建設ITガイド

トップ >> 特集記事 特集記事

書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

ICT利活用推進とキャズム(溝)を乗り越えて

2025年6月16日

はじめに

情報通信技術(ICT)の利活用が進む現代社会において、企業や組織が直面する大きな課題の一つが「キャズムの乗り越え方」です。
キャズムとは、新技術や製品が初期採用者から主流市場へと広がる際に直面する大きな溝を指します。
この溝を越えるためには、単なる技術革新だけでなく、戦略的なマーケティングやユーザーエクスペリエンスの向上が不可欠です。
本コラムでは、ICT利活用の推進とキャズムを乗り越えるための具体的な方法について紹介します。
 
 

LIVE配信「渋谷で5時」

ここで、当社の取り組み事例を紹介します。
まずは「渋谷で5時」です。
 
50歳代の私にはとても懐かしい曲名ですが、タイトルどおり、渋谷に本社のある当社が午後5時からLIVE配信を実施する取り組みです。
当社の会議室の一室を利用してスタジオを作成しました(図-1)。
また、実際の配信は内製で実施しております。
現在までの取り組み内容を紹介します。

図-1 studio写真
図-1 studio写真

 
2022年3月より配信を開始し現在まで26回を実施、視聴者数312人、アーカイブ視聴者数843人に至ります。
番組構成は「渋谷で5時」ですので17時より30分間の構成としております。
 
毎回、テーマを決めて、ベンダー担当者を呼んで、対話形式でさまざまなICTツールを紹介しております。
また、見逃し配信も翌日より実施することにより、ICTツール関連の説明、利活用促進に大きな力となっております。
2年近く実施してきた今、ようやく認知度も向上し、社内全体に浸透しつつあり、他部所の視聴者も増えてきております。
 
ここで興味深い事実があります。
 
「渋谷で5時」をアーカイブ配信することにより、さまざまな問い合わせが増えた事実です。
ツールの内容にもよりますが、間違いなく視聴者数も増えて興味があるツールについては直接説明が聴きたい、導入をしたいとの要望を多くいただいています。
これは、YouTubeなどで、情報を得ることが多い時代にマッチしていていると感じております。
 
さらに、30分動画を切り抜き、3分程度のダイジェスト版を作成する試みにも今後、チャレンジしたいと思います。
 
 

建築DX通信の発刊

続いて毎月発行している、建築DX通信の発行です。
A4で2枚にて作成し、現在24号まで発刊しております(図-2)。
コンセプトは一目で分かる広告、イメージは電車の中づり広告です。
ちょっとこれも、古い例えになっておりますが、若い世代は一目で目に付いて、分かりやすく端的に表現されていることを好んでいると理解しています。
まずは、建築DX通信の発行でICTツールに興味を持ってもらい、HPに誘導する狙いです。

図-2 DX通信
図-2 DX通信

 
この事案では、建築DX通信発行後の当社ICTグループ ホームページの閲覧数が138ビューとなり、前週より65%UPしています。
ここでのDXはデジタルトランスフォーメーションとは少し違った、今、業務で直面している課題会を解決できるICTツールの紹介でまさに、デジタイゼーションを実施していることとなります。
 
このデジタイゼーションをきっかけにデジタライゼーションにつながる他社との差異化を図り、リスクに挑戦し続ける取り組みを実施していきたいと考えております。
 
 

建築ICTスタイルの運用

最後に建築ICTスタイルの運用について説明します。
ICTツールにはさまざまな機能があり、何ができるの?どうすればいいの?の疑問が多くあります。
そこで、電子カタログをイメージした建築ICTスタイルの登場です(図-3)。

図-3 建築ICTスタイル
図-3 建築ICTスタイル

 
デジタルBOOK形式として、できることなどの操作関連説明をしています。
また、印刷するだけで簡単なBOOK型冊子ができるよう作成しました。
本棚形式にツールを配置して、一目で目を引くような表紙と文字表現を実施しております(図-4)。

図-4 建築ICTスタイル本棚
図-4 建築ICTスタイル本棚

 
3つの大きな取り組みを簡単に紹介しましたが、これで溝を超えた感覚はあまりないのが現実、しかしながら、この取り組みは諦めずに継続していくことになります。
なぜ、そう思うのか?溝を超える取り組みはこれを実施すれば利活用が進むなどの答えがないのです。
これらは個社ごとに、ICTリテラシーや風土も違い、求められているツールも違ってくるでしょう。
 
溝を乗り越えるには、現場へ足を運んで、一人一人にツールを個別に説明することが、反応も分かり手応えを感じ取ることができます。
 
その場で、操作で詰まったことを解消することにより、さらなる利活用が進むこととなるのです。
 
 

今後の取り組み

ドローンの活用

ドローンは、建設現場の監視や測量において大きな効果を発揮しています。
高所や危険な場所の点検を安全かつ迅速に行うことができるため、作業員の安全確保と作業効率の向上に寄与します。
また、ドローンによる空撮データを活用することで、現場の進捗状況をリアルタイムで把握し、適切な対応を行うことが可能となるので、採用を推進したいと考えています。
 

AI(人工知能)の活用

AI技術は、建設業界においても多岐にわたる応用が進んでいます。
例えば、AIを活用した画像認識技術により、現場の安全管理が強化されます。
作業員のヘルメットや安全帯の着用状況を自動で検知し、未着用の場合にはアラートを発するシステムが導入されています。
また、AIを用いたデータ分析により、施工計画の最適化やリスク予測が可能となり、AI現場監督を創出していきたいと思います。
 

VR(仮想現実)・AR(拡張現実)の導入

VRやAR技術は、建設業界においても新たな可能性を広げています。
例えば、VRを活用した仮想現実空間での設計レビューにより、設計段階での問題点を事前に発見し、修正することができます。
また、ARを活用することで、現場での施工指示や設計図の確認が容易になり、作業効率の向上が図られます。
また、デジタルアーカイブ(作業マニュアル)を整備したいと考えています。
 

さいごに

さまざまな業界でICTの急速な普及と進化および、AI関連、ロボット技術の革新により異業種からの参入もあると感じています。
しかしながら、各ツールの利活用推進や使用者の腹落ち感がなくては、キャズムは超えられません。
 
さらに、企業の組織の熟成によりトップダウンでの発信なども重要な施策ではあるが、私たちが実施しているのは、“チームワーク”で、小さなグループでの活動であります。
溝を越える施策は多様であるが、一番重要なことは“習慣化”にあると感じています。
 
私事ですが、早くて・安価・おいしいが好きなのです。
ICTツールも誰でも簡単に・直観的に・便利になる、これが腹落ちして習慣化できることだと感じています。
さらに、ICTツールで、働く喜び・ワクワク感・スマートで効率的・外国人と意思共有・遠隔リモート業務など多岐にわたり魅力が沸いてきます。
 
実現するには、協力会社(ベンダー)の存在が大きく寄与しています。
 
LIVE配信や建築DX通信・建築ICTスタイルなどの取り組みは、協力会社の協働なくして実現しない、協働して建設業の明るい未来を築いていきたいと考えています。
 
 
 

東急建設株式会社 建築事業本部 事業統括部 建築企画部ICTグループ
小松 準二

 
 
【出典】


建設ITガイド2025
建設ITガイド2025



脱炭素化に向けた積算データの活用について-BIM対応建築積算システム「ΗΕΛΙΟΣ」の新たな挑戦-

はじめに

株式会社日積サーベイでは、BIM対応建築積算システム「ΗΕΛΙΟΣ(ヘリオス)」を開発・提供しており、2024年12月には、最新版「ΗΕΛΙΟΣ 2025」をリリースした。
この「ΗΕΛΙΟΣ 2025」では、「高速化・省力化・新機能」を3本柱として全25項目の機能追加・機能改良を実装している。
主に「高速化」では、「PDFデータ取り込みの高速化」、「起動時の高速化」、「Excel出力時の高速化」の3つを改良している。
次に「省力化」では、「自動計上項目の追加」をはじめ、操作性の向上を目的とした「初期値設定機能」、「ショートカットキーの追加」、「範囲配置機能の追加」を実装している。
最後に「新機能」として、ペーパーレス化に向けた取り組みの一つとして「PenPlus」との連携機能(オプション機能)、今回の主題となる「One Click LCA」との連携機能を実装している。
ここで「PenPlus」とは、株式会社プラスソフトが開発・販売しているソフトウエアである。
今回の連携は、このソフトウエア上で、PDFデータの計測を行い、計測したデータをΗΕΛΙΟΣへ取り込む機能になる。
「PenPlus」の主な特長として、動きが軽く、操作性に優れている点、複数ページ含まれているPDFファイルに対して計測作業が可能である点である。
次に、「One Click LCA」とは、住友林業株式会社が2021年にフィンランドのOne Click LCA社と日本市場における単独販売代理店契約を締結した、建物が一生涯に排出するCO2などを見える化するソフトウエアである。
今回、住友林業株式会社が提供する「One Click LCA日本版」との連携を実現している。
 
 

「One Click LCA」との連携に至った背景

今回の連携に至った主な背景として、CO2排出量の算定において、内訳書を基に資材数量を把握していることから積算業務との親和性が高い点、CO2排出量の算定を今後、積算技術者が担うことが想定される点である。
また、国土交通省が2022年12月に「ゼロカーボンビル推進会議」を設置、2023年5月の報告書にて、「2030年エンボディドカーボン算定義務化」について言及したこともあり、建設時CO2排出量の算定に向けた取り組みも今後増えてくることが想定される。
 
 

エンボディドカーボン算定とは?

現在、世界のCO2の約37%が建設セクターから排出されている。
建設セクターの内訳として、約70%が居住時・使用時に発生する(オペレーショナルカーボン)、約30%が一連の建設プロセスで発生する(エンボディドカーボン)になる(図-1)。
 
オペレーショナルカーボンについては、ZEHやZEBにより削減が進んでいるが、エンボディドカーボンの削減については今後重視される傾向にある。
そのため、エンボディドカーボンの算定が必要になる(図-2)。

図-1 出典:住友林業株式会社提供資料
図-1
出典:住友林業株式会社提供資料
図-2 出典:住友林業株式会社提供資料
図-2
出典:住友林業株式会社提供資料

 
 

「One Click LCA」の特長

「One Click LCA」は世界170カ国以上で導入され、11カ国語に対応しているソフトウエアである。
主な特長として、「CO2排出量の精緻な算定を実現」、「国際認証との高い適合性」、「効率的なデータ算定が可能」の3点である。
「CO2排出量の精緻な算定を実現」では、ISO準拠の汎用データ、環境認証ラベルEPD、プライベートデータの利用が可能であり、輸送・施工など実データに基づき算定し、さまざまな企業努力を結果に反映することが可能である。
「国際認証との高い適合性」では、国際規格ISOや70以上の世界のグリーンビルディング認証に適合している。
「効率的なデータ算定が可能」では、資材データはBIMをはじめ、Excelから取り込むことが可能であり、ライフステージごとのCO2を自動計算で効率よく算定できる。
 
 

「One Click LCA連携」の全体図

「One Click LCA連携」の流れとしては、まず、住友林業株式会社が提供している原単位コード一覧表をΗΕΛΙΟΣへ取り込む。
 
次に、従来どおりΗΕΛΙΟΣで数量算出を行い、ΗΕΛΙΟΣの内訳書内で原単位コードの仕分け作業、単位換算作業を行う。
最後に「One Click LCA取込用フォーマット」に出力を行い、「One Click LCA」に取り込むことでCO2を見える化することが可能になる(図-3)。

図-3
図-3

 
 

「One Click LCA連携」機能の特長

今回の機能の特長として、「原単位コードの仕分け作業の省力化」、「単位換算作業の省力化」、「出力除外設定機能」の3点になる。
「原単位コードの仕分け作業の省力化」では、原単位コードを検索する機能をはじめ(図-4)、科目に応じた可能性のある原単位コードを初期表示する機能を実装している。

図-4
図-4

また、原単位コードとして「コンクリート」を選択する場合において、摘要表現からコンクリート強度を取得し、可能性の高い原単位コードを初期表示する機能も併せて実装している(図-5)。

図-5
図-5

次に「単位換算作業の省力化」では、明細上の単位「ton」、原単位コードの単位「kg 」の場合に換算値を自動入力する機能、ΗΕΛΙΟΣで数量算出を行っている場合において、建具本体のW寸法、H寸法を換算値として自動入力する機能を実装している(図-6)。

図-6
図-6

最後に「出力除外設定機能」では、「One Click LCA取込用フォーマット」へ出力したくない項目(CO2算定除外項目)について、科目単位、明細項目単位で設定できる機能も実装している。
 
 

CO2算定における今後の展開

「One Click LCA連携」においては、「原単位コードの仕分け作業」、「単位換算作業」の省力化につながる機能開発を進める予定である。
「原単位コードの自動入力機能」を最終目標として、今後も継続して取り組みたいと考えている。
また、別ツール製品との連携も状況に応じて前向きに検討していきたい。
「One Click LCA」でのCO2算定業務の際には、ぜひこの「One Click LCA連携」機能をご利用いただきたい。
 
 
会社概要
会社名:株式会社日積サーベイ
所在地:大阪市中央区大手前1-4-12大阪天満橋ビル8F
創業:1964年(昭和39年)10月
URL:https://www.nisseki-survey.co.jp/
資本金:2,000万円
従業員数:47名(2024年4月現在)
主な事業内容:建築積算、コスト算出、コンピューターシステムの開発
 
 
 

株式会社日積サーベイ システム開発部
田川 彰

 
 
【出典】


建設ITガイド2025
建設ITガイド2025



i-Construction 2.0をはじめとしたインフラ分野のDX展開の取り組み

2025年6月9日

i-Construction 2.0、インフラ分野のDXの経緯

国土交通省では、2016年4月にi-Construction委員会(委員長:小宮山宏 株式会社三菱総合研究所理事長)から「i-Construction ~建設現場の生産性革命~」を提言いただき、建設現場の生産性向上の取り組みとして、ICT建設機械や無人航空機(UAV)等を活用したICT施工、設計・施工におけるデジタル技術の積極的な活用など、i-Constructionを進めてきました。
 
2020年からは、「国土交通省インフラ分野のDX推進本部」(本部長:国土交通省技監)を設置し、i-Constructionの目的である建設現場の生産性向上に加え、インフラ関連の情報提供やサービスを含めて、デジタル技術を活用し働き方を変革するインフラ分野のDXを推進、業務、組織、プロセス、文化・風土や働き方の変革を目的として取り組みを進めてきました。
2022年3月には国土交通省の取り組みを「インフラ分野のDXアクションプラン」として取りまとめて公表し、2023年8月に第2版(以下、インフラDXアクションプラン2)を公表しました。
 
インフラDXアクションプラン2においては、目指す姿として、建設現場を含めた20~30年後の将来の社会イメージを示すとともに、「インフラの作り方の変革」、「インフラの使い方の変革」、「データの活かし方の変革」という3つの観点で分野網羅的、組織横断的に取り組みを進めることとしています(図-1)。

図-1 建設現場の将来の社会イメージ
図-1 建設現場の将来の社会イメージ

 
「インフラの作り方の変革」ともいえるi-Constructionに着手して以降、社会資本整備を巡る状況は大きく変化してきています。
生産年齢人口の減少や高齢化により、特に地方都市において暮らしを支える各種サービス提供機能の低下・損失が懸念される中、気候変動の影響による自然災害の激甚化・頻発化、高度成長期以降に集中的に建設されたインフラの老朽化が進行しています。
 
一方で、AI、5G、クラウド等に至る革新的なデジタル技術の開発・社会実装も進んでおり、国土交通省においても、i-Constructionの取り組み以降、3次元データやICT建設機械などのデジタル技術の活用が一般化しつつあります。
2023年度からは、直轄土木業務・工事において、建設事業で取り扱う情報をデジタル化し、建設生産プロセス全体の効率化を図るBIM/CIM(Building/ Construction Information Modeling、 Management )に取り組むことを原則化するなど、データやデジタル技術を活用し、業務のあり方を変革していく体制は整ってきています。
 
このため、i-Constructionの取り組みを加速し抜本的な省人化対策を進める時と捉え、「施工のオートメーション化」、「データ連携のオートメーション化」、「施工管理のオートメーション化」を3本の柱とし、少ない人数で、安全に、快適な環境で働く生産性の高い建設現場の実現を目指し建設現場のオートメーション化に、2024年4月より、i-Construction 2.0として取り組むこととしました。
 
i-Construction 2.0の取り組みは、インフラDXアクションプラン2で定めた建設現場の将来の社会イメージに向けた取り組みともいえます。
 
本稿ではインフラ分野のDXにおける取り組みの方向性を説明した後に、「インフラの使い方の変革」として、i-Construction 2.0の取り組みや、「データの活かし方の変革」として、国土交通データプラットフォームの取り組みについて説明します。
 
 

インフラ分野のDXの方向性

インフラ分野のDXの方向性として、インフラに関わるあらゆる分野で網羅的に変革する、「分野網羅的な取り組み」という視点を掲げています。
 
分野網羅的な取り組みを進めるに当たり、①インフラの作り方、②インフラの使い方、③データの活かし方という3分野に分類し、DX(変革)を進めることとしています(図-2)。

図-2 インフラ分野のDXにおける3分野
図-2 インフラ分野のDXにおける3分野

 
①「インフラの作り方の変革」は、インフラの建設生産プロセスを変革する取り組みが対象となります。
データとデジタル技術を活用し、建設生産、管理プロセスをより良いものにしていく取り組みです。
i-Construction 2.0の取り組みも、この中に含まれています。
 
②「インフラの使い方の変革」では、インフラの「運用」と「保全」の観点が対象となります。
「運用」では、インフラ利用申請のオンライン化や書類の簡素化に加え、デジタル技術を駆使して利用者目線でインフラの潜在的な機能を最大限に引き出すことなどが挙げられます。
「保全」では、最先端の技術等を駆使した、効率的・効果的な維持管理などが挙げられます。
これらの取り組みを通じて、賢く(Smart)かつ安全(Safe)で、持続可能(Sustainable)なインフラ管理の実現(3S)を目指します。
 
③「データの活かし方の変革」は、上記2つはフィジカル空間を対象としている一方で、「データの活かし方の変革」はサイバー空間を対象とした変革です。
インフラまわりのデータを活かすことにより、仕事の進め方、民間投資、技術開発が促進される社会の実現を目指します。
具体的には、 IoTデバイス等の機器の普及により、フィジカル空間で取得したデータを大量にサイバー空間に移すことが可能となりました。
これらのデータをサイバー空間において予測や検証を行い、フィジカル空間にフィードバックすることで新たな価値を創出するという考え方です。
取り組みの一つとして、国土交通省では、国土交通データプラットフォームをハブに国土に関するデータの収集・蓄積・連携を進め、そのユースケースの創出を進めています。
 
 

i -Construction 2.0が目指す目標と取り組み

Construction 2.0では、デジタル技術を最大限活用し、建設現場のあらゆる生産プロセスのオートメーション化に取り組み、今よりも少ない人数で、安全に、できる限り屋内など快適な環境で働く生産性の高い建設現場を実現することを目指しています。
 
具体的には2040年度までに、建設現場の省人化を少なくとも3割、すなわち生産性を1.5倍以上に向上することを目指します。
省人化3割とは、2040年度には生産年齢人口が約2割減少するという予測がある中で、災害の激甚化・頻発化、インフラ老朽化への対応増などを考慮し、設定したものです(図-3、4)。

図-3 i-Construction 2.0 建設現場のオートメーション化
図-3 i-Construction 2.0 建設現場のオートメーション化
図-4 i-Construction 2.0 目標設定の考え方
図-4 i-Construction 2.0 目標設定の考え方

 
抜本的な省人化対策に取り組むためには、一人で複数台の機械を操作することや、設計・施工の自動化、海上工事における作業船の自動施工など、これまで人が手作業で実施している内容をAIやシステムを活用して自動化し、人はマネジメント業務に特化していくよう変革していく必要があります。
併せて、抜本的な変革が実現するまでの対応として、近年社会全体で進展しているDXの取り組みや、BIM/CIM原則化によるデジタルデータの活用、新型コロナウイルスの感染拡大を契機として急速に進んだリモート技術など、業務の効率化・省人化につながる取り組みを加速していく必要があります。
さらに、省人化対策の推進に当たっては、気候変動に伴い激甚化・頻発化する災害への対応や積雪寒冷環境下のような厳しい現場条件、地域特性も考慮する必要があります。
 
このため、国土交通省ではこれまで進めてきたi-Constructionの取り組みを深化し、さらなる抜本的な建設現場の省人化対策を「i-Construction 2.0」として、「施工のオートメーション化」、「データ連携のオートメーション化」、「施工管理のオートメーション化」に取り組むことで、建設現場のオートメーション化の実現を目指していくこととしています。
 
これらの省人化・生産性向上を通して、建設産業に携わる方々の賃金水準の大幅な向上も期待しています。
 
なお、i-Construction 2.0やインフラ分野のDXを進めていくためには、多様な人材に建設産業に関心を持ってもらうことが重要です。
横軸にインフラまわりの関係者、縦軸に整備や管理の高度化、さらにはインフラ利活用という観点を加えて、次のようなイメージで関係を整理しています(図-5)。

図-5 i-Construction 2.0とインフラ分野のDX
図-5 i-Construction 2.0とインフラ分野のDX

 
 

i-Construction 2.0-3本の柱-

(1) 施工のオートメーション化

現在、建設現場では経験豊富な技術者の指揮の下、施工計画を作成し、工事工程を定めた上で、指示を受けたオペレータが建設機械に搭乗し操作を行っています。
今後、一人当たりの生産能力を向上するため、各種センサーにより現場の情報を取得し、AIなどを活用して自動的に作成された施工計画に基づき、一人のオペレーターが複数の建設機械の動作を管理する「施工のオートメーション化」を推進します。
 
「施工のオートメーション化」に当たっては、自動施工の標準的な安全ルールなどの環境整備や異なるメーカー間の建設機械を制御可能な共通制御信号の策定、人の立ち入らない現場において安全かつ効率的な作業を可能にする遠隔建設機械の普及促進等を実施します。
 
また、さまざまなシステムが活用されている建設現場において、異なる建設機械メーカーであってもリアルタイムの施工データを円滑に取得・共有することで、建設現場のデジタル化・見える化を進め、建設機械の最適配置を瞬時に判断し、効率的な施工を実現します。
さらに、海上工事における作業船の操作の自動化を実現します。
 
「施工のオートメーション化」により、建設現場の省人化に加え、生産年齢人口減少下においても必要な施工能力を確保していきます。
 

(2) データ連携のオートメーション化

(デジタル化・ペーパーレス化)
調査・測量、設計、施工、維持管理といった建設生産プロセス全体をデジタル化、3次元化し、必要な情報を必要な時に加工できる形式で容易に取得できる環境を構築するBIM/CIMなどにより「データ連携のオートメーション化」を推進します。
これにより同じデータを繰り返し手入力することをなくし、不要な調査や問い合わせ、復元作業を削減するとともに、資料を探す手間や待ち時間の削減を進めます。

建設生産プロセスにおいて作成・取得するデータは多量にある一方、現時点ではデータを十分に活用できていないことから、各段階で必要な情報を整理した上で、関係者間で容易に共有できるよう、情報共有基盤を構築し、円滑なデータ連携を進めます。
 
データの活用に当たっては、設計データを施工データとして直接活用することや、デジタルツインの構築による施工計画の効率化など、現場作業に関わる部分の効率化に加え、BIツール等の活用により、紙での書類は作成せず、データを可視化し、分析や判断ができるよう真の意味でのペーパーレス化(ASP(情報共有システム)の拡充といった現場データの活用による書類削減)などバックオフィスの効率化の両面から進めていきます。
 

(3) 施工管理のオートメーション化(リモート化・オフサイト化)

建設現場全体のオートメーション化を進めるためには、施工の自動化やBIM/CIM等によるデジタルデータの活用に加え、部材製作、運搬、設置や監督・検査等あらゆる場面で有用な新技術も積極的に活用しながら「施工管理のオートメーション化」を推進します。
 
これまで立会い、段階確認等の確認行為において活用していた遠隔臨場を検査にも適用するとともに、コンクリート構造物の配筋の出来形確認においては、デジタルカメラで撮影した画像解析による計測技術も適用します。
また、小型構造物や中型構造物を中心に活用していたプレキャスト製品について、大型構造物についてもVFM(Value for Money)の評価手法の確立等を進めながら導入を推進することにより、リモート化・オフサイト化を進めます。
 
 

おわりに

人口減少社会やインフラの老朽化が進む中、社会水準を維持・向上させていくためには、より多くの付加価値を生み出していくことが必要です。
この鍵となるのがデジタル技術(D:Digital)と、日常生活や経済活動の基盤となるインフラを守り、改善し、より良くしていこう、という変革(X:Transformation)であり、この変革には、業務のあり方や働き方も含まれています。
 
将来に当たって建設業は欠くことのできない業界であり、インフラ分野のDXをとおして多様な人材にとって魅力あるものにしてまいりたいと考えています。
 
 
【参考】
本稿の詳細については、国土交通省ホームページなどを参照いただければ幸いです。
1)国土交通省報道発表
「i-Construction2.0」を策定しました~建設現場のオートメーション化による生産性向上
(省人化)~
https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001085.html
2)国土交通省ホームページインフラ分野のDX
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000073.html
 
 
 

国土交通省 大臣官房 参事官(イノベーション)グループ 課長補佐
大谷 彬

 
 
【出典】


建設ITガイド2025
建設ITガイド2025



BIMオブジェクト標準とBIMライブラリ技術研究組合の活動

2025年5月23日

設立目的

BIMライブラリ技術研究組合(BLCJ)は、BIMライブラリコンソーシアム(BLC)(2015年10月設立)を母体として、技術研究組合法に基づく組織として、2019年8月に国土交通大臣の認定を受けて設立された。
技術研究組合は、産業活動において利用される技術に関して、組合員が自らのために共同研究を行う相互扶助組織(非営利共益法人)で、各組合員は、研究者、研究費、設備などを出し合って共同研究を行い、その成果を共同で管理し、組合員相互で活用することとされている。
研究開発終了後には会社化などにより研究成果の円滑な事業化が可能になっており、目的のために活動する時限的組織が本質である。
 
 

試験研究の目的

設立時の目的として、「BIMによる円滑な情報連携の実現のため、繰り返し利用される建築物の部材・部品の形状や性能などのデータ(BIMオブジェクト)を標準化し、その提供や蓄積を行うBIMライブラリを構築・運用するとともに、現在BIM導入を検討・開発中でその効果が大きい分野との連携を図ることにより、効率的な建築物のプロジェクト管理などを実用化することを試験研究の目的とする。
(以下省略)」とし、定款第1条では、主たる事業として以下を掲げて、効率的な建築プロジェクト管理の実用化に資することとしている。
 
①建築物の部材・部品の形状や性能などのデータ(BIMオブジェクト)の標準化
②BIMライブラリの構築・運用
③BIM導入の効果が大きい領域との連携(建築確認・標準仕様書とBIMとの連携を想定)
 
また2023年度から「BIMを用いた建築確認の実施に向けた検討」(実務のツール開発)を関連事業として追加した。
 
 

研究体制

2024年11月現在でBLCJに参加する組合員は、77企業、18団体、5個人であり、図-1に研究体制を示す。

図-1 研究体制
図-1 研究体制

 
 

BLCJ BIMオブジェクト標準Ver.2.0

BLCJは、設立において目標の一つとしてきた「BLCJ BIMオブジェクト標準Ver.2.0(略称BLCJ標準Ver.2.0)」を当組合のホームページ(https://blcj.or.jp)で2023年12月に公開した。
この成果は、多くの関係者の長年のご尽力と建築研究所からの官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)予算の支援によるものである。
BLCJ標準Ver.2.0は、BIMの活用が拡大する中で課題となっている「円滑な情報伝達の実現」を目的として、BIMの属性情報の標準化を図ったものである。
これは建築BIM推進会議の工程表でも目標の一つとして示されている。
 
この標準の主な特長は、
①英国NBSオブジェクト標準の構造を保持しつつ、日本のきめ細やかなものづくりの技術基準に対応していること。
②実務者の視点から、設計・施工・製造段階の主要な情報を属性情報に取り込み、標準化することで、2025年度に予定されるBIMを用いた建築確認に関連する活動を支援すること。
③分類コードは国内用のCI-NETコードとグローバルな対応を視野にUniclass、OmniClassとの対応していること。
④対象品目を拡大し、太陽光発電装置や建築確認に必要なダンパーなどの設備機器などを加えていること。
 
標準の整備において、用語・定義などを共通化することで、設計・施工・製造などの建築生産プロセスでの情報伝達を、より正確に、よりスピーディーに、またミスの削減を図ることによって、生産性の向上を図ることと、BIM関連デジタル技術の開発促進も大いに期待できる。
 
現在建築BIM推進会議のもとに設置された標準化TFで、その他の標準も含めて整理が進行しており、特に構造と設備に関してはBLCJ標準Ver.2.0が全面的に採用される見通しである。
 
標準を整理した範囲を表-1に示す。

表-1 標準を整理した範囲
表-1 標準を整理した範囲

 
 

建築領域の検討

BLCJ標準Ver.2.0の拡充として、窓、シャッター、ドア、トイレについてタイプの追加(例:車いす使用者トイレなど)検討を実施し、属性情報WG(空間オブジェクト)を設置し、空間オブジェクト[ S1 ~ S7]の属性情報の検討を実施している。
「空間オブジェクト」は設計BIMワークフローガイドラインにおける、ボリュームモデル、ゾーニングボリュームモデル、空間要素の総称であり、壁などのオブジェクトに囲まれた空気のかたまりのようなもので、BIMモデルに不可欠な主要部材であるが、実際の建物においては空間として認識され目には見えない。
「シンプルな空間に内蔵されて伝達される情報」は発注者、設計者、施工者、メーカー、維持管理者の立場を超えて共有の資産になる可能性がある。
また設計から維持管理などにおける業務の合理化や外部データ連携の円滑化を目的に属性情報WGにおいて、BLCJ標準に掲載する情報の整理を実施する(図-2、3)。

図-2 建築関係の検討
図-2 建築関係の検討
図-3 空間オブジェクトの検討
図-3 空間オブジェクトの検討

 
構造関係では、BLCJ構造標準<改訂 6版>として、免震装置の属性情報を検討。
制振装置、耐震スリットも検討予定しており、また公共建築工事標準仕様書のデジタル化の検討を進めている(図-4)。

図-4 構造関係の検討
図-4 構造関係の検討

 
 

設備関係の検討

設備関係の標準を図-5に示す。

図-5 設備標準(抜粋)
図-5 設備標準(抜粋)

 
 

BLCJ標 準Ver.2.0に基づくオブジェクト

BLCJ標準Ver.2.0に基づく設備オブジェクトの例を図-6に示す。

図-6 設備オブジェクトの例
図-6 設備オブジェクトの例

 
 

BIMライブラリ

試験用のBIMライブラリの概要を示す。
現在組合員によるさまざまな検証を行っている段階である(図-7、8)。

図-7 BIMライブラリ(1)
図-7 BIMライブラリ(1)
図-8 BIMライブラリ(2)
図-8 BIMライブラリ(2)

 
 

円滑な情報連携

(「BIMを用いた建築確認の実施に向けた検討」)
BIM図面審査の申請に必要な提出データはPDF図面とIFCモデルである。
しかしこれだけでBIMによる整合性の担保をどうすべきかを検討した結果、審査者がネーティブデータを見ないのであれば、審査者がPDFとIFCを見ただけでは、整合性の根拠を確認することができない。
また、「テンプレート」は柔軟性のある作業環境であって、設計者が入力しやすくすることによる「誘導力」はあっても一意に定める「拘束力」はない。
このため、「BIMデータの整合性を設計者が宣言する」方向の、「入出力基準・設計者チェックリスト」の作成となり、パブコメを経て、内容の整理がされている段階である。
 
入出力基準・設計者チェックリスト(抜粋)を図-9、10に示す。
 
パブコメ、その他の技術的な検討を踏まえ、入出力基準・設計者チェックリストの改定版を作成する予定である。

図-9 入出力基準・設計者チェックリスト(抜粋)(1)
図-9 入出力基準・設計者チェックリスト(抜粋)(1)
図-10 入出力基準・設計者チェックリスト(抜粋)(2)
図-10 入出力基準・設計者チェックリスト(抜粋)(2)

 
 
 

BIMライブラリ技術研究組合 専務理事
寺本 英治

 
 
【出典】


建設ITガイド2025
建設ITガイド2025



地方発! 建設DXチャレンジ事例「DXは難しくない!」若手による意識変革で建設DXが次々に実現

生産性の向上に向けてi-Constructionへ

和歌山県有田市にある木下建設株式会社は、1956年の創立で70年近い歴史を刻むが、下請けによる重機土木工事を長らく行ってきており、元請工事の経験は10年ほどと言う。
築き上げた信頼の力で、現在では、約60億の売上高の半分を元請け工事が占めるようになった。
社員数は70名弱を数え、その内で重機土工のオペレーターが半数の35名程度在籍している。
 
同社がICT施工の導入を開始したのは8年前、社長より生産性の向上が経営課題に挙げられてからだ。
8年間の取り組みの成果は、一人当たりの生産性が2倍近くに上がった実績が証明している。
それを可能にした改革を中心となってけん引してきた山田裕明専務取締役本部長に伺った。
 
「生産性向上に向けた施策を始める前は、ICTに全く関心のない会社だったのです。
国土交通省が『i-Construction』を提唱したのが2016年ですので、ほとんど同時期にスタートしました。
自社のみで全てを進めるのは容易ではないので、まずはパートナーシップを結んでくれる会社を探しました。
時の企業動向から、コマツが『i-Construction』を主導していくのでは、という読みでコマツに相談し、今では、コマツの子会社であるEARTHBRAINとの協業にまでつながっています」
 
 

若手社員を対象にしたICT施工の講習会を開始

木下建設では、同じく民間企業とのパートナーシップにより、建設業3Dプリンターの活用や現場のイメージアップ施策も実施していったが、そうした積極的な姿勢が実を結んだのが令和2年度「i-Construction大賞」優秀賞受賞だ。
こうした事績を上げる原動力になったのがICTへの積極的なチャレンジだ。
当初はICTの取り組みは社内でも一部の社員に限られていたが、やがて、コマツ・EARTHBRAINの両社による講習会へと発展していった。
山田専務は、開始時の状況を次のように語る。
 
「当初は、EARTHBRAINの各種ICTソリューションを用いた講習会を社歴上位のベテラン社員を対象に行っていきました。
しかし参加者が不在で講習会自体が開かれないこともあるなど、取り組みの効果がなかなか広がっていかなかったのです。
そこで2023年11月から若手中心の講習会に方針転換し、19歳~27歳の7人の社員を対象に、各現場の実際の課題をテーマにした習得機会を設けました。
1年間で10回開催しましたが、それまで多数を占めていた「難しい」という感想が、若手に替えてから「意外に簡単」という感想に変わったのです。
それぞれが興味をもって臨んでいて、現場で使ってみて分からない点を講習会の場で質問するなどして習熟度を上げています」

座学でソフトウエアの操作を学ぶ
座学でソフトウエアの操作を学ぶ
現場ヤードでドローン実習
現場ヤードでドローン実習

 
 

現場をケーススタディーに。新技術にチャレンジ!

若手中心の講習会の効果は既に現場で成果を上げている。
山間部で遠隔臨場・ICT施工に必要な通信電波が微弱な「有田川河川災害復旧外合併工事」の現場もその一つだ。
ここではStarlink Wi-FiにEARTHBRAINの通信不感地対策Wi-Fiパックを組み合わせて不感地を解消し、遠隔臨場・ICT施工に加え電話連絡やLINE・Skypeなどの通話アプリも使える環境を整備。
さらに、EARTHBRAINの「Smart Construction Edge 」などで現状を点群化しデジタルツインの施工現場を作成、並行して発注者である和歌山県と情報共有の場を設けながら、災害復旧に求められる短時間で効率的な仮設計画をわずか4日間で完了した。
本工事は2023年12月に着工しており、参加した若手社員は、前述の講習会を2度受講しただけで、現場からの要請に学んだ内容を生かしつつ対応し実地でさらに経験を重ねた。
山田専務は「講習会はただ受け身で聞くのではなく、自分の現場の課題を頭に置きながら自分事として主体的に取り組んでもらうようにしています。講習会で学んだ内容を元に、実際に運搬計画を立てる際に『Smart Construction Simulation 』で適正なダンプトラック台数を算出したり、『Smart Construction Fleet 』の位置情報発信デバイスをダンプトラックに後付けで搭載し、運搬上の問題や滞留の解消を解決していきました。それぞれの現場の課題に合わせて異なるICT施工手法を用いています。あたかも現場を講習会のケーススタディーの場のように使いながら十分な対応ができています。若手が操作する時にベテランが経験に基づいた意見を言う場面もあって、相乗効果も出ていますね」と期待以上の成果について説く。
 
講習会で学んだ内容を現場でそのまま試せるため、学ぶ際も自ずと真剣さが増し、
「この課題は、このソリューションを使って解決できる」と、現場さながらに意見を交わしながら講習会自体も熱気を帯びていると言う。

低軌道周回衛星(Starlink)を活用したICT建機による施工
低軌道周回衛星(Starlink)を活用したICT建機による施工
Smart Constructionの各ソリューションを使用し施工計画を効率化
Smart Constructionの各ソリューションを使用し施工計画を効率化

 
 

協業パートナーとともに新たな建設DXに挑む

現場と直結した講習会が人材の質的向上につながり、経営課題である生産性向上に結実するサイクルが確立しつつある木下建設。
次年度の講習内容が重要になるが、山田専務はこう考えている。
 
「次は、中堅社員にICTソリューションの活用を広げる講習会を考えています。
内容的には、ICTソリューションを習得した若手社員を中心において社内横展開の仕組みづくりをしていくつもりです」
現在、講習はコマツとEARTHBRAINによるチームワークで、クラウドを活用しながら実施。
測量など対面によるレクチャーが必要な場合は現地で行う。
 
また、前述しているICT活用について、同社は土工以外での活用にも積極的に挑戦している。
その大きな取り組みの一部が在来工法に比べて格段の工期短縮になる3Dプリンターへの取り組みだ。
 
株式会社Polyuse(東京都港区)は建設用3Dプリンターを開発しているベンチャー企業であり、従来は現場打ちコンクリート工で対応していた構造物を、3Dデータを用いて現地にて自動で積層造形できる技術を持っている。
数年前からパートナーシップを結んでおり、交流を深めてきた(NETIS登録番号:KT-230174-A「建設用3Dプリンティング」)。
 
直近の国土交通省直轄工事においても、通常は現場で作成・設置すると1カ月ほどかかる歩道階段を、3Dプリンターの活用により4日間で仕上げたことで大幅な工期短縮につながった。
現状の公共工事においては採用ハードルが高いため、付帯構造物に限られているが、今後は対象範囲を広げて、さまざまな構造物を現場で活用できるように挑戦するつもりだ。
 
ICT施工の幅をますます広げる木下建設。
一人当たりのさらなる生産性向上とともに、2社による協業パートナーシップが同社のDX戦略をより高みに導くに違いない。

 
 
【出典】


建設ITガイド2025
建設ITガイド2025



 


新製品ニュース

配筋検査ARシステム「BAIASⓇ」 をリニューアル配筋検査ARシステム「BAIASⓇ」 をリニューアル


建設ITガイド 電子書籍 2025版
建設ITガイド2025のご購入はこちら

サイト内検索

掲載メーカー様ログインページ



  掲載をご希望の方へ


  土木・建築資材・工法カタログ請求サイト

  けんせつPlaza

  積算資料ポケット版WEB

  BookけんせつPlaza

  建設マネジメント技術

  一般財団法人 経済調査会