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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

海外におけるBIM動向(ドイツ・ベルリンサミット報告)―生成AI・IoT分野とのopenBIM連携へ—

2026.08.17

はじめに

一般社団法人buildingSMART Japan(以下、bSJ)は、建設業界におけるデータ流通・相互運用の促進を目的として、国際組織buildingSMART International(bSI)の日本支部として1996年に設立され、BIMデータの国際標準規格であるIFC(Industry Foundation Classes)や、BIM推進に関連する標準化活動を、国際標準化機構(ISO)、欧州標準化員会(CEN)などと協調しながら推進してきている。
近年、南米からメキシコ支部、エクアドル支部などが新たにbSIに加盟している。
 
2025年9月には、世界各地からBIM関係者がドイツ・ベルリンに集い、建設産業におけるデジタル化についての標準化や実用化に向けての情報共有、議論を行うbSIサミット会議が開催された(図-1)。
49カ国から登録者765名(650名が来場)が参加、特に日本支部からは58名が登録し、全体で第2位の参加規模となった(図-2)。

図-1 buildingSMART支部の状況(2025年)
図-1 buildingSMART支部の状況(2025年)
図-2 buildingSMARTドイツ・ベルリンサミットの全体会議場
図-2 buildingSMARTドイツ・ベルリンサミットの全体会議場

 
今年はドイツ支部設立30周年ということで、30周年記念イベントがサミット会議期間中に開催された。
ドイツの建設投資においては、再生可能エネルギー関連分野が活発化しており、送電網ならびに蓄電設備の整備が進展している。
一方、住宅建設は金利上昇の影響を受け、減速傾向にある。
エネルギー市場においては、原子力発電の全廃を受けて再生可能エネルギーが主力電源となり、2024年には総発電量の6割を占めるに至った。
うち太陽光および風力発電の比率は5割近くに達しており、季節変動への対応および電力系統の安定化が今後の重要課題である。
エネルギー政策では、EUの「グリーンディール」に基づき2050年までに炭素中立を目指し、再生可能エネルギーの拡大や建築分野でのエネルギー消費削減に取り組んでいる。
また、EU環境政策にのっとり、循環型経済や廃棄物削減も重要な課題とされている。
 
本報告では、bSIサミットの最新情報を基に、世界各地域におけるISO19650に基づいたBIMプロジェクト推進の状況、openBIM活用の最新状況について紹介する。
 
 

サミット概要

基調講演概要

今回のサミット会議の基調講演プログラムは、建設業界やデジタルエンジニアリング分野における協働、オープンスタンダード、業界連携といった重要テーマに基づき、未来志向の議論や知見共有を目的としている。
基調講演セッションは、プレゼンテーション、パネルディスカッション、TEDトーク形式など、多様な形式で構成されている。
サミット会議全体を通じて、以下の方向性が示された。
 
●協働とオープンスタンダードの重要性:
建設業界における協働の重要性と、 openBIM活用の推進が議論されている。
BIMプロセスの個別最適化ではなく、業界全体の効率性と成果向上を目指す動きが強調されている。
 
●建設業における循環型経済の促進と持続可能性向上:建設業界を含むさまざまな産業で製品に関する情報をデジタル化して追跡可能にし、循環型経済の促進と持続可能性の向上を目的としたデジタルプロダクトパスポート(DPP: Digital Product Passport)とBIMデータ連携の重要性が指摘された。
 
●持続的な学習とスキルの向上:国際
BIMプロフェッショナル認証プログラムの現況と、ドイツ支部、オーストリア支部を中心に展開されている実践編の最新情報が共有された。
日本でも実施されている基礎編の世界各国の取得者数に関しても報告された(図-3)。

図-3 BIMプロフェッショナル認証基礎編取得者数 (ドイツ支部:11,890名、日本:970名)
図-3 BIMプロフェッショナル認証基礎編取得者数 (ドイツ支部:11,890名、日本:970名)

 
●テクノロジーと次世代ビジョンの探求:
AIやIoTなど次世代技術をopenBIMと連携する未来志向の取り組みが紹介されており、業界の技術革新とデジタル化の加速が議論された。
 
●実務の最前線からの学び:公共発注者
によるopenBIM導入事例やサプライチェーン連携の実例が共有され、現場での成果や課題が具体的に示された。
 

国際分科会のハイライト

Domain(国際分科会)は、openBIMの標準と普及展開を目的とした、業界専門家メンバーから構成されるオープンな分科会活動である。
Domainは、対処すべき課題設定と、それを解決するためのIFC(Industry Foundation Classes)、IDM(Information Delivery Manual)、MVD(Model View Definition)、bSDD(building SMART Data Dictionary)、Technical reportなどのopenBIM標準および関連ドキュメントの策定を、プロジェクトとして推進する。
Domainは、運営委員会(Steering Committee)を設置し、ユーザー主導の各分野・領域の発展のための戦略的なロードマップを策定し、分科会活動やプロジェクト活動を管理運営する。
 
現時点で、bSIのDomainは以下の分野で設置され、活動を行っている。
 
・Airport Domain(空港分科会)
・Building Domain(建築分科会)
・Construction Domain(施工分科会)
・Electrical Domain(電力分科会)
・Infrastructure Domain(インフラ分科会)
・Maritime Domain(海事分科会)
・Product Domain(製品分科会)
・Railway Domain(鉄道分科会)
・Regulatory Domain(建築確認分科会)
・Technical Domain(技術分科会)
 

スマートビル分野へのopenBIM活用

建築分科会(Building Domain)において、スマートビルにおけるIoTデータ統合のためにIFCデータからIoT分野の標準データモデル(IoTオントロジー)へ変換する手法の確立を日本、英国支部メンバーを中心に行っている。
本プロジェクトでは、IFCが持つ空間情報(建物・階・部屋・ゾーンなど)、設備機器情報(空調・電気・機械・センサーなど)を、建物のリアルタイムデータを取得するセンサーノード定義情報と連携させて、スマートビルの建物デジタルツイン(IoTオントロジー:Brick, Real Estate Coreなどの標準)へデータ連携するための情報要件策定を行っている(図-4)。
 
そのために、bSUK(I英国支部)においてセンサーノード分野の設計要件をまとめているBDNS(Building Device and Asset Naming Specification)と協調して、設備機器デバイスの命名規則をIFC定義とマッピングする対応表を策定してきた。
また、それらをbSDDに登録して変換プロセスで活用できるようにする予定である(図-5)。
 
このプロジェクトは、一般社団法人スマートビルディング共創機構と連携して活動を行っている。

図-4 ビルOS (建物デジタルツインデータ)とIFCの連携イメージ
図-4 ビルOS (建物デジタルツインデータ)とIFCの連携イメージ
図-5 BDNS命名規則とIFC間マッピング定義のbSDD登録
図-5 BDNS命名規則とIFC間マッピング定義のbSDD登録

 

bSI Awards 2025

buildingSMART openBIM Awardsは、国際的なopenBIM推進を目的として、buildingSMARTが主催する年次コンペティションである。
このアワードは、IFC(ISO 16739)やISO 19650などの国際標準に準拠したオープンBIMプロジェクトを評価して、オープンで協調的なデータ共有基盤を促進し、業界全体の効率向上と持続可能性の向上に寄与することである。
特長としては、プロジェクトの革新性、標準の活用、実用性が評価基準となり、建築、インフラ、運用管理、ソフトウエアテクノロジーなど9つの分野が対象である。
 

2025年アワード優秀賞

アワードは年一回の開催で、春に応募を開始して、秋のサミット国際会議において設計、施工、運用・維持運営、学生、研究などの部門ごとの表彰を行っている。
2025年度も、全世界から129の応募があり、33支部から232名の審査員が参加した。
サミットにおいてファイナリスト22チームの発表があり、最終的に分野別優秀賞が発表された(表-1)。

表-1 buildingSMART openBIM Awards 2025優秀賞
表-1 buildingSMART openBIM Awards 2025優秀賞

 

国土交通省が日本初優秀賞を獲得

国土交通省を中心とする産学官のチームが、今回日本初となるインフラ設計部門の優秀賞を受賞した(図-6)。
この受賞は「openBIMを用いた設計業務から数量算出までのBIM/CIM分野自動データ連携システムの開発」に対するもので、国際標準に準拠した高度なシステム間連携技術とその応用性が高く評価された結果といえる。

図-6 アワード発表時の様子 openBIM Awards 2025 Designfor Infrastructure Winner(国土交通省)
図-6 アワード発表時の様子 openBIM Awards 2025 Designfor Infrastructure Winner(国土交通省)

 
参考:国土交通省ニュースリリース:「我が国産学官チームがopenBIM Awards 2025で日本初の部門最優秀賞を受賞!~積算におけるBIM/CIM活用の取組が国際的に評価~」:https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001251.html
 
 

openBIM最前線

ISO19650普及へのトレーニング教材

最近のサミットでは、従来の講演形式に加え、参加者同士が体験を通じて学ぶインタラクティブなセッションが増えている。
その代表的な例として、 buildingSMARTベネルクス支部が開発した「ISO 19650学習ボードゲーム」が挙げられる(図-7)。
 
このゲームは、ISO 19650に基づく情報マネジメントの概念を、専門家だけでなく初心者にも分かりやすく体感できるよう設計されており、プロジェクトにおける情報の流れを実践的に理解することができる。
オープンソースとして開発され、複数支部が協働して国際版を完成させた点も、buildingSMARTコミュニティーの連携の一つの方向性を示すものである。

図-7 ISO19650ボードゲーム(日本語版)
図-7 ISO19650ボードゲーム(日本語版)

 

オープンソースによるIFC実装の広がり

今回のサミット会議、アワード提出資料などから、IFCデータを扱うシステム開発に、以下のようなオープンソースソフトウエアの活用が広がってきていることが分かった。
 
IfcOpenShell:IFCデータ処理用ライブラリー
IFCデータから属性値を取得、IFCオブジェクトを生成、IFCデータの入出力、IFCデータを更新したりすることを可能にするソフトウエアライブラリーであり、 Python言語から活用することができる。
アワードに提出されているさまざまなプロジェクトにおいても、IFCデータ処理を行う部分で活用されてきている。
社内システムの構築においても、IfcOpenShellを活用してIFCデータの入出力を実装する例が増えてきている状況である。
 
参考:IfcOpenShell-The open source IFC toolkit and geometry engine: https://ifcopenshell.org/
 
Bonsai(Blender BIM):
最近のアワードやopenBIM活用事例において、Blender(ブレンダー)という3D CADによりIFCデータを扱う手法が出てきている。
Blenderはオープンソースの3D CADソフトウエアで、CG製作、2Dアニメーション製作などで活用されている。
アドオン形式の拡張機能でさまざまな用途におけるプラットフォームとしても利用可能である。
 
Bonsai(Blender BIMの新名称)とは、BlenderをBIMモデリングに対応させるためのアドオンで、オープンソースプロジェクトとして公開されている。
このアドオンにより、建築設計やBIMワークフローに特化したツールとして、壁やドアなどの要素に意味を与えてモデリングすることが可能となる。
また、作成されたモデルをIFCデータとして属性情報を含めて編集、出力することができる。
同様にIFCデータを読み込んで幾何形状情報を表示、属性情報へのアクセスができるので、IFCビューワやIFCデータ処理のプラットフォームとしての活用へも広がりを見せている(図-8)。

図-8 BonsaiにてIFCデータを読み込んだ様子
図-8 BonsaiにてIFCデータを読み込んだ様子

 
参考:Bonsai, An add-on for beautiful, detailed, and data-rich OpenBIM with Blender: https://bonsaibim.org/
 

生成AIとIFC

昨今進歩が著しい生成AIが、BIMの分野においても活用され始めてきている。
今回のアワードでは、特に研究、テクノロジー部門において、生成AIを活用するテーマが多く見られた。
ここでは、BIMと関連する生成AIの技術要素について概要を紹介する。
 
●大規模言語モデル(LLM:Large Language Model):Chat-GPT、Gemini、Claudeといった自然言語処理(NLP)を中心とした分野で使用される人工知能の一種。
 
●モデル・コンテキスト・プロトコル(MCP:Model Context Protocol):LLMを外部システムと柔軟に接続するための仕組み。
MCPサーバーはデータソースや特定のソフトウエアとの接続機能を提供し、MCPクライアントはLLMと連携してそれらを呼び出す。
 
MCPの実装により、BIMソフトウエアとLLMを連携させる仕組みが実現しつつある。
BIMソフトウエアには、モデリングツール、IfcOpenShellのようなIFCデータ処理ライブラリー、共通データ環境(CDE)などが含まれる。
MCPを介することで、これらをデータソースやBIMモデルとしてLLMと結び付け、より高度な連携を可能にする。
 
IFCと生成AIを連携させる仕組みとして、以下のような取り組みが出てきている。
Bonsai MCP:IFCに対応した3D CAD(Bonsai)をMCPサーバーによりClaude(LLM)と接続する仕組みである。
対話的に、IFCデータの分析と生成・操作を可能にする。
具体的にはIFCデータのエンティティー、属性情報、プロパティセット情報の検索、作成や修正などの操作などが可能となる。
 
MCP4IFC:IFCデータとLLMを接続するフレームワーク開発の研究プロジェクト。
自然言語指示を基に、建物要素の生成や既存モデルの編集を行う機能を備え、情報検索のためのツール群も提供する。
 
参考:MCP4IFC: IFC-BASED BUILDING
DESIGN USING LLM:https://show2instruct.github.io/mcp4ifc/
 

今後の展望

本稿は、ドイツ・ベルリンで開催されたbSIサミットを中心に、海外のopenBIMの最新動向を紹介した。
国際標準ISO19650の普及、スマートビル・IoTとIFCの連携、オープンソース活用、生成AIのopenBIMへの応用など、建設業界のデジタル化と持続可能性向上に向けた取り組みが多角的に議論された。
日本チームのbSIアワード初優秀賞受賞も含め、今後のBIM推進への期待が高まっている。
来年は一般社団法人buildingSMART Japanが設立30周年を迎える節目であり、国内外の最新動向を積極的に取り入れ、openBIM標準の普及に一層貢献していきたいと考えている。
 
 


参照情報:
・building SMART open BIM Awards Winners:https://www.buildingsmart.org/openbim-awards-program/
・ISO 19650 Game:https://buildingsmart.be/download-de-building-information-management-game/
・buildingSMARTドイツ支部30周年記念:https://web.buildingsmart.de/termin/wir-feiern-30-jahre-buildingsmart-deutschland
 
 
 

一般社団法人buildingSMART Japan理事(技術フェロー)
鹿島建設株式会社
足達 嘉信 博士(工学)

 
 
【出典】


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最終更新日:2026-08-17

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