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2021年8月30日
東北地方整備局におけるBIM/CIMの取り組みについて東北地方は、他地域に比べて少子高齢化の進行が速く、生産年齢人口が今後一層速い速度で減少していく状況にあり、建設分野における生産性向上は待ったなしの状況にある。 BIM/CIMの活用については、令和5年度に小規模なものを除く全ての公共工事で原則適用される方針が打ち出されたところであり、これまでは設計段階におけるBIM/CIM活用が多数であったが、今後は、施工段階(工事)におけるBIM/CIMの活用が本格化していくことが想定される。 そこで、東北地方整備局管内の施工段階におけるBIM/CIM活用事例として、「一関遊水池舞川水門新設工事」での取り組み内容を紹介する。 施工段階におけるBIM/CIMの活用事例(1)一関遊水地舞川水門新設工事でのBIM/CIM活用舞川水門は一関遊水地(岩手県)において北上川最下流の小堤に設置されたもので、水門の大きさは全長109m、幅45 ~ 60m、高さ23m、コンクリ-ト量2.5万m3の巨大な構造物であり、2年7カ月をかけて建設された。 (2)工事計画の可視化 (3)3次元出来形管理 (4)過密鉄筋部の干渉チェック施工中の手戻りによる時間的・経済的なロスの発生を事前に防止するため、3次元モデルによる照査を実施した。 BIM/CIM原則適用に向けた人材育成BIM/CIMの活用が急速に進展しつつある状況下において、BIM/CIMに携わる人材の育成は喫緊の課題である。特に、BIM/CIMを初めて担当する場合であってもスムーズに活用・更新が可能となるよう、関係者全体の習熟度を向上させる必要がある。 BIM/CIM活用の今後BIM/CIM活用は“生産性革命のエンジン”であり、i-Construction推進にあたって必要不可欠な重要要素である。令和5年のBIM/CIM原則適用に向けて、受発注者とも、早々にその取り扱いを経験し、習熟していく必要があると考える。 国土交通省 東北地方整備局 技術管理課
【出典】 建設ITガイド 2021 BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX” ![]() |
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はじめに国土交通省では、BIM/CIM(Building/ Construction Information Modeling,Management)の普及、定着、効果の把握やルール作りに向けて、2012年度からBIM/CIMの試行を進めてきた。 BIM/CIM実施状況国土交通省では、業務については2012年度から、工事については2013年度からBIM/CIMの試行を進めている。2019年度のBIM/CIM活用実績は361件(設計業務254件、工事107件)となり、前年度の212件(設計業務147件、工事65件)を大きく上回り、BIM/CIMの活用が進んでいることが分かる(図-1)。 2018年度から大規模構造物の詳細設計においてはBIM/CIMを原則活用とするとともに、2019年度からは前工程で作成した3次元データの成果品がある工事においてもBIM/CIMを原則活用とし、BIM/CIMの活用範囲を順次拡大してきた。2020年度は、前工程で作成した3次元データの成果品が存在する業務においてもBIM/CIMを原則活用とし、大規模構造物の概略設計および大規模構造物以外の予備、詳細設計についても積極的な導入を図っているところである。 また、さらなるBIM/CIMの活用に向けて、2019年3月、i-Constructionモデル事務所を全国10事務所、i-Constructionサポート事務所(モデル事務所を含む)を53事務所に設置した。モデル事務所においては先導的に3次元モデルを活用し、モデル事業を推進している。サポート事務所では地方自治体からの相談対応などを行っている。今後、各事務所で得られた事例を蓄積し、BIM/CIMを活用した際の課題を含め「BIM/CIM事例集」として情報展開していく。 BIM/CIM原則適用について先述したように、2020年4月の新型コロナウイルス感染症緊急経済対策において、2023年度までに小規模なものを除く全ての公共工事においてBIM/CIMを導入することを示し、原則適用の時期を2年前倒しすることとなった。 上述した原則適用の対象とする工種は、従前から検討を進め、知見が蓄積されてきた一般土木と鋼橋上部を対象としている。これまでリクワイヤメントの実施によってBIM/CIM活用としてきたが、2023年BIM/CIM原則適用に向け、BIM/CIM適用の定義を明確化する。詳細設計については今年度制定する、「3次元モデル成果物作成要領(案)」に基づく3次元モデルの作成および納品を実施することでBIM/CIM原則適用とし、工事については3次元モデルを用いた設計図書の照査、施工計画の検討を実施することでBIM/CIM原則適用とする。 今後、一般土木、鋼橋上部以外の設備工や維持修繕工など他の工事種別についてもBIM/CIMをどのように活用するか、業界団体等とも協議の上、順次整理していく予定である。併せて、設計より前の工程における3次元データの利活用についても、継続的に検討をしていく。 原則適用に向けた取り組み
国土交通省ではBIM/CIMの効率的かつ効果的な活用に向け、BIM/CIMに関する基準類の整備などを進めており、2019年度は新規に6つの基準・要領などを策定したほか、11の基準・要領などの改定を実施した。今年度、改定・制定する主なガイドラインや取り組みについて紹介する。 (1)BIM/CIM活用ガイドライン(案)2019年度、これまでのBIM/CIM活用業務や工事で得られた知見を踏まえ、建設生産・管理システムで一貫して3次元データを活用する観点からCIM導入ガイドラインを見直し、「BIM/CIM活用ガイドライン(案)」を策定し、事業によらない共通部分をとりまとめた共通編を本ガイドラインに示したところである。また、2016年度から制・改定を行ってきた「CIM導入ガイドライン(案)」ではBIM/CIMの活用に関する知見を蓄積してきた分野ごとにBIM/CIMの活用について示している。2020年度は設計業務など共通仕様書の構成に合わせ、「BIM/CIM活用ガイドライン(案)」に全ての編を統合する。 (2)3次元モデル成果物作成要領(案)本要領では、2次元と3次元を併用して業務を実施した場合の成果物の要件を示す。従来どおり、工事における契約図書を2次元図面とすることを前提として、設計品質の向上、後工程の利活用などのBIM/CIMの活用場面(ユースケース)を具体的に設定した上で、3次元モデル成果物の作成方法および要件を示す予定である。 (3)人材育成センター等におけるBIM/CIM研修2018年度からBIM/CIMを発注者の実務に適用することで発注者側の生産性向上や知識の向上を図るため、国土交通省、地方公共団体などの発注者を対象とした研修を実施してきた。今後のBIM/CIM活用拡大に向け、人材育成についてもさらに積極的に取り組んでいく。 3次元情報の利活用(モデル作成、照査など)をできる人材を速やかに育成するため、受講者が一堂に会する集合研修ではなく、研修人数・回数の規模の増加に対応できるWebinar(Webセミナー)による実施を想定している(図-3)。また、BIM/CIMに関する知識レベルやBIM/CIMの活用場面(ユースケース)など、受講者に合わせた研修内容を検討している。 地方整備局では、関東地方整備局 関東技術事務所に「関東i-Const-ruction人材育成センター(仮称)」を設置し、その他、中部、近畿、九州の地方整備局の計四つの地方整備局に人材育成センターを整備する。人材育成センターで実施する研修については、上述した研修プログラムを実施するとともにi-Constructionモデル事務所と連携し、ARやVRなどの活用など体験型の研修を実施予定である。 今後、業界団体等とも協議の上、研修の拡大方法、民間団体が実施する講習会などとの連携についても検討していく。 (4)国総研DXセンターの整備による受発注者支援BIM/CIMをより効率的、効果的に活用していくためには、基準・要領などの整備を進めるだけでなく、それらを活用する環境についても整備していく必要がある。 2020年度は、3次元モデルの閲覧などの最低限必要な機能を無償で提供するような仕組みを構築する。順次、クラウド上での3次元モデルの作成や編集など、機能の拡充を行っていく(図-5)。 また、BIM/CIMを効率的に活用するためには、必要な情報へのアクセシビリティを高める必要がある。特に、BIM/CIMに関する基準・要領などの数が多く、そしてこれらは国土交通省大臣官房技術調査課や国土技術政策総合研究所などのホームページに基準・要領などが掲載されていた。このような状況を踏まえ、2019年度からBIM/CIMに関連する情報をとりまとめ、「BIM/CIMポータルサイト【試行版】」として公開した。ポータルサイトには、制・改定した情報を更新するだけでなく、主に土木分野の従事者に向けてBIM/CIMを紹介した「初めてのBIM/CIM」や、これまで国土交通省で実施してきたBIM/CIM活用業務・工事の効果等をとりまとめた「BIM/CIM事例集」などを掲載している。今後関連する団体の情報などについて充実させ、BIM/CIMに関する情報へのアクセシビリティを確保できる環境整備を進める。 おわりに2012年度から検討を進めてきたBIM/CIMについて、これまで活用件数を着実に伸ばしてきたが、2023年度の小規模なものを除く全ての公共工事への原則適用の対象となる母数を踏まえると、活用件数は今後飛躍的に増加させる必要がある。ただし、BIM/CIMの活用件数はその普及に関する指標の一つに過ぎず、BIM/CIMは生産性向上、受発注者双方の作業効率化・高度化に資する一つの手段であるとい 国土交通省 大臣官房 技術調査課
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2021年8月23日
はじめに2017年、従来の安全教育の課題を 解決する手法としてモーションキャプチャ技術を活用した没入型VR安全教育システム「リアルハット」を開発し、平成30年2月10日発行の本誌において報告をした。同システムは、モーションキャプチャ技術を活用することで受講者をバーチャルな環境へ没入させ、集中力を高め効果的な「気づき」をもたらすことを目的に開発を行った。また、昨今のダークツーリズムのように労働災害という「負の遺産」を繰り返し疑似体験することができ、かつ新鮮な形で保管できる教材となっている。現在、本システムの開発より3年が経過したが、その後の建設業界は、従事する技術者・技能者の高齢化、若年層の入職率低下などを背景に、人手不足や技術・暗黙知の継承などの課題が深刻化している。そのような背景の中、「建設業の働き方改革」、「技能者の建設キャリアアップシステム導入」、「外国人労働者の受け入れ」、「建設生産システムの生産性向上/i-Construction」など、建設業界を改革する施策が多数打ち出され、取り巻く環境は急激なスピードで変化を続けている。一方、安全の分野では、依然ヒューマンエラーを原因とする災害が多発しており、災害発生を未然に防ぐ「気付く能力」を育む効果的な教育やトレーニングが求められている。本稿では、これら建設業界の現状を背景に新たに開発した安全教育システムについて報告する VR安全教育システムに求められる新たなニーズと課題(1)バーチャルな環境下でのトレーニングというニーズ2018年6月に労働安全衛生法施行令が一部改正され、2019年2月よりフルハーネス型安全帯の使用が原則義務化された。これは、胴ベルト型安全帯を使用しているにもかかわらず墜落して死亡する災害が毎年発生していたことを背景としている。胴ベルト型安全帯の場合、墜落衝撃による内臓破裂を免れても、身体が「くの字」となることで胸部や腹部を圧迫し呼吸困難から低酸素脳症に発展し死亡に至る。それに対しフルハーネス型安全帯は、墜落時に直立姿勢を維持しやすく、頭部の激突を防止し、かつ墜落制止時に発生する衝撃を全身に分散させるので被災者の身体への負担が大幅に軽減できる。これらにより、フルハーネス型安全帯は、墜落災害における死傷者数の減少が期待されている。その一方で、墜落時にフルハーネス型安全帯を使用していても、宙吊り状態が継続することは決して安全ではないとの報告がある。宙吊り状態が20分以上継続すると腿ベルトが大腿静脈部を圧迫させ、全身うっ血状態になり脳と心臓に重大な損傷を与えるのである。また被災状況にもよるが、墜落発生後、レスキュー隊の到着までに10分、現場把握ならびに救出計画立案に5分、救出作業に15分、延べ30分を要す。よって、被災後20分間までの対応が被災者の生死を分けるのである。これに対し、米英両国などでは墜落制止後に被災者自身がとるべき行動の一つとして延命措置のトレーニングが義務化されている。墜落した被災者に意識があるならば、レスキュー隊が到着するまでの間に「足かけ補助具」を用いて自らで延命措置を施すのである。わが国においても、墜落制止後の死亡事故を防止するため、これらの教育トレーニングが必須となっている(写真-1)。 (2)VR安全教育システムの解決すべき課題VR(Virtual Reality:仮想現実)を定義するのであれば、「実際の現実として目の前にあるわけではないが、PCや各種デバイスを介して実質的には現実と同じものを人工的に感じさせる技術」である。デバイスであるヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着することで、今まで見えていた現実環境のモノが視界より遮られ、その代わりにHMD内の視界では全く別のバーチャルな環境が映し出される。しかも、頭や視線を動かしても、さらにその環境の中を移動しても、そのバーチャルな環境は頭や視線の動き、移動に対しても追随して視界に映し出される。これにより、VRの体験者は目の前で展開する別の環境に居て、そこで発生する事柄を体験しているかのような錯覚を覚える。これらの「あたかも体験している」かの錯覚を生む仕組みは、HMD内に内蔵された加速度センサーやジャイロセンサー、体験区域外周に設置する外部トラッキング用センサー達が体験者の移動している方向や位置、その動きの速度などを検知し、その動作に合わせてPCが瞬時に制作した映像を体験者の動きに遅れることなくHMDで映し出すからである。これにより体験者は、あたかもバーチャルな環境の中にいるかのように感じ、高い臨場感と没入感を得るのである。 MR技術を用いた疑似トレーニングシステムの開発とその効果(1)新しいMR技術の開発安全教育の新しいテーマとしての教育トレーニングを実現するためには、バーチャルな環境に体験者の身体(手足)や使用する道具類を映り込ませる新しい技術の開発が必要となった。そこで新しいMR技術としてAVR(Advanced Virtual Reality:拡張仮想空間)を開発た。AVRは、バーチャルな環境を主とし、そこに現実環境のモノを持ち込む技術であり、近年において最も有名なMRデバイスである、マイクロソフト社の「HoloLens」などの現実環境を主としホログラムなどで表現されるバーチャルな物質を投影するMR技術とは考え方を異にする。AVRは、従来のHMDに高性能なカメラを装着し、体験者の向いている方向の高精細な映像(生映像)と被写体までの距離情報を取得する(写真-2)。 その後、取得した映像情報に対し「設定距離以遠の映像除去」と「背景材色の透明化」の2つの処理を施し、生映像から「体験者の身体(手足)」や「持ち込みたい工具」だけをシャープに切り抜き(処理映像)、バーチャルな環境(素材映像)と合成しHMDへ転送する。二つの技術を組み合わせることで映像合成に必要な処理速度を飛躍的に向上させ、体験者の動作を瞬時に反映させることを可能にした。写真-3は、HMDで取得する生映像である。一方、写真-4と5は合成したい現実の物質をバーチャルな映像に合成した者であり、写真-4と5の違いは、合成したい物体までの設定距離を変えたものである。この設定距離を変えることで合成したい物体を選ぶことを可能にした。なお、背景画像を高精細な3Dカメラ映像とすることで仮想空間の製作を省略し、構想から試作品完成までに要した数カ月のVRデータ制作期間を7~10日まで短縮させている。 (2)AVRを活用した疑似体験トレーニング例現在、AVRは「フルハーネス型安全帯使用作業特別教育」における「墜落制止後の延命措置訓練」に集中的に活用している。 (3)バーチャルな環境下で協働作業という新たなトレーニング (4)AVRの効果AVRの開発ならびに運用において、以下のような効果を確認した。 終わりに今回のAVR開発により従来のVR安全教育では不可能であったバーチャ ルな環境での疑似トレーニング、複数の体験者による協働作業を可能にし、その限界を克服した。しかし、AVRという仕組みは、グリーンバックなど、比較的大掛かりな設備を必要とする。安全教育施設など固定的な場所で利用するには容易であるが出前安全教育などでは資機材の運搬などが発生し費用も増大する。今後は、これら設 備の小規模化などが本システムを発展させる上で課題となる。また、現実環境とバーチャルな環境の混合割合を変えることで、M Rという技術はさまざまなシチュエーションで活躍できる可能性も感じた。今後、さまざまな仕組みのMRが開発されると思う。それぞれの良さを十分に理解し、これら技術を上手に活用できれば、安全教育に限らず実効性の高い教育システムが構築できると考える。今後も、新たなるニーズや課題の抽出と開発を続けていく所存である。 西武建設株式会社 土木事業部 エンジニアリング部長 蛯原 巌
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工事写真から始まった写真DX「もはやこの内容は工事写真を凌駕している」 工事写真のそもそもの目的は何だろうか。工事のプロセスで行われている行為を写真という映像でエビデンスとして確保するということと、見えなくなってしまう状態を見える状態の時に撮影しておくのが目的である。その後何かのタイミングで構造物であれば、修繕するためにその構造物の一部に物理的な行為を行う時、見えない部分がどうなっているのかが分かるので写真が役に立つであろう。このように工事写真はその時の施工状況を残すために重要な書類の1つである。 レイヤ化を実現したSVG形式とその効果建設現場ではあまり聞き慣れない「SVGファイル形式」だが、Web デザインなどに使用されることが多いベクタ形式の画像ファイルで、JIS X4197:2012「可変ベクタグラフィクスSVG Tiny1.2」として規定される汎用フォーマットである。一つのファイルで、複数の画像を重ねて配置でき、レイヤのような表現が可能となる(図-1)。 新しい世界を築く施工管理ツールのユースケースこのレイヤ化が利用できるようになることで、施工管理としてさまざまな利用が考えられるようになった。 http://www.jice.or.jp/reports/autonomy/tech 今後の展望電子小黒板の利用から写真のレイヤ化への対応と、施工情報のデジタルデータを活用できる手法を拡充させることが可能となり、施工管理としてのツールになくてはならない物になりつつある映像情報の進化を進めていくのが重要だと考える。 今後の活動についてプロセス変革を進めていくことが重要なのは頭では理解しているものの、実践するにはかなりの苦労と時間を有する。特に既成概念が強いこの業界で、プロセス変革を真に推し進めていくのはそう簡単ではない。 [参考情報] 一般社団法人 日本建設業連合会
土木工事技術委員会 土木情報技術部会
情報共有専門部会長 杉浦 伸哉
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2021年8月10日
「建設DX」とは「CALS」「BIM/CIM」「情報化施工・ICT施工」「i-Construction」そして「建設DX」と細かい内容は別として、建設現場でも聞いたことある単語が多いのではないだろうか。 建設現場にも必要な「建設DX」の狭義・広義の意味「建設DX」の取り組みとして国土交通省などが「インフラ分野のDX」として提唱しているものを狭義の意味、前述したような身近な業務をデジタル技術によってプロセスの変革を行うことを広義の意味として少し説明したい。まず狭義の意味として、インターネットの検索で「国土交通省DX」と検索すると、国土交通省でも「インフラ分野におけるDXの推進」として、さまざまな部署で取り組みを行っているのが分かる。「第1回国土交通省インフラ分野のDX推進本部」の資料2(図-1)によると、DXの概念は「進化したデジタル技術を浸透させることで人々の生活 をより良いものへと変革すること」とされ 、インフラ分野のDXとは「社会経済状況の激しい変化に対応し、インフラ分野においてもデータとデジタル技術を活用して、国民のニーズを基に社会資本や公共サービスを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、建設業や国土交通省の文化・風土や働き方を変革し、インフラへの国民理解を促進するとともに、安全・安心で豊かな生活を実現」と分かりやすい表現がされている。 行動のDX:どこにいてもさまざまな 業務が可能 「建設DX」推進の背景「建設DX」を進めるために、2019年に「担い手3法」が法改正され、「新・担い手3法」とも呼ばれている。建設業の維持と生産性向上、「i-Construction」を加速させるために「建設業法」、「品確法(公共工事の品質確保の促進に関する法律)」、「入契法(公共工事の入札および契約の適正化の促進に関する法律)」の3つの法律が改正され、随時施行された。 2030年代、Beyond5G(6G)の時代の建設現場もう少し先、十数年後の建設現場を想像してみよう。総務省から公開されている「令和2年度情報通信白書」にはBeyond5Gとしていわゆる6G時代の求められる機能と時代背景がまとめられている(図-5)。 ・構築物はほぼプレキャスト化 とは言え、100%全てが自動施工を行うことは難しいため、ある程度、人でないとできない部分があるだろう。この時代に向け、建設会社として、個人として、それぞれの規模、それぞれの立場で、何ができるのかをそろそろ考えていく必要もあるだろう。 PRISMから見える近未来建設現場技術「PRISM:官民研究開発投資拡大プログラム」が平成30年度から始まり、最先端技術の実証実験が各地で行われている。令和元年度も同様に実施され、取り組み内容を個人的ではあるが表-1にまとめてみた。 身近な建設DXツール少し現実的な話に戻そう。現在、建設現場の管理で一番使用されているデジタルデバイスはパソコンとスマートフォン・タブレットではないだろうか。私の経験上ではあるが、土木現場ではスマートフォンが普及し、建築現場ではタブレット端末が普及しているように感じる。屋外作業の多い土木とある程度進むと屋内作業が多くなる建築と環境の違いもあるが、そもそも業務の進め方に違いがあることがこのスマートフォンとタブレット端末の違いにつながってくるのではないだろうか。 建設現場における 遠隔臨場、遠隔確認国土交通省や農林水産省から要領(案)が公開され、公共工事でも広がりを見せる遠隔検査であるが、現場の円滑な施工のためにもぜひ取り組んでほしい。図-6は遠隔検査のシステム構成例であるが、スマートフォンやタブレットとWeb会議システムがあれば簡単に構築できる。ポイントは立会調書のやり取りを行う端末の準備と、検査する範囲に応じて現場側端末を複数にすることだ。そうすることで、0点や読み値の確認などを同時に行うことができ、現場担当者の移動時間を省略できる。 公共工事で工事写真に落書きが可能に次に国土交通省などにおける工事写真の電子納品について、2020年3月に「デジタル写真管理情報基準」が改定され、それまでは「写真ファイルの記録形式はJPEG」とされていたものが「JISに示されているJPEGやTIFF等とし」と変更された。これにより、動画のMPEG形式や今回紹介するSVG形式での納品が可能となる。SVG形式の工事写真を簡単に説明すると、 さいごにコロナ禍での緊急事態宣言時に「エッセンシャル・ワーカー」という言葉を耳にしたことはないだろうか。一般社団法人日本建設業連合会では、われわれ建設業に携わる関係者も「エッセンシャル・ワーカー(日常生活を支える欠かせない存在)」であるとし、この自負と誇りを建設業に携わる人々が堅持しつつ、市民および現場で働く人の命や心身の健康を守ることを前提に事業継続できる体制整備が必要とし、PR活動を開始した。建設業に携わる一人ひとりがこれを自負し、プロセスの変革も含めた建設DXを推進し、答えていくことが重要である。 現場主義×山政 睦実
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