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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

BIM/CIM原則適用化、うまくいく会社とそうでない会社の違いとは?― 土木分野において3次元に対応するために知っておいてもらいたいこと ―

2025年7月3日

はじめに

BIM/CIM原則適用化が令和5年度にスタートして、まもなく2年が経とうとしています。
弊社は2013年度の実証実験段階からBIM/CIMモデル作成の業務委託を行っている会社ですが、令和2年頃に基準が策定されてから現在までの間、さまざまな変化を見てきました。
 
今回、われわれがお客さまとともにさまざまな試行錯誤を行ってきた中で、ともに成長してきた理由を整理して、BIM/CIMがまだ思うように進んでいない会社の方々へのこれからの一助になればと思い、執筆します。
 
 

柔軟なツール選定と運用

2000年初頭の手書きからCAD化への変革の時代(2次元図面だけの時代)では、どのソフトを選定すれば自社にとって費用対効果があるかを考えればよく、一つのCADソフトウエアを選定すればよいという時代がありました。
 
BIM/CIMが始まった数年前は、2次元CADと3次元CADでは、運用の違いがあるという知識が足りず、うまくいく会社とそうでない会社の違いは、かつての2次元CAD選定と同様に一つのCADに絞り込もうとしていたという差があったように思います。
 
私はコンサルタント時代に、2次元CADにおいても、必要に応じて別のソフトでも便利な機能があったら一部でもそれを使い、データ変換によって自分の使っているCADへ取り込む、ということを意識して作業をしてきました。
それはなぜか、自分の作業を早く終わらせたかったからです。
 
ソフトウエアはあくまでツールであり、やりたいことが全てできるものではありません。
やりたいのは業務を正確にかつ迅速に終わらせることなので、今で言う、生産性向上の視点で見たときに、必要に応じてソフトを使い分けるのは、必須だと思っています。
 
分かりやすく言うと、Microsoft製品でも、Word、Excel、PowerPointなどの複数のソフトがあります。
どのソフトでも表を作成できますが、計算式を入れて随時計算する際はExcelで行い、発表資料を作成するためにはPowerPointを使います。
発表資料に挿入する表はExcelで作成してからPowerPointへ貼った方が修正することを考えると便利です。
このように以前は全てExcelなんていうこともやっていたりしたと思いますが、必要に応じてソフトを使い分けた方が生産性は向上するのは皆さんも認識していると思います。
 
3次元モデルも同様にすべきです。
さまざまなソフトウエアを知って、必要に応じてソフトを使い分けることができる会社はBIM/CIMに対してもうまくいきます。
 
必要に応じて使い分ける、ということに関して、もう少し掘り下げます。
 
土木の現場は、土工事がメインの現場、下部工の現場、橋梁上部工の現場、トンネルの現場、道路や河川の現場というように多岐にわたります。
 
現場によって効率化が図れるソフトウエアも異なるのです。
そのため、会社として一つ軸のソフトウエアを決めることも必要ですが、ここでも「必要に応じて選定すること」が大切だということです。
 
 

現実的な視点と段階的な導入

セミナーなどでBIM/CIMの概要や事例を聞くと、BIM/CIMは3次元モデルを作成することにより今まで見えてこなかったものが見えてきたり、効率化や効果があったりすることが頭の中でイメージはつかめます。
 
しかし自分の会社に当てはめた場合、実際はどこから手をつければよいか分からないというのが現状だと思います。
 
うまくいく会社は、スモールスタートによって成功体験を積み重ねていきます。
 
その第一歩としては、具体的に「自分の現場」で、「簡単そうなこと」を整理して実行します。
 
自分の現場だと施工前に現場を見た際に問題となりそうな部分は、頭の中に描かれていますが、自分の頭の中にはあっても、他人は気付いていなかったり、認識のズレがあったりします。
 
そこで現況地形の点群を取得し、まずは自分の現場を3次元化します。
 
設計分野においては、現況図ではなく、現場の点群があることにより、周辺道路の高低差や橋梁の位置関係を事前に正確に確認でき、現地に行かなくてもデータを3次元で閲覧することにより、調査漏れもなく、延長や高さを測って確認することができます。
 
施工段階においては、設計された3次元モデルがあれば、施工手順を事前に重機の稼働や資材の配置をシミュレーションすることで最適化することが可能になります。
 
頭の中で浮かんでいることを言葉だけで関係者に説明するよりも3次元データも同時に利用することで、注意点を記載したり、その情報を残したりすることができるようになります。
何度も測量を行う必要もなくなり、図化の必要もなくなるため協議用の資料を作成するのも非常に楽になります。
 
さらには施工途中の状況を点群化することにより、施工した路面の高さや平坦性の確認、簡単な仮置土の土量計算、変状観測にも役立てることができます。
これらを実現するには、点群上で情報を扱えるソフトウエアが必要になってきます。
 
これから施工する構造物に関しても同様です。
最も簡単なのは、取得した現況の点群データ上に重機を配置して施工計画を立てるだけでも十分です。

BIM/CIM事例集Ver2国総研より抜粋
BIM/CIM事例集Ver2国総研より抜粋

 
これを実現するには、点群データを読み込み、ソフトウエアに登録されている重機を必要な位置に配置するだけで済みます。
構造物を3次元化する場合、スモールスタートとして最適なのは、杭施工や橋梁下部工です。
作成するモデルは単純な形状ですので、モデリングも簡単に行えますし、矢板や山留は部品として配置する程度で済むからです。
 
以上のように単純に設計や施工の前に3次元モデルがあることだけでもメリットがあります。
 
そうしていくうちに、やりたいことや効果がありそうなことが次々と自然に見つかるようになります。
このように段階的な導入を行えば、スキル向上し、徐々にターゲットを拡大することが可能です。
 
「そう言われても、いきなり3次元ソフトを触るなんて無理だからできない」と自分でハードルを上げてしまう方がほとんどです。
 
そこで私はよく「実は3次元CADの(構造物作図は)2次元CADより簡単です」と言います。
2次元CADはもう皆さんが使えるのが普通になっていると思いますが、初めの頃は寸法や引出線のきれいな書き方、レイヤ分けなど2次元CADの機能を覚える際は相当な苦労をしたと思います。
 
それに比べて3次元は構造物外形線だけ描ければよいし、(現状では)寸法表記は必須ではありません。
ですので、2次元図面があれば、外形線を利用して高さ情報だけ与えれば3次元モデルを作成することができます。
 
操作もブロックを組み立てるようなゲーム感覚で3次元化されていきます。
 
ガラケーからスマホに移行した時に多少操作に手間取ったのも思い出してください。
感覚が違うだけで、すぐにできるようになりましたよね?便利になって、なくてはならないものになりましたよね?3次元モデルもこれからそうなっていきます。
 
ぜひ簡単なことからチャレンジをしてみてください。
 
BIM/CIMは、3次元設計という要素が含まれており、新たな設計条件(図面には出てこない現場条件)なども加味して現場を作るという新しい技術であるという見方が必要です。
 
 

経営層の理解とサポート

部署を作って取り組んでいるけど、うまくいかない会社の例として、「上司が指示できないにもかかわらず、3次元CADのオペレーションを誰かに押し付けようとしたり、派遣会社に3次元ができるオペレーターを紹介してもらい、オペレーターさえいればできると思ったりしている」ということが挙げられます。
 
一番良くないのは、上司が部下に、会社として取り組まなければならないから、PCが得意そうだから任せるね、という一言だけでスタートしている場合です。
それは(裏命題で)BIM/CIMをやって効果までしっかり出してねと言って、作業から責任まで全てを押し付けているのと同じです。
 
現実にそのような状況になってしまっている会社では、最初は若手が頑張ってやるものの、そのうち面倒を見てくれないことが分かった時に、退職して独立しているパターンが非常に多くなってしまっています。
 
私は50代ですが、会社に入った頃はPCがやっと一人一人に与えられた時代でした。
その時代の人たちは、2次元CADの操作はできるけど、3次元CADまでは取り組めないという方がほとんどだと思いますし、現在の役職では、もっと重要な職務を担っているので、3次元モデルを自由自在に作成することまでは必要はないと思います。
 
ただし上長は、部下が作成した3次元モデル、発注者から受領した3次元モデルを「ソフトで開いて見ることができない」ことは大きな問題だということに気付かなければなりません。
 
3次元モデルは可視化することで事前の検証や認識を合わせることができるツールなので、データができた後の活用が重要となります。
 
上長は、データができた後の「指示」ができることが重要なのです。
 
担当している現場で、現場の指示ができない上司がいたら、仕事が回らないのと同じです。
 
うまくいく会社は、部長以上の役職でも 3次元モデルの「閲覧」ができるのです。
 
受領したファイルをどのソフトで開くか知っていて、開いた後に3次元空間をぐるぐる回して閲覧することができます。
 
そうすると、部下が作った3次元空間上で、現場の問題点(例えば、危険予知の場所を伝えるとか、段取り確認)などの指摘もできますし、ここの施工はこうした方が良いという指示ができるようになります。
上司が、部下の作成した3次元モデルを活用してくれれば、部下もやる気も出ますし、3次元で育っている世代は喜んで夢中になって対応してくれるはずです。
 
 

ソフトウエア利用の勘違い

上記のメリットを実現する際に勘違いしてはいけないのは、ソフトウエアさえ導入すればよいという感覚です。
 
例えば、形状が同じで寸法だけが異なる場合に、寸法だけ変えれば自動的に形状が変わる「パラメトリック処理」という機能によって3次元モデルが簡単に作成できるソフトウエアがあります。
 
確かにパラメトリック処理は楽になる構造物もありますが、そうでない場合もあるのです。
 
形状が同じパターンが数百回あればパラメトリック化の意味がありますが、数回しか出てこないパターンの場合は設定する作業の方が大変なので、効果を発揮できませんし、形状が「ほぼ同じ」は自動化にはなりません。
 
要するにそのような機能を持ったソフトが必要な現場もあれば、不要な現場もあるのです。
 
また、点群の場合は、点群データさえあれば、ソフトウエアで自動的に3次元モデルができるとしているソフトウエアなどもあります。
 
かつて紙図面からスキャニングして画像データ(ラスターデータ)からCADデータに自動処理をしてくれるソフトができた時代、とても便利だと話題になりました。
しかしこれも実際にやってみるとソフトで全て思ったような自動処理ができるわけではありませんでした。
 
それはなぜかというと、直線の途中に分岐点がある場合に、途中の分岐点を無視して直線にしてほしいのに、分岐点でデータが意図しない方に曲がってしまったり、管渠を自動トレースしても管渠という認識ではないので、両サイドの線が平行に描けなかったりするのです。
 
結局のところ手動で作図した方が正確だし、実際は寸法どおり書きたいので、自動でトレースした線のチェックが必要になるのです。
 
最近ではAIも登場し、AIにより利用する直径を登録して近い値で修正するようなソフトウエアもありますが、これも同様にチェックは必要になります。
 
このようにソフトウエアは、作業を効率化するツールであって、全てのことに使えるわけではないのです。
 
これらの事例は一部にしか過ぎませんが、これに気付けるのは作業担当者であり、理論でしか考えていないと、ソフトを導入すれば対応できると思ってしまうことに注意が必要です。
 
理論と実務の違いまで理解して推進していないと、BIM/CIMがうまくいく会社にはなれないと思っています。
 
 

3次元は目的で使い分ける

BIM/CIMがうまくいっていそうでも、実際はそうでない事例もあります。
 
一つの事例としては、BIM/CIMにおいて一般的には、3次元モデルに属性が入っていれば、維持管理の際の情報抽出や損傷箇所の解析、維持管理計画は、検索・着色などをして利用でき、BIM/CIMにより生産性向上が図れるといったことが言われています。
 
これを実際に作業する立場ごとに考えると、コンサルの場合は、概略検討の複数案の作成が容易になり、受発注者間のイメージの共有に効果を発揮しますが、施工会社の場合は、出来上がりの形状の3次元モデルよりも施工途中の施工計画や配置計画のために作ることが有効な活用になります。
 
発注者の場合は施工計画や配置計画は不要で、維持管理や発注時の積算を容易にして生産性向上を図ろうとしています。
これらの活用の視点で見ると、発注者のためのBIM/CIM対応と自分たちのための3次元モデリングは活用目的にバラつきがあるため、データという視点で考えた場合、詳細度や作り方、利用するソフトの視点で言うと、必ずしも一緒にできない状態になっていて、同じレベルのモデル作成・活用の考え方でデータの共有が実現可能かどうかを整理して考えるべきです。
例えば、BIM/CIMモデルが細かい詳細度でデータを作成して全ての部品に属性が入っていたとします。
延長が長いものをPCの画面で見たときに、道路幅が100mある場合でも、十数kmを表示すれば「線」にしか見えません。
 
属性の「検索」した際には該当範囲はクローズアップできますが、属性検索の結果から「着色」をした際も、色すら分からないのです。
さらに、高低差は延長よりも微小なものですので、もっと分からないのです。
 
もちろん、拡大すれば色が分かるようになりますが、分かるようになるのは、せいぜい延長数百mの表示になったときになります。
 
広大な範囲を管理する場合に注意する事項は、地図を想像すればすぐに分かります。
地図は、日本全体を表示する場合は、道路でいうと主要な高速道路すら極細の線で描かれます。
 
拡大率によって徐々に情報が見えてきます(下図)。

 
このように大切なのは、範囲の大きさによって管理する情報(表示する情報)を変えていくことが必要だということです。
ただでさえ3次元モデルはデータサイズが膨大なので、なおさらのこと3次元モデルの活用方法をよく考える必要があるのです。
 
GoogleEarthは、誰でもインターネットがあれば、全世界を3次元で見るという目的のものだと思います。
これはモデルの詳細度を落とすことにより、目的を果たしています。
もしこれが詳細に作成されて、全ての属性が見えるものになったら、目的が果たせなくなってしまうのは容易に想像がつきます。
 
私個人の考えですが、BIM/CIMにおける属性管理は3次元モデルに直接付与するのではなく、位置情報を持ったポイントデータを平面の地図上にプロットしてデータベース管理をして、必要な場合のみ3次元モデルで確認するなどの運用とするなどの工夫が必要になるのではないでしょうか。
 
 

積算と2次元図面抽出問題

もう一つの事例としては、3次元モデルに属性を入れれば今までと同様の積算ができ、2次元図面も切り出せるという理屈を前面にしてBIM/CIMを推進しようとしている場合です。
確かに理論的にはできますが、実際には問題点が多くあります。
まず属性に関していえば、建築のように窓、ドア、スイッチ、というような部品の場合は、部品に種別が入っている場合は、3次元モデルに配置すれば積算が可能です。
土木で部品のような素材があるとすれば、鉄筋やL型側溝、転落防止柵などです。
これらは、鉄筋を除けば積算上で10m当たりの個数、本数などで積算しています。
さらに10m当たりといっても実際は縦断勾配がある箇所に設置するのが普通ですが、その10mとは、平面投影された平面図上の距離であり、実際の傾斜なりの長さではありません。
そのような理由で理屈上では建築と同様の積算ができそうですが、まだまだ議論が必要です。

 
2次元図面の切り出しも同様です。
土木の現場は地形なりに施工するので、橋梁下部工や樋門などの構造物を除き、常に縦断方向も横断方向も傾斜があります。
断面図は傾斜なりでなく鉛直方向に切る図面ですが、実際の図面は舗装厚で言えば、傾斜に対して垂直に切った場合の断面が記載されています。
 
3次元モデルから単に切り出すことをすれば、設計された厚さより厚く表示されてしまいます。

 
これらは一つの例でしかありませんが、投影して表現している例はまだまだ多くあり課題といえます。
 
簡単に3次元モデルから2次元図面を抽出するというのが現状の目的であるのならば、もう少し時間がかかる要素だといえます。
 
3次元モデルから寸法線を自動生成するのも問題点があります。
 
寸法線は必要な部分に必要な寸法を記載するのですが、構造物が複雑になると2段3段と寸法線を描く必要があります。
2段目の寸法線は、どこをまとめて表示するべきかは、定石はあっても決まりがありませんので、自動化は今のところ困難です。
 
 

まとめ

以上の通り、BIM/CIMにおける3次元モデルに関しては、さまざまな課題が多く残っています。
とはいえ、全ての課題が解決してから取り組むのでは業界から取り残されてしまいます。
 
この時代、3次元モデルを利用してリモートでの施工ができるようになったり、LiDARの活用が進んだり、OpenAIが出現して点検などが可能になったり、情報の変化はとても激しいのは皆さんもお分かりだと思います。
 
情報取得も全員体制でいくことがとても大切なことだと思います。
 
BIM/CIMを推進する際に、勘違いしてほしくないこととしては、3次元モデルは、あくまでもツールであって、全てのことに使えるわけではありませんし、2次元図面も情報量の多さ、扱いやすさという観点から、なくなることもないと思います。
既存の技術とともに今までになかった視点を加え、ツールを活用することによって生産性の向上が図れるものにしていっていただければ幸いです。

 
 
 

株式会社デバイスワークス 代表取締役
加賀屋 太郎

 
 
【出典】


建設ITガイド2025
建設ITガイド2025



四国地方整備局における建設DX、BIM/CIMの取り組み

2025年6月30日

はじめに

四国地方整備局ではデータとデジタル技術を活用し、社会資本整備や公共サービスの改革を推進するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、働き方を改革し、建設業の生産性の向上を図りつつ、インフラへの住民理解を促進し安全・安心で豊かな生活を実現するため、「四国地方整備局インフラDX推進本部会議」を設置し(図-1)、「四国地方整備局インフラDX推進ロードマップ」に基づき(図-2)、各部局が横断的に連携してインフラ分野のDX推進に取り組んでいる。

図-1 四国地方整備局におけるインフラDX推進体制
図-1 四国地方整備局におけるインフラDX推進体制
図-2 四国地方整備局インフラDX推進ロードマップ
図-2 四国地方整備局インフラDX推進ロードマップ

 
 

BIM/CIM取り組み状況

2023年度からのBIM/CIM原則適用により、四国地方整備局直轄事業における同年度のBIM/CIM活用件数は業務89件、工事110件と、前年度実績の約3倍へと急増している(図-3)。
 
しかし、現段階では発注者から提供できる3次元データは限られており、設計間や設計~工事の間のデータ連携は十分ではない。
これを補うため、スピード感を持ってストックの拡大に努めていくとともに、それを確実に後工程へ引き継ぐデータシェアリングを徹底する。

図-3 四国地方整備局におけるBIM/CIM活用状況
図-3 四国地方整備局におけるBIM/CIM活用状況

 
 

BIM/CIM活用事例

四国地方整備局の直轄工事におけるBIM/CIM活用事例を紹介する。
 
橋梁下部工事において、鋼矢板設置箇所付近に存在する既設の平張りコンクリートが、鋼矢板圧入時の施工機械と干渉することが判明した。
そこで、GNSSアンテナで取得した位置情報をARに反映させて正確な位置でBIM/CIMモデルの対象物を現地に反映させることができるシステムを採用し、3Dモデルの施工機械をARにより可視化し現地で支障状況を確認した(写真-1)。

写真-1 施工機械と既存構造物の干渉をARで見える化
写真-1 施工機械と既存構造物の干渉をARで見える化

 
その結果、CAD図面による資料作成や測量による杭打ち作業などを省力化できたことで、従来の作業工数と比較すると約7割の縮減効果が図られ、受発注者間の協議も円滑に進めることができた。
 
また、別の工事では3次元計測技術を用い、出来形管理に活用した(写真-2)。
少ない人数で計測できること、写真としての活用もできることから、管理の効率化につながるなど、施工現場での、省力化・効率化に向けたBIM/CIM活用が始まっている。
さらに、法面工の工事の例では、吹付 法枠工の出来形管理に3次元計測技術を活用した(写真-3)。
従来はロープによる高所作業者4名でテープ測量を行っていたが、3次元計測では2人での作業と大幅な省力化とともに測量時の安全性向上につながった。

写真-2 橋脚の3次元出来形計測とヒートマップ
写真-2 橋脚の3次元出来形計測とヒートマップ
写真-3 高所作業における3次元計測技術を活用した出来形管理
写真-3 高所作業における3次元計測技術を活用した出来形管理

 
 

人材育成

BIM/CIM原則適用を効果的に進めるためには、それぞれの役割を担っている発注者、コンサルタント、建設会社が一体となって取り組む必要がある。
 
四国地方整備局においては、職員向けBIM/CIM研修に加えて、受注者(設計者、施工者別)向けのBIM/CIM講習会のほか、次世代の担い手となる学生向けのDX体験学習や出前講座も実施している(写真-4)。
 
今後もデジタル技術を十分に理解し、日常使いできるスキルを身につけることを目的に人材育成の取り組みを充実させていく。

写真-4 出前講座(高知工科大学)
写真-4 出前講座(高知工科大学)

 
 

i-Constructionモデル事務所の取り組み

四国地方整備局のi-Constructionモデル事務所である松山河川国道事務所においては事業情報プラットフォームを活用し事業監理の効率化を図っている(図-4)。
 
従来、用地・調査設計・工事の各担当課で、協議事項などを保存しており、担当者不在の場合に最新の情報を入手するのに時間がかかるなど、業務遂行が非効率となっていた。
そこで各段階の協議事項などをBIM/CIMモデルとともにGISツールを用いてクラウド上で一元的に管理・共有することにより、「事業情報の可視化」、「確実な情報共有・管理」が可能となった。
 
今後は事業進捗管理での活用や維持管理などの場面を踏まえた高度なデータ活用の検討を行っていく予定である。

図-4 事業情報プラットフォーム
図-4 事業情報プラットフォーム

 
 

おわりに

BIM/CIMの活用を加速させるには、受発注者共にその有用性を理解し、活用していくことが重要である。
 
3次元モデルの視覚的な活用による合意形成や理解促進については一定の効果が得られているが、3次元設計データのICT建機や施工管理での活用など後工程での活用に加えて、属性情報を活用した数量自動算出や3次元モデルと2次元図面の連動、鋼橋の設計から工場製作へのデータ連携などの各種試行により作業の自動化、効率化を推進する。
 
これまでに得たBIM/CIMを活用したマネジメントの知見を地域のコンサルタントや建設会社、地方公共団体とともに展開することで、建設業の働き方改革を進め、中長期的な担い手確保など四国全体の建設業界の課題解決に向け取り組んでいきたい。
 
 
 

四国地方整備局 企画部 技術管理課 技術検査官
木村 崇

 
 
【出典】


建設ITガイド2025
建設ITガイド2025



東北地方整備局におけるDX推進の取り組み

はじめに

東北地方は少子高齢化が進む中、近年各地で甚大な自然災害が相次ぎ、災害時の迅速な対応や国土強靱化対策の加速が急務となっています。
また、豪雪・過疎地域を多く抱えているため、インフラの維持管理や除排雪体制などにおける担い手不足が東北6県に共通する課題となっており、継続的・安定的に企業を維持していくためには、生産性の向上は避けては通れない喫緊の課題です。
 
これらの課題解決に向けて、東北地方整備局では、2016年度から「働き方改革の推進」「生産性向上の推進」「担い手の育成・確保」の三本柱からなる「東北未来『働き方・人づくり改革プロジェクト』」を官民連携で取り組んでいます(図-1)。

図-1 東北未来「働き方・人づくり改革プロジェクト2024」
図-1 東北未来「働き方・人づくり改革プロジェクト2024」

 
 

DX推進の取り組み

(1) インフラDXの推進体制

2021年度に、整備局全体が一体となって取り組む「東北地方整備局インフラDX推進本部」を設置しました。
現状の働き方における3つの課題(既成概念・場所・ペーパー)に着目し、課題解決に向けて「離れた空間をデジタルで共有」、「誰でもすぐに現場で活躍」、「オフィスに現場を再現」、「ワンチームでDXを推進」の4つの挑戦テーマを設定して、データとデジタル技術を活用した社会資本整備や公共サービスの提供、除雪作業の効率化に向けた技術開発、人材育成や担い手確保などさまざまな取り組みにチャレンジしているところです。
 

(2) BIM/CIM原則適用

BIM/CIMの取り組みは2012年度からスタートし、橋梁や水門、トンネルなどを中心に積極的に進め、2023年度から原則適用となり、整備局独自の取り組みとして、詳細設計や工事に加えて、大規模構造物の予備設計も対象としています。
 
受発注者双方の経験者も増え、3次元データの蓄積も進んでいます。
好事例を通じて経験者を増やし「特別なもの」から「普段使いのツール」とし、さらに「使いこなす」ことで3次元データ活用を図っていきます。
 

(3) 3次元情報活用モデル事業

i-Constructionモデル事務所である鳴瀬川総合開発工事事務所では、3次元情報活用モデル事業「鳴瀬川総合開発事業(宮城県加美郡加美町)」において、大規模かつ長期にわたるダム事業の特性を踏まえ、調査・設計段階からBIM/CIMモデルを活用した事業監理に取り組んでいます。
具体的には、GIS情報共有基盤ベースの流域モデル(流域全体の地形・地質モデル)上に地すべりモデル、原石山・残土受入地モデル、構造物モデルなどのBIM/CIMモデルを統合し、情報共有プラットフォームを構築して、2022年度から事業監理プラットフォームを運用しています。
現在は、事業に関する各種資料や工事記録、現場写真などの情報を蓄積・共有を図っている段階です(図-2)。

図-2 事業管理プラットフォーム(鳴瀬川総合開発事業)
図-2 事業管理プラットフォーム(鳴瀬川総合開発事業)

 
また、整備局独自の取り組みとして「3次元情報活用モデル事業」を管内20事務所・29事業で行っており、新技術導入を加速化させるとともに、3次元データの “普段使い”の実践を図っているところです(図-3)。

図-3 3次元情報活用モデル事業
図-3 3次元情報活用モデル事業

 

(4) 東北インフラDX人材育成センター

発注者(自治体含む)および受注者に対する3次元データ・デジタル技術の知識習得(研修・実習など)を目的に2022年度末に「東北インフラDX人材育成センター」を開所しました。
DX人材育成センターは「人材育成機能」、「技術交流機能」、「情報発信機能」の3つの機能を兼ね備え、特に「人材育成機能」としては、3次元設計データトレーニング施設、除雪グレーダ・バックホウのシミュレーターブースなどを配置し、受発注者双方の集中的な技術向上および担い手確保に向けた体験などの取り組みを実施しています(図-4)。
 
2023年度の1年間で、研修やセミナー、体験会などで総勢約1,270名の利用がありました。
今後も人材育成センターを活用した研修・セミナーの高度化を図り整備局職員や自治体職員、民間企業の人材育成にもこれまで以上に取り組んでいきます。

図-4 東北インフラDX人材育成センター
図-4 東北インフラDX人材育成センター

 

(5) 官民連携した取り組み

整備局や東北6県、仙台市、建設業者団体、学識者で構成する「東北みらいDX・ i-Construction連絡調整会議」を2016年度から開催しています。
具体的な取り組みとして、地元企業における生産性向上の取り組みを支援するため「ICTサポーター制度」を創設し、2年間で約600件の活動実績がありました。
工事情報共有システム(ASP)や遠隔臨場、BIM/CIM・ICT建設機械施工用3次元データ作成、3次元計測技術などに関する技術支援や相談が多い状況となっています。
 
また、ICT施工導入の投資メリットを地元中小企業の企業経営者クラスの方に直接理解していただき、ICT施工活用の普及・拡大につなげることを目的に「地元経営者向けセミナー」を開催しています(写真-1)。
さらに、次世代を担う若手技術者の育 成に向けて、「i-Construction新技術体験学習会」を開催しており、2023年度は東北6県の中・高・大学生、延べ約500人を対象に実施し、3次元設計データ、VR・MR技術、遠隔臨場など建設業の最新技術に触れてもらっています(写真-2)。
今後も、官民連携した取り組みを継続・拡大させ、地域建設業のイメージアップと担い手確保へつなげていければと思います。

写真-1 地元経営者向けセミナー
写真-1 地元経営者向けセミナー
写真-2 i-Construction新技術体験型学習会
写真-2 i-Construction新技術体験型学習会

 
 

おわりに

インフラ分野のDXを推進し、受発注者双方の働き方を変革してデジタル技術を普段使いし、インフラまわりをスマートにしていくことで、いかなるときも地域住民の生活、社会活動、経済活動を支えるための環境を、インフラを通じて継続的に社会へ提供していくことが重要だと考えています。
 
東北地方整備局としては、今後も、生産性向上や働き方改革、担い手の育成・確保など、官民連携をさらに強化・充実させながら東北地域のインフラDXの取り組みを進めてまいります。
 
 
 

国土交通省 東北地方整備局 企画部

 
 
【出典】


建設ITガイド2025
建設ITガイド2025



近畿地方整備局におけるBIM/CIMの取り組み― BIM/CIM取り組み内容と人材育成について ―

2025年6月26日

はじめに

生産年齢人口の減少、災害の激甚化・頻発化、社会資本の老朽化という社会的背景を受け、生産性向上の取り組みをこれまで以上に加速することが必要となってきました。
そこで国土交通省は今後2040年度までに少なくとも省人化3割、すなわち1.5倍の生産性向上を目指す新たな取り組みを「i-Construction2.0」としてとりまとめ、省人化、持続的なインフラ整備、建設施工プロセスの自動化などを推進していくことを決定しました。
その取り組みにおいてBIM/CIMは必要不可欠な技術であり、今後も引き続き活用方法について検討いたします。
 
近畿地方整備局ではインフラDXをさらに推進していくため、2024年3月に個別施策の目指す姿、工程などを「近畿インフラDXアクションプログラム」(図-1)としてとりまとめました。
本稿では、アクションプログラムに策定した近畿地方整備局におけるBIM/CIMの取り組みについて紹介します。

図-1 近畿インフラ DX アクションプログラム
図-1 近畿インフラ DX アクションプログラム

 
 

BIM/CIMの取り組み

これまでは、紙図面や手作業により事業(調査・設計・測量、施工、維持・管理)を実施してきましたが、BIM/CIM(3次元モデル活用、DS(Data-Sharing )の実施)を活用することで、建設生産システムの効率化・高度化を図る取り組みを実施しています(図-2)。

図-2 BIM/CIM 活用の目指す姿
図-2 BIM/CIM 活用の目指す姿

 

BIM/CIM原則適用

2023年度より全ての詳細設計、工事でBIM/CIM原則適用となり、業務・工事で 3次元モデルの活用を推進しています。
3次元モデルについては、発注者が活用目的を明確にし、受注者がモデルを作成することで、業務・工事での活用を推進します。
 
BIM/CIMを有効に活用するためには、各段階での検討事項などをしっかりと次の工程に共有していくことが重要です。
「電子納品保管管理システム」を活用して受注者が希望する参考資料を発注者が速やかに貸与、DXデータセンターを活用して有償ソフトウエアを安価に利用できる仕組みの提供、事業全体にまたがる情報を地図上で検索・表示できるプロジェクト監理ツール(図-3)の試行運用(浪速国道:淀川左岸延伸部)、これらDSを実施することにより、将来の本格的なデータマネジメント実現に向けた第一歩として、発注者が受注者に確実に前段階のデータを共有できるよう取り組んでいます。

図-3 プロジェクト監理ツールイメージ
図-3 プロジェクト監理ツールイメージ

 

3次元データの活用

設計段階で構築された3次元モデルを活用し、ICT土工の工事発注時の効果的な活用手法を検討しています。
具体的には3次元モデルにリンクした2次元図面の抽出、工区分割後の概算数量の自動算定、さらには工事積算データへの変換などを検討しておりBIM/CIMモデル活用が進むことで、発注者としての工事発注の効率化、円滑化が期待できます。
 
近畿地方整備局のi-Constructionモデル事務所である豊岡河川国道事務所においては、台帳附図の代わりとなる3次元モデル(通称:豊岡モデル)の検討を行っています。
豊岡モデルは、将来の維持管理およびデータ一元管理を目的としています。
 
一般的な3次元モデルはデータ容量が大きく、高性能なPCなどの環境が必要だという課題がありますが、豊岡モデル(図-4)では現場で使いやすい3次元の線で構成される軽量な3次元モデル(Dラインデータ※)で作成しています。
またモデルを統合プラットフォームとして活用するために、点群・3Dラインデータと維持管理に必要な情報を納めたフォルダーを一元管理することで、3Dラインデータのモデル(橋梁など)をクリックすると、ひも付けられたフォルダーが立ち上がり、効率的に維持管理データを取得できるようモデル検討を進めています。
 
※3Dラインデータ:点群データのうち、橋梁・擁壁・法面などの道路施設を3次元の線データで表現し、データ容量を小さくしたもの

図-4 豊岡モデル
図-4 豊岡モデル

 
 

人材育成

近畿地方整備局では2020年に「近畿地方整備局インフラDX推進本部会議」を設置し、インフラ分野のDXの推進に取り組んでいます。
 
その中でインフラ分野のDXに関する人材育成として人材育成支援部会を設置し、ICT活用、無人化施工などと合わせてBIM/CIMに関する各種研修などを開催し人材育成に努めています。
 

BIM/CIM研修

BIM/CIMによる建設現場の生産性向上について理解を深めるとともに、3次元モデルの基本操作、業務および工事での活用に関する知識を習得することを目的として2022年度から整備局職員、地方自治体職員を対象として実施し、3年間で209名が研修を受講しています。
 
研修は近畿インフラDX推進センターに設置している高性能PCを用いて3次元モデルを操作し、実際に監督・検査・納品などの各場面での3次元モデルの活用方法を実習形式で習得しました。
 

BIM/CIM施工研修

BIM/CIMは、調査・設計段階から3次元モデルを導入し、その後の工事施工、維持管理の各段階においてもデータを引き継ぎ、さらに各段階での情報を付加し、後工程で活用することで建設分野の生産性向上を目指すものですが、現状として各段階での活用にとどまっており、次工程への引き継ぎが十分に行われていません。
 
近畿地方整備局では2022年度の試行を皮切りに、建設分野でBIM/CIMを取り扱う施工者、設計者、発注者を対象とした設計から施工へのデータ受け渡しに着眼した人材育成のための「BIM/CIM施工研修」を実施しています。
 
研修では設計段階で作成した設計成果(BIM/CIMモデル)をICT施工に活用するため、3次元モデルの編集方法を習得するとともに、設計者、施工者、発注者など各立場でのBIM/CIMの展望や課題について議論を行い認識の共有に取り組んでいます。
2024年度においては95名が研修を受講しました。
 
研修に参加した地域建設業の技術者からは、「設計データ作成の内製化によって生産性向上が期待できる」「発注者から提供された3DモデルがICT施工に活用できることが分かった」など好評を得ています。
 
 

おわりに

近畿地方整備局においては、今回紹介した取り組み以外にも、管内各事業におけるBIM/CIM活用推進、関連基準改定に向けた検討、3次元データ・デジタル技術を活用できる人材育成などに取り組んでいます。
 
今後もBIM/CIM活用に向けた取り組みを推進し、事業の各段階に3次元モデルを導入していくことで、建設生産システム一連における効率化・高度化を図り、品質確保とともに受発注者双方の生産性向上を実現していきます。

 
 
 

国土交通省 近畿地方整備局 企画部 技術管理課

 
 
【出典】


建設ITガイド2025
建設ITガイド2025



国土交通省におけるBIM/CIMの取り組みについて― i-Construction2.0「データ連携のオートメーション化」の実現に向けて ―

2025年6月23日

はじめに

BIM/CIMとは

BIM/CIM(Building/Construction Information Modeling, Management)とは、建設事業で取り扱う情報をデジタル化することにより、調査・測量・設計・施工・維持管理などの建設事業の各段階に携わる受発注者のデータ活用・共有を容易にし、建設事業全体における一連の建設生産・管理システムの効率化を図ることである。
情報共有の手段として、3次元モデル(3次元形状+属性情報)、点群データ、2次元図面、GISデータなどの各種のデータを使用する(図-1)。
 
国土交通省では、受発注者の生産性向上を目的に、直轄土木業務・工事にBIM/ CIMを適用し、取り組むこととしている。
本稿では、これまでのBIM/CIMの実施 状況、国土交通省が推進しているインフラ分野のDX・i-Construction2.0、およびこれらの実現に向けた最近のBIM/CIMの取り組みについて紹介する。

図-1 BIM/CIMで使用する主なデータ
図-1 BIM/CIMで使用する主なデータ

 
 

BIM/CIMの実施状況

これまでの実施状況

国土交通省では、業務については2012年度から、工事については2013年度からBIM/CIMの試行を進め、段階的にBIM/ CIM適用の対象を拡大してきた。
また2018年度には、i-Constructionモデル事務所を設置して、各地方整備局などのうちのリーディング事務所として先導的なBIM/CIMなどの取り組みを実施している(図-2)。

図-2 i-Constructionモデル事務所の取り組み
図-2 i-Constructionモデル事務所の取り組み

 

2023年度からのBIM/CIM原則適用

国土交通省では、2023年度から、原則として全ての直轄土木工事・業務において、BIM/CIMを適用している。
(1)原則適用では活用目的に応じた3次元モデルの作成・活用と、(2)DS(Data-Sharing)の実施にそれぞれ取り組むこととしている。
 
(1) 活用目的に応じた3次元モデルの作成・活用
業務・工事ごとに発注者が3次元モデルの活用内容を明確にした上で、受注者が3次元モデルを作成し、受発注者で活用する。
活用内容は「義務項目」「推奨項目」に分けて設定している。
 
義務項目については、出来上がり全体イメージの確認など、視覚化による効果を中心に未経験者でも取り組み可能なものとして内容を設定しており、全ての詳細設計で義務項目を活用することとしている。
また工事についても、過年度の詳細設計業務で作成された3次元モデルがあれば、施工ステップの確認、関係者の理解促進など、義務項目を活用することとしている(表-1、図-3)。

表-1 3次元モデルの活用 義務項目
表-1 3次元モデルの活用 義務項目
図-3 義務項目の例(出来あがり全体イメージの確認)
図-3 義務項目の例(出来あがり全体イメージの確認)

 
推奨項目については、3次元モデルによる解析などの高度な内容を含むものであり、業務・工事の特性に応じて活用することとしている(表-2、図-4)。
 
ただし、これらに限ることなく、生産性向上に資すると考えられるその他の活用内容についても、積極的に検討し実施に努めることとしている。
また、3次元モデルの作成に当たっては、活用内容を満たす必要十分な程度の範囲・精度で作成するものとし、活用内容以外の箇所の作成を受注者に求めないものとしている。

表-2 3次元モデルの活用 推奨項目の例
表-2 3次元モデルの活用 推奨項目の例
図-4 推奨項目の例(施工数量算出)
図-4 推奨項目の例(施工数量算出)

 
(2)DS(Data-Sharing)の実施
業務・工事の契約後速やかに、発注者が受注者に設計図書の作成の基となった情報を説明し、受注者が希望する参考資料(電子データを含む)を貸与する。
最新のデータを漏れなく後段階の受注者に確実に共有することは発注者の責務であり、貸与資料ダウンロードシステムによるオンラインでの成果品の貸与など、円滑にDSが実施できる環境を整えている。
 
 

インフラ分野のDX、i-Construction2.0とBIM/CIM

インフラ分野のDX(Digital-Transformation)

国土交通省では、インフラ分野においてデータとデジタル技術を活用して、国民のニーズを基に社会資本や公共サービスを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、文化・風土や働き方を変革することを目的として、インフラ分野のDXの取り組みを進めている。
インフラ分野のDXは、「インフラの作り方」「インフラの使い方」「データの活かし方」の変革を分野網羅的・組織横断的に進めることとしている。
これまで取り組みを進めてきたi-Construction、および今後取り組みを進めていくi-Construction2.0は、インフラ分野のDXで示す目指すべき将来像のうち、建設現場における取り組みであり、「インフラの作り方」の変革に位置付けられるものである。
 

i-Constructionからi-Construction 2.0へ

国土交通省では、2016年度から、建設現場の生産性向上の取り組みとして、ICT施工や設計・施工におけるデジタル技術の積極的な活用などの、i-Constructionを進めてきた。
 
一方で、今後さらなる生産年齢人口の減少が予測されており、かつ災害の激甚化・頻発化、社会資本の老朽化など、社会資本整備を取り巻く状況は厳しさを増している。
 
このような背景を踏まえて、2024年度から、これまで進めてきたi-Constructionの取り組みを深化し、さらなる抜本的な建設現場の省人化対策を「i-Construction 2.0」として、「施工のオートメーション化」「データ連携のオートメーション化」「施工管理のオートメーション化」に取り組むことで、建設現場のオートメーション化の実現を目指すこととなった(図-5)。

図-5 i-Construction 2.0 建設現場のオートメーション化
図-5 i-Construction 2.0 建設現場のオートメーション化

 
 

データ連携のオートメーション化に向けた取り組みについて

調査・測量、設計、施工、維持管理といった建設生産プロセス全体をデジタル化、3次元化し、必要な情報を必要な時に加工できる形式で容易に取得できる環境を構築するBIM/CIMにより「データ連携のオートメーション化」を推進する。
これにより同じデータを繰り返し手入力することをなくし、不要な調査や問い合わせ、復元作業を削減するとともに、資料を探す手間や待ち時間の削減を進める。
 
建設生産プロセスにおいて作成・取得するデータは多量にある一方、現時点ではデータを十分に活用できていないことから、各段階で必要な情報を整理した上で、関係者間で容易に共有できるよう、情報共有基盤を構築し、円滑なデータ連携を進める。
 
データの活用に当たっては、設計データを施工データとして直接活用することや、デジタルツインの構築による施工計画の効率化など、現場作業に関わる部分の効率化に加え、BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールなどの活用により、紙での書類は作成せず、データを可視化し、分析や判断ができるよう真の意味でのペーパーレス化(ASP(情報共有システム)の拡充といった現場データの活用による書類削減)など、バックオフィスの効率化の両面から進めていく。
 
データ連携のオートメーション化に向けて、国土交通省では現在次のようなBIM/ CIMの取り組みを進めている。
 

3次元モデルと2次元図面の整合

2023年度からBIM/CIM原則適用を開始し、3次元モデルの活用を本格的に開始しているものの、3次元モデルと2次元図面の整合性を確認していないことから、3次元モデルは参考資料として活用している。
 
将来的な3次元モデルの工事契約図書としての活用に向け、詳細設計業務において、主構造について3次元モデルと整合した2次元図面を作成する試行に着手している(図-6)。

図-6 3次元モデルと2次元図面の整合のイメージ
図-6 3次元モデルと2次元図面の整合のイメージ

 

属性情報の積算への活用(BIM/CIM積算)

今後、設計の効率化や施工の自動化を目指す上ではデータのさらなる活用が必要不可欠であるが、各段階において、どのようなデータが必要か明確に決まっていないため、データを効果的に活用できていない。
 
データのさらなる活用に向け、まずは必要なデータが明確になっている積算において、データの活用を進めることとしている。
詳細設計業務において、属性情報(3次元モデルから自動的に算出される数量)を積算に活用するBIM/CIM積算の試行にも着手している(図-7)。

図-7 RC橋脚のコンクリート躯体に積算に必要な属性情報を設定した例
図-7 RC橋脚のコンクリート躯体に積算に必要な属性情報を設定した例

 

設計データの施工での活用

設計データをICT建設機械や工場製作など、施工段階で活用する取り組みも進めている。
 
ICT建設機械での設計データ活用については、詳細設計業務において、ICT建設機械に搭載するデータの作成に必要となる、土工の中心線形と横断形状データを成果物として納品することとしている。
鋼橋の工場製作での設計データ活用については、鋼橋の設計は自動設計システムを活用して行われている一方、工場制作の際に使う自動原寸システムには図面から手入力しており、設計・施工間のデータ連携がスムーズに行われておらず非効率である。
設計データを工場制作に直接活用するため、2023年度から、中間ファイルを活用したデータ連携の試行工事を実施している(図-8)。
 
試行の結果、工場製作データの作成において1割弱の作業時間の短縮効果が確認されたが、いくつかの課題も判明し、それらに対応することでさらに3割程度以上の作業時間短縮が可能であるとの見通しが示されている(図-9)。
今後は、さらに試行を重ねて課題の対応に取り組むとともに、データ連携を推進するために、鋼橋の詳細設計業務において、自動設計のオリジナルデータ、中間ファイルなどを成果物として納品することとしている。

図-8 鋼橋のデータ連携の流れ
図-8 鋼橋のデータ連携の流れ
図-9 工場製作データ作成時間の比較
図-9 工場製作データ作成時間の比較

 

デジタルデータを活用した監督・検査などの実施

デジタル技術の進展は日進月歩で進んでおり、施工管理、監督・検査などにおいても、3次元モデルの活用やARなど、 i-Construction 2.0の柱のひとつである「データ連携のオートメーション化(ペーパーレス化)」につながるさまざまな技術が導入されている(図-10)。
 
このような新技術を積極的に活用し、監督・検査業務の効率化を進めるため、現行の基準・手法とは異なるが、デジタル技術を活用して簡素化・効率化などを図ることができる新たな施工管理、監督・検査の手法の活用について、施工者から提案があった場合は、従来方法との比較により監督・検査などに支障が生じないことを確認し、新たな手法の活用を可能とするよう、直轄土木工事の監督職員および業界団体向けに周知を行っている。

図-10 デジタルデータを活用した出来形検査の例(ARの活用)
図-10 デジタルデータを活用した出来形検査の例(ARの活用)

 

好事例の横展開

好事例の横展開を目的として、BIM/ CIMにより生産性が向上した事例を「BIM/CIM事例集」としてまとめ、BIM/ CIMポータルサイトに掲載している(図-11、12)。
 
事例の概要、BIM/CIMの具体的な方法と課題、業務・工事の概要について整理しており、キーワード検索などにより、探したい情報を検索できる。
掲載事例については今後拡充予定である。

図-11 BIM/CIM事例集 トップページ
図-11 BIM/CIM事例集 トップページ
図-12 BIM/CIM事例集 事例の閲覧
図-12 BIM/CIM事例集 事例の閲覧

 
 

おわりに

BIM/CIMは、i-Construction 2.0で掲げる「データ連携のオートメーション化」の中核となるものである。
今後は、BIM/CIMのいろいろな取り組みを進め、各段階間でのデータの連携・活用を図ることで、建設生産プロセスにおける各種作業の自動化、効率化を目指していきたい。
 
 
〈参考〉
・国土交通省BIM/CIM関連
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000037.html
・国土交通省 インフラ分野のDX
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000073.html
・i-Construction 2.0
https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/content/001738240.pdf
・BIM/CIM事例集
https://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/bimcimusecase.html
 
 
 

国土交通省 大臣官房参事官(イノベーション)グループ 課長補佐
髙橋 典晃

 
 
【出典】


建設ITガイド2025
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