書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。
躯体専門工事会社のBIM活用成功例― 10~20代社員が5割を超える若いパワーで活用拡大へ —
2026.08.03躯体専門工事会社による積極的なBIM活用
株式会社東京朝日ビルドは、株式会社竹中工務店の職人養成所であった「建設技能工養成所」を起源にスタートし、1972(昭和47)年に型枠・鉄筋工事の専門会社として設立された。
現在は、同社の完全子会社として、鉄筋・型枠・プレキャストコンクリート(PC)各種工事に、リニューアルに絡む躯体の補強工事まで手がけている。
東京ドームをはじめ、ミッドタウン八重洲、渋谷の宮下パーク、リニューアル案件では横浜市庁舎の躯体補強工事など大型プロジェクトの実績も豊富だ。
職人の養成機関を前身として引き継ぐ伝統を尊重し、現在も、新卒社員はまず現場に配属され、職人として貢献できるように養成している。
現場でモノ作りをする専門工事会社としてのプライドを大切にし、企業スローガンには「CRAFTMANSHIP with PRIDE 確かな品質、誇りあるものづくり」を掲げる。
今回取材したのは、2024(令和6)年に東京朝日ビルドの社長に就任して以来、将来のBIM全面活用に向けた積極姿勢にかじを切った広瀬慎吾・同社取締役社長と、BIM推進の中心として活躍する工場部鉄筋グループの内海希陸氏。
両氏にこれまでの経緯と今後の課題について伺った。
U’s Factoryによるサポートで一気に推進
広瀬社長のトップ就任時、既にBIMは導入されていたが、限られたプロジェクトで一部の社員が、配筋の納まり検討など部分的に行っていた程度であった。
そこで、数社のBIM推進関連のソフトから株式会社U’s Factoryの「BI For ac」をパートナーに選択した。
BIMに関する知識や経験が少なくてもすぐに導入できる手厚いサポート体制も導入時の信頼につながった。
「U’s Factoryの上嶋泰史社長に来社いただき、関係者の前で丁寧に機能説明をしてもらいました。
Webサイトやカタログではなかなかメリットが伝わらないので、生の声による説明で理解を早めました。
もともとBIMは導入されていたので、社内にも自然に受け入れられました」
広瀬社長は、導入時のスピーディーな対応をこう語る。
このとき「AI Structure」「BI Structure」も併せて導入された。
2D図面を読み込んで入力作業の手間を大幅削減
BIMを活用した業務は、内海氏がマンツーマンで数日間行うU’s Factoryの集中研修を受講するところから始まった。
内海氏は当時の状況を次のように語る。
「私は入社後は現場で経験を積んだため、BIMは多少使ったことがある程度で、むしろパソコンは苦手で2D図面による積算業務を行っていました。
以前使っていたソフトは2Dで全ての部材の寸法を手入力する必要があったのですが、その点で「AI Structure」は2D図面の図形や文字、記号などの情報をそのまま読み取れるので助かります。
部材リストは大型案件になればなるほど何百というボリュームになりますが、PDFデータを読み込ませれば7~9割はAIが読み取ってくれるので大幅に手間が削減されます」
内海氏によれば、一般的に「AI Structure」だと5分もかからず読み取り、手直しする程度で済むが、2D図面からの手入力だと構造図を別画面で用意して、確認しながら突き合わせを行うので1日あるいは2日かかることもあると言う。
また、画面の小さな数字を見続けなければいけないのでストレスも重なる。
竹中工務店との業務ではSTB(ST-Bridge)データで提供されるので、すぐに3D情報として取り込めるが、他社で設計された場合、PDFでの提供ができないケースが多く、部材リストと2D図面の照合が必要となるが「AI Structure」によって作業が大幅に効率化された。
「BI For ac」ならではの実務の効率化
「BI For ac」では“3Dで見られる”というBIMの原点とも言えるメリットも、多くの効率化を生んでいる。
内海氏は次のように語る。
「現場での打合せにパソコンさえ持って行けば、同じ3Dモデルを見ることで、言葉だけで伝わらない点もイメージが共有でき、理解が早まります。
私自身にとっても、3Dモデルを通じて自分が知らなかった配筋の方法が自動的に情報として得られるので勉強になります。
またBIMによる業務を通じて、現場側の目線ではなく、管理側の目線を持てるようになりました。
現場経験から、実際に鉄筋や型枠を組む職人の立場で組みやすい選択をすることもありますが、一方でコスト面からみて何名の人員で納まるかを検討し、低コストで納まる方法を追求するなど、現場での人員の配置も考えて組めるようになった点ではプロジェクトに貢献できているかと思っています」
広瀬社長も「若手社員の場合、先輩が組んで自分たちは材料を運ぶという場面も多いので、BIMを通じて描きながら覚えてゆくケースも多くなるでしょう。
2Dによる作業では平面的な干渉は分かりますが、3Dで見ると現場で鉄筋を組むように納まりの確認をできるので手戻りも減りますね」と期待を寄せる。
設計変更への対応でも、内海氏は「PDFデータを提供してもらって3Dモデルで見ながら変更箇所のみを修正すればよく変更箇所も明確です」とメリットを挙げる。
対して2Dでは「部材符号別に情報が100くらいある場合など、数字が羅列された部材リストをスクロールして見つけなければなりません。
検索をかけても見落としや選択ミスに注意が必要です」と言って3Dの効果を際立たせた。
こうしたさまざまなメリットが奏功し、施工に問題がないかを確認・調整する作業もBIMモデルを立ち上げて手直しをする程度で済むため、2Dで1カ月かかっていた行程は、前述の入力作業の効率化も加わって50%に短縮されたと言う。
作業ニーズに応える細部の操作性の工夫
広瀬社長は「かゆい所に手が届くと言うべきか、こんな機能があれば使いやすい、という工夫が盛り込まれているのがいい」と述べ、現場のニーズを捉えた細部の機能の優秀さに言及した。
これには内海氏も「配筋リストなどをBIMモデルと同じ1画面で見られるので、打合せなどもスムーズです。
別画面を開いて見ていくと、少しずつズレが発生してきて最終的に大きなズレが生じることがありますが、そうした心配がないため手戻りも少なくなり、全体として時間短縮になります」とうなずいて、作業工程の効率化効果を補足する。
同社では別の鉄筋積算ソフトも並行して使っているが、内海氏は、ここでも「BI For ac」の精度の高さを感じている。
「他のソフトでは梁と柱の取り合いなど複雑な箇所では若干ズレが生じるのですが、『BI For ac』は斜めに通ったりすることもなく、正確に真っすぐ通ります。
また、鉄筋は前と後の作業も考えて組むのですが、そのための段取りがうまく反映されています」
さらに機能をカスタマイズする際の柔軟な対応が運用を助けている。
広瀬社長は「他社ソフトでは『この機能はあるが、そういった要望された機能はできない』と言われがちですが、U’s Factoryさんは常に機能がブラッシュアップできるのでありがたいです。
現在は、鉄筋組立図の出力までは可能なのですが、これを当社の書式で出力できないか相談しています」。
内海氏も「要望は私からも提出しています。
操作方法なども、U’s Factoryさんにその都度、確認しながら行っていますが、タイムリーに1日くらいで返事が返ってくるので滞りなく作業が進行します」とフットワークの良さを取り上げる。
このように細部にわたって現場のニーズに応える操作性のよさが、BIM担当者の作業を全工程にわたって効率化する。
省人化が必須の時代に向けてますます高まるBIMの重要性
「BI For ac」を導入して1年に満たないため数字的な成果はこれからだが、広瀬社長は営業や採用面での副次的効果を挙げた。
「元請け会社もBIMを推進しているので、BIMを使っている躯体工事会社という特長は、一つの営業ツールになり、実際に声がかかっています。
また、人材採用の面でも、建設業で最先端の取り組みを推進している会社であると高校生にアピールできます。
また、職人の高齢化や少子化で将来を担う高校生が減少する中で、今後は省人化が求められます。
そういう将来を見据えた場合、ますますメリットが顕著になると考えています」
広瀬社長は、このように経営面の効果も認めているからこそ「定着を目指すためには、いまが重要な時期と位置付けています」とBIM推進の重要性を強調する。
「専門業者としてBIMを使って施工や加工帳にまで活用している会社は余り聞かない」と自負するが、だからこそ一層の使用拡大が望まれている。
現在はBIM推進室のような専門の部署は設けられていないが、鉄筋グループに在籍しU’s Factoryの講習を受けた別の社員は、2Dによる鉄筋の図面作成経験が豊富で、打合せを通じて現場ニーズもつかんでおり、作図ノウハウを生かした視点からBIM業務に取り組んでいる。
同社社員は10代~20代が約55%(2025年1月現在)を占める若い会社だ。
広瀬社長は「先生や親御さんに信頼できる会社であることを知ってもらうため、年数をかけて学校訪問を続けBIMの取り組みを出前授業でプレゼンテーションしてきた活動、Instagramによる発信などが相乗効果となって実を結び始めている」と語るとおり、今年も高卒新人を10人採用、来年も14人を採用予定だ。
そんな年齢構成だけに「若手社員はBIMによる作業の飲み込みが早い」と目を細める。
とは言え、市販のソフトでは操作方法でつまずいて止めてしまうケースが目立つが、ここでも質問に迅速に対応するU’s Factoryの手厚いサポート体制が寄与しているようだ。
未来を見据えたBIM構想若手社員の力が担う
旺盛な採用活動を反映し、今年はCAD採用として初めてBIM推進を見据えた高校生を2名採用した。
広瀬社長は「今後はBIMの全社的活用に向けて人材をさらに増やし、いずれBIM推進室のような部署を設けたいですね。
若い社員が多いという強みを生かして、若い力を育成して活躍してもらうつもりです」と、BIM活用のさらなる拡大を志向する。
その先頭に立つ内海氏も「『BI For ac』は型枠形状も3D化でき工法検討までできるので、現在は鉄筋だけですが、将来的に両方できれば自ずと仕事も入ってくると思います。
(U’s Factoryの)上嶋社長の説明を聞いた際の『AI』という言葉が新鮮で、将来的にもこのソフトは期待できると思いましたが、その感覚はますます高まっています」と信頼を寄せる。
建設業界では設計初期の段階に負荷をかける「フロントローディング」が重視されているが、広瀬社長は既にこの取り組みも始めている。
「構造図が固まる前の段階でデータをもらって、躯体工事会社としての配筋・納まりの方向性を提案し、それを構造図に反映するステップが確立できれば、それが本当のフロントローディングだと思います。
現在、内海がトライして打合せを行っています」
東京朝日ビルドのBIM構想は、若手社員に成長できる職場環境を提供しながら、その若い力の結集によって実現されていくに違いない。
【出典】
最終更新日:2026-08-03
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