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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

東北地方整備局における BIM/CIMの取り組みについて

2021年8月30日

 

東北地方整備局におけるBIM/CIMの取り組みについて

東北地方は、他地域に比べて少子高齢化の進行が速く、生産年齢人口が今後一層速い速度で減少していく状況にあり、建設分野における生産性向上は待ったなしの状況にある。
 
東日本大震災からの復旧・復興現場では、橋梁やトンネルなどといった多くの構造物の整備が急ピッチで進められた。復興期間に完成した、これらの構造物は、同時期に整備されたことから、将来、一斉に老朽化し、補修が必要となる可能性が高い。こうした課題に対して、BIM/CIMの活用は設計・施工段階の各種データを共有、かつ蓄積できることから、構造物の点検や維持管理に有効的な手段となり得る。構造物の長期的な維持管理の効率化や、メンテナンス費用の抑制・平準化などの課題を解決する“切り札”の一つとしてBIM/CIMへの期待は高い。
 
東北地方整備局におけるBIM/CIMの取り組みは、全国と歩調を合わせ平成24年度からスタートし、平成28年度末の「CIM導入ガイドライン」策定を契機に新基準に従った取り組みを積極的に進め、図-1に示すとおり、令和元年度までに設計業務・工事合わせて約100件で活用を行ってきたところである。構造物別の内訳を見ると、橋梁での活用が最も多く、次いで水門、トンネルの順となっている(図-2)。
 

東北地方整備局におけるBIM/CIM活用業務・工事実施状況

図-1 東北地方整備局におけるBIM/CIM活用業務・工事実施状況


 
BIM/CIM活用範囲

図-2 BIM/CIM活用範囲


 
BIM/CIMの活用については、令和5年度に小規模なものを除く全ての公共工事で原則適用される方針が打ち出されたところであり、これまでは設計段階におけるBIM/CIM活用が多数であったが、今後は、施工段階(工事)におけるBIM/CIMの活用が本格化していくことが想定される。
 
そこで、東北地方整備局管内の施工段階におけるBIM/CIM活用事例として、「一関遊水池舞川水門新設工事」での取り組み内容を紹介する。
 
 

施工段階におけるBIM/CIMの活用事例

(1)一関遊水地舞川水門新設工事でのBIM/CIM活用

舞川水門は一関遊水地(岩手県)において北上川最下流の小堤に設置されたもので、水門の大きさは全長109m、幅45 ~ 60m、高さ23m、コンクリ-ト量2.5万m3の巨大な構造物であり、2年7カ月をかけて建設された。
 
工事現場の生産性向上を目的に、工事期間中はICT施工やウェアラブルカメラを用いた遠隔臨場等、さまざまな取り組みを積極的に行っており、BIM/CIM活用もその一環として実施されたものである。
 
本工事では、水門コンクリートを対象にBIM/CIMを活用し、「工事計画の可視化」「3次元出来形管理」「過密鉄筋部の干渉チェック」等を行い、手戻り防止や施工管理の効率化を図った。
 

(2)工事計画の可視化

 
施工に当たっては、クレーンやコンクリートポンプ車等の揚重機の配置スペースやアジテータトラックの走路を確保しながら手戻りのない施工を行う必要があることから、施工順序を細分化した施工計画を立案している。今回は、本体掘削から本体構築、築堤盛土までの施工順序を3次元モデルで可視化し、ステップごとの変化や状況をシミュレーション動画で把握できる施工ステップ図として活用することで細分化した施工計画の妥当性・実現性の確認を行った。3次元モデルの作成に当たっては、現場条件等により変更が生じた際にモデルの変更・加筆・修正が容易にできるようなモデル構築に留意した。
 
作成した3次元施工ステップ図は、工事打合せや現場見学会などに活用した。3次元モデルを用いた工事説明を実施し、工事状況を分かりやすく情報提供することで、協議における早期解決や子供・学生に向けた建設現場の魅力発信、地元関係者の工事理解につなげることができた。
 

施工ステップを可視化した施工シミュレーション

図-3 施工ステップを可視化した施工シミュレーション


 
LS計測による3次元出来形管理

図-4 LS計測による3次元出来形管理


 

(3)3次元出来形管理

 
現在、土工や舗装工等で行われている3次元データを活用した出来形計測について、水門本体を対象に試行し、コンクリート構造物における施工管理の効率化の可能性について検証を行った。
 
計測機器は地上型レーザースキャナーを用い、構造物の底面、側面、上面を施工段階に応じて漏れのないように計測した。計測箇所は底面8回、側面・上面が3回の計11回行い、点群密度は1点以上/0.0001m2とした。
 
検証結果として、設計図を利用した出来形図の寸法値に3次元計測値と直接測定値を記載し、比較を行った(図-5)。その結果、直接測定値と3次元計測値はおおむね5mm以内の差に収まっており、最大でも20mm程度と3次元計測の精度としては良好な結果が得られた。
 
なお、計測データを基に水門本体の3次元モデルを作成することで、施工時の形状を高精度な点群データで記録保存することも可能となった(図-6)。

3次元出来形計測結果と直接測定値の比較

図-5 3次元出来形計測結果と直接測定値の比較


 
3次元計測データによる3次元モデル

図-6 3次元計測データによる3次元モデル


 

(4)過密鉄筋部の干渉チェック

施工中の手戻りによる時間的・経済的なロスの発生を事前に防止するため、3次元モデルによる照査を実施した。
 
水門本体底版と堰柱の接合部における鉄筋干渉チェック(図-7)と遮水矢板と胸壁鉄筋の干渉チェックを行い、問題がないことが確認できたことで、現場作業の中断もなく、施工の効率化が図られた。
 

鉄筋干渉部の3次元モデル

図-7 鉄筋干渉部の3次元モデル


 
 

BIM/CIM原則適用に向けた人材育成

BIM/CIMの活用が急速に進展しつつある状況下において、BIM/CIMに携わる人材の育成は喫緊の課題である。特に、BIM/CIMを初めて担当する場合であってもスムーズに活用・更新が可能となるよう、関係者全体の習熟度を向上させる必要がある。
 
東北地方整備局では職員全体の習熟度向上を目的に、BIM/CIM活用に必要な知識や各種ソフトウエアの利用法等の基礎技術について、ハンズ・オン形式(体験型学習方法)による職員向け研修を令和元年度から開始している。実際に手で触れ操作することで理解が深まり、習熟度向上が期待できる。
 

BIM/CIM研修状況

図-8 BIM/CIM研修状況


 
 

BIM/CIM活用の今後

BIM/CIM活用は“生産性革命のエンジン”であり、i-Construction推進にあたって必要不可欠な重要要素である。令和5年のBIM/CIM原則適用に向けて、受発注者とも、早々にその取り扱いを経験し、習熟していく必要があると考える。
 
BIM/CIMがいち早く受発注者間に浸透し、普段使いのツールとして活用され、建設生産プロセスの各段階における生産性の向上に大いに寄与してくれることを強く願っている。

国土交通省 東北地方整備局 技術管理課

 
 

【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年


 



国土交通省におけるBIM/CIMの取り組み

 

はじめに

国土交通省では、BIM/CIM(Building/ Construction Information Modeling,Management)の普及、定着、効果の把握やルール作りに向けて、2012年度からBIM/CIMの試行を進めてきた。
 
BIM/CIMを導入することで、設計品質の確保や効率的な施工計画に基づく人材・資機材の最適配置、最新技術を用いた監督・検査の効率化などが期待されている。また、建設全体を見通した施工計画、管理などコンカレントエンジニアリング、フロントローディングの考え方を実施していくことが可能となり、一連の建設生産プロセスでの生産性の向上が可能となる。
 
2020年、新型コロナウイルス感染症拡大を受け、国土交通省では緊急経済対策の一つに「インフラ・物流分野等におけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)」を掲げた。2020年7月には「第1回 国土交通省インフラ分野のDX推進本部」を開催し、建設生産プロセスなどの全面的なデジタル化に向け、動きだしたところである。その中心的な役割を担うのがBIM/CIMであり、2023年度までに小規模なものを除く全ての公共工事について、BIM/CIM活用へ転換を目指す。
 
本稿では、これまでのBIM/CIMの導入に向けた取り組みと、今後の取り組みについて紹介する。
 
 

BIM/CIM実施状況

国土交通省では、業務については2012年度から、工事については2013年度からBIM/CIMの試行を進めている。2019年度のBIM/CIM活用実績は361件(設計業務254件、工事107件)となり、前年度の212件(設計業務147件、工事65件)を大きく上回り、BIM/CIMの活用が進んでいることが分かる(図-1)。
 

BIM/CIM活用業務・工事の実施状況

図-1 BIM/CIM活用業務・工事の実施状況


 
2018年度から大規模構造物の詳細設計においてはBIM/CIMを原則活用とするとともに、2019年度からは前工程で作成した3次元データの成果品がある工事においてもBIM/CIMを原則活用とし、BIM/CIMの活用範囲を順次拡大してきた。2020年度は、前工程で作成した3次元データの成果品が存在する業務においてもBIM/CIMを原則活用とし、大規模構造物の概略設計および大規模構造物以外の予備、詳細設計についても積極的な導入を図っているところである。
 
また、さらなるBIM/CIMの活用に向けて、2019年3月、i-Constructionモデル事務所を全国10事務所、i-Constructionサポート事務所(モデル事務所を含む)を53事務所に設置した。モデル事務所においては先導的に3次元モデルを活用し、モデル事業を推進している。サポート事務所では地方自治体からの相談対応などを行っている。今後、各事務所で得られた事例を蓄積し、BIM/CIMを活用した際の課題を含め「BIM/CIM事例集」として情報展開していく。
 
 

BIM/CIM原則適用について

先述したように、2020年4月の新型コロナウイルス感染症緊急経済対策において、2023年度までに小規模なものを除く全ての公共工事においてBIM/CIMを導入することを示し、原則適用の時期を2年前倒しすることとなった。
 
BIM/CIM原則適用に向け、2018年度から開催しているBIM/CIM推進委員会、およびその下の5つのワーキンググループにて産学官一体となって幅広な検討を進めているところである。
 
表-1に示すように、2023年度の原則適用に向け、段階的な適用範囲の拡大を検討している。特段、先行させてBIM/CIMを活用してきた大規模構造物については2021年度から全ての詳細設計で原則適用とし、2022年度には全ての詳細設計と工事において原則適用とする。また、大規模構造物以外については、2022年度から全ての詳細設計で原則適用とし、2023年度から全ての詳細設計と工事で原則適用とする。
 

原則適用の進め方(案)

表-1 原則適用の進め方(案)(一般土木、鋼橋上部)


 
上述した原則適用の対象とする工種は、従前から検討を進め、知見が蓄積されてきた一般土木と鋼橋上部を対象としている。これまでリクワイヤメントの実施によってBIM/CIM活用としてきたが、2023年BIM/CIM原則適用に向け、BIM/CIM適用の定義を明確化する。詳細設計については今年度制定する、「3次元モデル成果物作成要領(案)」に基づく3次元モデルの作成および納品を実施することでBIM/CIM原則適用とし、工事については3次元モデルを用いた設計図書の照査、施工計画の検討を実施することでBIM/CIM原則適用とする。
 
今後、一般土木、鋼橋上部以外の設備工や維持修繕工など他の工事種別についてもBIM/CIMをどのように活用するか、業界団体等とも協議の上、順次整理していく予定である。併せて、設計より前の工程における3次元データの利活用についても、継続的に検討をしていく。
 
 

原則適用に向けた取り組み

国土交通省ではBIM/CIMの効率的かつ効果的な活用に向け、BIM/CIMに関する基準類の整備などを進めており、2019年度は新規に6つの基準・要領などを策定したほか、11の基準・要領などの改定を実施した。今年度、改定・制定する主なガイドラインや取り組みについて紹介する。
 

(1)BIM/CIM活用ガイドライン(案)

2019年度、これまでのBIM/CIM活用業務や工事で得られた知見を踏まえ、建設生産・管理システムで一貫して3次元データを活用する観点からCIM導入ガイドラインを見直し、「BIM/CIM活用ガイドライン(案)」を策定し、事業によらない共通部分をとりまとめた共通編を本ガイドラインに示したところである。また、2016年度から制・改定を行ってきた「CIM導入ガイドライン(案)」ではBIM/CIMの活用に関する知見を蓄積してきた分野ごとにBIM/CIMの活用について示している。2020年度は設計業務など共通仕様書の構成に合わせ、「BIM/CIM活用ガイドライン(案)」に全ての編を統合する。
 
また、今年度の主な改定ポイントは、『事業の実施に主眼を置き、各段階の活用方法を示すこと』、『各段階の構造物モデルに必要となる形状の詳細度、属性情報の目安を示すこと』の二点である。
 
現行のガイドラインは最終成果物に関する記載となっており、事業実施時のBIM/CIMの具体的な活用場面や効果が不明確であった。
 
測量・調査、設計、施工、維持管理の各プロセスにおけるBIM/CIMの活用目的や活用効果、活用方法を示し、各段階における目的達成のために必要と考えられるBIM/CIMモデルの形状の詳細度、属性情報の目安を明示する。
 
測量・調査、設計、施工、維持管理の各プロセスにおけるBIM/CIMの活用目的や活用効果、活用方法を示し、各段階における目的達成のために必要と考えられるBIM/CIMモデルの形状の詳細度、属性情報の目安を明示する。
 
「BIM/CIM活用ガイドライン(案)」の改定と併せて、昨年度公開した「BIM/CIM事例集」も今年度改定予定である。ガイドラインと相互参照できるよう、ガイドラインの構成に合わせて、設計、施工等の各段階における活用事例・現時点の課題を紹介する。
 

(2)3次元モデル成果物作成要領(案)

本要領では、2次元と3次元を併用して業務を実施した場合の成果物の要件を示す。従来どおり、工事における契約図書を2次元図面とすることを前提として、設計品質の向上、後工程の利活用などのBIM/CIMの活用場面(ユースケース)を具体的に設定した上で、3次元モデル成果物の作成方法および要件を示す予定である。
 
想定している活用場面(ユースケース)は、設計意図の伝達(3次元モデルに時間軸を加えた4Dモデルの施工計画検討)や設計照査(3次元モデルから切り出した2次元図面の作成、用地境界・建築限界などの明示)、施工段階の出来形検査など、設計段階の後工程である施工段階においてBIM/CIMを活用できることを目的に、具体的なBIM/CIMの活用場面(ユースケース)を限定して成果物の作成要件を定める。
 
現状としては、設計業務において2次元図面が完成してから3次元にモデル化されることが多いのが実態であるが、これではBIM/CIMを活用したフロントローディングなどを実現できないため、今後は設計当初から3次元モデルを作成し、その3次元モデルから出力し、寸法や注記をすることで2次元図面を作成する方針を本要領に明記する予定である。
 

(3)人材育成センター等におけるBIM/CIM研修

2018年度からBIM/CIMを発注者の実務に適用することで発注者側の生産性向上や知識の向上を図るため、国土交通省、地方公共団体などの発注者を対象とした研修を実施してきた。今後のBIM/CIM活用拡大に向け、人材育成についてもさらに積極的に取り組んでいく。
 
今年度は全国の地方整備局などの研修で共通的に使用できる研修プログラムやテキストを作成する(図-2)。
 

BIM/CIM研修プログラム(案)

図-2 BIM/CIM研修プログラム(案)


 
3次元情報の利活用(モデル作成、照査など)をできる人材を速やかに育成するため、受講者が一堂に会する集合研修ではなく、研修人数・回数の規模の増加に対応できるWebinar(Webセミナー)による実施を想定している(図-3)。また、BIM/CIMに関する知識レベルやBIM/CIMの活用場面(ユースケース)など、受講者に合わせた研修内容を検討している。
 
Webinarによる研修イメージ

図-3 Webinarによる研修イメージ


 
地方整備局では、関東地方整備局 関東技術事務所に「関東i-Const-ruction人材育成センター(仮称)」を設置し、その他、中部、近畿、九州の地方整備局の計四つの地方整備局に人材育成センターを整備する。人材育成センターで実施する研修については、上述した研修プログラムを実施するとともにi-Constructionモデル事務所と連携し、ARやVRなどの活用など体験型の研修を実施予定である。
 
今後、業界団体等とも協議の上、研修の拡大方法、民間団体が実施する講習会などとの連携についても検討していく。
 

(4)国総研DXセンターの整備による受発注者支援

BIM/CIMをより効率的、効果的に活用していくためには、基準・要領などの整備を進めるだけでなく、それらを活用する環境についても整備していく必要がある。
 
受発注者双方の支援についても検討を進めており、国土技術政策総合研究所が主体となり、受発注者がクラウド上で3次元モデルの作成や共有を行い、BIM/CIMモデルなどの3次元データを一元的に集約するシステムの開発を進めている(図-4)。

国総研DXセンターのイメージ(案)

図-4 国総研DXセンターのイメージ(案)


 
2020年度は、3次元モデルの閲覧などの最低限必要な機能を無償で提供するような仕組みを構築する。順次、クラウド上での3次元モデルの作成や編集など、機能の拡充を行っていく(図-5)。
国総研DXセンターのユースケース(案)

図-5 国総研DXセンターのユースケース(案)



また、BIM/CIMを効率的に活用するためには、必要な情報へのアクセシビリティを高める必要がある。特に、BIM/CIMに関する基準・要領などの数が多く、そしてこれらは国土交通省大臣官房技術調査課や国土技術政策総合研究所などのホームページに基準・要領などが掲載されていた。このような状況を踏まえ、2019年度からBIM/CIMに関連する情報をとりまとめ、「BIM/CIMポータルサイト【試行版】」として公開した。ポータルサイトには、制・改定した情報を更新するだけでなく、主に土木分野の従事者に向けてBIM/CIMを紹介した「初めてのBIM/CIM」や、これまで国土交通省で実施してきたBIM/CIM活用業務・工事の効果等をとりまとめた「BIM/CIM事例集」などを掲載している。今後関連する団体の情報などについて充実させ、BIM/CIMに関する情報へのアクセシビリティを確保できる環境整備を進める。
 
 

おわりに

2012年度から検討を進めてきたBIM/CIMについて、これまで活用件数を着実に伸ばしてきたが、2023年度の小規模なものを除く全ての公共工事への原則適用の対象となる母数を踏まえると、活用件数は今後飛躍的に増加させる必要がある。ただし、BIM/CIMの活用件数はその普及に関する指標の一つに過ぎず、BIM/CIMは生産性向上、受発注者双方の作業効率化・高度化に資する一つの手段であるとい
うことを念頭に置いて推進する必要がある。
 
測量、調査、計画・設計、施工、維持管理の各段階におけるBIM/CIMの活用だけでなく、建設生産プロセス全体で一気通貫したBIM/CIMの活用を見据えなければいけない。
 
建設現場の生産性向上を図るためには、i-Constructionの取り組みを国の直轄工事以外にも拡大していくことが重要である。このため、地方公共団体などに対して、発注関係者の集まる発注者協議会などの場を通じて、BIM/CIMをはじめとしたi-Constructionに関するさまざまな基準類について周知を図りつつ、連携して取り組みを進めている。
 
このほか今後、BIM/CIMに係る各種基準類についてもより使いやすく、分かりやすい内容とするため、BIM/CIMを実践して得られた課題への対応や関連基準類の整備状況を踏まえて、継続的に改善を図っていくこととしており、i-Construction、BIM/CIMの取り組みの普及、進展を図ることで建設現場における生産性向上をより一層実感できる環境整備を進めていく。
 

国土交通省 大臣官房 技術調査課

 

【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年


 



バーチャルな環境で疑似トレーニング を行う -新たなMR技術(AVR)の開発-

2021年8月23日

 

はじめに

2017年、従来の安全教育の課題を 解決する手法としてモーションキャプチャ技術を活用した没入型VR安全教育システム「リアルハット」を開発し、平成30年2月10日発行の本誌において報告をした。同システムは、モーションキャプチャ技術を活用することで受講者をバーチャルな環境へ没入させ、集中力を高め効果的な「気づき」をもたらすことを目的に開発を行った。また、昨今のダークツーリズムのように労働災害という「負の遺産」を繰り返し疑似体験することができ、かつ新鮮な形で保管できる教材となっている。現在、本システムの開発より3年が経過したが、その後の建設業界は、従事する技術者・技能者の高齢化、若年層の入職率低下などを背景に、人手不足や技術・暗黙知の継承などの課題が深刻化している。そのような背景の中、「建設業の働き方改革」、「技能者の建設キャリアアップシステム導入」、「外国人労働者の受け入れ」、「建設生産システムの生産性向上/i-Construction」など、建設業界を改革する施策が多数打ち出され、取り巻く環境は急激なスピードで変化を続けている。一方、安全の分野では、依然ヒューマンエラーを原因とする災害が多発しており、災害発生を未然に防ぐ「気付く能力」を育む効果的な教育やトレーニングが求められている。本稿では、これら建設業界の現状を背景に新たに開発した安全教育システムについて報告する
 

VR安全教育システムに求められる新たなニーズと課題

(1)バーチャルな環境下でのトレーニングというニーズ

2018年6月に労働安全衛生法施行令が一部改正され、2019年2月よりフルハーネス型安全帯の使用が原則義務化された。これは、胴ベルト型安全帯を使用しているにもかかわらず墜落して死亡する災害が毎年発生していたことを背景としている。胴ベルト型安全帯の場合、墜落衝撃による内臓破裂を免れても、身体が「くの字」となることで胸部や腹部を圧迫し呼吸困難から低酸素脳症に発展し死亡に至る。それに対しフルハーネス型安全帯は、墜落時に直立姿勢を維持しやすく、頭部の激突を防止し、かつ墜落制止時に発生する衝撃を全身に分散させるので被災者の身体への負担が大幅に軽減できる。これらにより、フルハーネス型安全帯は、墜落災害における死傷者数の減少が期待されている。その一方で、墜落時にフルハーネス型安全帯を使用していても、宙吊り状態が継続することは決して安全ではないとの報告がある。宙吊り状態が20分以上継続すると腿ベルトが大腿静脈部を圧迫させ、全身うっ血状態になり脳と心臓に重大な損傷を与えるのである。また被災状況にもよるが、墜落発生後、レスキュー隊の到着までに10分、現場把握ならびに救出計画立案に5分、救出作業に15分、延べ30分を要す。よって、被災後20分間までの対応が被災者の生死を分けるのである。これに対し、米英両国などでは墜落制止後に被災者自身がとるべき行動の一つとして延命措置のトレーニングが義務化されている。墜落した被災者に意識があるならば、レスキュー隊が到着するまでの間に「足かけ補助具」を用いて自らで延命措置を施すのである。わが国においても、墜落制止後の死亡事故を防止するため、これらの教育トレーニングが必須となっている(写真-1)。
 

従来の延命訓練

写真-1 従来の延命訓練


 

(2)VR安全教育システムの解決すべき課題

VR(Virtual Reality:仮想現実)を定義するのであれば、「実際の現実として目の前にあるわけではないが、PCや各種デバイスを介して実質的には現実と同じものを人工的に感じさせる技術」である。デバイスであるヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着することで、今まで見えていた現実環境のモノが視界より遮られ、その代わりにHMD内の視界では全く別のバーチャルな環境が映し出される。しかも、頭や視線を動かしても、さらにその環境の中を移動しても、そのバーチャルな環境は頭や視線の動き、移動に対しても追随して視界に映し出される。これにより、VRの体験者は目の前で展開する別の環境に居て、そこで発生する事柄を体験しているかのような錯覚を覚える。これらの「あたかも体験している」かの錯覚を生む仕組みは、HMD内に内蔵された加速度センサーやジャイロセンサー、体験区域外周に設置する外部トラッキング用センサー達が体験者の移動している方向や位置、その動きの速度などを検知し、その動作に合わせてPCが瞬時に制作した映像を体験者の動きに遅れることなくHMDで映し出すからである。これにより体験者は、あたかもバーチャルな環境の中にいるかのように感じ、高い臨場感と没入感を得るのである。
 
このようにVRは、視界に入る全てのものがPCの中で構築されたもので成立しているため、バーチャルな環境には現実環境のモノは存在しなかった。よって、バーチャルな環境ではVR体験者の身体(手足)すらなく、その環境の中にVR体験者の意識もしくは視線だけが存在しているかのようである。そのようなバーチャルな環境下で教育トレーニングを実施しようにもHMD内ではバーチャルな環境の映像は見えるものの、映像内に体験者自身の手足や使用すべき道具類が存在しないため、訓練時には手探り状態になり第三者の介助が必要となる。これにより体験者は、緊張感あるバーチャルな環境に居るにもかかわらず、強制的に現実環境に引き戻されてしまうのであった。またバーチャルな環境を体験できるのはHMDを装着した体験者ひとりのみであり、たとえ他の体験者がいたとしてもアバターなどに置き換えられ、その臨場感や没入感が失われてしまうのである。
 
 

MR技術を用いた疑似トレーニングシステムの開発とその効果

(1)新しいMR技術の開発

安全教育の新しいテーマとしての教育トレーニングを実現するためには、バーチャルな環境に体験者の身体(手足)や使用する道具類を映り込ませる新しい技術の開発が必要となった。そこで新しいMR技術としてAVR(Advanced Virtual Reality:拡張仮想空間)を開発た。AVRは、バーチャルな環境を主とし、そこに現実環境のモノを持ち込む技術であり、近年において最も有名なMRデバイスである、マイクロソフト社の「HoloLens」などの現実環境を主としホログラムなどで表現されるバーチャルな物質を投影するMR技術とは考え方を異にする。AVRは、従来のHMDに高性能なカメラを装着し、体験者の向いている方向の高精細な映像(生映像)と被写体までの距離情報を取得する(写真-2)。
 

AVR用HMD

写真-2 AVR用HMD



その後、取得した映像情報に対し「設定距離以遠の映像除去」と「背景材色の透明化」の2つの処理を施し、生映像から「体験者の身体(手足)」や「持ち込みたい工具」だけをシャープに切り抜き(処理映像)、バーチャルな環境(素材映像)と合成しHMDへ転送する。二つの技術を組み合わせることで映像合成に必要な処理速度を飛躍的に向上させ、体験者の動作を瞬時に反映させることを可能にした。写真-3は、HMDで取得する生映像である。一方、写真-4と5は合成したい現実の物質をバーチャルな映像に合成した者であり、写真-4と5の違いは、合成したい物体までの設定距離を変えたものである。この設定距離を変えることで合成したい物体を選ぶことを可能にした。なお、背景画像を高精細な3Dカメラ映像とすることで仮想空間の製作を省略し、構想から試作品完成までに要した数カ月のVRデータ制作期間を7~10日まで短縮させている。
 

HMDで取得する生映像

写真-3 HMDで取得する生映像




合成映像

写真-4 合成映像①




合成映像

写真-5 合成映像②




 

(2)AVRを活用した疑似体験トレーニング例

現在、AVRは「フルハーネス型安全帯使用作業特別教育」における「墜落制止後の延命措置訓練」に集中的に活用している。
 
同訓練には、AVRシステム(PC、HMD、グリーンバック)に加えて、フルハーネス型安全帯などを用いる。また訓練では、安全教育受講者(以下、受講者)が実際に吊り下がる必要があるため、移動型の吊り設備として「ぶらさがり健康器」を活用している。なお、HMD内で視聴するバーチャルな環境は、実際に稼働している工事現場を3Dカメラで撮影した高精細な3D映像を用いている。これにより、受講者はCGではなく実際に稼働している工事現場映像の中に合成される。すなわち、受講者自身は工事現場映像の登場人物として映像内に入り込むのである。写真-6は、フルハーネスで吊り下がった体験者が足かけ補助具を足にかけて自らの体重によって生じる負荷を軽減しようとしている様である。写真-7は、その被験者がHMD内で見ている映像である。受講者は、対象となる作業、安全帯の構造や使用方法と点検整備方法、労働災害の防止措置などを事前に座学で学んだ後にAVRを用いた疑似体験トレーニングを受講する。受講者は、フルハーネス型安全帯の締め付けによる痛みや動きづらさに耐えつつ、HMD内に映る自らの手足を使い、用意していた足かけ補助具をフルハーネス型安全帯に固定し、さらに足かけ補助具に足を掛け体重を乗せることでフルハーネスによる締め付け負荷を除荷させている(写真-6、7)。これらの疑似体験トレーニングを通じてAVR体験者は多くの気づきを得るのである。
 

AVRを活用した延命措置訓練状況

写真-6 AVRを活用した延命措置訓練状況




延命措置訓練体験者が見ている映像

写真-7 延命措置訓練体験者が見ている映像



(3)バーチャルな環境下で協働作業という新たなトレーニング

 
先にも述べたが、AVRの特徴は、設定距離以内にある物体をHMD内で展開するバーチャルな背景に合成することである。よって、AVR体験者が複数人いたとしても設定距離を変更することで、体験者Aの見ている映像に体験者Bを登場させることができる。その際、体験者Bが見ている映像にも体験者Aが登場しているのである。これらによりAVRは、バーチャルな環境下に複数人数を登場させ協働作業を可能にした。
 
写真-8は、2人のAVR体験者による消火訓練風景である。体験者たちが所持している消火器は、消火剤を抜いた実物でありノズル先端と消化対象である炎の場所にはトラッカーと呼ばれる装置が取り付けてある。このトラッカーは、装着された物体の位置情報を正確に追跡・追従させる装置であり、消火訓練では炎と常に移動しているノズル先端の位置を割り出し、バーチャルな環境内で被験者の動きと同調させる。またトラッカーは、あらかじめ作成しておいた消火剤や炎のCGを同調させるため、ノズルを向けた方向に消火剤を噴射することや、好きな場所で炎を発生させることができる。なお、消火器ハンドル部分にはスイッチが取り付けてあり、握ることで正確に割り出されたノズル先端より消火剤の噴射が始まる。写真-9は、体験者Aが消火剤を炎に向けて噴射させている状況見ている体験者Bが見ている映像である。また、消火剤の噴射時間とトラッカーの位置関係より炎は徐々に鎮火していくのである(写真-10、11)。
 

協働作業による消火訓練

写真-8 協働作業による消火訓練




体験者Bが見ているAの消火活動

写真-9 体験者Bが見ているAの消火活動




鎮火状況

写真-10 鎮火状況①




鎮火状況

写真-11 鎮火状況②



(4)AVRの効果

AVRの開発ならびに運用において、以下のような効果を確認した。
 
①バーチャルな環境に現実環境を重ね合わせることで、起こり得る環境を忠実に構築し、臨場感ある疑似トレーニングを可能にした。
 
②体験者は、さまざまな身体的な負荷を感じつつトレーニングを行うことで、想像を超えた多くの「気づき」を得ることができる。
 
③体験者自らが考え、体験者自身の手足を使うことで、より細やかな動きを身に着けることができる。
 
④繰り返しトレーニングを行うことで、実際に同じ環境に陥った際のパニック低減が図ることができる。
 
⑤繰り返し訓練時には講師が不要となる。
 
⑥体験者の身体や周辺環境が見えることになり、VR酔いの発生が最小になった。本件に関しては、別途研究中である。
 

終わりに

今回のAVR開発により従来のVR安全教育では不可能であったバーチャ ルな環境での疑似トレーニング、複数の体験者による協働作業を可能にし、その限界を克服した。しかし、AVRという仕組みは、グリーンバックなど、比較的大掛かりな設備を必要とする。安全教育施設など固定的な場所で利用するには容易であるが出前安全教育などでは資機材の運搬などが発生し費用も増大する。今後は、これら設 備の小規模化などが本システムを発展させる上で課題となる。また、現実環境とバーチャルな環境の混合割合を変えることで、M Rという技術はさまざまなシチュエーションで活躍できる可能性も感じた。今後、さまざまな仕組みのMRが開発されると思う。それぞれの良さを十分に理解し、これら技術を上手に活用できれば、安全教育に限らず実効性の高い教育システムが構築できると考える。今後も、新たなるニーズや課題の抽出と開発を続けていく所存である。
 

西武建設株式会社 土木事業部 エンジニアリング部長 蛯原 巌

 

【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年


 



工事写真からDXへの誘い −生産性を深化させる施工管理ツール−

 

工事写真から始まった写真DX

「もはやこの内容は工事写真を凌駕している」
 
これは2020年3月に改定された「デジタル写真管理情報基準」を受けて、11月13日に一般社団法人 日本建設業連合会 土木工事技術委員会 土木情報技術部会 情報共有専門部会(以下、当専門部会)が記者発表した「変わる!工事写真」施工者のための工事写真レイヤ化活用ガイドを見たある人のコメントである。
 
工事写真の改ざんが初めて問題となった2005年、デジタル写真の改ざん事例を受け、国土交通省はその後一切のデジタル写真の加工を禁止した。しかし、当専門部会では以前から工事写真そのものの利用価値にCALS/ECが始まった時から気が付いており、デジタル写真を単なる写真ではなく、そこに秘められた情報をさらに向上させる研究を行ってきた。
 
その1つが「電子小黒板」である。その小黒板を改ざんではない形で認めてもらうために、業界一丸となり、2017年2月には、電子小黒板を写真に組み込んだ状態については写真改ざんではないとの判断が国土交通省から下され、一気に電子小黒板がこの業界で開花した。黒板に入れている情報を元に、写真の振り分けなどが全自動で行えるようになるなど、写真整理時間などが画期的に短縮された。
 
あれから、3年、次に当専門部会が目指したのが今回の写真レイヤ化の取り組みである。
 
写真の深化ではなく、仕事の進め方の深化として今回の写真レイヤ化のみならず、今までとは違う施工管理プロセスを生み出せるこの改定に、冒頭のコメント「もはやこの内容は工事写真を凌駕している」が当専門部会の真の活動を表していると思い、このコメントから本投稿をスタートさせる。
 
 

工事写真のそもそもの目的は何だろうか。工事のプロセスで行われている行為を写真という映像でエビデンスとして確保するということと、見えなくなってしまう状態を見える状態の時に撮影しておくのが目的である。その後何かのタイミングで構造物であれば、修繕するためにその構造物の一部に物理的な行為を行う時、見えない部分がどうなっているのかが分かるので写真が役に立つであろう。このように工事写真はその時の施工状況を残すために重要な書類の1つである。
 
ところが、この重要な書類である「写真」を使って、その時々のコメントや何か重要な情報を後世に伝えるため、写真という書類に書き込みをすることが今までは許されていなかった。写真の改ざんに当たるからである。
 
今回の基準改定が意味するものは、単にファイル形式がJPEGから「写真ファイルの記録形式は日本産業規格(JIS)に示されるJPEGやTIFF形式等」とされ「SVGファイル形式」や全天球カメラ画像、動画ファイルの「MPEGファイル形式」など、さまざまな映像技術で工事写真の納品が可能となったという単純なものではなく、実はこのようなファイル形式を上手に利用可能にすることで、施工時の状況を的確かつ正確に伝達する「手段」が増えたということに他ならない。
 
この「手段」が増えることで、利用目的が広く、深くなり、施工者のアイデア次第で数多くの利用シーンを生み出すことができるようになったのである。
 
単にファイル形式が変わったというだけではなく、写真を使った仕事の進め方や、利用の仕方大きく変わることができるようになった、これが今回この基準の改定に示されている意味である。
 
 

レイヤ化を実現したSVG形式とその効果

建設現場ではあまり聞き慣れない「SVGファイル形式」だが、Web デザインなどに使用されることが多いベクタ形式の画像ファイルで、JIS X4197:2012「可変ベクタグラフィクスSVG Tiny1.2」として規定される汎用フォーマットである。一つのファイルで、複数の画像を重ねて配置でき、レイヤのような表現が可能となる(図-1)。
 
通常この形式はイラスト作成などの分野で使われている形式だが、今回はこのファイル形式を写真の上にトレーシングペーパーのようにかぶせて使おう、という発想である。
 
下記の「注釈レイヤ」が今回の基準改定で利用できるようになった部分である。ここでは分かりやすくするために、注釈レイヤが1枚として表現しているが、複数枚あっても問題ない。この注釈レイヤを多用することで、従来できなかった、工事の状況を伝達する手段や、コメントとして残すべき状況を写真に直接書き込むことができ、新しい表現ツールとしての利用が可能となる。
 
例えばこの例のように、写真から配筋の検査項目(ピッチや本数など)を自動で判定するシステムがあるとするならば、その情報を「注釈レイヤ」に書き出すことにより、従来のような配筋検査の資料作成などが現場で一瞬にして終わらせることも可能となる。写真だけで品質管理書類の一部とすることも可能となる。
 

写真レイヤ化の構成

図-1 写真レイヤ化の構成




 

新しい世界を築く施工管理ツールのユースケース

このレイヤ化が利用できるようになることで、施工管理としてさまざまな利用が考えられるようになった。
 
図-2のような使われ方も1つであろう。「注釈レイヤ」へのマーカーなどの追加・編集作業は撮影後にできるため、工事写真の撮影に追われるときは便利だ。
 
また、今回の改訂ではレイヤ化だけの利用ケースしかないわけではない。
 
表-1に書かれているとおり、動画ファイル形式についても利用が可能となっている。
 
例えば、今までは工事の状況を説明するために撮影する動画など従来は単なる参考情報として扱われ、特に工事の成果物として納めることはなかったが、今後は写真ではなく動画が積極的に扱われるようになるかもしれない。
 
従来は施工中の状況を説明するためにその一瞬を切り出し、写真という静止画で説明してきたが、今後はその前後のプロセスを説明するために動画を使い、動画でしか伝わらない施工中の一連の「流れ」やその場の「状況」をつぶさに説明する資料に変えることもできるであろう。
 
成果としての結果を残すものが写真だとするならば、そのプロセスをつぶさに説明するのが動画である。
 
動画という「手段」をプロセスの説明道具として使う流れが定着すれば、写真というものが最終的には必要なくなるかもしれない。動画からマーキングした、あるいは動画にコメントを残すようなツールが出来上がれば、さらに活躍の幅は広がっていくであろう。動画を活用した新しい施工管理方法が期待される。
 
なお、今回の改訂よりも以前に、(一財)国土技術研究センターでは、『建設技術・マネジメント』に関わる自主研究として工事記録映像活用試行要領・同解説(平成30 年9月)の公開が行われている(図-3)。
 
今回の改訂を受け、このような機関がすでに試行要領を出されているので、施工各社は動画を使ったユースケースを検討し、これらの試行要領を具体的な成果として利用することが可能となった。
 
ぜひ動画の活用を積極的に行っていただきたい。
 

図-2 レイヤ表示・非表示の選択例

図-2 レイヤ表示・非表示の選択例


 

表-1 デジタル写真管理情報基準(R2.3)新旧対照表抜粋

表-1 デジタル写真管理情報基準(R2.3)新旧対照表抜粋


 
図-3 (一財)国土技術研究センターのサイトより

図-3 (一財)国土技術研究センターのサイトより


http://www.jice.or.jp/reports/autonomy/tech


 

今後の展望

電子小黒板の利用から写真のレイヤ化への対応と、施工情報のデジタルデータを活用できる手法を拡充させることが可能となり、施工管理としてのツールになくてはならない物になりつつある映像情報の進化を進めていくのが重要だと考える。
 
本基準改定に向けた活動に関わったメンバーの思いとは、現場が日々困っていることや、不自由さを感じているニーズの具現化をするだけではない。
 
もちろんこれらのちょっとした現場のニーズが今回のような基準改定の流れになることは重要であるが、その背景には「もっと現場を楽にする」という精神がその根底にある。当専門部会ではこの精神を創設以来脈々と受け継いでおり、写真のみならず、電子納品そのものの本来のあり方や、情報共有ツールを施工管理として利用するための方法、さらには、それらのデータを施工後の維持管理でどのように利用すべきかなどの建設プロセスを俯瞰しながら議論している部門である。
 
今回のように写真の活用幅を広げるための基準改定に向けた活動は結果として小さな流れではあるが、今回説明したような小さな流れが、実は、電子納品の本当の意味とそのあり方を根本から考え直し、「かくあるべき」という内容を具体的に展開する源流であると確信している。
 
当専門部会の活動は、「プロセスを見直す」を合言葉に、日々の施工プロセスを見直し、なぜこのプロセスしかだめなのか、こうあるべきではないか、ということを「デジタルを使うからこそ変えられるプロセス」を常に探し求めている。
 
実はこれが本当の意味で「建設分野のDXの促進である」ということを最後に付け加えておくこととする。
 
 

今後の活動について

プロセス変革を進めていくことが重要なのは頭では理解しているものの、実践するにはかなりの苦労と時間を有する。特に既成概念が強いこの業界で、プロセス変革を真に推し進めていくのはそう簡単ではない。
 
デジタルをキーワードとし、建設分野のDXを推進するための活動を行っている当専門部会としては、同業を含む多くの方と「プロセス変革」を進めていきたい。ご意見をお持ちの方は下記担当者(木村部長)にぜひ連絡いただきたい。
 
専門部会のメンバーもさることながら、多くの方々と本来の「建設分野のDXをデジタルにて加速させる」ことを進めていくことが、建設業の本来の「価値」と「意義」を高めるために重要な活動だと認識している。
 
本投稿において紹介した「『変わる!工事写真』施工者のための工事写真レイヤ化活用ガイド」については日本建設業連合会のWebサイトでも公開されている。ご確認いただきたい。
 

[参考情報]
活動メンバーは以下の通り
土木工事技術委員会 土木情報部会
情報共有専門部会
専門部会長   杉浦 伸哉(大林組)
副専門部会長  原島 誠(飛島建設)
委員      浅賀 泰夫(大本組)
委員      後閑 淳司(鹿島建設)
委員      上村 昌弘(鉄建建設)
委員      片上 智之(東亜建設工業)
委員      笠井 英治(不動テトラ)
委員      橋本 隆紀(清水建設)
委員      笹島 真一(フジタ)
●当専門部会への連絡先
一般社団法人 日本建設業連合会
事務局次長兼安全部長 木村 健治
Mail:k.kimura@nikkenren.or.jp
TEL: 03-3551-8812(安全部直通)
 
日本建設業連合会のWebサイト
https://www.nikkenren.com/(日本建設業連合会のWebサイト)
http://www.nikkenren.com/rss/pdf/1556/ApplicationLayering.pdf(活用ガイドPDF)


工事写真レイヤ活用ガイド
 

工事写真レイヤ活用ガイド


 
 
杉浦 伸哉氏

一般社団法人 日本建設業連合会
土木工事技術委員会 土木情報技術部会
情報共有専門部会長 杉浦 伸哉

 
 
【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年


 
 
 



建設現場DX −現場監督の未来を見て今を変える−

2021年8月10日

 

「建設DX」とは

「CALS」「BIM/CIM」「情報化施工・ICT施工」「i-Construction」そして「建設DX」と細かい内容は別として、建設現場でも聞いたことある単語が多いのではないだろうか。
 
コロナ禍もあり、「DX」という単語をよく目や耳にするようになった。そもそも「DX」は建設業だけで使われているものではなく、ご存知のとおり「デジタルトランスフォーメーション」の略 称で、大まかに言うと「デジタル技術による業務の変革」を意味する。「D」はもちろん「digital」で、「X」は英語圏で「trans〜」を意味する。
 
現在、建設現場ではパソコンやスマートフォン、タブレット端末をはじめ、さまざまなデジタルツールを活用しながら、さまざまな建設物、いわゆる「モノ」をつくりあげている。朝、現場事務所に到着すれば必ずと言っていいほどパソコンの電源を入れるだろう。スマートフォンやタブレットを用いて現場の状況を確認したり、測量 や施工にもGNSS、写真は電子小黒板、職人さんとの打合せでもデジタルツールを用いている。笑顔のコミュニ ケーション以外の多くはデジタルツールを用いた業務となっているのが現状で、逆を言えば、以前これらのない時代はどのようにして「モノ」をつくりあげてきたのか、疑問すら感じる人も多いのではないだろうか。以前の話はさておき、「建設DX」の意味の中で「業務の」を忘れてはならないと筆者は感じる。ただデジタルツールを使うのではなく、デジタルツールの活用によって「業務」、いわゆるプロセスを変えることがこの「建設DX」に重要なことだ。会社の規模や分野、現場の規模や工種によって大きく異なる建設現場の業務であるが、そういう意味では、「デジタル技術によってプロセスを変革する」と踏まえれば、どんな立場であれ、それぞれの「建設DX」はすぐ近くにあると言えるだろう。
 
 

建設現場にも必要な「建設DX」の狭義・広義の意味

「建設DX」の取り組みとして国土交通省などが「インフラ分野のDX」として提唱しているものを狭義の意味、前述したような身近な業務をデジタル技術によってプロセスの変革を行うことを広義の意味として少し説明したい。まず狭義の意味として、インターネットの検索で「国土交通省DX」と検索すると、国土交通省でも「インフラ分野におけるDXの推進」として、さまざまな部署で取り組みを行っているのが分かる。「第1回国土交通省インフラ分野のDX推進本部」の資料2(図-1)によると、DXの概念は「進化したデジタル技術を浸透させることで人々の生活 をより良いものへと変革すること」とされ 、インフラ分野のDXとは「社会経済状況の激しい変化に対応し、インフラ分野においてもデータとデジタル技術を活用して、国民のニーズを基に社会資本や公共サービスを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、建設業や国土交通省の文化・風土や働き方を変革し、インフラへの国民理解を促進するとともに、安全・安心で豊かな生活を実現」と分かりやすい表現がされている。
 
上記のスライドにもあるように、「行動」「知識・経験」「モノ」の3つのDX に分けて社会資本や公共サービス、組織、プロセス、文化・風土、働き方改革の変革をうたっている。末広がりの DXを取りまとめるのに、この3つの柱は非常に分かりやすい。簡単に紹介すると、
 

行動のDX:どこにいてもさまざまな 業務が可能
例:遠隔操作、遠隔臨場、Web会議、遠隔監視など
 
知識・経験のDX:技術の継承
例:AIによる施工管理支援など
 
モノのDX:3Dや4D(+時間)、5D (+コスト)でつくる「モノ」を簡単に理解
例:BIM/CIM化、ICT施工など
 
また、フィジカル(現実)空間の事象をサイバー空間に再現する「デジタルツイン」を目指す取り組みも始まっている。国土交通省では「国土交通データプラットフォーム」が開設され、国土 交通省が所有するデータと民間などのデータの連係を目指している(図-2)。現状は国土地理院のベースマップに各データがポイントごとに掲載されているマッピング状況であるが、将来的には同一インターフェイスからの検索と同位置の3次元地図上での表示やダウンロードが可能となる。建設現場でも国土交通データプラットフォームのサイバー空間から施工箇所をダウンロードし、施工した「モノ」を手元で更新し、再度アップロードするという時代が近いことが分かる。
 

インフラ分野のDX

図-1 インフラ分野のDX(国土交通省より)




デジタルツインを目指す姿

図-2 デジタルツインを目指す姿(国土交通省より)


「建設DX」推進の背景

「建設DX」を進めるために、2019年に「担い手3法」が法改正され、「新・担い手3法」とも呼ばれている。建設業の維持と生産性向上、「i-Construction」を加速させるために「建設業法」、「品確法(公共工事の品質確保の促進に関する法律)」、「入契法(公共工事の入札および契約の適正化の促進に関する法律)」の3つの法律が改正され、随時施行された。
 
「働き方改革の推進」
「生産性向上への取り組み」
「災害時の緊急対応強化、持続可能な事業環境の確保」
 
の3本を柱として、主として監理技術者の兼務(特例監理技術者)や特定専門工事(型枠・鉄筋)での主任技術者の配置省略、プレキャスト製品資材会社への勧告、社会保険加入の確認方法、建退共制度のシステム見直しなどが行われた。
 
もう一つは総務省から2016年度の第5期科学技術基本計画において提唱された「Society5.0」である。一言で表現すれば、「フィジカル空間(現実空間)のセンサーなどから膨大な情報がサイバー空間(仮想空間)に自動的に集積され、このビッグデータを人工知能が解析し、その結果をフィジカル空間の人間にさまざまな形でフィードバックされる社会」で、建設分野でも「Society5.0」を背景に変革が取り組まれている(図-3)。
 
「Society5.0」の実現に、新しい通信技術5Gの普及が急がれるとされているが、建設現場ではどうだろうか。
 
5Gでは新しい帯域(NR:ニューレディオ)として3.7GHz帯・4.5GHz帯(Sub6)と28GHz帯(ミリ波)を使用しているため、今までとは別のアンテナの設置が必要となる。また、新しい帯域は遮断物や雨にも影響され、飛距離が短いため、現況の4G以上の基地局が必要とされている。そのため基地局までのバックボーンの整備も含め、建設現場で5Gが普通に使えるには、ある程度時間がかかるものと考えられる。5Gについてまとめると以下のとおりである。
 
・超高速、超低遅延、多数同時接続・必要箇所から設置、人口カバー率低い
・電波が硬いため雨や障害物によって遮断されやすい
・安定供給には100〜200m程度ごとにアンテナが必要
・アンテナまでのバックボーン(光回線)の整備も必要
・5GのNRにはSub6とミリ波があり端末により異なる
 
では、この5Gが建設現場に入ってくると、劇的に建設現場が変わるかと言うと、答えはノーである。5Gはあくまでも基地局からデバイスまでの通信技術であり、その部分が今までの4Gと比較すると超高速、超低遅延、多数同時接続となるため、あくまでも伝送技術の革命に過ぎない。5Gを生かすためにも、通信技術にまつわる管理ツールの開発や普及がその前に必要となる。また、現在はWi-Fi技術も「Wi-Fi6」へと改革が進んでおり、5Gの整備がある程度進むまではこのWi-Fi6やローカル5G、専用電波などとの混在となるだろう(図-4)。
 
 

Society5.0時代の仕組み

図-3 Society5.0時代の仕組み(総務省より)




5GとWi-Fi6との比較

図-4 5GとWi-Fi6との比較


2030年代、Beyond5G(6G)の時代の建設現場

もう少し先、十数年後の建設現場を想像してみよう。総務省から公開されている「令和2年度情報通信白書」にはBeyond5Gとしていわゆる6G時代の求められる機能と時代背景がまとめられている(図-5)。
 
5Gよりさらに超高速、超低遅延、多数同時接続が果たされるが、エリアは5Gより絞られ、必要とされる箇所のみの予定だ。建設現場は地方や海上での施工も多いため、HAPS(高高度基盤ステーションと呼び、成層圏にアンテナを搭載した飛行物体を自動飛行させる通信技術、衛星通信より距離が近いため通信速度が高速)との組み合わせなどが必要となるだろう。
 
また2030年代には、人工知能のAIはシンギュラリティと言い、人類の知能をAIが超える時代を迎えると言われている。さらにあらゆるモノに、インビジブルコンピュータ(見えない通信モジュールのようなもの)が埋め込まれ、全てのモノがフィジカル(現実)空間でも管理される。これらを踏まえて見えてくる建設現場のキーワードは以下のとおり。

・構築物はほぼプレキャスト化
・重機類の自動運転、自動施工
・遠隔監視、遠隔管理、複数現場同時管理

とは言え、100%全てが自動施工を行うことは難しいため、ある程度、人でないとできない部分があるだろう。この時代に向け、建設会社として、個人として、それぞれの規模、それぞれの立場で、何ができるのかをそろそろ考えていく必要もあるだろう。
 
 

Beyond5Gに求められる機能など

図-5 Beyond5Gに求められる機能など(総務省より)


PRISMから見える近未来建設現場技術

「PRISM:官民研究開発投資拡大プログラム」が平成30年度から始まり、最先端技術の実証実験が各地で行われている。令和元年度も同様に実施され、取り組み内容を個人的ではあるが表-1にまとめてみた。
 
多いのは、3Dスキャン等による自動的出来形管理関係で、次に重機・車両・人の動きを自動的に把握し、どこに無駄があり、どうすれば生産性向上が図れるかの改善支援を行う研究と続いている。品質管理や検査の自動化も多く、作業を止めずに、そして人を介せずに行う管理も研究されている。これらの実証実験が実を結び、近い将来、建設現場の多くで取り入れられることだろう。現場監督として、これらで空いた時間を別のことに上手に使い、より高品質な管理を行う必要があると考える。
 

PRISMから見る近未来建設現場技術

表-1 PRISMから見る近未来建設現場技術
(建設現場サイト「現場主義より」)


身近な建設DXツール

少し現実的な話に戻そう。現在、建設現場の管理で一番使用されているデジタルデバイスはパソコンとスマートフォン・タブレットではないだろうか。私の経験上ではあるが、土木現場ではスマートフォンが普及し、建築現場ではタブレット端末が普及しているように感じる。屋外作業の多い土木とある程度進むと屋内作業が多くなる建築と環境の違いもあるが、そもそも業務の進め方に違いがあることがこのスマートフォンとタブレット端末の違いにつながってくるのではないだろうか。
 
その中でも、どちらでも普及しているスマートフォン・タブレット端末活用事例としては、以下のとおりである。
 
・ビジネスチャット
・オンラインストレージ
・Web会議システム
・野帳、ノートツール
・工事写真(電子小黒板)アプリ(土木)
・図面PDFに写真など情報を埋め込むアプリ(建築)
 
LINEのようなチャットツールを使っている人はすでに多いが、ビジネスチャットでは端末にデータが残らない、既読者と未読者が判別できるなど、無料版のLINEとは異なる機能がある。身近な建設会社で導入されているビジネスチャットの種類は以下のとおりである。
 
・LINEWORKS(ラインワークス)
・direct(ダイレクト)
・WowTalk(ワウトーク)
・InCircle(インサークル)
・TAGS(タッグス)
・MicrosoftTeams(マイクロソフトチームズ)
・ChatWork(チャットワーク)
 
それぞれに機能の特徴や操作性、コストなどの違いがあるが、基本的には必要に応じてグループを作成し、その中で会話することが多い。チャットツールではメールより素早くコミュニケーションが取れる、スマートフォンやタブレット端末を使用してどこからでも発信・確認が可能であるが、次のようなデメリットもあるため、注意が必要だ。
 
・人数が多い中でメッセージが多数あるときは判読が困難
・業務によりメッセージ内容を認識できない場合がある
・大量のメッセージは読む側のストレスとなる
 
元請職員幹部のみ、元請職員全員、元請職員+協力業者職長、場合によっては発注者や元請会社の間接部門を入れたグループなど、さまざまなグループを使用してメッセージのやり取りをするため、上記のような問題が発生する。特にグループ内での会話が早すぎるとついて行けないなど、同じような経験をしている方が多いのでは。発信者側は、なるべくメッセージが多くならないような工夫が必要で、受信者側も「了解です」などの返信を省略し、やり取りがスムーズに行くようなルール付が必要である。ビジネスチャットを使われるシーン例として以下のような使い方があるが、それぞれに上記で述べた点をルール化し、上手に運用することが必要である。
 
・安全巡視時の指摘事項を写真付きで指示、同是正報告
・発注者などからの連絡事項を素早く通知
・協力業者を含め作業間の調整(機械やエリアなど)
・検査状況や作業の進捗状況を共有・現場状況を間接部門に定期的に報告
 
 

建設現場における 遠隔臨場、遠隔確認

国土交通省や農林水産省から要領(案)が公開され、公共工事でも広がりを見せる遠隔検査であるが、現場の円滑な施工のためにもぜひ取り組んでほしい。図-6は遠隔検査のシステム構成例であるが、スマートフォンやタブレットとWeb会議システムがあれば簡単に構築できる。ポイントは立会調書のやり取りを行う端末の準備と、検査する範囲に応じて現場側端末を複数にすることだ。そうすることで、0点や読み値の確認などを同時に行うことができ、現場担当者の移動時間を省略できる。
 

遠隔検査システム構成例

図-6 遠隔検査システム構成例


公共工事で工事写真に落書きが可能に

次に国土交通省などにおける工事写真の電子納品について、2020年3月に「デジタル写真管理情報基準」が改定され、それまでは「写真ファイルの記録形式はJPEG」とされていたものが「JISに示されているJPEGやTIFF等とし」と変更された。これにより、動画のMPEG形式や今回紹介するSVG形式での納品が可能となる。SVG形式の工事写真を簡単に説明すると、
 
「被写体」+「電子小黒板」+「注釈」
 
といった感じのレイヤの3層による構造となり、「注釈」では写真の上にマーキングなどのいわゆる落書きを書くことができるようになる。「被写体」と「電子小黒板」のレイヤには今までどおり改ざん防止機能が付くが、「注釈」には付かないため、何度でも編集が可能となる。例えば配筋検査では色付きのマグネットやビニルホースをマーキングとして鉄筋に付けていたが、これが不要となり、図-7のように写真撮影後にマーキングや矢印などの注釈を追加することが可能となる。もちろん配筋検査写真以外にも大いに活用できるだろう。
 
さらに「電子小黒板」や「注釈」は、表示・非表示の選択が可能となる。民間建築現場では既に使われている機能でもあるが、公共工事でも電子納品として納品が可能となる。
 
建設現場でのデジタルツールを紹介したが、前述したとおり上手に使うには所内や社内において、ある程度のルール化が必要であり、使いこなしてこそのDXである。さまざまな情報にアンテナを張り、業務の変革に結び付く情報を取り入れてほしい。
 

注釈が可能となる工事写真(イメージ図)

図-7 注釈が可能となる工事写真(イメージ図)


さいごに

コロナ禍での緊急事態宣言時に「エッセンシャル・ワーカー」という言葉を耳にしたことはないだろうか。一般社団法人日本建設業連合会では、われわれ建設業に携わる関係者も「エッセンシャル・ワーカー(日常生活を支える欠かせない存在)」であるとし、この自負と誇りを建設業に携わる人々が堅持しつつ、市民および現場で働く人の命や心身の健康を守ることを前提に事業継続できる体制整備が必要とし、PR活動を開始した。建設業に携わる一人ひとりがこれを自負し、プロセスの変革も含めた建設DXを推進し、答えていくことが重要である。
 
 
 

現場主義×山政 睦実

 
【出典】


建設ITガイド 2021
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