建設ITガイド

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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

BIMオブジェクト標準とBIMライブラリ技術研究組合の活動

2025年5月23日

設立目的

BIMライブラリ技術研究組合(BLCJ)は、BIMライブラリコンソーシアム(BLC)(2015年10月設立)を母体として、技術研究組合法に基づく組織として、2019年8月に国土交通大臣の認定を受けて設立された。
技術研究組合は、産業活動において利用される技術に関して、組合員が自らのために共同研究を行う相互扶助組織(非営利共益法人)で、各組合員は、研究者、研究費、設備などを出し合って共同研究を行い、その成果を共同で管理し、組合員相互で活用することとされている。
研究開発終了後には会社化などにより研究成果の円滑な事業化が可能になっており、目的のために活動する時限的組織が本質である。
 
 

試験研究の目的

設立時の目的として、「BIMによる円滑な情報連携の実現のため、繰り返し利用される建築物の部材・部品の形状や性能などのデータ(BIMオブジェクト)を標準化し、その提供や蓄積を行うBIMライブラリを構築・運用するとともに、現在BIM導入を検討・開発中でその効果が大きい分野との連携を図ることにより、効率的な建築物のプロジェクト管理などを実用化することを試験研究の目的とする。
(以下省略)」とし、定款第1条では、主たる事業として以下を掲げて、効率的な建築プロジェクト管理の実用化に資することとしている。
 
①建築物の部材・部品の形状や性能などのデータ(BIMオブジェクト)の標準化
②BIMライブラリの構築・運用
③BIM導入の効果が大きい領域との連携(建築確認・標準仕様書とBIMとの連携を想定)
 
また2023年度から「BIMを用いた建築確認の実施に向けた検討」(実務のツール開発)を関連事業として追加した。
 
 

研究体制

2024年11月現在でBLCJに参加する組合員は、77企業、18団体、5個人であり、図-1に研究体制を示す。

図-1 研究体制
図-1 研究体制

 
 

BLCJ BIMオブジェクト標準Ver.2.0

BLCJは、設立において目標の一つとしてきた「BLCJ BIMオブジェクト標準Ver.2.0(略称BLCJ標準Ver.2.0)」を当組合のホームページ(https://blcj.or.jp)で2023年12月に公開した。
この成果は、多くの関係者の長年のご尽力と建築研究所からの官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)予算の支援によるものである。
BLCJ標準Ver.2.0は、BIMの活用が拡大する中で課題となっている「円滑な情報伝達の実現」を目的として、BIMの属性情報の標準化を図ったものである。
これは建築BIM推進会議の工程表でも目標の一つとして示されている。
 
この標準の主な特長は、
①英国NBSオブジェクト標準の構造を保持しつつ、日本のきめ細やかなものづくりの技術基準に対応していること。
②実務者の視点から、設計・施工・製造段階の主要な情報を属性情報に取り込み、標準化することで、2025年度に予定されるBIMを用いた建築確認に関連する活動を支援すること。
③分類コードは国内用のCI-NETコードとグローバルな対応を視野にUniclass、OmniClassとの対応していること。
④対象品目を拡大し、太陽光発電装置や建築確認に必要なダンパーなどの設備機器などを加えていること。
 
標準の整備において、用語・定義などを共通化することで、設計・施工・製造などの建築生産プロセスでの情報伝達を、より正確に、よりスピーディーに、またミスの削減を図ることによって、生産性の向上を図ることと、BIM関連デジタル技術の開発促進も大いに期待できる。
 
現在建築BIM推進会議のもとに設置された標準化TFで、その他の標準も含めて整理が進行しており、特に構造と設備に関してはBLCJ標準Ver.2.0が全面的に採用される見通しである。
 
標準を整理した範囲を表-1に示す。

表-1 標準を整理した範囲
表-1 標準を整理した範囲

 
 

建築領域の検討

BLCJ標準Ver.2.0の拡充として、窓、シャッター、ドア、トイレについてタイプの追加(例:車いす使用者トイレなど)検討を実施し、属性情報WG(空間オブジェクト)を設置し、空間オブジェクト[ S1 ~ S7]の属性情報の検討を実施している。
「空間オブジェクト」は設計BIMワークフローガイドラインにおける、ボリュームモデル、ゾーニングボリュームモデル、空間要素の総称であり、壁などのオブジェクトに囲まれた空気のかたまりのようなもので、BIMモデルに不可欠な主要部材であるが、実際の建物においては空間として認識され目には見えない。
「シンプルな空間に内蔵されて伝達される情報」は発注者、設計者、施工者、メーカー、維持管理者の立場を超えて共有の資産になる可能性がある。
また設計から維持管理などにおける業務の合理化や外部データ連携の円滑化を目的に属性情報WGにおいて、BLCJ標準に掲載する情報の整理を実施する(図-2、3)。

図-2 建築関係の検討
図-2 建築関係の検討
図-3 空間オブジェクトの検討
図-3 空間オブジェクトの検討

 
構造関係では、BLCJ構造標準<改訂 6版>として、免震装置の属性情報を検討。
制振装置、耐震スリットも検討予定しており、また公共建築工事標準仕様書のデジタル化の検討を進めている(図-4)。

図-4 構造関係の検討
図-4 構造関係の検討

 
 

設備関係の検討

設備関係の標準を図-5に示す。

図-5 設備標準(抜粋)
図-5 設備標準(抜粋)

 
 

BLCJ標 準Ver.2.0に基づくオブジェクト

BLCJ標準Ver.2.0に基づく設備オブジェクトの例を図-6に示す。

図-6 設備オブジェクトの例
図-6 設備オブジェクトの例

 
 

BIMライブラリ

試験用のBIMライブラリの概要を示す。
現在組合員によるさまざまな検証を行っている段階である(図-7、8)。

図-7 BIMライブラリ(1)
図-7 BIMライブラリ(1)
図-8 BIMライブラリ(2)
図-8 BIMライブラリ(2)

 
 

円滑な情報連携

(「BIMを用いた建築確認の実施に向けた検討」)
BIM図面審査の申請に必要な提出データはPDF図面とIFCモデルである。
しかしこれだけでBIMによる整合性の担保をどうすべきかを検討した結果、審査者がネーティブデータを見ないのであれば、審査者がPDFとIFCを見ただけでは、整合性の根拠を確認することができない。
また、「テンプレート」は柔軟性のある作業環境であって、設計者が入力しやすくすることによる「誘導力」はあっても一意に定める「拘束力」はない。
このため、「BIMデータの整合性を設計者が宣言する」方向の、「入出力基準・設計者チェックリスト」の作成となり、パブコメを経て、内容の整理がされている段階である。
 
入出力基準・設計者チェックリスト(抜粋)を図-9、10に示す。
 
パブコメ、その他の技術的な検討を踏まえ、入出力基準・設計者チェックリストの改定版を作成する予定である。

図-9 入出力基準・設計者チェックリスト(抜粋)(1)
図-9 入出力基準・設計者チェックリスト(抜粋)(1)
図-10 入出力基準・設計者チェックリスト(抜粋)(2)
図-10 入出力基準・設計者チェックリスト(抜粋)(2)

 
 
 

BIMライブラリ技術研究組合 専務理事
寺本 英治

 
 
【出典】


建設ITガイド2025
建設ITガイド2025



地方発! 建設DXチャレンジ事例「DXは難しくない!」若手による意識変革で建設DXが次々に実現

生産性の向上に向けてi-Constructionへ

和歌山県有田市にある木下建設株式会社は、1956年の創立で70年近い歴史を刻むが、下請けによる重機土木工事を長らく行ってきており、元請工事の経験は10年ほどと言う。
築き上げた信頼の力で、現在では、約60億の売上高の半分を元請け工事が占めるようになった。
社員数は70名弱を数え、その内で重機土工のオペレーターが半数の35名程度在籍している。
 
同社がICT施工の導入を開始したのは8年前、社長より生産性の向上が経営課題に挙げられてからだ。
8年間の取り組みの成果は、一人当たりの生産性が2倍近くに上がった実績が証明している。
それを可能にした改革を中心となってけん引してきた山田裕明専務取締役本部長に伺った。
 
「生産性向上に向けた施策を始める前は、ICTに全く関心のない会社だったのです。
国土交通省が『i-Construction』を提唱したのが2016年ですので、ほとんど同時期にスタートしました。
自社のみで全てを進めるのは容易ではないので、まずはパートナーシップを結んでくれる会社を探しました。
時の企業動向から、コマツが『i-Construction』を主導していくのでは、という読みでコマツに相談し、今では、コマツの子会社であるEARTHBRAINとの協業にまでつながっています」
 
 

若手社員を対象にしたICT施工の講習会を開始

木下建設では、同じく民間企業とのパートナーシップにより、建設業3Dプリンターの活用や現場のイメージアップ施策も実施していったが、そうした積極的な姿勢が実を結んだのが令和2年度「i-Construction大賞」優秀賞受賞だ。
こうした事績を上げる原動力になったのがICTへの積極的なチャレンジだ。
当初はICTの取り組みは社内でも一部の社員に限られていたが、やがて、コマツ・EARTHBRAINの両社による講習会へと発展していった。
山田専務は、開始時の状況を次のように語る。
 
「当初は、EARTHBRAINの各種ICTソリューションを用いた講習会を社歴上位のベテラン社員を対象に行っていきました。
しかし参加者が不在で講習会自体が開かれないこともあるなど、取り組みの効果がなかなか広がっていかなかったのです。
そこで2023年11月から若手中心の講習会に方針転換し、19歳~27歳の7人の社員を対象に、各現場の実際の課題をテーマにした習得機会を設けました。
1年間で10回開催しましたが、それまで多数を占めていた「難しい」という感想が、若手に替えてから「意外に簡単」という感想に変わったのです。
それぞれが興味をもって臨んでいて、現場で使ってみて分からない点を講習会の場で質問するなどして習熟度を上げています」

座学でソフトウエアの操作を学ぶ
座学でソフトウエアの操作を学ぶ
現場ヤードでドローン実習
現場ヤードでドローン実習

 
 

現場をケーススタディーに。新技術にチャレンジ!

若手中心の講習会の効果は既に現場で成果を上げている。
山間部で遠隔臨場・ICT施工に必要な通信電波が微弱な「有田川河川災害復旧外合併工事」の現場もその一つだ。
ここではStarlink Wi-FiにEARTHBRAINの通信不感地対策Wi-Fiパックを組み合わせて不感地を解消し、遠隔臨場・ICT施工に加え電話連絡やLINE・Skypeなどの通話アプリも使える環境を整備。
さらに、EARTHBRAINの「Smart Construction Edge 」などで現状を点群化しデジタルツインの施工現場を作成、並行して発注者である和歌山県と情報共有の場を設けながら、災害復旧に求められる短時間で効率的な仮設計画をわずか4日間で完了した。
本工事は2023年12月に着工しており、参加した若手社員は、前述の講習会を2度受講しただけで、現場からの要請に学んだ内容を生かしつつ対応し実地でさらに経験を重ねた。
山田専務は「講習会はただ受け身で聞くのではなく、自分の現場の課題を頭に置きながら自分事として主体的に取り組んでもらうようにしています。講習会で学んだ内容を元に、実際に運搬計画を立てる際に『Smart Construction Simulation 』で適正なダンプトラック台数を算出したり、『Smart Construction Fleet 』の位置情報発信デバイスをダンプトラックに後付けで搭載し、運搬上の問題や滞留の解消を解決していきました。それぞれの現場の課題に合わせて異なるICT施工手法を用いています。あたかも現場を講習会のケーススタディーの場のように使いながら十分な対応ができています。若手が操作する時にベテランが経験に基づいた意見を言う場面もあって、相乗効果も出ていますね」と期待以上の成果について説く。
 
講習会で学んだ内容を現場でそのまま試せるため、学ぶ際も自ずと真剣さが増し、
「この課題は、このソリューションを使って解決できる」と、現場さながらに意見を交わしながら講習会自体も熱気を帯びていると言う。

低軌道周回衛星(Starlink)を活用したICT建機による施工
低軌道周回衛星(Starlink)を活用したICT建機による施工
Smart Constructionの各ソリューションを使用し施工計画を効率化
Smart Constructionの各ソリューションを使用し施工計画を効率化

 
 

協業パートナーとともに新たな建設DXに挑む

現場と直結した講習会が人材の質的向上につながり、経営課題である生産性向上に結実するサイクルが確立しつつある木下建設。
次年度の講習内容が重要になるが、山田専務はこう考えている。
 
「次は、中堅社員にICTソリューションの活用を広げる講習会を考えています。
内容的には、ICTソリューションを習得した若手社員を中心において社内横展開の仕組みづくりをしていくつもりです」
現在、講習はコマツとEARTHBRAINによるチームワークで、クラウドを活用しながら実施。
測量など対面によるレクチャーが必要な場合は現地で行う。
 
また、前述しているICT活用について、同社は土工以外での活用にも積極的に挑戦している。
その大きな取り組みの一部が在来工法に比べて格段の工期短縮になる3Dプリンターへの取り組みだ。
 
株式会社Polyuse(東京都港区)は建設用3Dプリンターを開発しているベンチャー企業であり、従来は現場打ちコンクリート工で対応していた構造物を、3Dデータを用いて現地にて自動で積層造形できる技術を持っている。
数年前からパートナーシップを結んでおり、交流を深めてきた(NETIS登録番号:KT-230174-A「建設用3Dプリンティング」)。
 
直近の国土交通省直轄工事においても、通常は現場で作成・設置すると1カ月ほどかかる歩道階段を、3Dプリンターの活用により4日間で仕上げたことで大幅な工期短縮につながった。
現状の公共工事においては採用ハードルが高いため、付帯構造物に限られているが、今後は対象範囲を広げて、さまざまな構造物を現場で活用できるように挑戦するつもりだ。
 
ICT施工の幅をますます広げる木下建設。
一人当たりのさらなる生産性向上とともに、2社による協業パートナーシップが同社のDX戦略をより高みに導くに違いない。

 
 
【出典】


建設ITガイド2025
建設ITガイド2025



BIM/CIMによる設計と施工の連携― 設計の3Dモデルは施工で活用できるか? ―

はじめに

国土交通省のBIM/CIM原則適用から2年近くが経ち、多くの設計・施工においてBIM/CIM、i-Constructionの考え方による成果が作成されている。
 

BIM/CIMの目的

ここで改めてBIM/CIMの目的を、開始時にまでさかのぼって考えてみる。
土木学会誌2015年6月号において、「CIMは、計画・調査・設計段階から3次元モデル(Modeling)を導入し、その後の施工、維持管理の各段階においてもそれらの3次元モデルと連携させ、建設事業(Construction)で発生する情報(Information)をライフサイクル全体で共有・活用(Management)して建設生産性を向上させようという考え方である」1)とされている。
これは、従来のように設計、施工、維持管理だけの最適化を図るのではなく、連携して協働していくことで全体の生産性向上を目指すということである。
 

現状のBIM/CIMによるデータの流れ

原則適用が開始されてから、どのくらいの設計データが施工に連携され、生産性の向上が図られているであろうか。
 
2024年9月に開催された第79回土木学会年次学術講演会の発表においても、設計と施工の連携に関する発表は、筆者らの発表2)以外には見当たらない。
すなわち、本来の目的に到達せずに、相変わらず、設計データは施工に届いていないと考えられる。
 

現状のBIM/CIMの課題

現状のコンサルタント業務における詳細設計は「工事発注に必要な平面図、縦横断面図、構造物などの詳細設計図、設計計算書、工種別数量計算書、施工計画書などを作成するもの」3)とされている。
このため、実際どのように施工するかは、施工業者に委ねられている。
 
従来の2Dの設計図面を用いている段階では検証を含めて、施工側で再検討が行われてきた。
一方、BIM/CIMでは、2Dで設計した図面から3Dモデルが作成され、この3Dモデルが発注者経由で施工側に渡され、そのまま施工されることになる。
積算のための施工検討が、そのまま施工される形になり、かなり無理があるのではないだろうか。
 
構造物では作成されるものは、ほとんど同じ形状となるので問題は少ないと思われるが、地形が関係するもの、特に排水計画などでは大きく変更しなければならない場合がある。
 
構造物に関しても、設計側では最終の完成形モデルを作成しているだけで、どのように施工していくかは、施工業者が決定してからではないと分からない。
こうした状況では、当初考えられているライフサイクルをわたった生産性の向上は難しいと思われる。
 
 

BIM/CIMデータ活用

BIM/CIMデータの活用は、設計・施工・維持管理までを考えているが、実際に活用されているのは、i-ConstructionにおけるICT活用工事のためのデータとして以下のような場面で利用されている場合が多い。
 

ICT基礎工

設計の3Dモデルをベースに、構造物基礎を3Dで管理するもので、杭の出来形管理などが策定されている。
 

ICT構造物工(橋脚・橋台)

設計の3Dモデルをベースに、構造物躯体を3Dで管理するもので、橋脚・橋台の出来形管理などが策定されている。
 

配筋の確認

設計の3Dモデルを活用し、鉄筋の干渉チェックを行っている。
また、デジタルデータを活用した出来形計測などが策定されている。
 
 

対象工事

対象工事の概要

当該工事は、一般国道7号栗ノ木・紫竹山道路事業における立体化事業の一環として、栗ノ木道路の高架橋下部工の橋脚4基を構築する工事である。
 

詳細設計

詳細設計は、八千代エンジニヤリング株式会社の北陸支店がBIM/CIM受注者希望型業務として図-1に示す区間を担当した。
作成の目的は、事業計画検討のため の形状モデルと施工計画であり、以下のBIM/CIMモデルを作成している。
 
作成したBIM/CIMモデルは、Autodesk社のdwg形式を用いて、Autodesk Navisworksによって施工計画を構築していた。

図-1 設計区間と対象範囲
図-1 設計区間と対象範囲
  • 現況地形と周辺の建築物
  • 河川構造物
  • 道路土工
  • 橋梁構造物
    (上部工7連+ランプ2連)×上下線の計18連下部工A1 ~ A2の64基+ランプ6基
  • 全体の施工計画

 
このうち、株式会社 植木組の施工は、PU15、PU16、PU17、OFFP1の4つの橋脚である。
 

施工上の課題

現場は、国道7号道路に接し、流入交通量約2,700台/12hと非常に交通量が多く、さらに、施工ヤードは国道と栗ノ木川に挟まれた幅約20m程の狭隘な場所の中で、各橋脚の施工を同時に、ほぼ並行して作業する必要がある。
そのため、資機材の搬入・搬出の制約、重機や資材の配置にも工夫した施工計画を立て、施工ステップごとに確認する必要があった。
 
また、施工管理においてICT基礎工、ICT構造物工(橋脚・橋台)や段階確認の鉄筋出来形検査など従来手法に比べ生産性向上および品質向上につながるような手法にも対応する必要があった。
 
 

施工側で必要とするデータ

前述のようなICT施工を行っていくためには、設計側から受領したBIM/CIMモデルに対して、以下のような要望を行った。
 

下部工のロット割

施工時のコンクリートの打ち込みロットに分割する。
これにより、施工ステップ検討に活用する他、1ロットごとのコンクリート打ち込み量、型枠など数量計算を行う。
 

配筋モデル

設計時は、全体の景観、形状、施工計画の確認を主な目的とし、配筋モデルを作成していなかったため、配筋モデルを作成する必要があった。
 
配筋モデルは、現場での組み立てを考慮して、移動が難しい太径鉄筋(D25以上)がある場合、全て干渉がないように作成する。
D25未満のラップなど鉄筋の干渉は無視して構わないが、物理的に配筋不可となる干渉の場合は修正を行う。
 
配筋モデルを用いて、配筋検査、組立方法の検討など、さまざまな場面で活用する。
 

仮設計画モデル

設計時の土留・仮締切工は、「標準」的な施工方法で検討しているため、実際の施工現場では、設計変更が多い。
 
足場、作業土工、工事用道路、建機配置などは、施工を開始しないと分からないため、設計時での作成困難である。
このため、両社で打合せにより、施工方法の検討を実施し、各ステップで作成を行う。
 

統合モデル

設計は図-1に示した事業全体の統合モデルとして作成されているが、施工範囲の統合モデルを作成する。
 
このモデルをベースに、施工範囲の施工ステップモデル(4Dモデル)を作成する。
 
 

施工のためのBIM/CIMモデル作成

施工側からの要望を受け、地形データの更新、下部工モデル・施工計画の詳細化、重機配置検討を追加することが必要であり、表-1のようなモデルを新規に作成する必要があった。

表-1 施工時のBIM/CIMモデル
表-1 施工時のBIM/CIMモデル

 

施工ステップモデル

現況地形モデルは国土地理院の5mメッシュ標高を用いて作成し、このモデルに各工程における掘削モデル、工事用道路工モデルを新規で作成し、これらを元に施工ステップモデルを構築した(図-2)。
詳細設計時に設計範囲全体の施工ステップも作成していたが、工程は1カ月単位で重機の種類、配置場所についても実際の施工計画とは異なることから、対象となる施工範囲の部分の施工ステップの変更を行った。
また、測量データ・航空写真は周辺の道路形態が切り替わるステップごとに施工者より提供され、重機や軌跡図といったモデルを統合モデルへ反映することで、地形の改変も含めた現場状況をリアルタイムで確認・更新することを可能とした。

図-2 施工ステップモデル
図-2 施工ステップモデル

 

下部工モデル

施工段階では下部工の配筋モデル生成の他、属性情報の付与が提案されていた。
おのおのの橋脚に対して、鉄筋モデル、ロット割の情報、支承部モデルを新たに追加する必要があることから、パラメトリックなモデル作成が可能で、標準で配筋に対応しているAutodesk Revitにより新たにモデルを作成した(図-3)。

図-3 下部工モデルの変更
図-3 下部工モデルの変更

 

その他のモデル

この他に、図-4に示すような施工時に設計変更が多いモデルに対して、実施工程に合わせて新規にモデルを作成した。
足場・工事用道路・重機配置は施工時に決定されるため、設計時では作成できない。
施工区間外の下部工モデルおよび上部工モデルは詳細設計時に作成したモデルをそのまま活用した。

図-4 新規に作成したモデル
図-4 新規に作成したモデル

 

現場での活用

配筋モデルは、2次元で検討された詳細設計の図面どおりにモデルを作成すると下部工1基につき5,000カ所以上が干渉していた。
これら全ての干渉を回避することは困難であるため、D25以上の主鉄筋については干渉しないように鉄筋位置の変更を行った(図-5)。
これらのモデルは施工現場でARシステムによる検査データとして活用された。
しかしながら、モデル作成者が移動した方向へ施工現場でも鉄筋を組み立てるとは限らないため、鉄筋モデルの位置には相違が生じてしまう。
このため、全ての鉄筋同士が干渉しないモデルを作成する必要性はなく、本数、配筋ピッチ、鉄筋径といった優先度の高い情報を引き継ぐことが重要である。
 
特に施工上現場での対応が難しい鉄筋径D25以上同士の干渉は避けたモデルの作成が必要であり、どの程度まで干渉しないモデルとして作成し利用するか、今後の議論が待たれる。

図-5 配筋モデル
図-5 配筋モデル

 
 

施工への適用結果

施工ステップ

早期に、現況地形の3次元起工測量を行い、着手前に現場の担当者を含め、設計者と一緒に施工方法を検討することで、モデルの修正・作成はスムーズに進めることができた(図-6)。

  • 工事進捗に伴い変化する、仮設および建機などの配置に活用
  • 現場作業員への説明、打合せに活用
  • 地元説明に活用
図-6 施工ステップモデル
図-6 施工ステップモデル

 

統合モデル

全体の配置などの統合モデルは、工区内の進捗に合わせて更新した(図-7)。

  • コンクリート打ち込み時の生コン車の待機位置の検討(大型車の通行想定)
  • コンクリート打ち込み時の資材搬入路の検討
  • 場内土砂運搬時の10DT運行の検討
図-7 統合モデル
図-7 統合モデル

 

ARによる完成形の確認

出来上がった橋脚躯体や鉄筋モデルなどをモニターで閲覧やAR技術にて現場に投影し、作業員へ構築物のイメージの共有に努めた(図-8)。
 
その結果、作業方法の工夫改善の意見が出てきたことで、安全性と施工性の向上も見られた。

図-8 ARによる完成形の確認
図-8 ARによる完成形の確認

 

ICT基礎工

地上型レーザースキャナーにより場所打ち杭の位置を計測し、計測結果を3D CADにより基準高・杭芯・杭径を計測して出来形管理を行った(図-9)。

図-9 ICT基礎工
図-9 ICT基礎工

 

ICT構造物工(橋脚・橋台)

ICT基礎工と同様に、地上型レーザースキャナーによる橋脚の計測を行い、3D CADにより形状の計測、ヒートマップによる出来形の管理を行った(図-10)。

図-10 ICT構造物工 出来形ヒートマップ
図-10 ICT構造物工 出来形ヒートマップ

 

配筋の出来形管理

iPadを活用した鉄筋出来形検査技術の活用とAR技術による従来の人手による計測を自動化して、鉄筋ピッチの自動計測、帳票の自動作成により省力化を図った(図-11、12、13)。

図-11 iPadを活用した出来形計測風景
図-11 iPadを活用した出来形計測風景
図-12 鉄筋ピッチの自動算出
図-12 鉄筋ピッチの自動算出
図-13 ARによる配筋の確認
図-13 ARによる配筋の確認

 
 

連携の効果

モデル作成期間の2割短縮

モデルの作成・修正に当たり、現場の担当者、設計者と一緒に施工方法を検討ができたため、スムーズに作業が進んだ。
設計を担当した会社は、事業全体を理解、オリジナルのモデルも作成しているので、詳細な作業指示も必要なく、モデル作成期間は、施工者自らが自社で作成した場合に比べて約2割短縮できた。
 

余裕を持った工程管理

3Dモデルをフル活用することで、手戻りや段取り間違えなどの発生がほとんどなく、計画工程より余裕をもって完了することができた。
 

施工管理でのメリット

各モデルをモニターで確認したりやAR技術で投影することで、作業員へ構築物のイメージの共有ができ、作業方法の工夫改善の提案があり、安全性と施工性が向上した。
 
また、ICT基礎工、ICT構造物工(橋脚・橋台)の出来形管理により、
基礎 1基杭9本当たり約20時間
橋脚 1基当たり約56時間
鉄筋出来形検査は、おおむね1回当たり
1.5時間×16回現場職員の作業時間が短縮できた。
 
 

まとめ

設計側の成果

施工側との連携により、橋梁下部工施工で活用するために必要となるモデルが明確となった。
 
施工段階にならないと条件が決まらず、作成できないモデルも多く、事業関係者による情報の修正、変更、更新が適切に引継がれることが必要である。
 
該当範囲だけでなく、隣接された工区のモデルも重要であり、周囲のモデルがないと施工段階での利活用が制限されてしまうこともある。
 
真に生産性向上を図るためには、今回のような施工が決まってから改めて別に受注するか、詳細設計付き施工など、工事の発注形式などを業界全体で検討していくことも必要であろう。
 

施工側の成果

設計と施工が協働することにより、事前に課題を解決することができ、事業全体の効率化につながることが確認できたことから、これからも設計と施工の協働が生産性向上には必要である。
 

これからに向けて

設計モデルを真に活用するためには、施工時の情報が必要であり、現在の設計・施工分離から、設計・施工協調へと変更することが重要である。
さらには、設計・施工データを維持管理へと引き継いでいくための方策の検討も必要である。

図-14 完成形
図-14 完成形

 
 
〈参考文献〉
1) 土木学会誌第100巻第6号(2015.6)
2) 土木学会令和6年度土木学会全国大会第79回年次学術講演会VI-76、77
3) 国土交通省 土木設計業務等共通仕様書(案)第1編 共通編
 
 
 

八千代エンジニヤリング株式会社 技術管理本部CIM推進室
藤澤 泰雄 金光 都
株式会社植木組 技術開発部長 星野 和利 土木技術部
陶山 直人

 
 
【出典】


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