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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

BIMによる施工プロセスを変革する挑戦と未来構想― 100年の歴史を持つ鍜治田工務店が挑むBIM戦略と若手育成、現場活用の最前線 —

2026.08.03

はじめに

大阪市に本社を構える鍜治田工務店は、2021年に100周年を迎えたゼネコンである。
 
BIMは2022年より本格的に導入を行い、2025年よりBIMの推進と専門部署によるBIM活用組織の体制構築を目的として、BIM戦略部を発足した。
 

BIM導入の動機と取り組み

日本の建設業界は、技能労働者の高齢化・減少や、生産性の停滞といった構造的課題に直面しており、従来の業務プロセスの限界が明確化している。
当社は、この難局を打破するための「起爆剤」として、BIMの本格的な導入と活用を進めている。
BIMは、設計、施工、維持管理の全ライフサイクルで情報を一元化し、関係者間の連携を劇的に改善する「次世代の必須手法」であり、この革新なくして業界の未来は語れない。
 
当社の施工BIMの具体的な実践内容を報告する。
独自のファミリ開発と施工図作成の工夫、現場における3Dモデルの革新的な活用事例、そして2D CADとの互換性という大きな壁を乗り越えるための連携ソリューションを詳述する。
さらに、若手育成プロジェクト「BIMチャレンジャーズ」の活動と、全社的なBIM推進を担う組織体制の将来構想について、具体的な課題解決に向けた取り組みを含めて紹介する。
 
 

仮設計画モデルの活用

2021年ごろからArchicadとsmartCON Planner for Archicadを導入し総合仮設モデルや基礎工事ステップモデルの作成を行ってきた。
現在では、全現場でモデル作成を実施している。
 

総合仮設モデル

Revit構造図モデルやヘリオスモデルをIFCデータで読み込み、仮囲いや搬入車両軌跡、工事看板、足場ステップモデルを作成している。
営業段階から総合仮設モデルを作成し、Google EarthやGoogle Mapsと組み合わせることで施工中のイメージが伝わりやすくなり、顧客との合意形成に大きな効果があった。
実際に受注にもつながっている。
 

基礎工事ステップ

着工から基礎コンクリート打設までの施工ステップを基礎工事ステップとしている。
2D施工計画図面を基に工事ごとにモデルを作成し、検討会で活用している。
業者さんへの説明や若手社員の施工イメージの共有にも活用している。

 
 

連携取り組み

ICT建機活用や点群との連携、工程表との連携を行っている。
 

ICT建機

2024年3月GLOOBE Constructionにて、掘削地盤モデルを作成し、LandXMLデータに変換することで、ICT建機による自動掘削活用を実践した。
モデルで作成したデータを基に掘削することで施工誤差を減らすことが可能である。
しかし、衛星データを受信できる周辺環境が開けた土地のみ利用可能であるため、使用可能な現場が少ない。
今後、工場現場での活用件数を増やすことを目標にしている。
 

点群データ活用

2024年10月LixelKity K1を導入し計画敷地の点群データを収集し、施工計画に活用している。
敷地の広さによるが敷地内外を歩いて20分程度で収集可能である。
 
収集したデータを点群処理ソフト(LixelStudio)に読み込むことで点群データの確認ができ、周辺道路・架空線・隣地建物高さなどを確認することができる。
また、必要に応じて点群の削除や.e57へのデータ形式変換ができ活用できるBIMソフトの幅が広がった。

 

点群データ+BIM ①土量算出

取得した点群データを用いたBIM連携において、掘削土量の算出を行っている。
当初は、測量図からArchicadを使用して地形モデルを作成し、最終掘削形状モデルとの差分により土量を求めていた。
しかし、点群処理したデータをGLOOBE Constructionに読み込むことで、最終掘削形状モデルとの差分から掘削土量を算出することが可能となった。
この結果、測量図地形モデルを作成する時間が短縮され、正確な地形データから掘削土量を求めることができるようになったため、合意形成に大きな効果があった。

 

点群データ+BIM ②揚重計画

点群データから架空線の高さを正確に把握し、揚重計画に活用している。
住宅街の狭小地においてTC解体時の旋回台を揚重時、架空線との接触がないか他部署で2D図面にて計画した内容を点群とsmartCON Planner for Archicadの重機モデルを使用し明確化した。
これにより、架空線との接触の有無をさまざまな角度から確認でき、施工計画に活用することができた。

 

4D工程表

2025年10月Navisworksにて総合仮設モデルや基礎工事ステップをIFCデータで取り込み工程表どおりに動くモデル作成を行った。
今まで断片的にモデルにしていた部分を明確化させることで、より細かな検討をモデルからすることができる。
躯体モデルはRevitで作成しており、そのままNavisworksで使用できる。
仮設関係は、Archicadで作成しているため、NavisworksとArchicadとの連携が不十分であり、モデル作成に手間と時間がかかる点が課題である。
今後、傾斜地や施工難易度の高い物件での作成を、計画段階で4Dモデル作成の実施、工程表の再検討の活用に役立てていきたい。
 
 

BIM施工図導入の契機と独自の挑戦

ゼロからのファミリ構築

BIM施工図モデル作製当初、構造計算ソフトのデータをRevitに変換した柱・梁モデルと設計部で作製したRevit意匠モデルの利用を試みた。
モデルの見た目には素晴らしいものが出来上がっていたが、施工図として求められる高い詳細度(LOD)と汎用性が不足していることが判明した。
施工図は、現場でミスなく「ものをつくる」ための最も重要な情報源である。
このため当社では、社内基準に沿った高精度な「ファミリ」(部材データ)をゼロからオリジナルで作成した。
ファミリは、形状情報だけでなく、パラメータに設定した記号などの属性情報全てを内包する「物体」として作成した。
 

具体的なカスタムファミリの例

①柱ファミリ
四方増し打ち寸法も入力できるように作成

 
②梁ファミリ
上下左右の増し打ち情報に加え、貫通不可エリアを設定できるように作成

 
③開口部ファミリ
ドア、窓の開口情報に加え、ヌスミなども入力できるように作成

 
これらのファミリの属性情報は、施工図に必要な記号に自動反映されるようパラメータを設置してあり、間違いがあれば、正しい情報は表示されない。
手動入力による数字や文字の入力ミスがなくなり、平面図・断面図など、全ての図面に反映されるため、2D図面作成で見られた図面間の不整合を防ぐことができる。
また、現場活用が進む中で必要なファミリがそろってきており、現在では、モデル作成スピードの向上にも大きく貢献している。
 

BIMでの躯体図への移行に向けて

Revitでは、2Dの平面図を描いているように見えても、実際には高さや詳細情報が組み込まれた3Dモデルを構築している。
これにより、平面図、立面図、断面図、詳細図を別々に描く必要がなく、必要な箇所をカットするだけで連動した図面が作成できる。
躯体図面の記号はタグ機能により、パラメータを基に符号や数値が自動入力される仕組みを構築している。
 
提出する施工図は、シートに、図面枠、平面図、凡例などを並べるだけで作成でき、修正があれば、モデルを変更するだけで、作成したシートが全て変更されるため、図面ごとの修正は不要である。
 
また、連通管や人通口は穴を開けるファミリとして作成することで、梁ファミリに実際に穴が開いた状態でモデル化される。
この「正確な3Dモデルの構築」が、正確な数量算出や干渉チェックの基盤となる。

 

2D CADとの互換性という壁を乗り越える

BIM化を進める中で、依然として現場 や協力会社から2DCAD図面が求められる現実は無視できない。
Revitで作成した2DCADデータは、他社CADソフトへの変換時にコンマミリ単位の寸法誤差といった問題が発生していた。
この課題に対し、当社は外部知見を積極的に導入し、データ変換の誤差を解消した連携フローを確立した。
 
図面位置を変えることなく、レイヤーも分かれた正確な図面を作成することが可能になった。
これは、BIMモデルの正確性を損なうことなく、現場の慣習とニーズに対応するための極めて重要な技術的突破口である。
全てをBIMで作成し図面化するのではなく、現場で必要な情報を加筆することで、より正確な施工図作成が可能となった。
 
 

BIM活用による施工プロセスの革新と具体的な成果

現場の可視化とコミュニケーション革命とサプライズ

現場におけるBIM活用の最大の効果は、情報の可視化によるコミュニケーションの質の向上である。
当社は、DOCS、BIMxといったオンラインビューアを積極的に導入し、現場員がPCやタブレット、スマホでいつでも最新の3Dモデルを確認できる環境を提供している。
2D図面だけでは理解が難しかった複雑な納まりは、3Dモデルを動かし、その場で断面を切って確認することで、職人を含む全関係者へイメージを共有し、合意形成をとることができた。
 
最近のプロジェクトでは、この可視化技術が最大限に発揮された。
 
①デザインレビュー
内外装仕上げ材やメーカー提供の照明器具の照度分布などに至るまで詳細なモデルを作成。
 
意匠をリアルなカラーで表現したパースを事業主さまとの打合せに活用し、完成イメージを齟齬なく共有した。

 
②サプライズ演出
駐車場スペースの検討時、事業主さまの愛車のファミリを配置した外構イメージを提示。
これに気付いた事業主さまの笑顔は、BIMが単なる技術検証のツールではなく、関係者の感情を動かし、満足度を高める強力なコミュニケーションツールであることを証明する象徴的なエピソードとなった。

 

BIMモデルによる数量算出と構造的な納まり検討を実施

鉄筋の干渉チェックと数量拾いを目的に導入されたRevitアドインソフトLightningBIM自動配筋(株式会社Arent)を活用し、構造勉強会にて配筋納まりの確認も実施した。
鉄筋モデルを使用し、現場と定着位置の協議も行った。

 
また、丘組範囲の鉄筋重量計算においては、従来の手計算に比べて時間短縮を実現し、その結果を揚重計画の検討に効果的に活用することができた。
Revitの既存機能とLightningBIM自動配筋を組み合わせる方法により、主筋の干渉チェックと正確な鉄筋重量の算出が可能となった。
現在、より精度の高い揚重計画の作成が実現できるよう、検証中である。

 
BIMモデルからコンクリート数量を算出することが増えてきている。
特に複雑な形状や数量把握が困難であった部位についても拾い出しが可能となった。
過剰発注や不足によるリスク低減にも貢献できる。

 
ハーフPCスラブのコンクリート数量算出に、BIMモデルを活用した。
現場所長と連携し、リアルなハーフPC板ファミリを作成し、正確なコンクリート数量を集計表に出力することができた。

 
鉄骨工事では、鉄骨施工会社と連携し、FAB21データをFAB21 LinkにてRevitファミリとして読み込み、当社の躯体モデルと重ね合わせDOCS上で納まり検討を実施。
躯体との干渉・アンカー位置といった納まり不良が拡大確認で判明し、早期に是正できたことは大きな成果である。

 
協力会社から提供されたREAL4データをREAL4LINKにて、Revitに直接取り込むことで、鉄骨モデル作成時間を短縮し、自社モデルとの整合性を即座に検証することが可能となった。

 
最近では、BIMを使用するサブコンや協力会社が増えてきたことで、現場でBIM施工モデルを活用する機会が増えてきている。
 
 

「BIMチャレンジャーズ」人材育成の活動

複雑物件への挑戦と若手育成

当社では、意欲的な若手社員を中心に「BIMチャレンジャーズ」として育成を強化している。
躯体モデル作成やエントランス詳細モデル作成に挑戦するなど、現場の進捗に合わせたBIMモデル作成の要望もあり、若手に作成させたい要望も高まっている。
BIM技術者が現場でも求められる存在になっている。

 

現場員へのBIMPCとRevitライセンスを付与開始

DOCSに 加え、BIMPCとRevit-LTを付与し、現場員自ら操作・確認できる環境を整備した。
これは、BIMモデルを現場で即座に、自発的に活用できるようにするための重要なステップである。
 
 

BIM戦略部の発足

全社的な組織構想と人材の多様性への対応建設業界はBIMが必須となる時代へと移行しつつある。
全現場でのBIMモデル化を加速し、LOD400のモデル完成を目指すには、永続的な推進体制の確立が不可欠である。
 
現状の課題として、設計段階で作成されたBIMモデルは、そのまま施工図に活用できないという問題がある。
「何ができて、何ができないのか」「何が必要で、何をしたいのか」という情報を整理し、設計・積算・施工をつなぐインターフェースとして機能する専門部署が必要となった。
 
2025年4月、工事部・技術部・設計部・設備部から選抜されたメンバーによって「BIM戦略部」が設立された。
この部署は、BIMに関する技術情報と基準を全社に発信していく基地となる。
 
当社はBIMによる「生産性向上」と「ミスロスの削減」という具体的な成果を出すための体制を整えている。
BIMを単なるモデル作成や図面作成ツールとしてではなく、生産性向上、品質確保、そして関係者間の円滑なコミュニケーションを可能にする「建設プロセス革新のプラットフォーム」として確立していく。
 
 

BIM推進体制と未来への展望と全社的な革新へ

BIM図面表現の意識改革と現場フローの変革

BIMモデルの正確な再現性により、BIM施工図は従来の2D図面と同じにはならない。
2D図面が見せたい線だけを描くのに対し、BIMは建物を忠実に再現する。
平面図作成では切断位置や表示範囲の詳細な設定が必要となり、窓の高さが異なれば切断位置によって図面上に表現されないケースも生じる。
特に断面図では奥行表現により見える要素が大きく変わるため、従来の2D図面との違いに戸惑われることもある。

 
現場の理解度を向上させ、詳細図や展開図、タイル割をBIMパースと一緒に図面化することで、BIMのメリットがより明確になる。
図面を使用する側にも、BIM施工図とは「正確な情報を含むモデルの切り出しである」ことや「BIMモデルがどのように活用できるか」を説明し、意識改革を進めている。
 

技術深化とアドインソフトの活用

当社のBIM推進は、社内技術の深化と外部の先進技術に関する最新情報の収集を重視している。
 
具体例にあげた自動配筋は、鉄筋の干渉チェックだけでなく、納まり確認や揚重計画へと活用範囲が拡大している。
揚重計画については、工程計画で重要となる部分は揚重機の揚重時間検討ソフト開発導入を行った。
また別ソフトによる揚重の軌跡は、BIMモデル上で自動生成し可視化が可能となった。
この機能を工事部・技術部と計画を進めることで検討時間の短縮を目指し、部門間での検証を開始している。
 

Revitリンクの活用

鉄骨、鉄筋、設備配管など、協力会社が作成するBIMモデルデータは、RevitリンクによりIFC変換ではなくそのままファミリとして使用できるものも増えてきた。
RebroやTfasといった設備BIMのMepデータも、干渉チェックや納まり検討に活用している。
各種メーカーやソフト会社が、RevitファミリまたはRevitリンクを作成しており、データの共有や受け渡しが可能になっている。

 
 

現状の課題と今後の展望

現状の課題

BIM導入は社内で着実に進展しているが、いくつかの運用課題がある。
現場では依然として2DCADが使用されており、BIMオペレーターの常駐がないため、急な変更への対応に即応できない。
また、BIMモデル活用の格差が現場間で見られ、BIM専門人材の確保・育成も課題となっている。
 
当初、現場からは「BIMはなくても」という声が多く聞かれたが、導入が進むにつれ、「BIMがあった方が」という前向きな意見が増えている。
特に若手技術者からは「3Dモデルで空間把握がしやすく、施工手順の理解が深まった」という声が上がり、意識の変化が顕著に現れている。
 
現在は、将来的な「誰が作成しても同じ品質の施工図モデル」実現のため、ファミリの整理と標準化を進めている。
 
こうした課題はあるが、社長による「CADからBIMへの移行」の明確な方針により、社内的な動きは急加速し、全現場BIM化と生産性向上を目指している。
 

今後の展望

当社では現在、BIM活用環境の整備を積極的に推進している。
従来は2D図面を理解できる人材育成に重点を置いていたが、建築専門知識を持つ人材とBIM技術者が連携した人材育成プログラムを構築しBIMを活用した実践的な研修をしている。
また、協力会社との連携強化にも注力し、共同でのBIM導入・活用を進めている。
BIMモデルの活用目的を明確にし、具体的目標を設定することで、組織全体の取り組みを活性化させている。
 
部署間連携強化のため、データフローを重視したワークフローの構築に取り組み、各段階でのデータ連携と活用場面の可視化を進めている。
同時に、AI技術への対応を円滑に行うための社内外協力体制の構築も進めている。
 
BIMの全社的活用により、生産性向上だけでなく、設計・施工上の問題点の早期発見、安全性と品質の確保を前倒しで実現できる。
これは職場環境改善につながり、お客さまにより高品質で満足度の高い建築物を提供することが可能となる。
 
 
 

株式会社鍜治田工務店BIM戦略部
矢野 正樹
加藤 裕子
藤野 衣鞠

 
 
【出典】


建設ITガイド2026
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最終更新日:2026-08-03

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