書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。
BIMの共創環境と人材育成の取り組み
2026.08.12「共創」の環境づくり
建設業界におけるBIMの普及は、国土交通省の施策で一般化が進んでいるものの、高いスキル要求、人材不足、および企業間のルール不統一といった課題に直面している。
これらの個社では解決しづらい問題に対応するため、非競争領域での「共創」を通じた業務の標準化と効率化が推進力となっている状況である。
弊社でも各地区のオフィスに「PYNT」という共創空間を設け、幅広い共創の場を運営している。
共創によるBIM人材育成
BIM界隈では、お互いの業務の標準化や効率化を目指す「共創」の取り組みが増加している。
業務のDX化において、この「共創」や「非競争領域」での人材や知財の交流が原動力になると考えられている。
共創のための人材育成と環境構築
BIMと建築データの「共創」を推進するための連携プラットフォーム概念には、CDE整備、人材育成(HR)、法規情報、受注者の与件や設計指針などの外部データ連携、関係者間でのコミュニケーションの活性化などが含まれる。
BIMを組織的に導入・運用するためには、時間、費用、そして情熱を要するBIM専門家の育成が不可欠である。
・育成環境の現状と課題:
BIM学習は、ベンダー主催のソフトウエアのセミナー、動画サイトのコンテンツなどもあるがそれだけでは設計図作成に必要なスキルにはならない。
各社で自社の設計スタイルに合わせた研修を行うことになり負担も大きい。
・実践的な育成手法:
BIMの習得は、座学だけでは難しく、実戦での活用が求められる。
・BIMサポーターの活用:
弊社ではBIMに精通した「BIMサポーター」が一定期間設計の現場に寄り添い、BIMのスムーズな立ち上げや教育を支援している。
BIMサポーターとの共働を通じて、設計者の実践としてのBIM力が自然と育成される。
一方でBIM専門家(オペレーター等)は、 2次元図面やスケッチの指示から、適切な形状、図面表現、属性パラメータを持つオブジェクトを選択して3次元のモデル化を行うため、設計者と同等の空間理解力と部材の構成知識が必要な「スーパーオペレーター」状態であり、その育成は難しいという課題がある。
このため、実務に不可欠なBIM専門家の拡大に向けて、従来の実施設計の詳細に秀でたベテラン設計者にBIM入力を研修する取り組みも行い効果が出始めている。
・共創環境の準備
弊社では、学生、他の設計事務所やゼネコンへのBIM交流を積極的に行っている。
例としては、設計事務所のBIM部門と の意見交換、BIMソフトのユーザー会での技術交流、業界団体での啓蒙コンテンツ作成支援、建築系専門学校などとの交流会などがある。
また、近年ではゼネコンのBIMコンサルティングも行っており、BIMの命名規則、オブジェクト作成要領やテンプレートの作成支援などで効果が上がっている。
BIMがうまく使えていない、もっと効率があがるはずという会社も多くそのためのフローも整理した。
このような取り組みを通じて、BIM情報の緩やかな標準作りを進め、実プロジェクトなどでの協働しやすい環境を広めておくことがBIM普及には欠かせない。
建築情報を活用するためにはBIM人材がある程度の標準形を理解していることが建設DXにつながり、情報の価値を高める。
BIM人材の流動化と共創
BIMの普及に伴い、建設業界では人材の流動化が顕著に見られるようになってきており、これは従来の建設業界ではなかった現象で共創の機会を生む母体として捉えられている。
1.BIM人材の流動化の現状と特長
従来の建設業界は、建設業のバックボーンを持った人たちが移動の中心であったが、BIMが盛り上がりを見せる中で、IT系など異業種の多様な人材が活躍できる業務が増えてきている。
BIMが建築情報をどう制御するかという側面が強いため、プログラマーからマネージャーまで、非常に広範囲な知識を持つ人材が必要とされる。
2.BIM人材に求められる要素
BIM人材として活躍し、流動化のチャンスをつかむためには、特定のスキルや資質が求められる。
・建築知識の重要性:
単なるBIMソフトのオペレーションスキルがあるだけでは不十分であり、建築の知識を持つことが重要視される。
これは、 BIMの導入・推進に当たって、建築の基礎を教える時間的余裕がないことが大きい。
・課題解決能力と意欲
求めているのは、ツールを使いこなす人ではなく「そもそも存在する課題をデジタルでどう解決するか」という課題解決能力を持った人材や、解決に意欲的な人材である。
BIMの分野はまだ定型の解決策が少ないため、そこに積極的に切り込んでいける人が求められる。
3.BIMのキャリア人材
BIM人材の育成においては、従来の建設技術とは異なるアプローチで採用されている。
BIM人材はジョブホッピング(転職)がしやすく、キャリアを形成しやすい分野であると考えられている。
若手層は特定の会社に終身雇用される時代ではないため、自分が活躍できる環境を見つけるために積極的に挑戦すべきというアドバイスもあり、実態として転職して成功する事例も増えている。
4.流動化を促進する環境と動向
BIM人材の流動化は、「共創」という概念の推進にもつながっている。
・標準化の推進:
BIMを共通のツールとして活用するため、属性情報の標準化やBIMに関する共通言語を持つための取り組みが業界全体で進められている。
これにより、異なる組織や個人間でもデータの活用や連携が容易になり、流動化がさらに進む基盤が整うと考えられる。
・BIM人材の評価システムの課題:
BIMは比較的新しい技術であるため、社内での評価指標や必要資格が広く認知しておらず、旧来の人事評価システムの壁により、優秀なBIM技術者が新しい活躍の機会を求めて転職するケースもある。
BIMマネージャーの資格制度などBIM専門家の技量が正しく評価されることが課題である。
共創に向けたAIの活用
BIMは、そのデジタル情報としての性質から、今後のDXの重要な要素となることが期待されている。
・自動設計とコストスタディ
AIを活用した自動設計システムが研究されている。
例えば基準法などの条件に基づき、AIがボリュームプランを想定したり、対象案件の建築コストの例示、竣工後のLCCの推定し建物としての収益評価や事業計画に活用し始めている。
・法適合判定
確認申請のBIMデータ審査に向けてBIMの属性情報を活用することで、要件適合判定の一部自動化を図り、設計品質管理の効率化を目指している。
これは個社対応より業界としての整備に国を挙げて取り組んでいる。
・知識・経験の活用:
長年の経験を持つ熟練技術者へのヒアリングに基づき、その思考プロセスを模したAIが構築され、経験や知見の共有を支援できるようにデータベースの拡充を図っている。
チャットボットなどの対話型AIチャットツールを整備することで、蓄積されている社内データや最新のインターネット情報を参照した回答生成が可能になり、設計条件などの理解に役立っている。
設備の配管自動設計
将来的には、建築BIMモデルに設備情報を入力し、AIによる調整で最善・最短の配管・ダクトルートの自動構築を目指し開発を行っている。
LCAなどのシミュレーション
BIMモデルから設備諸元を自動入力し設計初期段階での検討に使えるよう試行段階に入っている。
LCAだけでなく今後設計初期で方向性を決めないといけない建物性能の判断にAIは必須となる。
まとめ:共創がもたらす建設DX
建設業界では、BIM導入の課題として、ソフトの必要スキルの高さ、人材不足、 BIM体制維持のコストなど、個社では解決しづらい問題が多く存在する。
共創で解決できることは多いが、共創領域と競争領域を明確にし、IoTやAIを活用するための標準フローや標準パラメータの定義など標準規格や標準ツールを整備する部分は「共創」、それらの技術やツールを駆使して高品質な設計提案の領域は、個人も会社も切磋琢磨し日本の建設力の向上につながってほしいと思う。
【出典】
最終更新日:2026-08-12
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