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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

BIMデータで積算できるのか?-BIM-積算のデータ連携について-

2022年10月24日

はじめに

建築の業界で、BIMが普及してきたように感じる昨今ですので、実際に基本計画や、基本設計でBIMを使用して積算までを行えるような仕組みを構築している企業もあるかと思います。
 
しかし、われわれのような積算事務所の立場で行う積算業務においてどれほどBIMを使用しているかと言われると、全体から見ればほんの一握りであるというのが現状だと感じます。
 
設計事務所やゼネコンの設計者からは、「積算に使うのはまだまだ先」「今後は積算につなげたい」「一度実際に検証も行ったが、そこからは進んでいない」といった意見を耳にすることもあれば、積算事務所側においても「BIMで積算は難しい」「BIMデータを利用したとして、数量の責任の所在はどうするのか」などの意見もあり、設計・施工では各社BIM化への取り組みが進んでいる中、積算という分野は取り残された存在になりつつあります。
 
実務でBIMデータを積算に利用するという点では、懐疑的な意見が飛び交うところではありますが、あくまで積算事務所の、そして、積算ソフトのユーザーである立場から「本当にBIMデータで積算はできるのか」にフォーカスを当ててお話しすることとします。

 
 

データ連携

まず従来、建築積算を行うには建築数量積算基準にのっとった数量の算出が必要となり、その作業に特化したものが積算ソフトです。
 
またBIMには集計表などの機能がありますが、それを使用したとしても、基準どおりの数量算出はできません。
 
BIMデータにさまざまな情報が入力され、積算に必要な情報を積算ソフトへ連携できれば、効率化・省力化が十分に図れ、それと同時に設計図書との情報の相違もなくなるため、より精度の高いアウトプットを出すことが期待できます。
 
もちろんBIMが持つ全ての情報を連携することは、現状困難ではありますが、建築モデルからは、仕上・間仕切・建具などの開口情報、構造モデルからは躯体や鉄骨のデータ連携が可能です。
 
設計BIMでは、実施設計までをフルBIM化することは、まだまだ多くはないように感じますが、情報が全て入力されていない段階のBIMモデルであっても、その入力された情報を利用することがBIM積算連携を進める第一歩になると考えます。
 
躯体・鉄骨については、構造計算ソフトや構造モデルから各積算ソフトへのデータ連携がある程度できることが周知されつつあるため、今回は建築モデルの積算データ連携にスポットを当てたいと思います。
 
多くの会社で採用されている代表的なBIMソフトであるRevitとArchicadと、弊社でも採用しているBIM連携積算ソフトであるΗΕΛΙΟΣとのデータ連携について、検証を含めた実例を紹介します。
 
ΗΕΛΙΟΣへのデータ連携では、BIMデータ標準形式であるIFCデータで連携する方法(以下、IFC連携)と、ΗΕΛΙΟΣのローカルファイルであるTSVデータを使用して連携する方法(以下、ダイレクト連携)の2通りの方法が存在します。

 
 

実例(1)Revitモデル

まずは、Revitで作成された延べ床面積が約6,000m²、4階建ての庁舎を実例としてご紹介します。
 
はじめに、標準形式であるIFC連携でのデータ連携を試みました。
 
Revitから出力したIFCデータを読み込むと、「階情報が正しくありません」「処理が正常に終了しませんでした」と表示され、読み込むことすらできませんでした。
 
エラー表示だけでは原因の見当が付かないため、モデリングしている要素(以下、モデル要素)に原因があると仮定し、不具合を起こしていそうな要素から順に削除しながら検証を行いましたが、モデル要素が全て削除された状態であっても読み込むことはできませんでした。
 
残るモデル要素は通り芯のみとなり、通り芯の中で原因となり得そうな箇所を探したところ、この案件では斜めの通り芯が存在し、仮にこの通り芯を削除した結果、読み込みが可能となりました。
 
しかし、通り芯を削除する方法ではBIMデータに影響が起こる可能性もあるため、もう一つの連携方法であるダイレクト連携を使用すると、該当する通り芯を削除することなく連携することができました(図-1)。
 
この後に紹介するモデル要素の連携を一通りIFC連携で行いましたが、不具合が多く、データ変換にかかる時間もダイレクト連携の方が圧倒的に早いことを考慮し、以降はダイレクト連携での検証を紹介します。
 
ダイレクト連携を行った結果、建築モデルのデータがΗΕΛΙΟΣにおおむね連携ができているように見えましたが、一部連携されていない壁があり、その壁をRevitで確認すると、曲面の壁でした。
 
しかし、この他に存在している曲面の壁は連携できていたため、当該の壁との相違点を調べた結果、連携された壁は円弧上に配置されており、連携されていない壁は自由曲面で配置されている壁であることが分かりました(図-2)。
 
自由曲面のように、特殊な形状の壁はBIMソフトで表現することができますが、積算ソフトでは、現状連携は難しいようです。
 
そのため、そういった壁に関しては、連携後に積算ソフト上で配置するなど手を加える必要があります。
 
先ほど取り上げたような特殊な形状の壁などは反映されないため、その壁に面している部屋にも影響があるのではないかと考えましたが、部屋自体は連携されていることが確認できました。しかし、部屋の輪郭線には影響が起きていました。
 
その他のモデル要素として、ドアや窓(以下、建具)を連携させる場合、建具の内法寸法の情報を持つパラメータを出力時に設定し連携を行いましたが、一部連携できていないものが見られました。
 
それらをRevitで確認すると、建具によって異なるパラメータを使用しており、一方ΗΕΛΙΟΣの設定では読み込むパラメータが一種類しか設定ができないためにおこる不具合であることが分かり、連携させるためにはパラメータ名の統一が必須であるということも明らかになりました。
 
ここまでの修正を行ったことで、通り芯、壁、部屋、建具の連携可能な部分について連携することができました。

通り芯のIFC連携とダイレクト連携

図-1 通り芯のIFC連携とダイレクト連携


曲面壁のモデリングによる連携

図-2 曲面壁のモデリングによる連携



 

実例(2)Archicadモデル

では次に、Archicadで作成された延べ床面積が約3,000㎡、9階建ての事務所ビルを実例としてご紹介します。
 
まずはRevit同様に、IFC連携で試みた結果、おおむね読み込むことができましたが、ここでも一部の通り芯が反映されない現象が発生しました。
 
Revitでは、ダイレクト連携を行うことでBIMデータを修正することなく連携できたため、同様にダイレクト連携で行ったところ、こちらも全ての通り芯が反映されました。
そのため、ここからはRevitと同様にダイレクト連携での検証を紹介します。
 
ダイレクト連携を行った結果、Archicadでは円弧の壁が、ΗΕΛΙΟΣではその円弧の始点と終点を結ぶ直線の壁となる現象が発生しました。
そのため連携後に修正するなどの手を加える必要があります。
その他にも位置がずれた状態で反映されている壁がありましたので、Archicadで確認すると、断面形状マネージャを使用して作成した壁であることが分かりました。
 
断面形状マネージャとは、壁などの断面を自在に作成することができるArchicad特有のツールであり、それを使用していると壁芯位置がずれて反映されてしまうことが判明しました(図-3)。
 
Revitと同様に、壁の表現はBIMソフトでの形状をそのまま積算ソフトへ連携できないものが存在します。
 
部屋への影響はArchicadに関しても現れ、連携できない壁に面している部屋自体は連携されましたが、部屋の輪郭線には影響が起きました。
 
建具を連携させる場合、ドアまたは窓ツールで配置されている必要がありますが、このBIMデータは、全てドアまたは窓ツールを使用していたため、問題なく連携されました。
 
ここまでの修正を行ったことで、通り芯、壁、部屋、建具の連携できる部分については連携することができました。
 
 
2つの実例を紹介しましたが、上記の要因のみが連携における主なエラーの原因であるとは言えず、BIMデータはプロジェクトごとにさまざまなツールやソフトを駆使して作成するため、連携のエラーを起こす原因も多岐にわたってしまうことが予想されます。
 
すなわち、BIMデータごとにエラーの原因を究明し、修正・調整を行うことは必然になるといえるでしょう。

断面形状マネージャによる不具合

図-3 断面形状マネージャによる不具合



 

仕上情報について

最後に、仕上情報の連携について紹介します。
 
これまでの実例では、モデル自体の連携を主に紹介しましたが、BIMで最も重要なI(インフォメーション)の部分についても、連携が可能です。
 
まず壁の仕上情報については、Revit、Archicadともに、下地と構造体を一体とした壁(以下、複合壁)を配置することで連携可能です(図-4)。
 
部屋の仕上情報は、Revitなら部屋の「インスタンスパラメータ」、Archicadなら「ゾーンスタンプ」か「分類とプロパティ」に仕上(例えばビニールクロス)の情報を与えることで連携が可能となります。
 
紹介した各モデルはパラメータに仕上情報が設定されており、ダイレクト連携を行うことで、複合壁の構造体のみが間仕
切として連携され、部屋の仕上と複合壁の下地が部屋情報として連携されました(図-5)。
 
積算上、間仕切として計上するのは構造体のみで、下地については部屋の下地として計上することが多いため、このような連携状況は理想的だといえます。
 
BIMモデルは外壁、屋根、建具の仕上情報も持っていましたが、それらの連携は現状ではまだ課題も多いと言わざるを得ません。
 
外壁と屋根を連携するためには、元より積算連携を意識した作成方法をとる必要があることが分かっていますが、これはBIMデータを作成する設計者を含めたモデラー側への足枷となってしまう上に、情報の連携なども不具合が発生しやすく、得られるメリットが小さいと感じます。
 
建具についても、モデリング方法によって員数の相違が発生する場合や、表面仕上などの情報に関しては連携できないといった点も課題が残ります。
 
こちらについては、今後の積算ソフトのバージョンアップなどを期待したい部分です。

複合壁

図-4 複合壁


間仕切と部屋の仕上情報

図-5 間仕切と部屋の仕上情報



 

まとめ

実例を通して、モデル自体の連携や仕上情報の連携について紹介してきましたが、これらのBIMデータを弊社で連携可能な形に調整するために要した時間と、従来の積算業務時間から連携によって削減された時間は相殺され、効率化という点でメリットが劇的にあるとはまだ言い切れません。
 
しかし、情報を正確に積算へつなぐ精度の向上という点においては十分メリットを感じられます。
 
効率化についても、検証事例が増加することでノウハウは確実に蓄積され、エラー要因の傾向をつかむことや、今後の連携精度が向上するとともに大いに期待できるものと考えています。
 
BIMデータに含まれる情報がいかに多くあったとしても、現時点では限定的な範囲での連携にはなりますが、BIMソフトと積算ソフト双方の理解があれば、「BIMデータで積算はできるのか」の問いに対しては、「できる」と答えます。
 
BIMデータごと、プロジェクトごとに連携できる範囲の見極めは必要であり、またその効果も一定には得られないことも多く、あくまで2D図面が正となる現状では、本来のBIMの概念と違うかもしれませんが、それであっても各社で取り組んだBIMデータを積算に活用していくことは必然と考えます。

 
 

今後に向けて

従来のように各社各様のルールで書かれていた設計図書で積算を行っていたように、各社各様のルールでBIMが作られること、同じ社内であっても作成者によって作り方が違うことは問題ではありません。
 
もちろん情報の入れ方、パラメータの命名、使い方やモデリング方法などを、ある程度のルールに基づいて行う方が連携の可能性は高まりますし、国内でBIMの標準化に対する動きが見受けられるので、そちらもさらに進めば、なおデータ連携の可能性は高まることになるでしょう。
 
しかし、BIMを積算のために作成するのではなく、あくまでも本来の目的を変えることなく、その上で積算にもデータ連携を行えるようになることが、本来のBIMのあるべき姿ではないでしょうか。
 
そして、それを実現するためには、連携をスムーズに行うための設計BIMと積算をつなぐ、BIMソフト・積算ソフト双方に精通した橋渡し役の存在が必要不可欠になろうかと考えています。
 
その役目をわれわれが担いモデリングする前段階からの支援、各社で現在まで蓄えられたオブジェクトなどの整理を行えば、BIMデータの有効活用へつながり、これからのさらなるBIM推進および普及の一端を担うことができると考えています。
 

 
 
草苅 秀和
DX推進室長 /1980年兵庫生まれ
一級建築士・建築コスト管理士
近畿大学卒業。入社後、構造積算に従事し、10年以上構造統括マネジャーを経験後、意匠積算へ異動し、プロジェクトマネジャーを経て、2020年11月のDX推進室立ち上げより現職。
 
 
 
 

株式会社 エステム建築事務所 DX推進室長
草苅 秀和

 
 
【出典】


建設ITガイド 2022
特集2 建築BIM
建設ITガイド_2022年


 



設計事務所にとってのBIMとは?

BIMの良いところ

2008年からBIM(Archicad:図-1)を使用して設計の仕事をしてきて思ったこと。
 
良いところ
・各図面が連動しているから便利(図-2)。
・コミュニケーションツールとして優秀、クライアントだけでなく社内スタッフ、社外パートナーとのイメージ共有が非常に楽(図-3)。
 

困るところ
・BIMが便利過ぎてBIM以外で仕事をすることが嫌になる、よって協力してもらえる社外パートナーが限られてしまう。
・スタッフの育成が大変。
 
これらをもとに良いところについてはもちろんですが、困るところをそのまま話して終わるのではなく、それらを解決するためにやっていること(これからやること)をお話しさせていただきます。

 
 

Archicad

図-1

BIMの良いところ

図-2


BIMの良いところ

図-3



 

設計、デザイン検討ツールとしてのBIM

今となっては当たり前のことですが、各図面が連動しています。
 
これは非常に便利です。
自分が建物を企画デザインしている際に、2Dと3Dを行き来しながらあらゆる角度で確認することができる。
 
2Dでモデルを入力して3Dに切り替えて、そのモデルがかっこいいのか悪いのか、視認性や安全性など、BIMモデル内を歩き回って点検して、気になることを修正しながらモデルを整えていく。
 
これを大量にスピーディーに繰り返しブラッシュアップさせていく。
 
これは2Dと3Dが連動しているから可能なことで、2DCAD+モデリングソフトの組み合わせだと、スピードと手間によってパフォーマンスはとても落ちてしまいます。
 
自分の頭で想像したモデルが本当にいいものなのか自問自答を繰り返す設計、デザイン作業にとって絶対必要なアイテムだと考えています(図-4、5)。
 
さらに歩を進めた基本設計、実施設計でもその連動性とスピードはもちろん、シミュレーションによる開口部の検討、詳細な納まりの検討、CGによる仕上げ材の検討は素晴らしい効果を発揮します(図-6、7、8)。

設計、デザイン検討ツールとしてのBIM

図-4

設計、デザイン検討ツールとしてのBIM

図-5


設計、デザイン検討ツールとしてのBIM

図-6

設計、デザイン検討ツールとしてのBIM

図-7


設計、デザイン検討ツールとしてのBIM

図-8



 

コミュニケーションツールとしてのBIM

自社で検討した設計案、デザインをクライアントに正確に伝えることは何より大切だと考えます。
 
自分自身でどんなに良い設計をしている認識があっても、クライアントにとっての最高の設計ではない可能性があります。
 
建物をお試しで建てることはできませんが、図面とBIMモデルを使用して体験をしてもらうことは可能です。
 
なるべくたくさんの情報をクライアントにお伝えして見てもらい、気に入るところや気に入らないところ、さまざまな意見やコメントをいただきながら案をブラッシュアップさせていき、設計案をクライアントにとっての最高の状態に近づけていきます。
 
このコミュニケーションを取るためにBIMのモデルベースの設計はシンプルに『見える』ので非常に便利です。
 
きれいにレンダリングをかけてもいいし、あえてスピード重視でArchicadの作業画面を見て編集しながら打合せを行うこともあります。
 
とにかく大量の情報を分かりやすくキャッチボールしていくことが大切だと考えています(図-9、10)。

コミュニケーションツールとしてのBIM

図-9

コミュニケーションツールとしてのBIM

図-10



 

Zoomなどの遠隔コミュニケーションに役立つBIM

コロナ禍でリモート打合せが浸透してきましたが、BIMとZoomの親和性は非常に素晴らしいです。
 
設計の打合せではArchicadの画面を共有してクライアントと打合せを行います。
 
オフラインではノートPCでArchicadの画面を一緒に見ながら打合せをしているので、基本的にはほぼ一緒です。
 
むしろ大人数の場合はオフラインよりオンラインの方が見やすいです(各自の目の前に画面があるので)。
 
これによって遠隔地の仕事でも、こまめにクライアントとコミュニケーションを取りながら設計打合せを進めていくことが可能になりました。
施工中の現場打合せまでZoomというわけにはいきませんが(図-11)。

Zoomなどの遠隔コミュニケーションに役立つBIM

図-11



 

スタッフの成長、仕事の共有について

社内で若いスタッフを見ていて思うこと。
 
3D(BIM)をベースで仕事をしていると、実際に形を見ながら仕事をしているので理解が早く(分かりやすいから)成長が早い。
 
もともと設計(2D)は、【頭の中で想像する(3D)→図面化する(2D)→実際に建てる(3D)】というプロセスなので、頭の中の内容を2Dに変換するというスキルが必須です。
 
BIM設計(3D)は、【頭の中で想像する(3D)→モデル化する(3D)図面化する(2D)→実際に建てる(3D)】とモデル化・図面化を一緒に行うことができるので、プロセスがシンプルです。
なので、今の若いスタッフは成長が早いのではないかと思っています。
 
ただし、正確なモデルを作ったり、いろいろな寸法を押さえたりするためには、従来の建築の知識は必須のため、【BIMができる=設計ができる】にならないので、従来どおりの教育もとても大切です。
 
また、社内で仕事を共有する際にもBIMの『見える』ところが非常に活躍します。
 
図面はもちろん、モデルを見ながら打合せすることで、その仕事の概要を簡単に伝達することが可能です。
 
僕たちは3拠点(東京、栃木、新潟)をリモートでつないで活動しているので、『見える』コミュニケーションは仕事を共有する上で必須になります。

 
 

テンプレ化

一人でArchicadを使用して仕事をしていくのであれば、自分だけがモデルの内容を理解していればよいのですが、複数の人間が関わって仕事をするためには秩序が必要になります。
 
ArchicadにはBIM特有の大量の設定があります。
それらを整理してシステム化を行い、運営をルール化することは非常に手間と時間がかかります。
 
ですが、そこをアバウトにしてしまうと仕事の進め方がそれぞれのスタッフに依存してしまうので、協力や引き継ぎなどが非常に煩雑になってしまいます。
 
BIMマネージャー的立場のスタッフと打合せを繰り返しながら、自社テンプレートの作成を進めています。
これにより社内のBIM標準化だけでなく、外部パートナーとの連携も強化していこうと考えています(図-12)。

テンプレ化

図-12



 

教育について

僕たちはBIMをメインツールとして仕事をしているので、新しくスタッフが入った際に通常の仕事の進め方に加えてBIMツールの教育が必要になります。
 
これまでは先輩スタッフがあれこれ教えながら習得させていましたが、技術を標準化させることが大変なので、テンプレートに加え、マニュアルと教材の開発を進めています。
 
テンプレートを整備することで、レイヤーなどの各種設定や一覧表などの機能を初心者段階から混乱せずに仕事を進めていけるようにしています。
 
マニュアルを整備することで、各種ツールの操作で困った際になるべく他のスタッフの手を止めずに進めることができるようにしています。
 
そして、教材を整備することによって、意匠設計事務所として2008年から積み上げてきたノウハウを、新人や中途スタッフに使えることはもちろんですが、自分たちでも整理した上で再理解を進めています(図-13、14)。

教育について

図-13

教育について

図-14



 

社外とのネットワーク

仕事を進めていく上でさまざまなパートナー企業との連携が必要となります。
 
パートナーとの意思共有のためにはBIMの『見える』ところは非常に有効ですが、実際に全ての仕事をパートナーと一緒にBIMで進めていくとなると、途端にハードルが上がります。

 
 

[BIMを全く使用していないパートナーの場合]
そもそも普段からBIMを使用していないので、こちらがBIMで作成した図面を編集したり、プロットしたりという作業になります。
 
複数のCADソフトを使用して仕事を進めていくことになるので、パースなどで意思共有できてはいるけれど、図面は連動していないという状態になります。
この状態からBIMで一緒に仕事ができるようにするためには自力で覚えていただくか、僕たちがレクチャーするかになりますが、どちらにせよ時間とコストがかかるので現実的にはすぐに解決しません。

 
 

[BIMをすでに使用しているパートナーの場合]
通常からBIMを使用されているパートナーとの協業であれば、モデリングから図面化まで問題なく進めていくことが可能です。
 
問題点を挙げるとすれば(これは仕方のないことでもあるのですが)各社モデルの作り方や、データの作り方は自社ルールがあるのでおのおの違ってきます。
他社が作成したBIMデータを編集することは、正直言ってかなり大変です。
なので、協業する上で仕事の分担や頼み方をルール化するか、そもそものデータの作成方法をテンプレート含めルール化するかのどちらかが必要だと思います。
 
自社の中でのネットワークや教育を整えることは大切ですが、さらに広がっていくためにはパートナーとのさまざまな共有が重要だと考えています(図-15)。

社外とのネットワーク

図-15



 

解決するためのBIMスクール(2022年8月オープン予定)

僕はもともとGRAPHISOFT(Archicadの会社)で講師をしたり、専門学校でBIMを教えていたりしたので教えることは楽しいと考えています。
また、常務取締役である弟は今も専門学校でBIMを教えています。
 
これまで社内の教育、標準化やパートナーとの協業など、仕事を進めていく上で作成した教材をベースに、BIMのスクールを作ることになりました。
 
内容としては、各種基本操作、企画設計、基本設計、実施設計、プレゼン資料作成という内容をオンライン、オフライン両方で学べるように準備しています。
スクールを整備することによって社内の学習はもちろん、社外のパートナーとの連携も向上させていきます。
 
また、それ以外の方にもArchicadでの仕事の進め方を習得できる機会の一つとしてお役に立てればうれしいなぁと思っています。
まだ、内容はこれからですが、サイトを用意していますので、ご興味がある方はぜひご登録お願いいたします(図-16)。

解決するためのBIMスクール(2022年8月オープン予定)

図-16



 

 

株式会社 横松建築設計事務所 代表取締役
横松 邦明

横松 邦明
IT製造ベンチャー企業在職中に3DCADを使用したデザインに興味を持ち多数のモデリングソフトのスキルを身につける。
その後、横松建築設計事務所に入社。3Dでの設計(BIM)を黎明期(2008年)より取り入れ、新しい設計スタイルを確立する。
現在は東京、栃木を拠点とし国内外で設計活動を行う。本業以外では専門紙等での執筆や各地での講演活動や教育活動を展開している。


 
 
【出典】


建設ITガイド 2022
特集2 建築BIM
建設ITガイド_2022年


 



国土交通省におけるBIM/CIMの取り組み

2022年10月17日

はじめに

測量・調査、設計、施工、維持管理・更新の各段階において、情報を充実させながらBIM/CIMモデルを連携・発展させ、併せて事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易にすることで、一連の建設生産・管理システム全体の効率化・高度化を図ることを目的に、国土交通省ではBIM/CIM(Building / Construction Information Modeling, Management)の普及、定着、効果の把握やルール作りに向けて、2012年度から取り組みを進めている。
BIM/CIMを活用し、事業の初期において集中的に検討することにより、後工程において生じる仕様変更や手戻りの減少(フロントローディング)、複数の工程を同時並行で進め情報共有や共同作業を行うことにより、工期短縮やコスト縮減(コンカレントエンジニアリング)などの効果が期待される。
 
2020年は新型コロナウイルス感染症を契機とし、建設現場における新たな働き方への転換、デジタル技術を駆使したインフラ分野の変革が急速に進み、政府を挙げてデジタル化による社会の変革が求められているところである。
国土交通省においても国民目線に立ち、インフラ分野のデジタル化・スマート化をスピード感を持って強力に推進していくため、インフラ分野のDX推進本部を立ち上げ、建設生産・管理プロセスなどの全面的なデジタル化に向けた取り組みを進めている。
その施策の一つであるBIM/CIMは、2023年度までに小規模なものを除く全ての公共工事について、BIM/CIM活用への転換を目指す。
 
本稿では、これまでのBIM/CIMの導入に向けた取り組みと、今後の取り組みについて紹介する。

 
 

BIM/CIM実施状況

国土交通省では、業務については2012年度から、工事については2013年度からBIM/CIMの試行を進めている。
2020年度のBIM/CIM活用実績は515件(業務389件、工事126件)となり、前年度の361件(業務254件、工事107件)を大きく上回り、BIM/CIMの活用が進んでいることが分かる(図-1)。
 
さらなるBIM/CIMの活用に向けて、2019年3月、i-Constructionモデル事務所を10事務所、i-Constructionサポート事務所(i-Constructionモデル事務所を含む)を53事務所設置した。
i-Constructionモデル事務所においては先導的に3次元モデルを活用し、各地方整備局等内のリーディング事務所として3次元情報活用モデル事業を推進しており、i-Constructionサポート事務所では地方自治体からの相談対応などを行っている。
2020年度にはi-Constructionモデル事務所として新たに3事務所追加し、取り組みを進めている(図-2)。
各事務所におけるBIM/CIMの活用事例は「BIM/CIM事例集」として活用効果や課題をとりまとめ、公開している。

BIM/CIM活用業務・工事の推移

図-1 BIM/CIM活用業務・工事の推移


i-Constructionモデル事務所

図-2 i-Constructionモデル事務所



 

BIM/CIM原則適用について

2018年度にBIM/CIM推進委員会を設置し、関係団体が一体となりBIM/CIM推進に関する目標や方針について検討を進めており、具体的な施策の検討に当たっては、BIM/CIM推進委員会の下の4つの各WGにおいて議論を行うともに相互に連携を図っている。
2020年度には国際標準を踏まえた対応の重要性に鑑み、WGの体制を見直し、基準要領等検討WGと国際標準対応WGを統合し、基準・国際検討WGとして議論を行っている。
 
表-1に示すように、2023年度の原則適用に向け、段階的な適用範囲の拡大を検討している。
 
特段、先行させてBIM/CIMを活用する大規模構造物は2021年度から全ての詳細設計で原則適用としており、2022年度には全ての詳細設計と工事において原則適用とする。
また、大規模構造物以外については2022年度から全ての詳細設計で原則適用とし、2023年度から全ての詳細設計と工事で原則適用とする。
原則適用の対象とする工種は、従前から検討を進め、知見が蓄積されてきた一般土木と鋼橋上部を対象としている。
 
業務、工事におけるBIM/CIM原則適用において何を実施するのかということについては、2020年9月の第4回BIM/CIM推進委員会において示しており、詳細設計については2020年度に策定した「3次元モデル成果物作成要領(案)」に基
づき3次元モデルを作成し、納品を実施することでBIM/CIM原則適用とし、工事については2022年度以降、「3次元モデル成果物作成要領(案)」に基づく成果品がある場合、これを用いた設計図書の照査、施工計画の検討を実施することで
BIM/CIM原則適用とする。
 
これまでBIM/CIM活用業務または工事においては、円滑な事業の実施および基準要領などの改定に向けた課題抽出を目的に、リクワイヤメントとして発注者が要求事項を指定する、もしくは受発注者協議で決定し、検討してきたところである。
近年、事業においてBIM/CIMを活用する際に必要となる基準要領などがおおむね整備されてきたことから、2020年度にリクワイヤメント実施目的や内容について見直しを行い、2021年度から運用を開始した。
基準要領などの課題抽出を目的とした検討は別途行うこととし、今後は円滑な事業実施のために発注者が必要であると判断した場合にリクワイヤメントを設定し、受注者はBIM/CIMを活用してリクワイヤメントについて検討を行うこととしている。
BIM/CIM原則適用においては、先述した内容について実施することを必須としており、リクワイヤメントの検討は必須ではなく、発注者が指定した場合のみ行う任意の検討事項としている。
 
これらを実施することにより2023年度には図-3に示している内容が実現できると想定している。

令和5年度のBIM/CIM原則適用に向けた進め方

表-1 令和5年度のBIM/CIM原則適用に向けた進め方


令和5年度のBIM/CIM原則適用に向けた進め方

図-3 令和5年度のBIM/CIM原則適用に向けた進め方



 

原則適用に向けた取り組み

国土交通省ではBIM/CIMの効率的かつ効果的な活用に向け、BIM/CIM推進委員会などの議論を踏まえ、BIM/CIMに関する基準類の整備を進めている(図-4-14-2)。
これまでに整備した主たる要領とその他の取り組みについて紹介する。

各段階の事業実施において適用または参照する基準・要領等

図-4-1 各段階の事業実施において適用または参照する基準・要領等


BIM/CIM仕様・機能要件

図-4-2 BIM/CIM仕様・機能要件


(1)BIM/CIM活用ガイドライン(案)

2020年度には、「CIM導入ガイドライン(案)」を設計業務等共通仕様書の構成に合わせ「BIM/CIM活用ガイドライン(案)」へ全面的に再編した。
「CIM導入ガイドライン(案)」は公共事業に携わる関係者(発注者、受注者など)がBIM/CIMを円滑に導入できることを目的に作成しているが、BIM/CIMモデルを作成することに重点を置いた記載となっており、事業におけるBIM/CIMの活用場面や効果に関する記載が希薄であった。
このため、BIM/CIM活用業務や工事で得られた知見を踏まえ、事業の実施に主眼を置き各段階の活用方法を示すとともに、各段階の構造物モデルに必要となる形状の詳細度、属性情報の目安を示すことを念頭に、「BIM/CIM活用ガイドライン(案)」として改定した。

(2)3次元モデル成果物作成要領(案)

工事における契約図書を従来どおり2次元図面とすることを前提として、設計品質の向上に資するとともに、後工程において契約図書に準じて3次元モデルを活用できるよう、詳細設計業務における3次元モデル成果物の作成方法および要件を示すことを目的に、「3次元モデル成果物作成要領(案)」を策定した。
今後、詳細設計業務においてBIM/CIM原則適用とする場合は本要領に基づいてモデルを作成し、納品することとなる。
 
詳細設計の最終成果物として3次元モデルだけでなく2次元図面の作成も求めることから、2次元図面の全ての情報を3次元モデルとして作成するのではなく、本要領に基づくBIM/CIM活用目的を達成するために必要となる最小限の仕様を3次元モデルとして作成することを求めている。
単に3次元モデル成果物の要件を定めるだけでなく、設計当初から3次元モデルを作成し、関係者協議、受発注者による設計確認、設計照査を実施の上、最終的な3次元モデル成果物(本要領では詳細度300を基本とし、寸法線や注記などの付与は必須としない)につなげるための基本的な作成方法を掲示している。
 
現在の適用範囲は、「BIM/CIM活用ガイドライン(案)」における道路土工、山岳トンネル、橋梁、河川(樋門・樋管)を対象としており、今後適用範囲の拡大および要領の見直しを行っていく。
 
また、2021年度は、ICT施工時の3次元設計データ作成の作業を省力化することを目的に、詳細設計時に作成した3次元モデルをICT施工で可能な限り活用できる3次元モデルの作成仕様について検討しており、検討成果を本要領へ反映することを予定している。

(3)人材育成等による受発注者支援

今後のBIM/CIM活用拡大に向け、人材育成についてもさらに積極的に取り組んでいく。
 
受発注者双方の人材育成において、3次元情報の活用のために習得すべき専門的な知識や技能を整理し、2021年6月に「BIM/CIM教育要領(案)」の改定を行った。
人材育成で目指す「人材」とは、土木工学分野の専門知識に加え、BIM/CIMなどの3次元情報の利活用(モデル作成、照査など)ができる能力・技術を有する者を想定している。
 
「BIM/CIM教育要領(案)」では、期待する学習目標を「入門」、「初級」、「中級」と「上級」ごとに設定し、「入門」では、「BIM/CIMの利活用の体系」の学習に向けた事前学習として「BIM/CIMの技術的な体系」の概要の理解を目標としており、「初級」では、「入門」の内容に加え、BIM/CIMに関する基礎的な技術の理解と「BIM/CIM活用ガイドライン(案)」を理解し、自身が担当する実務能力の向上を目標としている。
 
また、本要領に合わせて入門編、初級編の受発注者共通項目に関する研修コンテンツを作成しており、全国の地方整備局などの研修や関係団体などで活用できるよう、「BIM/CIMポータルサイト」に公開している(図-5)。
公開しているコンテンツは、PDF形式の資料に加え、これらの資料をeラーニングとして学習できるよう、動画コンテンツも公開している。
 
また、BIM/CIMをより効率的、効果的に活用していくためには、基準類の整備だけではなく、それらを活用することができる環境を整備していく必要がある。
 
受発注者の支援については研修コンテンツの公開による人材育成だけでなく、国土技術政策総合研究所が主体となり受発注者がクラウド上で3次元モデルの作成や共有などを行い、BIM/CIMモデルなどのデータを一元的に集約するシステムの構築を進めている。
本システムが本格的に運用されることで、受発注者双方の作業環境の構築、円滑な情報共有を行うことができる。

BIM/CIMポータルサイト

図-5 BIM/CIMポータルサイト


(4)その他の取り組み

これらの取り組み以外に2021年度は、3次元測量において取得された点群データがデータ容量などの問題から後工程の設計段階で活用することが難しいという課題を踏まえ、精度を確保するための手法を検討した上で、設計段階で活用可能な測量時の3次元の仕様についてマニュアルとしてとりまとめる予定である。
 
また、これまでi-Constructionモデル事務所で行ってきた取り組み事例を基に、複数の業務・工事が並行して行われる際、BIM/CIMを活用して効率的に事業監理を行う場合の具体的な運用方法について検討し、ガイドラインとしてとりまとめる予定である。

 
 

おわりに

2012年度から検討を進めてきたBIM/CIMについて、これまで活用件数を着実に伸ばしてきたが、2023年度の小規模なものを除く全ての公共工事への原則適用の対象となる母数を踏まえると、活用件数は今後飛躍的に増加させる必要がある。
ただし、BIM/CIMの活用件数はその普及に関する指標の一つに過ぎず、BIM/CIMは生産性向上、受発注者双方の作業効率化・高度化に資する一つの手段であるということを念頭に置いて推進する必要がある。
 
測量・調査、設計、施工、維持管理・更新の各段階におけるBIM/CIMの活用だけでなく、建設生産プロセス全体で一気通貫したBIM/CIMの活用を見据えなければいけない。
 
また、建設現場の生産性向上を図るためには、i-Constructionの取り組みを国の直轄工事以外にも拡大していくことが重要である。
このため、地方公共団体などに対して、発注関係者の集まる発注者協議会などの場を通じて、BIM/CIMをはじめとしたi-Constructionに関するさまざまな基準類について周知を図りつつ、連携して取り組みを進めている。
 
このほか今後はBIM/CIMに係る各種基準類についてもより使いやすく、分かりやすい内容とするため、BIM/CIMを活用して得られた課題への対応や関連基準類の整備状況を踏まえて継続的に改善を図っていくこととしており、i-Construction、BIM/CIMの取り組みの普及、進展を図ることで建設現場における生産性向上をより一層実感できる環境の整備を進めていく。

 

 

国土交通省 大臣官房 技術調査課

 
 
【出典】


建設ITガイド 2022
特集1 建設DX、BIM/CIM
建設ITガイド_2022年


 
 



設計施工一貫方式におけるBIMワークフローの効果検証・課題分析-国土交通省BIM連携事業検証と運用について-

2022年10月15日

設計施工一貫のBIM標準ワークフローの定義、各ステージの効果検証・報告

 

はじめに

令和2年度、国土交通省にてBIM推進会議連携事業の応募者選定があり、当社が応募した「設計施工一貫方式におけるBIMワークフローの効果検証・課題分析」が、連携事業者として選定された。
ゼネコンにおける設計施工一貫方式でのBIMの効果的な活用方法の検証、それらを踏まえたBIMを主体とした新たな業務フローを見いだす目的として取り組んだ。

 
 

検証の概要について

本プロジェクトは、実施案件であった地上3階建てRC造の共同住宅を検証題材とした。
検証の方法として、従来の手法による実際の設計、工事と並行して、BIMを用いた場合の設計から工事まで活用効果を比較し、効果的な手法の抽出、ワークフローへの反映を行った。

検証物件外観

図-1 検証物件外観



 

プロジェクトの事前準備

着手時に実施設計から維持管理までのBIM活用について目的を明確化するためにBIM実行計画書を作成した。
この実行計画書を基に、定期的に関係者がプロジェクトの推移を確認し、目的の達成度合い、解決が必要な課題の抽出を行った。
 
また、各フェーズで目標とするLOD(LevelOfDetail)およびLOI(LevelOfInformation)を策定し、設計・施工・維持管理のプロセスそれぞれのステージでの情報の確定度を、エレメント別に定義する試みを実施し、検証の材料とした。

 
 

実施設計における取り組み

設計段階での取り組みの目的は、従来設計と比較しBIMによる設計のメリット、課題を抽出し、新たにBIMを中心とした設計ワークフローを作ることとした。
また、BIMのメリットである一つのデータを関係者全員で横断的に共有することでモデル・図書の精度向上、データ連携の効率化を図る。
 
設計段階での具体的な取り組みは下記の2点である。
 
①BIMを統括するBIMMg(BIMマネージャー)およびBIMOp(BIMオペレーター)による専門チームが参画し、モデルに関わる業務を選業することでモデルの精度、各種連携の効率化を検証。
②BIMデータの横断的な活用としてS4段階で施工技術者による施工図の前倒し作成(フロントローディング)。
 
結果としては、設計完了時に従来の2D設計に比べ不整合が約80%減少した。
これはBIMMgを主体とするBIM専門チームが実施設計に参画し、モデルの整理が行われたことにより、図面の整合性、積算や後工程との連携に一定の効果があった。
また、同じデータを活用し早期に施工図に着手することで、施工図レベルでの精度、整合性が確保できたことが大きい。
さらに、一つのデータを横断的に共有したことで、着工時に整合性の取れた設計図・施工図の提供が可能となり、現場で行っていた各分野間の調整を済ませた状態でモデルを引き継ぐことができたため、現場での手戻りが少なく生産性の向上の効果も大きかった。

 
 

BIM標準ワークフローの作成

今回の設計段階での取り組みから見えてきた、BIMによる効果を最大限生かすために、従来の設計ワークフローの変革を行った。
具体的には、①BIM専門チームによる実施設計、②施工情報を設計段階で取り込むフロントローディング、③プロセス横断型のBIMデータの一貫活用を主軸とした新たな設計ワークフローを作成し、運用を開始した。
 
さらに、本検証後の運用で見えてきた新たな問題点を解決し、より効果的にBIMを取り入れるため、ワークフローのブラッシュアップと併せて組織体制の見直し、BIM人材の強化を行っている。
 
竣工、維持管理についてもワークフローの見直しを行い、BIMのメリットを生かし会社全体の業務改革に取り組んでいる。

新たな設計ワークフローの構築

図-2 新たな設計ワークフローの構築



 

積算検証について

意匠、構造の設計Revitモデルを、積算ソフトΗΕΛΙΟΣ(ヘリオス)に取り込む手法を採用した。
対象部位は構造躯体および内部仕上げとし、整合調整されたBIMデータを利用することで、インプット情報の精度が上がり、より精度の高い積算手法が実現可能である。
 
一方、BIM連携後のチェックに一定数の時間が必要なため、BIM連携後のチェック項目の洗い出しを、より効率的に行うための改善案の検討を日積サーベイ社と共同で行った。

積算ソフトΗΕΛΙΟΣ(ヘリオス)との連携

図-3 積算ソフトΗΕΛΙΟΣ(ヘリオス)との連携



 

環境影響評価の算定積算手法

循環型社会の構築に向けた展開として、効率的に環境影響評価を行う手法について検討を行った。
LCA(Life Cycle Assessment)の中でも最も認知度が高いCO²の排出量を試算し、その算定結果を一般公表するカーボンフットプリント認証を取得した。
実務レベルでの積算数量内訳明細書を活用することは有効であり、単位換算データベース拡充など必要な対策を行った。

 
 

社内施工技術コンサル早期参画

実施設計2の段階で施工技術者が参画することで、施工図作成のフロントローディング効果を検証した。
着工時に、施工目線での納まり調整がされたBIMモデルと、モデルに連動した施工図があることで、作業所での検討作業の省力化ができ、着工から総合図の承認までの期間を、総じて前倒しにすることが可能となった。

 
 

共通データ環境の整備

設計・施工通して共通したBIMモデルを利用するため、共通データ環境を整備した。
 
アプリケーションの選定については、基幹ソフトと合わせた一社単独で検証を行ったが、操作性やコストにおいて最適解を求め複数のアプリケーションで検証を行っている。
 
また、データ権限設定・フォルダ構成やネーミングルールなどの定義を行い、運用を開始した。
引き続き、最新機能の確認や専門工事業者との連携手引きについて、運用しながら検証している。

 
 

設計確定範囲の掲示方法について

設計の確定範囲の提示方法として、モデルとセットでLOD、LOIの状態を示した資料を引き継ぐことが明確な方法と考えた。
当社標準のLOD・LOI表に則しているものよりも、特記として伝達する事項のみを受け渡すことで、業務負担とならないように考えた。
 
また、施工へ引き継いだ後に設計変更が生じた際の対応については、設計変更の起因別に「施主要望」「設計要望」「工事要望」に仕分けし、モデル更新者・責任者が誰になるかを明確に整理した分担表のもと対応することとした。

モデル更新分担表

図-5 モデル更新分担表



 

LODおよびLOIの最適解

当社ではBIMやその他の情報を横断して活用するための手法として、当社版のLOD指標によりマネジメントする試みを実施した。
当社従来版のBIMモデル作成区分表を元に、表記方法については米国や英国の事例も参考に検討を進めた。
 
形状と情報を分けて定義し、かつ3Dおよび2Dに区分した計4つの指標で状態整理することで、より明確な情報伝達が可能となった。
さらには、意匠、構造、設備の状態をあえて併記することで、どの情報を優先するか、より明確に定義できた。

 
 

本事業を経て

フロントローディングによる生産性向上実現のため、データ不連続の課題に対しては、設計と施工がワンチーム体制で共通データ環境の下、アジャイル型で業務を実施すれば解決すると考える。
当初懸念していたデータ引き継ぎに関しても、MET(ModelElementTable)に沿った運用により、特段引き継ぎをせずシームレスに受け渡すことができたと考えている。
 
今後の課題は、実践検証を重ね標準のMETを早期に確立することと、METのバリエーションを拡充すること、METのとおりBIMが構成されているかを判断する手法を確立することであり、S6竣工・S7維持管理に対する検証を継続し、実務展開を推し進めていく。

Model Element Tableの整理

図-4 Model Element Tableの整理



 

 

株式会社安藤・間 生産設計部 生産設計グループ
米満 雄太(左)
株式会社安藤・間 生産設計部 施工BIMグループ
福田 篤(右)
福田 篤

米満 雄太


 
 
【出典】


建設ITガイド 2022
特集2 建築BIM
建設ITガイド_2022年


 



発注者目線のBIM -BIMとはナンナノカ-

2022年10月14日

じわり感じるBIM普及の実感

「いよいよBIMが普及期に入ってきている」とは言っても、設計や施工のためのツールとして、専門的に使用する人たちの間での話だ。
当然だが、専門性の高い業務に有用なツールの場合、まずはそのスキルを直接業務に反映させることを生業としている組織を中心に普及し、じわじわと裾野を広げ、一般化していく。
設計図面が手書きから二次元CADに置き換わっていくときも同様であったが、二次元CADの場合、発注者として成果品に含まれる情報量や成果品である図面の運用に本質的な差異は少なく、発注者が主体的に「ツール」そのものを指定したり、運用を規定したりする必要はなかった。

BIMとCADは似て非なるもの

しかし、実際のプロジェクトにおいてBIM運用を経験してみると、BIMとCADは全く異なるツールであり、発注者としてもBIM運用の方針と成果について、明確な意思を示す必要があると認識した方がよいことが分かった。
特にBIMモデルのLOD(※1)や付加される属性データの取り扱いによって、有効にBIMが運用できる業務範囲に影響が出ることに注意が必要だ。

(※1)Level of Development : 日本建築学会技術報告集 http://www.jstage.ist.go.jp/article/aijt/24/56/24_333/_article/-char/jp/

おまかせ時代の終焉か

発注者が竣工引渡を受ける建物そのもののスペックや品質ではなく、設計や施工の過程に使用されるツールに何らかの意思を示すことは、「請負」という日本特有の契約システムそのものに手を出し、目を向ける行為であり、問題は大きい。
しかしながら、その根本に踏み込むことがBIMの本質的普及につながり、日本の建築生産システムが真の国際標準に肩を並べるために不可欠なことと思う。

 
 

現場でBIMは大活躍

当社のBIM運用は、令和2年度から令和3年度にわたり国土交通省のBIMモデル事業に採択されたことが大きなきっかけである(図-1)。
令和2年度は、当社の「プレファス吉祥寺」建設(以下、本プロジェクト)に係る日建設計の設計が完了し施工者が前田建設工業に決定した後、その施工期間中に公募があった。
当社は設計段階からBIMの運用を積極的に行い、施工者に対しても現場運営においてBIMモデルの活用を見積要項に盛り込んでいた経緯もあり、維持管理BIMの検証をテーマに応募し、採択に至ったと考えている。(※2)

令和3年度は、「前年度の成果、知見をベースに、プロジェクトのより上流である設計段階において適切なBIM運用の指示を発注者として発信することが、より具体的な成果につながる」との思いで設計者と本プロジェクトを題材に再度応募し、採択に至っている。(※3)

(※2) 参照:国土交通省ホームページhttps://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_fr_000119.html
(※3) 参照:国土交通省ホームページhttps://r03.bim-jigyou.jp/

モデル事業に荒井商店が参加するに至った経緯

図-1 モデル事業に荒井商店が参加するに至った経緯
出典:国土交通省令和三年度BIMモデル事業中間発表


BIM調整会議は喧々囂々だが盛り上がる

本プロジェクトでは、現場運営において積極的なBIM活用を行った(図-2)。
着工後、初期段階において通常の現場定例と並行して、BIM調整会議を隔週にて開催し、発注者、設計者、施工者、サブコン、専門工事業者が一堂に会し、各社のデータを統合したクラウド上の三次元モデルをモニターで確認しながら、主に意匠、構造と設備の不整合、発注者から建物管理目線での設計変更指示を行った。
この段階で関係者が三次元モデルを共有し、問題点を目の当たりにしながら喧々囂々討議ができたことは非常に効果的で、実際に施工段階での手戻りは最小限にできたと感じている。
竣工引渡後の運用、管理においても適切な点検口、マンホールの配置、人の出入り、通行を考慮したバックヤード計画が実現した。

維持管理業務_施工時に保守点検ルート等の検証

図-2 維持管理業務_施工時に保守点検ルート等の検証
出典: 国土交通省令和二年度BIMモデル事業成果品  図版提供:前田建設工業株式会社


仮設計画の見える化

前田建設工業の現場所長とBIM運用の有用性について討議した際には、実際の施工建物に関しての有効性も認識しながら、より直接的な運用として、仮設計画への効果も強調している。
BIMモデルとして仮設計画を部材から可視化し、仮設材の数量を検証段階にて正確に把握しながら、効率的な計画、試行錯誤の検証を繰り返すことによって、通常生じる現場での不整合、余剰な発注、仮設の盛替えが大幅に減少し、仮設に関わる想定外の費用削減に大きく貢献したとのことである。

 
 

発注者目線とは何か

当社は発注者であり、所有不動産を長期運用するという事業形態から建物オーナーでもある。
発注者としてBIMの運用を主体的に推進するためには、単に「建物をつくる」という観点以外にBIMモデルを整備する必然性を社内に対して説明できないと、コストをかける合理性が成り立たないことになる。
そのためにも、当社に限らず多くの建物オーナーが直面しているであろう課題を抽出する必要があった(図-3)。
特に多数の不動産を所有している場合、長期にわたって所有、運用を続けることで蓄積しているエビデンスも多量で多岐にわたり、保管・活用に苦慮しているケースが多い。
これら貴重な社内資産を有効に活用することがBIM運用の有効性の大きな切り口となる。

建物オーナーにとっての課題とは

図-3 建物オーナーにとっての課題とは
出典:国土交通省令和三年度BIMモデル事業中間発表


BIM運用でどう変わる

この問題点を解決する一つの手段として、BIMモデル運用が起点になるのではないかと期待している。
 
当然ながら、BIMモデル活用は手段であり、目的ではない。
開発段階でBIMモデルが作成、活用され最終成果品としてBIMモデルが整備されている不動産については、維持管理システムとの連携をいかに実現するか、社内担当部署と外部管理会社との連携をどのように構築するか、長期間にわたる維持管理において、改修など建物に変更が生じた場合のBIMモデルの整合性を誰がどのように対応するか、といった実務的側面の検証が必要となる。
しかしBIM以前の不動産に対してはどのように考えるべきか。
紙ベースの竣工図から一物件一物件BIMモデルを作成する労力、コストに見合う合理性を見いだせるのかが、これから建物オーナーが真剣に向き合うべき大きな課題であり、この問題を認識して初めてBIM運用の意識が高まると思う。
そこで発注者が、BIMを積極的に推進する動機となるであろう項目をまとめてみた(図-4)。
結局、各種エビデンスがアナログデータからデジタルデータに置き換わっていく時代の変化と呼応し、BIM運用の可能性、合理性が高まっていくとも言えそうだ。

オーナーにとってBIMに期待すること

図-4 オーナーにとってBIMに期待すること
出典:国土交通省令和三年度BIMモデル事業中間発表


BIMは付加価値となり得るか

図-4を見ていただくと、他の項目と性質の異なる項目があることにお気付きいただけると思う。
「⑤付加価値の創出」である。
この項目を具体的に示せることにより、発注者がコストを投資する合理性、「錦の御旗」となり本格的な普及を加速する可能性は大きい。
そもそも、国内での不動産評価は長年にわたり「現物主義」であった。
そこに土地があり、建物が存在し、テナントが入居し、毎月現金として家賃収益がある、これこそが不動産価値そのもので、その価値を証明するエビデンスは二次的、付加的なもので「現状有姿取引」(※4)という用語が、当たり前に流通していることでその根強さは推して知るべきである。
 
ところが、この価値観を大きく揺さぶる大事件が二度起こっている。
「1991~1993年のバブル崩壊」と「2008年のリーマンショック」である。
 
これらによって、国内の不動産マーケットは大打撃を受け、多くの不動産会社が破綻や事業縮小を余儀なくされた。
これに代わって、海外から不動産投資資金が流入し、国内の不動産マーケットも息を吹き返すこととなるのだが、ここで海外不動産取引の常識の洗礼を受ける。
海外の不動産投資会社は不動産の価値を証明する「エビデンス」により重きを置いて取引を行っており、この頃から国内不動産会社でも「デューデリジェンス」「エンジニアリングレポート」といった単語が使われ始めるようになった。
 
つまり、もともとBIMを開発し、BIM運用の先進国となっている欧米と日本では不動産価値の考え方に根本的相違があり、BIMは「エビデンス」に基づく不動産価値の創出という概念を土台として構築されたシステムなのである。
 
このことをモデル化したのが、図-5のISO19650である。
ここで重要なのは図-5の上流である左側(デザイン、コンストラクション)より右側のAIMに起点番号である「1」が表示されていることだ。
つまり、不動産にまつわるエビデンスは結果として得られるものではなく、最上流で発注者が規定して、その契約に基づき納品されるべきものであるということだ。
 
(※4)現物の不動産の現状を最優先とし、そのままの状態を前提に売買等取引を行うこと

ISO19650情報管理プロセスの概要と図

図-5 ISO19650情報管理プロセスの概要と図


発注者として要件を明文化する

次にニュージーランドのEIRに添付されている「BIMUSE」という資料をベースとし、発注者の求めるBIMの目的をプロットした表を見ていただきたい(図-6)。
BIM運用に際し発注者の要件を明確に伝えるためにはプロジェクトの上流から下流まで細分化し、それぞれに発注者の意志を示す必要がある。
この考え方、作業は今までの不動産事業では行ってこなかった「新たな」プロセスだ。
前項で述べたAIMを起点とするプロジェクトフローを組み立てるために必須の作業であり、この作業をベースとしてBIM運用は構築されるべきだ。

ISO19650情報管理プロセスの概要と図

図-6 BIM活用の明文化



 

なぜBIM発注なのか

結局のところ、BIM運用は発注者にとってメリットはあるのだろうか。
多大な労力とコストを投下して「整ったBIMモデル」の納品を受けることに意味はあるのだろうか。
先ほども述べたように図面が手書きからCADになり、二次元モデルから三次元モデルへ、そしてBIMモデルに至るに従い、モデルに含まれる要素は多くなり複雑になる。
合わせて、データがアナログからデジタルに切り替わることで、データの情報の加工が容易になり、情報のコピーや伝達をしても、劣化しないという特性が加わり、データ運用の幅が広がると同時に、その管理にはより厳格な取り扱いと著作権などの権利に対する新たなルールが必要になる。
以前の「図面」はもはや「図面」ではなく、「不動産情報」(AIM)の集積体となっていくことが近未来の当たり前と考えるべきだろう。
そう考えれば、そのAIMを適切に維持管理、運用するためのツールが必要となり、BIMの本質はそこにこそある。
そうであれば、BIMは発注者こそ積極的に普及に取り組み、日常的に運用されることが重要で、労力とコストの対価として、新たなAIMという果実を得られるようにするべきだ。
不動産資産に対する付加価値たり得るか、は重要な問題ではあるが、付加価値とは結果として得られる評価であり、要は始めるか始めないか、鶏が先か卵が先か、の議論に近しいと思う。
 
いま目の前のコストではなく、直近の未来のことを考えれば、発注者目線でのBIM運用が必要な時期は既に到来している。

 

 

株式会社荒井商店 取締役 技術マネジメント部長
一級建築士 宅地建物取引士 認定登録医業経営コンサルタント
清水 浩司

 
 
【出典】


建設ITガイド 2022
特集2 建築BIM
建設ITガイド_2022年


 



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