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国土交通省におけるBIM/CIMの普及・促進の取り組み

2020年6月4日

 

はじめに

BIM/CIMの導入には、設計品質の確保や効率的な施工計画に基づく人材・資材の最適配置、最新技術の導入による監督・検査の効率化等が期待されています。また、建設全体を見通した施工計画、管理などコンカレントエンジニアリング、フロントローディングの考え方を実践していくことが可能となり、一連の建設生産・管理システムの品質確保並びに生産性の向上が可能となります。
 
このため国土交通省では、BIM/CIMの普及・定着、効果の把握やルール作りに向けて、2012年度より試行を進めてまいりました。
 
本稿では、BIM/CIMに関する基準・要領等の整備状況と、適用拡大に向けた今後の取り組みについて紹介します。
 
 

BIM/CIMの実施状況

国土交通省では、業務については2012年度から、工事については2013年度からBIM/CIMの試行を進めており、これまで、設計業務で291件、工事で339件の合計630件で実施しています(表-1)。
 
特に2018年度は、大規模構造物詳細設計においてBIM/CIMを原則適用することとし、200件を目標にBIM/CIMの積極的な活用を推進した結果、設計業務で147件、工事で65件の合計212件でBIM/CIMの活用がなされています。
 

表-1 BIM/CIM活用業務・工事の実施状況等



 

基準要領等の整備

国土交通省では、BIM/CIMの効率的かつ効果的な活用に向け、基準・要領等の整備を進めています(表-2)。
 

表-2 国土交通省におけるBIM/CIMに関する基準/要領等の整備状況



(1)CIM導入ガイドライン(案)
国土交通省では、これまでのBIM/CIM活用モデル事業で得られた知見やソフトウェアの機能水準を踏まえ、公共事業に携わる関係者(発注者、受注者等)がBIM/CIMを円滑に導入できることを目的に、現時点でBIM/CIMの活用が可能な項目を中心に、受発注者の役割、基本的な作業手順や留意点とともに、BIM/CIMモデルの作成指針(目安)、活用方法(事例)を参考として記載した「CIM導入ガイドライン(案)」を作成しています。
 
ガイドラインは、共通編と構造物ごとの各分野編で構成しており、各編を組み合わせて使用することを想定しています。2019年度版には、新たに、下水道編、地すべり編を追加し、BIM/CIMの適用範囲の拡大を図っているところです。
 
一方で、現行のガイドラインは内容が重複している部分があるなど課題もあることから、2019年度は共通編を全面的に見直しすとともに、発注者がBIM/CIMを活用する観点から実施すべき事項を別途マニュアルとして整理するなど、より分かりやすいガイドラインとなるよう改定し、BIM/CIMの効果的な活用が図られるよう検討を進めています。
 
 
(2)3次元モデル表記標準(案)
建設生産・管理システムで一貫したCIMモデルを流通・利活用し、各プロセスで発生した情報を連携していくことで、より一層の生産性向上が見込まれます。このため、契約図書におけるCIMモデルを契約図書に位置付けることを企図した「3次元モデル表記標準(案)」を整備しています。
 
設計図書として活用するBIM/CIMモデルの寸法や注記および管理情報の表記・表示の方法を定めたものであり、2次元図面からBIM/CIMモデルへの円滑な移行を補助するため、3Dモデルから切り出した2次元図面に従来のCAD製図を踏襲した方法で詳細な寸法・注記を加える方法も記載しています。
 
従来の2次元図面によらない、契約図書としてBIM/CIMモデルを活用する際の規定であることから、一般的なBIM/CIM活用業務では作成する必要はありませんが、本標準をBIM/CIM活用事業に適用し、実践して得られた課題に対応するとともに、関連する基準類の整備と連携しながら、本標準を継続的に改善・拡充していくこととしています。
 
BIM/CIMモデルでは構造物の寸法や注記をモデル内から取得可能であることから、改善・拡充に当たっては従来の2次元での製図法にとらわれない、より効率的な表記・表示の方法を検討し、建設生産・管理システムの効率化に向けて制を進めています。
 
 
(3) 土木工事数量算出要領(案)
国土交通省では、CADソフト等による体積の算出結果等の自動算出された数量をそのまま積算に活用できるよう「土木工事数量算出要領」に反映しています。
 
2018年度末の改定で、土木工事数量算出要領の全ての工種において3次元モデルから自動算出される数量を活用することが可能となりましたが、一部不明確な部分があったことから、2019年度は内容の精査を実施するとともに、モデル作成に当たっての留意事項や具体的な算出手順を整理し、効率的な積算が可能となるよう手引きを整備する予定です。
 
 
(4)BIM/CIM成果品の検査要領(案)
建設生産・管理システム全体を通じてBIM/CIMを活用していくためには、成果品として引き継ぐBIM/CIMモデルが適切に作成されていることが必要です。
 
そこで、まずは橋梁分野の詳細設計を対象に発注者による検査に必要な事項を整理し、受注者が実施すべき照査に必要な事項を「BIM/CIM設計照査シート」として取りまとめ、BIM/CIMモデルの品質確保を図ることとしました(図-1)。
 
2019年度は、対象工種を拡大し適切な照査・検査が実施できる環境を整備するとともに、ソフトウェアを活用した自動チェック機能などの拡充により、効率的な照査が可能となるよう、さらなる検討を進めているところです。
 
また、実務において想定される課題に対応するため、BIM/CIMを活用した設計照査の実施手順などを取りまとめた手引きを整備する予定です。
 

図-1 BIM・CIM設計照査シートの適用範囲



(5)BIM/CIM活用における「段階モデル確認書」作成マニュアル【試行版】(案)
BIM/CIMを活用したフロントローディングを実現するためには、手戻りを防止するため、事業の各段階で発注者が確認する時期と求めるBIM/CIMモデルの達成度を明確にすることが重要であることから、「段階モデル確認書」を作成するための「BIM/CIM活用における「段階モデル確認書」作成マニュアル【試行版】(案)」を整備しています。
 
段階モデル確認書は、業務・工事を実施する際の一連のプロセスにおいて、データ連携のプロセス(データ連携の場面)と確認すべき情報やその要件を示したものであり、「プロセスマップ」および「情報確認要件」で構成されるものです。
 
入札公告時にあらかじめ段階モデル確認書を提示し、業務・工事の開始時に受発注者で共有・確認することにより、CIMモデルの活用目的を明確化し、受発注者双方の作業負担を軽減することが期待されます(図-2)。
 

図-2 段階モデル確認書の活用イメージ



(6) 要求事項(リクワイヤメント)
国土交通省では、2018年度から発注者が受注者にBIM/CIMモデルの導入・活用に関する要求事項(リクワイヤメント)を設定し、事業を実施しています。
 
この要求事項に基づき、受発注者がそれぞれ知見やノウハウを出し合い、課題の抽出および解決策を検討することで更なるBIM/CIMの効果的な活用に向けた環境整備を進めているところです。
 
2019 年度は、これら要求事項について必須項目と選択項目に分けて見直すとともに、選択項目の実施にあっては課題抽出および解決策の検討が主たる目的であることを明確化しました。
 
2019年度に設定した要求事項は表-3の通りです。基準・要領等を定めたことにより実施が可能となったBIM/CIM活用項目を選択項目として設定し、BIM/CIM活用業務・工事で試行および検証を実施することで今後の基準・要領等の改定に向けた課題解決に活用を図る予定です。
 
今後、BIM/CIMの活用項目について必須項目を充実させることで、後工程で活用可能なBIM/CIMモデルの標準化が図られることから、引き続き、選択項目として実施する要求事項の課題解決を図り、必須項目の拡充に向けて検討を進めてまいります。
 

表-3 2019年度のリクワイヤメント一覧



BIM/CIMを取り巻く環境の整備

BIM/CIMをより効率的、効果的に活用していくためには、基準・要領等の整備を進めるだけでなく、それらを活用する環境についても整備していく必要があります。国土交通省では、BIM/CIM活用のための基準要領等だけでなく、データ交換等の環境整備も推進しています。
 
 
(1)BIM/CIMポータルサイト
BIM/CIMを効率的に活用するためには、必要な情報へのアクセシビリティを高める必要があります。特に、BIM/CIMに関連する基準・要領等について作成者ごとに公開されており、「何が、どこにあるのか」を整理し、共有することが急務となっています。
 
そこで、まずは国土交通省が公開しているBIM/CIMに関連する情報を取りまとめ、BIM/CIMポータルサイト【試行版】として公開しました(図-3)。
 
今後、関連する団体の情報等について充実させ、BIM/CIMに関する情報へのアクセシビリティを確保できる環境整備を進めてまいります。
 

図-3 BIM/CIMポータルサイト【試行版】
URL:http://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/bimcimindex.html



(2)ソフトウェア確認要件
BIM/CIMモデルを建設生産・管理システムで一貫して活用していくためには、異なるソフトウェア間でも支障なく情報交換が可能となるよう互換性を確保することが重要です。特に、BIM/CIMの共通フォーマットであるIFC形式およびJ-LandXML形式について、個々のBIM/CIMソフトウェアで問題なく作成・表示が可能であるかについてあらかじめ確認できることは、BIM/CIMを継続的に活用するうえで非常に重要となっています。
 
そこで、国土交通省では、前述の基準要領等において国内で独自に定めた要件を含め、国土交通省としてBIM/CIMソフトウェアに求める機能を機能要件として公開することしました。
 
ソフトウェア検定は、building-SMART JAPANやOCF等の民間団体において実施されていますが、2019年度以後これらの機能要件を満足しているかについて検定を実施され、国内のBIM/CIM基準等に合致するソフトウェアが活用されるよう環境整備を進めてまいります(図-4)。
 

図-4 ソフトウェア検定のイメージ



(3)情報共有システム機能要件
BIM/CIMをより効率的に活用するためには、同一のデータに関係者が同時にアクセス可能となる環境が必要です。このため、国土交通省では情報共有システムを活用することで3次元データを確認できるよう機能要件を見直し、2018年度に「工事施工中における受発注者間の情報共有システム機能要件Rev5.0」として改定するとともに、業務における機能要件を整備しています。
 
2019年版では、3次元モデルの表示等の一部機能について必須機能から外すとともに、外部システムを活用することが可能となるよう解説編を新たに公開しています。また、機能要件の整備とあわせ、ISO19650に準じた共有データ環境(CDE)に対応するよう「土木工事の情報共有システム活用ガイドライン」も改定しています。
 
今後、これら機能を満足する情報共有システムを活用することで、BIM/CIMの効率的な活用が可能となることが期待されます。
 
 
(4)「オンライン電子納品」の実装
BIM/CIMに限った課題ではありませんが、複雑化・大容量化する電子成果品の納品に当たり、現行の電子納品要領ではCD等の電子媒体に格納することを必須としています。しかしながら、複数枚の電子媒体に分割して提出する場合など、電子成果品の作成には少なからず受注者の負担となっている部分があるとともに、成果品が正しく格納されていないなどのミスが発生する要因ともなっていました。
 
そこで、国土交通省では情報共有システムを活用したオンライン電子納品について検討し、2020年度中の運用開始に向けて、シームレスな情報の共有・交換が可能となるよう環境整備を進めています(図-5)。
 

図-5 オンライン電子納品のイメージ



今後の取り組みについて

国土交通省では、i-Constructionの普及拡大により、2025年までに建設現場の生産性2割向上を目指しています。特に、BIM/CIMを生産性革命のエンジンと位置付け、2017年に「3次元データ利活用方針」を策定し、建設生産・管理システム全体における3次元データの利活用に向けた取り組みを進めてきました。
 
今後、さらなるi-Constructionの普及拡大を図るためには、3次元データの原則活用が可能となる環境を整備していく必要があることから、2019年度中に3次元データの利活用に関する新たなロードマップを作成することとしました。
 
新たなロードマップについては、これまでの「いつまでに何をするのか」という表現から、「いつ何が可能となるとなるのか(どのような効果が期待されるのか)」という表現に改め、国土交通省の役割だけでなく、業界団体の果たすべき役割についても記載し、誰が何をすべきなのかを明確にしたいと考えています。
 
 
(1)規格・技術の一元化
BIM/CIMの共通フォーマットであるIFCの規格化については、ソフトウェア確認要件として公開したところですが、作成するBIM/CIMモデルの標準化については作成者の判断に委ねられている部分が多いのが実情です。また、関連する基準要領等やガイドライン等についても整理されておらず、全体像を把握することが困難となっています。
 
今後、BIM/CIMをより効果的に活用していくためには、国際規格であるISOを導入するだけでなく、BIM/CIMに関する国内における規格・技術の一元化を目指すことが必要です。
 
そこで、2019年度は、まずは国内におけるBIM/CIM関連の用語を整理し国内の共通認識を深めるとともに、BIM/CIMに関連する基準・要領・ガイドライン等の文書について、誰でも容易にアクセスが可能となるよう、ポータルサイトの拡充を図る予定です。
 
 
(2)BIM/CIM適用事業の拡大
国土交通省では、2018 年度から大規模構造物詳細設計において原則適用を打ち出すとともに、目標を200件と定めてBIM/CIMの適用拡大を図っています。2019 年度は、詳細設計のBIM/CIM成果品がある工事についても原則適用するとともに、概略・予備設計においてもBIM/CIMの導入を積極的に推進することで、年間400件のBIM/CIM事業の実施を目指します。
 
今後、全事業でBIM/CIMの原則適用を目指すためには、CIM導入ガイドラインの各編を拡充するだけでなく、これまで対象としてこなかった工種(地下埋設物等)についても対応が可能となるよう、ガイドライン等のさらなる拡充について検討を進めます。
 
 
(3)BIM/CIMの高度利活用の推進
BIM/CIMを活用することで、建設生産・管理システムにおける情報の集約化・可視化が可能となります。また、クラウドコンピューティング等の新技術を導入することにより、業務等の効率化・高度化につながります。さらに、これらのデータは建設生産・管理システムの外でも活用されることが期待されています。
 
2019 年度は、i-Constructionモデル事務所において後工程で利用することを前提としたBIM/CIMモデルの構築について検討するとともに、BIM/CIM技術者による発注者支援についても検討し、さらなる高度利活用に向けた検討を進めてまいります。
 
 
(4)BIM/CIMの普及促進
BIM/CIMを建設産業全体で活用していくためには、大企業における先導的な取り組みを進めるだけでなく、中小企業を含めた全建設産業で3次元データを活用できる環境整備が必要です。
 
国土交通省では、2018年度から発注者に対するBIM/CIM研修を開始しましたが、BIM/CIMのさらなる普及・啓蒙が図られるよう、体制構築を進めてまいります。
 
また、モデル作成にかかる作業負担を軽減するため、数字を入力することで必要最低限のオブジェクトを作成可能なパラメトリックモデルの作成ルールや、プレキャスト製品等の汎用品ついてはメーカーに依存しないジェネリックオブジェクトの供給方法等についても検討してまいります。

表-4 BIM/CIMロードマップ案



おわりに

建設現場の生産性向上を図るためには、3次元データ等の導入を国の直轄工事以外にも拡大していくことが必要です。このため、 i-Constructionサポート事務所を各都道府県に1事務所以上決定し、地方公共団体や地域企業における取組をサポートするための相談窓口を設置しました。
 
また、発注関係者の集まる発注者協議会や土木部長会議等の場において、国土交通省における取り組みについて周知を図りつつ、発注者間で連携して取組みを進めてまいりたいと考えています。
 
 
 

国土交通省 大臣官房 技術調査課 課長補佐 那須 大輔

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2020
特集1「i-Construction×BIM/CIM」



 



施工BIMによる業務効率化から働き方改革へ向けた取り組み -Informationの活用-

2019年7月26日

 

施工BIMの目的

当社でのBIM活用の主な目的は、業務効率化・生産性の向上である。2017 年よりICT技術を活用した現場支援プロジェクトを立ち上げ、全社一丸となって働き方改革に向けた取り組みを進めている。BIMは「形状」と「情報」の2つの側面を持っていることから、それらを活用するICT技術との親和性が非常に高いと感じている。施工フェーズでBIMを活用することで、ICT化の促進につながっている。
 
施工BIMの中でも、仮設計画においてBIMを実施することの目的は、大きく3つ、Visualization(視覚化)、Simulation(模擬)、Information(情報)だと考える。仮設計画は、どのように建物を作るかというプロセスを表現するものであるため、計画の手順を3次元化するだけで、Visualization(視覚化)、Simulation(模擬)の目的は達成される。しかし作成に手間がかかるわりには、イメージの共有程度の活用にとどまってしまい、効率的とは言えない。BIMモデルのInformation(情報)を有効活用することが、施工BIMを効率的かつ効果的に運用するためのキーワードである。
BIMによる鉄骨建方計画



 

Information=パラメトリック

構造モデルは、幅・高さ・長さなどの形状情報と、材質などの情報をパラメーター化し部材を構成しており、その情報をタグで出力、数値を集計することで、図面化を効率的に行うことができている。設計変更があった場合は、おのおののパラメーターを変更するだけで、部材形状が追随して変形するなど修正対応が容易である。パラメトリックにモデルが変形可能であることは、業務改善にダイレクトにつながってくる。従って、施工BIMでもパラメトリックなモデリングを行うことが重要な目的となる。つまりInformationを有効活用することが、業務効率化への必要条件となる。
 
 

仮設計画BIMの環境整備とワークフロー

BIMで仮設計画を取り入れる際に、BIMを追加業務にするのではなく、これまで行っていた業務をBIMで置き換え、さらに効率よく行えることが重要だ。そのためには、業務フローとそれに即した仮設コンポーネントの整備が必要である。
 
(1)鉄骨建方計画
鉄骨建方計画は手順を検討するものであるので、BIMとの相性が非常に良い。シミュレーションのプロセスがそのまま図面となると言ってもよい。そのためには操作性が高いクレーンコンポーネントが必須となる。




クレーンコンポーネントは、旋回やブームの上げ下げによる建物等との干渉をシミュレーションできるように、BIMモデル上のマウス操作でフックの先端を動かせるようにしている。さらにブームの長さ・角度・作業半径などの条件取得により「定格荷重」を決定し、自動的に算出できる機能を付加している。



鉄骨建方計画に使用する鉄骨モデルは、鉄骨ファブが作成したモデルをIFC形式で取り込んだものでは不十分である。鉄骨建方計画において重要な情報である「ピース重量」が引き継がれないからだ。鉄骨専用BIMソフト(すけるTON、FAST Hybrid)とRevitがダイレクト連携することで、ピース重量の情報を持った鉄骨BIMモデルを取得できるようになった。このモデルとクレーンに時間軸(フェーズ)情報を加えることで鉄骨建方ステップ図が作成でき、かつ高精度な鉄骨建方計画が可能となった。
 
 
(2)山留計画
山留計画における業務フローは、敷地条件・地盤レベル・基礎床付けレベルなどから山留めの必要可否を検討し、山留めを配置、数量を積算し見積りを行うという流れであった。ファミリー内に山留めで使用する数値を全てパラメーターとして入力することで、モデリングを行うだけで、集計・概算金額算出まで行えるようにした。モデリングについても、山留めを配置する範囲に線を引くだけで、自動割り付けするようになっている。基礎形状は計画時に変更が多く、複数のパターンを短時間で検討する必要があるため、変更追従性が高く、数量をリアルタイムに把握しながら計画できることは、BIM活用における最大のメリットである。

山留計画の業務フロー




(3)外部足場組立図
外部足場の計画においては、まず平面的な足場の割り付けを行うが、建物形状によりさまざまな調整を行っている。そこで、足場の設置範囲に線を引くだけで足場の割り付けを自動的に行うツールを開発した。入隅・出隅部などの詳細な調整は、全てパラメーターに置き換えパラメトリックに変更できる。これにより平面割付作業時間を5割削減した。この割り付けに合わせ、コンポーネントを配置するのだが、足場材は同じ部材を繰り返し配置するため、カーテンシステムとの相性が良い。縦・横のグリッドを移動することで、足場の割り付けが変わり、パネルのW×Hや配置条件によって内蔵された部材が切り替わるようにパラメーターを組み込んでいる。部材には品番や重量が組み込まれているので、足場の集計まで可能となっている。労働基準監督署に提出する88申請図は、テンプレートを割り当てて、注釈を入れるだけで簡単に作成可能となっている。



 

BIMモデルを測量に活用

ある物流施設では、着工時から施工BIMモデルを一貫して活用した。外部足場計画、工程検討、基礎コンクリート躯体図・配筋納まり図、鉄骨建方計画図、平面詳細図と、各施工フェーズに合わせ徐々にBIMモデルを詳細化し、施工レベルまで精度を上げた。BI Mの「情報」と「形状」という側面からも、施工図にするためには、正確な「形状入力」が必須となる。



施工図レベルに押し上げたBIMモデルを、Autodesk社の墨出しシステム「Point Layout(ポイントレイアウト)」により、現場での墨出し測量に活用した。BIMモデル上に測量点を配置し、クラウドサービスと連携させて測量機に転送する。タブレット上でポイントを指定すると、位置をナビゲーションしてくれるシステムだ。これまで3人で行っていた傾斜路の墨出し作業が、BIM 360 Layout導入後は1人で可能となった。BIMモデルおよびICT技術と連携させることで、現場の生産性向上を実現した。



 

BIMモデルから配筋チェックシートを作成

建物を建築する際、設計図どおりに鉄筋が配置されているかを確認するために「配筋チェックシート」を作成している。これまでは設計図から配筋情報を転記してチェックシートを作成し、検査前にチェックシートに間違いがないか再確認する必要があり、現場技術者に多大な負担をかけていた。そこで、構造BIMモデルの配筋情報から、図面上でワンクリックするだけで、配筋チェックシートを自動的に作成するプログラムを開発した。これにより、従来と比較して約90%の作業時間削減を実現した。
 
本プログラムには断面リスト自動作成機能も有している。従来のものは、BIMモデル→断面リストの一方向のみの連携であったが、断面リストを更新すればBIMモデルの配筋情報が更新される双方向連携が可能となっている。修正による作業時間を従来と比較し約20%短縮できることに加え、BIMモデル内に鉄筋情報が正確に保持されるため高品質な設計が可能となった。この機能により、構造BIMモデルを配筋チェックシートへ活用するための、モデルにおける「配筋情報の正確性」が担保されている。



 

まとめ

これまでのBIMは、使っている人が最も効果を得られるエンジニアリングツールであった。当社も、使うプロセスに合わせてツールを整備することで、確実に生産性を向上させてきている。しかし、これからは現場全体の業務効率化を目指す活動をさらに進めなければならない。BIMの情報を現場に持ち出してさまざまなフェーズに活用していくことが、キーワードとなる。それらを加速するためには、BIM技術者がその重要性を認識し、情報活用の業務フローを新たに見出していかなければならない。BIM情報をツールとして扱えるように意識を改革することこそ、働き方改革であり、われわれの役目となる。誰もがBIMデータを有効に活用することができるようになれば、必然的に働き方改革は進んでいく。
 
 
 

矢作建設工業株式会社 建築事業本部 施工本部 施工部 工務グループ
グループマネージャー 伊藤 篤之/ BIM推進担当 太江 慎吾

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集2「進化するBIM」



 



施工BIMの今 -ISエンジニアリングのBIM

2019年7月19日

 

BIMに取り組むきっかけ

当社の内外装部はALC(軽量気泡コンクリートパネル)・ECP(押出成形セメント板)・金属パネル・PC等の設計施工を主たる業務としております。
 
BIMに本格的に取り組んだのは2016年からです。ゼネコン主導による「施工図のBIM化を図るように」との働きかけを受ける形で当社の施工BIMはスタートしました。また、そもそも施工業者としてどんなメリットがあるのか、BIMで何ができるのかを考えると同時に、施工上の取り合いの視認性の良さだけでなく、取り組むなら2Dではできない部分をBIMで設計品質・作業効率を向上できないかとの考えが背景としてありました。
 



 

施工業者として改善すべき問題

ALC・ECP等の施工図は、パネル割り付けと同時にパネルの厚み、長さ(支点間距離)、開口補強、スリーブ検討といった計算を個別に計算ソフトへ手入力しチェックしています。これらの作業は物件ごとに荷重条件(風荷重・層間変位等)が違い、大型物件になればそのチェックは膨大な数になります。
 
また、設計担当者の経験にもバラつきがあり作業処理にかかる時間を考え、これを平準化・省力化できないかということに注力し、これらの計算ソフトに改良を加えたりしておりました。
 
これまでパネル割り付けは既存の2D自動割付ソフトを使用しております。このソフトは効率よく自動割り付け・変更修正と建材メーカーへのパネル発注明細が作成できます。しかし、2Dから3Dとなりますと作図システムの変更が必要です。ARCHICAD、RevitといったBIMソフトを施工BIMとして使うには、オブジェクト・ファミリ作成・自動割り付けプログラム化、また発注明細作成となると建材メーカーとの連携も重要です。
 
しかしそれ以上にBIMを推進するに当たって、いろいろなアイデアが社内・設計協力会社からたくさん出てきています。BIMのパラメータ情報を計算式にインポートすることで、これらの計算にかかる作業が、オブジェクトを割り付けするだけで支持スパンの確認ができそうだということ、そしてスリーブ開口も解決できるのではないか等、施工BIMの可能性を最大限引き出すための課題と方向性が明確になってきました。
 
 

BIMパネル自動割り付けシステムの開発

開発コンセプトとしては「設計品質・作業効率の向上」と「意匠BIMデータを活用」ということです。開発に当たっては当社のBIM担当と設計協力会社とで協議し、今まで以上の作業効率と強度的な設計品質を遵守できるよう開発項目をリストアップしました。



オブジェクト(パネル形状・仕様)はパネルサイズ・パネル加工・パネル種別(フラットパネル・デザインパネル・タイルパネル等)等、種類が多岐にわたり、これらを作成した上でAPIにて制御しパネルを自動で割り付けていきます。また、パネルの情報としてはパネル重量・断面係数や断面二次モーメント・留付ボルト強度等もマスターテーブルとして作成し、パネルの強度計算に対応できるようにしました。



施工業者として意匠BIMモデルそのものを活用し、また他業種ともデータ連携できるようにしたいと考えました。この自動割り付けシステムは意匠BIMモデルを下地に平面配置をトレースし、パネルのモジュールで割り付けし、両端部で均等に割り付け・寸法指定割り付け・コーナーパネル配置など効率よくモデリングできます。また、意匠BIMモデルの階高情報がそのまま使えますので、面として同じであれば必要な階まで一度にパネルをモデリングすることもできます。



そして意匠BIMモデルのAW・SD等の開口情報(サイズ・位置)をパネル自動割り付けシステムへそのまま連動させることで入力ミスをなくし、また意匠BIMモデル変更にも即座に対応できます。パネル割り付けにおいては割り付けモジュールと開口情報が最も重要ですし、変更追加が多いのが開口情報です。この情報を意匠BIMモデルと連動すればお互いの確認作業が省力化されます。
 
パネル自動割り付け・パネル発注明細はもちろんのこと、鉄骨一次ピース割り付け・開口アングル検討・パネル計算・スリーブ検討までもプログラムしていく予定です。



鉄骨一次ピース割り付けの目的は鉄骨製作者(FAB)へのデータ受け渡しをスムーズに行い、先付ピースの漏れをなくすことです。これまで2D図での図面指示では情報が分かりにくく、記入漏れ・転記漏れなどが多くありましたが、現在BIMデータでの受け渡しに移行してからは、現場での先付ピース漏れはほとんどありません。できればこのBIMデータを先方(TEKLA等)へのネイティブデータに変換できればと思案しているところです。
 
 

今後の展望

施工BIM推進に当たって直面している問題はチェック・承認の方法です。他業種との取り合い・干渉等を確認するため、現場ではBIM重ね合わせ会等が開かれますが、短い工期の現場も多く、施工BIMモデルのチェック日程はなかなか厳しいものがあります。できる限り早期に着手しBIMモデルの検証作業に十分な期間を確保しなければと考えます。
 
意匠BIMモデルとパネルBIMモデルの重ね合わせ、鉄骨や躯体・建具との重ね合わせ、モデルの検証を十分行うことで寸法確認の手間もかなり省力化できます。施工業者の足並みもまだそろっているとは言えませんが、早急にBIMの確認業務フローの確立が重要であると考えます。
 
最後に、施工BIMは他業種との連携を図ることで作業環境は大きく改善・発展するでしょう。今後ともBIM関連業者の相談会・連絡会等で情報交換しながら、施工BIM推進に尽力したいと考えております。
 




 
 

ISエンジニアリング株式会社 技術設計部 金 尚之

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集2「進化するBIM」



 



施工BIMの今 -日建リース工業のBIM-

2019年7月12日

 

はじめに

当社の設立は1967年。まだレンタルという言葉が一般化していない時代から、仮設資材のレンタルを中心に、52年にわたってその経験とノウハウを磨いてきました。「仮設事業」として仮設資材をレンタルするとともに、これまでの建枠に替わって建築現場で主流となってきた、クサビ緊結式足場「NDシステム(通称:ダーウィン)」のメーカーでもあります。
 
自社開発の足場CADシステムで業務を行っていますが、これまでに2回、3次元での運用にチャレンジしてうまく活用できなかった苦い経験を持っています。
 
 

BIMへの取り組みのきっかけ

そんな当社が再び3次元に取り組むことになったのは、社長の「今後のCADシステムはBIMを視野に入れて考えてほしい」という一言からです。そのときは、「また3次元をやるのか…」というネガティブな思いが浮かんできましたが、あらためてBIMについて調べてみて、すぐに「今からやっておくべきで今回は失敗しない」という思いに変わりました。
 
●なぜ、「今からやっておくべき」と考えたのか。
 
それはBIMの「企画」→「設計」→「施工」→「維持管理」のサイクルにあります。
 
当時のBIMはまだ「設計」での活用が中心だったので、それならば次は「施工」になるはず、「施工」となれば足場仮設計画になるはずと思いました。そうなれば必ず当社にもBIMでできないかと声が掛かる。声が掛かった頃に始めても遅いと考えたのです。
 
●なぜ、「今回は失敗しない」と思えたのか。
 
理由は明確で、BIMであれば躯体モデルをお客さまが作ってくれているからです。
 
これまでの3次元取り組みの失敗の原因は、担当者自身がお客さまから頂く2次元図面を見ながら、躯体モデルをワイヤーフレームで作っていたことにあります。そんなことをしている間に、最初から2次元で作図していればとっくに図面は完成しています。
 
それがBIMであればお客さまが躯体モデルを作ってくれており、ワイヤーフレームとは違って視覚的に分かりやすい完成されたBIMモデルに、自分のスキルを思う存分生かして足場仮設計画に専念できるのですから、当社にとってこんなにラッキーなことはありません。
 
 

施工BIMへの本格的取り組み

社長の一声でBIMに取り組むことになり、やるぞ!と意気込んではいたものの、そもそもお客さまがBIMでの足場仮設計画を必要と考えているのだろうかという疑問がありました。既に幾つかの仮設材パーツは試験的に製作しておりましたが、BIMは設計での活用が中心だったので、BIMをやったことのないわれわれには施工でBIMを活用するイメージが浮かばなかったからです。
 
そこで営業の力を借りて、行く先々で「BIMでの足場仮設計画の重要性」についてアンケートを行いました。2013年10月~12月頃のことで、その結果が図-1です。
 
BIMを推進している(BIMのことを知っている)本社や支店の方々からは、ある程度期待されているものの、実際に施工する現場となると「あってもなくても困らない」的な回答が多い結果でした。出鼻をくじかれテンションが下がったことは否めませんが、それでも当時はBIMについて尋ねると「何のビーム?どこの開口部?」と、冗談のようなリアクションが多かったときですから、ここは現場さんの話は置いておき、本社支店さんのことを信じてBIMを推し進めることにしました。
 
そんな折、2014年1月に日本建設業連合会(以下、日建連)から『施工BIMのスタイル』が発刊されました。「施工BIM」というキーワードを目にしたのは、そのときが初めてだったと思います。そしてどこの新聞かは失念しましたが、鹿島建設様の新聞記事(2015年5月頃)で、「建築全現場にBIM」「ライセンス貸出で協力会社と連携」「足場などをモデル化」などの記事を読んだときに、「いよいよ来たんじゃない?」と思ったことを覚えています。
 
こうした経緯で当社は本格的にBIMでの足場仮設計画に取り組み始めます。
 

図-1 「BIMでの足場仮設計画の重要性」
アンケート結果




 

具体的な取り組み

(1)仮設材パーツの製作
仮設材パーツの製作はBIMの取り組み当初から行っており、次の2点を方針として取り組んでいます。
 
①お客さまがARCHICADとRevitのどちらを使用していても対応できるように両方で製作する。
②当社カタログの基本部材は全てモデル化する。
 
製作当初はARCHICADのGDLを勉強しつつ、まずは簡単に作成できるRevitで研究がてら製作して、試行錯誤しながら4~5回作り直して今のLODと属性になっています。
 
現時点では目標の1/3程度の部材しかできていませんが、LODや属性に関しては、「こうあるべき」と、はっきりした結論はまだ出ていません。実案件を通してお客さまからのご意見を伺い、これからも妥協することなく、修正を続けて進化させていきます。
 
また、ありがたいことにパーツ提供のご依頼をよく頂きますが、当社はクサビ緊結式足場「NDシステム」(図-2)と「S造関連部材」(図-3)についてはメーカーとしての立場でもありますので、この2点については、日建連の『施工BIMのスタイル2014』に掲載されていた「BIMモデルの取扱いに関する覚書」をベースとした独自の「覚書」を作成し、内容合意の下ご提供しています。
 

図-2 NDシステム

図-3 S造関連部材




(2)BIM担当者の育成
将来的には海外にBIMオペレーターを配置して、件数をこなせるようにしていく必要があります。しかし今は、国内で将来のBIMマネージャーを育成していく段階と考えており、現時点で全国に10名ほどいます。
 
BIMマネージャーとなるためには、まずはオペレーターとして実案件を複数経験し、直接現場とBIM調整会議を行い、2次元図面とは違うBIMならではの打合せ内容や、お客さまからどのような要望があるのかを知る必要があります。仮設材配置だけのBIMオペレーターであればすぐに育成できますが、当社はただ配置して終わりにしたくありません。重要なのはBIM担当者全員がBIMに取り組む目的や、この物件はどう進めるべきか、どうしたら問題解決できるのかをご提案できることであり、当社の全国に70人近くいる技術スタッフの中から、ある意味選ばれたこの10名は、今後の当社の「施工BIM」での立ち位置をより高めていかなければいけない人材です。
 
 
(3)仮設計画モデリングの請け負い
当社の仮設材を現場で採用していただくことが大前提ですが、2018年からは本格的にBIMでの足場仮設計画モデリングを請け負っています(図-4)。
 
2016年、2017年もご依頼がなかったわけではありませんが、試行的に年2~3件ほどしかなく、少し不安になるくらいでしたが、2018年に入ってからは急激にご依頼が増え、常に数件は重複して作業している状況です。施工BIM元年は2015年といわれていますが、当社のBIM元年は2018年だと考えています。
 
作業内容としては先ほどご紹介したように、ただ仮設材を配置して終わりにしたくありませんので、事前打合せ(キックオフ)→基本配置→社内BIM検討会(写真-1)→現場でのBIM調整会議1回目→修正→BIM調整会議2回目 と、このような工程を基本として作業しています。「工区ごとの数量を拾いたい」(図-5)ですとか、「危険箇所を可視化して対処したい」(図-6)というご要望もよくありますので、必要に応じて対応しております。
 

図-4 足場仮設計画モデリング

写真-1 社内BIM検討会


図-5 工区ごとの数量拾い


図-6 危険箇所の可視化



 

現状の大きな課題

実は課題を挙げればきりがないので、ここでは現状悩んでいる「大きな課題」を2点だけ挙げておきます。
 
(1)図面化の難しさ
BIMによって2次元作図や修正の業務負荷は軽減されているといわれていますが、足場仮設計画図に関していえば決してそうではありません。BIMによって見えてほしくない所が見えてしまうためです。
 
全てができないわけではありませんが、まだまだ研究が必要ですので、これからも試行錯誤していきます。
 
 
(2)現場にBIM担当者がいない
現場にBIMアプリに精通している人が、まだまだ少ないのが現状です。そういう方が居るのと居ないのとでは、工程確認や数量抽出の生産性に大きな違いが出てきます。
 
ただこれは施工BIMが広がっていくことによって時が解決するような気もしますが、当社でも可能な限りご協力してまいります。

 

最後に

BIMは施工から始めても効果は抜群です。2次元図面だけのときとは大きく打合せ内容が変わり、初期の打合せにかかる時間は増えたかもしれませんが、施工BIMで先行して検討することで、工事中に発生しそうな不具合が確認でき、事前に対処したり、対処できなくても解決策を考えておくことができるようになったことは素晴らしいと思います。一度BIMに携わった現場関係者さんは、次も必ずBIMでやりたいと仰います。
 
これからも各社のBIM推進部門、管理部門の方々とも一緒になって、施工BIMを推進していきます。
 
持ち分のページ数では説明したいことがあまり説明できませんでした。もし足場仮設計画のモデリングをご検討中でしたらご連絡ください。ぜひ一度、意見交換させていただきたいと思います。
 
 
 

日建リース工業株式会社 技術安全本部 技術システム部 部長 小川 浩

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集2「進化するBIM」



 



ICT建築土工への取り組み-掘削BIMモデルとICT建機のデータ連携-

2019年6月28日

 

はじめに

国土交通省は平成30(2018)年4月に「営繕工事において施工合理化技術の更なる活用推進~i-Constructionの建築分野への拡大を踏まえて活用方針を策定~」を報道発表した※1。報道発表では「施工BIM(試行)」、「情報共有システム(活用)」、「ICT建築土工(試行)」、「電子小黒板(試行)」の4つの施工合理化技術が示されている。
 
今回、建築工事において掘削BIMモデルとICT建機が連携した「ICT建築土工」に関する取り組みを試行する機会があった。そこで本稿ではBIMモデルとICT建機とのデータ連携の話題を中心として、取り組みの概要を報告する。
 
 

ICT建築土工の概要

「ICT建築土工」は「ICT土工の省力化施工技術を建築工事における根切り・土工事に活用するもの」※2と定義され、掘削工事などでICT建機を活用し、土工事の合理化を推進しようとするものである。
 
ICT建機にはMG(マシンガイダンス)とMC(マシンコントロール)の2種類がある。MGはオペレーターが設計面の横断形状を常にキャビン内のモニターで確認しながら作業を進めるため、設計面付近の仕上げ精度はオペレーターの技量に左右される。一方MCでは設計面に接地した段階で作業機自体に制御(コントロール)がかかり、設計面を侵さず計画したとおりの掘削工事ができる。
 
ICT建機(MG/MC)のオペレーターは、写真-1に示すようにモニター画面に表示された掘削平面や掘削レベルを参照し掘削を進めるため、従来のように掘削範囲や掘削レベルを都度確認する作業員を配置する必要がない。いずれの場合でもICT建機がGNSS(衛星測位システム)により捕捉した座標を読み取り、正確に自分の位置を把握することで制御している。そのためICT建機にはGNSSアンテナ、高精度センサ付油圧シリンダーやIMU(慣性センサー)を搭載している。
 

写真-1 オペレーター目線




 
MGやMCを機能させるためには掘削形状(位置・深さ)に関するデータをICT建機にインプットさせる必要がある。専用のソフトウェアで制御されているため、連携するデータ形式により対応できる内容が異なる。
 
2次元の掘削図データしか用意できない場合は、MCを活用しても水平方向の位置は無制御となり、垂直方向のみあらかじめ設定した高さ(GL/FL基準)で作業機は制御される。MGではモニター画面に表示のみとなる。
 
3次元データ(掘削範囲と掘削レベルを数値化)とICT建機(MG/MC)を連携させると、オープンカットの整形など3次元で座標が変化する面にも制御がかかり、より均一的な掘削の出来形になる。
 
 

BIMモデルとICT建機の連携

建築工事においてICT建機を3次元座標で制御するためには、従来と同様に総合建設会社(ゼネコン)が基礎躯体図をベースとして2次元の掘削図の作成と同時に掘削BIMモデルを準備してICT建機側のソフトウェアとデータ連携する必要がある。
 
今回の試行では当社と機器等の提供者間で、連携に必要となるBIMモデル作成の標準化を写真-2に示すように行った。ICT建機(MG/MC)が必要とするデータはTINデータ※3のため、BIMモデルと連携する際は、データ形式の違いに配慮する必要がある。
 

写真-2 連携の手引き




 
以下にその要点を示す。
 
①データはサーフェスにする
②データは土工の仕上面のみにする
③側面は外側に10mmの傾きを持たせる(図-1)
④法の勾配は70度以下にする
⑤一番底の面をつくる
⑥杭頭、構台杭などの掘削に関係ないデータは削除しておく
⑦尺度はメートル基準にする(土木ではmm単位で作成しない)
 
BIMモデルからTINデータへの変換作業は施工面の面積、変化点数によって前後するが、平均的に1週間程度の作業工程を見込む必要がある。
 

図-1 側面は傾きをつくる




 

BIMを活用したICT建築土工

(1)掘削工事概要
敷地条件:GNSS(GPS等)の捕捉が難しい市街地(写真-3)
工事期間:2018年9月~11月
掘削面積:約3,300㎡
最大掘削深さ:GL-8.5m
ICT建機:コマツ製。BIMモデルと連携することでMCを適用
その他:現場打杭+鋼管杭+山留
 

写真-3 現場の状況




 
(2)作業の進め方
当社で図-2に示す掘削BIMモデルをRevitにて作成した。作成期間は約2週間である。BIMモデルはデータ連携だけでなく、職員や作業員との情報共有にも活用するため、杭や構台杭なども入力した。
 

図-2 掘削BIMモデル




 
作成したBIMモデルは、当社でサーフェスのみをDWG形式でコマツカスタマーサポート株式会社に渡し、データ変換した。変換作業は2日ほどで完了した。
 
掘削工事にICT建機を使用するため配慮したことは、構台を架設する作業工程を掘削が完了してからにしたことである。ICT建機がGNSSから現在地を取得する必要があるため、構台が先に架設されると電波が届かなくなり、作業が進まないことによる。また、毎日の作業開始前にはICT建機のバケットの刃先の座標位置を確認した。基準点は従来通りの現場の逃げ杭があればよい。
 
(3)効果と今後の課題
掘削の出来形はバックホー各作業機のシリンダーを自動制御しているため、掘りすぎることがなく図-3に示すBIMモデルと同等の出来形となった(写真-4)。掘削作業後に測位誤差を確認したところ、水平精度で5mm~10mm、垂直精度で10mm~ 15mmとなった。砕石敷き作業は従来と同様に作業員が敷き均しを行い、誤差を調整した。
 

図-3 掘削出来形(BIM)




写真-4 掘削出来形(実際)




 
掘削の作業開始前にBIMモデルの作成などの作業手間が増えているが、掘削工事中は以下の効果が確認できたことから、「ICT建築土工」の適用を今後も進めることができると考えられる。
 
①職員による掘削位置出しや床付面のレベル確認が不要
②バックホーの手元作業員が不要となり、重機との接触事故が防止
③手元作業員が不要となることでバックホーのオペレーターの待ち時間がなくなり、作業の効率が向上
④掘削BIMモデルをタブレット端末で閲覧し、作業員間での出来形イメージを共有することで意思伝達が効率的
 
今後の課題としては近隣で高い建物に遮蔽されGNSSが捕捉できないことで位置情報の精度が確保できないことが挙げられる。どの場所でも適用することができないため、「ICT建築土工」の採用を計画する際は、事前にGNSSの捕捉状況を確認してから採用の可否を考える必要がある。
 
 

おわりに

土木分野におけるICT土工の取り組みに関してはさまざまな報告がなされているが※4、民間工事が中心である建築分野ではこれから適用の検討が加速すると思われる。
 
 
謝辞
今回の取り組みでは、コマツカスタマーサポート株式会社にお世話になりました。また当社関東支店の遠藤聡作業所長には有意義なご助言をいただき、お世話になりました。御礼申し上げます。
 
 


※1 国土交通省HP、「ホーム>報道・広報>報道発表資料」平成30年4月12日
※2 ※1の【参考】p1に掲載
※3 TIN(ティン、triangulated irregular network)は不規則三角形網のことで、三角形の網からなるデータのこと
※4 例えば、以下の事例が報告されている。株式会社大林組土木本部本部長室情報技術推進課、「i-Constructionの先進的な取り組み事例」、建設ITガイド2018、p.66-69、一般財団法人経済調査会、2018.2
 
 
 

前田建設工業株式会社 建築技術部 TPM推進グループ グループ長 曽根 巨充
主任 藤井 周太

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集2「進化するBIM」



 



 


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