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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

i-Constructionのための3次元設計データ交換標準

2017年5月2日

 

はじめに

国土交通省では、「ICTの全面的な活用(ICT土工)」等の施策を建設現場に導入する取り組みであるi-Constructionを進めている。これまで、情報化施工で利用するために施工段階で3次元データを作成してきたが、i-Constructionでは、調査・設計段階で作成した3次元データを施工、検査、維持管理等のあらゆる建設生産プロセスで活用し、土工における抜本的な生産性の向上を図ることを目指している。
 
施工段階では、MC・MG(MachineControl・Machine Guidance)やTS(Total Station)を用いた出来形管理などの3次元データを用いた情報化施工技術が一般化し、定着しつつある。また、測量・設計段階ではCIM(Construction Information Modeling/Management)の取り組みが加速しており、UAV(Unmanned AerialVehicle)や地上レーザスキャナー等を用いた3次元測量、構造物同士の干渉チェック、景観検討や関係者協議のための3次元設計等が行われている。
 
こうした背景を踏まえて、i-Constructionでは、建設生産プロセスの各段階で個別に取り組んできたこれらの3次元データを建設生産プロセス内で積極的に流通させ、各段階の業務で横断的に活用していくことを目指している。しかし、現状の測量・設計段階と施工段階では、3次元データを取り扱うシステムが異なりデータの互換性がないことから、横断的な活用は容易ではない。測量・設計段階で作成した3次元データを施工段階で利用するためには、建設生産プロセス全体での利用を念頭に置いたi-Constructionのための3次元設計データ標準を定める必要がある。ここでは、国土交通省が平成28 年3月から新たに導入した15の新基準および積算基準の1つである「LandXML1.2 に準じた3 次元設計データ交換標準(以下、「データ交換標準」という)」と、その「運用ガイドライン」の概要を紹介する。
 

LandXML1.2に準じた3次元設計データ交換標準の概要

LandXML1.2は、土木・測量業界におけるオープンなデータ交換フォーマットとして米国にて提起された、国内外で多数のCADやソフトウェアに対応したデータ形式である。データ交換標準は、表-1に示すLandXML1.2を構成する要素から8 種類を用いて道路分野および河川分野におけるICT土工で必要な3次元形状を表現する。
 

表-1 LandXML1.2の主な要素と内容




 
 
3次元形状をコンピュータ上で表現する主な方法としては、「ワイヤーフレームモデル」、「サーフェスモデル」、「ソリッドモデル」の3つがある。このうちデータ交換標準では、道路中心線形や横断形状を組み合わせた、ワイヤーフレームモデルの一種である3次元の骨組み形状モデル(以下、スケルトンモデルという)および道路形状や地形等を面で表したサーフェスモデルを対象としている。そこで、データ交換標準では、i-Constructionのための納品要領として道路設計で作成するスケルトンモデルとサーフェスモデルを規定した(図- 1)。
 

図-1 スケルトンモデルとサーフェスモデル




 
 
スケルトンモデルは、道路中心線形と横断形状を組み合わせたモデルで、3次元形状を表現するための設計情報(設計パラメータ)を持つ。そのため、設計変更の際には変更箇所の設計情報を修正すれば、修正結果を基に全体の3次元形状を表現できる。このことから、施工段階で設計変更が生じても、データの修正が容易であり、施工者への負担が最小限になると考えられる。一方、サーフェスモデルは、表面の3次元データで、可視化した時に立体的な形状となる。また、i-Constructionでは、3 次元数量算出や点群データの出来形管理に用いるデータとなる。ただし、設計変更の際には変更箇所を含めたモデル全体の作り直しが必要となるため、サーフェスデータを直接修正するのではなく、スケルトンモデルでデータ修正を行い、スケルトンモデルからサーフェスモデルに変換することが合理的と考えられる。
 
LandXML1.2は、米国で提案された道路の3次元モデルであるため、わが国の道路設計に当てはめて考えた場合、標準のLandXML1.2 のままでは不足する属性情報がある。例えば、測点が線形の開始点からの累加距離でしか扱えず、わが国で一般的な測点番号と追加距離を組み合わせた表現ができないこと、横断設計の基準となる標準横断面が規定できないことや、横断設計を行った管理断面を設定する情報がないこと等がある。LandXML1.2に定義されていない情報をモデル化する場合、LandXML1.2に用意されたユーザ定義の属性情報(Feature要素)を利用することができる。そこで、わが国の道路設計に合わせ、不足する情報はユーザ定義の属性情報を用いて追加した。また、道路を構成する要素名といった属性についても、システムによって異なることのないように、標準的な属性情報を規定した。
 
データ交換標準は、主にCADベンダー向けとしてXML形式のデータ構造とそれを解説した資料であり、CADベンダーはデータ交換標準を参照してソフトウェアを開発することになる。そのため、CADオペレーターはデータ交換標準で規定したデータ構造の詳細を理解する必要がなく、次に説明する運用ガイドラインを参照してデータ作成を行うことになる。
 
 

LandXML1.2に準じた3次元設計データ交換標準の運用ガイドライン

データ交換標準の運用ガイドラインは、データ交換標準に基づいた3次元データの作成・流通などの運用を規定した資料である。運用ガイドラインの内容を図-2に示す。
 

図-2 運用ガイドラインの目次構成




 
 
図で示すように、運用ガイドラインでは、適用する事業、3次元設計データの作成範囲や作成方法、照査方法、電子納品、工事発注時の取り扱いなど、具体的な事業フェーズでの運用を規定した。これらの内容について以下に説明する。
 
(1)適用する事業
 
適用する事業では、ICT土工が対象とする工事の設計業務に適用することを記載している。具体的には道路、築堤、護岸の予備設計および詳細設計に適用する。
 
(2)3次元設計データの作成範囲、作成方法
 
3次元設計データの作成範囲では、利用目的に応じて適切なモデルが作成できるよう作成範囲を記載している。スケルトンモデルの作成範囲は、情報化施工での利用を想定し、道路では道路中心線、横断形状、舗装のそれぞれのデータを、河川では堤防法線、横断形状のデータを、地形では縦断地形線、横断地形線を作成する(図-3)。
 

図-3 完成形および土工工事段階の横断形状(道路面、路体面の例)




 
 
また、道路の横断形状では、完成形の横断形状だけでなく、路床面、路体面の土工工事の完成形も合わせて作成する(図-4)。
 

図-4 完成形および土工工事段階の横断形状(道路面、路体面の例)




 
 
さらに、横断面を作成する位置が3次元モデルの精度に影響することから、測点間隔20mごとの管理断面、線形の変化点、道路の幅員、横断勾配の変化点、法面形状の変化点で横断面を作成することを運用ガイドラインで規定した。また、法面形状は地形とのすり付けや構成物の接続に関連して横断勾配の変化点が多数発生することから、対応する盛土と切土の境界、構造物との接合部での横断面の作成を規定した。しかし、地形とのすり付けで法面の段数が変わるような断面変化点では、設計段階で段数を特定できないため、設計段階では想定される最大段数の法面で横断形状を設計し、施工段階でデータを修正し完成する方針とした。
 
(3)照査方法
 
照査方法では、3次元モデルが正しく作成されているかを照査するために以下の2つの方法を記載した。
 
●3次元設計データを3次元ビューアで表示し外観を目視確認
●2次元の設計図書や線形計算書と照合して確認
 
前者は、作成した3次元モデルが全体として正しくできているかを確認するためのものである。この確認方法では、ビューポイントを変えながら3次元ビューアで表示し、3次元モデル全体をパソコン画面上で目視確認する。また、後者は、3次元モデルを構成する要素の寸法や基準高等の細部を確認するためのものである。この確認方法では、3次元設計データの中心線形や横断面と設計図書(平面図、縦断図、横断図等)や線形計算書の数値とを照合して確認する。これらの照査は、施工段階でもデータ交換標準を修正した際には実施することが、正しいデータを流通する上で肝要である。
 
(4)電子納品
 
電子納品では、納品する電子データの種類、電子媒体への格納、ファイル名を規定している。納品する電子データは、3次元設計データの他、設計照査で確認した3 次元の画像データ、および設計照査のチェックシートを納品する。また、電子媒体への格納は、平成29年2月現在では、平成28年3月に改定した土木設計業務等の電子納品要領に従いICONフォルダに格納する。
 
(5)工事発注時の取り扱い
 
工事発注時の取り扱いでは、設計段階で作成した3次元設計データは、貸与資料として、契約図書の2次元図面とともに施工業者に貸与するものとした(図- 5)。
 

図-5 設計から施工への3次元データの流通イメージ




 
 

おわりに

 
i-Constructionの発表に伴い、国や地方公共団体等の発注者はもとより、ゼネコンやコンサルタント等の受注者も含めてICTの活用により土工における業務のあり方が大きく変化してきている。本稿で紹介したデータ交換標準やその運用ガイドラインに従い、建設生産プロセス全体で共通した3次元設計データが電子納品されることで、データ作成の効率化や入力ミスの防止、生産性の向上が期待されている。平成28年11月現在では、道路土工の設計や施工を利用場面としたソフトウェアベンダー等の8社から本成果へ対応したソフトウェア20種が公開されており、実際の建設生産サイクルへの導入が試行され始めている。この動きは今後、CIMの取り組みと合わせ、建設生産システムの全体を通して活発になっていくと考えられる。また、ICTの適用範囲が拡大するとともに、建設生産システムに関わるあらゆるプロセス、あらゆる現場で、当たり前のように3次元データが活用される時代が間もなくやってくると考えられる。
 
現在、土木業界は大きな変革の中にある。国総研では、今後、データ交換標準に則った機械的なチェックによるデータ信頼性を確保するための検討や、3次元設計データの利用を前提とした3次元数量算出の可能性について検討を進めるなど、データの標準化や基準類の整備等に向けた検討を進めていく予定である。
 
 
 

国土交通省 国土技術政策総合研究所
社会資本マネジメント研究センター 社会資本情報基盤研究室(現 同 土佐国道事務所 工務課長

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2017
特集1「i-Construction時代の到来とCIM」



 
 



 


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