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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

地方自治体におけるi-Construction・BIM/CIM事例 −3次元点群データの収集・利活用の取り組み−

2020年6月29日

 

はじめに

本県では、 国土交通省が推進するi-Constructionの取り組みを受けて、平成28年度に、トップランナー施策として位置付けられたICT活用工事の試行を開始し、これを契機に3次元点群データの収集・利活用を積極的に進めています。
 
近い将来、3次元点群データが社会インフラのひとつとして、建設生産プロセスだけでなく社会全体で活用されることを想定して、取り組みを展開しています。
 
他分野での活用も推進するため、データをオープンデータとして公開することとし、具体的な活用手法のひとつとして、自動運転への活用に取り組んでいます。今年度は、さらに他分野での活用を想定したモデル事業を展開することとしています。
 
本稿では、本県における3次元点群データの収集・利活用に関するこれまでの取り組みと今後の展開について紹介します。
 
 
 

静岡県3次元データ保管管理システム

本県では、ICT活用工事の試行導入に際して、施工の各プロセスにおいて3次元データを活用することに着目し、従来の工事完成図に相当するデータとして、出来形管理の3次元計測とは別に工事完成時に3次元計測を実施し、3次元点群データを納品することを求めることとしました(図-1)。

図-1 ICT活用工事の実施プロセス


 
ICT活用工事の実施に当たっては、i-Constructionの取り組みの開始時に国土交通省の電子納品要領において、電子媒体としてBlu-rayでの納品が採用されましたが、本県職員が利用する端末では、Blu-rayに対応したドライブが装備されていないため、大容量データを納品するためには別の手法が必要となりました。また、既存の電子納品・保管管理システムは、庁内利用を前提としており、施設の維持管理や災害時の状況把握など迅速にデータ提供ができないことが課題となることが想定されました。
 
そこで、3次元データの収集・利活用の推進を図るため、インターネット経由でクラウド上に3次元データを登録・公開する「静岡県3次元データ保管管理システム(Shizuoka PointCloud DB)」(以下、「PCDB」という)を構築し、平成29年3月に試行運用を開始しました(図-2)。
 
①PCDBにアクセスし、「閲覧・DL」を選択  ②DLする箇所のピンを選択      ③データを選択しDL

図-2 静岡県3次元データ保管管理システム(PCDB)の利用イメージ


 

このシステムを用いてICT活用工事を実施する場合には、工事完成時の3次元計測のデータのオンライン納品を行う運用としています。また、全国に先駆けて3次元点群データのオープンデータサイトとして公開し、登録データは、クリエイティブ・コモンズ表示4.0国際パブリックライセンス(CCBY4.0)により誰でも二次利用することが可能です。
 
これまでにICT活用工事完成時の計測データに加えて、県及び管内市町の各種業務で取得したデータが収集され、平成30年度末時点で道路延長1,000km以上、航空測量面積20㎢以上のデータを公開しています。
 
PCDBの運用開始から多くの反響をいただいていますが、プロトタイプとして構築したシステムであり、データ提供の機能は、分割した3次元点群データファイルをダウンロードすることしかできないため、データをブラウザ上で閲覧できないことや属性情報を提供できないなど、改善の要望もいただいています。
 
 
 

しずおか自動運転ShowCASEプロジェクト

路線バス利用者の減少傾向が続く中、県内のバス事業者においては、運転手の約5割が50歳以上であり、人件費などの費用の増大、運転手不足が深刻な状況です。また、バス路線の約4割が行政の財政負担により運行しており、県内の公共交通の維持、地域の生活交通手段の確保が喫緊の課題となっています。
 
現在、全国各地で自動運転の実証実験が行われており、自動運転はその課題を解決する有効な手段として期待されます。
 
自動運転では、ダイナミックマップが重要とされる技術と言われており、国内主要自動車メーカーや地図会社などが出資して設立したダイナミックマップ基盤株式会社が、その基盤として、全国自動車専用道路における自動走行向け高精度3次元地図データの生成・提供を行っています。そこで、本県は、県内の地域交通の課題対応を目的として、平成29年11月にダイナミックマップ基盤株式会社と、3次元データの相互利用を前提とした「自動走行システムの実現に向けた連携・協力に関する協定」を締結しました。
 
この協定に基づき、県が保有する3次元点群データの高精度3 次元地図データへの活用と県内企業の技術開発を支援するため、自動運転の実証実験を進めていくこととしました(図-3)。
 
平成30年度には、袋井市が実施しているエコパドリームプロジェクトと連携し、袋井市の県営小笠山総合運動公園内及び公園周辺道路において、行政が保有する3次元点群データを自動運転に活用した全国初の実証実験を実施しました。
 
今年度は引き続き、県営小笠山総合運動公園において実証実験を行うほか、地域性の異なる都市部(沼津港)、過疎地(松崎町)及び郊外部(下田市)において、交通事業者や地元自治体研究開発企業と連携し、高精度3次元地図を用いた走行技術の検証と次世代モビリティサービスの導入検討を行っています。
 

図-3 プロジェクトの実施スキーム




 

スマートガーデンカントリー“ふじのくに”の形成に向けて

本県においても、他の地方と同様に人口減少や少子高齢化が進み、担い手不足など社会的課題が顕在化しています。これらを解決するためには、近年目覚ましく進展しているAIやロボットなどの先端技術を積極的に導入することが必要となります。
 
そこで、これまでの3次元点群データの収集・利活用の取り組みをさらに拡大し、今年度から県土の面的なデータを取得し、災害復旧や観光などのあらゆる分野への活用を図る「スマートガーデンカントリー“ふじのくに”モデル事業」を開始しました。
 
「スマートガーデンカントリー“ふじのくに”」とは、人口減少などの社会的課題に対して、美しい景観などの本県の「場の力」を活かしながら、先端技術をあらゆる分野に活用することで、誰もが安全・安心で利便性が高く快適に暮らせるスマートな社会の形成を目指すものです。
 
モデル事業のエリアは、災害時における孤立地域の早期解消に向けた施設管理や災害復旧工事への活用に加え、東京2020オリンピック・パラリンピックの開催に向けた自転車の聖地づくり、ジオパークなどの観光振興、高齢化率が高い地域の移動手段の確保など、地域の魅力発信や課題対応への活用が期待できる東部・伊豆地域を選定しました。
 
事業の推進に当たっては、庁内に関係部局で構成するWGを設置し、全庁を挙げて多種多様なデータの利活用(図-4)に取り組んでいきます。
 

図-4 3次元点群データの利活用イメージ



モデル事業では、エリア全域でベースとなる面的な3次元点群データを航空レーザ測量により全域のデータを取得する予定です。
 
次に、利活用の取り組みへの環境整備として、静岡県GISの機能改良の実施を予定しています。まずは、PCDBのブラウザ上でデータ閲覧ができないことへの課題対応として、3次元点群データの表示機能を開発することとし、これまでに試行版を一般公開しました(図-5)。また、庁内利用においては、これまでも各種台帳との連携を行ってきましたが、この機能強化についても検討していくこととしています。
 

図-5 静岡県GISの点群表示



具体的な利活用の取り組みのひとつとして、施設管理の効率化・高度化を図るためには、3次元点群データの特性を活かした手法が有効であると考えられます。そこで、点群データを活用した施設の維持管理について、今年度より大阪経済大学 中村健二教授、法政大学 今井龍一准教授、摂南大学 塚田義典講師、関西大学 田中成典教授、株式会社日本インシーク、日本工営株式会社と共同研究を開始しました。
 
大阪経済大学の中村教授らは、道路分野における3次元点群データの属性管理仕様の研究において、これまでに県が取得したデータを利用して、道路法面の点群データの差分抽出による変状検出の検証を行っており(図-6)、共同研究では点群データの利活用環境を現場に試行導入し、その適用効果の検証を行っています。
 

図-6 道路法面の変状検出




 

おわりに

3次元点群データの収集・利活用は、本県の取り組みのほか、さまざまな検討が行われているところですが、現在発展途上であり、標準化に向けては、多くの方々のお力添えが必要であると考えています。このため、これまでに取り組みを実施している産学官の連携に加えて、今後も多業種の民間企業の参画を促進するとともに、国土交通省や国土地理院などのご指導、ご支援をいただきながら、積極的に取り組みの拡大を図ってまいります。
 
・静岡県3 次元データ保管管理システム
 https://pointcloud.pref.shizuoka.jp/
 
・静岡県GIS
 https://www.gis.pref.shizuoka.jp/
 
 
 

静岡県 交通基盤部 建設支援局 建設技術企画課

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2020
特集1「i-Construction×BIM/CIM」



 



近畿地方整備局におけるBIM/CIMの取り組み

2020年6月26日

 

はじめに

国土交通省では平成24年度からBIM/CIMの導入に向けた取り組みを実施しております。また、平成31年3月には3次元データ等を活用して国土交通省のi-Constructionの取り組みをリードする、i-Constructionモデル事務所( 全国10事務所)、i-Constructionサポート事務所(全国53事務所)が決定しました。
 
本稿では近畿地方整備局管内のi-Constructionモデル事務所である、豊岡河川国道事務所のBIM/CIM活用事例について紹介します。
 
 

北近畿豊岡自動車道について

一般国道483号北近畿豊岡自動車道は、豊岡市を起点とし丹波市に至る延長約70kmの高規格幹線道路であり、兵庫県北部の但馬地域と丹波地域を直結し、さらには京阪神都市圏との連結を強化し、地域の活性化を支援する自動車専用道路です。
 
平成29年3月25日までに春日JCT・IC〜日高神鍋高原ICまでの延長約60kmが開通しました。現在は、日高豊岡南道路、豊岡道路の整備を進めているところです(図-1)。
 

図-1 北近畿豊岡自動車道




 

工事におけるBIM/CIMの活用事例

本稿で紹介する工事は、日高豊岡南道路(L=6. 1km)の北部に位置する、豊岡南インターOFFランプ橋のPCラーメン箱桁橋、RC橋脚工、橋台工などを施工するものです(表-1)。
 
本工事の施工に当たっては、豊岡道路本線橋下部工事、豊岡南インターONランプ橋工事、橋台擁壁工事などの多数の事業者が、狭小な施工ヤードにおいて、隣接して施工する必要がありました。
 
このため、CIMモデルの活用により課題解決と効率化が図られることを期待して、発注者指定型のCIM活用工事として工事発注が行われました。
 

表-1 工事概要




 

CIMモデルの作成

豊岡南インターOFFランプ橋については、設計段階においてCIMモデルを作成していなかったことから、本工事においてCIMモデルを作成しました(図-2)。
 
なお、豊岡南インターOFFランプ橋のCIMモデルは詳細度300(附帯工等の細部構造、接続部構造を除き、対象の外形形状を正確に表現したモデル)を標準としましたが、干渉が予測される部位については、一部、詳細度400(詳細度300に加えて、附帯工、接続構造等の細部構造及び配筋も含めて正確に表現したモデル)により作成しました。
 

図-2 豊岡南インターOFFランプ橋CIMモデル(全景)




 

CIMモデル活用による効果

(1)豊岡道路本線橋下部の近接工事による事故リスクへの対応
①課題
本工事ではランプ橋と本線橋(下部工)が同時進捗することで近接施工となり、施工機械や施工車両の接触事故が発生する懸念がありました。
 
②CIMモデル活用による解決策
本工事と豊岡道路本線橋下部工事の施工ステップを、同一空間上の3次元モデルに表現しました(図-3)。豊岡道路本線橋下部工事の工程進捗に応じて、施工に必要となる作業範囲(施工車両や機材配置、資材ヤードなど)と、施工時の本工事に対する影響可能性を可視化しました。また、豊岡道路本線橋下部工事のP2橋脚については、地中部の基礎躯体、ライナープレート、施工機械(クレーンなど)を可視化することで、豊岡南インターOFFランプ橋の上部工施工足場や支保工との離隔や施工空間が確保されていることを確認しました。
 

図-3 本線橋下部工事の施工ステップ反映




③CIMモデル活用による効果
3次元モデルを作成することにより、作業員が施工リスクを共有することができました。また、施工計画作成時の手順検討や現場協議において、意思伝達の確実性を高めることができました。
 
 
(2)高圧線近接工事による事故リスクへの対応
①課題
本工事の上部工桁下には地域の重要配電を担っている高圧線が存在しています。このため、本工事の上部工施工に当たっては、高圧線との近接施工となり、上部工支保工、資材、施工機械などの接触による感電事故や高圧線切断事故が発生する懸念がありました。
 
②CIMモデル活用による解決策
本工事の上部工施工ステップを作成する際、同一空間上の3次元モデルに高圧線を表現しました(図-4)。高圧線の実際の座標・形状を3次元モデルに反映し、さらに高圧線を中心とする施工時接近禁止範囲(図-3赤色部分)を表現した上で、豊岡南インターOFFランプ橋の上部工施工足場、支保工、施工機械との離隔の確認と施工イメージの理解を深めることができました。
 

図-4 高圧線の接近禁止範囲反映図




③CIMモデル活用による効果
3次元モデルを作成することにより、現実的で具体的な安全距離の確認方法を検討することができました。また、現場協議において作業員へ事故リスクを共有して認識してもらうことができました。
 
 
(3)豊岡南インターONランプ橋工事の近接施工による足場重複への対応
①課題
豊岡南インターONランプ橋上部工工事が同時施工となるため、豊岡南インターOFFランプ橋P2橋脚およびA2橋台が近接施工となり、各橋個別に設計している設計成果では足場が重複していました。
 
②CIMモデル活用による解決策
本工事の上部工施工ステップと豊岡南インターONランプ橋工事の上部工施工ステップを、同一空間上の3次元モデルに表現しました(図-5)。両橋の足場図を3次元モデル上で重ね合わせることで、足場の干渉チェックを実施しました。
 

図-5 足場干渉箇所反映




③CIMモデル活用による効果足場の干渉チェック結果を踏まえて、足場の改良計画を3次元モデル上で作成することにより、作業性や安全性にも配慮した、現実的な足場計画を作成することができました。
 
 
 

おわりに

近畿地方整備局管内は今後もさらなる生産性向上を目指し、BIM/CIMの活用および普及促進に努めてまいります。設計業者、施工業者、CADベンダー業者、関係各位におかれましては、引き続きご支援・ご協力をお願い申し上げます。
 
 
 

国土交通省 近畿地方整備局 企画部 技術管理課

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2020
特集1「i-Construction×BIM/CIM」



 



東北地方整備局におけるBIM/CIMの取り組みについての紹介

 

東北地方整備局におけるBIM/CIMの取り組みについて

図-1 令和元年度 東北地方整備局におけるBIM/CIM活用の方針



東北地方整備局におけるBIM/CIMの取り組みは、全国と歩調を合わせ平成24年度から開始し、平成28年度末の「CIM導入ガイドライン」策定を契機に新基準に従った取り組みを積極的に進め、平成30年度は設計業務、工事合わせて39件で活用を行ったところである。
 
東北地方は、他地域に比べて少子高齢化の進行が速く、生産年齢人口が今後一層早い速度で減少していく状況にあり、建設分野における生産性向上は待ったなしの状況にある。また東日本大震災からの復旧・復興現場では、橋梁やトンネルといった多くの構造物の整備が急ピッチで進められており、ほぼ同時期に完成を迎えることとなる。これらの構造物は将来、一斉に老朽化し、補修が必要となってくる可能性が高く、こうした中で構造物の長期的な維持管理の効率化や、メンテナンス費用の抑制・平準化などの課題を解決する”切り札”の一つとしてBIM/CIMに期待する機運が高い。
 
東北地方整備局では、全国の動向も踏まえながら、毎年独自のBIM/CIM活用方針を打ち出し、その普及に努めている。
 
東北地方整備局の大まかな方針としては、大規模な構造物の詳細設計業務、工事、それに設計業務段階でBIM/CIMを実施した工事では「発注者指定型」の取り組みを原則とし、それ以外の構造物の設計業務、工事では「施工者希望型」にて行う方針としている。
 
平成30年度に実施した、39件のBIM/CIMの設計業務や工事の別、また構造物別の内訳は以下の通りである(図-2)。
 

図-2 平成30年度 東北地方整備局BIM/CIM実施状況


 
また昨年度末に全国一斉に設定された「i-Constructionモデル事務所(3次元情報活用事業)」「i-Constructionサポート事務所」であるが、東北地方整備局では以下の通り設定した(図-3)。
 

図-3 i-Constructionの貫徹に向けたモデル事務所の決定(東北地整)




 

鳴瀬川総合開発事業におけるBIM/CIM活用方針(案)

東北地方整備局が「i-Constructionモデル事務所(3次元情報活用事業)」に設定した「鳴瀬川総合開発事業」は、鳴瀬川流域の治水安全度向上、流水の正常な機能の維持、かんがい用水の補給、発電を目的とする多目的ダム建設事業であり、一級河川鳴瀬川の支川筒砂子川に筒砂子ダム(台形CSGダム)を新たに建設し、併せて、鳴瀬川本川の既設漆沢ダム(S56.3 竣工・中央コア型ロックフィルダム・現宮城県管理)を再開発により治水専用化するものである。
 
現在、環境影響評価法に係る手続き、ダム建設に関する基本計画の検討、ダム本体および関連施設等の設計などを行っている段階である(図-4、5)。鳴瀬川総合開発事業におけるBIM/CIMの大まかな活用方針(案)は以下の通りである。


  • 図-4 鳴瀬川総合開発事業の概要


  • 図-5 鳴瀬川総合開発事業 事業工程



1)図- 6、7に示す「統合モデル(筒砂子ダム、漆沢ダム)」を整備し、事業実施中は「事業監理CIM」と位置付け、事業進捗状況の可視化と情報共有を図る。(※モデルは事業の進捗に合わせて、適宜、追加、変更等を重ねていく)


  • 図-6 統合CIMモデルの作成


  • 図-7 統合CIMモデルの作成(2)



2)工事完成後、試験湛水の開始以降は、その位置付けを「ダム管理CIM」へと変更し、効率的な維持管理を目指す。
 
 
「事業監理CIM」および「ダム管理CIM」の各モデル(3次元モデルおよび属性情報等の関連するデータ)の作成、更新、活用等に当たって留意する視点は次の通りである。
 
1)CIMモデルは、それ以降の事業工程で利活用することを視野に入れて、効率的に更新が可能であること。
 
2)CIMモデルが、全体の事業工程を俯瞰し、適切な時期に適切な詳細度により必要な属性情報を付与して作成・更新され、目的に応じて有効に利活用されること。
 
3)各事業段階にわたって、統合CIMモデルに付与され更新・蓄積される大量で多岐に渡る情報を、適切に管理して関係者間で共有し円滑に活用すること(図-8)。

図-8 事業段階ごとの活用目的・内容



 
平成30年度に「事業監理CIM」「ダム管理CIM」のベースとなるCIMモデルを作成した。現時点では、詳細度100〜300の概略的なモデルを用いて、事業全体の位置関係・構造物形状の把握を行う程度の活用に留まっているが、今後、事業の進捗に合わせ、詳細度を上げ必要な属性情報を付与して「事業監理CIM」として有効に活用していくこととしている(図-9)。

図-9 平成30(2018)年度作成のCIMモデル


鳴瀬川総合開発事業のBIM/CIMについては、今後の長い事業工程、施設の維持管理の中で、それぞれの段階で求められるさまざまな技術的なニーズに応え、事業に携わる受発注者の負担軽減に寄与し、事業の進捗、維持管理の生産性の向上に資するよう、今後とも追加、更新等を重ねながら活用していくことを考えている。
 
 

BIM/CIM活用上の課題

受発注者から聞こえてくる疑問や課題等には主に次のようなものがある。
 
①上流工程である設計段階等で作成した3次元モデルが、その後の下流工程となる建設生産プロセスの各段階で十分に活用できるのか。構造物完成後の維持管理の段階で十分に(機能をフルに)活用できるのか。現段階で実施している作業(モデルの作成や属性情報の付与等)が無駄にならないのか疑問や不安がある。
 
②定期的に人事異動が生じる職場環境につき、作成したCIMモデルを確実に引き継いでいくための仕組みづくりが必要。また、BIM/CIMを初めて担当する職員であってもスムーズに更新・活用が可能となるよう、職員全体の習熟度を向上させる必要がある。


 

BIM/CIM活用の今後について

「生産性革命のエンジン」と称されるBIM/CIMの活用は、i-Construction推進の眼目であり、BIM/CIMの契約図書化等の試行が始まろうという現段階では、早々に受発注者ともその取扱いを経験し、習熟していく必要があると考える。
 
このBIM/CIMが早く受発注者間に浸透し、普段使いのツールとして、ストレスなく、当たり前に活用され、建設生産プロセスの各段階における生産性の向上に大いに寄与してくれることを強く願っている。
 
 
 

国土交通省 東北地方整備局 技術管理課

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2020
特集1「i-Construction×BIM/CIM」



 



沖縄総合事務局におけるBIM/CIMの取り組み

2020年6月18日

 

はじめに

沖縄総合事務局では、平成28年度からBIM/CIM試行を始め、大規模構造物詳細設計において原則適用しています。
 
本稿では、平成30年度に取り組んだ小禄道路の橋梁詳細設計におけるBIM/CIM活用事例について紹介します。
 
 

BIM/CIMの取り組み

(1)事業概要
国道506号那覇空港自動車道小禄道路は、沖縄県那覇市鏡水と豊見城市名嘉地を結ぶ延長約5.7kmの高規格幹線道路です(図-1)。
 
「平成30年度小禄道路橋梁詳細業務」は、小禄道路の終点側約1.1km区間(沖縄県豊見城市瀬長〜名嘉地)の橋梁詳細設計を行ったものです。当該区間は、国道331号一般部上空に路線が計画されており、橋脚のほとんどは現道中央分離帯内に設置する計画です。
 
橋梁計画に際しては、交差点および沿道施設と橋脚位置の取り合いや、工事段階での施工重機配置、現道切り回し形態等において、多くの関係者と協議を重ねていく必要があります。また、早期供用につなげるため、工事段階での手戻りを防止し、かつ、設計自体を迅速に行うことも重要です。
 

図-1 那覇空港自動車道小禄道路



(2)合意形成を目指したCIM活用
橋梁計画作成に際し、警察、交差道路管理者である豊見城市、沿道の商業施設、地元自治会等、多くの関係者と議論を重ね合意形成する必要があります。関係者の多くは、土木専門知識を有さない一般の方であり、専門的な図面等では橋梁計画を理解するのに時間を要すこと、誤解が生じることが懸念されます。そこで、CIMによる統合モデルを作成し、視覚的に橋梁計画を理解してもらうことを試みました。
 
1)広域統合モデルの活用
広域統合モデルは、隣接区間を含む橋梁区間約1.9kmを対象として作成しました(図-2)。地形モデルは、国土地理院の基盤地図情報を活用し、テクスチャー画像として航空写真を貼り付け、主要な建物等についてもモデル化しました。土工形状モデルは、国道331号一般部およびランプ橋台に接続する擁壁を対象としました。また、構造物モデルは、橋梁上部構造、下部構造、基礎構造を詳細度300相当で作成しました。
 
モデルの利用目的は関係者協議であり、横断歩道や停止線等の交差点形状と橋脚位置の取り合いについては、特に留意し精度よくモデル化しました。また、協議時によりスムーズに橋梁計画の理解を得るため、事業計画の全体概要が分かるアニメーションも作成しました。
 

図-2 広域統合モデル



2)CIMを活用した施工ステップモデル
施工計画の立案に際しては、現道切り回し等を行うことで極力4車線を確保するものとし、交通規制は限定的なものに留める計画としました。
 
施工ステップモデルは、広域統合モデルをベースとした詳細度300相当の構造物モデルに加え、切り回し道路、施工重機、資機材等のモデル化を行いました。
 
ここでは、施工ステップモデルの一例を紹介します(図-3)。STEP1は、現道4車線を外側に切り回し、中央部分を施工ヤードとして張出式橋脚の基礎・柱施工を行っている状況を示しています。STEP2は、現道4車線を内側に切り回し、門型橋脚の基礎・柱施工を行っている状況を示しています。
 

図-3 施工ステップモデル



(3)既存構造物のCIMモデル化
小禄道路は、供用中である豊見城東道路と接続するため、その掛違い部は既設橋脚を利用する計画です。接続部の橋梁計画に際しては、既設橋脚および隣接橋梁の正確かつ詳細な把握が必要であり、これを怠った場合、工事段階での大きな手戻りにつながり、沿道環境への影響も懸念されます。
 
この課題に対し、図面から構造物モデルを作成するのではなく、既設橋脚および隣接橋梁を対象として、3Dレーザースキャナー(スキャン速度100万点/秒)を用いて3次元点群データを作成し、CIMモデルへ展開することとしました(図-4)。3Dレーザースキャナーの計測誤差は±2ミリ程度であり、橋梁計画上、問題のない精度になります。
 
供用中である既存構造物を実構造物からモデル化することにより、より実現性の高いCIMモデルを可能とし、関係者協議への活用、施工段階へのスムーズな移行に努めました。
 

図-4 実構造物からの3次元モデル化



(4)業務効率化を目指したCIM活用
1)受発注者間の情報共有
受発注者間のリアルタイムな情報共有を図るために、本業務においてはインターネットを媒体とした共有サーバーを活用しました。CIMモデル等は更新の都度、共有サーバー内にアップロードすることにより、受発注者間で常に最新の状況を確認できる体系作りを目指したものです。
 
また、共有サーバー内に業務ごとの仕切りを設けることで、受注者間でのコンプライアンスを保持しつつ、発注者は全データを確認できるシステムを採用しました。
 
 
2)WEB会議の取り組み
本業務の発注者所在は沖縄、受注者所在は主に福岡であり、協議等のための移動手段は航空機に限定されます。この背景を踏まえ、移動時間を大幅に縮減でき、かつ、航空機が欠航となった場合においても協議が可能となるWEB会議の活用を建設コンサルタンツ協会協力の下、試行実施しました。本試行では、支援専門技術者やCIMモデル操作者等の一部メンバーがWEB経由で協議に参加しました(図-5)。
 
WEB会議の試行により、協議の日程調整がスムーズに行え、効率よく受発注者間で合意形成が図れました。
 
一方で、音声が聞き取りにくい、発言のタイミングが難しい等の課題も挙がっており、システムや協議方法の改善を加えつつ、今後も試行を続けていく予定です。
 

図-5 WEB会議試行実施状



技術者育成の取り組み

BIM/CIMによる成果品を確認するためのスキル向上が発注者に求められており、3次元データを扱える技術者の育成が必要になります。実際に操作等を体験することでメリットを実感することが重要であり、職員・支援業務技術者を対象にBIM/CIMの座学と演習を実施しています(写真-1)。
 

写真-1 BIM/CIM研修状況


 

研修で利用した演習テキスト



おわりに

CIMを活用した関係機関協議および受発注者間協議においてはスムーズに共通認識を得ることができ、CIM活用の効果が図られました。
 
CIMは、2次元図面でいう一般図・詳細図という性質の異なる2種類の図面を、さらに拡大すると、測量業務や地質調査業務等の成果も合わせ、1つのモデルで表現し一元管理できることが最大の利点です。今後、CIMに関する基準制定や履行体制、技術革新がより進み、CIM活用が普及し事業全体として効率化が図られていくことを期待します。
 
 
 

内閣府 沖縄総合事務局 開発建設部 建設工務室 室長補佐 知名 広道
内閣府 沖縄総合事務局 南部国道事務所 調査第一課長 松川  剛
内閣府 沖縄総合事務局 南部国道事務所 調査第一課 調査係長 原田 圭大

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2020
特集1「i-Construction×BIM/CIM」



 



関東地方整備局における i-Construction・BIM/CIMの取り組み 〜調査・設計から維持管理段階までの3次元情報循環を目指した甲府河川国道事務所での取組の効果検証と今後の方向性〜

2020年6月8日

 

国土交通省での「i-Construction」の取組と確認されている効果・課題

国土交通省では、「ICTの全面的な活用(ICT土工)」等の施策を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図り、もって魅力ある建設現場を目指す取り組みである「i-Construction」を進めており、その中で、3次元情報を活用したICT活用工事やBIM/CIM活用業務等の取り組みを通じて、一定の効果が確認されている。
 
例えば、施工段階においては、ICT活用に必要な基準類の整備と合わせて、既に国土交通省の直轄工事のうち、土工や舗装工事で一部試行しているICT活用工事を適用しており、実際の活用により、起工測量の時間短縮および人工削減、丁張り設置にかかる人工削減および安全性の向上、3次元設計データ・施工履歴データの活用による効果などが確認されている。
 
また、設計段階についても、BIM/CIM(Building/Construction InformationModeling,Management)の活用を国土交通省の直轄の設計業務等に一部試行しており、例えば、予備設計段階での活用においては、従来では不明確であった干渉等があらかじめ確認できることによる品質確保、設計内容に関する関係者との迅速な合意形成、詳細設計への活用による効率化などの効果が確認されている。
 
一方で、こうした取り組みの実施に当たり、データ量が膨大になりがちな中での利用環境の整備や操作性の高いモデル作成の技術、ソフト操作やモデルへの理解を初めとする人材育成等が課題として指摘されている。
 
さらに、ドローンの活用による現地測量、ウェアラブルカメラおよびPC環境の活用による遠隔での現地確認など、さまざまな創意工夫についても、各現場で試行がなされているところである。
 
今回、国土交通省のi-Constructionモデル事務所の一つである国土交通省関東地方整備局甲府河川国道事務所の取り組みを事例として、これまでの設計・施工段階でのBIM/CIM活用、ICT施工の取組の効果検証とともに、3次元情報循環に向けた今後の方向性について紹介する。
 
 

設計・施工段階での3次元情報活用の効果検証

工事・業務における生産性向上の取り組みとして、過年度に実施してきた、道路設計でのBIM/CIM活用および道路工事におけるICT活用状況を概観し、その効果や今後の方向性について検証した。
 
 
(1)新山梨環状道路(広瀬〜桜井)設計でのBIM/CIM活用
新山梨環状道路(広瀬〜桜井)は、甲府中心市街地から半径5〜7kmの環状道路の一部を形成する、盛土および高架構造を主とした、延長約2kmの4車線の自動車専用道路の事業である。
 
これまで平成29年度に予備設計を開始し、平成30年度から現在にかけて、橋梁予備設計や道路詳細設計を実施している状況であり、これらの設計業務にBIM/CIMを活用しているところである。
 
過年度の設計業務でのBIM/CIM活用における効果について、発注者の職員や受注者等へのヒアリングを通じて、表-1のとおり、検証結果を整理した。既に、図-1の通り、3次元モデルの活用により、比較・概略検討が容易にできるとともに、道路完成イメージの可視化による地元説明会や関係機関協議の円滑化等の効果が確認された。
 


  • 表-1 新山梨環状道路(広瀬〜桜井)の予備設計段階におけるBIM/CIM活用の
    効果検証結果


  • 図-1 新山梨環状道路(広瀬〜桜井)
    の設計でのBIM/CIM活用状況


(2)中部横断自動車道(富沢〜六郷)におけるICT土木工事、トンネル覆工点検での3次元測量活用
中部横断自動車道(富沢〜六郷)は、静岡県静岡市から長野県小諸市を結ぶ延長約132kmの高速自動車国道の一部を構成する、トンネルおよび高架構造を主とした、延長約28kmの2車線の事業である。
 
現在、同区間においては、2020年内の全線開通を目指して、局内の関係部署と連携しながら、未開通区間のトンネル、橋梁、土木、舗装、基盤整備等の50件を越える工事を、同時並行的に進めている。
 
これまで土木工事6件および舗装工2件について、ICT活用工事を実施した。
 
このうち、切土作業および敷均し・転圧作業において、3次元データが活用された不動沢地区改良工事および粟倉地区改良工事の2件の土木工事における効果について、発注者の監督職員や施工業者等へのヒアリングを通じて、表-2の通り、検証結果を整理した。具体的には、受注者の創意工夫により、図-2のように、3次元で現況測量、現況データ、施工用データを作成し、マシンガイダンスやマシンコントロールと合わせて活用することで、施工状況や出来高を3次元で確認し、安全性の向上や、施工効率や精度の向上などの効果が確認されるとともに、設計段階からの活用や、維持管理段階への活用拡大によりさらなる効果発現の可能性が示された。
 
また、昨年3月に開通した一部区間(下部温泉早川IC〜六郷IC)を対象に、今後の定期点検で3次元情報による確実な形状把握をするために、これまで人が目視、紙へのトレースにて行っていたトンネル覆工の点検について、車両走行での3Dレーザー測量で覆工形状や変状位置を把握している。
 


  • 表-2  中部横断自動車道の不動沢地区改良工事および粟倉地区
    改良工事におけるICT活用の効果検証結果


  • 図-2 不動沢地区改良工事における施工中
    の3次元測量結果



 

調査段階、維持管理段階への適用拡大による3次元情報循環に向けて、取り組むべき方向性

甲府河川国道事務所でのこれまでの取り組みで確認された効果や可能性を踏まえながら、調査設計から維持管理までの各段階別および循環全体の観点から、取り組むべき方向性について、提案する。
 
最初に、調査段階では、事業化前における詳細ルートや概ねの構造の検討に当たり、考慮すべきコントロールポイントなどの各種調査結果が反映された3次元情報を利活用して検討を行う予定である。これにより、将来のルート決定や設計段階において、当初の調査計画段階の考え方を適切に反映することが可能となる。
 
次に、設計段階では、詳細な構造検証や、施工計画を踏まえた相互干渉確認など、施工計画等の整合性確保を早期に確認することで、将来の施工の効率化を図ることが可能であり、新山梨環状道路(広瀬〜桜井)を対象に、こうした施工計画の確認から、工事数量、工事費、工事工程の算出まで、幅広く3次元情報の利活用を行う予定である。
 
施工段階では、土木や舗装工以外の工種への適用拡大を図るとともに、監督・検査での利活用により、受注者・発注者ともに作業簡素化および品質を向上することが可能であり、一部工事の監督・検査について、現行の「現地確認」「パソコン画面上で確認」から「カメラ画像を通じた遠隔確認」「3次元でのパソコン画面で確認」に変える試行を行う予定である。
 
さらに、維持管理段階では、施工段階の3次元情報を活用して維持管理に活用可能な基盤図を構築した上で、3次元測量を活用した道路巡回情報から地元対応状況に至る、多様な維持管理関係情報を、一元的に管理することで、維持管理業務の円滑化や品質向上が期待される。そうしたことから、一部開通した中部横断自動車道の日常巡視について、従来の車両上目視から、巡視車両上からの3次元測量により、道路現況情報の精緻な把握とともに、維持管理情報を一元的に管理する維持管理基盤図の構築を目指して取り組む予定である。
 
最後に、調査・設計から維持管理段階に至る循環全体で、受発注者双方による3次元情報の利活用を進めるに当たり、受発注者それぞれの業務改善や、技術育成、現場からの円滑な通信環境や必要なソフト、データ容量を扱えるシステムなどの利用環境整備について、受発注者双方で取り組むことが重要である。
 
特に、3次元情報の活用を試みる初期段階では、2次元から3次元情報への変換に伴う負担等の課題がある中で、中小規模の会社も含めて、3次元情報の利活用できるような環境整備や技術支援体制、意識向上が不可欠である。
 
関東地方整備局においても、こうした循環全体を構築することを目標に見据えつつ、まずは、調査・設計から維持管理までの各段階において、関係する産学の方々とも連携しながら、受注者・発注者両方による3次元情報の利活用の試行に取り組んでまいりたい。
 
 
 

国土交通省 関東地方整備局 企画部 技術管理課

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2020
特集1「i-Construction×BIM/CIM」



 



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