建設ITガイド

トップ >> 特集記事 特集記事

書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

現場向けタブレット勢揃い! ~過酷な条件下での使い勝手を検証~《その1》

2014年3月17日

 

山政睦実×現場主義
http://const.livedoor.biz/

 

はじめに

2008年に日本でもApple社の「iPhone」が発売され、2010年5月にはタブレット端末である「iPad」が発売されたことをきっかけに、スマートフォンやタブレット端末を持つ人が非常に増えています。
 
さらに、最近大手建設会社を中心に、タブレット端末を一括導入する会社のニュースを良く聞くようになり、いよいよ建設現場でも浸透し始めてきました。
 
端末市場においても、昨年には Android本家のGoogle社から7インチタブレットNexus7や10インチタブレットのNexus10が発売され、11月にはApple社から7.9インチのiPad miniが、また年末には満を持した形でAmazon社から
Kindle Fireなどが続々と発売されています。
 
さらに、過酷な条件下にさらされる建設現場向けのタブレット端末として、Android OS搭載したパナソニック社の「TOUGH PAD(タフパッド)」や都築電気社の「CAMELUS(キャメラス)」などが発売され、各種展示会などで展示されている試作機も含めて、さまざまな端末が今後も登場してくることでしょう。
 
今回は昨年登場した2台の建設現場向けタブレット端末について、iPad RetinaディスプレイモデルやNexus7、Windows8のタブレット端末と比較しながら、使い勝手を比較してみました。
 
比較する5機種の基本的性能一覧(2012年11月現在)
 

頑丈な端末、TOUGH PAD(タフパッド)

TOUGH PAD
パナソニック社から登場した「TOUGH PAD(タフパッド)」、建設現場内でよく使われているタフネス性能を重視した「TOUGH BOOK(タフブック)」と同じシリーズで、その名の通り頑丈(タフ)構造になっているタブレット端末です。
120cmからの落下試験にも合格し、防塵・防水性能もIP65(防塵性規格:粉塵が中に入らない、防水性規格:あらゆる方向からの噴流水による有害な影響がない)という高い性能を持っています。
 
OSにはGoogle社のAndroid4.0を採用していますので、GooglePlayで配布されている多くのアプリを利用することができます。
また、microSDカードスロットを備えていますので、本体に差し込むことにより、簡単にカード内のデータを端末で開くことができます。
もちろん、現場のネットワークに接続すれば事務所のサーバー内にあるデータを現場で見ることもできます。
さらにいつでもネットに接続可能な3G通信モジュール内蔵モデルも用意されています。
タフパッドを雨の日に実際に屋外で使用

 
タフパッドを雨の日に実際に屋外で使用してみました。
 
雨の量は10mm/h程度だったので、ちょうど現場作業を中止にするかどうか程度でしたが、タフパッドは全く問題なく使うことができました。
液晶画面に雨が直接当たっていましたが、指での操作も問題なくできます。
 
 
 

端子カバー

端子カバー


本体には、電源接続部やmicroSD挿入口、USB端子、HDMI出力端子などを備えていますが、それぞれの端子部には、防水用のゴムパッキンを備えたカバーがついていて、これによって高性能な防塵・防水性を確保しています。
 
本体の重さは約1kgあるため、長時間持って使用するには、少し重たい感じがします。
欲を言えばネックストラップなどが付いていると操作するにも楽ですし、持ち運びにも便利になるでしょう。
 
カメラもフロントとリアの両方に装備し、フロントは200万画素、リアは500万画素の画素数を持ち合わせていますので、テレビ会議に利用したり、現場の状況写真を撮影するには十分な性能を持っています。
 
デジタイザーと背面ホルダー

デジタイザーと背面ホルダー


ディスプレイは通常のタブレット端末と同じように、マルチタッチに対応したタッチパネルになっているので、指での操作のほか、デジタイザーにも対応しています。
これなら現場で軍手を着けている時でも、デジタイザーペンを利用して細かい操作を行うことができます。
デジタイザーペンは背面にあるホルダーに格納することができるので、必要なとき取り出して便利に使うことができます。
 
 
 
直射日光下での視認性 (左:Nexus7、右:タフパッド)

直射日光下での視認性
(左:Nexus7、右:タフパッド)


屋外で利用したときに画面が見やすいように、約500cd/㎡の高輝度液晶を搭載し、さらに反射対策としてAR(Anti-Reflection)反射防止処理が施されていますので、直射日光下でも画面が視認できないということはありませんでした。
 
タフブックなどでパナソニックが長年培ってきたタフネス構造を搭載したタフパッド、今後この手の端末が多く登場してくる中で、本命といえるタブレット端末になることでしょう。
 
 
 
 
 
 
 

iPadに防水ケース

そのままでは全く防水性のないApple社のタブレット端末「iPad(アイパッド)」シリーズですが、本体を建設現場など過酷な条件でも利用できるようなさまざまなケースが登場しています。
今回は、防水ケースをiPadに装着して、先ほどのタフパッドと一緒に屋外で使用してみました。
 

iPad防水ケース

iPad防水ケース


今回、実験に使用したiPad用の防水ケースはこちら。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
三重のジッパー

三重のジッパー


この防水ケースは、防水性能IPX8(防水性規格:継続的に水没しても内部に浸水することがない)の性能を持っています。
iPadを挿入する部分は、三重のジッパーになっており、水の浸入を防ぐ強固な構造となっています。
 
 
 
 
 
 
 
リアカメラ部とイヤホン端子

リアカメラ部とイヤホン端子


フロントカメラの使用はもちろん、リアのカメラ部も防水ケース内に入れている状態でも撮影ができるように透明になっています。
さらに、イヤホン端子は、ケースの外側まで防水性を保ったまま延長されているため、イヤホンやスピーカーを接続することも可能です。
 
この防水ケースには、ネックストラップが付属されているため、使用時は首に掛けたり、持ち運び時は肩から掛けることで、本体を落下させるリスクを減らすことができます。
 
 
 
雨天での使用

雨天での使用


タフパッド同様に、雨の中へ防水ケースに入れたiPadを持って行ってみました。
 
防水ケースに入れたiPadは、今回比較している端末としては、IPX8という最上級の防水性能を持っているため、雨天の屋外でも全く問題なく使用することができます。
操作性も問題なく、指に画面がついてくる感覚のままでした。
 
 
 
 
シャワーにて防水性検証

シャワーにて防水性検証


さらに、バスルームにて、シャワーでの直撃実験を行ってみました。
防水ケースに入っていることにより、シャワー直撃の影響は全くなく、さらに指での操作も問題なく行うことができました。
 
防塵・防水性のないiPadですが、防水ケースに入れることにより、高い防水性を持った端末にすることができましたが、耐衝撃性を備えたわけではないので、落下や接触などには注意しなければなりません。
また、充電は毎回本体をケースから出さないとできないため、ケースへの入れ替え作業が発生し、不便さが残ります。
 
 
 
 
 
現場向けタブレット勢揃い! ~過酷な条件下での使い勝手を検証~《その1》
現場向けタブレット勢揃い! ~過酷な条件下での使い勝手を検証~《その2》
現場向けタブレット勢揃い! ~過酷な条件下での使い勝手を検証~《その3》

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設ITの最新動向」
建設ITガイド2013
 
 



施工パッケージ型積算方式の概要と積算の対応《後編》

2014年3月11日

 

一般財団法人 経済調査会
積算技術部技術調査室長
吉沢 毅

 

施工パッケージ型積算方式の積算方法

積算単価への補正

施工パッケージ型積算方式における積算作業とは非常にシンプルであり、標準単価を積算単価に補正することが積算作業の大部分を占めています。
補正式のイメージは前述の通りですが、実際に活用される補正式を図-3に記載しました。
 

図-3 実際に活用される補正式

図-3 実際に活用される補正式


標準単価から積算単価への補正に用いる代表機労材規格は、機械では最大3規格、労務では最大4職種、材料では最大4規格、市場単価では最大1規格が採用されます。
 

補正の具体例
【基本的な補正例】

標準単価から積算単価への補正事例として、アスファルト舗装工 表層(車道・路肩部)【45~55mm・1.4m以上・密粒度AS20・タックコートPK-4・標準単1,484円/㎡】について、積算単価【名古屋単価(H24.10)】に補正する計算を、次の通り実施しました。
 

補正例 1)アスファルト舗装工[基本的な補正]

補正例 1)アスファルト舗装工[基本的な補正]


この補正式では、機械・労務・材料の東京(H23.9)と名古屋(H24.10)の価格比を、表層(車道・路肩部)における機械、労務、材料のそれぞれの構成比に応じて反映させることによって、標準単価を積算単価に補正しています。
 

【労務費等の割増への対応】

豪雪地域や夜間等の特殊条件の割増例として、アスファルト舗装工 表層(車道・路肩部)【45~55mm・1.4m以上・密粒度AS20・タックコートPK-4・標準単価1,484円/㎡】について、積算単価【名古屋単価(H24.10)】の労務費構成部分に対して20%の割増を施す事例を以下に実施しました。
名古屋(H23.10)の労務単価に1.2を乗じた単価を用いて補正を実施しています。
 

補正例 2)アスファルト舗装工[労務費の割増]

補正例 2)アスファルト舗装工[労務費の割増]

【代表機労材規格以外への対応】

アスファルト舗装工 表層(車道・路肩部)の代表機労材規格には再生アスファルト混合物は設定されていません。
代表機労材規格と一致しない規格を使用する場合、積算基準書に記載された類似規格の機労材構成比を適用します。
再生アスファルト混合物を使用する場合は、平均幅員と標準締固め後密度が一致する機労材構成比を採用します。
 
次の事例は、アスファルト混合物について密粒度AS20の代わりに再生密粒度AS20を適用したものです。
積算地区のアスファルト混合物の材料単価に再生密粒度ASの単価を採用し、それ以外に採用する単価は、密粒度ASと変わりません。
 

補正例 3)アスファルト舗装工[代表機労材規格以外]

補正例 3)アスファルト舗装工[代表機労材規格以外]

課題

施工パッケージ型積算方式では積上げ積算方式のような下位代価表が存在しないため、設計書は簡素化されました。
しかし、ここで挙げた3つの事例のように、積算単価への補正については、必ずしも簡素とは言い難く、これを手計算で実施するのは非常に困難と言えます。
また、積算単価への補正を表計算ソフトで対応することも考えられますが、代表機労材規格が多岐にわたることや、施工パッケージが今後も拡大される予定であることからも、推奨し難いものと思われます。
 
 

まとめ

ユニットプライス型積算方式と同様に施工パッケージ型積算方式は、受発注者双方の積算労力の軽減等を目的と
したものですが、その目的を達成するためには、積算ソフトを活用することが前提とされたものと考えざるを得ません。
受発注者双方に積算労力の軽減をもたらすために、施工パッケージ型積算方式に対応した積算ソフトの普及が待たれます。
 

【主な参考文献】

●「施工パッケージ型積算方式の解説」平成24年6月(一般財団法人経済調査会)
●「経済調査研究レビューVOL.11」平成24年9月(一般財団法人経済調査会)

【主な施工パッケージ型積算対応ソフトウェア】

●土木積算システム『メビウス ZERO』吉備システム(株)
直感性に優れた画面作りになっており、パッケージ化された単価の内訳構成を「機械経費」「労務費」「材料費」で区分することにより、内訳構成を明確に把握でき、さらに計算式や単価・金額の変更、さまざまな詳細設定が可能である。
帳票印刷にも対応しているので、施工パッケージ内訳構成の出力・印刷が可能であり積算業務の負担軽減が期待できる。
 
●土木積算システム『ATLUS REAL』(株)コンピュータシステム研究所
施工パッケージの構成(機・労・材)および計算式を確認しながら算出が可能。
また、機・労・材の構成比率の編集や基準単価・標準単価の入替・編集など詳細設定が行え、出力・印刷も可能。
さらに従来、機労材構成表にはない数量を構成比・単価比から参考値として算出が可能。
算出した参考数量は要素ごとの集計や実行予算作成等に活用可能である。
 
●土木工事積算システム『GaiaRX Ultimate』(株)ビーイング
施工パッケージ型積算方式「積算単価計算」機能を搭載し「施工パッケージ型積算方式」の補正計算式を用いた積算単価計算および補正計算式を実際に画面で確認ができる。
また、対応工種の各代表機労材規格には数量の概念はないが、標準単価表の値から推測される数量を参考値として表示可能。
その参考数量を利用して数量の拾い出しが可能になるため、実行予算書の作成など利益計画の策定に効果を発揮する。
 
 
 
施工パッケージ型積算方式の概要と積算の対応《前編》
施工パッケージ型積算方式の概要と積算の対応《後編》

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設ITの最新動向」
建設ITガイド2013
 
 



施工パッケージ型積算方式の概要と積算の対応《前編》

 

一般財団法人 経済調査会
積算技術部技術調査室長
吉沢 毅

 

はじめに

国土交通省では、受発注者双方の積算労力の軽減等を目的とした「ユニットプライス型積算方式」を平成16年度より一部の工事で試行してきました。
しかし、「ユニットプライス型積算方式」に対しては、価格の妥当性への懸念、価格の透明性確保や弾力的な変更等の課題が指摘されてきたところです。
そこで、「ユニットプライス型積算方式」の課題を改良した新たな積算方式として『施工パッケージ型積算方式』が、平成24年10月1日以降に入札を行う土木工事(港湾空港関連を除く)から試行導入されました。
 
本稿では、施工パッケージ型積算方式の概要と積算の対応についてとりまとめました。
 
 

施工パッケージ型積算方式の概要

施工パッケージ型積算方式は、施工単位ごとに機械経費、労務費、材料費を含んだ施工パッケージ単価を用いて直接工事費を算出する積算方式です。
 

導入スケジュール

施工パッケージ型積算方式は、平成24年10月1日以降に入札を行う国土交通省の直轄土木工事(港湾空港関連を除く)から試行導入されました。
 
今回導入された施工パッケージは、ユニットプライス型積算方式の先行工事区分(舗装、道路改良、築堤・護岸)で使用していたユニットを基に作成された63の施工パッケージです。
これらに対応する85施工歩掛は、平成24年10月より積算基準書から削除されています。
 
国土交通省では今後、平成24年度の試行状況を踏まえた上で、施工パッケージを拡大する予定です。
具体的には、ユニットプライス型積算方式の拡大工事区分(道路維持、道路修繕、河川維持、河川修繕、砂防堰堤、電線共同溝)から検討される方針であり、将来的には特殊な工種を除き、施工歩掛を用いた積上げ積算は、減少するものと考えられています。
 

ユニットプライス型積算方式との相違点

施工パッケージ型積算方式は、ユニットプライス型積算方式と同様に、歩掛の代わりに総価契約単価合意方式において合意された単価データを蓄積し、それを分析して積算に用いるものですが、以下の相違があります。
 
①応札者単価の活用
②標準単価や補正式の公表
③作業土工の分離
④間接工事費の分離

 
①について、実態を踏まえた適切な価格を設定するために、受注者との合意単価だけでなく応札者単価も活用。
②について、具体的なユニットプライスは非公表でしたが、価格の透明性を確保するため、「標準単価」および「標準単価から積算単価」へ補正する補正式を公表。
③について、数量変動が生じやすく、きめ細かな設計変更が困難であった作業土工を分離し、弾力的な変更ができるよう改善。
④について、ユニットプライスには一部の間接工事費を含んでいましたが、施工パッケージ型積算方式における間接工事費の計上手法は、既に浸透している積上げ積算方式と同様の手法とし、施工パッケージ単価は直接工事費のみで構成。
 

施工パッケージ型積算方式の仕組み

施工パッケージ型積算方式の仕組みは図-1の通りです。
 

図-1 施工パッケージ型積算方式の仕組み

図-1 施工パッケージ型積算方式の仕組み


主な用語の定義と解説は、表-1の通りです。
 
表-1 主な用語の定義・解説

表-1 主な用語の定義・解説

【積算】

施工パッケージ型積算方式では、標準単価を積算単価に「補正」することで積算を行います。
標準単価は、基準地区における基準年月の単価であることから、積算に用いるためには、積算地区における積算年月に対応するための「補正」が不可欠です。
 
補正は標準単価に機労材構成比を反映した積算地区と基準地区の機械・労務・材料それぞれの価格比を乗じることで、時点補正と地域補正を同時に行います。
標準単価から積算単価への補正の基本的な考え方は図-2の通りです。
 

図-2 補正式のイメージ

図-2 補正式のイメージ


補正に必要となるデータとその出典は、表-2の通りです。
 
表-2 データの出典

表-2 データの出典

【入札】

入札の段階では、工事費内訳書から応札者単価を収集します。
国土交通省の発注工事は、そのほとんどが工事費内訳書の提出を求める一般競争入札方式で実施されていることから、応札者単価の収集に際して、受注者の負担は増大しないものと、国土交通省では考えられています。
 

【単価合意】

国土交通省の直轄工事では、平成22年度より総価契約単価合意方式を導入しました。
工事の総額による入札・契約後、請負者が提出した内訳書を基に、細別(レベル4)ごとの単価等について、受発注者が協議および合意し、単価合意書を書面により締結します。
ここで合意された合意単価と入札時の応札者単価が単価分析の対象となります。
 

【単価分析】

単価分析では合意単価に加え応札者単価が活用されますが、国土交通省では以下のデータは解析に用いないことで、一定の精度を確保するとしています。
 
①低入札調査基準価格や特別重点調査の価格以下で応札がなされた場合
②統計的にみて著しく応札額が高い場合
③工事費内訳書が発注の細別区分と一致していない場合

 
単価分析に当たっては、全国の収集単価を東京の単価に補正することで解析が行われ、最頻値(または平均値)を「標準単価」として設定します。
 
過当競争や恣意的な単価操作の影響を受けたことが考えられる場合や、発注地域や工事工種の偏りといった特殊要因の影響を受けた場合には、施工実態や他の物価指数との乖離が発生する懸念があります。
このため国土交通省では、複数年の単価傾向や「施工状況調査」によって把握される施工実態等を踏まえた上で、標準単価を設定するとしています。
 
なお、当面の間は合意単価等のデータがありませんので、「標準単価」や「機労材構成比」は、現行の土木工事標準歩掛を基に設定されています。
 
 
 
施工パッケージ型積算方式の概要と積算の対応《前編》
施工パッケージ型積算方式の概要と積算の対応《後編》

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設ITの最新動向」
建設ITガイド2013
 
 



BIMモデルを有効活用する解析・シミュレーションソフトガイド《後編》

2014年2月5日

 

建設ITジャーナリスト 家入 龍太

《前編》を読む
 

解析・シミュレーションソフト一覧

オートデスクのRevitシリーズ、グラフィソフトジャパンのArchiCAD、福井コンピュータのGLOOBE、そしてエーアンドエーのVectorworksにおける主な解析・シミュレーションソフトを紹介します。
 

日影/逆日影/斜線/天空率計算

ADS-BT
斜線制限や日影規制、天空率、そして用途地域などを考慮して高精度に建物の高さ制限を解析するシステム「ADS-win」をBIMツール化したもの。Revit Architecture用のプラグインシステム「ADS-BTfor Revit」と、ArchiCAD(含むSolo)用のプラグインシステム「ADS-BT for ArchiCAD」がある。
 
生活産業研究所株式会社
TEL 03-5723-6460
http://www.tokyo.epcot.co.jp/
 
 
Shadow Planner for ArchiCAD
ArchiCAD(含むSolo)上で建物の計画時に日影規制チェックを行うアドオンソフト。日影規制に対する判定の色分け表示や、日照定規による日影影響範囲の確認、時刻日影計算、等時間日影計算、日影規制ライン作成を行う。複数の日影規制条件にまたがる建物も領域ごとに設定できる。
 
生活産業研究所株式会社
TEL 03-5723-6460
http://www.tokyo.epcot.co.jp/
 
 
TP-PLANNER
プロジェクトを管理する「TP-MENU」、日影規制(逆日影)、斜線、採光斜線、天空率など建築可能空間を検証、確保するための解析を中心とした「TP-LAND」、建築可能空間から容積チェック、プランニング企画図作成を行う「TP-LIGHT」の3つのシステムから構成される。
 
株式会社 コミュニケーションシステム
TEL 03-3207-8211
http://www.com-sys.co.jp/
 
 
A&A SHADOW
日影計算機能を付加するVectorworks用のプラグインソフト。傾斜面の日影や複合日影(島日影)、高さの異なる複数の評価面での日影測定も可能だ。日影図を3次元で表示する3D日影図も作成できる。
Vectorworks2012対応版には新たに「平均地盤面計算」などを新搭載。
 
エーアンドエー株式会社
TEL 03-3518-0121
http://www.aanda.co.jp/
 
 
A&A VOLUME
逆日影計算機能を付加するVectorworks用のプラグインソフト。日影規制や斜線制限の下で最大限の容積を計算する基本機能のほか、「決まった日時の決まった場所に太陽が当たる」シミュレーションなど、画期的な機能を搭載している。Vectorworks2012対応版では新たに「みなし境界線を作成」、「計算範囲を作成」、「建物を作成」などの機能を新搭載。
 
エーアンドエー株式会社
TEL 03-3518-0121
http://www.aanda.co.jp/
 
 
A&A 天空定規
天空率計算機能を付加するVectorworks用のプラグインソフト。天空率による緩和制度に対応した設計や申請に必要な各種図面の計算や作成を支援する。計算建物、適合建物それぞれを天空率計算し、ワークシート上に結果を表示することができ、1つの天空図に計算建物、適合建物両方を表示することもできる。
 
エーアンドエー株式会社
TEL 03-3518-0121
http://www.aanda.co.jp/
 
 

熱流体解析(CDF)/通風シミュレーションなど

Flow Designer
簡単、シンプルな操作で流体・温熱・環境の3次元シミュレーションを行うソフト。オプションモジュールで輻射・日射・SET(米国の快適性指標)、音響解析、64bit無制限メッシュ、結果表示専用モジュール「FdViewer」が用意されている。上記の機能を持つ「プロフェッショナル版」のほか、逆解析機能を搭載した「エンタープライズ版」がある。
 
株式会社アドバンスドナレッジ研究所
TEL 03-3225-9800
http://www.akl.co.jp/
 
 
Wind Perfect DX/e-flowDX
建築・土木業界向けの3次元熱流体解析プログラム。風環境や風荷重のほか 空調・換気、港湾・橋梁など構造物周辺の気流解析の得意とする。インターフェースはマウス操作を主体としており、直感的で分かりやすい。姉妹ソフトのe-flowDXには津波の動的解析を行える津波荷重解析バージョンがある。
 
株式会社環境シミュレーション
03-5823-3561~3
http://www.env-simulation.com/
 
 
STREAM
汎用の3次元熱流体解析ソフトウエア。構造格子(直角・円筒座標系)を採用し、高速演算と高い安定性、簡便な操作性が特徴。室内の温熱環境や部材変更による省エネルギー効果の把握から、屋外の風環境、ヒートアイランド予測、洪水やダム放水などの土木分野まで、広い範囲で利用されている。Revit用のアドオンソフト「Revit2STREAM」を使うとRevitのBIMモデルデータをSTREAM用に変換することができる。
 
株式会社ソフトウェアクレイドル
TEL 06-6343-5641(本社)
http://www.cradle.co.jp/
 
 
Simulation CFD
流体の定常/非定常の流れ、熱の伝導・伝達・ふく射や対流など、包括的なCFD (数値流体力学)ツールを搭載したソフト。Autodesk Simulation CFD 2013では、Revitとのデータ交換機能が強化されているため、モデルの関連付けを維持したままシミュレーション用のBIMデータをやり取りすることができる。
 
オートデスク株式会社
オートデスク認定販売パートナー
www.autodesk.co.jp/reseller
 
 

エネルギー解析・シミュレーション

PAL for ArchiCAD
非住宅の省エネルギー計算(PAL計算)が可能なArchiCAD用のプラグインソフト。プラグインソフトのため、設計者がすぐに利用でき、プランニング時からPAL値を考慮した設計が可能。 PAL値のほか、ペリメーターゾーンの面積算出 、外皮の熱貫流率・日射侵入率、日除けによるη値の補正、外皮各部位の熱貫流率・面積計算、日射侵入率の計算も可能。
 
生活産業研究所株式会社
TEL 03-5723-6460
http://www.tokyo.epcot.co.jp/
 
 
SAVE-建築
住宅以外の建築物について省エネルギー性能をシミュレーションするソフト。「外壁・窓を通しての熱の損失の防止」、「設備機器の効率的利用」について計算を行い、必要書類の作成を支援する。評価項目ごとに性能基準(PAL/CEC)や仕様基準(ポイント法、簡易ポイント法)を切り替え、それらを組み合わせた書類を作成する。
 
株式会社建築ピボット
03-6821-1641
http://www.pivot.co.jp/
 
 
サーモレンダー4 Pro
屋外熱環境と屋内熱負荷計算を持つVectorworks用の屋内外統合熱環境シミュレーションツール。戸建て住宅から街区規模までの屋内外統合熱環境シミュレーションが可能だ。ヒートアイランド現象や生活環境に影響を与える、建物や地表面の表面温度を算出し、ビジュアルに表現。さらに「MRT(平均放射温度)やHIP(ヒートアイランドポテンシャル)の算出」「建物の熱負荷計算」「CO2排出量の計算」も行える。
 
エーアンドエー株式会社
TEL 03-3518-0121
http://www.aanda.co.jp
 
 

照明・採光シミュレーション

INSPIRER
さまざまな空間内における照明の設計や解析ができる3次元照明シミュレーション用ソフトウェア。建物内の照度分布や室内の照明器具からの光による視覚的効果の検討、自然光を採り入れて照明設備を最適化した建築構造の設計などが行える。照明の効果は光の物理的な挙動に基づいて再現しているため、設計者にデータとしての裏付けを提供する
 
株式会社インテグラ
TEL 03-6712-8886
http://www.integra.jp/
 
 

火災・避難シミュレーション

PyroSim
計算エンジンに米国標準局(NIST)の「Fire Dynamics Simulator」を使用し、計算流体力学(CFD)による火災シミュレーションを行うソフト。ストーブから石油備蓄タンクにいたる規模の火災に適用できるほか、建物の換気のような、火災を含まない気流解析などにも適用できる。
 
株式会社CAEソリューションズ
TEL 03-3514-1506
http://www.cae-sc.jp/
 
 
building EXODUS
非常時・常時の人々の動き・行動をシミュレーションするソフト。単なる避難モデルではなく、人と人、人と火災、人と構造物の相互作用も再現する。英国グリニッジ大学における先駆的研究開発を通して火災安全工学グループ(FSEG)で開発された。熱、煙、有毒ガス等の影響を受け室内から避難する各個人の経路を追跡、評価できる。
 
株式会社フォーラムエイト
TEL 03-5773-1888
http://www.forum8.co.jp/
 
 
SimTread
人の流れや群集の波を「見える化」するVectorworks用の歩行者シミュレーションソフト。建築物や構造物、大型イベントなどにおける空間計画や誘導計画から、商業地における季節催事計画、船舶,旅客機などの避難シミュレーションなど、「人の歩み」が存在する用途であれば、幅広く活用できる。
 
エーアンドエー株式会社
TEL 03-3518-0121
http://www.aanda.co.jp
 
 

構造解析・シミュレーション/構造モデル変換

Robot Structural Analysis Professional
大規模で複雑な構造物向けの高度な建築解析機能を持つ構造設計者向けのソフト。Revit Structureとの双方向
リンク機能があり、BIMで実施設計図書の整合性が図られるため、精度の高い構造解析や設計の結果をモデル全体に反映できる。40以上の国際鋼構造規格と30以上の鉄筋コンクリート規格に準拠した、鉄筋コンクリート設計モジュールと鋼構造設計モジュールが搭載されている。
 オートデスク株式会社
オートデスク認定販売パートナー
www.autodesk.co.jp/reseller
 
 
SSCシリーズ
各種一貫構造計算データやSIRCADで作成した躯体情報をBIMモデルに変換する構造躯体変換ソフト。アドインソフトとして提供されており、Revit用(ArchitectureおよびStructure)とArchiCAD用がある。BIMソフト上ではじめから躯体情報を入力、配置する場合に比べてモデル化の手間が省ける。変換可能な部材は杭、基礎、RC柱、RC柱鉄筋、S柱、RC梁、RC梁鉄筋、S梁、RCスラブ、ブレース、壁(開口含む)。
 
株式会社ソフトウェアセンター
TEL 03-3866-2095
http://www.scinc.co.jp/
 
 
SuperBuild SS3 Data link for Autodesk Revit Structure
ユニオンシステムの一貫構造計算ソフト「Super Build/SS3」から、建物形状データや柱部材・梁部材の定義/配置情報を抽出しRevit Structure に取り込むソフト。逆にRevit StructureのデータをSuper Build/SS3 に取り込むこともできる双方向のデータ連携も可能。オートデスクのサブスクリプションユーザー向けに無償提供されている。
 
オートデスク株式会社
http://www.autodesk.co.jp/
 
 
SIRCAD
BUS(構造システム)、SEIN La CREA(NTTデータ)、Build.一貫(構造ソフト)、Super Build/SS3(ユニオンシステム)、BRAIN(TIS)、ADAM(TIS)、BUILD-1(NTTデータ)などの一貫構造計算プログラムの入力データを読み込み、SSCシリーズを経由してBIMソフトにデータを受け渡すことができる。
 
株式会社ソフトウェアセンター
TEL 03-3866-2095
http://www.scinc.co.jp/
 
 
ASCAL
入力の容易性と自由形状入力の両方の利点を兼ね備えた一貫構造設計プログラム。荷重伝達のできるスラブや小梁があればどんな任意形状でも、自動的に荷重計算を行う。ビル建物からプラント構造物、橋梁といったあらゆる構造種別について一貫計算が可能。Revitで生成したBIMモデルをアドオンソフトで取り込むことができる。
 
株式会社アークデータ研究所
TEL 03-5901-9450
http://www.archdata.co.jp/
 
 

クラウドシミュレーション

Simulation 360
高性能のコンピューターとさまざまな解析ソフトを利用できるクラウドサービス。大きな設備投資をしなくても高度なシミュレーション機能を使用できる。複数種類の解析作業を同時並行で実行することも可能。提供される機能は流体解析、伝熱解析、強度解析、空調の気流解析、熱解析など。
 
オートデスク株式会社
http://www.autodesk.co.jp/
 
 
 
BIMモデルを有効活用する解析・シミュレーションソフトガイド《前編》
 
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」
建設ITガイド2013
 
 



次の10件
 


新製品ニュース

現場情報共有プラットフォーム「サイトアシストダッシュボード」をリリース現場情報共有プラットフォーム「サイトアシストダッシュボード」をリリース


建設ITガイド 電子書籍 2024版
建設ITガイド2024のご購入はこちら

サイト内検索

掲載メーカー様ログインページ



  掲載をご希望の方へ


  土木・建築資材・工法カタログ請求サイト

  けんせつPlaza

  積算資料ポケット版WEB

  BookけんせつPlaza

  建設マネジメント技術

  一般財団法人 経済調査会