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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

実録!土木現場におけるタブレット活用《後編》

2015年4月27日

株式会社 大本組
浅賀 泰夫

 

iPadでCADデータを扱う

現場や発注者事務所などで打合せを行っていると、現場における平面的な距離を知りたい時がある。
iPadのアプリにもCADファイルを開くことのできるアプリが複数あるため、こんな時に便利に使うことができる(図-5)
 

図-5 CAD上で距離を測定

図-5 CAD上で距離を測定

 
当現場ではインテリジャパン社製のフリーアプリ「IJCAD」を使用している。
当社ではAutoCADが標準ソフトとして配布されているが、この「IJCAD」はAutoCADファイルと完全互換なので、
開くことも編集後に保存することもできる。
もちろんオートデスク社からもiPad用のアプリが用意されているが、アプリを比較し、動作と使用感から、導入アプリを決定した。
 
「IJCAD」でファイルを開く場合、残念ながら直接現場事務所のサーバーを見に行くことができないため、
前述したサーバーアクセスアプリを経由してファイルをダウンロードしてから「IJCAD」に受け渡して開いている。
一度開いたファイルはiPad本体に保存することも可能だ。
iPad用アプリでは、寸法採りはもちろん、簡易な編集機能も備えているうえ、3Dにも対応している。
 
 

3Dモデルを「Google Earth」に表示して、完成形をイメージ

最近は、3Dモデルを作成している現場も増えていることだろう。
3DモデルをiPadで表示することにより、もっと施工に役立たせることができる。
 
現場では、2D上の紙に書かれている複数の図面を頭の中でひとつに組み合わせていることは言うまでもないが、
人それぞれの頭で浮かべた3Dイメージは見ることもできないし、
複数人がイメージすれば、同じものでも異なってイメージしている場合もある。
そんな今までの現場でのわだかまりを払拭することが可能になるのが、3Dモデルである。
 
当現場では、まず3Dの完成モデルを座標や標高に従い作成した。
これにより、橋脚の形状や特徴、杭の形状や深さなど、複数の図面を見なければならなかったものが、
ひとつのモデルで全て確認することができるようになる。
橋脚を並べることにより、特徴を一目で紹介することもできる(図-6)
 

図-6 杭も含めた橋脚の3Dモデル

図-6 杭も含めた橋脚の3Dモデル

 
また、地図上にモデルを配置することで、よりリアルな完成形を確認することが可能だ。
現場が地盤情報の少ない地方なこともあり、今回はGoogle社から無料で提供されている「Google Earth」を使用して、
モデルを配置してみた(図-7)
 

図-7 「Google Earth」に配置した3Dモデル

図-7 「Google Earth」に配置した3Dモデル

 
既設の構造物(当現場では既設高速道路)との離隔が少ないことが一目で分かり、
施工ヤードを考えると、さまざまな問題点が見えてくる。
複数の人で問題点を話し合うときも、同じイメージで話をすることができ、
他人が取り上げた問題点もモデルと合わせると共通認識を時間かけずに持つことができる。
 
さらに、自分のいるところからの完成イメージを表示することが可能なため、AR(拡張現実)的な使い方をすることもできる(図-8)
 

図-8 高速道路走行車から見たモデル

図-8 高速道路走行車から見たモデル

 
「Google Earth」では、ARの機能がないため、手動での表示設定が必要だが、
AR機能を備えたアプリであれば、iPadのカメラで映し出された現実の映像の上に3Dモデルが重なり、
iPadの移動や向ける方向によって、完成イメージをよりリアルに確認することができる。
初めて現場を見る人には、図面などの設計図書を見ることなく、現場のイメージを瞬時に確認することができる。
もちろん新規入場者教育資料としても有効だ。
 
 

キーボードを利用して、その場で議事録を作成

iPadのスクリーンキーボードで文字を素早く入力するには限界があるが、外付けキーボードを使用することにより、
会議や打合せを行いながら、その場で議事録やメモを作成することが可能となる。
 

図-9 外付けキーボード

図-9 外付けキーボード

 
外付けキーボードには、私が購入したはめ込み式のスタンドの他、
スタンドが別になっているタイプなどさまざまなスタイルが販売されている。
本体とはBluetoothで接続され、バッテリーが内蔵されているタイプがほとんどなため、
接続ケーブルや電源コードなどが必要になることはない。
キーボードのバッテリーもmicroUSBケーブルで充電できるタイプが多く、
使用状況にもよるが、数日間の使用にも耐えられる。
 
さらに、iOS8 からは、別の日本語変換アプリを組み込むことが可能となったため、
日本語変換で有名なATOKを導入することにより、ストレスのない日本語入力が可能となった。
 
 

現場で使いやすいスタイル

 

図-10 iPadの破損

図-10 iPadの破損

 
今までアプリの話をしてきたが、過酷な建設現場で使用するには、やはりカバーの利用が不可欠だろう。
iPad用のカバーも無数に登場しているが、現場に出て何度も使うことがあるなら、太めの肩ひもがついて、
背中に回せられるタイプが便利だ。
使用するときに背中から回して、そのまま開くことができる。
 
ここでは、大成建設が開発した「Field Pad オリジナルiPadケース」を写真に挙げているが、
同様な対応は他社からも発売されているので、好みに合ったものを選ぶとよい(図-11)
 

図-11 使いたいときに回せて便利なiPadケース

図-11 使いたいときに回せて便利なiPadケース

 
5,000円程度から1万円ちょっとといったところが相場となっている。
他では、LIFEPROOF社の「iPad Air frēCase」を使用している。
このタイプは、ガラス面にビニールシートが来ないため、閲覧性や操作性に優れている。
ガラス面の脇に密着することで防水性を保っているため、ガラス保護シートを貼り付けると、防水性に問題が生じる(図-12)
 

図-12 液晶面が露出される防水ケース

図-12 液晶面が露出される防水ケース

 
現場でも使用するが、現場事務所や発注者事務所などでの利用が多い場合は、Apple社純正のカバーなどスマートなものでもよい。
私の場合、防水のワンショルダーバッグにiPadをしまい、必要な時にだけ取り出して使用している(図-13)
現場での使用頻度を見ながらケースを変えていこうと思っている。
 

図-13 ワンショルダーバッグに収納したiPad

図-13 ワンショルダーバッグに収納したiPad

 
現場での操作にはタッチペンがあると意外と便利に利用できる。
最近ではスマートデバイスを操作することができる手袋や軍手が登場しているが、
タッチペンを使用した方が確実な操作を行うことができる。
タッチペンにもさまざまなものが登場しているが、大事に使うことができるなら、3000円から1万円弱と少し高価だが、
静電発生機能付きのタイプが、ペン先が細く、軽いタッチで操作することができるので、おすすめだ。
 

図-14 静電発生機能付きタッチペン

図-14 静電発生機能付きタッチペン

 
 

最後に

土木現場の場合、建築現場のように同じスタイルでの作業ステップが少ないため、
専用のアプリを導入することが難しいと感じている。
ExcelやPDFの調書に赤書きするアプリやPDF図面を素早く見ることができるアプリ程度なら共有できるが、
配筋検査や仕上検査アプリなどは残念ながら共用することができない。
分厚い書類や図面などを持ち運ばずに済むだけでもメリットはあるが、
端末の活用によって現場での施工管理がもっと省力化されるべきであると考えている。
今の業務スタイスに固執することなく、使用するハードウェアに合わせて、
業務のスタイルを変えていくことも考慮する必要があると考えている。
 
 
 

実録!土木現場におけるタブレット活用《前編》
実録!土木現場におけるタブレット活用《後編》

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2015
特集3「建設ITの最新動向」
建設ITガイド 2015
 
 



タブレットはホントに建設現場で使えるのか?

 

あっとクリエーション株式会社
代表取締役 黒木 紀男

 

ノートパソコンとタブレットの違いとは?

「タブレットを導入してみたけど、何に使ったらいいのか?よく分からないなぁ」
 
「プレゼンに使うか、動画を見るか、メールする以外に使い方が思いつかないよ」
 
 
タブレットを導入してみたものの、結局あまり使われることなく、机の引き出しに入れっぱなし…というケースをよく耳にします。
実際にそうなってしまった方のお話を聞いてみると、冒頭のような言葉が返ってくることが多いんです。
 
なぜこうなってしまったのか?
その人たちの話を聞いてみると、とても納得できます。
 
 
「プレゼンや動画、メールなら、ノートパソコンでもできるのに、わざわざタブレットを使う必要が見当たらないんだよね」
 
「メールを書くとしても、キーボードがある方が効率がいいので、どちらを使おうか?っ て考えたら、ノートパソコンだよね」
 
「ノートパソコンとタブレット両方を一緒に持ち歩くのは重いから、結局タブレットを持ち歩かなくなった」
 
 
どの意見もごもっともで、その通りだと思います。
 
しかし、タブレットが世間で注目されていることは事実です。
では、タブレットは、なぜこれほどまでに注目されているのでしょうか?
タブレットは、本当に仕事に役に立つのでしょうか?
役に立つのだとしたら、何に使えるのでしょうか?
 
また、もうひとつ、よく言われること。
 
 
「わたしらみたいな歳になると、こんな新しいモンはもう使われへんわ」
 
 
これも本当でしょうか?
これについては、実際に使われている事例を見ながら、確認してみたいと思います。
 
これらの点に注目して、実際に使われている事例から、
タブレットやスマートフォンをうまく業務に生かす方法を考えてみたいと思います。
 
 

タブレット・スマートフォン活用の成功事例

タブレットやスマートフォンが業務でうまく使われている事例をいくつか見てみましょう。
 

現地調査支援アプリ「カンタンマップ for iPad・iPhone」

「カンタンマップ」は、あっとクリエーション株式会社が開発した、
タブレットやスマートフォンを使って現地調査を効率化しようというアプリです。
 

図-1 カンタンマップ

図-1 カンタンマップ

 
現地調査に行く際には、地図や図面、デジカメ、手帳、携帯電話、過去の調査資料など、とても荷物が多くなります。
建設現場によっては、道なき道を入っていくような現場も多く、タダでさえ荷物を減らしたいものです。
 
以前に比べITは進化し、カメラはフィルムカメラがデジカメになり、GPSも搭載されたり、どんどん進化しました。
携帯電話もガラケーからスマートフォンになり、もの凄い勢いで進化しています。
 
にも関わらず、現地調査を考えた時、使うツールひとつひとつは進化したものの、
現地調査そのものの効率化や高度化はあまり進んでいないのが現状です。
現場から戻ったら、現場で撮影した何百枚もの写真は手作業で整理する必要があり、
いざ作業をしてみると、この写真はどこで撮影したものだったっけ?ということもしばしばあります。
 
この現地調査のIT化を推進すべく、現地調査に必要なITツールをひとつにまとめようと考えたものが「カンタンマップ」です。
 

図-2 必要なITツールをひとつに

図-2 必要なITツールをひとつに

 
ここで、具体的にどのように使われているのか?を見てみましょう。
河川維持工事業務で利用されている例です。
 
河川維持工事では、堤防に陥没ができていないか?堤防にある階段などが壊れていたりしないか?など、日々点検を行っています。
点検の結果、何か事象を見つけたら、どこで何が起こっているのか?をメモを取り、写真を撮り、
Excelベースの報告書として河川管理者に報告する必要があります。
 
ここで、現状で生じている課題として、現場から戻ってからパソコンを起動し、Excelに 生じている現象を書き込み、
その写真と場所が分かるように、地図を貼り付ける作業を行わなければなりません。
 
これをタブレットを使って、現地で全ての作業ができてしまえばどうでしょうか?
タブレットに表示された地図上に、起こっている事象の場所を記録し、その内容をメモ書きします。
また、タブレットに付いているカメラで写真を撮影して、その写真にスケッチを描き込めたら便利です。
メモ書きもタブレットの音声入力が使えれば、キーボードを打つ必要もありません。
 
さらに、河川維持では、堤防の形状なども重要になるのですが、
GoogleマップやAppleマップでは、堤防のような細かい形状は表現されていません。
このような地図では河川維持をはじめ、建設現場での利用では役に立たないため、
カンタンマップでは業務に必要な精度の地図を重ね合わせて表示できる機能があります。
 
これにより、例えば堤防のどこに亀裂が発見されたのか?といった詳しい情報をきちんと記録することができ、
次回の点検の際にもそれを見逃すことがなくなります。
 
また、現地調査では、山の中など災害時などで通信環境が使えないところでも使える必要があるため、
全ての機能がオフラインでも使えるようになっていることも特長のひとつです。
 
加えて、オプションで指定の帳票様式に印刷するためのカスタマイズなども可能であり、
これまでの現地調査のやり方を変えてしまう可能性のあるアプリです。
 
「カンタンマップ」は、河川維持の他、下水道などの地下埋設管管理やマンホール・電柱管理、林業における林班表示、
農地管理における施設管理、固定資産調査、道路附属物点検、道路やトンネル計画地の現地調査など、
さまざまな分野で利用されています。
 
中には、河川の現況調査で、図-3のような使われ方をしているユーザーもいます。
iPadだけで作業ができるからこそ実現しうる調査手法ですね。
 

図-3 河川での現況調査にて

図-3 河川での現況調査にて

 

位置情報付き写真管理システム「キロふぉと」

「キロふぉと」は、JR西日本およびジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社が開発した、
線路や架線、付帯設備を点検する作業を効率化するためのアプリです(図-4)
 

図-4 キロふぉと

図-4 キロふぉと

 
鉄道運行には、人命に関わることもあり、非常に高いレベルの日常点検が求められます。
そのため、線路や架線などに異常がないか、日々の点検作業がとても重要になります。
 
その点検作業では、何かが発見されたら場所を記録し、写真を撮影して、
事務所に戻ったら、その結果報告を所定の形式による報告書を作成し、実施するという作業を行います。
 
「キロふぉと」はこの点検、報告作業において、スマートフォンを使用することによる業務の効率化を目指したアプリです。
 
このアプリを使った作業では、事象があった箇所の写真を撮影し、写真にメモを書き込め、どのようなことがあったのか、
事前に登録しておいた項目から選択するだけで登録が完了します。
文字入力の必要はありませんが、必要な場合、キーボードによる入力もできるようになっています。
 
このアプリは、さらに鉄道の点検にとって必要かつ重要な機能があります。
写真を撮影する際に、現在地のGPS情報をサーバに送ることで、「キロ程」に自動的に変換されるようになっています(図-5)
 

図-5 GPSの緯度経度から「キロ程」を算出する

図-5 GPSの緯度経度から「キロ程」を算出する

 
これにより、日常業務で使い慣れているキロ程で管理できるため、その写真がどこで撮影されたかがすぐに分かります。
 
例えば、撮影された場所が、GPSの経緯度ではなく、「東海道本線のキロ程500キロ+580m地点の右側に10m離れた場所」のように、
鉄道管理者であればすぐに分かるような言葉に置き換えて、位置情報を伝えていることにあります。
 
スマートフォンにて各所から送られてくる報告は、事務所にあるパソコンで一覧表示され、
管理者/担当責任者はすぐに状況を確認することができます。
 
また、パソコンから所定のExcel帳票(ユーザーが普段使用している報告書形式で生成)も印刷することができるため、
点検者は現場から写真を送った後、事務所に戻ってから作業日報のようなものを作成する必要もありません。
 
実際にこのアプリを導入した現場では、設備のちょっとした故障や破損の報告、定期交換時の記録等、
あらゆる場面で活用されています。
また、緊急時や災害時に大きな威力を発揮することも分かりました。
これまでは線路の管理は土木担当者、架線の管理は電気担当者と縦割りであったのですが、
緊急時や災害時に現場に入った作業者が撮影した写真を部門横断的に共有することにより、
適切で迅速な対応が取れるようになったそうです。
今後、指令と現場をつなぐツールとしての活用も期待されています。
 
そのような成果が評価され、
このアプリはJR西日本において、「現場の技術開発制度」で最優秀として社長表彰という結果につながりました。
 

図面管理システム「CheX(チェクロス)」

「CheX」は、株式会社YSLソリューションが開発した、図面管理を目的とした情報共有アプリです。
 
ビルなどの工事中などでは、設計変更が頻繁に行われます。
その際、変更された図面と現場との確認が発生します。
施工後の現場と図面との照合も必要です。
 
紙に印刷した複数の図面を、現場に持って確認する作業は大変な作業です。
またそのチェックで発覚した問題箇所を、設計担当者や業者に伝えるのも手間がかかります。
図面上にメモを書き込んだり、手持ちのカメラで写真を撮ったりしてなど、天候が悪い時などは特に面倒です。
 
現場担当者は、持ち運びに便利なタブレット端末(iPad)を、現場に持って行くだけで、 図面の参照が簡単に行えます。
 
CheXは、図面の拡大縮小や参照箇所の移動もカンタンな操作でスピーディです。
タブレット端末には、複数の図面を入れることができるため、複数のフロアやいくつもの建物の確認も可能です。
 
直前に変更された図面や忘れてきた図面も、ボタン一つでクラウドと通信して、簡単に呼び出すことができます。
 
ボタン一つでクラウドと通信
 
現場でチェックした箇所には、タブレット端末に表示された図面に、手書きでマークや文字を書き込むことができます。
またタブレット端末のカメラで撮ったチェック箇所の写真を、その図面に張り付けたりすることも可能です。
 
1つの図面にたくさんのチェック個所がある場合は、図面上にピンを立てて、
そのピンに メモと写真を添付する機能もあります(図-6)
 

図-6 Chex(チェクロス) ピンを立てて、メモや写真を貼付できる

図-6 Chex(チェクロス) ピンを立てて、メモや写真を貼付できる

 
それらのメモや写真入りの図面を、メールを使って関係部門へ送り、情報共有することで、
関係者間の情報共有のツールとなっています。
 
事務所などでは、現場で入力された情報などが、パソコンでも見ることができ、そこから印刷することなども可能です。
 
現在では、大手ゼネコンをはじめ、多くの現場で活用されています。
 
 

なぜタブレットは使えるのか?~成功事例の共通点~

上記の事例を見てきて、なぜこれらのアプリはうまく活用され、また実際に仕事に役立っているのか?
これには、いくつかの共通点があります。
 
 
そのひとつは、「現場で使うことを想定」していること。
 
 
タブレットを使いたい場所とはどこでしょうか?やはり、現地調査であったり、建設現場であったり、屋外であることが多いです。
 
では、なぜ屋外で使われることが多いのか?と言えば、そこにノートパソコンを持って行くわけにはいかないからです。
現地調査にカンタンマップやキロフォトの代わりにノートパソコンであればもっと便利になるか?現場で図面を見るのに、
CheXよりノートパソコンが良いか?と言われると、そうではないことは誰もが想像できるところです。
 
冒頭で書いたように、タブレットはノートパソコンの代わりではありません。
タブレットとは、これまでノートパソコンではできなかったことを実現することができる、新しいITツールなのです。
 
よって、タブレットの能力を最大限に生かすのは、プレゼンや動画を見せることではなく、
これまでパソコンでは実現しにくかったことをタブレットだからこそできることに利用することこそ、
タブレット導入に必要な考え方であることが分かります。
 
 
もうひとつは、「カンタン」であること。
 
 
日常的に使っているスマートフォンやタブレットのアプリには、マニュアルのようなものはありません。
ダウンロードして何となく使ってみて、使えそうだったら使い続ける。
そんな感じのものが多いです。
 
紹介したアプリも一度使い方の説明を聞けば、マニュアルが要らないくらいカンタンに使えます。
それは、それぞれの目的に特化して、必要な機能しか付けられていないためです。
 
先に成功事例として紹介したアプリも全て、使う目的もシチュエーションも、そこで必要な機能も明確にしています。
 
こんなこともできます、あんなこともできますということで、他のアプリより多機能高機能であることで差別化するのとは、
全く逆のアプローチです。
むしろ、「これだけしかできません。」というのが特長となっています。
 
その結果、初めて使おうとする人でも、すぐに使いこなせてしまうわけです。
このようなアプリであれば、使い続けてもらえるわけですね。
 
いかに要らない機能を省くか?いかにシンプルなアプリとするか?これはタブレットやスマートフォンを業務で利用する際に、
とても大事な考え方です。
 

業務アプリ以外でもタブレットやスマートフォンを仕事に使い倒そう

ここまで紹介してきたアプリは、いずれも業務向けに開発されたアプリであり、導入には相応のコストがかかります。
しかし、タブレットを業務で活用するには、
このような業務用アプリを導入する以外にもアイデア次第でもっと気軽に活用することも可能です。
 
 
例えば、タブレットをデュアルディスプレイとして使ってみたり、車で出張に行く際のカーナビとして使ったり、
ドライブレコーダーとして使うことも可能です。
 

図-7 タブレットをカーナビとして

図-7 タブレットをカーナビとして

 
さらに、電車で移動中に打合せ資料や論文などを読んだり、プレゼンの予行演習をしてみたり、
緊急時にはポータブルテレビとして情報収集することにも使えるでしょう。
 
タブレットもスマートフォンも、マニュアルがなくても使えるようなカンタンな道具です。
 
難しく考えることなく、ちょっとしたアイデアで便利に使えるものです。
業務を楽にすることに加えて、仕事を少し楽しくするために使ってみてもよいのではないでしょうか?
 
現在、筆者は自治体やCPDSセミナーにおいて、本文で紹介した以外にも、タブレットの有効活用などの講師をしています。
また、紹介したアプリなどの導入支援コンサルタントも行っているので、興味がありましたらお気軽にお問い合わせ下さいませ。
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2015
特集3「建設ITの最新動向」
建設ITガイド 2015
 
 



今すぐ使える、実践BIMテクニック~シェルパブログから~《後編》

2015年4月26日

 

株式会社 シェルパ

 

③設定、テンプレート(準備)

Revit 2Dオブジェクトを作る シェルパブログ 2014.5.9掲載

BIMでモデルを作っても、全て3Dで表現しなくても良い場合もありますよね。
そういう場合に2Dのオブジェクトを用意しておくと便利だと思います。
 
例として、ユニットバスの2Dオブジェクトを作ってみましょう。
 
「新規作成」から「ファミリ」を選択します。

 
Revit 2Dオブジェクトを作る
 
 
この事例の目標は、「備品などの部品形状を無理に作るのではなく、
2D図を貼り付けることで平面だけでなく効率よくモデル上でも表現をする」ことである。
 
この事例ではユニットバスを取り上げ、ユニットバスの細かい部品まで3D形状で作成するのではなく、
2D図を利用して3Dモデルでは線で表現する手法をRevitのファミリを用いて紹介している。
 
モデルを作成する時に、いかに忠実に部品を再現できるかと考えてしまいがちであるが、このモデルでの確認事項は、
ユニットバスの細かな部品ではなくユニットバスを取り囲む壁の位置確認である。
その壁が部屋のどの位置にあるかの確認であるから、ユニットバスの平面的な大きさが分かり、
平面図でユニットバスの存在が分かれば十分である。
他の図面を読み込むという考えから、この手法を利用すれば、
Revitのファミリで大きさやタイプなどをパラメトリックに作成することで利用範囲はさらに広がる。
 

ArchiCAD 部品倉庫を作ろう! シェルパブログ 2014.12.22掲載

ArchiCADで作図するときに、モデルに目的があるか、無いかで、
出来上がったモデルは、3Dで見える外見は同じでも全く異なったものになってしまいます。
 
また、複数の人で作図する場合は、統一したルールのもとに作らなければ十人十色のモデルになってしまいますよね。
 
そして、CADの設定は自由自在、ルールを決めてもそのルールに現れない部分も出て来ますし…。
 
さらに、作図者が考えながら作図していてはどんどん時間ばかり過ぎてしまいますよね。
 
そこで、あらかじめテンプレートファイルを作成して、その中に作図する部位の部品を置いておき、
作図する人はその部品をコピーして使うことにすれば、誰が作図しても部品に含まれる情報は同じものになります。
 
これが、物件毎の部品倉庫です。

 
ArchiCAD 部品倉庫を作ろう!
 
 
この事例の目標は、「属性を仕込んだ部品をテンプレートファイルに置き、作図者によらずモデルの質を確保する」ことである。
 
ここでは、物件ごとにあらかじめ属性が仕込まれた部品を
実際に配置する高さに置いたテンプレートファイルを作成することの利点を説明している。
このテンプレートファイルがプロジェクトごとの「部品倉庫」である。
 
①作図者によらない、②把握したい正しい属性を持ったモデルを、③効率よく作成する、ことが可能となる。
この部品倉庫のテンプレートファイルを蓄積していくことで、次期プロジェクトのテンプレートを早く作成することができ、
品質が良いモデルを効率よく作図することができるのである。
 
 

シェルパの「技術相談」

シェルパでは社内総力でプロジェクトを支えていくために、技術的な疑問を相談する社風となっている。
3年前まではASPを利用していたが現在は「サイボウズ」を活用している。
そこに挙げた技術的な相談は発信するとすぐにメールでメンバーに送られるので、
時間ができたときに皆の経験などを基にアドバイスを受けることができる。
そこでもより良い知識、ノウハウが選定され、また記録を残すことで改善が図られていく。
シェルパの「技術相談」
 
シェルパの「技術相談」
 
 

④作図ノウハウ

ArchiCAD 屋根伏図の作図方法 シェルパブログ 2014.7.17掲載

3Dドキュメントを使って屋根伏図を作成する方法をご紹介します。
 
①モデルを平行投影の設定で、上面図にします

 
ArchiCAD 屋根伏図の作図方法
 
 
この事例の目標は、「モデルから屋根伏図を切出し作成する」ことである。
 
伏図というと通常は平面ビュー上から作成しているが、上部に他の構築物がある場合は、建物全てを表現することが難しい。
そこで3D表示画面で、モデルを平行投影の設定にして上面図表示にすると、上空から見下ろした伏図を作成することができる。
 
上空から見下ろした伏図を作成することができる
 
ArchiCADのバージョン17からは「平面図から新規3Dドキュメントを作成」でもこの配置図作成が可能となった。
しかしこの事例を応用すると、斜め面などの複雑形状を正対視してから3Dドキュメントを作成し、
それをワークシートに貼り付けることで、縮尺対応した図面作成につなぐことができる。
 

ArchiCAD 防火区画ラインを描く シェルパブログ 2014.11.17掲載

防火防煙区画の線を描く時に、壁を塗りつぶしで色を付けて表示しても、建具があると、
そこだけ色が抜けてしまって区画の線が途切れ途切れになってしまうことがあると思います。
 
ArchiCAD 防火区画ラインを描く
 
そうならないようにするには、もう一つビューを作ってモデル表示オプションで建具を非表示にしたビューを作ります。

 
 
この事例の目標は、「防火区画壁の色分け平面図を作成する」ことである。
 
通常ArchiCADの平面図では、壁に色を付けても建具の部分には色が塗られない。
そこで、モデル表示オプションで建具を非表示としたビューを作成し、レイアウト上でビューを重ねることでその問題を解消している。
あくまでモデルは一つであるので、一度このレイアウトを作成してしまえば後の変更などにも確実に追従する。
 
この手法を用いることで、平面ビュー上で図面表現のために無駄な作業を省くことができる。
 
 
二つのビューをレイアウトブックに配置
 
二つのビューをレイアウトブックに配置
 
二つのビューをレイアウトブックに配置して、その二つのビューを重ねます。
 
これで区画ラインの通った区画図ができます。完成

 
 

シェルパの「改善提案」

シェルパでは毎月社内会議を行っており、そこで一人最低一件の改善提案資料を作成し社内評価と水平展開を行っている。
内容は豊富で、作図での効率化、現場での工夫、モノ決めのための手法の工夫、建築技術での注意ポイント、失敗事例、
などさまざまである。
また、その事例、提案を実際に他の人がやってみて再評価し、さらなる改善を図っている。
 
BIMを使うようになってからBIMに関する改善提案も多くなっており、その多くがシェルパブログに掲載されている。
 
10年近くやっている改善提案資料をさらに活用していくために、カテゴリ分けして知りたい情報を早く探せるように工夫している。
 
シェルパの「改善提案」
 
 

⑤モデルチェック(検索、一覧表)

J-BIM スラブと梁の高さチェック方法 シェルパブログ 2014.10.2掲載

施工図の床伏躯体図でS造の場合は、鉄骨
大梁や小梁にレベル表記がしてあると間違いが少なくなりますよね。
できれば表記したいものです。が、
 
J-BIMで、S造・RC造の混構造の躯体図を描く場合は、RC躯体図として描かなければなりません。
 
しかしながらRC躯体図では、鉄骨躯体図の床伏図では可能な「鉄骨梁の高さを表示する」設定が出きないのです・・・
(福井コンピューターさま!是非ご一考下さいm(_ _)m)
 
それでもそんな中、スラブと梁の高さ関係をチェックする場合簡単・正確に出来る方法があります!
 
スラブ高さは、レベルチェック機能で色分けができますよね。
ここで、レベルチェックでスラブの高さ別の色を表示し、
「属性」-「部材レベル確認」をクリックすると一時的に各部位のレベルを表示することができます。
 
「部材レベル確認」はデフォルトではずべて部材がONになっていて、
画面では逆に分かり辛くなってしまうので必要な部材のみ選択して表示すると見やすいと思います。
 
そうすれば、スラブ厚を確認してからスラブの色を見ながら梁の天端レベルを楽~に確認できます。

 
J-BIM スラブと梁の高さチェック方法
 
 
この事例の目標は、J-BIMを利用して「作図した各部位のチェックを早く、正確に行う」ことである。
 
J-BIMでは、RC梁は梁符号内に梁部材の梁幅・梁成が表示されるため符号で確認することができるが、
S梁はデフォルトの状態では梁符号しか表示されないためスラブと梁の高さの整合を読み取ることはできない。
そこで、梁の天端高さを表示させることで、
スラブの高さに対して梁の天端レベルが正しいかを確認することが容易にできるようになる。
 
また、基準となるスラブ高さもレベルに応じて色分けがされる。
「部材レベルチェック」の機能を使用すると、ひと目でレベルの確認をすることができる。
この機能は、スラブだけではなく、RC梁や増し打ち躯体の天端レベルなど、表示する部材を選定することが可能である。
 
BIMをツールとして使う場合の利点を最大限に生かし、ちょっとした工夫で図面自体の品質を確保することができる。
 

ArchiCAD 数量一覧表でモデル整合チェック シェルパブログ 2014.10.10掲載

ArchiCADの一覧表の設定のフィールドリストで「数量」を選択すると、
 
ArchiCAD 数量一覧表でモデル整合チェック
 
 
この事例の目標は、ArchiCADの数量一覧表を利用して「部材数量の確認や部材の配置を、
平面ビューや3Dモデルで早く正確に確認する」ことである。
 
数量一覧表は、その名の通り、部材ごとの名前や、項目、ID番号を一覧表として表示させるものであるが、
表示方法をちょっと変えることで、項目別の総数量を出すことが可能となる。
 
また、数量一覧表で選択した部材が瞬時に平面図や3Dモデル上で選択された状態で反映することも可能である。
 
この事例を応用し、柱部材の配置チェックをするツールとして利用した手法では、
数量一覧表で、ある符号の柱を選択しそれを平面ビューに反映させると、平面ビューでは柱が選択された状態の画面となるので、
それとモデル入力前に作成した柱符号別色分図の配置を見比べることで、
各符号の柱が正確に配置されているかを確認することが素早くできる。
 
 

シェルパブログでの記事検索方法

①シェルパブログの各記事には「ラベル」というカテゴリを付けており、ページ途中の左側にそのカテゴリ名一覧が表示される。
 これをクリックすることでそのカテゴリの記事が表示される。
 
②ラベルの上の「このブログを検索」で文字検索すると関連記事の一覧が表示される。
 
③ページ最上部の左にある検索で文字検索すると、関連記事に絞られて表示される。
 
シェルパブログでの記事検索方法
 
 

⑥成果物

GLOOBE 概算積算機能 シェルパブログ 2014.10.6掲載

福井コンピュータさんのGLOOBEを使ってみました。
 
GLOOBEには概算積算の機能がありますがこれが、なかなか使い易いんです!
 
入力手順もとてもシンプルですよ。
 
まず基本ツールを使ってモデルを作成します。

 
GLOOBE 概算積算機能
 
 
この事例の目標は、GLOOBEの概算積算機能を使って、「モデルから概算数量を算出し、数量確認を行う」ことである。
 
GLOOBEには「自動配置」という機能があり、その機能を以下に簡単に説明する。
 
●仕上げ情報をGLOOBE上の仕上げ表に入力をする。
 (仕上げ表のパターンも予め用途別の基本となる仕上げ表が用意されているため、それを利用すると容易に入力ができる)
●壁などの要素とスペースを入力する。
 (ここでは壁などの要素には仕上げ属性は入力しない)
●「自動配置」機能のワンクリックで各仕上げが配置される。
 
ここまでを自動的に行ってしまうのである。
そして積算機能から出された数量表では部材単価の設定ができるため、概算金額を簡単に算出することが可能である。
また、数量の確認は、オブジェクトリストから個別数量の確認ができるため、積算根拠が明確である。
 
積算根拠が明確
 

ArchiCAD 色分け図の活用 シェルパブログ 2014.9.18掲載

 外壁色分け図は打合せの時に、みんなのイメージを共有するのに非常に便利です。
 
今回は、せっかくの3Dモデルなので一歩踏み込んでみました。
 
色分け図の右上に数量表・下部にパースをレイアウトしてみます!
 
ArchiCAD 色分け図の活用
 
数量表をつけることにより外壁の全体のコストや仕様が過剰になっていないか確認したり

 
 
この事例の目標は、「外壁種別を立面、パース、数量表で表現して分かりやすくする」ことである。
 
この事例では、外壁のモデル材質の設定と、立面図の設定のポイントを説明している。
数量表はその外壁のモデル材質をキーにして外壁種別の面積を算出している。
立面、パース、数量表は連動しているので変更に追従するのと、3D表現特有の分かりやすさで関係者でのイメージ共有に効果がある。
 
 

おわりに

BIMが普及してきているのを感じるが、まだまだ過渡期であり、効率よく使うのは難しいところもある。
 
日々ソフトウェアが改善され機能が増えて便利になり、データ連携などもやりやすくなってきている。
 
しかし、あくまでもBIMはツールであるから何も考えずに何でも問題解決できるような魔法のような万能なものにはなり得ない。
 
だからBIMを使っていて、ある一つのことがうまくいかないからといってBIMを全てバッサリと切り捨てたり、
または逆にBIMを無理に使おうとしたりすることは、ツールに操られてしまうことである。
 
いかにBIMを、建築技術を表現するツールとして使い、それを建築技術ナレッジの蓄積へとつなげ、
活用していくことができるかということを、シェルパはとても重要であると考えている。
 
 
 

今すぐ使える、実践BIMテクニック~シェルパブログから~《前編》
今すぐ使える、実践BIMテクニック~シェルパブログから~《後編》

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2015
特集2「進化するBIM」
建設ITガイド 2015
 
 



 


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