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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

地方自治体におけるi-Construction・BIM/CIM事例 -3次元点群データの収集・利活用の取り組み-

2020年6月29日

 

はじめに

本県では、 国土交通省が推進するi-Constructionの取り組みを受けて、平成28年度に、トップランナー施策として位置付けられたICT活用工事の試行を開始し、これを契機に3次元点群データの収集・利活用を積極的に進めています。
 
近い将来、3次元点群データが社会インフラのひとつとして、建設生産プロセスだけでなく社会全体で活用されることを想定して、取り組みを展開しています。
 
他分野での活用も推進するため、データをオープンデータとして公開することとし、具体的な活用手法のひとつとして、自動運転への活用に取り組んでいます。今年度は、さらに他分野での活用を想定したモデル事業を展開することとしています。
 
本稿では、本県における3次元点群データの収集・利活用に関するこれまでの取り組みと今後の展開について紹介します。
 
 
 

静岡県3次元データ保管管理システム

本県では、ICT活用工事の試行導入に際して、施工の各プロセスにおいて3次元データを活用することに着目し、従来の工事完成図に相当するデータとして、出来形管理の3次元計測とは別に工事完成時に3次元計測を実施し、3次元点群データを納品することを求めることとしました(図-1)。

図-1 ICT活用工事の実施プロセス


 
ICT活用工事の実施に当たっては、i-Constructionの取り組みの開始時に国土交通省の電子納品要領において、電子媒体としてBlu-rayでの納品が採用されましたが、本県職員が利用する端末では、Blu-rayに対応したドライブが装備されていないため、大容量データを納品するためには別の手法が必要となりました。また、既存の電子納品・保管管理システムは、庁内利用を前提としており、施設の維持管理や災害時の状況把握など迅速にデータ提供ができないことが課題となることが想定されました。
 
そこで、3次元データの収集・利活用の推進を図るため、インターネット経由でクラウド上に3次元データを登録・公開する「静岡県3次元データ保管管理システム(Shizuoka PointCloud DB)」(以下、「PCDB」という)を構築し、平成29年3月に試行運用を開始しました(図-2)。
 
①PCDBにアクセスし、「閲覧・DL」を選択  ②DLする箇所のピンを選択      ③データを選択しDL

図-2 静岡県3次元データ保管管理システム(PCDB)の利用イメージ


 

このシステムを用いてICT活用工事を実施する場合には、工事完成時の3次元計測のデータのオンライン納品を行う運用としています。また、全国に先駆けて3次元点群データのオープンデータサイトとして公開し、登録データは、クリエイティブ・コモンズ表示4.0国際パブリックライセンス(CCBY4.0)により誰でも二次利用することが可能です。
 
これまでにICT活用工事完成時の計測データに加えて、県及び管内市町の各種業務で取得したデータが収集され、平成30年度末時点で道路延長1,000km以上、航空測量面積20㎢以上のデータを公開しています。
 
PCDBの運用開始から多くの反響をいただいていますが、プロトタイプとして構築したシステムであり、データ提供の機能は、分割した3次元点群データファイルをダウンロードすることしかできないため、データをブラウザ上で閲覧できないことや属性情報を提供できないなど、改善の要望もいただいています。
 
 
 

しずおか自動運転ShowCASEプロジェクト

路線バス利用者の減少傾向が続く中、県内のバス事業者においては、運転手の約5割が50歳以上であり、人件費などの費用の増大、運転手不足が深刻な状況です。また、バス路線の約4割が行政の財政負担により運行しており、県内の公共交通の維持、地域の生活交通手段の確保が喫緊の課題となっています。
 
現在、全国各地で自動運転の実証実験が行われており、自動運転はその課題を解決する有効な手段として期待されます。
 
自動運転では、ダイナミックマップが重要とされる技術と言われており、国内主要自動車メーカーや地図会社などが出資して設立したダイナミックマップ基盤株式会社が、その基盤として、全国自動車専用道路における自動走行向け高精度3次元地図データの生成・提供を行っています。そこで、本県は、県内の地域交通の課題対応を目的として、平成29年11月にダイナミックマップ基盤株式会社と、3次元データの相互利用を前提とした「自動走行システムの実現に向けた連携・協力に関する協定」を締結しました。
 
この協定に基づき、県が保有する3次元点群データの高精度3 次元地図データへの活用と県内企業の技術開発を支援するため、自動運転の実証実験を進めていくこととしました(図-3)。
 
平成30年度には、袋井市が実施しているエコパドリームプロジェクトと連携し、袋井市の県営小笠山総合運動公園内及び公園周辺道路において、行政が保有する3次元点群データを自動運転に活用した全国初の実証実験を実施しました。
 
今年度は引き続き、県営小笠山総合運動公園において実証実験を行うほか、地域性の異なる都市部(沼津港)、過疎地(松崎町)及び郊外部(下田市)において、交通事業者や地元自治体研究開発企業と連携し、高精度3次元地図を用いた走行技術の検証と次世代モビリティサービスの導入検討を行っています。
 

図-3 プロジェクトの実施スキーム




 

スマートガーデンカントリー“ふじのくに”の形成に向けて

本県においても、他の地方と同様に人口減少や少子高齢化が進み、担い手不足など社会的課題が顕在化しています。これらを解決するためには、近年目覚ましく進展しているAIやロボットなどの先端技術を積極的に導入することが必要となります。
 
そこで、これまでの3次元点群データの収集・利活用の取り組みをさらに拡大し、今年度から県土の面的なデータを取得し、災害復旧や観光などのあらゆる分野への活用を図る「スマートガーデンカントリー“ふじのくに”モデル事業」を開始しました。
 
「スマートガーデンカントリー“ふじのくに”」とは、人口減少などの社会的課題に対して、美しい景観などの本県の「場の力」を活かしながら、先端技術をあらゆる分野に活用することで、誰もが安全・安心で利便性が高く快適に暮らせるスマートな社会の形成を目指すものです。
 
モデル事業のエリアは、災害時における孤立地域の早期解消に向けた施設管理や災害復旧工事への活用に加え、東京2020オリンピック・パラリンピックの開催に向けた自転車の聖地づくり、ジオパークなどの観光振興、高齢化率が高い地域の移動手段の確保など、地域の魅力発信や課題対応への活用が期待できる東部・伊豆地域を選定しました。
 
事業の推進に当たっては、庁内に関係部局で構成するWGを設置し、全庁を挙げて多種多様なデータの利活用(図-4)に取り組んでいきます。
 

図-4 3次元点群データの利活用イメージ



モデル事業では、エリア全域でベースとなる面的な3次元点群データを航空レーザ測量により全域のデータを取得する予定です。
 
次に、利活用の取り組みへの環境整備として、静岡県GISの機能改良の実施を予定しています。まずは、PCDBのブラウザ上でデータ閲覧ができないことへの課題対応として、3次元点群データの表示機能を開発することとし、これまでに試行版を一般公開しました(図-5)。また、庁内利用においては、これまでも各種台帳との連携を行ってきましたが、この機能強化についても検討していくこととしています。
 

図-5 静岡県GISの点群表示



具体的な利活用の取り組みのひとつとして、施設管理の効率化・高度化を図るためには、3次元点群データの特性を活かした手法が有効であると考えられます。そこで、点群データを活用した施設の維持管理について、今年度より大阪経済大学 中村健二教授、法政大学 今井龍一准教授、摂南大学 塚田義典講師、関西大学 田中成典教授、株式会社日本インシーク、日本工営株式会社と共同研究を開始しました。
 
大阪経済大学の中村教授らは、道路分野における3次元点群データの属性管理仕様の研究において、これまでに県が取得したデータを利用して、道路法面の点群データの差分抽出による変状検出の検証を行っており(図-6)、共同研究では点群データの利活用環境を現場に試行導入し、その適用効果の検証を行っています。
 

図-6 道路法面の変状検出




 

おわりに

3次元点群データの収集・利活用は、本県の取り組みのほか、さまざまな検討が行われているところですが、現在発展途上であり、標準化に向けては、多くの方々のお力添えが必要であると考えています。このため、これまでに取り組みを実施している産学官の連携に加えて、今後も多業種の民間企業の参画を促進するとともに、国土交通省や国土地理院などのご指導、ご支援をいただきながら、積極的に取り組みの拡大を図ってまいります。
 
・静岡県3 次元データ保管管理システム
 https://pointcloud.pref.shizuoka.jp/
 
・静岡県GIS
 https://www.gis.pref.shizuoka.jp/
 
 
 

静岡県 交通基盤部 建設支援局 建設技術企画課

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2020
特集1「i-Construction×BIM/CIM」



 



東北地方整備局におけるBIM/CIMの取り組みについての紹介

2020年6月26日

 

東北地方整備局におけるBIM/CIMの取り組みについて

図-1 令和元年度 東北地方整備局におけるBIM/CIM活用の方針



東北地方整備局におけるBIM/CIMの取り組みは、全国と歩調を合わせ平成24年度から開始し、平成28年度末の「CIM導入ガイドライン」策定を契機に新基準に従った取り組みを積極的に進め、平成30年度は設計業務、工事合わせて39件で活用を行ったところである。
 
東北地方は、他地域に比べて少子高齢化の進行が速く、生産年齢人口が今後一層早い速度で減少していく状況にあり、建設分野における生産性向上は待ったなしの状況にある。また東日本大震災からの復旧・復興現場では、橋梁やトンネルといった多くの構造物の整備が急ピッチで進められており、ほぼ同時期に完成を迎えることとなる。これらの構造物は将来、一斉に老朽化し、補修が必要となってくる可能性が高く、こうした中で構造物の長期的な維持管理の効率化や、メンテナンス費用の抑制・平準化などの課題を解決する”切り札”の一つとしてBIM/CIMに期待する機運が高い。
 
東北地方整備局では、全国の動向も踏まえながら、毎年独自のBIM/CIM活用方針を打ち出し、その普及に努めている。
 
東北地方整備局の大まかな方針としては、大規模な構造物の詳細設計業務、工事、それに設計業務段階でBIM/CIMを実施した工事では「発注者指定型」の取り組みを原則とし、それ以外の構造物の設計業務、工事では「施工者希望型」にて行う方針としている。
 
平成30年度に実施した、39件のBIM/CIMの設計業務や工事の別、また構造物別の内訳は以下の通りである(図-2)。
 

図-2 平成30年度 東北地方整備局BIM/CIM実施状況


 
また昨年度末に全国一斉に設定された「i-Constructionモデル事務所(3次元情報活用事業)」「i-Constructionサポート事務所」であるが、東北地方整備局では以下の通り設定した(図-3)。
 

図-3 i-Constructionの貫徹に向けたモデル事務所の決定(東北地整)




 

鳴瀬川総合開発事業におけるBIM/CIM活用方針(案)

東北地方整備局が「i-Constructionモデル事務所(3次元情報活用事業)」に設定した「鳴瀬川総合開発事業」は、鳴瀬川流域の治水安全度向上、流水の正常な機能の維持、かんがい用水の補給、発電を目的とする多目的ダム建設事業であり、一級河川鳴瀬川の支川筒砂子川に筒砂子ダム(台形CSGダム)を新たに建設し、併せて、鳴瀬川本川の既設漆沢ダム(S56.3 竣工・中央コア型ロックフィルダム・現宮城県管理)を再開発により治水専用化するものである。
 
現在、環境影響評価法に係る手続き、ダム建設に関する基本計画の検討、ダム本体および関連施設等の設計などを行っている段階である(図-4、5)。鳴瀬川総合開発事業におけるBIM/CIMの大まかな活用方針(案)は以下の通りである。


  • 図-4 鳴瀬川総合開発事業の概要


  • 図-5 鳴瀬川総合開発事業 事業工程



1)図- 6、7に示す「統合モデル(筒砂子ダム、漆沢ダム)」を整備し、事業実施中は「事業監理CIM」と位置付け、事業進捗状況の可視化と情報共有を図る。(※モデルは事業の進捗に合わせて、適宜、追加、変更等を重ねていく)


  • 図-6 統合CIMモデルの作成


  • 図-7 統合CIMモデルの作成(2)



2)工事完成後、試験湛水の開始以降は、その位置付けを「ダム管理CIM」へと変更し、効率的な維持管理を目指す。
 
 
「事業監理CIM」および「ダム管理CIM」の各モデル(3次元モデルおよび属性情報等の関連するデータ)の作成、更新、活用等に当たって留意する視点は次の通りである。
 
1)CIMモデルは、それ以降の事業工程で利活用することを視野に入れて、効率的に更新が可能であること。
 
2)CIMモデルが、全体の事業工程を俯瞰し、適切な時期に適切な詳細度により必要な属性情報を付与して作成・更新され、目的に応じて有効に利活用されること。
 
3)各事業段階にわたって、統合CIMモデルに付与され更新・蓄積される大量で多岐に渡る情報を、適切に管理して関係者間で共有し円滑に活用すること(図-8)。

図-8 事業段階ごとの活用目的・内容



 
平成30年度に「事業監理CIM」「ダム管理CIM」のベースとなるCIMモデルを作成した。現時点では、詳細度100~300の概略的なモデルを用いて、事業全体の位置関係・構造物形状の把握を行う程度の活用に留まっているが、今後、事業の進捗に合わせ、詳細度を上げ必要な属性情報を付与して「事業監理CIM」として有効に活用していくこととしている(図-9)。

図-9 平成30(2018)年度作成のCIMモデル


鳴瀬川総合開発事業のBIM/CIMについては、今後の長い事業工程、施設の維持管理の中で、それぞれの段階で求められるさまざまな技術的なニーズに応え、事業に携わる受発注者の負担軽減に寄与し、事業の進捗、維持管理の生産性の向上に資するよう、今後とも追加、更新等を重ねながら活用していくことを考えている。
 
 

BIM/CIM活用上の課題

受発注者から聞こえてくる疑問や課題等には主に次のようなものがある。
 
①上流工程である設計段階等で作成した3次元モデルが、その後の下流工程となる建設生産プロセスの各段階で十分に活用できるのか。構造物完成後の維持管理の段階で十分に(機能をフルに)活用できるのか。現段階で実施している作業(モデルの作成や属性情報の付与等)が無駄にならないのか疑問や不安がある。
 
②定期的に人事異動が生じる職場環境につき、作成したCIMモデルを確実に引き継いでいくための仕組みづくりが必要。また、BIM/CIMを初めて担当する職員であってもスムーズに更新・活用が可能となるよう、職員全体の習熟度を向上させる必要がある。


 

BIM/CIM活用の今後について

「生産性革命のエンジン」と称されるBIM/CIMの活用は、i-Construction推進の眼目であり、BIM/CIMの契約図書化等の試行が始まろうという現段階では、早々に受発注者ともその取扱いを経験し、習熟していく必要があると考える。
 
このBIM/CIMが早く受発注者間に浸透し、普段使いのツールとして、ストレスなく、当たり前に活用され、建設生産プロセスの各段階における生産性の向上に大いに寄与してくれることを強く願っている。
 
 
 

国土交通省 東北地方整備局 技術管理課

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2020
特集1「i-Construction×BIM/CIM」



 



国土交通省におけるBIM/CIMの普及・促進の取り組み

2020年6月4日

 

はじめに

BIM/CIMの導入には、設計品質の確保や効率的な施工計画に基づく人材・資材の最適配置、最新技術の導入による監督・検査の効率化等が期待されています。また、建設全体を見通した施工計画、管理などコンカレントエンジニアリング、フロントローディングの考え方を実践していくことが可能となり、一連の建設生産・管理システムの品質確保並びに生産性の向上が可能となります。
 
このため国土交通省では、BIM/CIMの普及・定着、効果の把握やルール作りに向けて、2012年度より試行を進めてまいりました。
 
本稿では、BIM/CIMに関する基準・要領等の整備状況と、適用拡大に向けた今後の取り組みについて紹介します。
 
 

BIM/CIMの実施状況

国土交通省では、業務については2012年度から、工事については2013年度からBIM/CIMの試行を進めており、これまで、設計業務で291件、工事で339件の合計630件で実施しています(表-1)。
 
特に2018年度は、大規模構造物詳細設計においてBIM/CIMを原則適用することとし、200件を目標にBIM/CIMの積極的な活用を推進した結果、設計業務で147件、工事で65件の合計212件でBIM/CIMの活用がなされています。
 

表-1 BIM/CIM活用業務・工事の実施状況等



 

基準要領等の整備

国土交通省では、BIM/CIMの効率的かつ効果的な活用に向け、基準・要領等の整備を進めています(表-2)。
 

表-2 国土交通省におけるBIM/CIMに関する基準/要領等の整備状況



(1)CIM導入ガイドライン(案)
国土交通省では、これまでのBIM/CIM活用モデル事業で得られた知見やソフトウェアの機能水準を踏まえ、公共事業に携わる関係者(発注者、受注者等)がBIM/CIMを円滑に導入できることを目的に、現時点でBIM/CIMの活用が可能な項目を中心に、受発注者の役割、基本的な作業手順や留意点とともに、BIM/CIMモデルの作成指針(目安)、活用方法(事例)を参考として記載した「CIM導入ガイドライン(案)」を作成しています。
 
ガイドラインは、共通編と構造物ごとの各分野編で構成しており、各編を組み合わせて使用することを想定しています。2019年度版には、新たに、下水道編、地すべり編を追加し、BIM/CIMの適用範囲の拡大を図っているところです。
 
一方で、現行のガイドラインは内容が重複している部分があるなど課題もあることから、2019年度は共通編を全面的に見直しすとともに、発注者がBIM/CIMを活用する観点から実施すべき事項を別途マニュアルとして整理するなど、より分かりやすいガイドラインとなるよう改定し、BIM/CIMの効果的な活用が図られるよう検討を進めています。
 
 
(2)3次元モデル表記標準(案)
建設生産・管理システムで一貫したCIMモデルを流通・利活用し、各プロセスで発生した情報を連携していくことで、より一層の生産性向上が見込まれます。このため、契約図書におけるCIMモデルを契約図書に位置付けることを企図した「3次元モデル表記標準(案)」を整備しています。
 
設計図書として活用するBIM/CIMモデルの寸法や注記および管理情報の表記・表示の方法を定めたものであり、2次元図面からBIM/CIMモデルへの円滑な移行を補助するため、3Dモデルから切り出した2次元図面に従来のCAD製図を踏襲した方法で詳細な寸法・注記を加える方法も記載しています。
 
従来の2次元図面によらない、契約図書としてBIM/CIMモデルを活用する際の規定であることから、一般的なBIM/CIM活用業務では作成する必要はありませんが、本標準をBIM/CIM活用事業に適用し、実践して得られた課題に対応するとともに、関連する基準類の整備と連携しながら、本標準を継続的に改善・拡充していくこととしています。
 
BIM/CIMモデルでは構造物の寸法や注記をモデル内から取得可能であることから、改善・拡充に当たっては従来の2次元での製図法にとらわれない、より効率的な表記・表示の方法を検討し、建設生産・管理システムの効率化に向けて制を進めています。
 
 
(3) 土木工事数量算出要領(案)
国土交通省では、CADソフト等による体積の算出結果等の自動算出された数量をそのまま積算に活用できるよう「土木工事数量算出要領」に反映しています。
 
2018年度末の改定で、土木工事数量算出要領の全ての工種において3次元モデルから自動算出される数量を活用することが可能となりましたが、一部不明確な部分があったことから、2019年度は内容の精査を実施するとともに、モデル作成に当たっての留意事項や具体的な算出手順を整理し、効率的な積算が可能となるよう手引きを整備する予定です。
 
 
(4)BIM/CIM成果品の検査要領(案)
建設生産・管理システム全体を通じてBIM/CIMを活用していくためには、成果品として引き継ぐBIM/CIMモデルが適切に作成されていることが必要です。
 
そこで、まずは橋梁分野の詳細設計を対象に発注者による検査に必要な事項を整理し、受注者が実施すべき照査に必要な事項を「BIM/CIM設計照査シート」として取りまとめ、BIM/CIMモデルの品質確保を図ることとしました(図-1)。
 
2019年度は、対象工種を拡大し適切な照査・検査が実施できる環境を整備するとともに、ソフトウェアを活用した自動チェック機能などの拡充により、効率的な照査が可能となるよう、さらなる検討を進めているところです。
 
また、実務において想定される課題に対応するため、BIM/CIMを活用した設計照査の実施手順などを取りまとめた手引きを整備する予定です。
 

図-1 BIM・CIM設計照査シートの適用範囲



(5)BIM/CIM活用における「段階モデル確認書」作成マニュアル【試行版】(案)
BIM/CIMを活用したフロントローディングを実現するためには、手戻りを防止するため、事業の各段階で発注者が確認する時期と求めるBIM/CIMモデルの達成度を明確にすることが重要であることから、「段階モデル確認書」を作成するための「BIM/CIM活用における「段階モデル確認書」作成マニュアル【試行版】(案)」を整備しています。
 
段階モデル確認書は、業務・工事を実施する際の一連のプロセスにおいて、データ連携のプロセス(データ連携の場面)と確認すべき情報やその要件を示したものであり、「プロセスマップ」および「情報確認要件」で構成されるものです。
 
入札公告時にあらかじめ段階モデル確認書を提示し、業務・工事の開始時に受発注者で共有・確認することにより、CIMモデルの活用目的を明確化し、受発注者双方の作業負担を軽減することが期待されます(図-2)。
 

図-2 段階モデル確認書の活用イメージ



(6) 要求事項(リクワイヤメント)
国土交通省では、2018年度から発注者が受注者にBIM/CIMモデルの導入・活用に関する要求事項(リクワイヤメント)を設定し、事業を実施しています。
 
この要求事項に基づき、受発注者がそれぞれ知見やノウハウを出し合い、課題の抽出および解決策を検討することで更なるBIM/CIMの効果的な活用に向けた環境整備を進めているところです。
 
2019 年度は、これら要求事項について必須項目と選択項目に分けて見直すとともに、選択項目の実施にあっては課題抽出および解決策の検討が主たる目的であることを明確化しました。
 
2019年度に設定した要求事項は表-3の通りです。基準・要領等を定めたことにより実施が可能となったBIM/CIM活用項目を選択項目として設定し、BIM/CIM活用業務・工事で試行および検証を実施することで今後の基準・要領等の改定に向けた課題解決に活用を図る予定です。
 
今後、BIM/CIMの活用項目について必須項目を充実させることで、後工程で活用可能なBIM/CIMモデルの標準化が図られることから、引き続き、選択項目として実施する要求事項の課題解決を図り、必須項目の拡充に向けて検討を進めてまいります。
 

表-3 2019年度のリクワイヤメント一覧



BIM/CIMを取り巻く環境の整備

BIM/CIMをより効率的、効果的に活用していくためには、基準・要領等の整備を進めるだけでなく、それらを活用する環境についても整備していく必要があります。国土交通省では、BIM/CIM活用のための基準要領等だけでなく、データ交換等の環境整備も推進しています。
 
 
(1)BIM/CIMポータルサイト
BIM/CIMを効率的に活用するためには、必要な情報へのアクセシビリティを高める必要があります。特に、BIM/CIMに関連する基準・要領等について作成者ごとに公開されており、「何が、どこにあるのか」を整理し、共有することが急務となっています。
 
そこで、まずは国土交通省が公開しているBIM/CIMに関連する情報を取りまとめ、BIM/CIMポータルサイト【試行版】として公開しました(図-3)。
 
今後、関連する団体の情報等について充実させ、BIM/CIMに関する情報へのアクセシビリティを確保できる環境整備を進めてまいります。
 

図-3 BIM/CIMポータルサイト【試行版】
URL:http://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/bimcimindex.html



(2)ソフトウェア確認要件
BIM/CIMモデルを建設生産・管理システムで一貫して活用していくためには、異なるソフトウェア間でも支障なく情報交換が可能となるよう互換性を確保することが重要です。特に、BIM/CIMの共通フォーマットであるIFC形式およびJ-LandXML形式について、個々のBIM/CIMソフトウェアで問題なく作成・表示が可能であるかについてあらかじめ確認できることは、BIM/CIMを継続的に活用するうえで非常に重要となっています。
 
そこで、国土交通省では、前述の基準要領等において国内で独自に定めた要件を含め、国土交通省としてBIM/CIMソフトウェアに求める機能を機能要件として公開することしました。
 
ソフトウェア検定は、building-SMART JAPANやOCF等の民間団体において実施されていますが、2019年度以後これらの機能要件を満足しているかについて検定を実施され、国内のBIM/CIM基準等に合致するソフトウェアが活用されるよう環境整備を進めてまいります(図-4)。
 

図-4 ソフトウェア検定のイメージ



(3)情報共有システム機能要件
BIM/CIMをより効率的に活用するためには、同一のデータに関係者が同時にアクセス可能となる環境が必要です。このため、国土交通省では情報共有システムを活用することで3次元データを確認できるよう機能要件を見直し、2018年度に「工事施工中における受発注者間の情報共有システム機能要件Rev5.0」として改定するとともに、業務における機能要件を整備しています。
 
2019年版では、3次元モデルの表示等の一部機能について必須機能から外すとともに、外部システムを活用することが可能となるよう解説編を新たに公開しています。また、機能要件の整備とあわせ、ISO19650に準じた共有データ環境(CDE)に対応するよう「土木工事の情報共有システム活用ガイドライン」も改定しています。
 
今後、これら機能を満足する情報共有システムを活用することで、BIM/CIMの効率的な活用が可能となることが期待されます。
 
 
(4)「オンライン電子納品」の実装
BIM/CIMに限った課題ではありませんが、複雑化・大容量化する電子成果品の納品に当たり、現行の電子納品要領ではCD等の電子媒体に格納することを必須としています。しかしながら、複数枚の電子媒体に分割して提出する場合など、電子成果品の作成には少なからず受注者の負担となっている部分があるとともに、成果品が正しく格納されていないなどのミスが発生する要因ともなっていました。
 
そこで、国土交通省では情報共有システムを活用したオンライン電子納品について検討し、2020年度中の運用開始に向けて、シームレスな情報の共有・交換が可能となるよう環境整備を進めています(図-5)。
 

図-5 オンライン電子納品のイメージ



今後の取り組みについて

国土交通省では、i-Constructionの普及拡大により、2025年までに建設現場の生産性2割向上を目指しています。特に、BIM/CIMを生産性革命のエンジンと位置付け、2017年に「3次元データ利活用方針」を策定し、建設生産・管理システム全体における3次元データの利活用に向けた取り組みを進めてきました。
 
今後、さらなるi-Constructionの普及拡大を図るためには、3次元データの原則活用が可能となる環境を整備していく必要があることから、2019年度中に3次元データの利活用に関する新たなロードマップを作成することとしました。
 
新たなロードマップについては、これまでの「いつまでに何をするのか」という表現から、「いつ何が可能となるとなるのか(どのような効果が期待されるのか)」という表現に改め、国土交通省の役割だけでなく、業界団体の果たすべき役割についても記載し、誰が何をすべきなのかを明確にしたいと考えています。
 
 
(1)規格・技術の一元化
BIM/CIMの共通フォーマットであるIFCの規格化については、ソフトウェア確認要件として公開したところですが、作成するBIM/CIMモデルの標準化については作成者の判断に委ねられている部分が多いのが実情です。また、関連する基準要領等やガイドライン等についても整理されておらず、全体像を把握することが困難となっています。
 
今後、BIM/CIMをより効果的に活用していくためには、国際規格であるISOを導入するだけでなく、BIM/CIMに関する国内における規格・技術の一元化を目指すことが必要です。
 
そこで、2019年度は、まずは国内におけるBIM/CIM関連の用語を整理し国内の共通認識を深めるとともに、BIM/CIMに関連する基準・要領・ガイドライン等の文書について、誰でも容易にアクセスが可能となるよう、ポータルサイトの拡充を図る予定です。
 
 
(2)BIM/CIM適用事業の拡大
国土交通省では、2018 年度から大規模構造物詳細設計において原則適用を打ち出すとともに、目標を200件と定めてBIM/CIMの適用拡大を図っています。2019 年度は、詳細設計のBIM/CIM成果品がある工事についても原則適用するとともに、概略・予備設計においてもBIM/CIMの導入を積極的に推進することで、年間400件のBIM/CIM事業の実施を目指します。
 
今後、全事業でBIM/CIMの原則適用を目指すためには、CIM導入ガイドラインの各編を拡充するだけでなく、これまで対象としてこなかった工種(地下埋設物等)についても対応が可能となるよう、ガイドライン等のさらなる拡充について検討を進めます。
 
 
(3)BIM/CIMの高度利活用の推進
BIM/CIMを活用することで、建設生産・管理システムにおける情報の集約化・可視化が可能となります。また、クラウドコンピューティング等の新技術を導入することにより、業務等の効率化・高度化につながります。さらに、これらのデータは建設生産・管理システムの外でも活用されることが期待されています。
 
2019 年度は、i-Constructionモデル事務所において後工程で利用することを前提としたBIM/CIMモデルの構築について検討するとともに、BIM/CIM技術者による発注者支援についても検討し、さらなる高度利活用に向けた検討を進めてまいります。
 
 
(4)BIM/CIMの普及促進
BIM/CIMを建設産業全体で活用していくためには、大企業における先導的な取り組みを進めるだけでなく、中小企業を含めた全建設産業で3次元データを活用できる環境整備が必要です。
 
国土交通省では、2018年度から発注者に対するBIM/CIM研修を開始しましたが、BIM/CIMのさらなる普及・啓蒙が図られるよう、体制構築を進めてまいります。
 
また、モデル作成にかかる作業負担を軽減するため、数字を入力することで必要最低限のオブジェクトを作成可能なパラメトリックモデルの作成ルールや、プレキャスト製品等の汎用品ついてはメーカーに依存しないジェネリックオブジェクトの供給方法等についても検討してまいります。

表-4 BIM/CIMロードマップ案



おわりに

建設現場の生産性向上を図るためには、3次元データ等の導入を国の直轄工事以外にも拡大していくことが必要です。このため、 i-Constructionサポート事務所を各都道府県に1事務所以上決定し、地方公共団体や地域企業における取組をサポートするための相談窓口を設置しました。
 
また、発注関係者の集まる発注者協議会や土木部長会議等の場において、国土交通省における取り組みについて周知を図りつつ、発注者間で連携して取組みを進めてまいりたいと考えています。
 
 
 

国土交通省 大臣官房 技術調査課 課長補佐 那須 大輔

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2020
特集1「i-Construction×BIM/CIM」



 



 


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