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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

昇降機設備のBIM −三菱エレベーターの取り組みと事例の紹介−

2019年5月31日

 

はじめに

近年、BIMを利用した建築物の設計・施工業務の効率化が推し進められている。設計段階ではレイアウト検討を行うために簡易的なBIMモデルを利用し、施工段階では工種間の調整を行うために詳細なBIMモデルを利用している。それらの業務において、昇降機設備のBIMモデルも必要になるケースが増加している。
 
昇降機設備は製品・オプションが多岐にわたり、建物により採用される仕様も異なる。また、建築との位置関係も物件ごとに違うため、全く同じ寸法・仕様のエレベーターを納入することは稀である。そこで、BIMモデルにおいても仕様や寸法を変更できることが必要となる。
 
ここでは当社のエレベーターのBIM取り組みの現状と活用事例について紹介する。昇降機設備にはエスカレーターや小荷物専用昇降機も含まれるが、今回はエレベーターについて紹介する。
 
 

昇降機BIMモデルの構成

当社のエレベーターBIMモデルの構成を図-1に示す。乗場三方枠や乗場機器、支持部材は建物により異なる。そこで、ライブラリを昇降路内機器・乗場三方枠・乗場機器・支持部材ごとに分類し、各パーツの整備を行っている。
 
特に施工BIMにおいては現場のスケジュールの都合上、エレベーターBIMモデルにおいてもタイムリーな作成が必要となるケースが多い。そこで、あらかじめ基となる各種パーツを整備することにより、BIMモデルが必要になった場合は各ライブラリのパーツを組み合わせて物件用のBIMモデルを作成し、対応に要する時間の短縮化を図っている。さらに、基となるパーツがあれば、熟達したBIMオペレーターでなくとも一定の水準のエレベーターBIMモデルを作成できるため、品質面でのメリットもある。
 

図-1 エレベーターBIMモデルの構成




 

寸法のパラメーター化

建物により採用されるエレベーターの各寸法は異なる。例えば乗場三方枠などは、建築物の壁仕上厚によって枠巾が変化する。そこで図-2に示すように、変更が想定される箇所についてはパラメトリックなデータ(パラメーターで指定可能なデータ)として、BIMモデルを整備している。乗場三方枠であれば、出入口巾・出入口高さ・枠奥行などをパラメーター化しており、数値的に指定できる。このようなBIMモデルとすることで、パラメーターの変更のみで枠形状を変更することができ、関連する2次元図面を修正していた従来の方式と比較し、効率的に修正に対応することが可能となる。
 



図-2 パラメーターによるモデル修正


 
 

建築構造(鉄骨工事)との連携例

エレベーターは立柱やファスナー等を介して建物で支持する必要がある。このような支持部材は鉄骨工事で加工・施工するため、昇降機工事から鉄骨工事に対して必要な支持部材の位置や部材について具体的に伝えなければならない。そのため、BIM導入後も伝達手段として2次元図面が必要になる。鉄骨工事との連携例について、図-3に示す。BIMモデルを使って連携する具体的なメリットは以下の3つが挙げられる。
 
①2次元図面作成の効率化
②BIMモデルと2次元図面間の差異防止
③関係者間での打合せの効率化
 
①2次元図面作成の効率化
鉄骨工事から提供された鉄骨モデルを、BIMソフト上でエレベーターBIMモデルと重ね合わせを行った。重ね合わせたモデルはBIMソフト上の2次元図面にも表示されるため、昇降機設備工事では鉄骨を作図する必要がなくなった。
 
②BIMモデルと2次元図面間の差異防止
BIMソフト上で作成された2次元図面は、BIMモデルを修正した際に図面にも自動的に反映される。そのため、図面側に修正内容を反映し忘れてしまうミスを予防することができる。
 
③関係者間での打合せの効率化
他工種工事箇所を示す際、従来の2次元図面打合せでは蛍光マーカー等で色を付けて他工種に提示していたが、BIMモデルならば色分けした表示が容易で、確認しやすい。また、鉄骨工事でもリンク可能なBIMソフトを使用している場合は、エレベーターBIMモデルを鉄骨工事に提供すれば、鉄骨側にエレベーターBIMモデルの内容が反映される。
 
従来は各業者にて図面化し、お互いに確認し合うという業務を行っていたが、このようにBIMモデルを提供し合うことで、重複して図面化する必要がなくなり、作成した図面をおのおの確認する作業を削減することができた。
 

図-3 鉄骨工事との連携例




 

問題点の早期抽出・共有化

実際に作成した資料例を図-4に示す。BIM導入前は、問題となる箇所を明示するためにいくつかの図面やスケッチ等を作成していたが、エレベーターBIMモデルや受領したモデルを使うことで、それらの作成作業を削減することができた。加えて、図面よりもイメージが容易なため、社内・社外関係者間で共通認識を持てる点でも有用であった。結果的に、問題点の確認・方向性の確認を早期に行うことができた。
 

図-4 モデルを活用した資料例




 

今後の課題

これまでの取り組みにより、エレベーターBIMモデルの構造やパラメーターについて検討を進め、関係者間調整の効率化や資料削減時間の短縮に効果があることを確認できた。今後は、BIMモデルの整備と2次元図面化の2点について進めていきたいと考えている。
 
BIMモデルの整備については、まだBIMモデルが整備できていない製品も多く、そのような製品のBIMモデル要求があった場合には一から作成しなければならないため、作成に時間を要する。まずは、製品のBIMモデルを拡充することで、要求があった場合の対応時間短縮化を図りたい。
 
2次元図面化については、BIMモデルから打合せ図レベルの図面を作成することはできるものの、現状の詳細な2次元図面レベル(施工図レベル)の図面を生成するためには不足している点も多く、別途2次元図面を作成しているのが現状である。そのため、2次元図面とBIMモデルの二重管理になってしまい、BIMモデルで打合せした内容を2次元図面に反映し忘れてしまう可能性がある。今後はBIMモデルをそのまま施工図として使い、モデルと2次元図面間の整合性を確保する方法について検討する。
 
 
 

三菱電機株式会社 昇降機営業技術部 営業技術支援第一課 梅木 偉斗

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集2「進化するBIM」



 



BIMガイドラインの改定について

2019年5月29日

 

はじめに

BIM(Building Information Modeling)は、建築物に関する様々な情報を企画、設計、施工及び維持管理の各段階において利用できるツールとして、生産性向上への寄与が大きく期待されている。
 
官庁営繕部においては、BIMを利用する際の基本的な考え方や留意事項を示した「官庁営繕事業におけるBIMモデルの作成及び利用に関するガイドライン」(以下「BIMガイドライン」という。)を平成26年3月に策定・公表し、設計業務・工事の受注者からの技術提案等によるBIM利用の拡大を図ってきたところである。BIMガイドラインの策定後、平成30年3月までにBIMガイドラインを適用した事案は設計21件・施工6件の合計27件となっている。
 
さらに国全体では、「未来投資戦略2018」(平成30年6月15日閣議決定)において、建設現場の生産性向上を図るi-Constructionの建築分野への拡大方針とともに、平成30年度の営繕工事における施工BIM等の施工合理化技術※1の活用・試行、BIMガイドラインの改定等の具体的施策を示した。
 
今般、建築分野における生産性向上に向けた基準類改定の第3弾※2として、平成30年8月にBIMガイドラインの改定等を行ったので、その概要を紹介する。
 


※1 施工合理化技術:プレハブ化、ユニット化、自動化施工(ICT施工、ロボット活用等)、BIM、ASP(Application Service Provider情報共有システム)等を活用したもので施工の合理化に資するもの。
 
※2  第1弾:平成29年12月「営繕工事に係る請負工事成績評定要領の運用について」改定。
   第2弾:平成30年2月「営繕工事電子納品要領」を含む4基準の改定。
 
 

改定等の概要

(1)BIMガイドラインの改定

1)発注者指定等によるBIM利用への対応
従前のBIMガイドラインは、主に設計業務・工事の受注者からの技術提案等によるBIM利用を念頭に置いて策定したものである。適用対象については、「BIMモデルの作成及び利用をして図面及び仕様書(設計業務の場合。工事の場合は完成図等。)の成果物を作成する場合や技術的な検討を行う場合」とし、受注者が幅広に技術提案等を行えることを企図していた。
 
今般、i-Constructionの推進の一環として、発注者指定により施工BIM等の施工合理化技術を試行し(後述)、また、今後も発注者指定によりBIMを利用することが考えられるため、BIMガイドラインの適用対象について改めて整理した。
 
具体的には、表-1のとおり、「発注者の指定」又は「受注者からの技術提案等」によりBIMモデルの作成及び利用をすることにより、「発注者に提出する成果物を作成する場合」又は「発注者に確認等を受けるために提示するデータを作成する場合」をBIMガイドラインの適用対象とし、「発注者を介さずに受注者自らの検討、調整等のためにBIMモデルの作成及び利用をする場合」については、BIMガイドラインの適用対象としないものの、BIMガイドラインを参考とすることを明記した。
 
BIMガイドラインの適用対象となった場合、受注者はBIMモデルの作成及び利用をする内容、実施方法(BIMソフトウェア、解析ソフトの名称・バージョン等を含む。)、実施体制等について発注者との協議が必要となる。
 
これに加え、施工段階においては、BIMモデルの作成及び利用をすることにより、施工計画書、施工図等の内容について発注者に確認を受けることが想定されることから、確認を受ける具体的な範囲及び手順について、発注者と協議することを追加した。
 



※3 発注者がBIMモデルを成果品として提出することを指定した場合又は受注者からの技術提案等に基づきBIMモデルが提出されることが契約図書に反映された場合。
 
 
2)施工段階におけるBIMの利用方法についての充実
施工段階におけるBIMの利用実績が少ない現状を踏まえ、施工段階における技術的な検討例の追加、BIMモデルの詳細度の参照資料の紹介等を行い、施工段階においてBIMモデルを利用しやすい環境整備を行った。
 
具体的には、施工段階における技術的な検討の例として、従来からあった「干渉チェック」に「施工手順、施工計画等の検討」「施工図等の作成」「デジタルモックアップ」「数量算出」「各種技術資料等の作成」を加え、部分的なBIM利用ができる項目の例を追加した。
 
また、施工段階における技術的な検討において、BIMモデルを作成する際に実務上参照できる資料として、一般社団法人日本建設業連合会HP※4の紹介を追加した。
 


※4 施工図のLODとBIM施工図への展開(一般社団法人日本建設業連合会HPより)
http://www.nikkenren.com/kenchiku/bim_lod.html


 

(2)BIM適用事業における成果品作成の手引き(案)の作成

従来のBIMガイドラインでは、技術提案等により作成したBIMモデルを電子成果品として発注者に提出させることを想定していなかったため、BIMモデルの電子納品に関して明記していなかった。
 
今般、発注者指定によるBIM利用等、表-1のようにBIMモデルを発注者に提出する場合への対応が必要となったため、平成30年2月「営繕工事電子納品要領」等の改定においてBIMモデルを格納でき「ICONフォルダ」を追加し、さらにBIM電子成果品の作成方法及び確認方法を定めるものとして、平成30年8月のBIMガイドライン改定と併せて「BIM適用事業における成果品作成の手引き(案)」を新たに作成した。
 
本手引きにおいては、BIMモデル等の成果品のフォルダ構成(図-1)のようなBIM版の電子納品要領といえる内容を記載している。さらに、受発注者間の認識違い・手戻り等がないよう、設計業務又は工事の着手時に、発注者からの指定又は受注者からの技術提案等に従い、BIMモデル作成及び利用の目的、作成・更新の範囲、詳細度、ファイル形式等を受発注者間で協議し、成果品として作成するBIMモデル等を決定するといった実務上の留意点等を記載している。また、成果品として作成するBIMモデルについては、検討目的に応じた詳細度で関連する図面等(図面のほか、BIMモデルを利用して作成した計算書、数量書等の数値等を含む。)と整合していることを受注者が確認することを明記している。BIMモデルと完成図書(設計業務の場合は実施設計図書、工事の場合は完成図。)の内容が整合していることは求めるものの、完成図書に求められる詳細度との一致までは求めておらず、受注者の過度の負担とならないよう配慮している。
 

図-1 BIM モデルを成果品として提出する場合の成果品のフォルダ構成




 

施工合理化技術(施工BIM)の活用・試行

官庁営繕部は、平成30年4月9日付で「営繕工事における施工合理化技術の活用方針」を策定し、平成30年度発注の新営工事を対象として、施工BIMの発注者指定を含む次の三つの取組の実施について地方整備局等に通知した(図-2)。
 

図-2 「営繕工事における施工合理化技術の活用方針」の(概要)




 
(1)平成30年度発注の新営工事において、発注者指定で施工合理化技術を活用・試行
対象技術:①施工BIM、②情報共有システム、③ICT建築土工、④電子小黒板
対象工事:栃木地方合同庁舎(栃木市)、高山地方合同庁舎(高山市)、海上保安大学校国際交流センター(呉市)の3工事に適用
 
(2)総合評価落札方式で施工合理化技術を評価項目とする取組を導入(入口評価)
 
(3)施工合理化技術を提案し効果が確認された場合は、工事完了後の請負工事成績評定にて評価する旨を入札説明書等に明記(出口評価)
 
発注者指定を行う施工BIMについては、BIM未導入の企業等が参加しやすくなるよう、仮設、デジタルモックアップ、空調吹出口・照明類の位置調整、干渉チェック等の部分的な項目とした(図-3〜6)。試行においては省人化効果等の効果検証も行うこととしており、施工段階で取り組むべきBIMを明確にし、今後の生産性向上につなげる予定である。
 
なお、(2)(3)の取組については、平成30年度に限らず、平成31年度以降も継続して実施することとしており、受注者が施工BIMを含む施工合理化技術を提案する上でのインセンティブとしている。
 

図-3 仮設BIM
(例:足場計画及び揚重計画)




 

図-4 デジタルモックアップ
(例:木製ルーバーとキャットウォーク納まり検討)




 

図-5 空調吹出口、照明類の位置調整
(例:電気、空調、防災設備の位置検討)
出典:(一社)日本建設業連合会「施工BIMのスタイル事例集2016」




 

図-6 干渉チェック
(例:配管と壁の干渉部分可視化)




 

おわりに

本改定等については、広く公共建築工事で活用していただけるよう、各省各庁、都道府県及び政令指定都市の関係部署に情報提供を行った。
 
本改定等によりBIM利用が進み、BIM利用による関係者間の円滑な調整、手戻りの削減等により建設現場の生産性向上につながることを期待する。
 
末筆ながら、本改定等に当たっては各設計・施工団体から貴重な意見をいただき、また、日建連BIM専門部会の委員の皆様には改定等案の確認をはじめ多大な協力をいただいた。この場を借りて感謝申し上げたい。
 


●「BIM ガイドライン」「BIM 適用事業における成果品作成の手引き(案)」は次のURLにて公開している。
http://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk2_000017.html#4−1
 
 
 

国土交通省 大臣官房 官庁営繕部 整備課 施設評価室 営繕技術専門官 榮西 巨朗

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集2「進化するBIM」



 



点群データの部門横断活用を支援する ツールおよび技術の開発

2019年5月24日

 

はじめに

日立GEニュークリア・エナジー(株)(以下、日立GE)では、原子力プラントEPC業務を対象として点群データを活用しており、現場での配管ルート新設のための寸法計測や点群データからの3D-CAD化、施工図作成等に利用している。これまで個々の設計部門にて効果を上げていたが、日立GEおよびGr会社の複数部門での点群データ共有化による一層の効率化を目指している。一方、点群データはデータ量が大容量であり、かつファイルフォーマットが多種にわたる等の特徴があるため、ライトユーザーには扱いづらい。そのため部門間で広く点群データを利用して設計工数の低減や現場作業での被ばく低減を目指すには、種々の取り組みを実施する必要があった。
 
本稿では、点群データを複数部門間で共有して効果を上げるための情報インフラとなる点群アクセスツールの開発、ならびに大容量の点群データをより軽快にユーザーとシステム管理者が使いこなすために必要となる諸ツールの開発について示す。
 
 
 

点群データ活用の際の問題点

点群データの利用は、現場のアズビルト状態を定量化できるだけにとどまらず、物体形状を3D-CAD化につなげられることや、3D-CAD化した配管ルートからアイソメ図面出力や配管応力解析まで実施できるという効果的な手法である。一方で全社的に利用するためには、データの扱いに関して以下のような課題があった。
 
(1)データ活用の部門による熟練度の違い
点群データは容量が大きくかつ専用のソフトウェアで編集する必要があるため、熟練利用に一定の期間を要する。そのため部門によってはデータのビューイングだけにとどまるケースがある。原子力プラントにおいて高線量のために入域に時間制約があるエリアでは点群データを利用せざるを得ないが、比較的低線量のエリアでは十分に工数をかけて調査できるという事情も影響していると考えられる。
 
(2)複数の異なるハードウェアとソフトウェア
部門ごとに複数メーカーのスキャナーを組み合わせた計測を行うため、複数の異なるデータフォーマットが混在する。また利用ニーズに応じて複数の異なるソフトウェアが必要となる。そのため特定の点群データを他部門で利用できない場合がある。
 
(3)データの分散管理
各部門でデータが分散管理されており、散逸や二次利用の恐れがある。
 
(4)他データとの不十分な連携
ユーザーは点群データを3D-CAD、配置図、写真データと組み合わせて実業務で利用するケースが多く、連携が十分ではないと設計工数削減につながらない。
 
(5)データ容量が大きく扱いが困難
データ容量が大きく、複数のショットを合成したデータを扱う場合、ハイスペックのPCおよび専用ソフトが必要となる制約がある。これはユーザー側とシステム管理者側の双方の課題である。
 
 
 

課題解決のアプローチ

上述の課題に対して以下のような解決のアプローチとした。
 
(1)点群利用インフラの構築
複数部門の点群データを共有できるインフラの整備を行う。また、他の部門の活用状況を参照できるようにする。
 
(2)計測データ統合
異なる点群データのフォーマットが混在しているため、それらのデータのコンバーターを利用し、種々のフォーマットをどの部門でも利用できるようにする体制をとる。
 
(3)Web化/データ集約化
データの集約化を進め、全てのデータをWebで共有できるようにする。加えて、専用サーバーをプラントごとに設置し、かつログ収集してセキュリティ強化に努める。また、日立Gr外へのデータ散逸を防ぐための仕掛けを設ける。
 
(4)ツール連携の強化、3D-CADと点群データの連携支援ツール
点群データと他データ(写真、帳票、配管計装図)の連携ツールを開発する。また、自社開発の3D-CADと点群データを重ね合わせて設計するためのツールを開発する。
 
(5)データ軽量化技術の開発
大容量の点群データを軽量化する技術を開発する。
 
 
 

点群データ利用インフラの整備

点群データを部門横断で利用するためのインフラツールとして点群アクセスツールを開発した。Step1データ収集、Step2データの変換とツール登録、Step3データの利用+他部門での再利用 という3つのステップを経て点群データを部門横断で活用する。また、3D-CADとのインターフェース、他社とのインターフェースを円滑にするための諸ツールを開発した(図-1)。
 

図-1 点群データインフラの全体像




(1)点群アクセスツールの開発
計測作業の予定と実績の一覧を全ユーザーに公開してデータ再利用を図るWebツールである。点群データの座標値をXY平面に投射し、配置図に点群データの輪郭を描写して表示する。点群データは専用ビューワで360°閲覧が可能であり、詳細設計をする場合は市販の編集ソフトを呼び出して利用する。サーバー上で集中管理し、複数部門からの同時アクセスに耐えられる構成としている。
 
(2)市販3D-CADデータ変換ツールの開発
自社開発の3D-CADデータをBentley社製MicroStation[1]のファイルフォーマット(. dgn )に変換するツールである。変換したデータはBentley社製Pointools[2]か富士テクニカルリサーチ社製Galaxy-Eye[3]で点群データと重ね合わせて参照する。本ツールは3D-CADを部品別に分割して変換でき、点群データとの重ね合わせ検討時に不要データ(溶接点/フランジ点etc.)を除外し、かつ必要部分(建屋/エリア/ 系統)のみ絞り込んで利用できる(図- 2)。
 

図-2




(3)99%軽量化ツールの開発
大容量の点群データを大幅に間引きして軽量化を図るツールを開発した。本ツールは配管や機器のCAD化ができるよう、平面部と曲面部に応じて間引き間隔を調整することが可能である。最大で99%の間引きにより、低速ネットワーク32bitマシンでの閲覧も可能となる。また、市販ツールでCAD化することを考慮して配管CAD生成が可能な間引き間隔を理論的に算出しており、その場合は94%間引きでの運用となる(図-3)。
 

図-3




(4)専用点群フォーマットの開発
点群データの散逸や2次利用を防止する独自フォーマットを開発した。本機能は前述のGalaxy-Eyeを改造して開発しており、専用ドングルを挿入したPCでGalaxy-Eyeを起動して独自フォーマットに変換したデータにアクセスして利用する。データは期限後に失効する仕様である(図-4)。
 

 
 
 
 
 

図-4




(5)モデル化済み配管のソート機能の開発
広域の点群データを3D-CADモデル化する際の作業を効率化するため、Galaxy-Eyeの機能改善を行い、点群データからモデル化した配管部品を配管径ごとに色分けして分類できるようにした。また、モデル化整理作業の進捗が定量的に判断できる機能を備える(図-5)。
 

図-5




(6)3D-CAD点群データ参照機能の開発
3D-CADに点群データをロードして、同一座標系で設計できる機能を開発した。開発ツールでは、設計者が点群を参照しながら3D-CADアズビルト化を実施するための基本機能(点群ロード機能/位置合わせ機能/ウォークアラウンド機能/点群ピック機能/採寸機能/点群表示・非表示機能/モデル入力機能など)を備える。また、図面からCAD化した部品と点群データからCAD化した部品を分別し、設計完了後の根拠を残すようにしている(図-6)。
 

図-6




 
参考文献
[1] MicroStation−,https://www.bentley.com/en/products/brands/microstation
 
[2] Pointools−,https://www.bentley.com/en/products/brands/pointools
 
[3] Galaxy-Eye−,http://www.ftr.co.jp/n/products/galaxy_eye
 
 
 

日立GEニュークリア・エナジー(株) 坂本 雄志、 照沼 博之 (株)日立製作所 関 洋、 佐藤 義人

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集3「建設ITの最新動向」



 



お客さま要件に対応する施工会社のBIM−BIMによる価値創造 施工会社に求められるBIM運用とBIM納品−

2019年5月22日

 

はじめに

図-1 データセンターのBIMモデル




 
今回紹介をさせていただくデータセンターは建設プロジェクト体制としてIPD(Integrated Project Delivery)の適用がなされている。IPDは建設プロジェクトに関わる利害関係者が問題と課題を共有し、早期の課題解決を実現する協業形態である。施設構成に占める設備比率が大きく、建物機能を発揮するための搬送設備・管路が繊密に張り巡らされており調整に多くの労力が必要とされる工事であり、設備施工会社の役割として施工計画の中でモノ決めを的確に実施することと、BIMデータ引き渡し納品を求められていた。
 
BIMというテクノロジーの広がりにより、プレーヤーとして業務の中で一定の役割を果たしてきた設備施工会社の職能や担当範囲がBIM業務フローによって、期待される役回りが変化していく。
 
 

BIM実施計画の策定

プロジェクトの概要

プロジェクトの概要とBIM導入の目的を表-1, 2に示す。本プロジェクトの用途であるデータセンターとは、建物内部に設置されるサーバー等のICT機器を運用することに特化した建物であり、それらの機器の動作環境を保証するスペース、耐荷重、空調容量、電源容量といった建築の仕様や設備装置の性能諸元が密接に関連する建物である。また、設備比率が大きく運用保守者の要求や課題を早期に共有し、建設前に解決することが求められる。発注者、建築生産者、建物運用保守者によるIPD体制の効果が発揮されるプロジェクトである。
 

表-1 プロジェクト概要

表-2 BIM導入の目的




 

BIM実施計画の概要

本プロジェクトのIPD体制では工事受注が決定した直後にBIM分科会という組織を発足させ(図-2)、工事着工時にBIM実施計画書(BIM ExecutionPl an、以下BEP)の策定に取り組んだ。表-3は、本プロジェクトで策定したBEPの項目である。共通の目標設定をBEPに定義し、関係者に周知されている。
 

図-2 BIM分科会の位置付け



表-3 BIM実施計画書の項目




 
例えばBEPの中では、竣工後のBIMの活用を目的にした仮想運営と竣工BIMモデルについて定義している。竣工BIMモデルについてはLOD(Level Of Development)の定義を明確にしている。さらに部屋名称や設備機器の命名規則を発注者側のルールによって決定し、BEP策定時に盛り込んでいる。命名規則の決定で施工者側が施工図を作成する時点で建物運用側が求める属性情報を入力するのに一貫したルールを継続的に共有することができる。この時に同時に発注者側の建物保守管理用データベースとの連携を想定して、データ型、文字数(桁数)を定義している。
 
BIMはさまざまなアプリケーションの機能の上で与えられた入力情報をプログラムにより成果を生み出す。成果は再度アプリケーションにつなげることや、判断の基準情報としてつなげていくことができる。
 
 

BIM実施計画に基づくBIMの運営

施工段階でのモノ決めにBIMを活用するプロセスもBEPの中で定義している。図-3は総合図調整でBIMを活用するフローを表現したものである。BEPの構築に携わる職能役割には設備知識、経験を持つキャラクターが配置されることが有用な場面がある。
 

図-3 BIMを活用した総合図調整プロセス




 
BEPは着工時に策定した計画書であり、運用していくにつれ、想定した内容と実態がずれてくることがある。本プロジェクトではBIM分科会がBEPを評価する仕組みを提案して逐次補正していく機会を設けており、それを見直し評価と称し、毎月1回の頻度で見直し評価会議を開催している。図-4は本プロジェクトでのBEPの評価サイクルを示しているが、BIMを実践した上で実態に見合ったスケジュール調整やプロセスの改善などを検討し、総合定例会の場で周知した。
 

図-4 BEPの評価サイクル




 
発注者にとっては、IPD体制でBIMが活用されると、建築施工に関する専門的な知識が少なくても進行中のBIMを見て内容の理解を図ることができる。BIMの最も有用とされる見えることによる納まりの確認と完成形のイメージの共有である。
 
見えるを有効なものとするために2つの道がある
・見たい情報が準備されている。与えられる。
・見たい情報がビューア等の統合ツールで共有できる環境、発注者自らBIMにアクセスし、選択、表示操作を行い情報に到達する。
 
2つの道をしっかり準備してプロジェクトの進行状況や問題点を迅速に共有できる。われわれ設備施工者にとっては、計画の確定が施工品質に与える影響は大きい。従前の2次元施工図承認のフローに比較して今回施主を交えたモノ決めIPD体制における ①設計の整合、②設計概念を3次元に配置、③関係者との空間調整のためのBIM統合、をBIM運営として繰り返す活動を継続した、施設使用者目線での評価としての意思決定を促すため、業務フローにBIMデータ提供のタイミングとLODを合わせる、設定の事前準備のため、IFC経由でNAVISWORKSに統合されたモデルが、意のままに選択表示が容易になるように、作図段階の設備専用CAD側の設定を決定しておくことが肝要である。標準化されたデータが共有されることでIPD体制に参加する発注者の積極的な参加を加速させ、円滑な意思決定を誘導する立ち回りがBIMプレーヤーに必要である。
 
 

BIMによる仮想引き渡し(施設の運営および保守性を考慮して)

ここからは、本プロジェクトにおいて実施された、BIMによる仮想引き渡しについて報告する。
 
 

仮想引き渡しの定義

本プロジェクトにおけるBIM導入の目的は既に述べた通りであるが、制作されたBIMモデルの発注者にとっての利用目的は、以下の2点である。
 
・竣工時に建物が要求条件を満足していること
・竣工後に適正な施設運営・保守が実施できること(表-4)
 



 

仮想引き渡しの評価・確認項目

仮想引き渡しは、IPDの結果を評価するポイントと位置付けることができる。本プロジェクトにおける2回の仮想引き渡しでは、それぞれに評価と確認の項目が設定された。
 
1回目の仮想引き渡しは、空間的整合を確保した「納まり調整BI M」モデルを対象とし、竣工時の建物が発注者の要件を満たすものであるかを評価する(資料-1)。ここでの評価対象は主には形状であり、必要に応じて評価結果を設計変更にフィードバックし、建物仕様の確定を目的とする(資料-2)。これに対して、2回目の仮想引き渡しは、「仮想竣工BIM」モデルを対象とし、竣工後の具体的な施設運営・保守における業務プロセスが適正に遂行可能かの評価を目的とした。
 
 

資料-1 仮想引き渡しのフィードバック例




資料-2 仮想引き渡しのフィードバック例




 
これら仮想引き渡しを実施することにより、発注者による竣工前検査の仮想化による前倒しと、竣工前の施設運営・保守の方針および計画の評価・確認を実現することを目指したものである。
 
表-5および表-6は、本プロジェクトにおいて検討された具体的な仮想引き渡し時の確認項目(表-5)と、BIMモデルに付加すべき属性データ項目(表-6)である。仮想引き渡し時の確認内容については、施設運営・保守の業務プロセスを基にチェック項目と実施時期を設定した。属性データ項目については、主として施設運営・保守に必要となる項目を中心に設定を行った。
 

表-5 仮想引き渡し時の主な評価・確認項目




表-6 仮想引渡し時の主な評価・確認項目例




 
日本におけるBIM維持管理プロパティ項目は案件ごと都度策定されており、標準化の団体においてもテンプレートを準備してあるにとどまっていることが現状であり、多くの情報を正確に入力しBIMモデルとしての情報精度を維持し続けることが標準化の大きな課題である。機械設備担当の当社は機器記号をモデルオブジェクトと属性データを紐付けるKEYとして運用することを策定しExcel機器管理台帳上のプロパティをBIMモデルに一括付与するアプリケーションを準備して、情報の信憑性を高めることに努力した(図-5)。
 

図-5 Excel機器管理台帳




 

仮想引き渡し実施手順の検討

本プロジェクトでの仮想引き渡しの実施手順は、以下の通りである。
 
(1)1回目の仮想引き渡し実施手順
1回目の仮想引き渡しは、施設運営・保守性の評価・確認を実施し、チェック項目ごとに、ビューアによってBIMをウォークスルーによって参照し、目視および寸法測定等によって実施する。指摘箇所があった場合、位置や指摘事項の「チェックシート」を作成し、発注者と工事請負者で共有する(図-6)。
 

図-6 チェックシートによる指摘事項の共有




 
発注者や施設運営者は、設備増設・更改工事での機材や機器の搬出入時における適正な経路の確保、搬出入ルートが確保されているか等の確認を行うことで、竣工後に継続的に発生する更改・増設工事の運営性を評価する。運営・保守の視線から評価・確認を実施する。
 
(2)2回目の仮想引き渡し実施手順
2回目の仮想引き渡しでは、施設運営・保守における情報活用については、BIMからの属性データの抽出と運営・保守システムへのデータの受け渡しの手順を確認することとした。設定した運営・保守の業務フロー・シナリオに基づき、効率性や業務品質の観点から、施設運営と保守性を評価する。併せて、更改・増設工事による仕様変更の反映についても、業務プロセス評価の観点から、課題の抽出を試みることを予定した。
 
今後はデータが引き渡される方式、精度、オブジェクト属性を確認する手法の共有化が進むこととなる、いわゆるCDE(Common Data Environment)の発展が進むことで新たな手法が標準化されるであろう。人が手作業で評価・仕分けを行っているデータ交換の業務フローから、評価目的を業務フローで特定してクラウドデータに投入、APIにより成果のアウトプットを享受する業務フローにシフトしていくであろう。
 
一連の評価確認を行う上で評価・確認箇所の漏れの発生の抑止方法や、評価・確認項目とBIM表示仕様の標準化(ガイドライン化)、仮想引き渡しにおける評価・確認指標の定量化等を検討していく必要があるものと考えている。
 
 

仮想引き渡しの実施効果と竣工BIMモデルの価値

BIM実施計画書の適時最適化/仮想引き渡しの効果

仮想引き渡しは施設運営の経験を生かした意見を出せる場でもある。仮想引き渡しの1回目(以下、仮想引き渡し1)では保守運用目線で設備機器搬出入ルートや日常点検ルートなどの検証を行い、そこでの指摘を設計にフィードバックした(表-7)。仮想引き渡し1では発注者から全部で100 項目近くの指摘や質問がフィードバックされたが、施工前に解決したことで竣工検査時に指摘されたであろう手戻り工事の削減に寄与できている。
 

表-7 仮想引渡し1の実施結果




 
100項目が竣工間際の設備工事における性能試験、調整用運転を行うであろうタイミングで顕在化されたことをイメージすれば、発注者の100項目のBIM確認の効果がいかにあったことか想像にたやすい。
 
仮想引き渡しの2回目(以下、仮想引き渡し2)はBIMの属性情報を発注者が保有するファシリティマネジメントデータベース(以下、FMDB)に引き継ぐことを目的として実施された(図-7)。
 

図-7 VHO2でのデータの流れ




 
今回納品した建物仕様マスター情報はお客さまの施設管理台帳に連携されることをBEPにて明確に指定されている。設備情報は設置で終息するわけではない。運用・運転により日々運転機器の状態情報としてもたらされるセンサー情報をBIM空間に配置して、日々蓄積される指示系実績系トランザクション情報を取り扱う場面まで進展することがイメージできる。
 
新たな価値に直結する環境の変化、建物運営に関するコスト分析へ対応する情報処理能力を備えるべく準備していくイメージを持って設備施工会社の職能の変化を予想していきたい。
 
 

仮想竣工と竣工BIM

仮想竣工はBIMモデル上で竣工させることと定義しているが、実際は完全一致とはならない。その原因として考えられるのはLODという詳細度・調整度の定義である。本プロジェクトのBIMはLOD350としているが、設備の吊りボルトや支持部材、電気のケーブル類は対象外としていた。定義したLODによる空間と実際の施工上発生した齟齬を挙げると、避雷針のケーブルはモデリング対象外であるために、図-8のようにBIMとの齟齬が少なからずあるため、最終的な竣工BIMモデルは施工者が建物の目視検査を行い、不整合箇所を現地に合わせる作業をしている。
 

図-8 (左)調整段階BIMモデル /(右)施工後現物




 
竣工引き渡しのためのBIM納品検査として、多数の検査会参加者がポイントを絞った形でBIMを評価するために、現地で立ち合い検査をする人にスマートフォンを中継カメラとして持たせ、双方向で会話が成り立つようにした。会議室では現地カメラ映像をプロジェクター1台に映し、別のプロジェクターには現地映像に映し出されるショットに合わせてオペレータがBIMを操作できるようにした(写真-1)。
 

写真-1 BIM納品検査会の様子




 
この検査手法により会議室からの要望に応じて現地とBIMを実測値で比較することができ、BIMの精度を確認していくことができている。空間構成上の形や納まり具合の確認のみならず、BIMモデルには属性として、配管の用途、系統、口径、材質が示され、現地映像との比較検証を実施したことで精度が担保された。
 
 

竣工BIMの価値

BIMが持っている価値を本当に生かすのはこれから建物を維持管理していく発注者が事業計画や運営管理の素材としてBIM情報をどのように活用するかによる。竣工BIMモデルの価値はFMDBの運用だけでなく、将来工事を計画する際に正確な情報を提供できる工事原本として運用できることにもある。BIM情報の信憑性を維持することが継続的な価値創造に必須のことであることは容易に理解できる。従前の慣習では印刷製本された竣工図書を納品することが、BIM納品となり、さらに情報の信用度を維持・保持し続けることに携わることの重責と建物運用情報に直結する仕様マスタ・センサー情報に関与することでBIMプレーヤーの役割が大きく変化していくことを予想している。
 
 

まとめ

データセンター建設工事におけるBIM導入は、BIM組織の運営・BIMマネジメントが重要な要素であったと考えている。IPDとして最初に構成されたBIM分科会が機能し、課題を解決しながら目的を達成できた。
 
仮想引き渡しの実施は発注者の思いに対し、設計と施工が応えたことであり、BIMモデル精度を成長させながら、建物を造ることにつながった。FMDBに入力していくべき大量の設備機器情報をBIMから継承できたことは、今後BIMにデータを集約していく業務が求められていくことを感じさせてくれる経験であった。
 
IPDやBIMマネジメントに関わるためには、業務目的・顧客の要件を理解してBIMで実現するための要件定義が要である(資料-3)。
 

資料-3 BIM要件




 
日本では初といわれるこの規模のIPD・BIMに参加させていただいたことと、多くの課題を共有し解決していった発注者様をはじめ協業いただいた設計事務所様、元請建設会社様、施工会社様に感謝申し上げます。
 
 
 

新菱冷熱工業株式会社 技術統括本部 BIMセンター 谷内 秀敬

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集2「進化するBIM」



 



普及から積極活用へ−施工現場で進むBIM対応−

2019年5月17日

 

当社における設計施工一貫BIMプロセスの今

東洋建設における本格的な施工BIMの取り組みは、2011年着工の新宿労働総合庁舎新築工事(国土交通省初のBIM試行プロジェクト)からである。受注当時は異なるBIMソフト間でのデータ共有・交換は手探り状態であった。データ交換はIFC2x3で行ったが属性など欠落する情報もあった。他の手段も検討したが最終的にはモデル形状の受け渡しには問題ないことが分かり干渉チェックとBIMモデルからの施工図作成の試行を行った。その後も複数の官公庁案件で取り組み、2015年には医療関連部品製造工場新築工事において初の設計施工一貫BIMに取り組んだ。以後、総合病院増築、大型物流倉庫と続き、事務所ビル、研究施設、大型食品関連製造工場、オリンピック関連施設、ごみ焼却場、老人保健施設などで取り組んでおり、現在までに20件を超える工事においてBIMプロセスを導入している。
 
 

クラウドでのモデル共有

BIMモデルは、データをクラウドサーバーアプリ(図-1)で管理することで活用の範囲が大幅に拡大する。図-2は統合BIMモデルをクラウドサーバーにアップロードした例である。これらのクラウドサーバーアプリは、単なるビューイング機能だけでなく他にもさまざまな機能が用意されている。インターネット環境さえあれば、タブレット端末等を利用し、いつでもどこでも手軽に図面を閲覧したり、BIMモデル内をウォークスルーしたり、モデルを切断したりすることができる。Webブラウザを使用すれば専用ソフトをインストールする必要はなく、プロジェクトに「招待」する、されることで、発注者を含む社内外の関係者とデータを共有・交換できるようになる。
 

図-1 A360画面キャプチャ





図-2 BIM360Docs画面キャプチャ




 
BIMモデルをクラウド上で管理するメリットは他にもある。アップロードされたBIMモデルを介し、図面上の納まり確認や設計変更の指示、指摘事項などのやり取りを、ワークフロー形式で行うことができる。図-3、4はそのやり取りの画面キャプチャである。
 

図-3 クラウド上でのコメント付け




図-4 クラウドアプリでのワークフロー(指摘事項)とBIMモデルの履歴比較




 
質問者は、BIMモデル上にマークアップし質疑をコメントする。質疑に対し問題がクリアされた場合、質疑のフローを「完了」にする。このやり取りは、プロジェクトに参加するメンバーで共有できているため、権限のあるメンバーは誰でも質疑に参加でき、やり取りは全て記録される。
 
図面のバージョン管理も全て記録される。同一ファイル名で更新すると自動的に履歴が残りバージョンを示す数値が更新される。BIM360Docsの場合、サーバー容量は無制限である。過去バージョンとの比較も可能で、追加、削除、変更の箇所が色別で表示される。
 
 

施工BIMプロセス

設計施工一括、分離方式とも施工現場でのBIM対応プロセスは変わらない。施工BIMの黎明期ではRC造における3D配筋モデルによる納まり検討、仮設計画、鉄骨建て方検討、干渉確認などを元請のみで行う取り組みが中心であった。現在その流れは、発注者、元請、専門工事会社、メーカー等がクラウドサーバーを介してBIMモデルを共有・交換し合うプロセスに移行しつつある。先進的な現場においては、専門工事会社、メーカー等がクラウドサーバー上で自主的にデータを共有し合い、干渉チェックを行いながら施工モデルを作図、編集するようになってきた。施工BIMプロセスは、元請と専門工事会社等が互いに時間やコストを削減することによって生まれる利益を確保できるプロセスとして定着しつつある。その運用においては日本建設業連合会(BIM専門部会)から発行されている「施工BIMのスタイル」、「同事例集2016」、「同事例集2018」、「施工BIMのすすめ」、「BIM連携の最新技術紹介」が役立っている。特に「鉄骨と設備のBIM連携」、「鉄骨梁貫通孔要求の合理化」の手引きを参考にした取り組みは、業務効率の向上に直結している。
 

図-5 作業所での施工BIMプロセス事例 (左:BIM調整会議 右:鉄骨建て方検討会)




 

施工BIMの取り組み事例

図-6、7は、BIM調整会議後モデルと施工後の状態を比較した事例である。ほぼ整合していることが確認できており今後の施工管理プロセスとして有効であることを確認した。図-9〜12は、空調設備工事においてBIMモデルによる干渉チェックをすり抜けてしまった事例である。モデル化された全熱交換器にフィルタメンテナンス用扉が作図されておらず、メンテナンス時に必要な作業空間の把握ができていなかった。天井施工前に気付くことができ最小限の是正で済んだが、気付かなければ大きな手戻り工事となっていた。製造メーカーからの付属物動作範囲を含む詳細モデルの提供が望まれる。
 

図-6 施工現場での確認作業(鉄骨)




図-7 施工現場での確認作業(設備)




 

図-8 クラウドサーバーを中心としたBIM関連データの共有・交換フロー




 

図-9 干渉チェック時のBIMモデル




 

図-10 設備工事管理(是正工事前)




 

図-11 是正前後の比較




 

図-12 設備工事管理(是正工事後)




 
 

BIMプロセス対応の現状と今後の取り組み

2018年を境にBIM関連技術は指数関数的に進歩するのではないかと強く感じている。これまでBIMプロセス普及の障害とされてきたのは、①BIMソフトの機能不足、②PCの能力不足、③BIM人材の不足の3点ではないだろうか。①と②については、すでに実務に十分な性能を有するようになった。
 
③の人材については、すそ野は広がりつつあるが施工図レベルのモデル化ができる人材が圧倒的に不足している。東洋建設では、BIMプロセスの積極活用に向け、次年度より技術系職員に対するBIM研修の開催回数を増やすとともに、カリキュラムの改変・充実を図るなど、教育体制を強化する。
 
 
 

東洋建設株式会社 建築事業本部設計部部長/DXデザイングループ長 前田 哲哉

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集2「進化するBIM」



 



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