2019年6月7日
はじめに点群データとは計測対象にレーザーを放射状に照射して得られる表面形状の3次元座標のことで、3Dレーザースキャナー(以下、「スキャナー」とします。)は点群データを計測する機材の一種です。当社では工事部門でもスキャナーを導入していますが、ここでは設計部内でBIMや最新技術の推進を担当している、BIM設計部の点群データの内製化について紹介していきます。 内製化への経緯当社設計部では、以前から点群データを設計検討に利用していた実績があり、設計検討における点群データの有用性は認知されていました。点群データの有用性は認知されていたものの、計測を外部に委託していたためにスケジュール調整や費用の面から、実際に3Dレーザー計測(以下、「計測」とします。)を実施するには、至らないことが多いのが実情でした。 導入機器、ツールについて・「BLK360」(図-1) ・「ReCap Pro for mobile」(図-2) iPadから「BLK360」を操作するツールです。 単なるリモコンではなく、各スキャンの状況を現地で確認しながら計測を進めることができる優れたツールとなっています。従前のツールでは、計測時にスキャンデータを確認できなかったのに対して、このツールではiPad上で計測結果を現地で確認できるため、初心者でも安心して確実なデータ作成することができます。 ・「ReCap Pro」(図-3) 点群データを編集するツールです。前述の「ReCap Pro for mobile」と連携するための必須ツールとなっています。 点群編集ツールとしては非常にコストが低いにもかかわらず、点群データ部分削除、レイヤー分け、メッシュ化、データ変換など多彩な機能を搭載している優れた製品です。 ・「Cyclone REGISTER 360」(図-4) 点群データをつなぎ合わせる作業(合成)に使用するツールです。 点群編集ツールとして定評のある「Cyclone」の合成機能に限定したツールであり、ReCapに比べて高価で操作の難易度も高いですが、合成作業には欠かせないツールとなっています。 内製化について内製化を実現できたのは、低コストのスキャナーが発売されたほかに、機材の携帯性が向上したことも要因となっています。以前は、スキャナーは重く大きく、合成に使用するターゲットも多数必要であったために計測には大荷物が必要でしたが、「BLK360」がバッグ一つに納まり、「ReCap Pro」「Cyclone REGISTER 360」が現場でのターゲットの設置を不要としたことで、設計部員が現地へ電車で移動して計測できる手軽さが実現し、内製化へとつながりました。 計測の事例の紹介約17,000㎡の敷地について、BLK360で計測を実施した事例を紹介します(図-5)。 新築の対象範囲は5,000㎡程度でしたが、BLK360による広範囲計測の実施検証も兼ねて計測を実施しました。 BLK360は計測の有効距離がカタログスペックで60mと比較的短いために、対象範囲を網羅するには延べ約24時間、107カ所の計測(図-6)が必要になりました。計測は2回に分け、1回目の不足部分を2回目の計測で補う形で実施しました。各計測日が50日間ほど空いてしまった間に解体工事が進み、現場の風景が大きく変わってしまったことから、多くのスキャンを削除、追加しなければなりませんでした。 合成作業については、そもそもスキャン数が多い上に、現場風景の変化によるやり直しもあり、非常に苦労しましたが、結果的にはBLK360でも広範囲の計測に使用できる実例とすることができました。 点群データの位置合わせBIM設計部では、点群データを配置図や測量図と位置を合わせて使用するために測量を併用しています。今回は、点群に世界測地系の座標を盛り込む検証も併せて行うために、GNSS測量(図-7)と計測を同日に行い位置合わせの資料としています。 今後の課題今回の計測結果についてGNSS測量の結果や境界杭の位置から誤差を検証した結果、一部に想定外の誤差があることが判明し、調整が必要になりました。 最後に点群データ内製化によって、点群データは設計部内では身近なものとなり、実施数は拡大しています。 戸田建設株式会社 建築設計統轄部 BIM設計部 BIM設計室 主管 西尾 和剛
建設ITガイド 2019 特集2「進化するBIM」 |
2019年5月31日
はじめに近年、BIMを利用した建築物の設計・施工業務の効率化が推し進められている。設計段階ではレイアウト検討を行うために簡易的なBIMモデルを利用し、施工段階では工種間の調整を行うために詳細なBIMモデルを利用している。それらの業務において、昇降機設備のBIMモデルも必要になるケースが増加している。 昇降機BIMモデルの構成当社のエレベーターBIMモデルの構成を図-1に示す。乗場三方枠や乗場機器、支持部材は建物により異なる。そこで、ライブラリを昇降路内機器・乗場三方枠・乗場機器・支持部材ごとに分類し、各パーツの整備を行っている。 寸法のパラメーター化建物により採用されるエレベーターの各寸法は異なる。例えば乗場三方枠などは、建築物の壁仕上厚によって枠巾が変化する。そこで図-2に示すように、変更が想定される箇所についてはパラメトリックなデータ(パラメーターで指定可能なデータ)として、BIMモデルを整備している。乗場三方枠であれば、出入口巾・出入口高さ・枠奥行などをパラメーター化しており、数値的に指定できる。このようなBIMモデルとすることで、パラメーターの変更のみで枠形状を変更することができ、関連する2次元図面を修正していた従来の方式と比較し、効率的に修正に対応することが可能となる。 建築構造(鉄骨工事)との連携例エレベーターは立柱やファスナー等を介して建物で支持する必要がある。このような支持部材は鉄骨工事で加工・施工するため、昇降機工事から鉄骨工事に対して必要な支持部材の位置や部材について具体的に伝えなければならない。そのため、BIM導入後も伝達手段として2次元図面が必要になる。鉄骨工事との連携例について、図-3に示す。BIMモデルを使って連携する具体的なメリットは以下の3つが挙げられる。 問題点の早期抽出・共有化実際に作成した資料例を図-4に示す。BIM導入前は、問題となる箇所を明示するためにいくつかの図面やスケッチ等を作成していたが、エレベーターBIMモデルや受領したモデルを使うことで、それらの作成作業を削減することができた。加えて、図面よりもイメージが容易なため、社内・社外関係者間で共通認識を持てる点でも有用であった。結果的に、問題点の確認・方向性の確認を早期に行うことができた。 今後の課題これまでの取り組みにより、エレベーターBIMモデルの構造やパラメーターについて検討を進め、関係者間調整の効率化や資料削減時間の短縮に効果があることを確認できた。今後は、BIMモデルの整備と2次元図面化の2点について進めていきたいと考えている。 三菱電機株式会社 昇降機営業技術部 営業技術支援第一課 梅木 偉斗
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2019年5月10日
はじめに~施工BIM以前竹中工務店としては、BIMをベースとした業務のデジタル化・高度化を進めており、設計施工の強みを生かし、業務プロセスを通じた生産性の向上を図っている。その中で、施工BIMにおいて生産性を向上させるためには、専門工事会社とのBIM連携が不可欠である。例えば鉄骨工事や設備工事などではBIMに取り組む環境が整備されつつあるため事例が増えつつある。一方、鉄筋工事もBIM連携のニーズが多い工種だが、鉄筋の加工に直結するような機能を有した市販BIMツールがないなど課題も多く、事例が少なかった。そこで本稿では鉄筋工事に着目し、自社開発によってツール上の課題解決を図るとともに、実プロジェクトにおいて専門工事会社とのBIM連携を試行したので紹介する。 鉄筋工事における専門工事会社とのBIM連携方法従来鉄筋工事において施工者は躯体図の発行までが仕事であり、その後職長が構造図と躯体図を読み込み、配筋の納まり検討を実施している。そこから加工図・加工帳を作成し、鉄筋加工工場にて加工帳を基にして加工を実施している。 しかしながら以前まではRCSから出力された加工帳から手作業で加工用に数値を転記しており、データが鉄筋加工まで連動していなかった。そこで主要鉄筋加工機メーカーが対応している仕様のQRコードを直接RCSから出力することを今回開発した。 使用者は当社の生産設計部署および作業所だけでなく、鉄筋工事協力会社の職長へも広めるため、操作教育・展開を現在進めている。両者が使用することで、構造計算時から鉄筋加工までBIM連携で一貫した業務の実現を目指している。 実プロジェクトへの適用事例先述した開発を以下の実プロジェクトにより適用した(図-2)。 建築地:埼玉県草加市 建築用途:独身寮、事務所 建物規模:RC造、地上3階 工期:2018年3月~2019年3月今回の開発は約2 年前からQRコード出力の開発を実施しており実プロジェクトでの適用を実現させた。範囲としては基礎工事(基礎梁4本)部分を対象範囲として以下の手順(図-3)にて試験的に実施した。 STEP1:構造データを読み込んだRCSにて鉄筋BIMモデルを生産設計部署にて作成した。 STEP2:鉄筋BIMモデルを用いて生産設計部署・作業所・専門工事会社の関係者にて配筋納まりを確認、合意をした。 STEP3:関係者にて合意したBIMモデルよりQRコード絵符付き鉄筋加工図を出力した。 STEP4:QRコード絵符を鉄筋加工機にて読み込み鉄筋加工を実施した。 以上のような流れは従来の鉄筋工事における流れと全く異なり、新たな生産体制を構築できたと考える。 今回当プロジェクトにてRCSから出力したQRコード付絵符にて鉄筋自動加工を実施した。その結果は通常の鉄筋工事加工と比較して約50%向上することができた。また今回の開発に携わった専門工事会社の意見では、職長、工場作業員の鉄筋加工図作成工数が今後RCSを活用していき習熟することで従来から約20%低減が見込めるとの見解を得られた。今回の開発効果を鉄筋工事全体で考えると約7.4%のコスト削減効果がある(図-4)。今後減少が予想される熟練技能労働者減少による生産力確保は建設業界の大きな課題の一つである。今回の開発はその問題の解決策の一つとして期待できると考える。 今後の展開と将来展望本稿では鉄筋工事における自社開発BIMソフト活用におけるBIM連携を生かした事例を紹介した。しかし、今回は部位を限定した試行であり、広く展開するためにはツール・体制両面で課題がある。今後は、業界への働きかけと技術開発の2手段でさらなる生産性向上へ寄与したい。建築のリーディングカンパニーとして鉄筋業界へのBIM連携の働きかけを継続していく。技術的には、データ連携の汎用性向上とともに、加工材の出荷管理・生産計画等、工場側で効果の大きい業務とのデータ連携も図り、生産効率の向上を推進していく。 株式会社 竹中工務店 東京本店 調達部 く体グループ 中村 健二
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2019年3月7日
はじめにBIMライブラリーコンソーシアム(代表:奥田修一 建築保全センター理事長)では、2018年10月にBLC BIMオブジェクト標準を76企業等で合意し、その後BIMライブラリー構築に向けて着実な活動を進めている。 BLCのこれまでの取り組み(1)BLC活動の概要 BLC標準(1)目的 b)は、a)と同じ理由であるが、オブジェクト情報を外部にも置き、ジェネリックオブジェクトとメーカーオブジェクトが同じ情報構造を持つことで可能になっている。これはExcelでの検索と同じである。 c)は、当初から技術的には国内に合わせるが、オブジェクトは将来国際的にも適用できることを視野に開発を進めてきたところである。このためデータ構造は対応可能であるが、今後の検討課題として、用語の定義が同じかを確認する作業が必要であり、これはbuildingSMART Internationalで検討が始まっているbSDD( buildingSMARTData Dictionary)の議論である。 BIMライブラリー構築に向けての活動今後のスケジュールの主要な内容は、 (一財)建築保全センター保全技術研究所長(兼)BIMライブラリーコンソーシアム事務局長
寺本英治 建設ITガイド 2019 特集2「進化するBIM」 |
2018年8月3日
Information-BIMへの取り組みBIMには「3D」と「情報=Information」の二つの側面がある。二つの側面を設計フローに即して捉えると、「3D」の側面は、設計が進むにつれて進化していく「形状」のフローであり、「Information」の側面は、設計の初期段階で行われる「性能」に関わるフローといえる(図-1)。日本ではBIMの「3D」の側面が主である。BIMの「Information」の側面について言及されたとしても、主に形態の寸法や仕上げ情報に留まっている。 BIMの本質は、建物の「データベース」化にある。「BIM」の持つ「データベース」すなわち「情報」の側面が、Information-BIMである。日本では、BIM「情報」活用がなかなか進んでいなかったが、その理由の一つには、意匠・構造・設備がそれぞれ別のソフトを使うところにあると思われた。異ソフト間での連携については、年々改善されており、「形状」に関してはかなり連携が改善されてきているものの、「情報」に関しての連携はまだ十分ではない。日本設計では、意匠・構造・設備が全て同一のBIMソフト「Autodesk Revit(以下、Revit)」を使う。そのため、セクション間での連携の問題が最初からない。後述するように、例えば、建築の面積や窓面積やその仕様、荷重条件、空調条件といった情報が、セクション間でスムーズに共有できる。このことが、日本設計において、Information-BIMの活用が大きく進むことにつながっている。 Integrated-BIMの推進意匠・構造・設備の共通プラットフォーム「Revit」を中心にして、さまざまなツールがダイレクトに連携する。これが、日本設計の考える「Integrated-BIM」の骨格となる。特筆すべきは2点、「アルゴリズム設計」と「ダイレクト連携」である。具体事例は後ほど紹介するが、セクション間を横断するアルゴリズム設計は、共通プラットフォームである「Revit」とアドインソフトであるビジュアルプログラミング「Autodesk Dynamo(以下、Dynamo)」があってはじめて可能になる。また、環境シミュレーションの「ダイレクト連携」は、環境設計を重視し、取り組んできた日本設計の設計思想に非常にマッチしている。「Rhinoceros+Grasshopper+ 環境シミレーション」の可能性も、日本設計が開発した「Rhinoceros-Revit」のダイレクト連携ツール「ant sat」があることでさらに拡がる。日本設計の構造解析ソフトとBIMをつなぐ、「NASCA-Revit」の連携、Dynamoを使った情報連携も効果を発揮している。今後も日本設計は「Integrated-BIM」を進化させていく(図-1)。 Connection-BIMに向けてBIMは、設計から、施工、さらには維持管理段階における建物「データベース」となる。だからこそ日本設計では、BIMを単なるツールではなく「ワークフロー」そのものとして捉えている。そして上述のとおり、「Revit」は設計の共通プラットフォームである。 BIMの「情報」を設備設計に生かすここからは、「設備BIM」の具体例を紹介する。これまで、日本の設備BIMは、納まり検討や干渉チェックなどでの利用に偏り、建築計画が固まった後の実施設計後半や施工段階での活用に留まってきた。 アルゴリズム設計によるルーティン自動化ビジュアル・プログラミングでアルゴリズム設計を実現する「Dynamo」を活用した、設備設計の自動化にも取り組んでいる。例えば、スペース情報を集計し、機器の合計容量を自動的に計算して結果を戻すという一連の作業や、機器プロットまでモデル化した後は、「情報」活用により、負荷計算結果の数値を元に、機器を自動選定したり大きさを変えるといった自動化を可能にしている。今まで、時間と労力を費やしていたルーティンワークの自動化により、さらに深度化した検討が可能になる(図-4、5)。 スペースと部材情報を活用した設備の自動積算BIMモデルから、BIMソフトのデフォルト機能を用いた数量算出は可能であるが、積算基準と異なる集計になるため、そのまま積算に活用できない。 設備設計でのBIMワークフローBIMを設計フローに取り入れる際に重要なことは、BIM作業を追加業務にするのではなく、今までの業務を、BIMで置き替えていくことだと考えている(図-7)。 ただし全てをBIMに置き替えるのではなく、汎用ソフトやExcelシートなどの便利なものは残しつつ、それらをBIMと情報連携させ、BIMを情報の中心に据えることが最も有効である。 日本設計では、各セクションの情報をロスなく共有できるRevitを中心に据えて情報の体系化を行い、全ての情報をRevitにつなげることで、今までバラバラだった情報を一元的に管理可能にしている。これにより、設計の過程でしか利用されていなかった貴重な情報を、「3D」利用に限られていた施工段階や、さらには運用段階へ引き継ぐことを見据えている。 なお、Revit(MEP)は設備の「性能」を決定する段階で活用し、最終的なアウトプット(実施設計図)は「Autodesk AutoCAD(以下、AutoCAD)」や、Revitとのダイレクト連携を開発したRebroを併用している。建築同様、アウトプットの実践的工夫により、実用化を図っている。 NASCAと構造BIMモデル次に「構造設計BIM」について概説しておきたい。日本設計では、構造解析プログラムは、自社開発の一貫構造計算プログラムNASCAを使用し、BIMソフトはRevitを使用している。それらを利用して、効果的にBIM活用を行うために、NASCAの構造データからRevitへのデータ変換を行うプログラムを開発し、現在運用中である(図-8)。 BIMモデルの使用現在、NASCAからのデータ変換によって作成された構造のBIMモデルは、①建築・設備などの他セクションのBIMデータとの干渉チェック(図-9)、②構造図(伏図、軸組図)の作成などで活用している。このBIMモデルから作成された構造図は、相互の図面間で整合性が確保されるため、図面の確認作業が軽減されている。 構造図作成の自動化Revitを用いて自社の製図基準に適合した構造図を作成するためには、多くの手間がかかる。そして、その作業の一部は単純作業の繰り返しであり、かつ、どの案件に対しても共通である。今後BIMによる設計を継続的に行っていく上で、このような作業を自動化することは非常に効果的であり、構造図の品質向上および作業効率の向上につながる。そこで、NASCAからRevitへの変換時に自社仕様の伏図・軸組図の自動生成も同時に行うようにさらなる開発も完了している(図-8、9)。 二次部材の設計小梁などの二次部材の設計においては、ビジュアルプログラミングツールであるDynamoを用いてRevitとExcelを連携させる仕組みを構築した。それにより、計算に必要となるRevit内の情報の抽出、Excelへの自動入力、そして計算結果に基づき修正された結果の反映を一連の流れで行うことを可能とした。以前と比較してExcelへのデータ入力や計算結果に基づく図面修正の作業時間を大幅に短縮することが可能になった。 情報の整理と共有部門間の調整においては、さまざまな構造情報の中から各部門(意匠・設備など)の設計者が必要とする情報を整理した検討図(伏図・軸組図・断面リストなどとは異なる資料)が必要となる。これまで、検討図の作成は主に構造設計者が手作業で行っていたため、部門間の調整事項に変更が生じた場合、検討図の再作成作業が大きな負担となっていた(図-10-a)。そこでDynamoを活用して必要となる情報をRevitデータから抽出・視覚化することで、検討図作成の支援を行うツールを開発した。それにより、検討図作成の負荷が大幅に削減された(図-10-b)。また、このツールにより部門間の情報連携がより強固となり、設計全体の高品質化にもつながっている。 Information-BIMとBIMFM連携の可能性Connection-BIMについても、具体例に触れておきたい。海外では、BIMは設計や施工のための効率化ツールというよりは、FMでの活用にこそ価値があると認知されつつある。だが、日本での活用例は非常に少ない。 そして、その活用を汎用化するため、FM段階では、直接BIMを扱うのはハードルが高いため、クラウド・プラットフォームである「Forge」を活用することを提案している。既存のさまざまなFMシステムの利点を生かしたまま、「Forge」を介したBIM¬FM連携こそ、付加価値を高めていく現実的なアプローチである。FMサービス会社「プロパティデータバンク」との連携も進めているところである(図-12)。 現在、「Forge」の活用開発も進み、運用段階へつなぐ環境が整い、ライフサイクルでのBIM活用が具体化している。実プロジェクトでの活用も、今後急速に増えていくものと予想される。 さらにこの先へは、AI、IoTの活用が間違いなく進み、AIの「判断」には、「定量化」が当然の前提となる。そして、AIの「経験」には、IoT による「情報」の一元的蓄積を必要とする。さらに、この「情報」に、単体のBIMデータベース情報だけではなく、クラウド・プラットフォームに並置されたさまざまな情報、それは複数のIntegrated-BIMの並置であったり、都市的環境情報であったり、事業採算予測情報であったりするわけだが、さまざまな情報が加わることにより、「判断」は都市レベルに、経済レベルにも適用されることとなる。それは部分最適化からより広い視点での全体最適化へつながる道である(図-13)。 株式会社 日本設計 プロジェクト管理部 BIM室
岩村 雅人/吉原 和正/田畑 健 建設ITガイド 2018 特集1「i-Construction×CIM」 |