務および工事での活用に関する知識を習得することを目的として2022年度から整備局職員、地方自治体職員を対象として実施し、3年間で209名が研修を受講しています。
 
研修は近畿インフラDX推進センターに設置している高性能PCを用いて3次元モデルを操作し、実際に監督・検査・納品などの各場面での3次元モデルの活用方法を実習形式で習得しました。
 

BIM/CIM施工研修

BIM/CIMは、調査・設計段階から3次元モデルを導入し、その後の工事施工、維持管理の各段階においてもデータを引き継ぎ、さらに各段階での情報を付加し、後工程で活用することで建設分野の生産性向上を目指すものですが、現状として各段階での活用にとどまっており、次工程への引き継ぎが十分に行われていません。
 
近畿地方整備局では2022年度の試行を皮切りに、建設分野でBIM/CIMを取り扱う施工者、設計者、発注者を対象とした設計から施工へのデータ受け渡しに着眼した人材育成のための「BIM/CIM施工研修」を実施しています。
 
研修では設計段階で作成した設計成果(BIM/CIMモデル)をICT施工に活用するため、3次元モデルの編集方法を習得するとともに、設計者、施工者、発注者など各立場でのBIM/CIMの展望や課題について議論を行い認識の共有に取り組んでいます。
2024年度においては95名が研修を受講しました。
 
研修に参加した地域建設業の技術者からは、「設計データ作成の内製化によって生産性向上が期待できる」「発注者から提供された3DモデルがICT施工に活用できることが分かった」など好評を得ています。
 
 

おわりに

近畿地方整備局においては、今回紹介した取り組み以外にも、管内各事業におけるBIM/CIM活用推進、関連基準改定に向けた検討、3次元データ・デジタル技術を活用できる人材育成などに取り組んでいます。
 
今後もBIM/CIM活用に向けた取り組みを推進し、事業の各段階に3次元モデルを導入していくことで、建設生産システム一連における効率化・高度化を図り、品質確保とともに受発注者双方の生産性向上を実現していきます。

 
 
 

国土交通省 近畿地方整備局 企画部 技術管理課

 
 
【出典】


建設ITガイド2025
建設ITガイド2025



国土交通省におけるBIM/CIMの取り組みについて― i-Construction2.0「データ連携のオートメーション化」の実現に向けて ―

2025年6月23日

はじめに

BIM/CIMとは

BIM/CIM(Building/Construction Information Modeling, Management)とは、建設事業で取り扱う情報をデジタル化することにより、調査・測量・設計・施工・維持管理などの建設事業の各段階に携わる受発注者のデータ活用・共有を容易にし、建設事業全体における一連の建設生産・管理システムの効率化を図ることである。
情報共有の手段として、3次元モデル(3次元形状+属性情報)、点群データ、2次元図面、GISデータなどの各種のデータを使用する(図-1)。
 
国土交通省では、受発注者の生産性向上を目的に、直轄土木業務・工事にBIM/ CIMを適用し、取り組むこととしている。
本稿では、これまでのBIM/CIMの実施 状況、国土交通省が推進しているインフラ分野のDX・i-Construction2.0、およびこれらの実現に向けた最近のBIM/CIMの取り組みについて紹介する。

図-1 BIM/CIMで使用する主なデータ
図-1 BIM/CIMで使用する主なデータ

 
 

BIM/CIMの実施状況

これまでの実施状況

国土交通省では、業務については2012年度から、工事については2013年度からBIM/CIMの試行を進め、段階的にBIM/ CIM適用の対象を拡大してきた。
また2018年度には、i-Constructionモデル事務所を設置して、各地方整備局などのうちのリーディング事務所として先導的なBIM/CIMなどの取り組みを実施している(図-2)。

図-2 i-Constructionモデル事務所の取り組み
図-2 i-Constructionモデル事務所の取り組み

 

2023年度からのBIM/CIM原則適用

国土交通省では、2023年度から、原則として全ての直轄土木工事・業務において、BIM/CIMを適用している。
(1)原則適用では活用目的に応じた3次元モデルの作成・活用と、(2)DS(Data-Sharing)の実施にそれぞれ取り組むこととしている。
 
(1) 活用目的に応じた3次元モデルの作成・活用
業務・工事ごとに発注者が3次元モデルの活用内容を明確にした上で、受注者が3次元モデルを作成し、受発注者で活用する。
活用内容は「義務項目」「推奨項目」に分けて設定している。
 
義務項目については、出来上がり全体イメージの確認など、視覚化による効果を中心に未経験者でも取り組み可能なものとして内容を設定しており、全ての詳細設計で義務項目を活用することとしている。
また工事についても、過年度の詳細設計業務で作成された3次元モデルがあれば、施工ステップの確認、関係者の理解促進など、義務項目を活用することとしている(表-1、図-3)。

表-1 3次元モデルの活用 義務項目
表-1 3次元モデルの活用 義務項目
図-3 義務項目の例(出来あがり全体イメージの確認)
図-3 義務項目の例(出来あがり全体イメージの確認)

 
推奨項目については、3次元モデルによる解析などの高度な内容を含むものであり、業務・工事の特性に応じて活用することとしている(表-2、図-4)。
 
ただし、これらに限ることなく、生産性向上に資すると考えられるその他の活用内容についても、積極的に検討し実施に努めることとしている。
また、3次元モデルの作成に当たっては、活用内容を満たす必要十分な程度の範囲・精度で作成するものとし、活用内容以外の箇所の作成を受注者に求めないものとしている。

表-2 3次元モデルの活用 推奨項目の例
表-2 3次元モデルの活用 推奨項目の例
図-4 推奨項目の例(施工数量算出)
図-4 推奨項目の例(施工数量算出)

 
(2)DS(Data-Sharing)の実施
業務・工事の契約後速やかに、発注者が受注者に設計図書の作成の基となった情報を説明し、受注者が希望する参考資料(電子データを含む)を貸与する。
最新のデータを漏れなく後段階の受注者に確実に共有することは発注者の責務であり、貸与資料ダウンロードシステムによるオンラインでの成果品の貸与など、円滑にDSが実施できる環境を整えている。
 
 

インフラ分野のDX、i-Construction2.0とBIM/CIM

インフラ分野のDX(Digital-Transformation)

国土交通省では、インフラ分野においてデータとデジタル技術を活用して、国民のニーズを基に社会資本や公共サービスを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、文化・風土や働き方を変革することを目的として、インフラ分野のDXの取り組みを進めている。
インフラ分野のDXは、「インフラの作り方」「インフラの使い方」「データの活かし方」の変革を分野網羅的・組織横断的に進めることとしている。
これまで取り組みを進めてきたi-Construction、および今後取り組みを進めていくi-Construction2.0は、インフラ分野のDXで示す目指すべき将来像のうち、建設現場における取り組みであり、「インフラの作り方」の変革に位置付けられるものである。
 

i-Constructionからi-Construction 2.0へ

国土交通省では、2016年度から、建設現場の生産性向上の取り組みとして、ICT施工や設計・施工におけるデジタル技術の積極的な活用などの、i-Constructionを進めてきた。
 
一方で、今後さらなる生産年齢人口の減少が予測されており、かつ災害の激甚化・頻発化、社会資本の老朽化など、社会資本整備を取り巻く状況は厳しさを増している。
 
このような背景を踏まえて、2024年度から、これまで進めてきたi-Constructionの取り組みを深化し、さらなる抜本的な建設現場の省人化対策を「i-Construction 2.0」として、「施工のオートメーション化」「データ連携のオートメーション化」「施工管理のオートメーション化」に取り組むことで、建設現場のオートメーション化の実現を目指すこととなった(図-5)。

図-5 i-Construction 2.0 建設現場のオートメーション化
図-5 i-Construction 2.0 建設現場のオートメーション化

 
 

データ連携のオートメーション化に向けた取り組みについて

調査・測量、設計、施工、維持管理といった建設生産プロセス全体をデジタル化、3次元化し、必要な情報を必要な時に加工できる形式で容易に取得できる環境を構築するBIM/CIMにより「データ連携のオートメーション化」を推進する。
これにより同じデータを繰り返し手入力することをなくし、不要な調査や問い合わせ、復元作業を削減するとともに、資料を探す手間や待ち時間の削減を進める。
 
建設生産プロセスにおいて作成・取得するデータは多量にある一方、現時点ではデータを十分に活用できていないことから、各段階で必要な情報を整理した上で、関係者間で容易に共有できるよう、情報共有基盤を構築し、円滑なデータ連携を進める。
 
データの活用に当たっては、設計データを施工データとして直接活用することや、デジタルツインの構築による施工計画の効率化など、現場作業に関わる部分の効率化に加え、BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールなどの活用により、紙での書類は作成せず、データを可視化し、分析や判断ができるよう真の意味でのペーパーレス化(ASP(情報共有システム)の拡充といった現場データの活用による書類削減)など、バックオフィスの効率化の両面から進めていく。
 
データ連携のオートメーション化に向けて、国土交通省では現在次のようなBIM/ CIMの取り組みを進めている。
 

3次元モデルと2次元図面の整合

2023年度からBIM/CIM原則適用を開始し、3次元モデルの活用を本格的に開始しているものの、3次元モデルと2次元図面の整合性を確認していないことから、3次元モデルは参考資料として活用している。
 
将来的な3次元モデルの工事契約図書としての活用に向け、詳細設計業務において、主構造について3次元モデルと整合した2次元図面を作成する試行に着手している(図-6)。

図-6 3次元モデルと2次元図面の整合のイメージ
図-6 3次元モデルと2次元図面の整合のイメージ

 

属性情報の積算への活用(BIM/CIM積算)

今後、設計の効率化や施工の自動化を目指す上ではデータのさらなる活用が必要不可欠であるが、各段階において、どのようなデータが必要か明確に決まっていないため、データを効果的に活用できていない。
 
データのさらなる活用に向け、まずは必要なデータが明確になっている積算において、データの活用を進めることとしている。
詳細設計業務において、属性情報(3次元モデルから自動的に算出される数量)を積算に活用するBIM/CIM積算の試行にも着手している(図-7)。

図-7 RC橋脚のコンクリート躯体に積算に必要な属性情報を設定した例
図-7 RC橋脚のコンクリート躯体に積算に必要な属性情報を設定した例

 

設計データの施工での活用

設計データをICT建設機械や工場製作など、施工段階で活用する取り組みも進めている。
 
ICT建設機械での設計データ活用については、詳細設計業務において、ICT建設機械に搭載するデータの作成に必要となる、土工の中心線形と横断形状データを成果物として納品することとしている。
鋼橋の工場製作での設計データ活用については、鋼橋の設計は自動設計システムを活用して行われている一方、工場制作の際に使う自動原寸システムには図面から手入力しており、設計・施工間のデータ連携がスムーズに行われておらず非効率である。
設計データを工場制作に直接活用するため、2023年度から、中間ファイルを活用したデータ連携の試行工事を実施している(図-8)。
 
試行の結果、工場製作データの作成において1割弱の作業時間の短縮効果が確認されたが、いくつかの課題も判明し、それらに対応することでさらに3割程度以上の作業時間短縮が可能であるとの見通しが示されている(図-9)。
今後は、さらに試行を重ねて課題の対応に取り組むとともに、データ連携を推進するために、鋼橋の詳細設計業務において、自動設計のオリジナルデータ、中間ファイルなどを成果物として納品することとしている。

図-8 鋼橋のデータ連携の流れ
図-8 鋼橋のデータ連携の流れ
図-9 工場製作データ作成時間の比較
図-9 工場製作データ作成時間の比較

 

デジタルデータを活用した監督・検査などの実施

デジタル技術の進展は日進月歩で進んでおり、施工管理、監督・検査などにおいても、3次元モデルの活用やARなど、 i-Construction 2.0の柱のひとつである「データ連携のオートメーション化(ペーパーレス化)」につながるさまざまな技術が導入されている(図-10)。
 
このような新技術を積極的に活用し、監督・検査業務の効率化を進めるため、現行の基準・手法とは異なるが、デジタル技術を活用して簡素化・効率化などを図ることができる新たな施工管理、監督・検査の手法の活用について、施工者から提案があった場合は、従来方法との比較により監督・検査などに支障が生じないことを確認し、新たな手法の活用を可能とするよう、直轄土木工事の監督職員および業界団体向けに周知を行っている。

図-10 デジタルデータを活用した出来形検査の例(ARの活用)
図-10 デジタルデータを活用した出来形検査の例(ARの活用)

 

好事例の横展開

好事例の横展開を目的として、BIM/ CIMにより生産性が向上した事例を「BIM/CIM事例集」としてまとめ、BIM/ CIMポータルサイトに掲載している(図-11、12)。
 
事例の概要、BIM/CIMの具体的な方法と課題、業務・工事の概要について整理しており、キーワード検索などにより、探したい情報を検索できる。
掲載事例については今後拡充予定である。

図-11 BIM/CIM事例集 トップページ
図-11 BIM/CIM事例集 トップページ
図-12 BIM/CIM事例集 事例の閲覧
図-12 BIM/CIM事例集 事例の閲覧

 
 

おわりに

BIM/CIMは、i-Construction 2.0で掲げる「データ連携のオートメーション化」の中核となるものである。
今後は、BIM/CIMのいろいろな取り組みを進め、各段階間でのデータの連携・活用を図ることで、建設生産プロセスにおける各種作業の自動化、効率化を目指していきたい。
 
 
〈参考〉
・国土交通省BIM/CIM関連
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000037.html
・国土交通省 インフラ分野のDX
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000073.html
・i-Construction 2.0
https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/content/001738240.pdf
・BIM/CIM事例集
https://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/bimcimusecase.html
 
 
 

国土交通省 大臣官房参事官(イノベーション)グループ 課長補佐
髙橋 典晃

 
 
【出典】


建設ITガイド2025
建設ITガイド2025



設備BIMはエコを目標にしています

BIER(建築情報環境責任)

2024年9月、BIMのイベントへ参加するために、北極経由の航空機に搭乗しました。

 
グリーンランド海岸線を並走している際、窓から氷壁が見えました。
なんとなく見ていましたが、地球全体での気温の上昇、温室効果ガスによる影響があり、氷壁が減退しているとのことを思いながら、産業界としての役割の一部としてICT、DX、BIMなどのデジタルテクノロジーの果たす役割の一端が、あるのではないかと思っています。

 
「BIER(建設情報環境責任)」、ビルディングインフォメーションには環境に対して責任がある、という活動をしています。
具体的にどんな活動をしていますか?と問われることがあります。
 
基本的には「環境にやさしいことにつなげたい」と「災害を発生させる要因を少なくしたい」ということを大前提として、仕事のやり方を工夫することを通じて価値を作りたいという活動です。
 
何がエコなんですかと質問されたことがありました。
建設業の設計施工の手法でエコデザインという考えもありますね。
製品やサービスの生産から廃棄までのライフサイクル全体で環境への影響を低減する、適切な設計手法を確立することです(図-1)。

図-1 BSIサミット資料より
図-1 BSIサミット資料より

 
エコデザインを実現するには、次のような課題をクリアにする必要があると一般的には言われています。
 
①環境負荷が少ない材料を選ぶこと
②材料の使用方法使用量を減らすこと
③製造方法に対して最適な方法を選ぶこと
④効率が良い流通の経路を確保(物流トランスフォーメーションを効率化)すること
⑤環境負荷の影響を軽減する使い方(省エネルギーな運転)をすること
⑥製品の寿命を長くすること
 
もう一つ、エコという言葉に対してエコノミーということがあります。
経済的に優位に進めるということでしょうか、さまざまな活動を通しても、最後には経済を支えるマネーという指標で高い評価が得られるものではないといけないと思います。
遠回しに言いましたが金もうけがないとエコモ不安定と言う人もいます。
 
 

BIMを取り巻く現状

われわれ建設業において、ICTやDX、BIMを活用して環境に配慮しようという取り組みが盛んに行われています。
今一度その活動を振り返ってみると、本当に「BIER」はエコを達成しているのかという疑問も持ちながら活動しています。
 
国土交通省の建築BIM推進会議の目標は、BIMを推進することは一つのお題目ではありますが、日本という国全体が経済的に発展するという考えで建設業のICT、DX、BIMが活用・推進されなければなりません。
しかしながら、現在はBIMのために今までになかった追加の仕事が生じ、今までになかった労力が投入されているにもかかわらず、成果物として得られるものが今までと何ら変わらないと言う人もいます。
 
いわゆる通過点だから、現状の仕事の仕方を分析して、BIM環境で再現し、同じ仕事の方法、手順、役割をICT、DX、BIMで再現し、同等レベルの仕事量と経済的にエコになるように、そのリターンが同じになることをまず目指しているところでしょうか。
 
つまり、「BIMをやっている」というブランドを得るために行っているということです。
途中過程ではあるかもしれませんが、大きくエコに反している結果であると思っています。
BIM環境にしっかりと配慮された仕事の環境、エコなデザインやエコな仕事の仕方を実現するための方策として、本来の目標設定を定めたBIMが求められていると思います。
 
私はその中で、三つエコ環境費用対効果という観点で効率化をもたらす具体的なワークフローを提案できればと思っています。
 
 

BIMの新たなワークフロー

一つ目は、環境負荷のない材料を効率的に選ぶため、ライフサイクルアセスメント評価のプロセスにBIMデータを用いることです(図-2)。

図-2 BIMモデルデータ
図-2 BIMモデルデータ

 
言い換えれば、BIMによりデータの価値を作っていくことです。
建築モデルの構成は、建築資材のデジタル空間への描画です。
建設資材が複合的に配置されて、建築物が作られます(図-3)。

図-3 BSIサミット資料より
図-3 BSIサミット資料より

 
建築資材がどのようなもので、どこの製造者が作ったものか、空間としてどこに配置されるか…IFCやUniclassなどで分類されたことが、BIMオブジェクトと関連付けられます(図-4)。

図-4 プロジェクトデータ、設備、電気
図-4 プロジェクトデータ、設備、電気

 
BIMモデルオブジェクトにUniclassやIFCが関連付けられることで、LCAなどの環境評価テーブルに入力する項目名と数量単位などが均一に入力できます。
均一で信憑性の高いデータとして、標準的なBIMオーサリングツールから出力されたデータが、建築環境負荷の評価に活用するためにワークフローを整備、提案していきます(図-5)。

図-5 BIMデータパラメータ、マッピング
図-5 BIMデータパラメータ、マッピング

 
なお、信憑性の高いデータの値は、製造者から提供されています。
データの書式を整え、一定のルールで流通させることで、大きな効果を得られます、日本では周知段階ですが、欧州のグリーンディール政策の関連規制としてDPPというものがあります(図-6)。

図-6 BSIサミット資料より
図-6 BSIサミット資料より

 
つまり、工業製品はデジタルデータをある一定の書式でデータベースとして登録しなければなりません。
デジタルプロダクトパスポートという規制が厳格に実施されているのです。
これにより、BIMデータを活用して低炭素に貢献できる建設資材を選択していく、無駄のない性能を担保した建築設計を実施することに貢献することができます。
 
二つ目は、設備機器を選定する際のワークフローを最適化する検討をしています。
一つの目標としては、なぜこの機器が選ばれたかという設計の本質的な役割に対して、建築の空間情報と空間要件を連携させた空調機器選定システムを、BIMデータドリブンにより最適化することです。
 
まず、空間要件を計算します。
空調設計ではペリメータとインテリアで要件が異なります。
大空間で生産機器が局部的に大きな放熱を行うことがあり、パーシャル空調が必要な場合があります。
空間ということを定義してデータ連携を行うことが必要です(図-7)。

図-7
図-7

 
設備機器の最適運転を担保するには、セグメント内部の圧力を最適にする計算が必要です。
水系統の場合、搬送機器が運転する状態が変化します、台数運転、インバーターによる回転数を制御することで、運転の状態が変わります。
BIMモデルに配置されているオブジェクトの名前、性能、設置場所を正確に圧力計算に使うことで、配管の圧力内部の状態を把握し、最適な運転ができる設備機器を選定して設計していきます(図-8、9)。

図-8
図-8
図-9
図-9

 
搬送機器の選定を最適化することは、最適な動力を選択することです。
ダクトは断面積が大きく、ダクト搬送経路を最適化する、エンジニアとしての工夫があります。
最適なサイズ選定、局部的に抵抗が大きくならないような無駄のない断面計画が必要です(図-10)。

図-10
図-10

 
空間調整が効率的に行われるかで、エコに直結する機器選定が最適に行われるかということにつながります。
 
3次元の空間調整は干渉やメンテナンス空間の有無などの形状で判断できるエンジニアリングを行います。
BIMモデルドリブンの設計では、ダクト内の圧力を計算し、最適なダクト内部の風速を担保できる設計を行います(図-11)。

図-11
図-11

 
最適なということは、目的と場所によって要件が変わります。
コンサートホールに設置される換気設備のダクト内風速と、火災時の煙を排出する排煙設備では風速や振動、耐火に必要な要件が異なります(図-12)。

図-12
図-12

 
ダクト経路内部の圧力を簡易的に見えるようにするための、BIMデータを工夫する仕組みを通して、省電力、省資源、加えて無駄な作業を削減させることにデータを活用することでエコを目指しています(図-13)。

図-13
図-13

 
三つ目は、積算の効率化を目指しています。
現在BIMデータを使った積算や、先ほど紹介した技術計算においてもBIMデータが持つデータのありようをきちんと定義できていない現状が見受けられます。
 
建築積算においては、建築資材がどれだけの数があるのか、その材料は何なのか、どういう役割なのかということに対して、建設資機材の性能やメーカーの製造者などの情報や耐用年数など、いろいろな情報が必要です。
他にも位置情報が加わることによって施工手順も加味された積算数量を算出することが求められています(図-14)。

図-14 配管ユニット工法は有効
図-14 配管ユニット工法は有効

 
いわゆる労務費や仮設費、養生費、仮設の計画、建設プロセスは完成品としては発生しませんが、途中のプロセスをデジタルツインによる施工シミュレーションで再現して建設工事費用を算出することが求められています(図-15)。

図-15 空間予約することでライザーが実現
図-15 空間予約することでライザーが実現

 
建設資材、設備機材は建設後にも残りますが、途中のプロセスに対して建築BIM積算は、BIMデータドリブンとして予想の確からしさとして、計算される仕組みがあります。
そのプロセスにおいて、何がどこに設置されているのか、何をするための役割なのか、ということが明確な文法が必要であると思います(図-16)。

図-16 IDSの概念
図-16 IDSの概念

 
分類体系やIFCのclass分類など、いろいろな仕様策定団体が建設資材=製品として、どのような仕様なのかを定義しています。
この定義しているものをコンピューター環境で、目的に達成するような名前にマッピングする仕組みを検討しているところです(図-17)。

図-17 IFC-SG シンガポール属性マッピング
図-17 IFC-SG シンガポール属性マッピング

 
 

おわりに

情報要件を満足するデータのありようを定義して、オーサリングツールが要件を満たすデータをエクスポートするIDSという仕組みに注目が集まっています。
日本ではONESTRUCTIONのOpenAECで運用が始まっています。
 
データを使う段階で、解析ツール、シミュレーションツール、積算ツールに要件どおりのありようで渡せないため、モデルの効果がないと言われています。
使わないデータを時間かけて、費用をかけて作るプロセスが削減されれば、ライフサイクル全般でエコが達成されますね。
 
以上のように、効率化・エコな社会、地球環境に配慮した仕事の仕方を達成するべく行っているにもかかわらず、現在はBIMモデルを作ること自体が目標になっているのです。
BIMモデル自体を目標にしていると、何も効果がもたらされない、エコにもなってないということも鑑みながら、現在いろいろな部会や関係各位との共同作業でエコな体制を推進していることを紹介いたしました。
 
マネーの価値と、ブランディングという価値も合わせて、BIM活動を含むデジタル社会の成果を地球環境の健全化につなげる、エコ活動としていきたいと思っています。
目標と手段が混合している現状も踏まえ、エコという目標に対してBIMによる成果が大きく発揮されることになるように、関係各位のお力が使われることを願っています。
 
 
 

BIM BI(建築情報)ER(環境責任)の会
谷内 秀敬

 
 
【出典】


建設ITガイド2025
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