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中部地方整備局における BIM/CIMの取り組み

2024年6月8日

はじめに

国土交通省では令和5年度よりBIM/CIMの原則適用(表-1)を進めており、国土交通省職員はもちろんのこと国土交通省の業務や工事を受注する民間企業も含めて、BIM/CIMを活用できるような環境整備を進めている。

表-1 BIM/CIM原則適用について
表-1 BIM/CIM原則適用について

 
BIM/CIMを活用するには測量・調査、設計段階から3次元モデルを導入することにより、その後の工事現場での施工、維持管理・更新の各段階においても3次元モデルを連携・発展させ、事業全体にわたって関係者の情報共有を図ることが可能となる。
 
i-Constructionモデル事務所においては、建設生産・管理システム全体の効率化に向け、BIM/CIMやi-Constructionの取り組みについて、トップランナーとして活用推進や普及拡大を図っているところである。
 
また令和5年3月に中部地方整備局の各部、建設業界をはじめ、関係機関が協調してインフラDXの取り組みを進められるよう、「中部インフラDX行動計画2023」を作成した。
 
 

中部地方整備局のi-Constructionモデル事務所の取り組み

中部地方整備局のi-Constructionモデル事務所は現在、新丸山ダム工事事務所、設楽ダム工事事務所、紀勢国道事務所の 3事務所であり、それぞれのBIM/CIMの活用状況を紹介していく。
 
新丸山ダムでは、関係者協議や広報で、地形データと堤体データ、機械設備データ、地質データなどを重ね合わせた統合モデルを活用している。
これを基に、ダム本体工事での自律施工も検討中である。
また、地質モデル(図-1)は、鉱脈硬線帯などを含めた新モデルを構築したことで、土捨て場や、本体工事に必要な骨材の選定などに活用範囲を広げた。
その他、ドローンで撮影した写真を組み合わせて3Dモデルを作成し、バーチャル見学ツアーも実施している。

図-1 地質3Dモデル(原石山)の作成【新丸山ダム】
図-1 地質3Dモデル(原石山)の作成【新丸山ダム】

 
設楽ダムでも、ダム本体と付替道路などで統合モデルを作成している。
対外向けの事業説明や、設計照査時の関連構造物との干渉確認などに活用している。
また、ダム事業の広報手法として、過去・現在・未来を映し出すプロジェクトマッピング(図-2)も作成した。

図-2 プロジェクションマッピングへの活用【設楽ダム】
図-2 プロジェクションマッピングへの活用【設楽ダム】

 
紀勢国道事務所では、国道42号熊野道路の整備で3次元データを活用している。
クリティカルパスとなる事業区間で、施工ステップの妥当性や用地内施工の確認、工事用道路の検討などを実施した。
施工ステップや事業スケジュールの照査(図-3)を行うことで、手戻りが生じない、効率的な事業執行を進めている。

図-3 工事着手段階の活用事例【紀勢国道】
図-3 工事着手段階の活用事例【紀勢国道】

 
 

中部インフラDX行動計画の策定

中部地方整備局では、これまでドローン測量やICT建機の活用など、さまざまなデジタル技術を積極的に導入・活用し、建設現場の安全確保、生産性の向上などに努めてきた。
しかし、自然災害の激甚化・頻発化、デジタル技術の急速な進展など社会経済情勢は大きく変化している。
このような状況の変化に応じたインフラ整備や公共サービスの提供を行うとともに、建設現場の生産性の向上、働き方改革を進めるためには、インフラ分野のDXの取り組みを一層加速する必要がある。
このため、中部地方整備局の各部、建設業界をはじめ、関係機関が協調して取り組みを進められるよう、①DX推進の背景、②地域住民、建設業界、職員、それぞれの観点からの目指す姿(表-2)、③おおむね5年間の主な取り組みを「中部インフラDX行動計画2023」(表-3)として整理し公表している。

表-2 中部地方整備局インフラDXの目指す姿
表-2 中部地方整備局インフラDXの目指す姿

表-3 中部インフラDX行動計画2023
表-3 中部インフラDX行動計画2023

 
 

おわりに

令和5年度よりBIM/CIMの原則適用となり、3次元情報の利活用ができる人材の育成は急務である。
 
建設現場の生産性向上を図るためには、i-Constractionの取り組みを国の直轄工事以外にも拡大していくことが重要である。
地方公共団体や地域企業の取り組みのサポートや、職員・作業員への研修も行い連携しながら取り組みを進めていく。
 
また、中部インフラDX行動計画を通して、最新のDXツールを活用して時代の変化、社会のニーズに応じた行政サービスを提供し、地域住民のQOLが高い魅力的な地域作りを目指す。
 
加えて、社会の基盤を支える重要な役割を担う建設業が持続的に発展できるよう若者や女性にも魅力的な職場環境とし、労働生産性の向上、職員の仕事とプライベートが充実するような働き方改革を進めていく。
 
 
 

国土交通省 中部地方整備局 企画部 技術管理課 建設情報係長
大鹿 貴也

 
 
【出典】


建設ITガイド 2024
特集1 建設DX、BIM/CIM
建設ITガイド2024


 



中国地方整備局における BIM/CIMの取り組み

はじめに

中国地方整備局では、「中国地方整備局インフラDX推進計画」にBIM/CIMによる建設生産システムの効率化・高度化を位置付けて、3次元モデルの活用を推進してきたところですが、令和5年度から業務・工事においてBIM/CIM原則適用となり、さらなる活用を推進しているところです。
 
本稿では、これからの建設業界の生産性向上に欠かせないBIM/CIM の活用について、中国地方整備局の取り組みを紹介します。

 
 

中国地方整備局における取り組み状況

中国地方整備局のこれまでの取り組みとして、大規模構造物などを中心にBIM/ CIMを活用、順次対象を拡大しながら事例を収集し、「BIM/CIM活用の手引き(案)」や「BIM/CIM活用事例集」を作成・公表しています。
山陰西部国道事務所では、調査、設計、施工のプロセスを意識した3次元ベクトルデータを測量成果として作成することにより道路設計の効率化および高度化を図ることを目的に、ガイドラインを作成し運用しているところです。
令和5年度から業務・工事においてBIM/CIM原則適用を受け、この取り組みを他の事務所へ横展開し、BIM/CIMのさらなる活用推進を図っていきます。
 
受注者については、特に中小企業においてBIM/CIMがまだ十分に浸透していない現状も見られるため、中国地方整備局では、業団体が参加する講演会や勉強会などにおいてBIM/CIMに関する説明を積極的に行っています。
また、BIM/CIMを含むDXの取り組みに関する最新の事例を収集し、中国5県や業団体などへ定期的に提供するなど、外部への情報発信にも取り組んでいます。
 
BIM/CIMを効果的に活用し、建設生産・管理システムの効率化を図っていくためには、建設事業に関わる発注者および受注者における人材育成が不可欠です。
中国地方整備局では、幅広い関係者がDXに関する専門性の高い研修や技術体験ができる人材育成の拠点として、令和4年度より中国技術事務所に「中国インフラDXセンター」の整備を進めており、令和5年7月18日に暫定運用を開始したところです。
建設生産・管理システムのプロセスにおいて活用可能なDX技術のうち、AR・VRコンテンツなど(図-1)の体験が可能となっています。
今後も、DXセンターで体験できる技術メニューや研修コンテンツの充実を図り、BIM/CIM活用促進を支える人材育成の環境整備に取り組むこととしています。

図-1 中国インフラDXセンター 体験コンテンツ1
図-1 中国インフラDXセンター 体験コンテンツ2
図-1 中国インフラDXセンター 体験コンテンツ3
図-1 中国インフラDXセンター 体験コンテンツ4
図-1 中国インフラDXセンター 体験コンテンツ5
図-1 中国インフラDXセンター 体験コンテンツ

 
 

フロントローディングの取り組み事例

中国地方整備局では、早期段階から一貫したBIM/CIM導入に向けて、測量、設計、施工の各段階でフロントローディングを実践しています。
 
測量段階では、点群測量成果を単に地形図成果として使用するのではなく、道路設計の効率化および高度化を図るため、点群測量に合わせて現地補備測量を実施し、自由に縦横断地形図が作成できる3次元ベクトルデータ(図-2)を測量段階の成果とする「点群データ活用ガイドライン(案)」を作成しました。

図-2 3次元ベクトルデータ
図-2 3次元ベクトルデータ

 
令和3年度新規事業から本格的に活用を開始しており、測量段階での作業は増加するものの、自由に縦横断面図が作成可能なことから通常実施する現地縦横断測量(応用測量)を省略でき、これまでの測量設計プロセスを見直すことで一連の作業効率化が図られることが可能となっています。
 
設計段階では、道路設計で作成された CIMモデルを、後工程となる、トンネル設計や橋梁設計を実施後に再度モデルの更新(接合)を行う必要があります。
しかし、設計業者ごとにCIMモデルの着色や、モデル化範囲が異なるため(図-3)、モデル更新に時間を要していることから、令和5年度に一定のルールを作成する取り組みを実施しています。
 
施工段階では、ICT土工用データを発注者が作成し、受注者に貸与する試行を行っています。
また、地質調査の検尺で一般化されつつある遠隔臨場を発展させ、遠方から現場をリアルタイムで見学するバーチャル現場見学会を令和4年度から実施しており、令和5年度はバーチャル現場見学会を応用した用地・幅杭遠隔立会(図-4)を試行するなど、新たな取り組みにチャレンジしやすい環境整備を行っています。

図-3 CIMモデルの着色違いの事例
図-3 CIMモデルの着色違いの事例
図-4 用地・幅杭遠隔立会
図-4 用地・幅杭遠隔立会

 
 

おわりに

中国地方整備局では、建設業界の生産性向上を図りつつ、整備局職員を含めた建設業界の働き方改革を実現することを目指し、各種の取り組みを実施しています。
 
実施に当たっては、社会情勢の変化や 建設業界、職員からのニーズなどを踏まえた上で、「中国地方整備局インフラDX推進計画」を毎年度策定し、それらを実施、点検、分析・評価し、インフラ分野のDXを推進してまいります。
 
 
 

国土交通省 中国地方整備局 企画部 技術管理課

 
 
【出典】


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特集1 建設DX、BIM/CIM
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九州地方整備局における BIM/CIMの取り組み

はじめに

国土交通省では、建設現場の生産性向上を図るi-Constructionの取り組みの一つの施策として、BIM/CIM活用を推進しており、令和5年度から発注される直轄土木業務・工事をBIM/CIM原則適用の対象としております。
BIM/CIM原則適用の実施に当たっては「活用目的に応じた3次元モデルの作成・活用」と「発注者によるデータ引き継ぎ」が示されており、発注者はBIM/CIMの目的である、データの活用・共有を行い、受発注者の生産性の向上を念頭に置きBIM/CIMを活用する必要があります。
 
今回は九州地方整備局におけるBIM/CIM活用に向けた取り組み、および人材育成について紹介します。
 
 

九州地方整備局における BIM/CIMの取り組み

(1)九州地方CIM導入検討会

九州地方整備局独自の取り組みとして、 CIM導入の促進、生産性の向上、働き方改革の推進を目指すため、2013年7月に「九州地方CIM導入検討会」(委員長:小林一郎熊本大学名誉教授)を設置し、河川、ダム、道路、砂防の4分科会で、CIM活用に向けた課題、対応策の検討を各事務所と連携しながらCIM活用の推進に取り組んでおります。
 
各分科会の令和5年度の検討概要は以下のとおりです。
 
1)河川分科会
河川管理の効率化・高度化を目的として、流域や管理区間の三次元地形情報や河川に関わる各種情報をGISなどで可視化して提供し、各種の河川・河道データを取り扱う「三次元河川管内図」の整備を行い、より使い勝手がよいシステム構築の検討を進めています(図-1)。

図-1 システム構築の検討
図-1 システム構築の検討

 
2 )ダム分科会
ダムCIMを推進するため、調査・測量・計画、設計、施工、試験湛水、管理と事業の進捗ごとに段階分けを行い、各段階における用途や効果を達成するために必要なモデルの内容や、モデルに取得・蓄積するデータを選定の上、モデルを作成することで、情報把握の迅速化や施行の高度化を図るなど、業務の効率化を目指したダムCIM活用計画について検討を実施しています(図-2)。

図-2 ダムCIM活用の検討1
図-2 ダムCIM活用の検討
図-2 ダムCIM活用の検討2

 
3)道路分科会
道路事業における各業務・工事にて BIM/CIMの活用に取り組んでいますが、さらなる活用を推進するため、BIM/CIM活用に関する好事例や最新の情報を収集し、勉強会を通じて活用事例などの水平展開を行うとともに、職員のCIM活用の意識向上を図るなど、人材育成の強化を進めています(図-3)。

図-3 データ活用の好事例を用いた勉強会
図-3 データ活用の好事例を用いた勉強会

 
4)砂防分科会
砂防事業において、砂防CIMの基本フレームとして大規模(水系を広域に把握)・中規模(渓流域)・小規模(構造部)の3段階を設定し、各規模に応じた設計や地元説明会などへの活用に向けた検討を進めています。
なお、2023年度は大規模フレームにおいて河川分科会で作成される流域全体の三次元管内図と連携してモデルを作成するための砂防事業における基礎情報の整理を開始します。
また、中・小規模フレームでは、引き続きCIMデータを用いた除石工事の実施を行い、課題などの意見を抽出し、砂防CIMのさらなる活用の検討を進めます(図-4)。

図‐4 CIMデータを活用した除石工事における検討1
図‐4 CIMデータを活用した除石工事における検討
図‐4 CIMデータを活用した除石工事における検討2

 

(2)BIM/CIM人材育成の取り組み

BIM/CIM原則適用に関する実施方針では、業務・工事の発注に際し、BIM/CIMの活用についてリクワイアメント(要求事項)から、発注者が活用内容を特記仕様書へ明確に記載することとなり内容が大きく改定されました。
そのため、発注者として後工程(設計であれば工事など)を考慮した適切な発注を実施できるよう、令和5年3月に新たな実施方針について説明会を開催しております。
 
また、今後BIM/CIMを活用していくためには、発注者自らがBIM/CIMを体験し、その効果を理解することが重要です。
そのため、九州地方整備局の職員(一部地方自治体職員も含む)を対象に研修を行い、 BIM/CIM未経験の職員や基礎操作の復習を希望する職員などに対して、BIM/CIMの施策概要や、発注者としてどのようなBIM/CIMデータが納品されて、それをどのように確認・活用できるかを体験することでBIM/CIMの基礎を理解し、整備局の将来を担う職員の育成に努めています。

図-5 発注者を対象とした人材育成
図-5 発注者を対象とした人材育成

 
 

おわりに

生産性向上は建設業界の長年の課題であり、その背景には、一品生産・屋外生産で労働集約型生産の構造的問題があり、さらには長時間労働や高齢化による人手不足問題などがあります。
そのため、九州地方整備局では、これら諸課題の解決の一つの施策としてBIM/CIM活用・普及の推進に取り組んでいきます。
 
また、建設分野の生産性向上に向けて、従来のi-Constructionによる働き方改革をさらに拡大する必要性が生じており、九州の地域特性に特化したDXを実現するための行動指針などとして「九州インフラDXアクションプラン」を令和4年度に策定し、メタバースの活用や災害調査のデジタル化、UAVやAIの利活用などのデジタル技術を積極的に活用し、さまざまな分野で産・学と連携した改革を目指し、今後も一層推進していきます。
 
 
 

国土交通省 九州地方整備局 企画部 技術管理課

 
 
【出典】


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特集1 建設DX、BIM/CIM
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北海道開発局における建設DX、i-Construction、BIM/CIMの取り組み

2024年3月6日

はじめに

北海道開発局では、地域を支える建設業の健全な発展を後押しし、建設業などの働き方改革の実現を図るため、「北海道開発局建設業等の働き方改革推進本部」を設置し、「北海道開発局建設業等の働き方改革実施方針」を策定しています。
また、建設現場の生産性向上を図るため、「北海道開発局インフラDX・i-Construction推進本部」を設置し、「北海道開発局インフラ DX・i-Constructionアクションプラン(以下、アクションプラン)」を策定しており、「i-Constructionの推進」、「BIM/CIMの推進」、「インフラDXの推進」、「フォローアップ活動」について取り組んでいます。
 
アクションプランの1つである「BIM/CIMの推進」については、令和5年度 BIM/CIM原則適用となったことで、業務・工事の実施増加が見込まれます。
しかしながら、原則適用はゴールではなく、これから業務・工事の実施(図-1)が徐々に増え続けていくもので、やっとスタートラインに立ったと考えております。

図-1 北海道のBIM/CIM活用状況
図-1 北海道のBIM/CIM活用状況

 
 

デジタル人材の育成

BIM・CIMは原則適用になりましたが、業務と工事単位で考えると令和4年度で10%程度しか活用できていない状況です。
 
担当者単位では、業務と工事の中でも、対応できる人は限定されており、誰でも使用できるツールとなるためには、デジタル人材を育成し増やしていくことが重要で不可欠です。
 
 

i-Construction先導事務所

北海道におけるインフラDX・i-Constructionの取り組みを推進するため、各開発建設部に「インフラDX・i-Construction 先導事務所」として14事務所を設置し、「i-Constructionモデル事務所」である小樽開発建設部(小樽道路事務所)のノウハウを全道的に展開する取り組みを令和3年度から先導事務所会議として実施(図-2、表-1、写真-1)しています。

図-2 i-Construction先導事務所
図-2 i-Construction先導事務所
表-1 先導事務所一覧
表-1 先導事務所一覧
写真-1 先導事務所会議web
写真-1 先導事務所会議web

 
令和3年度5回700人、令和4年度5回900人、令和5年度は4回500人が参加し、11月に第5回目の開催を予定しています。
 
近年は、先導事務所の取り組み紹介(図-3、4)および情報共有し全道各地で活用が促進される取り組みとして定着してきています。
 
 

研修や講習

建設DX、i-Construction、BIM/CIMに関係する研修や講習(写真-2、3)を令和4年度は約40回開催し、約6,300人が参加しました。
 
内容は、事例や取り組みなどを紹介するシンポジウムやセミナー、3DCADなどを実際に操作する研修、講習などとなっています。

写真-2 DX・i-Conセミナー
写真-2 DX・i-Conセミナー
写真-3 DX・i-Con研修
写真-3 DX・i-Con研修

 
 

北海道開発局 i-Con奨励賞

北海道開発局が所管する工事および業務に関し、建設現場における生産性向上の優れた取り組みを行った受注者を表彰することにより、建設業に携わる企業の i-Construction導入に向けた意欲向上を図るとともに、優れた取り組み事例を広く収集し周知することで、より一層の i-Construction推進を図っています(写真-4、図-5、6)。

写真-4 i-Con奨励賞
写真-4 i-Con奨励賞
図-5 ICT技術の活用
図-5 ICT技術の活用
図-6 ICT活用工事
図-6 ICT活用工事

 
 

身近なDXの普及

今まで、建設DX、i-Construction、BIM/ CIMを実施できるところは、建設現場などの予算規模が大きく大企業が受注した案件でしたが、近年は、維持工事や小規模工事(図-7、8)でも、利用が徐々に増えてきており、本当の意味で普及が進んできたと感じています。
 
活用が進んだ要因としては、今までの取り組みにより、活用事例が増えたことで、建設DX、i-Construction、BIM/CIMが特別なものではなくなり、身近な存在となったことや、調達可能な機器が普及していることだと考えております。

図-7 GISを利用したDX
図-7 GISを利用したDX
図-8 小規模工事でもAR活用
図-8 小規模工事でもAR活用

 
 

おわりに

BIM/CIMは原則適用になりましたが、全工事や業務で活用されるほど一般的になったとは言えません。
 
まだまだ、使用する機器は高額で、操作ができるか分からないものを調達するのに、二の足を踏む人も多いと思います。
 
現在、絶賛PR中の「DXデータセンタ」は、高性能PCや3DCADを安価に利用できることから、操作できる人が増えることを期待しており、操作できる人が増えることで機器の調達を促し、調達する人が増加すれば、機器の価格も下がることから、相乗効果で爆発的に普及するのも目前に近づいていると感じています。
 
これらの取り組みが浸透し、一般的なものとなったとき、次の新しい技術へ挑戦していくステップへと結びついていくことから、挑戦し続けることが、より一層の建設業の魅力へつながることを期待しています。
 
 
 

国土交通省 北海道開発局 事業振興部 技術管理課

 
 
【出典】


建設ITガイド 2024
特集1 建設DX、BIM/CIM
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国土交通省におけるBIM/CIMの取り組みについて― 令和5年度BIM/CIM原則適用と今後の展開―

はじめに

BIM/CIMとは

BIM/CIM(Building/Construction Information Modeling, Management)とは、建設事業で取り扱う情報をデジタル化することにより、受発注者のデータ活用・共有を容易にし、建設事業全体における一連の建設生産・管理システムの効率化を図る思想である。
情報共有の手段として、 3次元データと属性情報、3次元モデル以外の情報を使用する(図-1)。

図-1 BIM/CIMとは
図-1 BIM/CIMとは

 
国土交通省では、BIM/CIMの普及、定着、効果の把握やルール作りに向けて、2012年度から取り組みを進めている。
 
2020年は新型コロナウイルス感染症を契機とし、建設現場における新たな働き方への転換、デジタル技術を駆使したインフラ分野の変革が急速に進み、政府を挙げてデジタル化による社会の変革が求められているところである。
国土交通省においても2022年3月に「インフラ分野のDXアクションプラン(第1版)」を策定し、インフラ分野のデジタル化・スマート化を、スピード感を持って強力に推進している。
さらに2023年8月に「インフラ分野のDXアクションプラン(第2版)」を公表し、「インフラの作り方の変革」、「インフラの使い方の変革」、「データの活かし方の変革」という3つの柱に分類し、分野網羅的・組織横断的にインフラ分野のDXを進めることとしている。
 
なお、建設業界では、i-Constructionの推進を通じて、ICT 建設機械や無人航空機(UAV)などを活用したICT 施工など、設計・施工におけるデジタル技術の積極的な活用を進めてきたところである。
インフラ分野のDXは、これまでの i-Constructionの取り組みを中核とし、インフラ関連の情報提供やサービス(各種許認可など)を含めてDXによる活用を推進していく「インフラの利用・サービスの向上」と、建設業界以外(通信業界、システム・ソフトウエア業界など)や占用事業者を含め業界内外がインフラを中心に新たなインフラ関連産業として発展させる「関連する業界の拡大や関わり方の変化」の2つの軸により、i-Constructionの目的である建設現場の生産性の向上に加え、業務、組織、プロセス、文化・風土や働き方を変革することを目的とした取り組みである。
 
その施策の一つであるBIM/CIMは、 2023年4月1日以降に入札契約手続きを開始する原則として全ての直轄土木詳細設計(実施設計含む)および工事において、適用することとしている。
 
本稿では、これまでのBIM/CIMの導入に向けた取り組みと、今後の取り組みについて紹介する。
 

BIM/CIM実施状況

国土交通省では、業務については2012年度から、工事については2013年度から BIM/CIMの試行を進めている。
2022年度のBIM/CIM活用実績は994 件(業務549件、工事445件)となり、前年度の757件(業務483件、工事274件)を大きく上回り、BIM/CIMの活用が進んでいることが分かる(図-2)。

図-2 BIM/CIM活用業務・工事の推移
図-2 BIM/CIM活用業務・工事の推移

 
さらなるBIM/CIMの活用に向けて、2019年3月、i-Constructionモデル事務所(以下、モデル事務所)を10事務所、 i-Constructionサポート事務所(モデル事務所を含む)を53事務所設置した。
モデル事務所においては先導的に3次元モデルを活用し、各地方整備局等内のリーディング事務所として3次元情報活用モデル事業を推進しており、i-Constructionサポート事務所では地方自治体からの相談対応などを行っている。
2020年度にはモデル事務所として新たに3事務所追加し、取り組みを進めている。
各事務所におけるBIM/CIMの活用事例は「BIM/CIM事例集」として活用効果や課題をとりまとめ、公開している(図-3)。

図-3 モデル事務所の取り組み
図-3 モデル事務所の取り組み

 
 

令和5年度BIM/CIM原則適用の実施内容について

前述のとおり、2023(令和5)年度から原則として全ての直轄土木詳細設計(実施設計含む)および工事において、BIM/ CIMを適用することとしており、以下において取り組む内容を紹介する。
 

3次元モデルの活用について

BIM/CIMといえば、3次元モデルを思い浮かべる方も多いと思う。
これまでの BIM/CIMの取り組みにおいても試行事業などを通じて、3次元モデルの活用を中心として、検討を重ねてきている。
3次元モデルを有効に活用するに当たっては、活用目的を見据えた上で、3次元モデルを作成・活用することが効率的である。
令和5年度原則適用においては、3次元モデルの活用目的を「義務項目」と「推奨項目」に分け実施する。
「義務項目」については、原則として全ての直轄土木詳細設計(実施設計含む)および工事において活用することとし、「出来上がり全体イメージの確認」など、視覚化による効果を中心に、未経験者でも取り組み可能なものを設定している。
「推奨項目」については、業務・工事の特性に応じて活用することとしており、「施工ステップの確認」や「鉄筋の干渉チェック」など、大規模な業務・工事および条件が複雑な業務・工事について活用が有効である内容を一覧として整理し提示している。
提示した内容に限らず、生産性向上に資する内容については積極的に検討し、活用したいと考えている。
 
なお、設計図書は従来どおり2次元図面を使用し、3次元モデルは2次元図面を理解しやすくするための参考資料として取り扱うものである。
 

義務項目の概要(詳細設計)について

詳細設計においては、「出来上がり全体イメージの確認」、「特定部の確認」を活用目的として3次元モデルを作成・活用する。
 
「出来上がり全体イメージの確認」は、住民説明、関係者協議などの説明機会での利用や景観検討において、設計対象の全体の完成イメージを確認することを目的とするものである(図-4、5)。

図-4 遊水地完成イメージ
図-4 遊水地完成イメージ
図-5 砂防堰堤完成イメージ
図-5 砂防堰堤完成イメージ

 
「特定部の確認」は、一言でいうと2次元図面では分かりづらい箇所を3次元モデルで作成することにより、設計内容を確認するものである。
特定部とは例えば、複雑な立体形状の部分、地下埋設物・構造物や電線などの近接施工の部分、土木工事と設備工事など複数工種の取り合い部分などが該当する。
なお、鉄筋などの内部構造の干渉については、3次元モデル作成の手間が大きくなることから義務項目の対象からは除いている(図-6)。
 
3次元モデルの作成に当たっては、詳細度200(構造形式が分かるモデル)から詳細度300(主構造の形状が分かるモデル)を目安に活用目的に応じて必要な精度とする。
また、3次元モデルに付与する属性情報(部材などの名称、規格、仕様などの情報)についても、オブジェクト分類名(道路土構造物、橋梁などの分類の名称)のみ入力し、その他は作成者の任意で入力することとしている(図-7)。
 
前述のとおり、3次元モデルは参考資料という位置付けであり、活用目的の部分以外の箇所は、重要ではなく、受発注者ともに3次元モデル作成に過度な労力をかけないように留意して取り組んでもらいたい。

図-6 電線との離隔確認
図-6 電線との離隔確認
図-7 3次元モデルの詳細度
図-7 3次元モデルの詳細度

 

義務項目の概要(工事)について

工事における活用は、設計段階で作成された3次元モデルを閲覧することにより、2次元図面の照査、施工計画の検討に役立てるほか、現場作業員などへの説明に利用する。
なお、義務項目においては、3次元モデルの閲覧のみを対象とし、作成・加工などを伴うものは推奨項目としている。
特に、工事においては中小企業が多く、BIM/CIM(3次元モデル)に初めて取り組む者も多い。
3次元モデルの活用の第一歩として、義務項目を設定している。
 

推奨項目の概要について

推奨項目については、義務項目より発展した項目として、以下のようなものを例示している。
 
【視覚化による効果の例】
・歩行者、車などの視点からの視認性の確認(図-8)

図-8 交差点の視認性確認
図-8 交差点の視認性確認

・維持管理、保守点検などの作業スペース、点検通路などの確認
・官民境界、建築限界、地質(支持層、湧水帯)などを重ね合わせての位置関係の確認( 図-9、10、11)

図-9 桁下の建築限界の確認
図-9 桁下の建築限界の確認
図-10 トンネルと地質の確認
図-10 トンネルと地質の確認
図-11 杭と支持層の位置確認
図-11 杭と支持層の位置確認

・3次元モデル上に重機などを配置し、近接物の干渉など、施工に支障がないか確認(図-12)

図-12 建機の施工範囲の確認
図-12 建機の施工範囲の確認

・AR、VRなどを用いて、現地に完成形状などを投影して比較・確認(図-13、14)

図-13 ARと重ね合わせて確認
図-13 ARと重ね合わせて確認
図-14 埋設物を表示させて確認
図-14 埋設物を表示させて確認

・一連の施工工程のステップごとの3次元モデルにより施工可能かどうか確認
・3次元モデルで複数の設計案を作成し、最適な事業計画の検討
 
【省力化・省人化の効果の例】
・3次元モデル上で体積、面積、員数などの自動数量算出(図-15)

図-15 盛土の数量自動算出

・3次元モデルとGNSSなどの位置情報を組み合わせた施工位置の確認(図-16)

図-16 配筋位置の重ね合わせ
図-16 配筋位置の重ね合わせ

・コンクリートなどの打設日ごとに色分けし、施工手順の明確化や進捗確認に活用(図-17)

図-17 護岸工の打設日で色分け
図-17 護岸工の打設日で色分け

 
【精度の向上の効果の例】
・3次元モデルで日影、騒音などをシミュレーションによる解析(図-18)

図-18 日影の確認
図-18 日影の確認

 
【情報収集などの容易化の例】
・3次元モデルに写真、品質情報などを紐付け、情報を探しやすくする(図-19)

図-19 3次元モデルに情報紐付け
図-19 3次元モデルに情報紐付け

・アンカー、埋設物などの施工後不可視となる部分を3次元モデルで可視化
 
例示したもの以外にも、多様な活用方法があり、推奨項目を発展させていくことを予定している。
 

発注者によるデータ引き継ぎ

ここまで3次元モデルの活用を中心に記載しているが、3次元モデルに関わらず前工程のデータを後工程に引き継ぐことが重要である。
建設事業においては、事業期間が長く、また、調査・測量、設計、施工などの多数の関係者が協力し進めている。
その中心には発注者がおり、発注者が各受注者の成果を管理し、別の受注者に必要なデータを提供するなどデータマネジメントを担っている。
 
そこで、令和5年度BIM/CIM原則適用に合わせて、発注者として当然の責務ではあるが、業務・工事の契約後速やかに、発注者が受注者に設計図書の作成の基となった情報を説明し、受注者が希望する参考資料(電子データを含む)を貸与することを、説明に使用する資料の記載例も示した上で義務付けた。
業務成果が古い場合や、修正(変更、追加)が多数行われている場合であっても、最新のデータを漏れなく後段階の受注者に確実に共有することは非常に重要であり、データ共有がなされないことに起因する手戻りをなくしていきたいと考えている。
また、成果品を一元管理す る「電子納品保管管理システム」が、令和4年11月から受注者もアクセスできるようになり、オンラインによる成果品の貸与が可能となった。
受注者において成果品を検索し、必要な成果が取得できるようになったことで、CDなどの電子媒体の受け渡し
の手間や時間が削減され、作業の効率化が図られている(図-20)。

図-20 電子納品保管管理システム概要

 
 

今後に向けた検討

令和5年度BIM/CIM原則適用が開始したことを鑑み、BIM/CIMの実施状況やデータシェアリングの現状・あり方などについてフォローアップしていく。
また、さらなる活用の高度化や維持管理も含めた段階での利用など、モデル事務所などを通じて得られた知見を一般化し、より効率的な事業実施を目指している。
さらに、令和5年度では推奨項目としているものを令和6年度以降に義務項目に移行するなど段階的なレベルアップを図りたいと考えている。
 

生産性向上の可能性(発注者の視点)

建設事業全体における一連の建設生産・管理システムにおいて、発注者における主な課題(時間がかかる作業)として、「積算に必要な数量の確認」、「設計変更協議の内容確認」がある。
そこで、BIM/CIMを活用し、発注者の積算関係作業の効率化が図られれば、生産性向上が期待される。
詳細設計で求めている詳細度200から300では全ての施工プロセスをモデル化されるわけではないため、数量算出されない項目があるものの、数量算出作業の簡略化につながる可能性があることは分かっている。
 
将来的には、発注者が設定しなければならない項目を除き、自動的に数量算出作業が完了している状態を目指し、BIM/ CIMを活用した効率的な数量算出の検討やソフトウエアにおける自動数量算出機能の正確性の担保について調査をしていきたいと考えている。
 

中小企業などへの普及拡大

これまでBIM/CIM(3次元モデル)の活用は、大企業を中心に活用されており、だんだんと中小企業にも裾野が広がっているところであるが、まだまだ未経験者も多く、令和5年度原則適用をきっかけに初めて取り組む者も多くいる。
未経験の者も円滑に取り組めるように、国土交通省では研修資料を公開したり、各業団体などの講習会要請に応じたり、普及拡大に努めたいと考えている。
 
また、地方公共団体などに対して、発注関係者の集まる発注者協議会などの場を通じて国土交通省の取り組みを紹介するなど、連携して進めたいと考えている。
 
 

おわりに

最後にインフラDX、i-Construction、 BIM/CIMの取り組みの普及、進展を図ることで建設現場における生産性向上をより一層実感できる環境の整備を進めていきたい。
 
 
 

国土交通省 大臣官房参事官(イノベーション)グループ 課長補佐
潮 逸馬

 
 
【出典】


建設ITガイド 2024
特集1 建設DX、BIM/CIM
建設ITガイド2024


 



 


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