書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。
現在の建築積算とBIM積算に向けて
2026.07.21当社は、建築積算を専門とした事務所です。
大半の社員が図面からの数量の拾い出しに従事しています。
BIM活用について、いまだ知識が追いついていない中、日々悪戦苦闘しているのが現状です。
今回は積算を行う事務所の視点から、積算を行うときの公共建築工事積算基準を基に、BIMデータ活用の現状について説明させていただきます。
まず、われわれが普段業務をするに当たってベースとなる積算基準にはさまざまな基準と関連資料があります(図0-1)。
中でも私たちが設計図書から精算積算を行うときの基準となる「公共建築数量積算基準」と公共建築工事標準単価積算基準による「単価基準・参考歩掛」について焦点を当てていきます。
数量積算基準とBIMモデルとの算出数量の比較
従来の数量積算基準とBIMモデルでは何が違うのか、またそれらが何に影響しているのかを具体例を基にご紹介します。
今回は違いが分かりやすい例として、構造はコンクリートの体積、仕上げは部屋面積を中心に説明します(検証は国土交通省の「営繕BIMモデル」(図1-1)を参考モデルとし、BIMソフトはオートデスク社「Revit」、BIMから積算ソフトへの連携は日積サーベイ社「Helios Link」を利用)。
【構造編】コンクリートの数量について
数量積算基準による数量とBIM数量を比較したところ、部材ごとに計測方法と数量にバラつきがあることが分かりました(図1-2)。
●基礎梁:基礎間、基礎梁間または柱間をつなぐ横架材の内法部分(図1 -3) 設計寸法による断面面積とその長さによる体積がコンクリート数量となります。
BIM数量において以下の問題点がありました。
・独立基礎と基礎梁が接続する部分の控除がされていない
・基礎梁高さから接続するスラブ厚さ分が差し引かれていた
なお、基礎梁から控除されなかった接続部分は独立基礎の体積からも控除されていませんでした。
●柱:積算基準では各階床板上面間の部分(図1 -4)
1階柱を比較しましたが、BIM数量の方が多くなりました。
原因は独立基礎を含め2FLスラブ天端までで計算されていたためです。
なお、数量積算基準では基礎部と地上部に区分され、基礎部は独立基礎と基礎柱で部位が分かれます。
●大梁:積算基準では柱に接する横架材の内法部分(図1-5~1-7)
大梁では数量積算基準とRevitで計測方法が異なる3パターンの比較をしました。
BIM数量にはそれぞれ以下のような問題が見つかりました。
・片側が柱面からではなく通り芯からの計測になっている
・柱面までではなく、その柱に当たる別の梁成面までの計測になっている
・スラブ優先になっていて、スラブ厚さ分が控除されている
BIMソフトの仕様やモデルの配置方法によって数量の違いが出るのではと考えられます。
●床板:柱、梁などに接する水平材の内法部分(図1-8)
Revitでは梁優先ではなく、スラブ優先となっています。
梁部分もスラブの数量となっているため、その分コンクリート数量が大きくなっています。
●壁:柱、梁、床板などに接する垂直材の内法寸法(開口部を除く)(図1-9)
高さの計測方法の違いによりBIM数量の方が少なくなりました。
●数量差から考えられる単価への影響
検証モデルは基礎部・地上部の区別がありませんでしたが、市場単価のコンクリート打設は基礎部や地上部で単価が異なります(図1-10)。
BIMソフトの算出数量をそのまま利用することでコストへ影響が出る可能性が考えられます。
【仕上げ編】部屋面積について
仕上げの計測基準について触れていきます。
仕上げの場合、数量積算基準では躯体または準躯体面からの計測となります(図1-11)。
Revitでの部屋面積の計算は躯体面(軽鉄間仕切りの場合はボード表面)からの計測のため、仕上げ代が0.05m以下の場合は仕上げ厚さ分、積算基準による算出数量と誤差が発生します。
内部室の面積について数量積算基準とRevitによる算出数量を1階の事務室などの5部屋について比較しました(図1-12、-13)。
各室とも、値だけを見ると面積の差はほぼない状態でしたが先の理由により数量積算基準による面積が多くなるはずですが、事務室1-1では数量の差が少ないように見えます(図1-13)。
そこでRevitの面積根拠を見ると、柱小口が控除されていないようです(図1-14)。
この面積差は仕上げ代および軸厚補正の面積増と柱小口の面積減が相殺され、たまたま近い値になったようです。
また、仕上げの計測点が躯体および準躯体面からの計測、数量積算基準の控除基準など、数量としては細かく、差がないように見えますが、物件の規模が大きくなるにつれ、この数量の差はおのずと大きくなります。
●算出方法の差による単価への影響として単価について考えたとき、参考歩掛りでは仕上げ材は1m²当たり材料費1.05m²とロスを考慮しています(図1-15)。
躯体・準躯体からの計測、0.5m²以下を控除しないルールの上での歩掛りとするならば、単価にも影響が出る可能性があります。
これらの理由によりBIMソフトだけでは精算積算で求められる数量の精度が得られないことがお分かりいただけると思います。
BIMデータ連携における現状
当社では精算積算の場合、計測方法の統一と計算根拠を明確にするために、 Helios Linkを用いて、BIMソフトから積算ソフトへ連携して積算を行っています(図2-1)。
そこでよくある問題点として下記のような理由が挙げられます。
・BIMデータの活用に取り組んでみるものの、イメージどおりの連携ができない
・業務期間が決められているため、時間がかかることにちゅうちょして諦めてしまう
・BIMデータ自体に問題があったときに対処できない
連携ができず、BIMデータの活用を諦めて、従来の手拾いや配置拾いに戻ってしまうケースをとして、
例1)階段室の壁の位置が、構造モデルでは通り芯、意匠モデルでは柱面となり相違(図2-2)
例2)内部室、間仕切り、開口部など、主要な配置情報は連携できているものの、躯体の柱・梁などが連携できない(図2-3)
例3)上記より躯体を構造モデルの配置データを重ね合わせることで補完をしようとした場合、構造・意匠それぞれのモデルで通り芯が食い違い、重ね合わせができない(図2-4)
といった事例がありました。
例2・3については積算ソフト側の機能で対応できる問題ではありますが、従来の拾い出しに慣れている積算担当者からするとBIM連携は使えないと判断され、元の積算手法に戻ってしまうケースもあります。
現在のBIM連携は積算開始の準備作業になるため、連携後も配置の調整、仕様の登録、各種補正、図面に記載がない関連項目の計上など、内訳書作成までにはいくつもの工程を経ることになります(図2-5)。
当社の実績では、連携によって得られる作業は全体時間の5%~10%程度が現状ですが、大規模病院などの床面積も広く、似たような部屋名が多い場合に、構造・間仕切りの配置や仕上げ表と内部室の紐づけについて大幅な効率UPが期待できす。
この5%~10%はBIM積算の大事な第一歩だと考えています。
まとめ
1900年代後半より、図面から三角スケールと電卓で算出していましたが、これからの積算技術者はBIMで得られるデータと従来どおりの積算を上手に取り入れられる知識、そして技術の習得が求められる時代となります。
やがてBIMに積算情報が集約される時代に向けて、積算基準と整合したBIMモデル基準が必要になると思われます。
数量積算基準、BIMモデル、積算担当者の意識改革でBIMを用いた精算が行われることが今後主流になると期待しています。
【出典】
最終更新日:2026-07-21
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