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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

i-Constructionの先進的な取り組み事例

2018年6月25日

 

はじめに

現在、わが国の建設産業は、2025年までに生産性を2割向上させることを目標としている。これは、建設労働者のうち約3割を占める高齢者の退職による大幅な労働力不足が懸念されるためである。そこで、ICTを活用することで少ない労働力でこれまでと同等、あるいはそれ以上の成果を上げていかなければならない。2017年3月に国土交通省が推進するi-Constructionの3本柱のうちの一つであるICTの全面的な活用を実施するための15の基準が新訂・改訂されてからもう2 年が経とうとしている。2016年には584件実施され、2017年は700件を超える公告予定があり、全国に急速に活用が進んでいる。
 
本稿ではi-Constructionに関わる弊社の取り組み事例を紹介し、これからの建設業界に向けての一考察をさせていただいた。
 
 

大林組でのi-Constructionの取り組み

①UAVの活用事例
 
これまで大規模土工事では、進捗管理として毎月現況測量を行い、当月の土量を計測していた。現場内を10m×10mに分割し、各メッシュの交点の高さを全て人力で計測する。得られた現況データを用いて、10mごとの現況断面を作成し、これを基に平均断面法を実施し、土量を計算する。計測から計算まで含めると、1週間から2週間を要する非常に手間のかかる作業であった。
 
ところが今ではどうか。10分から20分程度UAVを飛行させ、半日後には現場全域の現況データが作成できる。前月の点群データと比較すれば数分で土量を計算することができる。弊社では2012年からUAVを活用した施工管理を開始したが、今では50を超える現場でUAVを活用している。
 
このようなUAVによる出来形管理が2016年3月に可能になった。国土交通省からUAVを用いた出来形管理要領が提供されたためである。これまで施工中での進捗管理のみに用いていたUAVによる計測が、正式な出来形計測の手法として認められたのである。そこで弊社では、さらなる生産性向上を目的として出来形管理要領の検証を行った。2016年に精度検証を実施し、(一社)日本建設業連合会を通じて国土交通省にさらなるカイゼンを求めた。結果、UAV飛行時のオーバーラップ率が90%から80%に変更され、飛行時間は約半分になった。また座標付け用の標定点・検証点の計測方法について、3級基準点・4級基準点と同程度であったが、近年導入が進んでいるネットワーク型RTKを用いたGNSS測量器械の使用が可能になった(写真-1)。
 

写真-1 ICT土工のカイゼンについて




 
②ICT建機の活用事例
 
ICT建機を使用し、施工をより効率的に行った事例を紹介する。通常MCバックホウ(MC:マシンコントロール)を使用する場合は、3次元設計データを作成し、それを重機に設計データとして入力する。重機はGNSS測位により自己位置を特定し、3次元設計のどこを施工しているかをモニター画面で表示させることができるため、これを確認しながら施工を実施する。これまで現地に目印として設置していた丁張が不要となり、より安全に、より効率的に施工が可能となる。
 
写真-2の場合はどうか。
 

写真-2 ICT建機の施工活用事例




 
丁張レスではあるが、実はバックホウはMCではない通常のバックホウを使用している。この仕組みは、通常のバックホウが切り出しを行う前にMCバックホウで切り出しを実施しているのである。写真を見て重機は右から左に施工を実施している。重機の左側を見ると、すでに施工の切り出し位置が1mほど施工されているのが分かる。丁張を設置する代わりに最初の切り出しをMCで実施し、後は通常のバックホウがその切り出しを目印として施工する。法尻付近になったら再度MCバックホウにより法尻を確認し、次の施工に移行する。まだまだICT建機は費用面ではかなり割高で、現場内全てをICT建機にすることはない。導入してもせいぜい数台程度である。そのような中で、
ICT建機を効率的に用いて、丁張レスでの施工を実施した事例である。
 
 
③さらなるカイゼンに向けて
 
表-1は空中写真測量(無人航空機)を用いた出来形管理要領(土工編)(案)に従い、出来形管理を実施した場合の現地での作業時間を算出したものである。
 

表-1 計測範囲による作業時間の比較




 
つまり、UAVでの計測時間がどれだけかかるかを示している。対象面積が大きくなるにつれて飛行時間が長くなるが、それとともに標定点も増加することが分かる。UAVの出来形管理基準においては、計測精度を確保するために標定点と呼ばれる点を現地に設置し、基準点として用いる。外側標定点として撮影区域外縁に100m以内に1箇所、内側標定点として天端上に200mに1カ所を目安に設置することとされている(図-1)。
 

図-1 UAV出来形管理要領による標定点配置方法




 
これを基に標定点を配置した結果が表-1である。実際の計測に関わる飛行時間に比べて、標定点・検証点の計測にかかる時間が約3倍程度必要となることが分かる。
 
弊社ではさらなるカイゼンのために、この標定点および検証点に着目し、時間の削減につなげることが可能か検証した。通常は現場内に設置した標定点により、点群の座標付けを行う。今回の検証に当たってはSkycatch社製のEvolution3を使用することとした(写真-3)。
 

写真-3




 
同社の機体の特徴は、後処理キネマティックにより、標定点がなくとも精度よく撮影写真の位置を推定できる仕組みである。図-2はSkycatch社製のUAVを用いた場合の仕組みを示している。
 

図-2 skycatch社製UAVシステム概要




 
まずは通常の写真測量と同様に決められた撮影範囲の写真を撮影する。同時にNTRIP方式によりGNSS情報を記録する。次に写真をクラウドへアップロードする。そして、事前に記録したNTRIP情報を基に後処理し、ネットワーク型RTK級の精度を持ったジオタグ付き写真を構築する。最後に、この写真を基に解析を行うことで、標定点の登録なしに解析を実施することが可能となっている。
 
通常実施するUAVによる計測と、この機体での計測を実施し、精度が担保されるかを検証した。検証に当たっての構成は表-2に示す通りとした。
 

表-2 計測条件




 
現場内には検証点を10カ所設置した。図-3に示す検証点でGNSSローバーを用いて座標値を取得し、各点群データでの近傍点での標高値の差を確認した。
 

図-3 検証点配置図




 
結果を図-4に示す。計測条件①では全ての箇所において計測値との差が50mm以内となることが確認できた。一方で、計測条件②では5カ所では50mm以内であったが、これを大きく外れる箇所もあった。
 

図-4




 
標定点がなくてもかなりの精度で計測ができることが分かった。今後は標定点を現象してどの程度の精度が担保できるかを検証予定である。
 
 
④新しい施工管理
 
ICT土工を実施している現場へのヒアリングの結果、これまで想定していなかった課題が挙がっている。写真-4はICT重機を使用した施工現場の事例である。
 

写真-4 ICT建機施工状況




 
この写真を見て、次に施工するこの後の施工形状を誰が想像できるだろうか。なぜ想像できないのか。それは、これまで現場で使用してきたものさし、つまり丁張がないからである。現場に設置してある丁張を見ることで、われわれは完成形の実物を現地でイメージし、確認し、チェックすることができるのである。ICT活用工事を行う場合、現時点では、数を減らして丁張を設置したり、GNSSローバーで現地を計測して、部分的に確認しながら施工を行っているのが現状である。ICT土工をさらに活用していくためには、丁張に変わる新しいツールが必要になる。それがARであると考える。
 
写真- 5および写真- 6は弊社で実施したARを活用した現場の施工管理の一例である。
 



写真-5、6 ARを活用した施工管理




 
HMD(Head MountedDisplay:頭部に装着することが可能なディスプレイ装置。主にVRを行う非透過型とARを行う透過型に分けられる)を装着すると、端末の現在位置から見た現場の完成形がリアルタイムに映し出されるのである。これにより丁張がなくとも現地での確認が可能となる。現段階での課題は位置精度と演算処理速度ではあるが、これが解決されればいとも簡単に現実空間に実物大の完成形を描くことができるのである。
 
われわれは現場にある丁張を見て、丁張が一直線に通っているかで測量の間違いがないか確認してきた。また丁張の通りを見て、実物の施工が間違っていないかを確認してきた。ICT工事が進んでいく中、もうそれはできない。
 
これからはHMDに投影される3次元モデルを現地で見て設計に不備がないかを確認し、ICT建機の施工箇所で3次元モデルを投影し、施工の間違いがないかを確認するようになるであろう。
 
さまざまなツールの中でVR、ARを使ったものが本当の意味で生産性向上に寄与し、そして大きく働き方を変えていくための有効なツールになり得ると私は感じている。今後はこのような新しい施工管理こそが施工管理の本流となっていくことを期待している。
 
 

CIMとi-Constructionについて

最後にCIMとの関係について考察させていただいた。ICTを全面的に活用する工事をICT活用工事と呼ぶ。このICT活用工事を行い実感したことは、本当に現場作業が“楽”になったことであった。先にも述べた測量時間の短縮や重機の効果的な使用など、これまでの施工に比べて劇的に現場での施工が楽になる。一度この方法を体験すると、また必ず次も実施したくなる。楽だから使用する、当たり前のことだが、現場で使用していくためにはこのメリットを実感できることが非常に大きい。
 
その一方でCIMについて、次の現場で実施したいかどうかと質問されたら、答えは“NO”かもしれない。確かにCIMによる合意形成やフロントリーディングの考え方は素晴らしいと思う。ただ一つ、これまでの作業が楽になったという実感よりも、3次元モデルを使った新たな付加価値を生んでいるという印象が強い。時間が早くなったというよりも、将来発生するであろうリスクを早めに摘み取るため、実感として早くなったと感じづらいところがある。
 
これは何に起因するかということが、i-ConstructionとCIMの決定的な違いである。
 
それはCIMが属性管理、つまり品質管理が主体であり、i-Constructionは座標の管理、つまり出来形を管理するということに由来する。ICT活用工事を行うためには3次元設計データが不可欠で、現場ではこれを使用して施工することになる。そのために、設計に不備がないかチェックを行い、ICT建機はGNSSによるキャリブレーションと日々の精度チェックを行い施工していく。これにより、丁張作業が不要になり施工がスムーズに進む。また現地での出来形はUAVで一括して行うことができ、さらに効率化が図れる。一方でCIMも設計図を基に3次元化を行うが、その精度の担保は作成後には実施しない。このモデルを基に施工計画を実施し、迅速な合意形成やフロントリーディングを実施していく。そして現場での施工後、属性情報をCIMモデルに導入していく形となる。現場の測量や施工といったフェーズでの活用が少ないため、現場での活用が少ないのが難点である。
 
逆の見方をすると、i-ConstructionではCIMのような活用が苦手である。3次元設計によるフロントリーディングは実施しないし、また施工後の属性情報を盛り込んだ統合モデルを作成することもできない。今後は両者の境界がなくなり、CIMとi-Constructionの両者を包括した考え方が必要になると私は思う。例えばi-Constructionが最も進んでいるICT土工事では、例えば盛土の品質データである締固め情報や、施工の履歴などが最終的な出来形である点群データに付与される。発注者は必要な情報をアズビルドモデルである点群から抽出する。
 
これからの建設業界では、新たな3次元での管理が進むと同時に、品質・出来形どちらかだけでなく、両者が一体となり、工事に生かされていくことが重要である。国土交通省が進めるi-Construction の目的は、建設産業全体の生産性向上である。まさに官民が一体となり、本気で取り組んでいる。建設業がさらに魅力ある産業となることを願い、本稿がその一端を担えればと思う。
 
 

株式会社 大林組 土木本部 本部長室 情報技術推進課

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2018
特集1「i-Construction×CIM」



 



近畿地方整備局におけるCIMの取り組みについて

2018年6月18日

 

はじめに

国土交通省では平成24 年度からCIMの試行を実施しております。
 
CIMは、社会資本の計画・調査設計段階から3Dモデルを導入し、その後の施工、維持管理の各段階においても3Dモデルを連携・発展させ、併せて事業全体にわたる関係者間で情報を共有することにより、一連の建設生産システムの効率化・高度化を図ることを目的としています。
 
 

CIMの取り組み

近畿地方整備局でも、平成24年度からCIMの導入検討について取り組んでおり、平成28年度までに道路や樋門等の詳細設計などの業務6件、電線共同溝や高架橋上下部などの工事17件で試行しています。
 
今回はCIMの大きな特徴の一つである「見える化」について受注者希望型工事での事例を2件紹介します。
 
(1)大和御所道路出屋敷高架橋(P17-P19)鋼上部工事
 
工 期:平成27年7月9日〜平成28年9月30日
施工者:日立造船株式会社
概 要:鋼橋上部工事(橋長71m、鋼2径間連続合成鈑桁橋)
 
本工事では、主に3Dモデルを利用した安全管理、3D施工計画システムによる現場施工計画作業効率化等について取り組みました。
 
1)3Dモデルを利用した安全管理
 
本工事では、作業手順の会議で架設時の重点確認項目について3Dモデルを利用して確認を行いました(図-1)。
 

図-1 クレーン干渉チェック ①




 
具体的にはクレーンの施工状況をコマ送りにしてシミュレーションを行い、架設済桁、橋脚等の固定物と吊桁との干渉を視覚的にチェックした結果、干渉しないことが確認できました。
 
また、3D化が難しいフェンスや高圧線についても、レーザースキャナー等を用いて点群データを取得し、3Dモデルに反映させることで、モデル化していないフェンスや高圧線とクレーンとの距離を確認することができました(図-2)。
 

図-2 CIMモデル導入における課題




 
 
2)3D施工計画システムによる現場施工計画作業効率化
 
施工計画段階において、各架設のステップと工程表を連動させてアニメーション化することで各工程の連動状況、架設手順に問題がないことを確認しました(図-3、4)。
 

図-3 架設順序設定工程表




 

図-4 3D架設ステップ図




 
 
(2)八鹿日高道路八木川橋南側鋼上部工事
 
工 期:平成27年5月23日〜平成28年11月30日
施工者:株式会社横河ブリッジ
概 要:鋼橋上部工事(橋長155m、4径間連続非合成鈑桁橋)
 
本工事では、主に付属物および下部工を含めた3Dモデルによる干渉確認や3Dモデルを活用した維持管理時の点検経路・箇所の確認、橋梁周辺地形を含めた3Dモデル完成イメージの作成等について取り組みました。
 
1) 付属物および下部工を含めた3Dモデルによる干渉確認
 
従来の干渉確認は複数の図面を見て、立体をイメージして照査を行う、図面を重ね合わせることで干渉のチェックを行う等の方法でした。CIMでは、3Dモデルで視覚的に構造を確認できるため、干渉チェック等の効率化を図ることができました(図-5)。
 

図-5 3Dモデルを用いた照査チェックイメージ




 
また、巻き立てコンクリート部の3Dモデル化による鉄筋と鋼材干渉の確認も行いました。費用対効果を考慮して、鉄筋のモデル化は鉄筋全体ではなく、巻き立てコンクリート部に着目して干渉チェックを行うことで、施工前に現場施工でのトラブルを回避しました(図-6)。
 

図-6 巻き立てコンクリートの3Dモデル化による鉄筋と鋼材の干渉確認




 
 
2)3Dモデルを活用した維持管理時の点検経路の確認
 
維持管理の観点でも3Dモデルを用いて点検経路の確認を行いました。具体的には3Dモデルに維持管理の時の点検経路と点検箇所を明示するようにし、点検経路については、モデル上の検査路をアニメーションで再生できるようにしました(図-7、8)。これによって点検経路が確保されていることを視覚的に確認することができました。
 

図-7 3Dモデルによる点検経路確認




 

図-8 点検経路アニメーション




 
 
3) 橋梁周辺地形を含めた3Dモデル完成イメージの作成
 
工事の看板や地元説明会の資料として3Dモデルを活用することにより、地元の方々にも橋梁の完成形が視覚的に伝わりやすくなりました(図-9)。
 

図-9 3Dモデルを利用した工事看板




 
 

まとめ

今回は「見える化」に着目してCIMの事例を紹介しましたが、効果等は以下のとおりです。
 
(1)施工前確認の効率化
 
3Dモデルを利用してシミュレーションや干渉チェックを行うことによって2次元図面では理解しづらい配筋の干渉や施工時の安全が視覚的に確認でき、迅速化や効率化につながりました。
 
(2)協議の円滑化
 
地元説明会や関係者協議において、3Dモデルを利用した説明を行うことで、相手の理解促進につながり、円滑に協議を行うことができました。
 
 

おわりに

CIMを活用することで得られる効果は、今回紹介しただけではありません。
 
CIM活用については計画段階から維持管理に至るまで、まだまだ課題等もあり、コストと時間を考慮して効率的に取り組んでいく必要があると思います。さらなる生産性向上へ向けて、これまでの受注者希望型の試行で判明した課題や知見を基に、発注者指定型の拡大も含めて今後もCIMの活用に取り組んでいきます。
 
 

国土交通省 近畿地方整備局 企画部 技術管理課 川端 真治

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2018
特集1「i-Construction×CIM」



 



CIM導入ガイドラインへの対応 −建設コンサルタント編−

2018年6月13日

 

はじめに

国土交通省は、2017年3月31日に、「CIM導入ガイドライン」を公表しました。これは、いままでCIM試行事業で行っていた内容をベースに、今後のCIM/i-Construction推進のための、受発注者双方のためのガイドラインとなっています。
 
ガイドライン発表に合わせて、図-1に示すような、ロードマップ、実施方針、要領・基準類を発表しました。
 

図-1 CIM導入計画(案)「第3回CIM導入推進委員会 資料」をベースに作成




 
重要な点は、CIM導入ガイドラインと同じように実施方針において、平成37年度までCIM推進方策が提示されたことです。平成24 年度に開始されてから、CIM試行事業、i-Constructionとして、ICT活用が進められてきましたが、この実施方針により、CIM導入は平成37年度には全面的に活用されることとなっています。
 
これに合わせて、要領・基準も改訂され、今後も進展に合わせて、改定が行われていくことになっています。詳細は、2017年3月24日に開催されました第3回CIM導入推進委員会資料2)を参照してください。
 
 

「CIM導入ガイドライン」の概要

「CIM導入ガイドライン」(以下、CIMガイドラインとする)は、平成24年度から開始されたCIM試行で得られた知見やソフトウェアの機能水準等を踏まえ、現時点で活用可能な項目を中心に、CIMモデルの詳細度、受発注者の役割、基本的な作業手順や留意点とともに、CIMモデルの作成指針(目安)、活用方法(事例)が参考としてまとめられています。
 
CIMガイドラインは、表-1に示す6編で構成されています。
 

表-1 「CIM導入ガイドライン」の構成




 
図-2に示すようにCIMを建設生産システムに利用することは、3次元モデルを作成することが目的ではありません。
 

図-2  「CIM導入ガイドライン」が求める姿




 
3次元モデルを利用して、建設生産システム全体をカイゼンし、生産性を向上することが目的です。生産性の向上は、計画・調査⇒設計⇒施工⇒維持管理の流れの一部分だけでは十分な効果が得られません。設計者は施工側でいかに効率的に活用してもらえるかを常に考えていくことが重要です。
 
なお、CIMガイドラインに記載されている作成指針や活用方策は、土木構造物全てに準拠することを求めるものではありません。CIMガイドラインの記述を参考に、事業の特性や状況に応じて発注者・受注者で判断して利用します。
 
今後、CIMを実践し得られた課題への対応とともに、ソフトウェアの機能向上、関連基準類の整備に応じて、継続的に改善、拡充していく予定となっています。
 
CIMガイドラインに記載されていない工種に関しては、基本的には適用する必要はありませんが、コンクリート構造物に関しては、第5 編 橋梁編の下部工の記述を参考にするなど、CIMガイドラインの考え方を活用して、いろいろな場面で活用していく心がけが重要です。
 
 

CIMガイドラインで作成すべきモデル

CIMガイドラインの各編に記述されている作成すべきモデルをまとめると、図-3のようになります。
 

図-3 「CIM導入ガイドライン」において作成するモデルとイメージ例




 
ガイドラインの各編で、トンネル・ダムなどの実際の業務でこれらのモデルをどのように作成していけばよいかの目安が示されており、まとめると図-4のようになります。図-4には、現在市販されているモデル作成に使用する主なソフトウェアと、納品する際のフォーマットも併せて示してあります。
 

図-4  「CIM導入ガイドライン」で作成すべきモデル




 
 

CIMによる設計業務のワークフロー

一般的な設計業務に適用する際のワークフローと利用するソフトウェアを表-2に示します。
 

表-2 CIMによる設計時のワークフロー




 
CIMを活用する際は、図-4のようなモデルを作成する必要があり、これらのモデルの基本となるのは現況地形の作成です。従来は、平面図をベースに設計しているため、実際の地形を把握することが難しく施工時に手戻りが発生する場合も多くありました。
 
初めに、現況地形を作成し、全体を俯瞰し、ここに計画された2次元図面を重ね合わせるだけでも、多くの事が分かります。
 
現況地形の作成のベースとなる標高データは、一般的には、国土地理院の基盤地図情報 数値標高モデル 5mメッシュデータを用います。これ以外に、UAV、MMS(Mobile MappingSystem)や地上レーザ計測で得られる点群データを利用することも可能であり、設計で利用したい精度に合わせた地形を作成することが重要です。
 
現況地形モデルを細かく作成することは可能ですが、その後の設計で活用する際に、かえって処理を遅くする場合も多く、加減が重要です。特に、初期の現地調査前では、5mメッシュデータで十分でしょう。
 
後は、この現況地形モデルをベースに、現況地物と設計モデルを付加しながら、発注者と協議していきます。
 
今までに図面をベースにした設計では、図面を描けるソフトウェアであれば何でも利用できましたが、3次元モデルを作成するためには、専用のソフトウェアが必要です。しかし、現状では、実際の業務において、CIMガイドラインに対応していくためには、どのようなソフトウェアを利用していけばよいか、悩みどころではあります。
 
OCF(オープンCADフォーマット評議会)では表-3に示すような「国土交通省CIM導入ガイドライン・CIM 事業における成果品作成の手引き対応ソフトウェア一覧」が公表されているので、参考にしてみてください。
 
 
   対応ソフトウェア一覧 【2017/9/29現在】 http://www.ocf.or.jp/cim/CimSoftList.shtml

表-3 国土交通省CIM導入ガイドライン・CIM 事業における成果品作成の手引き




 
当社では、各分野で表-4に示すソフトウェアの利用を想定して普及に努めています。
 

表-4 業務分野ごとで使用するデータとソフトウェア




 
これらのソフトウェアを用いて、業務執行の中で、どのように設計に取り入れていくかが課題です。まだまだ、設計者が思う通りの結果をすぐに出すのは難しい場合もあり、設計者が工夫していく必要があります。
 
また、見落とされがちですが、「CIMモデル作成 事前協議・引継書シート」を作成することになっています。これは、計画・調査⇒設計⇒施工⇒維持管理というライフサイクルを通して、どの段階でどのような協議をして、どのようにモデルを作成しているかを次のサイクルに引き渡すものです。この情報を見れば、今までの検討の考え方、どのソフトウェアでどのようにモデルが作成されたかなどが、一目で確認できます。是非、間違えずにこのシートの作成を行うようにしてください。
 
早く取り組みを開始し、社内でのCIMを活用した設計スタイルを早く確立することが重要です。
 
 

まとめ

30年前には、パソコンもCADもありませんでした。いろいろな要領基準も十分に整備されていたわけではありません。CIMを取り巻く状況も同じです。3次元でどのように設計していくか、どのようなツールを使えばよいか、施工側にどのように渡せばよいか、まだまだ十分に整備されていません。
 
現在提供されているツールの機能をよく見極め、設計の中に取り込んでいく努力が必要です。
 
また、CIM対応ソフトウェアは機能が多く、1週間も操作しないでいると忘れてしまいます。集合教育で実施されるハンズオン講習会を受講することも重要ですが、受講した後に、最低でも毎日5分〜 10分の復習操作が必要です。また、自分で目標を決めて、自習していくことも重要です。
 
いろいろなホームページに、無料で使用可能な3D部品や、CIM対応ソフトウェアの操作方法などもまとめられていますので、こうした情報も参考に、一緒に、CIMを推進していきましょう。
 
 

八千代エンジニヤリング株式会社 CIM推進室 一般社団法人 Civilユーザ会 藤澤 泰雄

 
 
 
建設ITガイド 2018
特集1「i-Construction×CIM」



 



九州地方整備局におけるCIMの取り組み−九州河川管理の新しい扉を開く河川管理CIMの取り組み−

 

はじめに

九州地方整備局では、河川、道路などの分野における建設生産プロセス全体(調査・測量・設計、積算、施工・監督・検査、維持・管理、防災)にCIM(Construction Information Modeling / Management)を導入して、職員の省力化ならびに土木技術向上によるアカウンタビリティーの向上を図ることを目的として、平成25年度に「九州地方CIM導入検討会(委員長:熊本大学 小林一郎教授(現役職:特任教授)」が発足した。今回、河川管理に関する取り組みについて報告するものである。
 
 

河川管理CIM導入における課題

平成27年度まで、設計、施工分野におけるCIMの活用が進んでいない状況であった。特に管理面での活用については、現場ニーズの把握、課題整理が不十分であり、河川CIMの全体像が明確でない状況であった。
 
CIMを河川管理に導入・普及するに当たっては、省力化、効率化、品質の確保が必要であるため、次に掲げる4つのポイント
 
① 職員の使い勝手が良い
② できるだけシンプルにすること
③ CIMの成功体験を積み上げることができること
④ できるだけ低コストであること
 
に留意することとした。
 
 

河川管理におけるCIMの取り組み

九州地方整備局河川部に、産官学からなる「河川CIM分科会」(座長 熊本大学 小林一郎教授(現役職:特任教授))を立ち上げ、具体的な取り組みについて、モデル河川(山国川、大野川、五ヶ瀬川、松浦川)での検討を基に、議論を行った。
 
併せて、職員の使い勝手を良くするため、“できるだけシンプルに、データ量を重くしない”「2.5次元」という考え方を採用することとした。実践できることから始め、除々に精度を上げていく方向で検討を進めることを目標とした。
 
(※「2.5次元」とは、平面図上の測線位置(200mピッチ)に横断図などを立体的に表示すること(図-2))
 

図-1 河川管理CIMのイメージ




 

図-2 河道管理基本シートの見える化イメージ
(例)平面図上の測線上に横断図を重ね合わせ、最深河床高を立体的に表現⇒最深河床の位置、変化を見える化




 
 

河川管理CIMの基本フレーム

九州地方整備局河川部においては、平成19年度から、学識者と連携した「九州河道管理研究会」にて、河道変化を踏まえた予防保全型の管理や機能維持を考慮した河道掘削技術について研究を行い、実践を行っているところである。研究会では、既存の基礎調査データを活用して河道の状態を縦断的に把握し、河道内にある「差し迫った危険」を可能な限り確実に把握するツールとして「河道管理基本シート」の仕様を検討し、九州20河川のシートを作成している。
 
「河道管理基本シート」の見える化として河川管理CIMを展開することで、河道の課題、要注意箇所だけではなく、河道の変化の“気付き”が増え、差し迫った危険を確実に把握することが 可能になると考えた。
 
“できるたけシンプルに、データ量を重くしない”ために、“河道管理の基本中の基本”である河川の平面図、縦横断図など、全河川が保有し、かつ河道管理基本シートを構成するデータの中で必要最低限のデータを「基本フレーム」と位置付けた。併せて、目的に応じて、基本フレームにデータを追加していくことを基本方針とした。
 

図-3 基本フレームの最終形




 

図-4 基本フレームと発展型




 
 

基本フレームの仕様(案)について

九州20河川で適用することを踏まえて、下記を基本方針として、検討を進めた。
 
① 全河川で標準化できること
② 基本フレームのデータは、できるだけ軽くし、更新しやすい構成であること
③ どのPCでも閲覧できるデータ構成とし、操作端末の性能に関わらず動作しやすいこと
④ 基本フレームに目的別データを追加できる構成であること
 
決定した基本フレーム仕様(案)は以下のとおりである。
・平面図の縮尺は1/2,500程度とし、色は薄いグレーとする
・横断図の重ね合わせ図は4世代分とし、配色を決定し、統一する
・MMS(Mobile Mapping System)データを用いて、堤防天端の肩を結ぶライン線を取り込む
・表示・閲覧データを「ビューワー」と表現統一し、ソフトは3DPDFとする。なお3DPDFは基本フレームのみ対応とする
 
 

今後に向けて

河川管理CIMの基本フレーム検討に当たっては、「“河道管理の基本中の基本”とは何か」を議論の中心に据えながら進めた。現場の目的に応じて、基本フレームに必要なデータを追加することで、堤防管理、河川維持管理計画の見える化、川づくりなど展開が可能となる。
 

基本フレームの平面図に航空写真を重ね、地質地形分類図、護岸基礎根入れ位置、ボーリングデータ、耐震対策工法等のデータを追加することで、堤防の状態が一目で把握できる。
 

図-5 堤防管理のフレームのイメージ




 

併せて、UAVを活用した写真測量により三次元データを作成することで、堤防の変状、経年変化等を定量的に把握することができるため、従前より効果的な堤防管理を目指していきたいと考えている。
 

図-6 UAVで取得したデータの活用例




 

河道変化を踏まえた予防保全型の管理においては、河道内の堆積土砂や樹木繁茂の経年的な状態把握が必要であり、例えばUAVによる写真測量等を活用することにより、樹木高さ、範囲、地形の変化を定量的に把握することができるため、効率的、効果的な河道管理につながるものと考えているところである。
 

河川管理CIMはスタートしたばかりである。新技術データ活用や、設計・施工段階CIMデータの活用など、PDCAサイクル型河川管理に向けて取り組みを進めていきたい。
 

 

国土交通省 九州地方整備局 河川部 河川管理課 原田 佐良子

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2018
特集1「i-Construction×CIM」



 



施工BIMの今−USE BIMを目指して−

2018年6月12日

 

BIM活用に向けての背景

当社がBIMの活用について取り組む背景として、高齢化社会の進展に伴う労働力不足や熟練技能者の減少傾向の拡大など、社会的な問題に由来する生産性の向上という課題が、大きな動機付けとなっています。その中で、昨今、進展が著しい情報化技術やBIMなど、先進的な技術を幅広く取り入れて、当社の業務にフィットさせていくということが、重要な解決方法の一つであると考えています。
 
当社における施工および施工管理業務に関する取り組みとしては、BIMの活用のほか、現場作業の省力化をテーマに、冷媒配管工事の新工法の開発や、施工現場の業務効率化に向け、クラウドシステムを開発し、タブレットPC等による高度なソフトウェアの活用を促進するための取り組みを行っています。また、このクラウドシステムの活用例として、3Dスキャナーを活用した、改修案件等における3D計測による既存設備のデータ化なども進めています。以下では、当社におけるBIM活用の取り組みについてご紹介いたします。
 
 

「USE BIM」

従来から、主要な設備CADは3次元表現が可能で、部材も属性情報を有しており、当社でも、そのような設備CADソフトを標準的に使用しています。この従来の設備CADにおいても、3次元的な干渉チェックや部材情報を用いた自動での数量拾いができるので、BIMの概念のある一部分については、既に活用してきているといえます。このような背景から、当社にとっては、BIMとは3D-CADの機能が拡張し、図面データに含まれる情報の統合と活用がいっそう進んだものというような捉え方ができます。この機能の拡張や、どのように情報を統合してそれらを活用していくかが、BIMをどう活用していくかの基本方針となります。すなわち、BIMに取り込まれた情報を、いかに、現状の業務に沿って自由自在に使いこなすか、ということであり、そういった意味で、BIMを使い尽くす(USE BIM)ということを念頭に検討しています。現在は、現場での施工管理業務での活用を中心に、現状行っている多岐にわたる一つ一つの業務の効率化を徹底していくことに検討の重点を置いています(図-1)。
 

図-1 BIM活用の方向性 検討事例の紹介




 

検討事例の紹介

現場における重要な業務の一つに、施工図の作成があります。施工図の作成は、設計図書に記載される機器表、系統図、ゾーニング、器具リスト、要領図などの資料から情報を抽出し、描き進めます。この作図作業の効率化として、例えば、機器表と連動することにより、機器をBIM上に配置する作業を自動化する、ということを検討しています。
 
機器表には各機器の性能に関わる情報のほか、設置階、場所、台数に関する情報が記載されています。この情報を活用し、機器を図面上に自動的に配置することで、従来のように、機器の種類、タイプ、容量をコマンドボタン等から選択して逐一配置するという操作をすることなく、配置することができるような機能として検討しています(図-2)。
 

図-2 機器表情報による機器の自動配置
〜(株)NYKシステムズ社製 建築設備用CAD「Rebro」での検討例〜




 
 
さらには、器具リストや制気口リストから、末端の器具を配置し、系統図、ゾーニングから配置した機器と器具をダクトや配管で結び、要領図から機器回りの必要部材を配置することで、施工図作成におけるほぼ全ての必要部材の配置の自動化が可能であると考えています。
 
また、機器表を反映した属性のうち、流量や揚程といった情報を、その機器に接続される配管やダクトなどの部材にも受け渡し、系統単位で必要な情報を持たせることもできると考えています(図-3)。これによって、従来では手作業で入力していたこれらの情報が部材の配置に合わせて自動的に入力でき、例えば、抵抗計算などの作業の効率化も期待できます。
 
 

図-3 属性情報の系統管理




 
 

「エスクラウド®」の活用

当社では、施工現場の業務効率化に向け、クラウドシステムを開発し、タブレットPCによる高度なソフトウェアの活用を促進するための取り組みを行っています。この「エスクラウド®」はインターネット経由で国内外のデータセンターに設置された高性能サーバ群とAIからなる新たなICTプラットフォームに接続されており、当社の事業領域全体にわたるICTソリューションを、クラウドサービスによって国内外のあらゆる場所から快適に利用することができます(図-4)。
 

図-4 「エスクラウド®」の活用




 
当社では施工現場の業務効率化に向け、2016年度より現場技術者にタブレットPCを貸与しています。これに合わせてクラウドシステムを活用することで、3D-CADをタブレットPCから使用できるようになりました。その他にも、3D計測における点群処理用のソフトウェアなど、従来、特定の拠点やマシン、使用者に限定されていた高度なソフトウェアも活用できるようにしています。
 
 

今後の展望

現在は、BIMの活用により、まず従来の業務の効率化の徹底を考えています。そのためには、BIMから必要な時に必要な情報を必要な形で取り出す。また、必要な情報を効率よくBIMに入力する。この2 点が、今後のBIMの活用において重要であると考えています。この部分の仕組み作りに注力していき、その上にさまざまな具体的な機能を蓄積していきたいと考えています。
 
 

三機工業株式会社 技術研究所 主任研究員 吉岡 誠記

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2018
特集1「i-Construction×CIM」



 



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