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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

点群データの内製化-戸田建設のBIM-

2019年6月7日

 

はじめに

点群データとは計測対象にレーザーを放射状に照射して得られる表面形状の3次元座標のことで、3Dレーザースキャナー(以下、「スキャナー」とします。)は点群データを計測する機材の一種です。当社では工事部門でもスキャナーを導入していますが、ここでは設計部内でBIMや最新技術の推進を担当している、BIM設計部の点群データの内製化について紹介していきます。
 
 

内製化への経緯

当社設計部では、以前から点群データを設計検討に利用していた実績があり、設計検討における点群データの有用性は認知されていました。点群データの有用性は認知されていたものの、計測を外部に委託していたためにスケジュール調整や費用の面から、実際に3Dレーザー計測(以下、「計測」とします。)を実施するには、至らないことが多いのが実情でした。
 
BIM設計部における点群データ内製化への取り組みは、イニシャルコストの低いスキャナー「BLK360」が発売されたことが発端です。検証の結果、点群データについての一連の作業が内製化可能と判断し、機材を導入しました。
 
 

導入機器、ツールについて

・「BLK360」(図-1)
Leica社スキャナーです。
この製品の特長として、本体が非常に小型かつ軽量で取り扱いが簡単な上に計測時間が短く、カラー撮影にも対応しています。上位機種に比べると計測性能では劣りますが、イニシャルコストが低く非常にコストパフォーマンスに優れた製品です。
 

図-1 BLK360




 
・「ReCap Pro for mobile」(図-2)
iPadから「BLK360」を操作するツールです。
 
単なるリモコンではなく、各スキャンの状況を現地で確認しながら計測を進めることができる優れたツールとなっています。従前のツールでは、計測時にスキャンデータを確認できなかったのに対して、このツールではiPad上で計測結果を現地で確認できるため、初心者でも安心して確実なデータ作成することができます。
 

図-2 ReCap Pro for mobile




 
・「ReCap Pro」(図-3)
点群データを編集するツールです。前述の「ReCap Pro for mobile」と連携するための必須ツールとなっています。
 

図-3 ReCap Pro




 
点群編集ツールとしては非常にコストが低いにもかかわらず、点群データ部分削除、レイヤー分け、メッシュ化、データ変換など多彩な機能を搭載している優れた製品です。
 
・「Cyclone REGISTER 360」(図-4)
点群データをつなぎ合わせる作業(合成)に使用するツールです。
 

図-4 Cyclone REGISTER 360




 
点群編集ツールとして定評のある「Cyclone」の合成機能に限定したツールであり、ReCapに比べて高価で操作の難易度も高いですが、合成作業には欠かせないツールとなっています。
 
 

内製化について

内製化を実現できたのは、低コストのスキャナーが発売されたほかに、機材の携帯性が向上したことも要因となっています。以前は、スキャナーは重く大きく、合成に使用するターゲットも多数必要であったために計測には大荷物が必要でしたが、「BLK360」がバッグ一つに納まり、「ReCap Pro」「Cyclone REGISTER 360」が現場でのターゲットの設置を不要としたことで、設計部員が現地へ電車で移動して計測できる手軽さが実現し、内製化へとつながりました。
 
 

計測の事例の紹介

約17,000㎡の敷地について、BLK360で計測を実施した事例を紹介します(図-5)。
 

図-5 BLK360での計測例




 
新築の対象範囲は5,000㎡程度でしたが、BLK360による広範囲計測の実施検証も兼ねて計測を実施しました。
 
BLK360は計測の有効距離がカタログスペックで60mと比較的短いために、対象範囲を網羅するには延べ約24時間、107カ所の計測(図-6)が必要になりました。計測は2回に分け、1回目の不足部分を2回目の計測で補う形で実施しました。各計測日が50日間ほど空いてしまった間に解体工事が進み、現場の風景が大きく変わってしまったことから、多くのスキャンを削除、追加しなければなりませんでした。
 
合成作業については、そもそもスキャン数が多い上に、現場風景の変化によるやり直しもあり、非常に苦労しましたが、結果的にはBLK360でも広範囲の計測に使用できる実例とすることができました。
 

図-6 計測点の状況




 

点群データの位置合わせ

BIM設計部では、点群データを配置図や測量図と位置を合わせて使用するために測量を併用しています。今回は、点群に世界測地系の座標を盛り込む検証も併せて行うために、GNSS測量(図-7)と計測を同日に行い位置合わせの資料としています。
 

図-7 GNSS測量




 

今後の課題

今回の計測結果についてGNSS測量の結果や境界杭の位置から誤差を検証した結果、一部に想定外の誤差があることが判明し、調整が必要になりました。
 
点群データの精度は、スキャナーの性能のほかに合成作業に、大きな誤差が生じます。合成による誤差は、合成数が多ければ多いほど累積して誤差は大きくなるほか、今回の計測では、事例で記載した「現場風景の変化」も原因となっている可能性があります。この合成による誤差を、いかに小さくしていくかが課題となっています。
 
また、点群データは非常にデータサイズが大きいために、保存場所やバックアップなどのファイル管理についても、今後計測が蓄積されていく中で、早急に解決しなければならない課題となっています。
 
 

最後に

点群データ内製化によって、点群データは設計部内では身近なものとなり、実施数は拡大しています。
 
今後はさらなる点群データの設計利用を提案できるよう技術の向上を図るとともに、新技術にも目を向けながら、点群データの運用を推進していきたいと考えています。
 
 
 

戸田建設株式会社 建築設計統轄部 BIM設計部 BIM設計室 主管 西尾 和剛

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集2「進化するBIM」



 



昇降機設備のBIM -三菱エレベーターの取り組みと事例の紹介-

2019年5月31日

 

はじめに

近年、BIMを利用した建築物の設計・施工業務の効率化が推し進められている。設計段階ではレイアウト検討を行うために簡易的なBIMモデルを利用し、施工段階では工種間の調整を行うために詳細なBIMモデルを利用している。それらの業務において、昇降機設備のBIMモデルも必要になるケースが増加している。
 
昇降機設備は製品・オプションが多岐にわたり、建物により採用される仕様も異なる。また、建築との位置関係も物件ごとに違うため、全く同じ寸法・仕様のエレベーターを納入することは稀である。そこで、BIMモデルにおいても仕様や寸法を変更できることが必要となる。
 
ここでは当社のエレベーターのBIM取り組みの現状と活用事例について紹介する。昇降機設備にはエスカレーターや小荷物専用昇降機も含まれるが、今回はエレベーターについて紹介する。
 
 

昇降機BIMモデルの構成

当社のエレベーターBIMモデルの構成を図-1に示す。乗場三方枠や乗場機器、支持部材は建物により異なる。そこで、ライブラリを昇降路内機器・乗場三方枠・乗場機器・支持部材ごとに分類し、各パーツの整備を行っている。
 
特に施工BIMにおいては現場のスケジュールの都合上、エレベーターBIMモデルにおいてもタイムリーな作成が必要となるケースが多い。そこで、あらかじめ基となる各種パーツを整備することにより、BIMモデルが必要になった場合は各ライブラリのパーツを組み合わせて物件用のBIMモデルを作成し、対応に要する時間の短縮化を図っている。さらに、基となるパーツがあれば、熟達したBIMオペレーターでなくとも一定の水準のエレベーターBIMモデルを作成できるため、品質面でのメリットもある。
 

図-1 エレベーターBIMモデルの構成




 

寸法のパラメーター化

建物により採用されるエレベーターの各寸法は異なる。例えば乗場三方枠などは、建築物の壁仕上厚によって枠巾が変化する。そこで図-2に示すように、変更が想定される箇所についてはパラメトリックなデータ(パラメーターで指定可能なデータ)として、BIMモデルを整備している。乗場三方枠であれば、出入口巾・出入口高さ・枠奥行などをパラメーター化しており、数値的に指定できる。このようなBIMモデルとすることで、パラメーターの変更のみで枠形状を変更することができ、関連する2次元図面を修正していた従来の方式と比較し、効率的に修正に対応することが可能となる。
 



図-2 パラメーターによるモデル修正


 
 

建築構造(鉄骨工事)との連携例

エレベーターは立柱やファスナー等を介して建物で支持する必要がある。このような支持部材は鉄骨工事で加工・施工するため、昇降機工事から鉄骨工事に対して必要な支持部材の位置や部材について具体的に伝えなければならない。そのため、BIM導入後も伝達手段として2次元図面が必要になる。鉄骨工事との連携例について、図-3に示す。BIMモデルを使って連携する具体的なメリットは以下の3つが挙げられる。
 
①2次元図面作成の効率化
②BIMモデルと2次元図面間の差異防止
③関係者間での打合せの効率化
 
①2次元図面作成の効率化
鉄骨工事から提供された鉄骨モデルを、BIMソフト上でエレベーターBIMモデルと重ね合わせを行った。重ね合わせたモデルはBIMソフト上の2次元図面にも表示されるため、昇降機設備工事では鉄骨を作図する必要がなくなった。
 
②BIMモデルと2次元図面間の差異防止
BIMソフト上で作成された2次元図面は、BIMモデルを修正した際に図面にも自動的に反映される。そのため、図面側に修正内容を反映し忘れてしまうミスを予防することができる。
 
③関係者間での打合せの効率化
他工種工事箇所を示す際、従来の2次元図面打合せでは蛍光マーカー等で色を付けて他工種に提示していたが、BIMモデルならば色分けした表示が容易で、確認しやすい。また、鉄骨工事でもリンク可能なBIMソフトを使用している場合は、エレベーターBIMモデルを鉄骨工事に提供すれば、鉄骨側にエレベーターBIMモデルの内容が反映される。
 
従来は各業者にて図面化し、お互いに確認し合うという業務を行っていたが、このようにBIMモデルを提供し合うことで、重複して図面化する必要がなくなり、作成した図面をおのおの確認する作業を削減することができた。
 

図-3 鉄骨工事との連携例




 

問題点の早期抽出・共有化

実際に作成した資料例を図-4に示す。BIM導入前は、問題となる箇所を明示するためにいくつかの図面やスケッチ等を作成していたが、エレベーターBIMモデルや受領したモデルを使うことで、それらの作成作業を削減することができた。加えて、図面よりもイメージが容易なため、社内・社外関係者間で共通認識を持てる点でも有用であった。結果的に、問題点の確認・方向性の確認を早期に行うことができた。
 

図-4 モデルを活用した資料例




 

今後の課題

これまでの取り組みにより、エレベーターBIMモデルの構造やパラメーターについて検討を進め、関係者間調整の効率化や資料削減時間の短縮に効果があることを確認できた。今後は、BIMモデルの整備と2次元図面化の2点について進めていきたいと考えている。
 
BIMモデルの整備については、まだBIMモデルが整備できていない製品も多く、そのような製品のBIMモデル要求があった場合には一から作成しなければならないため、作成に時間を要する。まずは、製品のBIMモデルを拡充することで、要求があった場合の対応時間短縮化を図りたい。
 
2次元図面化については、BIMモデルから打合せ図レベルの図面を作成することはできるものの、現状の詳細な2次元図面レベル(施工図レベル)の図面を生成するためには不足している点も多く、別途2次元図面を作成しているのが現状である。そのため、2次元図面とBIMモデルの二重管理になってしまい、BIMモデルで打合せした内容を2次元図面に反映し忘れてしまう可能性がある。今後はBIMモデルをそのまま施工図として使い、モデルと2次元図面間の整合性を確保する方法について検討する。
 
 
 

三菱電機株式会社 昇降機営業技術部 営業技術支援第一課 梅木 偉斗

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集2「進化するBIM」



 



施工BIMの今 -竹中工務店における鉄筋工事の専門工事会社BIM連携事例-

2019年5月10日

 

はじめに~施工BIM以前

竹中工務店としては、BIMをベースとした業務のデジタル化・高度化を進めており、設計施工の強みを生かし、業務プロセスを通じた生産性の向上を図っている。その中で、施工BIMにおいて生産性を向上させるためには、専門工事会社とのBIM連携が不可欠である。例えば鉄骨工事や設備工事などではBIMに取り組む環境が整備されつつあるため事例が増えつつある。一方、鉄筋工事もBIM連携のニーズが多い工種だが、鉄筋の加工に直結するような機能を有した市販BIMツールがないなど課題も多く、事例が少なかった。そこで本稿では鉄筋工事に着目し、自社開発によってツール上の課題解決を図るとともに、実プロジェクトにおいて専門工事会社とのBIM連携を試行したので紹介する。
 
 

鉄筋工事における専門工事会社とのBIM連携方法

従来鉄筋工事において施工者は躯体図の発行までが仕事であり、その後職長が構造図と躯体図を読み込み、配筋の納まり検討を実施している。そこから加工図・加工帳を作成し、鉄筋加工工場にて加工帳を基にして加工を実施している。
 
鉄筋加工工場では工場担当者が手作業で加工帳から専用ソフトへ数値を転記することが一般的であり、入力手間やヒューマンエラーの可能性がある。また一部の鉄筋加工機では曲げ角度や切寸法を表すQRコードを読み取ることで加工の自動化が可能な機種がある。そのQRコードは絵符を作成する専用ソフトから発行されており、生産性向上が図れている。そこで本稿では、自社開発によって鉄筋のBIMモデルからQRコードを直接発行するシステムを開発することで、配筋検討から鉄筋加工までの一貫したデータ連携を図った。
 
自社開発ソフトRCSは構造計算時に作成されたデータST-Bridgeを活用し、当社の配筋標準に適合した3Dモデルを自動作成、鉄筋加工図・カットリストの作成までを行うプログラムとなっている(図-1)。RCSは構造データと連動していることで、間違いのない鉄筋本数と鉄筋間隔によって配筋納まり検討が可能である。また納まり検討実施したモデルにて加工図を出力することが可能である。
 

図-1




 
しかしながら以前まではRCSから出力された加工帳から手作業で加工用に数値を転記しており、データが鉄筋加工まで連動していなかった。そこで主要鉄筋加工機メーカーが対応している仕様のQRコードを直接RCSから出力することを今回開発した。
 
使用者は当社の生産設計部署および作業所だけでなく、鉄筋工事協力会社の職長へも広めるため、操作教育・展開を現在進めている。両者が使用することで、構造計算時から鉄筋加工までBIM連携で一貫した業務の実現を目指している。
 
 

実プロジェクトへの適用事例

先述した開発を以下の実プロジェクトにより適用した(図-2)。
 

図-2




 
建築地:埼玉県草加市
建築用途:独身寮、事務所
建物規模:RC造、地上3階
工期:2018年3月~2019年3月今回の開発は約2 年前からQRコード出力の開発を実施しており実プロジェクトでの適用を実現させた。範囲としては基礎工事(基礎梁4本)部分を対象範囲として以下の手順(図-3)にて試験的に実施した。
 

図-3




 
STEP1:構造データを読み込んだRCSにて鉄筋BIMモデルを生産設計部署にて作成した。
 
STEP2:鉄筋BIMモデルを用いて生産設計部署・作業所・専門工事会社の関係者にて配筋納まりを確認、合意をした。
 
STEP3:関係者にて合意したBIMモデルよりQRコード絵符付き鉄筋加工図を出力した。
 
STEP4:QRコード絵符を鉄筋加工機にて読み込み鉄筋加工を実施した。
 
以上のような流れは従来の鉄筋工事における流れと全く異なり、新たな生産体制を構築できたと考える。
 
今回当プロジェクトにてRCSから出力したQRコード付絵符にて鉄筋自動加工を実施した。その結果は通常の鉄筋工事加工と比較して約50%向上することができた。また今回の開発に携わった専門工事会社の意見では、職長、工場作業員の鉄筋加工図作成工数が今後RCSを活用していき習熟することで従来から約20%低減が見込めるとの見解を得られた。今回の開発効果を鉄筋工事全体で考えると約7.4%のコスト削減効果がある(図-4)。今後減少が予想される熟練技能労働者減少による生産力確保は建設業界の大きな課題の一つである。今回の開発はその問題の解決策の一つとして期待できると考える。
 

図-4




 

今後の展開と将来展望

本稿では鉄筋工事における自社開発BIMソフト活用におけるBIM連携を生かした事例を紹介した。しかし、今回は部位を限定した試行であり、広く展開するためにはツール・体制両面で課題がある。今後は、業界への働きかけと技術開発の2手段でさらなる生産性向上へ寄与したい。建築のリーディングカンパニーとして鉄筋業界へのBIM連携の働きかけを継続していく。技術的には、データ連携の汎用性向上とともに、加工材の出荷管理・生産計画等、工場側で効果の大きい業務とのデータ連携も図り、生産効率の向上を推進していく。
 
建設業におけるBIM連携はゼネコンだけでなく、関わる専門工事会社も含めてメリットを享受する必要がある。また、より多くの専門工事会社がBIMに取り組むことでよりメリットを享受しやすくなるので、今回の鉄筋工事だけでなく、他の工種にも広めていきたい。ゼネコン側も建設業界として足並みを揃える必要があるので、他社とも協力して規格化・標準化を進めていきたい。
 
 
 

株式会社 竹中工務店 東京本店 調達部 く体グループ 中村 健二

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集2「進化するBIM」



 



BLC BIMオブジェクト標準の合意とBIMライブラリー構築に向けて

2019年3月7日

 

はじめに

BIMライブラリーコンソーシアム(代表:奥田修一 建築保全センター理事長)では、2018年10月にBLC BIMオブジェクト標準を76企業等で合意し、その後BIMライブラリー構築に向けて着実な活動を進めている。
 



図-1 BLC BIMオブジェクト標準合意の臨時総会と英国NBS会長の祝賀メッセージ




 

BLCのこれまでの取り組み

(1)BLC活動の概要
※設立時の詳細については、拙稿「建設ITガイド2016」を参照
 
①初年度(2015年10月~2016年3月)
・4月に建設業振興基金からStem等を承継
・各部会の役割の明確化、活動の論点整理
・英国NBS オブジェクト標準と関連基準類の学習
・今後の活動に関する調査実施
 
②2年度、3年度目(2016年4月~2018年3月)
・在り方部会:問題点の洗い出し、ビジネスモデルの検討、利用者負担等に関する検討
・建築部会:建築系BIMオブジェクト標準、建具(窓・ドア)、壁・床・天井、ユニット類(ユニットバス等)、搬送機器(ELV、ESC)のオブジェクトの検討
・設備部会:Stemを基に設備系BIMオブジェクト標準の検討、NBSBIMオブジェクト標準との比較・対応、CI-NETコードとUniclass2015、OmniClassとの比較等の検討
・運用部会:オブジェクト受け入れ時、運用時等のモニタリングの問題点の検討、また利用規約(案)、提供規約(案)、構築・運用規約(案)の検討・作成
・オーストラリア空調衛生工事業協会(AMCA)との会議(2016年6月)
・「オブジェクト標準の確立のための技術的な合意(2017年3月)」(その後一部修正)
 
③4年度(2018年4月~2018年10月)
・BLC標準の関係者での合意の手順の確立、BLC BIMオブジェクト標準・素案の提示と意見募集
・76企業等によるBLC BIMオブジェクト標準version1.0の合意
・建築研究所によるPRISM(官民研究開発投資拡大プログラム)との研究連携
 
(2)BIMオブジェクトの標準化と集約化(ライブラリー化)のメリット
効率的に3次元で設計を行う手法としてBIMは一般的にメリットがある。特にオブジェクトの標準化と集約化には次のメリットがある。
 
・BIMを利用する際に繰り返し利用する部材・製品等を、あらかじめ作成してライブラリーとして共通に利用できる形式にしておくことは、作業の効率化につながる。
 
・オブジェクトに格納する情報の内容、配列が共通化・標準化していれば、建築物のライフサイクルにわたるプロセスで、技術計算、資産管理等の幅広い業務で効率化が図られ、また異なる組織間での情報伝達が円滑に進む。
 
・情報の内容、配列が共通化・標準化していれば、設計・生産の各業務におけるBIMを中核としたソフトウェア利用が進みICT活用の活性化が期待できる。
 
(3)オブジェクト標準の確立のための技術的な合意
建築部会、設備部会での検討を整合させて、BIMオブジェクトの標準化を図るために、2017年3月に両部会の主要メンバーによる合同会議を開催し、プロジェクトの段階、情報の内容等に関する合意事項を作成し、了解した。その後若干の修正はあるが、基本的にはこれに基づいている。合意事項は、
 
①オブジェクトには、メーカーに依存しないジェネリックオブジェクトとメーカーオブジェクトがある。
②形状、情報の詳細度は図-3に示すものを標準とする。
③情報は、必須項目、推奨項目、その他項目(メーカーのこだわり情報)に分類し、記載する(表-1)。
④海外対応は、英語表記、分類のOmniClass等との対応、用語定義の共通化(bSDD)等である。
 



図-2 プロジェクト段階とBIMオブジェクト標準(形状、情報の詳細度)




図-3 BLC標準の基本的なデータ構造




 

BLC標準

(1)目的 
この標準は、日本国内のプロジェクトで使用されているBIMオブジェクトのデータ構造を標準化して、プロジェクト、企業の枠組みを超えて活用できることを図ったものであり、BIM活用の効率化によってi-Constructionで提唱する建設生産性の向上に寄与するとともに、将来のデジタル・ガバメント(電子政府)、デジタル社会(Society5.0)の構築に貢献することを目的とする。
 
(2)適用範囲、形状情報の詳細度、データの基本的な構造
BLC BIMライブラリーで利用を予定する、建築物と敷地を含む付帯施設を構成する材料、機器、製品、什器等を対象とする。具体的な対象について下表に示す。
 






 
BLC BIMライブラリーに使用されるBIMオブジェクトに関するBLC標準のデータの基本的な構造を図-3に示す。なおデータ構造以外のNBS BIMオブジェクト標準に示される内容は、基本的には、NBSのBIMオブジェクト標準version2.0によるものとする。
 
なおBIMオブジェクトは、ジェネリックオブジェクト、メーカーオブジェクトがあり、さらに製品のタイプにより、製品等のコンポーネントタイプと建築の床・壁等のレイヤードタイプもある。
 
(3)BLC標準の特徴
BLC標準の特徴を次に示す。

 
a) 3D(BIM)だけでなく、2D CADへも対応できる
b) 属性によるオブジェクト検索が可能
c) データ構造が国際的な対応が可能
 
a)は、Stemの特性を承継したことにより、BIMだけでなく、2D CADへの対応も可能である理由を、図-4に示すが、形状と属性とはIDにより関係付けられているため、属性情報をオブジェクトに内蔵するオブジェクトはBIMだけで利用するが、形状と属性とが別々でIDによって結ばれたStemの延長のオブジェクトがあり、結果的に2D CADでも利用可能となる。
 

図-4 Stemでの形状と属性との関係




 
b)は、a)と同じ理由であるが、オブジェクト情報を外部にも置き、ジェネリックオブジェクトとメーカーオブジェクトが同じ情報構造を持つことで可能になっている。これはExcelでの検索と同じである。
 
c)は、当初から技術的には国内に合わせるが、オブジェクトは将来国際的にも適用できることを視野に開発を進めてきたところである。このためデータ構造は対応可能であるが、今後の検討課題として、用語の定義が同じかを確認する作業が必要であり、これはbuildingSMART Internationalで検討が始まっているbSDD( buildingSMARTData Dictionary)の議論である。
 
 

BIMライブラリー構築に向けての活動

今後のスケジュールの主要な内容は、
 
・BLC標準に基づくオブジェクトの作成(現在あるものの改良を含む)
・BIMライブラリー構築に向けた基本要件の設定
 
の2点である。これらの活動を「官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)」「BIM オブジェクトライブラリの運用システムの試作検討業務」を通して建築研究所と連携を取りながら実施するとともに、別途議論されている建築確認へのBIM活用とオブジェクトレベルでどのような連携を図れるかが、今後のBIMの社会実装に重要な要素であり、またBLC BIMオブジェクトを核とした情報プラットフォームの構築が、建設生産性向上への鍵となると考えている。
 

図-5 今後のスケジュール



 
 

(一財)建築保全センター保全技術研究所長(兼)BIMライブラリーコンソーシアム事務局長 
寺本英治 

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集2「進化するBIM」



 



BIM 次の進化に向けて

2018年8月3日

 

Information-BIMへの取り組み

BIMには「3D」と「情報=Information」の二つの側面がある。二つの側面を設計フローに即して捉えると、「3D」の側面は、設計が進むにつれて進化していく「形状」のフローであり、「Information」の側面は、設計の初期段階で行われる「性能」に関わるフローといえる(図-1)。日本ではBIMの「3D」の側面が主である。BIMの「Information」の側面について言及されたとしても、主に形態の寸法や仕上げ情報に留まっている。
 

図-1 日本設計のIntegrated-BIMワークフロー




 
BIMの本質は、建物の「データベース」化にある。「BIM」の持つ「データベース」すなわち「情報」の側面が、Information-BIMである。日本では、BIM「情報」活用がなかなか進んでいなかったが、その理由の一つには、意匠・構造・設備がそれぞれ別のソフトを使うところにあると思われた。異ソフト間での連携については、年々改善されており、「形状」に関してはかなり連携が改善されてきているものの、「情報」に関しての連携はまだ十分ではない。日本設計では、意匠・構造・設備が全て同一のBIMソフト「Autodesk Revit(以下、Revit)」を使う。そのため、セクション間での連携の問題が最初からない。後述するように、例えば、建築の面積や窓面積やその仕様、荷重条件、空調条件といった情報が、セクション間でスムーズに共有できる。このことが、日本設計において、Information-BIMの活用が大きく進むことにつながっている。
 
 

Integrated-BIMの推進

意匠・構造・設備の共通プラットフォーム「Revit」を中心にして、さまざまなツールがダイレクトに連携する。これが、日本設計の考える「Integrated-BIM」の骨格となる。特筆すべきは2点、「アルゴリズム設計」と「ダイレクト連携」である。具体事例は後ほど紹介するが、セクション間を横断するアルゴリズム設計は、共通プラットフォームである「Revit」とアドインソフトであるビジュアルプログラミング「Autodesk Dynamo(以下、Dynamo)」があってはじめて可能になる。また、環境シミュレーションの「ダイレクト連携」は、環境設計を重視し、取り組んできた日本設計の設計思想に非常にマッチしている。「Rhinoceros+Grasshopper+ 環境シミレーション」の可能性も、日本設計が開発した「Rhinoceros-Revit」のダイレクト連携ツール「ant sat」があることでさらに拡がる。日本設計の構造解析ソフトとBIMをつなぐ、「NASCA-Revit」の連携、Dynamoを使った情報連携も効果を発揮している。今後も日本設計は「Integrated-BIM」を進化させていく(図-1)。
 
 

Connection-BIMに向けて

BIMは、設計から、施工、さらには維持管理段階における建物「データベース」となる。だからこそ日本設計では、BIMを単なるツールではなく「ワークフロー」そのものとして捉えている。そして上述のとおり、「Revit」は設計の共通プラットフォームである。
 
一方、施工段階で加わる「形状」や「情報」には、非常に細かいディテールの形状であったり、その後の維持管理段階では使わない「情報」もある。例えば、カーテンウォールの詳細形状を「データベース」となる統合BIMモデルに全て反映する必要はない。統合BIMモデルから切り離すかたちで、ディテール検証するためのモデルを作成すればよい。鉄骨ディテール、配管ディテールなどもBIMソフトで作成する必要はなく、3D¬CAD作成すれば十分である。つまり、施工段階のかなり多くのモデルは、BIMモデルから一方通行の連携でよい。維持管理段階でも同様の話がある。例えば日々の修繕情報は、FMにおいては非常に重要な情報であるが、それを統合BIMソフトの属性で管理するのは全く現実的ではない。維持管理段階の関係者が、おのおの、高性能のパソコンを所有し、BIMソフトを装備し、BIMをフルに使いこなすという、現実離れした想定が必要となる。 つまり、施工や維持管理段階から考えると、設計のプラットフォームとは別に、より上位のプラットフォームがあると、さらに便利であるという発想が生まれる。
 
設計のプラットフォームには、全てのセクションが使えるツールであることが望まれる。同じBIMモデルにアクセスして、皆で一つの統合BIMモデルをつくり上げるからである。一方、施工や維持管理段階においても使える共通プラットフォームには、より多くのツールで、多方面から簡単にアクセスできるという、アクセシビリティの良さが求められる。そのためにクラウドテクノロジーは欠かせない。
 
こうしたクラウド・プラットフォーム活用としては、例えば、BIM-FM連携がある。「Integrated-BIM」モデルデータが、日々の修繕記録と並置し、アクセシビリティに優れた形でクラウド上に管理されている状態をイメージしてみれば、その使い勝手の良さが分かる。
 
いま日本設計では、クラウド・プラットフォームとして「Autodesk Forge(以下Forge)」を据え、「Integrated-BIM」のさらなる活用を考えている。施工段階、維持管理段階へも可能性は拡がっていく。
 
 

BIMの「情報」を設備設計に生かす

ここからは、「設備BIM」の具体例を紹介する。これまで、日本の設備BIMは、納まり検討や干渉チェックなどでの利用に偏り、建築計画が固まった後の実施設計後半や施工段階での活用に留まってきた。
 
日本設計では、Information-BIMに着目し、設備の「性能」決定に利用することで、設計の初期段階からのBIM導入を図っている。設備設計では、室諸元情報や機器情報、部材情報などさまざまな情報を、BIMの「Information」の側面に持たせて、「性能」決定に利用している(図-2)。その際、モデリング(形態)を、建物の階高や天高、梁背などを決定するためのクリティカルな部分に留めることがポイントである。最小限のモデリングを作成した後は、Revitにおいて「スペース」と呼ばれるエリアから室諸元情報を読み込み、情報が付随した機器をプロットする。ここまで入力されたモデルがあれば、詳細モデリングを行わなくても、セクション間の調整は可能であり、設備性能を決めることができる(図-3)。建築セクションの詳細モデリングが出来上がるのを待っていたのでは、設計初期段階での設備BIM活用は難しくなる。
 

図-2 BIMの「Information」




 

図-3 設備設計でのBIM活用方法




 
 

アルゴリズム設計によるルーティン自動化

ビジュアル・プログラミングでアルゴリズム設計を実現する「Dynamo」を活用した、設備設計の自動化にも取り組んでいる。例えば、スペース情報を集計し、機器の合計容量を自動的に計算して結果を戻すという一連の作業や、機器プロットまでモデル化した後は、「情報」活用により、負荷計算結果の数値を元に、機器を自動選定したり大きさを変えるといった自動化を可能にしている。今まで、時間と労力を費やしていたルーティンワークの自動化により、さらに深度化した検討が可能になる(図-4、5)。
 

図-4 アルゴリズムを利用した設備設計の自動化




 

図-5 アルゴリズム設計による自動化




 

スペースと部材情報を活用した設備の自動積算

BIMモデルから、BIMソフトのデフォルト機能を用いた数量算出は可能であるが、積算基準と異なる集計になるため、そのまま積算に活用できない。
 
そこで、日本設計では、積算基準に合致した長さ計上に則り算出できるようBIMソフトの集計方法をカスタマイズした。自動的に拾い書・集計書、さらには拾い図を作成することが可能になっている。この積算活用においても、積算を行う上で、可能な限りモデリング作業を最省力化することが実践的に大事であり、モデル上の部材やスペースへの「Information」の持たせ方にはいろいろと工夫を凝らしている(図-6)。
 

図-6 スペースと部材情報を活用した設備の自動積算




 
 

設備設計でのBIMワークフロー

BIMを設計フローに取り入れる際に重要なことは、BIM作業を追加業務にするのではなく、今までの業務を、BIMで置き替えていくことだと考えている(図-7)。
 

図-7 設備設計のBIMワークフロー




 
ただし全てをBIMに置き替えるのではなく、汎用ソフトやExcelシートなどの便利なものは残しつつ、それらをBIMと情報連携させ、BIMを情報の中心に据えることが最も有効である。
 
日本設計では、各セクションの情報をロスなく共有できるRevitを中心に据えて情報の体系化を行い、全ての情報をRevitにつなげることで、今までバラバラだった情報を一元的に管理可能にしている。これにより、設計の過程でしか利用されていなかった貴重な情報を、「3D」利用に限られていた施工段階や、さらには運用段階へ引き継ぐことを見据えている。
 
なお、Revit(MEP)は設備の「性能」を決定する段階で活用し、最終的なアウトプット(実施設計図)は「Autodesk AutoCAD(以下、AutoCAD)」や、Revitとのダイレクト連携を開発したRebroを併用している。建築同様、アウトプットの実践的工夫により、実用化を図っている。
 
 

NASCAと構造BIMモデル

次に「構造設計BIM」について概説しておきたい。日本設計では、構造解析プログラムは、自社開発の一貫構造計算プログラムNASCAを使用し、BIMソフトはRevitを使用している。それらを利用して、効果的にBIM活用を行うために、NASCAの構造データからRevitへのデータ変換を行うプログラムを開発し、現在運用中である(図-8)。
 

図-8 システムの全体図




 

BIMモデルの使用

現在、NASCAからのデータ変換によって作成された構造のBIMモデルは、①建築・設備などの他セクションのBIMデータとの干渉チェック(図-9)、②構造図(伏図、軸組図)の作成などで活用している。このBIMモデルから作成された構造図は、相互の図面間で整合性が確保されるため、図面の確認作業が軽減されている。
 

図-9 構造図作成の自動化




 

構造図作成の自動化

Revitを用いて自社の製図基準に適合した構造図を作成するためには、多くの手間がかかる。そして、その作業の一部は単純作業の繰り返しであり、かつ、どの案件に対しても共通である。今後BIMによる設計を継続的に行っていく上で、このような作業を自動化することは非常に効果的であり、構造図の品質向上および作業効率の向上につながる。そこで、NASCAからRevitへの変換時に自社仕様の伏図・軸組図の自動生成も同時に行うようにさらなる開発も完了している(図-8、9)。
 
 

二次部材の設計

小梁などの二次部材の設計においては、ビジュアルプログラミングツールであるDynamoを用いてRevitとExcelを連携させる仕組みを構築した。それにより、計算に必要となるRevit内の情報の抽出、Excelへの自動入力、そして計算結果に基づき修正された結果の反映を一連の流れで行うことを可能とした。以前と比較してExcelへのデータ入力や計算結果に基づく図面修正の作業時間を大幅に短縮することが可能になった。
 
 

情報の整理と共有

部門間の調整においては、さまざまな構造情報の中から各部門(意匠・設備など)の設計者が必要とする情報を整理した検討図(伏図・軸組図・断面リストなどとは異なる資料)が必要となる。これまで、検討図の作成は主に構造設計者が手作業で行っていたため、部門間の調整事項に変更が生じた場合、検討図の再作成作業が大きな負担となっていた(図-10-a)。そこでDynamoを活用して必要となる情報をRevitデータから抽出・視覚化することで、検討図作成の支援を行うツールを開発した。それにより、検討図作成の負荷が大幅に削減された(図-10-b)。また、このツールにより部門間の情報連携がより強固となり、設計全体の高品質化にもつながっている。
 

図-10-a 従前のワークフロー




 

図-10-b BIMを用いたワークフロー
(時間短縮が可能となる)




 

Information-BIMとBIMFM連携の可能性

Connection-BIMについても、具体例に触れておきたい。海外では、BIMは設計や施工のための効率化ツールというよりは、FMでの活用にこそ価値があると認知されつつある。だが、日本での活用例は非常に少ない。
 
繰り返し述べているように、BIMは3Dの「Visual BIM」の側面と属性情報の「Information-BIM」の側面を併せ持つ。BIMを建物の仕様・性能情報を統合管理できるデータベースとして活用することで、よりその可能性を広げることが可能になる。特に運用段階で必要としているのは、「3D」というよりもほとんどが情報の「I」つまりデータベースであり、BIM¬FM連携で肝心なのはBIMの「Information」を活用することにある。運用段階に必要とされるデータベースには設計段階から引き継ぐべき「情報」がかなり多くを占め、施工段階では品番や製造番号などメーカー情報を付与するくらいで十分なはずである、施工段階のものづくりのための詳細な3Dデータは改修工事では再利用できるとしても、FMの日常管理には細か過ぎてとてもハンドリングできるものではない。
 
ただし、運用段階の3Dのニーズは限定的という事実は受け止めておく必要があるものの、3Dというリッチなデータによりもたらされるメリットは少なからずあるはずである。われわれは、このFMでの3Dのニーズを、①インデックスとしての活用、②部屋と機器・機器と機器の関連を視覚化(図-11)、③3DによるFMデータベースの見える化、の3点に集約できるのではないかと考えている。
 

図-11 機器の親子関係の視覚化




 
そして、その活用を汎用化するため、FM段階では、直接BIMを扱うのはハードルが高いため、クラウド・プラットフォームである「Forge」を活用することを提案している。既存のさまざまなFMシステムの利点を生かしたまま、「Forge」を介したBIM¬FM連携こそ、付加価値を高めていく現実的なアプローチである。FMサービス会社「プロパティデータバンク」との連携も進めているところである(図-12)。

 

図-12 BIMとFMシステムの連携




 
現在、「Forge」の活用開発も進み、運用段階へつなぐ環境が整い、ライフサイクルでのBIM活用が具体化している。実プロジェクトでの活用も、今後急速に増えていくものと予想される。
 
さらにこの先へは、AI、IoTの活用が間違いなく進み、AIの「判断」には、「定量化」が当然の前提となる。そして、AIの「経験」には、IoT による「情報」の一元的蓄積を必要とする。さらに、この「情報」に、単体のBIMデータベース情報だけではなく、クラウド・プラットフォームに並置されたさまざまな情報、それは複数のIntegrated-BIMの並置であったり、都市的環境情報であったり、事業採算予測情報であったりするわけだが、さまざまな情報が加わることにより、「判断」は都市レベルに、経済レベルにも適用されることとなる。それは部分最適化からより広い視点での全体最適化へつながる道である(図-13)。
 

図-13 部分最適化から全体最適化へ




 

株式会社 日本設計 プロジェクト管理部 BIM室 
岩村 雅人/吉原 和正/田畑 健

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2018
特集1「i-Construction×CIM」



 



 


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