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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

海外の地理空間情報の動向−BIMと都市をつなぐ−

2019年7月31日

 

はじめに

環境問題、人口増加、貧困、エネルギー問題など、多くの課題は地理的な要素と密接に関わる。これらの効率的な課題解決に向けて、地理空間情報が果たす役割はますます注目される。本稿では、政府、地方公共団体、企業がいかにGISやBIMを活用し、現実世界のデジタルツインを作り定量的に分析し、解決策を導くためのプラットフォームを構築しているか世界の動向を紹介する。なお、本稿における情報の多くはオランダで開催されたGeo Delft Conferences 2018で収集した。
 
 

地理空間情報の活用が目指すもの

2013年、地球規模の地理空間情報管理に関する国連専門家委員会(以下、UN-GGIM)の要請により英国陸地測量部(OS)によってまとめられた『地理空間情報管理に関わる将来トレンド(5〜10年の見通し)』(原典:Future trends in geospatial information
management: the five to ten years vision, July 2013)では、次のようにまとめられている(図-1)。
 

図-1 表紙




 
「地理空間情報の利用は急速に増加している。地理空間情報は、政府部門、民間部門双方において、位置や場所に関わる理解が効率的な意思決定の重要な要素であるとの認識が強まっている。あらゆる国が潜在的な利益を実現化することを保証することは、今後5年から10年間において地理空間情報のあらゆる価値を最大化する上で重要であろう。
 
一方、地理空間情報基盤の活用段階は、国によって異なり、全ての国が投資を行える状況にあるわけではない。今後数年間で地理空間情報の価値が完全に理解され、現実化することを保証することは、人材育成の仕組みが整っているかにも依存するだろう」
 
このような課題意識から、国際機関としてのUN-GGIMは、地理空間情報に投資する価値やそれを維持管理するための情報基盤を構築することの重要性を伝え、加盟国の協働による知識の共有と地理空間情報基盤構築のサポートに努めている。
 
 

オープンデータとしての都市モデル

オーストラリアの情報委員長であるMcMillan教授は、「情報の真の価値は、他の人が新しいアイデア、発明、戦略を生み出すためにそれを使用して構築できる時にのみ実現される」と述べている。スマートシティに取り組む都市の多くは、誰もがアクセス可能なオープンデータに価値を見出す。都市モデルも今や、オープンデータの一つである。ここでは都市モデルをオープンデータとして公開するベルリン、ロッテルダム、ヘルシンキに焦点を当てて、その内容を紹介する。
 
 

ベルリン

2003年、ベルリン州政府の経済局と都市開発局は、公式なバーチャル3D都市モデルのための検討・実装に向けた取り組みを開始した。まず、最初のステップとして重要視された項目は次の通りである: ①異なるデータソースを統合するための支援 ②地理データの取得と取得技術の評価 ③公式なデータベースとしてのモデルの正確性保障と持続可能性確保のための行政上のワークフローの適用および再定義 ④バーチャル3D都市モデルのコンテンツをさまざまなユーザと応用分野に提供するためのインタラクティブな仕組み ⑤都市モデルコンテンツ普及のための新しい流通技術とビジネスモデルの開発および実証実験
 
それから10年以上の年月を経て、2015年3月、この3D都市モデルはオープンデータとして公開され、インターネットを通じて、誰もが無償でデータを利用できるようになった(図-2)。この都市モデルは、空中から890㎢範囲上にある約54万棟の建物を写真測量し、その屋根形状はレーザー測量により作成されている。約200棟の建築物について詳細なモデルが作成され、そのうち5棟については屋内探索が可能だ。
 

図-2 ベルリンの都市モデル




 

ロッテルダム

オランダのロッテルダムでは、2010年からRotterdam 3Dを開始(図-3)。
 

図-3 ロッテルダムの都市モデル開発
(ロッテルダム市提供資料)




 
Rotterdam 3Dのビジョンは、4つある。まず1つ目は、都市モデルが「全てのキーレジスタの基盤」となることである。キーレジスタ(key register/ 蘭basisregistratie)とは、全ての政府機関が公的業務を行う際に使用が義務付けられている情報基盤であり、10のデータベースからなる。建物に関係するものとしては、住所および建物基本台帳(BAG)、地形図(BRT)、大縮尺地形図(BGT)、土地登記簿(BRK)、不動産評価データ(WOZ)が挙げられる(図-4)。
 

図-4 都市モデルを活用したBAGの操作画面
(ロッテルダム市提供資料)




 
そして2つ目として、都市モデルは、建物はもちろん、道路、河川、地下埋設物、植栽や輸送機関に至るまで、都市における「全ての主要プロセス」の資産管理に活用される(図-5)。
 

図-5 都市の主要プロセスモデルの構成
(ロッテルダム市提供資料)




 
3つ目のビジョンは「オープンでデータ交換可能」であること。ロッテルダムの都市モデルはオープンスタンダードであるCityGMLが採用されている。
 
CityGMLは、豊富なセマンティクスを提供し、高度な検索、シミュレーション、分析を可能にする。
 
これらのオープンな情報基盤としての都市モデルは、4つ目のビジョンである「あらゆる応用分野にとって活用しやすい」ものとなり、都市計画、環境シミュレーション、マーケティング等さまざまな分野での利用が期待される。
 
 

ヘルシンキ

2016年、フィンランドのヘルシンキもまたリッチな都市モデルをオープンデータとして公開した。この汎用的な都市モデルは、エネルギー、温室効果ガス排出量、交通の環境影響など、都市における定量的な分析と可視化ができ(図-6)、ビジネス、観光、ナビゲーション、救助、通信、建物管理、地域計画などさまざまなニーズへの対応が可能だ。
 

図-6 ヘルシンキ都市モデルでの環境シミュレーション




 
ヘルシンキのプロジェクトマネージャーSuomisto氏は「都市モデルは、オープンな国際標準に基づいており、多くのオープンソースのアプリケーションに対応している。これは、納税者に利益をもたらすだろう」と強調する。
 
さらに、この都市モデルを基盤として、市民がクリック一つで駐車場や公園が欲しいなどの要望を伝え、ヘルシンキ都市計画の設計プロセスに組み込む市民対話型プラットフォームにも取り組んでいる。
 
 

水平なコラボレーションでイノベーションを加速

欧州における政府、地方公共団体、企業、研究機関などによる都市モデルを活用した革新的な取り組みは、欧州連合の政策による支援の影響も大きい。中でもHorizon2020 傘下のESPRESSO(systEmic Standard apPRoach to Empower Smart citieS and
cOmmunities)では、スマートシティおよびコミュニティ、つまりアーバン・プラットフォームのための欧州イノベーションパートナーシップの支援がされている。基本的な共通要素としてのオープン・スタンダードとともに都市と産業の架け橋となることを目指す。
 
 

より良質な乗客体験を提供へ−内外をつなぐ国際ターミナル

アムステルダム・スキポール空港(Amsterdam Airport Schiphol)は、ヨーロッパで3番目に大きく、世界でも最大級の国際空港に数えられる。スキポール空港は、よりスマートでスムーズな乗客体験の実現へ向けてBIMの活用に全力で取り組んでいる。
 
 

約8万件に上る資産

スキポール空港でのチャレンジは、約8万件に上る資産の維持管理のためにBIMを活用することだ。また、国際空港という施設の性質上、緊急時に資産情報にスムーズにアクセスできることも重要である。
 
従来、スキポール空港には、4つの異なるシステムに70 以上の情報テーマがあった。それぞれ部門内で業務上必要な項目に焦点を当てて更新され、互いの情報は一貫しておらず、ある項目について完全な情報を得るためには、異なるシステム間を切り替える必要があった。これらの従来のシステムは見直され、システムアーキテクチャを簡素化し、「全ての人に一つのビュー(one view for all)」を目指し、可能な限りシステムとデータをリンクさせていく取り組みがされている。
 
スキポール空港BIM戦略アドバイザーWorp氏は「スキポール空港では、GISあるいはBIMが、私たちの情報ニーズのための究極の解決策を独自に提供できないと気付いた。従って、私たちは、両システムの強みを組み合わせて、最良の意思決定を支援する仕組みを探っている」と述べる。昨年、東京で開催された国際標準化サミット「buildingSMART International Summit」のAirport Rooomでは、その最新の取り組みが紹介された(図-7)。
 

図-7 複雑なBIMオブジェクトの位置を点としてGISに取り込む (発表資料より)




 

BIMからGISへ

GISは長い間、地理上の環境をモデル化し、広域における2D空間分析を実行するため使用されてきた。近年、コンピュータの高度化により、GISは従来BIMの領域であった建物モデルを含むようになってきている。同時に建物設計プロセスにおいても、従来の2D CADからBIMへの移行が進み、インフラや周辺環境情報をサポートするGISを取り込む場面も増えている。GISとBIMの統合は、それぞれの分野が従来備えていなかった情報を補完し、多くの新しい可能性を生み出すとし注目されている。このようにBIMとGISの統合への要求が高まる一方、課題は山積みだ。多くの専門家は2つのうち、1つだけに精通しており、両分野のニーズ、作業プロセス、技術、ソフトウェア、標準などを十分に理解する専門家は少ない。
 
そこで汎欧州機関であるEuroSDR(European Spatial Data Research)のプロジェクトとして2017年、GeoBIMが発足し、産学官連携の下BIMとGISの統合に向けた研究が進められている。
 
 

地球は丸い

BIMとGISの統合において、まず重要なのはジオリファレンスである。GISはBIMモデルを地図上に適切に配置できる場合のみ分析に必要なコンテクストを提供できる。スキポール空港においても、その広大な敷地ゆえにBIMが持つ直行座標系では情報を管理しきれないという。BIMをGISに統合する際には、BIMモデルに適切なGISの座標系を設定する必要がある。
 
デルフト工科大学の研究チームが公開するifcLocatorでは、IFCファイルを地図上に配置し、3Dビューアでの可視化が可能だ(図-8,9)。
 

図-8  ifcLocatorインターフェース




 

図-9  ifcファイルの位置確認画面




 

オーストラリアが取り組むスマートインフラとは

日々進化し続ける情報通信技術の恩恵を受け、社会基盤の計画と管理方法は大きな変化を遂げている。BIMというデジタルデータを活用し、建物のみならず、道路や鉄道などを含むインフラの整備から資産管理、そして、輸送、通信、エネルギーなど効率的な運営に向けたスマートな改革を掲げるオーストラリア政府の展望は広い。
 
カーティン大学Niestroj氏は、オーストラリアにおけるBIMを活用した資産管理について、位置情報の観点から垂直型と水平型があると紹介する(図-10)。垂直型では、階層的な場所の内訳(建物、床、部屋など)が必要となり、これはオブジェクト単位での情報管理が可能である。一方、水平型では、道路とその付帯設備(交通信号機、道路標識など)を示すためポリライン、ポイント、そして線に沿った距離を組み合わせた情報が必要になる。
 

図-10 垂直型資産と水平型資産 (Geo Delft 2018発表資料より)




 
垂直型、つまり建物の資産管理は、通常、IFC(Industry Foundation Classes)とCOBie(Construction Operations to Building Information Exchange)の2つの方法いずれかによって行われる。
 
IFCは、ISO16739 標準として承認され、建設プロジェクトや施設管理において、協働者間でデータの交換や共有に広く使用されている。IFCのサブセットであるCOBieは、建設プロジェクトから運用、保守、資産管理情報を取得することができる。しかし、このような垂直型で確立されたオブジェクト単位での資産管理方法は、線形参照方式(Linear Referencing)での資産管理が一般的な水平型には適していないという。
 
 

国境を越えたデータの共有

オーストラリアにおける主要インフラ整備は州政府が大きな役割を果たしている。これはオーストラリアにおいて「調和のとれたBIMの取り組み」を大きなチャレンジだとする要因だ。
 
さらにオーストラリアは、ニュージーランドとの国境を越えたデータの共有がしばしば必要だが、ここでも標準規格のギャップが問題となる。Niestroj氏は、オントロジとセマンティックルールを使用して、共通の系統を持たない複数のデータソースを統合し、道路資産データ集約のプロトタイプソリューションを構築する研究を行っている。
 
 

信頼できるデジタルツイン確立のための努力

シドニーにあるニューサウスウェールズ大学にて、地理空間情報分野をリードするZlatanova教授とともに研究に励むDiakite氏は「都市モデルなどの技術は、主に大学が保有する数十年の研究(写真測量、リモートセンシングなど)の結果である。彼らの役割は技術を向上させることだけでなく、IFCやCityGMLなどの標準の開発を通じ、業界や実務家と協力してプロセス全体の耐久性と持続可能性を保証することだ。都市の完全なデジタルツインを得るために必要なBIMとGISデータの統合など、プロセスにはまだ幾つかの制限がある。学者としての私たちの役割は、産業界からの実装されたソリューションがコミュニティにとって有益なものとなるよう、政府にとって信頼できるものであることを確実にしていくこと」と話す(図-11)。
 

図-11 BIM GIS統合の研究に携わるDiakite氏




 

最後に

今、世界の地理空間情報の技術は目覚ましい勢いで進化している。建設分野において活用されるBIMは、そのデータの価値を俯瞰的に捉えることで、建物のみならず、それを取り巻く都市や社会に関わるより多くの人々に、さらなる価値が提供できるだろう。その実現には、架け橋をつくるためのより一層の努力が必要であろう。
 
 
 

CODESIGN TOKYO 代表 川中子 枝里

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集2「進化するBIM」



 



施工BIMによる業務効率化から働き方改革へ向けた取り組み −Informationの活用−

2019年7月26日

 

施工BIMの目的

当社でのBIM活用の主な目的は、業務効率化・生産性の向上である。2017 年よりICT技術を活用した現場支援プロジェクトを立ち上げ、全社一丸となって働き方改革に向けた取り組みを進めている。BIMは「形状」と「情報」の2つの側面を持っていることから、それらを活用するICT技術との親和性が非常に高いと感じている。施工フェーズでBIMを活用することで、ICT化の促進につながっている。
 
施工BIMの中でも、仮設計画においてBIMを実施することの目的は、大きく3つ、Visualization(視覚化)、Simulation(模擬)、Information(情報)だと考える。仮設計画は、どのように建物を作るかというプロセスを表現するものであるため、計画の手順を3次元化するだけで、Visualization(視覚化)、Simulation(模擬)の目的は達成される。しかし作成に手間がかかるわりには、イメージの共有程度の活用にとどまってしまい、効率的とは言えない。BIMモデルのInformation(情報)を有効活用することが、施工BIMを効率的かつ効果的に運用するためのキーワードである。
BIMによる鉄骨建方計画



 

Information=パラメトリック

構造モデルは、幅・高さ・長さなどの形状情報と、材質などの情報をパラメーター化し部材を構成しており、その情報をタグで出力、数値を集計することで、図面化を効率的に行うことができている。設計変更があった場合は、おのおののパラメーターを変更するだけで、部材形状が追随して変形するなど修正対応が容易である。パラメトリックにモデルが変形可能であることは、業務改善にダイレクトにつながってくる。従って、施工BIMでもパラメトリックなモデリングを行うことが重要な目的となる。つまりInformationを有効活用することが、業務効率化への必要条件となる。
 
 

仮設計画BIMの環境整備とワークフロー

BIMで仮設計画を取り入れる際に、BIMを追加業務にするのではなく、これまで行っていた業務をBIMで置き換え、さらに効率よく行えることが重要だ。そのためには、業務フローとそれに即した仮設コンポーネントの整備が必要である。
 
(1)鉄骨建方計画
鉄骨建方計画は手順を検討するものであるので、BIMとの相性が非常に良い。シミュレーションのプロセスがそのまま図面となると言ってもよい。そのためには操作性が高いクレーンコンポーネントが必須となる。




クレーンコンポーネントは、旋回やブームの上げ下げによる建物等との干渉をシミュレーションできるように、BIMモデル上のマウス操作でフックの先端を動かせるようにしている。さらにブームの長さ・角度・作業半径などの条件取得により「定格荷重」を決定し、自動的に算出できる機能を付加している。



鉄骨建方計画に使用する鉄骨モデルは、鉄骨ファブが作成したモデルをIFC形式で取り込んだものでは不十分である。鉄骨建方計画において重要な情報である「ピース重量」が引き継がれないからだ。鉄骨専用BIMソフト(すけるTON、FAST Hybrid)とRevitがダイレクト連携することで、ピース重量の情報を持った鉄骨BIMモデルを取得できるようになった。このモデルとクレーンに時間軸(フェーズ)情報を加えることで鉄骨建方ステップ図が作成でき、かつ高精度な鉄骨建方計画が可能となった。
 
 
(2)山留計画
山留計画における業務フローは、敷地条件・地盤レベル・基礎床付けレベルなどから山留めの必要可否を検討し、山留めを配置、数量を積算し見積りを行うという流れであった。ファミリー内に山留めで使用する数値を全てパラメーターとして入力することで、モデリングを行うだけで、集計・概算金額算出まで行えるようにした。モデリングについても、山留めを配置する範囲に線を引くだけで、自動割り付けするようになっている。基礎形状は計画時に変更が多く、複数のパターンを短時間で検討する必要があるため、変更追従性が高く、数量をリアルタイムに把握しながら計画できることは、BIM活用における最大のメリットである。

山留計画の業務フロー




(3)外部足場組立図
外部足場の計画においては、まず平面的な足場の割り付けを行うが、建物形状によりさまざまな調整を行っている。そこで、足場の設置範囲に線を引くだけで足場の割り付けを自動的に行うツールを開発した。入隅・出隅部などの詳細な調整は、全てパラメーターに置き換えパラメトリックに変更できる。これにより平面割付作業時間を5割削減した。この割り付けに合わせ、コンポーネントを配置するのだが、足場材は同じ部材を繰り返し配置するため、カーテンシステムとの相性が良い。縦・横のグリッドを移動することで、足場の割り付けが変わり、パネルのW×Hや配置条件によって内蔵された部材が切り替わるようにパラメーターを組み込んでいる。部材には品番や重量が組み込まれているので、足場の集計まで可能となっている。労働基準監督署に提出する88申請図は、テンプレートを割り当てて、注釈を入れるだけで簡単に作成可能となっている。



 

BIMモデルを測量に活用

ある物流施設では、着工時から施工BIMモデルを一貫して活用した。外部足場計画、工程検討、基礎コンクリート躯体図・配筋納まり図、鉄骨建方計画図、平面詳細図と、各施工フェーズに合わせ徐々にBIMモデルを詳細化し、施工レベルまで精度を上げた。BI Mの「情報」と「形状」という側面からも、施工図にするためには、正確な「形状入力」が必須となる。



施工図レベルに押し上げたBIMモデルを、Autodesk社の墨出しシステム「Point Layout(ポイントレイアウト)」により、現場での墨出し測量に活用した。BIMモデル上に測量点を配置し、クラウドサービスと連携させて測量機に転送する。タブレット上でポイントを指定すると、位置をナビゲーションしてくれるシステムだ。これまで3人で行っていた傾斜路の墨出し作業が、BIM 360 Layout導入後は1人で可能となった。BIMモデルおよびICT技術と連携させることで、現場の生産性向上を実現した。



 

BIMモデルから配筋チェックシートを作成

建物を建築する際、設計図どおりに鉄筋が配置されているかを確認するために「配筋チェックシート」を作成している。これまでは設計図から配筋情報を転記してチェックシートを作成し、検査前にチェックシートに間違いがないか再確認する必要があり、現場技術者に多大な負担をかけていた。そこで、構造BIMモデルの配筋情報から、図面上でワンクリックするだけで、配筋チェックシートを自動的に作成するプログラムを開発した。これにより、従来と比較して約90%の作業時間削減を実現した。
 
本プログラムには断面リスト自動作成機能も有している。従来のものは、BIMモデル→断面リストの一方向のみの連携であったが、断面リストを更新すればBIMモデルの配筋情報が更新される双方向連携が可能となっている。修正による作業時間を従来と比較し約20%短縮できることに加え、BIMモデル内に鉄筋情報が正確に保持されるため高品質な設計が可能となった。この機能により、構造BIMモデルを配筋チェックシートへ活用するための、モデルにおける「配筋情報の正確性」が担保されている。



 

まとめ

これまでのBIMは、使っている人が最も効果を得られるエンジニアリングツールであった。当社も、使うプロセスに合わせてツールを整備することで、確実に生産性を向上させてきている。しかし、これからは現場全体の業務効率化を目指す活動をさらに進めなければならない。BIMの情報を現場に持ち出してさまざまなフェーズに活用していくことが、キーワードとなる。それらを加速するためには、BIM技術者がその重要性を認識し、情報活用の業務フローを新たに見出していかなければならない。BIM情報をツールとして扱えるように意識を改革することこそ、働き方改革であり、われわれの役目となる。誰もがBIMデータを有効に活用することができるようになれば、必然的に働き方改革は進んでいく。
 
 
 

矢作建設工業株式会社 建築事業本部 施工本部 施工部 工務グループ
グループマネージャー 伊藤 篤之/ BIM推進担当 太江 慎吾

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集2「進化するBIM」



 



Mixed Realityがもたらす建設業界の変革とその可能性

2019年7月24日

 

はじめに

近年、さまざまな業界においてARやVRといったテクノロジーの活用が広がりつつある。
 
ARとはAugmented Reality(拡張現実)の略称であり、目の前に広がる物理世界に仮想オブジェクトなどを重畳表現することのできるテクノロジーである。タブレット型端末やスマートフォンの画面、眼鏡型ディスプレイなどにコンピューターで生成された画像をビデオカメラ映像とリアルタイムに合成して表示することで、通知やアノテーションなどを現実世界にオーバーレイしたかたち(現実を拡張したかたち)でユーザーに情報を届けることができる。
 
VRはVirtual Reality(仮想現実)の略称であり、目の前に広がる物理世界を仮想世界に置き換えて表現することのできるテクノロジーである。VRは両目用の小さな2つの画面とレンズなどがはめ込まれた箱の中を覗き込むようにして、作り手によって作られた空間を体験することができる。箱を手で支えるタイプのものや、頭にかぶって(バンドなどで固定して)使用するヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)と呼ばれるタイプのものがある。
 
そしてもうひとつ、Mixed Reality(以下、MR)というテクノロジーがある。
 
MRは現実世界を拡張するという点でARに近いが、ユーザーの目の前に広がる物理空間を常に把握し、物理空間と相互作用するように見せることができる点でARと異なる。MRでは、例えば図-1のように実際に存在するトンネルからCGでつくられた仮想の象が出てくるかのような表現ができる。単に情報を重ねるだけだと図-2のようにトンネルと象の前後関係が崩れたかたちになってしまうが、物理空間をあらかじめ認識しておくことによって現実世界のトンネルと仮想世界の象とがあたかも融合しているかのように見せられる。この現象を作り出すことのできるデバイスがMicrosoft HoloLens(図-3)である。
 
これらのテクノロジーを用いたデバイスは、当初エンターテイメント分野での運用を想定して作られたものが多いが、近年は他分野においてもその有用性が認められつつある。特に、建築物やインフラの設計や施工、整備を行う建設業界との相性が非常に良い。
 

図-1 物理空間が意識された表現図

図-2 物理空間が意識されていない表現

図-3 Microsoft HoloLens




 
 

Microsoft HoloLensとは

(1)ケーブルレスのHMD型コンピューター
Microsoft HoloLens( 以下、HoloLens)は外観やディスプレイ出力系を除き、その中身は一般的なPCとほぼ同じパーツで構成されている。小型ながらスタンドアロンで動作するいわゆるコンピューターそのものなので、デスクトップPCやスマートフォンといった外部端末にケーブルなどでつなげる必要がない。またPCと同じくWi-Fiを経由してネットワークに接続することができ、Bluetoothでキーボードやマウスなどを外部の入力デバイスとワイヤレスで接続することもできる。重量は579gであり、バッテリーがヘッドセット後方に配置されているため前後のバランスが良く、正しく装着することで重さも感じづらい構造となっている。
 
 
(2)Windows10 オペレーティングシステム
HoloLensを制御するオペレーティングシステムはWindows10である。そのためWindows10で実行可能なアプリの多くはHoloLensでも動作する。例えば、オフィス業務で多く利用されているMicrosoft Wordで文書を作成したりExcelで表計算をしたり、Edgeブラウザでbingにアクセスして検索することもできる。またCortanaに話しかけてサポートを受けることもできる。
 
Windows10の画面共有機能を使えば、HoloLens視点の映像をそのまま近くのWindows10PCにワイヤレスディスプレイで飛ばすことも可能で、HoloLensを装着している人に今何が見えているかを確認することもできる(図-4)。

図-4 ワイヤレスディスプレイによる画面共有機能




 
(3)空間認識
HoloLensにはデバイス周辺の現実空間を撮影するための複数のカメラと、奥行きを計測するための深度カメラが装備されており、それらのセンサーによって周囲の状況を常に把握している。SLAM(SimultaneousLocalization and Mapping)と呼ばれる自己位置推定技術によって周囲の3Dマッピングをリアルタイムに行い(図-5)、HoloLensに内蔵されたジャイロセンサーと組み合わせることで高精度に仮想オブジェクトを物理空間に配置でき、それらがあたかも固定されているかのように見せることができる。
 
マッピングされた3DおよびHolo-Lensによって計測された情報から、目の前に存在する物理空間上の実物の大きさや距離などをある程度推測することもできる。

図-5 リアルタイム3Dマッピング




 
(4)3Dモデル表現
BIMやCIMに含まれる建築物やインフラの3DモデルはCADソフトなどを通じて通常のコンピューターのモニター上で確認することができる。しかし3Dモデルの背面を見たい場合や詳細を確認したい場合などでは、マウスやキーボードでカメラビューを操作したり、3Dモデル自体を移動あるいは回転させなければならない。また通常は平面ディスプレイの枠を超えない範囲で作業するためオブジェクトの実際のサイズ感が理解しづらい。
 
しかしHoloLensを装着することで、それらを目の前の空間に実物大で表現することができるため、より直感的にそれらを閲覧できるようになる。また3Dモデルの背面を見たければHoloLens装着者が自ら3Dモデルの背面に回り込むように歩けば良いし、詳細を確認したければ実物を見るのと同じように目の前の3Dモデルに顔を近づければ良い。
 
持ち運びに関しても、仮想オブジェクトにはそもそも物理的な重さがないので大きな建材や機材であっても、現場で楽に配置を変更することができる。
 
 
(5)シェアリング
HoloLensには、作業現場などでHoloLensを装着している人から見えている仮想オブジェクトを同じ現場でHoloLensを装着している別の複数人と共有できるシェアリングという機能がある。つまり、それぞれの視点で同一の3Dモデルを閲覧したり、お互いの視線の先を確認しあって議論することができる。シェアリングは各デバイスや仮想オブジェクトの位置関係をサーバーで統合して整合性を保つ。従って、サーバーとなる外部のコンピューターリソースが必要となるが、仮想オブジェクトを現場の複数人で確認しながら行う必要のある共同作業でシェアリングは効果を発揮する可能性がある。
 
 
 

事例

HoloLensは国内外で数多くの企業が注目しているが、特に建設業界において大きな注目を集めている。本誌でも業界における有用かつ先進的な取り組みが紹介されている。マイクロソフトも業界に変革をもたらしうる新しい働き方を次の2つのソリューションで提案している。
 
(1)Microsof t Dynamics 365 Remote Assist
Microsoft Dynamics 365 RemoteAssist(以下Remote Assist)は、作業現場などで起こったトラブルなどに対処するための支援システムである。HoloLensを装着した現場の技術者はRemote Assistを実行することによって、遠隔地にいる専門家などと声や映像で相談しながら問題解決に取り組むことができる。
 
従来のオンラインビデオ会議システムを使用する場合と異なり、RemoteAssistでは現場の技術者が見ている空間を遠隔地の専門家と共有することができる。例えば、対処すべき箇所を示すアノテーション(フリーハンドで描いた図や何かを示す既定の矢印)を現場の物理空間上に3Dオブジェクトとしてお互いに配置し合うことができる。これにより専門家側は問題の状況をより理解しやすくなる可能性があり、技術者側はより直感的に作業を進められる可能性がある。また、HoloLensを装着した技術者はハンズフリーであるため両手を動かしながらの対処もできる(図-6)。

図-6 Microsoft Dynamics 365 Remote Assist

(現場の技術者が遠方の専門家とビデオ会話で支援を受けながら両手で作業できる。手元には3Dアノテーションが見える)


 
(2)Microsoft Dynamics 365 Layout
Microsoft Dynamics 365 Layout( 以下、Layout) は、空間を設計する場合に役立つシステムである。Layoutを使うことで、部屋や作業現場など実空間に機材などを設置する前にそれらの配置をシミュレートできる。
 
現場と同じサイズの仮想現実空間を作り、その中に機材の3Dモデルを並べていくこともできるし、実際の現場でそれらを配置して不都合がないかを実物サイズのホログラムで確認することもできる。3Dモデルだけではなく、Microsoft Visioからフロアプランを取り込むことも可能であり、配置したオブジェクトをリアルタイムに変更(移動、サイズ変更、回転)することもできる。つまり機材の位置関係や最適な作業スペースの確保といった空間デザイン全般に用いることのできるシステムであるといえる。
 
またRemote Assistと連携することによって、現場の状況を配置された仮想オブジェクトとともに遠隔地のスタッフと共有し、レイアウト案を確認することができる(図-7)。

図-7 Microsoft Dynamics 365 Layout

(設営現場で機材の3Dモデルを実物大で配置シミュレートしている。担当者は次に配置する3Dモデルをリストから選択している)


 
 

BIM/CIMの有効活用

建設業界において現場での設計変更はあり得る話だが、変更後のモデルをしっかり管理することで、BIM/CIMを長期に渡って積極的に活用できるかもしれない。
 
例えば、メンテナンスなどで実際に工事することなく壁の向こうや柱の中を外側から透視したり(図-8,9)、建築物内外の劣化や異常を検知するセンサー情報と連携することで経年シミュレーションを適用したモデルやアラートを示すモデルを現場で重畳表現できる可能性がある。このような手法は、現場に訪れる顧客への説明にも使用できる。

図-8 目の前を塞ぐ実物の壁

図-9 あたかも透けているようにみえる仮想の壁と奥行きのある
仮想の部屋を実物の壁に重畳して立体的に表現




 
 

Mixed Realityの未来と課題

(1)クラウド連携
冒頭で紹介した通り、スタンドアロンのHMD型コンピューターであるHoloLensはクラウドと容易に連携することができる。その特徴を生かすことでHoloLensの利用範囲を大幅に広げられる可能性がある。
 
例えば、シェアリングの項において「外部のコンピューターリソースを使う」と書いたが、インターネットにつながる環境であればそのリソースはクラウド上にあってもかまわない。つまりサーバーを設置する場所や電源の確保、コンピューターのハードウェアに関するメンテナンスを必要とせず、シェアリングのメリットを享受できる。
 
HoloLensは、処理能力だけでみると高性能なデスクトップPCよりも非力であり、高精細な3DモデルをHoloLensの内蔵プロセッサだけで処理した場合、安定したフレームレートを得ることが難しい。そこで、ここ最近ゲーミングの分野でトレンドになりつつあるクラウドレンダリング技術を採り入れることで、リッチな映像表現ができる可能性がある。高負荷なGPU処理をクラウド上のコンピューティングリソースに任せてしまう手法である。
 
 
(2)AI連携
クラウドで公開されている多くの便利なサービスを利用することでHoloLensにAI機能を持たせることもできる。
 
例えば、Deep Learningで問題のあるコンクリート壁と正常な状態のコンクリート壁の学習モデルを構築し、調査したい(例えば経年劣化した)コンクリート壁をHoloLensのカメラで撮影し推論することで、クラックなどを発見できる可能性がある。HoloLensを通じて単に目標物を眺めるだけでAIが問題箇所を指摘してくれると便利かもしれない。
 
クラウドを通じたAI活用は、当然のことながらネットワークインフラの影響を受ける。そのため十分な通信品質や速度が要求されるが、上記のような画像認識技術であればWindows 10で利用可能なWindows MachineLearningと組み合わせることで、ネットワークに接続できない環境あるいは電波状況の良くない環境でも使用できる。
 
 
(3)学習と推論
Learningは大きく学習フェーズと推論フェーズの2つに分類される。前者は膨大な計算量を必要とするためクラウドコンピューティングなどハイエンドな環境が必要だが、学習モデルは規格化されたファイル形式で出力できる、後者は比較的精度に寛容で一般的に処理負荷も前者のように高くはならない。そこで、前者と後者をそれぞれクラウドとローカルで分担するという選択もできる。
 
時代の流れとしてAI向けのコプロセッサがCPUに組み込まれる傾向があるため、将来的にはそのリソースを利用して、CPUに負荷をかけることなくより高速に推論できる可能性もある。
 
 
(4)課題
HoloLensユーザーから視野の広さに関する多くの指摘や要望がある。この点については光学系の技術的な挑戦だけでなく、バッテリーライフやデバイスの重量、重心位置の検討といった、スタンドアロンのHMD型コンピューターそのもののトータルバランスを考慮して慎重に設計しなければならない。しかし世代が上がるとともにこれらの問題は解決されていくであろう。また、ドリフトと呼ばれるホログラムのずれや環境認識精度についても指摘されることがある。これも同様にセンサーハードウェアも含めた技術の進化によって解決されていくと考えられる。
 
 
 

まとめ

本稿ではAR、VRそしてMRテクノロジー概要とHoloLensの特徴について述べた。HoloLensは目の前に広がる現実空間を把握し、空間を3次元で扱って仮想空間との融合表現ができるため、同じく空間そのものを扱っている建設業界との相性がとても良い。また業界からの注目度も非常に高い。
 
Remote AssistとLayoutの2つのソリューションは、作業現場における働き方に変革をもたらすきっかけとなるかもしれない。またBIM/CIMをより積極的に使用するためのツールにもなり得る。
 
そしてHoloLensはそれ自体がコンピューターであるためクラウドとの親和性が高い。クラウドで展開されるさまざまなサービスを利用することもできるし、AIの機能を組み込むこともできる。
 
技術的な挑戦を含め少しずつ改善され、今後も進化を続けるHoloLensと、HoloLensがもたらすさらなる建設業界の変革に引き続き期待したい。
 
 
謝辞 本原稿執筆の機会をくださった、横山慎太郎氏、村中徹氏、上田欣典氏に謹んで感謝いたします。
 
 
参考文献
[1] “Microsoft HoloLens”.https://www.microsoft.com/ja-jp/hololens/,(参照2018-12-11)
 
[2] “Mixed Realityがもたらす新しい世界”.https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/index.php?active_action=repository_v iew_main_item_detail&page_id=13&block_id=8&item_id=185460&item_no=1,(参照2018-12-11).
 
[3] “Microsoft Dynamics 365 Remote
Assist”.https://dynamics.microsoft.com/ja-jp/mixed-reality/remote-assist/, (参照2018-12-11)
 
[4]“ Microsoft Dynamics 365 Layout”.https://dynamics.microsoft.com/ja-jp/mixed-reality/layout/,(参照2018-12-11)
 
[5] “ Windows Machine Learning ”.https://docs.microsoft.com/ja-jp/windows/ai/,( 参照2018-12-11)
 
[6]“ 建設ITガイド 2018”. 一般財団法人経済調査会
 
 
 

日本マイクロソフト株式会社 千葉 慎二

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集3「建設ITの最新動向」



 



施工BIMの今 −ISエンジニアリングのBIM

2019年7月19日

 

BIMに取り組むきっかけ

当社の内外装部はALC(軽量気泡コンクリートパネル)・ECP(押出成形セメント板)・金属パネル・PC等の設計施工を主たる業務としております。
 
BIMに本格的に取り組んだのは2016年からです。ゼネコン主導による「施工図のBIM化を図るように」との働きかけを受ける形で当社の施工BIMはスタートしました。また、そもそも施工業者としてどんなメリットがあるのか、BIMで何ができるのかを考えると同時に、施工上の取り合いの視認性の良さだけでなく、取り組むなら2Dではできない部分をBIMで設計品質・作業効率を向上できないかとの考えが背景としてありました。
 



 

施工業者として改善すべき問題

ALC・ECP等の施工図は、パネル割り付けと同時にパネルの厚み、長さ(支点間距離)、開口補強、スリーブ検討といった計算を個別に計算ソフトへ手入力しチェックしています。これらの作業は物件ごとに荷重条件(風荷重・層間変位等)が違い、大型物件になればそのチェックは膨大な数になります。
 
また、設計担当者の経験にもバラつきがあり作業処理にかかる時間を考え、これを平準化・省力化できないかということに注力し、これらの計算ソフトに改良を加えたりしておりました。
 
これまでパネル割り付けは既存の2D自動割付ソフトを使用しております。このソフトは効率よく自動割り付け・変更修正と建材メーカーへのパネル発注明細が作成できます。しかし、2Dから3Dとなりますと作図システムの変更が必要です。ARCHICAD、RevitといったBIMソフトを施工BIMとして使うには、オブジェクト・ファミリ作成・自動割り付けプログラム化、また発注明細作成となると建材メーカーとの連携も重要です。
 
しかしそれ以上にBIMを推進するに当たって、いろいろなアイデアが社内・設計協力会社からたくさん出てきています。BIMのパラメータ情報を計算式にインポートすることで、これらの計算にかかる作業が、オブジェクトを割り付けするだけで支持スパンの確認ができそうだということ、そしてスリーブ開口も解決できるのではないか等、施工BIMの可能性を最大限引き出すための課題と方向性が明確になってきました。
 
 

BIMパネル自動割り付けシステムの開発

開発コンセプトとしては「設計品質・作業効率の向上」と「意匠BIMデータを活用」ということです。開発に当たっては当社のBIM担当と設計協力会社とで協議し、今まで以上の作業効率と強度的な設計品質を遵守できるよう開発項目をリストアップしました。



オブジェクト(パネル形状・仕様)はパネルサイズ・パネル加工・パネル種別(フラットパネル・デザインパネル・タイルパネル等)等、種類が多岐にわたり、これらを作成した上でAPIにて制御しパネルを自動で割り付けていきます。また、パネルの情報としてはパネル重量・断面係数や断面二次モーメント・留付ボルト強度等もマスターテーブルとして作成し、パネルの強度計算に対応できるようにしました。



施工業者として意匠BIMモデルそのものを活用し、また他業種ともデータ連携できるようにしたいと考えました。この自動割り付けシステムは意匠BIMモデルを下地に平面配置をトレースし、パネルのモジュールで割り付けし、両端部で均等に割り付け・寸法指定割り付け・コーナーパネル配置など効率よくモデリングできます。また、意匠BIMモデルの階高情報がそのまま使えますので、面として同じであれば必要な階まで一度にパネルをモデリングすることもできます。



そして意匠BIMモデルのAW・SD等の開口情報(サイズ・位置)をパネル自動割り付けシステムへそのまま連動させることで入力ミスをなくし、また意匠BIMモデル変更にも即座に対応できます。パネル割り付けにおいては割り付けモジュールと開口情報が最も重要ですし、変更追加が多いのが開口情報です。この情報を意匠BIMモデルと連動すればお互いの確認作業が省力化されます。
 
パネル自動割り付け・パネル発注明細はもちろんのこと、鉄骨一次ピース割り付け・開口アングル検討・パネル計算・スリーブ検討までもプログラムしていく予定です。



鉄骨一次ピース割り付けの目的は鉄骨製作者(FAB)へのデータ受け渡しをスムーズに行い、先付ピースの漏れをなくすことです。これまで2D図での図面指示では情報が分かりにくく、記入漏れ・転記漏れなどが多くありましたが、現在BIMデータでの受け渡しに移行してからは、現場での先付ピース漏れはほとんどありません。できればこのBIMデータを先方(TEKLA等)へのネイティブデータに変換できればと思案しているところです。
 
 

今後の展望

施工BIM推進に当たって直面している問題はチェック・承認の方法です。他業種との取り合い・干渉等を確認するため、現場ではBIM重ね合わせ会等が開かれますが、短い工期の現場も多く、施工BIMモデルのチェック日程はなかなか厳しいものがあります。できる限り早期に着手しBIMモデルの検証作業に十分な期間を確保しなければと考えます。
 
意匠BIMモデルとパネルBIMモデルの重ね合わせ、鉄骨や躯体・建具との重ね合わせ、モデルの検証を十分行うことで寸法確認の手間もかなり省力化できます。施工業者の足並みもまだそろっているとは言えませんが、早急にBIMの確認業務フローの確立が重要であると考えます。
 
最後に、施工BIMは他業種との連携を図ることで作業環境は大きく改善・発展するでしょう。今後ともBIM関連業者の相談会・連絡会等で情報交換しながら、施工BIM推進に尽力したいと考えております。
 




 
 

ISエンジニアリング株式会社 技術設計部 金 尚之

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集2「進化するBIM」



 



CIM解決研究会に参加して富山県でのCIM化が促進−「CIM解決研究会in富山講座」を機にさらに加速−

2019年7月17日

 

CIM解決研究会に入会した動機

当社(寺島コンサルタント)は、今後の3次元計測への取り組みの一環として、2016年にMMS(モービルマッピングシステム)を導入しました。MMSの活用の幅を広げるために、毎回のMMS研究会に参加していたところ、CIM解決研究会の会員である福士幹雄氏が講師として講演されて、CIM解決研究会の存在を知りました。当社が取り組んでいる3次元計測は、CIMの一部であることを知り、より大きな取り組みとして2017年3月にCIM解決研究会に法人会員として入会しました。2017年4月以降は、毎月東京で開催されるCIM解決研究会の勉強会に富山から参加して、CIMに関わる各方面の最新動向に触れて、大きな刺激を受けています。
 

CIM富山 3社の相関図




 

CIM解決研究会in富山講座を開催するに至った経緯

東京で毎月CIMに関する大きな刺激を受ける中で、地元の富山でもジャパンビジュアルサポート様や堀江商会様など、CIMに関わる仲間が増えてきました。東京でのCIM解決研究会の勉強会では、地方出張講座の機運が高まってきたところでした。東京のCIM解決研究会の事務局と富山のCIMに関わる仲間と一緒に企画を立ち上げたのが、「CIM解決研究会in富山講座」です。企画の意図は、東京に比べて、CIMへの関心が薄い富山へ、東京のCIMの最新動向を届けることです。
 
 
 

CIM解決研究会in富山講座を開催した結果

2018年6月13日、富山市の富山県民会館を会場として、CIM解決研究会in富山講座が開催されました。講師として、一般財団法人先端建設技術センターの緒方正剛氏、ユタカ工業株式会社ICT推進事業部の福士幹雄氏をお招きしました。地元富山のCIMの動向として、当社ICT対策室の西藤博之が講演しました。
 
この講座は、産官学から93名の参加者を得て、CIMに関心の薄い富山でも、徐々に関心が高まりつつあることを実感しました。特に建設現場では、今困っていること、今までできなかったこと、今から取り組むCIMについて等々、いろいろ相談できる窓口を求めています。
 
CIM解決研究会が、発足以来それらの相談窓口の役割の一端を担ってきた知識と経験を提供するためにも、地方出張講座の開催意義は大いにあったと思います。
 
 
(株)寺島コンサルタント 西藤 博之
 
 
 

CIM解決研究会in富山講座に参加してからの地元建設業者が変化

国土交通省の「ICTの全面的な活用」等の施策を導入し、生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指そうと3Dレーザースキャナーやドローンでの3次元測量や図面の3次元化、ICT建機の活用など、ICT活用工事に取り組まれる施工会社が増えてきた。ドローンでの3次元測量は失敗することもあったが、ノウハウが蓄積され、土量管理が定期的にできるようになり、また外注費を削減することができた。
 
計画・設計段階から3次元化することにより可視化することができ、2次元図面で伝わりにくかった内容を視覚的に分かりやすく表現することができた。3Dだと施工における事前のシミュレーションもでき、複雑な構造物のイメージも現場関係者間に説明もしやすく、共通の認識を持つことができた。
 






 
 

河道整正ICT活用効果

 
①所要日数は気象条件が悪天候(雪)でもICT施工は可能であるため大幅に短縮となる。従来の丁張り施工だと積雪により施工範囲が分からない。
 
②施工延長560mにおいても起工測量は1日で可能であるが、データ処理・設計は範囲が広いため時間を要する。従来の河川内測量だと安全性に欠けるとともに労力は多大となる。
 
③一番のメリットは施工延長560mの丁張り不要である。除雪による丁張り復旧作業を考慮すると、現場員の業務内容が大幅に軽減する。
 
④施工においては全体イメージを把握 できるため、工事車両走行路等の 仮設計画が立てやすい。積雪時でも 現在地・施工範囲がモニターで確認 できるため、除雪しながらの施工は 可能となる。
 
ICTを活用することで、生産性の向上は図れると思うが、機械の間違いに気付く、土質を判断する等、人にしかできない部分の技術向上は不可欠だと感じた。
 
2019年度は本格的にICT土工対象工事が発注されると考えられる。2018年に比べ、ICTに対する意識も発注者側・受注者側とも変化しており、2019年もCIM解決研究会in富山を開催する予定だ。
 
3社は、建設業全体における業務効率化・品質向上を図るため、i-Constructionをサポートしている。今後はCIMとIOTと連携させることにより、新たな価値を生み出す情報インフラであるIOTプラットホームを構築していきたい。
 
 
(株)堀江商会 細川 幸寛
 



 
 

ドローンの利活用を支援

ドローンの利活用において、より現場のニーズに合った講習内容を構築していく中でi-Constructionを知ることとなる。地元富山にていち早く3次元計測に取り組まれていた寺島コンサルタント様のご紹介により、ジャパンビジュアルサポートがCIM解決研究会に入会。
 
地元建設業者へのドローン活用の提案、講習カリキュラムを開発して、ドローンの普及に努めている。より具体的で分かりやすいUAV測量を普及させることを目的としている。
 
寺島コンサルタント様、堀江商会様、と協力して、建設業全体におけるi-Constructionのサポートをしていきたいと考える。今後は、より精度の高い技術を必要とするドローンの活用を提案、支援していきたい。
 
 
(株)ジャパンビジュアルサポート 宮崎 一郎
 



 


 
 
 


株式会社 寺島コンサルタント 測地部部長・ICT対策室 西藤 博之(中)
株式会社 堀江商会 測量システム販売グループ 細川 幸寛(左)
株式会社 ジャパンビジュアルサポート 滝口 裕次(右)

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集1「i-Construction×BIM/CIM」



 



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