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2017年7月14日
はじめに当社の施工部門では、現在、全現場にて施工BIM導入を目指して展開中である。当社の施工BIMでは、着工前に設計図をベースとした「基本モデル」と活用目的に合わせて基本モデルに情報を追加した「詳細モデル」の2段階でモデルを作成している。この基本モデルは、複数の海外モデリング会社を活用したグローバルなモデリング体制にて実施している。こうしたモデリング体制を実現する上で、クラウド上の共有サーバーである「GlobalBIM®」を構築した(図-1)。 ![]() 図-1 このメリットとしては、複数オペレーターのコンカレントな分業によるモデリング期間の短縮とモデルデータの一括管理、情報セキュリティの確保が挙げられる。現在は、「Gl obal BI M®」上のみ使用可能なARCHICADライセンスを提供し、BIMソフトを持たない専門工事会社でも、モデルの閲覧および追加・修正が可能となった。 作成した基本モデルは、現場ごとの活用目的に応じて、必要な情報を追加し、業務効率化を図っている(図- 2)。 ![]() 図-2 その活用方法は、工事の条件に応じてさまざまである。中でも、BIMを用いた施工計画は、多くの現場で取り組まれており、定番化している。その他、建築設備間の総合調整や発注者・設計者との合意形成も多くの現場で実施している。また、BIMからの施工図作成に取り組む現場も増えており、着実に施工BIMが現場業務に定着しつつある。 施工計画での活用事例施工計画におけるBIM活用の目的は、「施工計画のPDCAを早く、正確に回す」ことで生産性と品質を向上することにある。入手後直ちに設計図ベースの基本モデルを作成、これに構台や足場など仮設計画をモデル化した「施工計画モデル」を利用し、計画の精度を高めている。 ![]() 図-3 初期検討では、モデル上に最適なクレーンの選定・配置、隣接工区との工事調整などを行い、大きな施工順序を決定し、また、掘削土量の把握や建方工区単位の部材ピース数をBIMモデルから集計することで、計画でのPDCAを回し、最適な工程・工区割などを素早く検討できた。 初期検討での施工方針決定後は、さらに詳細な施工ステップをモデルにより可視化しながら計画を進めた。複数工区を同時施工する工程であったため、クレーンなどの配置計画に加え、各工区間の動線およびヤードの確保をモデル化しつつ詳細検討している。さらに、詳細な作業手順・仮設を可視化することで安全面での不備がないかも確認している。 それぞれのフェーズでは、作成した「施工計画モデル」を常に現場事務所内、専門工事会社と共有し確認することが重要である。本事例でも、施工時の手戻りがないように全員が容易にイメージを共有でき、手順の改善を図る具体的な意見も出やすくなった。また、作成したステップを朝礼看板などに掲示することで、結果的に、翌日の段取りが良くなり工程の前倒しが可能となった事例も見られる(図-4)。 ![]() 図-4 施工計画にBIMを活用する場合、モデリングの時間をいかに短縮し、反対に考え検討する時間を確保できるかが重要である。当社では、より簡易にモデル化できるよう仮設材のライブラリを整備している(図-5)。 ![]() 図-5 このライブラリでは単に絵として配置するだけでなく、モデル内で各種の検討ができるような機能を盛り込んでいる。例えば、クレーンについては揚重姿勢に応じた定格荷重を表示することで、クレーンの配置検討や機種選定を効率化している。足場については、マウス操作による効率的なモデリングが可能である。 BIM施工図施工計画BIMに加え、ARCHICADを利用したBIM施工図の作成事例も増加している。作成する施工図も、躯体図や平面詳細図、天井伏図、展開図などに加え、総合仮設計画図、配筋納まり図、掘削計画図などの施工計画図など多岐に渡っている。図-6は、掘削計画図をBIMから作成した事例である。 ![]() 図-6 ここでは、躯体モデルを利用することで掘削範囲を自動作図するアドオンを開発し利用している。複雑な掘削形状も簡易にモデリング可能で、掘削計画図の作図手間を大きく低減可能である。今後は、さらに表現を工夫し作図効率を上げたBIM施工図として展開していく計画である。 ITツールとの連携近年、VRツールなど最新IT技術が手頃に活用できるようになってきており、今後活用がより一般化すると考えられる。当社でも発注者や設計者との合意形成に、積極的にVRツールや3Dプリンターの活用を進めている。特にVRツールは、より直感的に空間を理解する上で有効なツールである(図- 7)。 ![]() 図-7 おわりに2010 年より、施工部門を中心にBIMを展開し、特に、事前の綿密な検討によるリスクの回避と関係者間での合意形成力の向上に効果を挙げてきた。BIMのメリットを理解し、活用目的とモデリング内容を上手くコントロールしている現場も増加している。今後、ステップアップした施工BIMを展開するためには、現場におけるBIMマネージャの存在が必須となってくる。当社では、施工系社員のBIM教育として、若年層へはARCHICADの基本操作教育、中堅社員へは自現場のモデルを使った施工計画研修を開催している。特に、自現場のモデルを使った施工計画研修は、操作習得の上で非常に有効である。 ![]() 図-8 ![]() 図-9 鹿島建設株式会社 建築管理本部 BIM推進室 Gr長 安井 好広
課長 吉田 知洋
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2017年7月10日
BIM連携積算の現状まず、最初は筆者の知る限りにおいてBIMによる積算連携の現状から話を始めたいと思う(※BI Mによる積算連携を以降「BIM連携積算」と呼ぶ)。 BIM連携積算を積算業界や積算技術者から見た場合・積算事務所の場合 BIM連携積算実運用への課題点とメリット以下に実運用へ移行していくための主な課題点を列記する。 BIM連携積算でよくあるモデリングの問題点以降、実務でよく見られるモデリングの問題点など実例をもとにいくつか挙げてみる。 ![]() (代用入力:例) ![]() 以上の内容などで代用入力の回避方法は、そんなに手間がかかるものではない。一例をあげれば要素分類を連携未対応で登録するなどの手法で簡単に回避できる。これらの回避方法はBIMツールごとで若干差異はあるが、代表的な回避方法を以下に示す。 ![]() しかしながら、設計側に積算連携などのために余分な負荷が出ることは避けなければならないので、弊社では最小限の約束ごとを取りまとめたものを事前に作成してお示ししている。これらをモデリングの開始前に説明して注意してもらえれば、かなりの割合で連携の不備が解消できる。 次に、これらの注意点を取りまとめた事前摺合せシートを紹介する。 ・BIM連携積算事前摺合せシート 以下に示すBIM連携積算事前摺合せシートの例は、積算業務で最も処理時間がかかる内部仕上積算を対象に取りまとめたものである。モデリングの全てに対して属性情報など設定方法の約束事を決めるのは難しい面もあり、重要な内容から優先度を付けて提案している。下記の摺合せシートで、ランクAAとランクAに関しては、積算連携などにとっても重要な内容となるので、モデリングの際に必ず入力してもらいたい項目である。 下記に関して再度補足しておくが、これらの約束事はなにも積算連携だけを考えた場合のことではなく、他のシステムとの連携も含めてBIMツールで作成された設計データをいかに有効に活用できるかという観点から取りまとめた内容となっている。確かに欲を言えば、ランクBやランクCまで入力できていれば自動積算にかなり近づいてくるが、設計者(モデラー)側にかなり負荷が増えることとなる。 ![]() ダイレクトリンク機能について冒頭に述べたが、弊社ではこれまでBIM連携積算システムを開発するに当たり、国際標準の「IFC」に対応できることを前提として開発してきた。確かに「IFC」は、国際的に一定の規約で定められた中間ファイルを使うので、デファクト・スタンダードとなり得る連携手法ではあるが、日本で開発されたものではないので、日本の建設生産にとって全てが使いやすいものではない。 今後の展望について前述した課題点にもあるように、BIM連携積算で活用できるBIMデータを入手できる機会がまだまだ少ないので、現時点で積算事務所や積算技術者が感じるBIM連携積算に取り組む必要性はさほど大きなものではない。しかしながら、今後は干渉チェックや施工管理に使用するなど多方面での使用事例がどんどん増えてくるのは確実である。それに伴い、実務でもBIMデータが入手できる機会が増えてくるものと思われる。 株式会社 日積サーベイ 代表取締役 生島 宣幸
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2017年7月4日
当社の情報化推進の経緯日本で2009年に「BIM元年」と認識されてから、建設業界の設計、施工、保守運用の各段階でBIMの活用が進んでいる。各段階で使われ方はさまざまだが、当社のように設備工事を主力事業とする会社では、特に施工段階において活用範囲が多い。20世紀の初頭に建物に機械空調設備が導入された頃から、施工の源となるドキュメントは手計算の技術計算書であり、手書きの施工図であった。当社では、ワークステーションやPCが建設会社の母店だけでなく、現場に普及し始めた1980年代半ば頃から、現在の「BIM」という言葉がない時代に、それと同様なコンセプトで技術計算書や施工図を手作業から変革させるための自動計算ツールとCADの開発に取り組んできた。1990年代前半には、当社の施工する物件のほぼ全てにおいて設備CADが導入され、現在は(株)ダイテック社製のCADWe’ll Tfasを使用している。技術計算は静圧、揚程、消音計算のほぼ100%を自社開発ソフトで行っており、その他熱負荷計算、気流・温湿度シミュレーションは自社開発と市販汎用ソフトを合わせて利用している。 ![]() 図-1 手書き図面とCAD図面 ![]() 図-2 手計算とPCソフト計算 設備工事会社のBIMとは設備工事会社の主な業務は、「設計図書の情報を基に、施工図や技術計算の作成を通じて施工内容を確定し、施工計画を立案する。この計画を基に施工管理を行い、最適な設備を提供する」ことである。課題としては、工期中の設計条件の変更対応のために、施工関連図書の修正や客先承認に時間がかかり、施工がスムーズに進まないことなどが挙げられる。従ってこれらの業務にBIMを活用する目的は、第1に顧客に対する説明力を向上することによってタイムリーな合意形成を行うこと、第2に現場での設計施工段階におけるBIMモデルの情報連携度を高めることにより、品質と業務効率を向上させること、第3に竣工引渡しの後の運用段階で活用できるモデルを提供することである。特に、施工の源となり、多くの情報量を持つ施工図=CADデータとの連携が重点課題となる。 現場でのBIM活用①建築・設備CADデータの重ね合わせによる干渉チェック ![]() 図-3 干渉チェック ②3D表現によるメンテナンス確認、設備配置確認などの合意形成 建築設備は運用後のメンテナンスが必要で、特に機械室や天井内の機器や装置、弁類やダンパー類の点検や操作性が品質に大きく影響する。設備CADには3D表現だけでなく、動画作成などの機能が豊富で、顧客、特に施設管理に携わる方への説明には非常に効果が高い。さらに日常点検だけでなく将来の機器の入れ替えなどの更新計画に対しても納得度の高い説明資料を提供できる。 ![]() 図-4 メンテナンス性の確認 BIMモデルと業務の連携①BIMモデルを利用した技術計算 ![]() 図-5 自社開発技術計算ソフト ②3次元レーザースキャナの活用 これまで土木やプラント系の施設での利用が主であったが、建築分野でも適用が進んできた。建築設備は、15年から30年の間で更新・改修されるものが多く、十数年かけて部分改修する場合もある。改修を反映した施工図が完全に整備されている事例は少なく、新たな改修計画の初段階で必要となる現況図の作成のためには、手計測による現地調査が普通であった。 当社では、主に改修物件での施工図作成を目的として3Dレーザー計測を2007年に初めて試行した。当時は点群処理ソフトの機能やモデル化で課題が多かったが、スキャナとソフトの性能向上に合わせ、2013 年より本格的に取り組んでいる。 モデル化は、点群処理ソフトの円柱抽出機能から、配管属性を持つモデルに変換するソフトを自社開発し、モデル化作業の効率化を図っている。また、機械室だけでなく天井内設備の改修にも利用しており、支持材や他設備など、通常の施工図では反映されない構造物の容易な把握により、配管やダクトルーティングの精度が増した。またBIMモデルと点群データの組み合わせで作成した3D資料は、改修計画や作業説明に非常に有効となる。 ![]() 図-6 3次元レーザー計測と配管変換ソフト ③VR技術との連携 ゲームの世界等で進化しているVR技術は、住設の分野では既に商業ベースで利用されている。業務用建物でも設備の機械室メンテルートやスペースの確認、室に取り付けられるスイッチ、センサー類、制気口の位置やデザインの合意形成への利用価値は高い。当社ではVRシステムを導入し、若手社員への施工図教育、特にメンテスペースの確認や施工計画のチェックのために使用している他、客先合意のためのプレゼンツールとしても展開している。 ![]() 図-7 VRシステム 今後の展開企画・設計、施工、運用・保守と、BIMは建設の全てのフェーズでの利用が期待されているが、施工面においてはまだまだ発展途上にある。BIMモデルと強固に連携して施工計画書類を自動作成できる機能を持つソフトウェアと、建設作業における施工管理IT利用とBIMを結びつけるツールの開発、すなわちBIM周辺の技術変革が、施工のあり方を変革できると考えている。施工会社はここに注力していくべきである。 ![]() 図-8 BIMの情報連携 高砂熱学工業株式会社 技術本部 プロダクトイノベーションセンター BIM推進室
室長 山本 一郎 担当部長 今野 一富 メンバー 鈴木 崇浩、伊東 匠
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2017年6月30日
はじめに平成24 年に始まったCIM試行も5年が経過し、この春からは本格導入が予定されています。この期間に、施工会社は効率的なモデリング方法や共有方法、また費用対効果の高い実施方法などを試行錯誤してきました。 3DPDFとは3DPDFは、3Dモデルを画像やテキストと同様にひとつの情報としてPDF内に埋め込んだもので、無償のPDFリーダで閲覧、操作可能なPDFファイルです。また3DPDFは特定の企業のフォーマットではなく、国際標準化機構(ISO)が認証した国際規格ですので、長期保存を前提とした納品データとしても安心感があります(図-1)。 ![]() 図-1 スマートスケープ社のHPより 特長としてその扱いやすさがあります。Windowsパソコンにおいて世界でもっともインストールされている無償の文書閲覧ソフト AcrobatReaderで動作するので、3Dモデルを閲覧操作するために特定のソフトウェアをインストールする必要がありません。また3DCADのネイティブファイルに負けず劣らず「軽量」のため操作性も良いです。 最近は3DCADから3DPDFに出力できたり、3DCADにアドオンインストールして利用するアプリケーションもサードパーティーからリリースされています。 アドオンソフトのひとつ、スマートスケープ社が提供する「3DPDF forNavisworks」はその製品名のとおり、オートデスク社の3Dモデル統合ソフトウェアNavsiworksから3DPDFに変換できるアプリケーションです。Navisworks側で保存したビューや属性情報も3DPDFに変換されるためCIMモデルの納品データとして利用可能です。 Navisworksのネイティブファイル(nwd)はオートデスク社のHPから無償のフリーダム版をインストールすれば誰でも利用可能ですが、特に発注者は無償とはいえ特定のソフトウェアをダウンロード・インストールすることは簡単ではありません。3DPDFだと発注者のパソコンにインストールされているAcrobat Readerで閲覧できるので手軽に利用が可能です。 3DPDFファイルを開くとビュー画面に図のようなメニューが表示されます。その中にある「3Dものさしツール」を使うと3Dモデルに対して各種計測を行うことができます(図-2)。 ![]() 図-2 3Dものさしツール 計測を行う前に、スナップ設定と測定タイプを選択します。選択可能な【スナップ設定】は画面左から、①エッジの終点 ②線のエッジ ③円のエッジ ④シルエット ⑤面、【測定タイプ】は左から、①3D ポイント間計測 ②3D 垂直寸法 ③3D 円形寸法 ④3D 角度測定、となります。それぞれ複数の選択が可能です。 もはや計測機能としては、3DCADと同等の機能と言ってもよいのではないでしょうか(図- 3)。 ![]() 図-3 スナップ設定と測定タイプを選択したら、3D画面で対応する点や面を指定するだけです。寸法線は3DPDF内の視点に登録されますので、一度PDFを保存すれば次に開いた時にも数値を確認することができます。 橋梁3Dモデルの場合、図-4のように(1) 2 点間距離、(2) 排水管の中心と主桁との距離、(3) 橋台の橋座面の角度、(4) 落橋防止装置のキャップの直径、(5) 桁端の遊間などの計測が行えます。 ![]() 図-4 ![]() 設計部門で作成した3Dモデルを施工部門で利用する場合に、ちょっとした寸法の確認をするのも簡単に行えます。 CIMモデルとしての3DPDF3DPDFをCIMモデルとして利用するためには属性情報を扱えることが必須です。「3DPDF for Navisworks」を利用すると、Navisworksで付与された属性情報も3DPDFに変換されますが、属性の確認方法としては3Dモデルから部材をクリックすることになり、検索機能もありません。 CIM-PDFでは何ができるのか?CIMモデル(3D形状+属性)を3DPDFに変換したデータで、無償のAcrobat Readerで閲覧、属性検索が可能な、属性編集機能&オンラインヘルプ機能付の3DPDFファイルです。 ![]() 図-5 CIM-PDFの使い方CIM-PDFの作成はNavisworksで行います。アドオンソフトの「3DPDFfor N avisworks」を実行して、今回開発したテンプレートPDFファイルを指定するだけです(図-6)。 ![]() 図-6 作成したCIM-PDFをAcrobat Readerで起動すると下図のように、画面右側に専用のメニューが表示されます。これを「CIM-PDFメニュー」と呼称します(図-7、8)。 ![]() 図-7 ![]() 図-8 CIM-PDFではアニメーション再生、属性情報の表示、検索、属性情報の追加などが可能です。順に解説していきます。 (1)アニメーション再生 アニメーション再生ボタンを押すと、登録されている視点を先頭から順に2秒間隔で表示します。 点検動線として視点を登録しておくと、ウォークスルーアニメーションとして利用できます(図- 9)。 ![]() 図-9 (2)属性参照(部材クリック) 部材選択ボタンを押下して、3D画面上で部材をクリックすると登録済みの属性情報をポップアップ画面に表示します(図- 10)。 ![]() 図-10 (3)属性参照(検索) 検索条件を設定後にボタンを押下すると、検索結果が3Dモデルにハイライト表示されます。マウスでハイライトされた部材をクリックすると登録済みの属性情報がポップアップ画面に表示されます。例えば鋼橋の場合、板厚や材質ごとに検索が可能になります(図- 11)。 ![]() ![]() 図-11 ポップアップ画面の属性値にファイル名がある場合は、クリックすると該当ファイルが起動します。3Dモデルにひも付けられた設計図面や施工管理の帳票や写真などがクリックするだけで開きます(図- 12)。 ![]() 図-12 下図(図-13)は属性管理ソフトとCIM-PDFの属性を比較した例です。 ![]() 図-13 (5)属性の追加保存 施工管理や現場で得られた出来形記録などをAcrobat Readerを利用して3Dモデルに紐付けることが可能です。3Dモデルの名称と紐付けるファイル名(PDFや画像ファイルなど)を CSVにまとめてCIM-PDFメニューにある属性追加ボタンで指定するだけです。追加された属性名と属性値はその後の検索にもヒットします(図-14)。 ![]() 図-14 (6)検索結果のCSV保存 Acrobat Pro DCでCIM-PDFを開いて、属性検索(板厚、材質)を行った場合、同じCIM-PDF内に添付ファイルとして検索結果のCSVファイルが保存されます(Acrobat ReaderではCSVの保存はされません)。検索結果のCSVファイルは属性を新規追加するときの下敷きとして利用すると便利です(図- 15)。 ![]() 図-15 属性モデルの専用ソフトウェアとCIMPDFの機能比較は下表(表-1)の通りです。 ![]() 表-1 CIM-PDFの機能面での課題として、 ・道路中心線(3Dポリライン)、テキスト、テクスチャ(地形等)対応 ・属性のCSV一括出力機能の追加などがあります。これらは今後順次対応予定です。 また、CIM-PDFはCIMモデル管理システムとしてNETIS登録を申請中(執筆時点)で、橋梁以外の構造物(コンクリート橋、土工、ダム、河川、トンネルテンプレート)の対応は検討中です。 おわりにCIM-PDFは弊社のCIM支援サービスのひとつとして提供を行っていますが、テンプレートの販売も開始する予定です。CIMモデルは設計、施工、維持管理の各工程で活用されてこそ効果を発揮するものです。無償のPDFリーダで利活用できるCIM-PDFを新たなCIMツールとしてご提案していければ幸いです。 オフィスケイワン株式会社 保田 敬一
建設ITガイド 2017 特集1「i-Construction時代の到来とCIM」 ![]() |
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2017年6月24日
施工管理での活用HMDで仮設の安全管理 ![]() ヘッドマウントディスプレーを装着した技術者(写真・画像:一二三北路) 現場では、作業を担当する職人がOculusを着けて現場内をさまざまな角度で見回し、危険個所や危険作業がないかを作業前に確認している。視点の移動は自由自在だ。足場の下から内部をチェックしたり、上空から見下ろしたりと、まさにあらゆる角度から現場をチェックできる。 ![]() 実際に組まれた足場 ![]() 実物大で立体視できる仮設材 また、施工段階に応じて水管橋の架設状態を変えたり、クレーンでの架設作業を再現したりすることも可能だ。 ![]() VRの作成に使われた3Dモデル VRの作成には、ゲーム開発ソフト「Unity」を使う。BIMやCIMのソフトだと、データが重くなるため、Oculusの動きにスムーズに追従できないためだ。VRの制作作業は岩崎(札幌市)が協力した。このVRシステムは工事関係者の間で話題となり、現場には多くの見学者が訪れたという。 流体解析結果の確認VRで風の流れを体感 ![]() CFDソフト「FlowDesigner」で都市内を流れる風の動きを解析し、見える化した例 (資料:日建設計、アドバンスドナレッジ研究所) これまでもオフィスの室内での温度や風の流れは、CFD解析で求めることができたが、実際にそのオフィスで働いてみると、吹き出し口の付近が冷房で寒すぎることが分かり、風の流れを変える板を後付けしている例をよく見かける。 その点、VRを使ってオフィス内をウォークスルーしながら、風が強い場所はないか、寒すぎる場所はないかと確かめたり、その風はどこの吹き出し口から来るのかをイメージしたりしながら検討できる。 ![]() オフィス内の温熱環境を見える化した例 ![]() 寒すぎる場所があったとき、その空気はどこから流れてきたのかもVRなら実感しやすい さらに面白い機能として、3次元の街並みの中を風になって飛ぶ気分も味わえる。VRコンテンツの視点を、“空気粒子”とともに動くようにしたものだが、VRならではのユニークな飛行体験ができそうだ。 改装工事のシミュレーション点群の中を実物大でウォークスルー ![]() ヘッドマウントディスプレーを着けると、仮想空間の中を実物大でウオークスルーできる(写真、資料:ラティス・テクノロジー) 例えば頭を左に向けると左の景色が、上を向くと天井が見えるといった具合だ。そして、設備の足場を上ると、眼下には工場の風景が広がる。仮想の手すりごしに下をのぞき込むと、どのくらいの高さなのかも実感できる。 さらに実感的なのが、現実と仮想空間の融合だ。AR(拡張現実感)用マーカーを張り付けた荷物を積んだ台車を用意しておくと、それと同じ大きさの台車が目の前に映し出される。実物の台車の取っ手と、仮想の台車の取っ手は、同じ高さ・大きさで見えるようになっており、仮想の取っ手をつかむと実物の感触や重さを感じることができるのだ。 まさに現実と仮想が融合した世界だ。そして実物の台車を押していくと、目の前には工場の床や障害物となる柱の補強材などが見えて、どれくらいの余裕で台車が通過できるのかを、本物の建物に行ったかのように体感することができる。 ![]() 障害物の中を通過する仮想の台車。通過する際の余裕を実感できる ![]() 点群とリアルサイズで表示した作業員 施工管理の教育システムVRで施工ミスを再現 《大林組》 ![]() パソコンやHMD、コントローラーなどからなる「VRiel」のシステム 実物のモックアップの代わりに、BIMソフトで作ったデジタルモックアップを使い、不具合箇所を再現した。受講者はHMDを装着し、VR画面上に表れる鉄筋配置の不具合などを探すことで、実物同様の研修ができる。 ![]() VRで再現した鉄筋のモックアップ 受講者は工事現場を巡回して不具合個所をチェックするのと同じように、VR上を移動したり、首を上下左右に動かして見回したりすることで、工事現場と同じように検査する感覚が身に付く。 実際の施工管理では、構造図や細かい仕様が書かれた標準配筋図と、現場とを見比べたり、寸法を確認したりしながら、不具合個所を発見するスキルが必要だ。こうした作業を再現するため、施工管理用の図面や計測用のコンベックスなども全てVR上で使えるようなっている。 ![]() 施工管理用の図面もVR画面上に表示できる(資料:大林組) 2m四方ほどのスペースがあれば設置できるので、会議室や現場事務所などさまざまな場所で研修を受けることができるのも便利だ。鉄筋工事の他、仕上や設備などの品質管理、安全管理など、幅広い教育にも使える。 住宅のバーチャル展示場壁と床のスクリーンに未来の住宅を再現 ![]() 壁や床にスクリーンを設置する(写真:コンピュータシステム研究所) ![]() そこに住宅の3Dプランを映写すると住宅展示場に早変わり この映像を、3Dメガネを着けて見ると、目の前には住宅の内装やシステムキッチン、家具や家電などが実寸大の大迫力で広がる。 ![]() 3Dメガネを着けると、コントローラーで住宅内部を自由にウオークスルーできる 手を伸ばすと触れるのではないかと思うほど抜群の臨場感があり、お施主さんもビックリする。コントローラーを使って、ゲーム感覚で住宅内をウォークスルーできる楽しさもある。 ![]() まるで触れるのではないかと思うほどのリアリティーが味わえる 同社は2016 年6 月、大阪市天王寺区にある大阪営業所に「ALTA forVR」を設置したショールームをオープンさせた。スクリーンは4面タイプを備えたよりリアルで本格的なシステムを設置している。 ![]() 4面スクリーンを備えた本格バージョンの「ALTA for VR」 未来のVRはどうなるのか?人間にあらゆる体験を提供するマシンとして進化 ![]() 気流解析と連動し、上に付けたファンにより実際に風を感じられるVR装置の例。フォーラムエイト東京本社にて また、人間の反応を、VRの世界にフィードバックするための入力装置も、さまざまなものが開発されてくるだろう。よりリアルになったVRの用途としては、(1)めったに起こらない事故や災害の疑似体験マシン、(2)リスク回避のためのトレーニングマシン、(3)未来や昔の生活環境を体験するタイムマシン、(4)現実ではなかなか味わえない夢をかなえるマシンなど、無限の使い方ができそうだ。 VRは人間の予知能力を高め、現実社会にうまく対応する力を磨き、想像力を育てるマシンとして発展していくことを願っている。 筆者プロフィール家入龍太(いえいり・りょうた) 建設ITジャーナリスト 家入 龍太
建設ITガイド 2017 特集3「建設ITの最新動向」 ![]() |
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