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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

NEXCO中日本におけるBIM/CIMの取り組み― i-Constructionの全面展開とBIM/CIM全面適用 —

2026.09.15

はじめに

中日本高速道路株式会社(以下、当社)が管理する高速道路は、2025年4月時点で総延長2,201kmにおよび、東名・名神高速道路を含め、老朽化が深刻な課題となっています。
さらに、建設業を取り巻く環境も急速に変化しており、人口減少や少子高齢化による労働力不足、働き方改革関連法案に起因する「2024年問題」による労働時間の制約、加えて老朽化に伴う維持管理業務の増加など、多くの課題に直面しています。
こうした状況に対応するためには、建設現場の生産性向上を図る「i-Construction」の推進が不可欠であり、従来の非効率な作業を削減し、必要な検討に注力できる体制の構築が求められます。
 
これらの課題に対応するべく、当社では2025年からBIM/CIMの全面適用を開始し、i-Constructionを全面展開しています。
 
本稿では、当社におけるi-ConstructionおよびBIM/CIMの導入目的や背景、具体的な取り組みについて詳述します。
 
 

i-Constructionの導入

当社では、2017年からCIMの導入を検討し、2020年に全社的な取り組みへと加速させるため、「i-Construction導入展開に向けた基本方針」を策定しました。
この基本方針では、i-Constructionモデル事務所(以下、モデル事務所)を定め、3次元モデルを活用した設計・施工、ICT工事、共通データ環境(以下、CDE)の導入を通じて、i-Constructionの在り方や必要となる基準などの検討を進めました。
 
2022年には、作成者による3次元モデルの品質にばらつきが生じないように「3次元モデル作成暫定要領」を制定し、構造物ごとの描画方法など、基本的な事項を定めました。
 
しかしながら、これまでの取り組みは、各工事単体での効率化にとどまり、調査から設計、施工・維持管理に至る一連の建設生産管理システムを効率化した取り組みとなっていないことが明らかとなりました。
この課題を解決するには、発注者が3次元モデルやCDEの具体的な活用目的を明確にすることが重要であると認識されました。
そこで当社におけるi-Constructionの基本方針として「ICT施工」「BIM/CIM」「遠隔臨場」の3本柱として取り組むことを明確に定め、2025年度からは、BIM/CIMを全社的に導入することで、調査から設計、施工、維持管理までの全てのプロセスにおいて建設生産システムの生産性向上を図り、魅力ある建設現場とすることを目指しています(図-1、2)。

図-1 i-Construction・BIM/CIM の検討経緯
図-1 i-Construction・BIM/CIM
の検討経緯
図-2 i-Construction とBIM/CIM の位置付け
図-2 i-Construction とBIM/CIM の位置付け

 
将来的には、現場施工のオートメーション化、データ連携のオートメーション化、施工管理のオートメーション化を推進し、建設現場の省人化につなげていきます。
 
 

モデル事務所での取り組み

モデル事務所の取り組みとして、これまでに13事務所で工事約50件、調査など約100件を試行してきました。
以下に主な取り組み事例を示します。
 

1.関係機関との協議における3次元モデルの活用

複雑な構造物に関する協議では、構造物を3次元モデルにすることで、さまざまな角度から完成形をイメージすることが可能となり、関係する機関の方々の理解度が向上しました。
 

2.施工計画段階での支障物確認

橋梁の吊り足場の設置に際し、交差する一般道の道路照明との干渉を3次元モデルで事前に確認し、施工計画段階で道路照明を避けた設計としたことで、工事途中での工法変更が不要となりました(図-3)。

図-3 3次元モデルでの支障物確認
図-3 3次元モデルでの支障物確認

 

3.施工計画の検討

複雑な作業工程となる床版取り替え工事において、3次元モデルを用いた4Dシミュレーションにより、時系列での作業工程を可視化。
関係者間での認識共有が進み、施工計画の検討・確認・作業工程の確認に活用し、安全かつ効率的な施工が実現しました(図-4)。

図-4 4Dシミュレーション
図-4 4Dシミュレーション

 

4.ICT-Full活用工事

大規模な盛り土工事である「新東名高速道路川西工事」では「ICT-Full活用工事」として、3次元モデルを活用した施工計画検討、マシンガイダンスを活用したICT土工に加え、クラウド環境を使用した受発注者間のデータ共有などi-Constructionの取り組みを推進。
人手作業の削減と作業効率・安全性の向上を達成しています。
 

5.3次元測量による効率化

急峻な地形での測量において、UAVによる3次元測量を実施。
広範囲のデータを短期間で取得でき、現地作業日は従来比で73%減少。
内業は従来手法の3倍と増加したものの、全体工程では、約2割の削減を達成しました(図-5)。

図-5 3次元測量による効率化
図-5 3次元測量による効率化

 
これらの取り組みの結果、業務の効率化が進む一方で、以下の三つの課題が見えてきました。
 
1)3次元モデルに対する理解度や期待値に個人差があり、目指すべき方向性に認識のずれが生じている。
2)設計・工事など個別業務での効率化や高度化にとどまり、調査・設計から施工に至る一連の建設生産管理システムの生産性向上につながっていない。
3)3次元モデルの作成方法やCDEの使い方について、個人差が大きく、効率化に結びついていない。
 
これらの課題の根本原因は、BIM/CIMの導入に際して、目指すべき方向性が明確に示されていないことがあると考えられます。
そこで、まずはBIM/CIMの導入において目指すべき方向性を明確に提示し、その上で全面的な適用に向けた方針を策定する必要があります。
 
各課題への対応に当たっては、社内での展開を考慮し、業務の進め方に即した標準化を推進する方針の下、以下の取り組みを進めることとしました。
 
1)社内における3次元モデルに対する理解度を向上させ、過度な期待に対し具体的な目標を提示する。
2)後工程への連携を考慮した最低限実施すべき事項を定める。
3)3次元モデルの作成方法の標準化やCDEの使い方などの共通ルールの策定を行う。
 
目標設定に当たり、現在の技術から想定しうる効率化・高度化・省人化に向けたプロセスを設定しました(図-6)。
その一部を具体化したものを図-7に示します。

図-6 効率化・高度化・省人化の取り組み
図-6 効率化・高度化・省人化の取り組み
図-7 事業プロセスごとの到達イメージ
図-7 事業プロセスごとの到達イメージ

 
高度化・省人化における取り組みとして、例えば、AIによる自動設計なども考えられますが、一足飛びに省人化を達成することは困難と考え、2025年度からは「高度化」「省人化」を見据えつつ、現行の業務プロセスを大きく変えることなく、「効率化」を主眼に取り組みを進めていく計画としました。
 
 

2025年度全面展開の取り組み

将来的にBIM/CIMで高度化・省人化を進めるためにも、以下の三つの基礎的な事項に取り組むこととし、これらの取り組み内容は、要領・基準類への反映を行いました。
 

1.情報のデジタル化

これまでの紙媒体の情報をデジタルデータとして受発注者間で授受することで、閲覧、保管、検索に要する時間や労力の削減を図ります。
打合せはペーパーレスで実施し、現場など社外環境においても、場所を問わず打合せ・協議が可能となることで、受発注者双方が働き方の柔軟性が高まり、業務の効率化が進みます(図-8)。

図-8 情報のデジタル化
図-8 情報のデジタル化

 

2.3次元モデルの作成と活用

調査、測量、設計、施工の各段階において3次元モデルを作成し、現場イメージや構造物の完成形を可視化します。
これにより、受発注者および関係者の合意形成や課題解決を円滑に進めることが可能となります。
各段階で作成した3次元モデルは、後工程に引き継ぎ、統合していくことで、業務間でのデータ連携を図ります(図-9)。
図-9 3次元モデルの作成と活用
図-9 3次元モデルの作成と活用
 

3.共通データ環境の利用

3次元モデルを含むデジタルデータを共通データ環境(CDE)に保存します。
これにより、受発注者間で工事など関係書類や3次元モデルを容易に授受できる状態にします(図-10)。

図-10 共通データ環境の利用
図-10 共通データ環境の利用 
図-11 事業プロセスごとの到達イメージ
図-11 事業プロセスごとの到達イメージ

 
これらの取り組みを標準化するために図-12のとおり各種要領やマニュアルを整備し、当社ホームページにて公表しています。
 
「BIM/CIM実施要領」では、発注者が行うBIM/CIMの取り組みに加え、受注者が実施すべき内容についても言及しており、特に3次元モデルについては、作成するだけではなく、活用することの重要性に着目し、各段階における活用項目を明記しています。

図-12 各種要領およびマニュアル
図-12 各種要領およびマニュアル

 

1.協議や打合せでの活用

3次元モデルを関係機関との協議や受発注者間の打合せに活用することで、完成形のイメージを容易に把握・共有することが可能となります(図-13)。
これにより、受発注者間はもとより地元住民や警察などの関係者協議においても、従来時間を要していた協議の円滑化が期待されます。
また、現場や2次元図面に不慣れな若年層社員にとっても、3次元モデルを用いることで現場状況の把握が容易となり、2次元図面を用いる場合と比べて理解が深まりやすくなります。
これにより、現場経験の有無に関わらず業務を円滑に進めることができ、若年層社員の育成にも寄与します。

図-13 受発注者での打合せ活用事業プロセス毎の到達イメージ
図-13 受発注者での打合せ活用事業プロセス毎の到達イメージ

 

2.3次元モデルを用いた現地状況と設計の不整合の確認

設計段階で作成した構造物モデルを、地形モデルや地質・土質モデルなどの現地条件を表すモデルと統合することで、現地状況と設計結果を重ね合わせて確認することが可能となります(図-14、15)。
これにより、現地地形と構造物との取り合いや、支持地盤と基礎の取り合いなどの確認に要する労力を3次元モデルの活用によって大幅に削減することができます。

図-14 地形モデルと構造物モデルの重ね合わせ
図-14 地形モデルと構造物モデルの重ね合わせ
図-15 地質・土質モデルと構造物モデルの重ね合わせ
図-15 地質・土質モデルと構造物モデルの重ね合わせ

 

3.CDEを用いたデータ共有

受発注者での打合せや資料の事前共有をCDEで行うことで、データの管理の面で効率化が図られ、受発注とのコミュニケーションが円滑になります。
CDEを活用することで、常に最新の資料を双方で確認でき、これまでメールやファイル転送システム、物理ストレージなどに分散していたデータを一元的に管理することが可能となります。
また、手書きで記載していた資料の修正依頼や修正箇所の確認・管理も、CDE上で完結できるため、データ確認・検索・修正・管理に係る労力の削減が期待されます。
 
 

おわりに

2025年度からBIM/CIM全面適用を行うため、取り組み方針を定めた上で、標準化・ルール化の一環として、各種要領や基準類を整備しました。
 
しかし、要領や基準の制定だけでは、BIM/CIMの取り組みは進みません。
受発注者双方におけるBIM/CIMに関する理解度の向上、ツールの適切な利用、そして、既存の業務の進め方を見直し「BIM/CIMを中心とした効率的な働き方へ変えていく」というマインドチェンジが不可欠です。
 
そのためにも、関係者に向けた説明会や研修を手厚く、かつ継続的に行っていくことが重要だと考えています。
 
 
【参考】
本稿の詳細については、中日本高速道路(株)ホームページなどを参照いただければ幸いです。
BIM/CIM関係要領・マニュアル https://contract.c-nexco.co.jp/point/technical_standard/
 
 
 

中日本高速道路株式会社 技術本部 環境・技術企画部 環境・技術企画課 課長代理
長濱 正憲
係長
後藤 滉治

 
 
【出典】


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最終更新日:2026-09-15

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