書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。
地方発!i-construction2.0自動化施工への挑戦― Automatic-Construction-Project始動!—
2026.08.25地方中小企業の挑戦
国土交通省が2016年度(平成28年度)から開始した「i-construction」であるが、早いもので10年目を迎える。
2025年現在「i-construction2.0」も普及期を迎え、全国各地で自動化施工や遠隔操作による土木工事の取り組みが活発化している。
このような時代背景の中で、私たち中小企業は「社会的パフォーマンス」を目的とした取り組みではなく、生産性向上という実質的価値を見いだせる技術検証に取り組んでいくことが肝要と考えている。
本年度を「自動化施工への挑戦の年」と位置付け、会社一丸となって取り組むプロジェクト―その名も「Automatic-Construction-Projectオートマチック・コンストラクション・プロジェクト)」を始動した(図-1)。
オートメーション化とオートマチック活用
i-Construction 2.0施策の3本柱のひとつである「施工のオートメーション化」は工事全体のプロセスを自動化することを意味する。
しかし、いきなりオートメーション化を目指すことは中小企業にとって予算的に困難な道である。
まずはオートマチック機能を備えた機械を活用し、部分的な自動化を段階的に進めることが肝要ではないかと考える。
私たちは日常生活の中でも、既に多くの「自動装置」オートマチック機に囲まれて生活している。
例として1980年代~1990年代に急速に普及し、主流となったオートマチック自動車がある。
自動ドアや自販機なども同様に人々の暮らしを快適にしてきた。
これらは部分的な自動機能ではあるが、建設業界もこうした「オートマチック機能」の集合体がやがて全体最適化され建設現場のオートメーション化へと進化していくと考えられる。
私たちはこうした技術を積極的かつ段階的に導入し、生産性向上を図ることが将来的なオートメーション化への一歩になると確信している(図-2)。
遠隔操作と自動化施工の相違点
最近、「遠隔操作施工」と「自動化施工」の相違点や、どちらが「無人化施工」なのかと質問を受けることがある。
私の答えはこうだ。
“どちらも無人化施工だが目的が異なる”
●遠隔操作施工…安全性重視
災害現場や危険な場所など人が立ち入れない場所での工事を可能にする技術。
●自動化施工…生産性重視(省人化)
安全性を確保しつつ限られた人数で施工が可能となる技術。
2年越しに実現した自動化施工
約2年前、私が担当した道路改良工事における残土処理場整備工事において自動化施工の導入を検討した時期があった。
当時は自動化装置の技術面と調達面の両方で折り合いが付かず導入を断念してしまったが、今回、民間の宅地造成工事のタイミングで自動化施工を2年越しに実現できる機会が巡ってきた。
現場は、掘削高10m掘削量V=38,530m3規模の宅地造成工事で、図-3のように地山掘削・中継・積込という工程で重機を同時稼働する必要があり、油圧ショベル3台で工事を進めることとしていた(図-3、4)。
本来なら3名のオペレーターが必要だが、中継作業の自動化で1名削減し2名体制へとチャレンジした。
私の脳内で想像していた作業形態を生成AIで制作したイメージイラストが図-4である。
※画像中央の黄色の重機が自動化施工の重機
油圧ショベルRXヨイショ投入くん
2年前に導入を検討していた自動化施工メーカーであるARAV(株)が新たにリリースしたもので、自動投入作業をソリューションとして開発された油圧ショベル「RXヨイショ投入くん」を導入した(図-5)。
この機械は、振るい分け機などへの土砂投入をソリューションとして開発された自動作業装置であるが、図-5のように山になった土砂の形状をLiDARで認識し、最適位置から土砂を自動ですくい取ることができる(図-6、7)。
しかし造成現場の形状は不規則形状をなしているため、図-6のようになるとは限らない。
うまく動作してくれるか不安があったが「現場の状況に合わせた動作プログラムを現地カスタマイズすれば、土砂の中継作業も可能ではないか」とのARAV(株)の見解を得たことでやってみる価値ありとの考えに至り導入を決めた。
なお、国土交通省の自動施工における安全ルールVer1.0の基準に準拠した技術であることを付け加える。
3つのチャレンジ
今回の自動化施工におけるチャレンジメニューとして以下の項目について検証を行った。
1.掘削土砂中継動作における実践的有用性
2.生産性向上効果(省人化)
3.災害時における遠隔操作対応力
※特に軽装備による迅速な対応力を確認。
掘削土砂中継動作における実践的有用性
結果から言うと、当現場での地形形状を加味した動作となるようにカスタマイズされた自動化油圧ショベルは、期待を上回る成果を発揮した。
以下、私の所感を記載する。
①自動運転中は無休で稼働するので、低効率を作業時間で補え、人と同程度の成果を発揮。
②規則的な動作により周囲の有人機オペレーターが動きを合わせやすく安全性が高い。
③有人機に搭乗しながら同時運用が可能。
資格取得後3年の経験を持つ女性オペレーターが、ダンプへの土砂積み込み作業をしながら自動化施工機械の運用ができた。
1人で2台稼働(二刀流)が実現(図-8、9)。
生産性向上効果(省人化)
土砂の中継作業に特化した運用での検証。
国土交通省は2040年度までに、建設現場の省人化を3割(30%)進めることを目標としている。
今回の効果を簡単な計算で算出した。
1カ月(30日)実働20日での検証。
20日間×3名=60名→20日間×2名=40名
20名削減で約30%の省人化を達成。
弊社の工事社員は全員が有資格者で、余すことなく各地に配属されており1名の削減効果は大きい。
削減された1名のオペレーターと油圧ショベルで下請工事を受注できることも期待でき人的リソースの最適化という面で効果が大きい。
災害時における遠隔操作対応力
今回の自動化施工機は遠隔操作にも対応したスペシャルマシンである。
災害発生時の遠隔操作による実践活用を想定した検証を行った。
災害時の即時対応性は非常に大切なことで、装備面が大がかりでは対応に時間を要する。
今回は特に軽装備で対応できるかを検証すべく、タブレットとゲームコントローラを用意。
ゲーム世代にとってはとても手になじんだ操作感で、個人的には非常にやりやすいと感じた(図-10)。
自動化施工のナレッジシェア
省人化を目的に自動化施工に取り組んできたが、自社のみで知見を蓄積しても効果は限定的だ。
地域の建設業者や建機レンタル会社など、自動化施工に関するナレッジシェア(知見共有)を進め業界全体の生産性向上を目指すことこそ真の波及効果につながると考え現場見学会を複数回開催した。
参加者都合に合わせ、少人数制かつ期間開催方式を採用。
8月17日から9月15日までの期で、全10回開催に至り19団体+個人1名を含む計63名の参加を得た。
参加者は、建設業、建機レンタル、官公庁、建機メーカー、学生など多岐にわたり、SNSを通じて埼玉県や高知県からの参加もあり好評をいただいた(図-11)。
おわりに
長期使用したことで新たに判明したいくつかの課題はメーカーにフィードバックを行った。
既に解決に向かって改良が進行しているらしく、改良された新型が世に出る日が楽しみである。
有益な自動化技術を生み出してくれたARAV(株)、「i-construction2.0」という未来志向の政策を推進する国土交通省に深く感謝したい。
建設業の未来は確実に夢のある産業へと進化している。
この挑戦が次代の建設人を惹きつける一助となることを願っている。
何歳になっても夢を語れる大人であり続けるため、さらなる挑戦に挑む決意である(図-12)。
【出典】
最終更新日:2026-08-25
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