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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

国土交通省が推進するインフラ分野のDX

2021年7月26日

 

はじめに

インフラ分野においては、今後深刻な人手不足が進むと懸念される一方で、災害対策やインフラの老朽化対策の必要性は高まっている。こうした課題に対応するため、国土交通省では、ICT技術の活用等による建設現場の生産性向上を目指すi-Constructionに、2016年度から取り組んできた。
 
加えて、新型コロナウイルス感染症を踏まえ、建設現場においても、3密を避けた新たな働き方へ転換していくことが求められている。
 
このため国土交通省では、データとデジタル技術を活用し、国民のニーズを基に社会資本や公共サービスを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、建設業や国土交通省の文化・風土や働き方を変革することで、インフラへの国民理解を促進し、安全・安心で豊かな成果を実現することを目指し、インフラ分野のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進している。
 
本稿では、国土交通省におけるインフラ分野のDXに関する最新の取り組み状況を紹介する。
 
 

Society5.0の実現による新たな日常の構築

新型コロナウイルス感染症の流行は、その中心地を、中国から米国・欧州、中南米・アフリカへと移しながら世界規模に拡大しており、この影響は広範で長期にわたる。感染症が収束したポストコロナの世界は、新たな世界、いわゆる「ニューノーマル」へと移行するとの見方が強い。
 
わが国においても、テレワーク、住まいに関するニーズの変化等、社会経済の変化が発生している。感染症拡大の先行き等が確実でない中、今回の感染症で顕在化した課題を克服した後の経済社会の基本的方向性として、「新たな日常」を通じた「質」の高い経済社会の実現を目指すこととしている。1)
 
また、令和2年9月に発足した菅新内閣において、行政の縦割りを打破し、大胆に規制改革を断行するための政策として、行政のデジタル化を強力に推進するデジタル庁の設置が進められている。菅総理大臣からは、国民が当たり前に望んでいるサービスを実現し、デジタル化の利便性を実感できる社会を作るという方針が示されている。
 
このように政府を挙げ、デジタル化による社会の変革が求められる中、国土交通省においても、国民目線に立ち、インフラ分野のデジタル化・スマート化を、スピード感を持って強力に推進していく必要がある。
 
 

データとデジタル技術を活用したインフラ分野の変革〜インフラ分野のDX〜

インフラ分野におけるデータとデジタル技術の活用は、2016年度より建設現場の生産性を高めるため、ICT施工やBIM/CIM(Building/Construction Information ModelingManagement)をはじめとする3 次元データの活用等、i-Constructionを推進してきた。将来的には、測量から設計、施工、維持管理に至る建設プロセス全体を3次元データでつなぎ、新技術、新工法、新材料の導入、利活用を加速化することを目指している。さらに、事業全体にわたる関係者間で情報を共有することにより、一連の建設生産システムにおける受発注者双方の業務効率化・高度化が期待される(図-1)。
 

建設生産プロセスを3次元でつなぐ

図-1 建設生産プロセスを3次元でつなぐ




i-Constructionに関する工種拡大

図-2 i-Constructionに関する工種拡大




 

これまでの成果として、例えば、調査・測量、設計、施工、検査等のあらゆる建設生産プロセスにおいてICTを全面的に活用する取り組み(ICT活用工事)では、国土交通省において、図-2のように必要な積算や技術基準等の整備を進めてきた。令和元年度の取り組み状況は、令和元年度末時点において、直轄工事におけるICT活用工事の公告件数2,397件のうち1,890件の、約8割で実施している。ここに、ICT活用工事とは、以下に示すICT活用における施工プロセスの各段階においてICTを全面的に活用する工事である。
 
【施工プロセスの各段階】
①3次元起工測量
②3次元設計データ作成
③ICT建設機械による施工
④3次元出来形管理等の施工管理
⑤3次元データの納品
 
加えて、今般の新型コロナウイルス感染症を踏まえ、感染症リスクに対しても強靱な経済構造の構築を加速することが喫緊の課題である。このため、インフラ分野においても、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の加速化に着手したところである。デジタル・トランスフォーメーションは、単なるデジタル化ではなく、これまでの常識にとらわれることなく、公共サービスの変革や、業務、組織、プロセス、建設業や国土交通省の文化・風土や働き方を変革し、国民、業界、職員への貢献を目指す取り組みである。
 
このDXの基盤として、調査・測量・設計から施工、維持管理に至る建設生産プロセスを3 次元データ(BIM/CIM)でつなぐ取り組みを推進する必要がある。BIM/CIMを導入することで、建設生産・管理システム全体を見通した施工計画、管理などのコンカレントエンジニアリング、フロントローディングの考え方を実施していくことが可能となる。国土交通省は、平成24年度から橋梁やダム等を対象に導入し、令和元年度は、大規模構造物の詳細設計において、BIM/CIMを原則適用とする等、適用拡大に取り組んできたところである。こうした中、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機として、国土交通省では、強靭な社会経済構造の構築に向け、公共工事の現場のデジタル化を進め、非接触・リモート型の働き方への転換等を強力に推進しており、一つの目標として、2023年度までに小規模なものを除く全ての公共工事でBIM/CIM活用に転換することとしている。
 
インフラ分野のDXの加速化に向け、国土交通省では、省横断的に取り組みを進めるべく、「国土交通省インフラ分野のDX推進本部」を令和2年7月29日に設置したところである。
 
 

インフラ分野のDXの具体的取り組み

去る令和2年10月19日に第2回インフラ分野のDX推進本部を開催し、インフラ分野のDX施策概要を公表した。この中で、大きく4つの方向性で取り組みを推進することとしている(図-3)。
 

インフラ分野のデジタル・トランスフォーメーションで実現するもの

図-3 インフラ分野のデジタル・トランスフォーメーションで実現するもの




1点目は、「行政手続きや暮らしにおけるサービスの変革」である。
 
これは、デジタル化による行政手続き等の迅速化や、データ活用による各種サービスの向上を図る取り組みである。
 
具体的には、特車通行手続き等の迅速化や港湾関連データ基盤の構築等による行政手続きの迅速化に加え、ITやセンシング技術等を活用したホーム転落防止技術の活用やETCによるタッチレス決済の普及等に取り組むこととしている(図-4)。
 
行政手続きや暮らしにおけるサービスの変革

図-4 行政手続きや暮らしにおけるサービスの変革




2点目は、「ロボット・AI 等の活用で人を支援することによる、現場や暮らしの安全性の向上」である。
 
これは、ロボットやAI等の活用により危険作業や苦渋作業の減少を図るとともに、経験が浅くても現場で活躍できる環境の構築や、熟練技能の効率的な伝承等に取り組むこととしている。
 
具体的には、無人化・自律施工による安全性・生産性の向上やパワーアシストスーツ等による苦渋作業の減少による安全で快適な労働環境の実現、AI等による点検員の判断支援やCCTVカメラ画像を用いた交通障害自動検知等によるAI等を活用した暮らしの安全確保、人材育成にモーションセンサー等を活用するなど熟練技能をデジタル化した効率的な技能習得等の取り組みである(図-5)。
 
ロボット・AI等活用で人を支援し、現場や暮らしの安全性を向上

図-5 ロボット・AI等活用で人を支援し、現場や暮らしの安全性を向上




3点目は、「デジタルデータを活用した仕事のプロセスや働き方の変革」である。
 
これは、調査・監督検査用務における非接触・リモートの働き方の推進や、データや機械の活用により日常管理や点検の効率化・高度化を図る取り組みである。
 
具体的には、衛星を活用した被災状況把握等による調査業務の変革、画像解析や3次元測量等を活用した監督検査の効率化やリモート化に加え、AI活用や技術開発により点検・管理業務の効率化等を図る取り組みである(図-6)。
 
デジタルデータを活用し仕事のプロセスや働き方を変革

図-6 デジタルデータを活用し仕事のプロセスや働き方を変革




4点目は、「DXを支えるデータ活用環境の実現」である。これは、スマートシティ等と連携し、データの活用による社会課題の解決策の具体化に加え、その基盤となる3次元データの活用環境を整備する取り組みである。
 
具体的には、都市の3次元モデルを構築し、各種シミュレーションによるユースケースの開発に加え、データ活用の共通基盤となる位置情報の基盤整備、さらには3次元データの保管・活用や通信環境の整備等を進める取り組みである(図- 7)
 
DXを支えるデータ活用環境の実現

図-7 DXを支えるデータ活用環境の実現




 

おわりに

以上、国土交通省が推進しているインフラ分野のDXの取り組みについて紹介した。コロナを契機に時代の転換点を迎える中、陸海空のインフラの整備・管理により国民の安全・安心を守るという使命と、より高度で便利な国民サービスの提供を担う国土交通省が、省横断的に取り組みを進め、社会を変革する先導役となることを目指していきたい。
 
一方、それぞれの取り組みを推進することは重要だが、こうした取り組みで得られたデータ等を連携し、横断的に活用することにより新たな価値を創造していくことも重要な取り組みである。このため、各種データを連携する基盤として、「国土交通データプラットフォーム」の構築にも取り組んでいるところである(図-8)。
 

国土交通データプラットフォームで実現を目指すデータ連携社会

図-8 国土交通データプラットフォームで実現を目指すデータ連携社会




国土交通省における所管分野のDXの推進と合わせて、省内各分野のデータとの連携を進めるとともに、官民からさまざまな提案を募り、利活用方策を具体化して発信を行うことにより、プラットフォームを活用した価値の創造にも取り組んでいきたい。
 
データとデジタル技術の活用により、インフラ分野における変革を加速すべく、部局の垣根を越え、省一丸となり取り組みを進める所存である。
 
 
[参考文献]
1)経済財政運営と改革の基本方針2020
 (令和2年7月17日閣議決定)
 
 
 

国土交通省 大臣官房 技術調査課 課長補佐 中西 健一郎

 
 
【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年


 
 
 



国土交通省直轄土木工事における遠隔臨場の試行について

2021年7月19日

 

はじめに

人口減少社会を迎えた現在、建設産業は働き手の減少を上回る生産性の向上等が求められている。また、建設業就業者数の高齢化が進行し、中長期的な担い手の確保・育成等に向けての、働き方改革を進めることも重要な施策となっている。
 
このような現状を打破するために、国土交通省では、平成28年より「建設現場の生産性革命」に向け、i-Constructionを推進しており、ICT(情報通信技術)の活用やコンクリート工の規格の標準化、施工時期の平準化をトップランナー施策として位置付けている。また令和元年6月には公共工事の品質確保の促進に関する法律が改正され、災害時の緊急対応の充実強化、調査・設計の品質確保とともに、情報通信技術の活用等による生産性向上への取り組みや働き方改革の推進が位置付けられた。このように発注者の責務として、現在および将来にわたり、より良い品質のインフラを国民に提供するため監督・検査内容の充実、体制の確保と生産性向上が必要とされている。
 
一方で、令和2年には新型コロナウイルス感染症拡大防止を目的とし、建設現場においても人と人が密になる環境を避けるための非接触・リモート化を推進しているところである。
 
本稿は、ICT技術の活用により、建設現場の生産性向上とともに、公共工事の品質確保、品質確保の高度化の取り組みとなり、また非接触・リモート化の促進が期待される施策の1つである「建設現場における遠隔臨場の試行」について紹介する。
 
 

改正品確法と情報通信技術の活用

公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)は、公共工事の品質確保に関し、基本理念を定め、国等の責務を明らかにするとともに、 公共工事の品質確保の促進に関する基本的事項を定めることにより、公共工事の品質確保の促進を図り、国民の福祉の向上および国民経済の健全な発展に寄与することを目的としている。
 
平成26年の改正では発注者の責務として、「工事中及び完成時の施工状況の確認及び評価を適切に実施すること」が盛り込まれ、また、工事に関する技術基準の向上に資するために必要な技術検査を行うとともに、要領や技術基準を策定することが盛り込まれ、これまで各地方整備局が制定していた要領等が厳格に法律に位置付けられた。
 
令和元年の改正では、建設業・公共工事の持続可能性を確保するため、働き方改革の促進とともに、生産性の向上が急務として、発注者の責務として「公共工事等の監督及び検査並びに施工状況等の確認及び評価に当たっては、情報通信技術の活用を図る」ことが、受注者においては「情報通信技術を活用した公共工事等の実施の効率化等による生産性の向上」と盛り込まれた。
 
改正品確法を受けて、現状における、受・発注者ともに限られた人員の下で監督・検査のさらなる充実を図るため、①合理的で不正の抑制に効果的な監督・検査方法、②受発注者相互による新たな品質管理マネジメントのあり方について、情報通信技術の活用の検討を進めている(図-1)。
 

情報通信技術の活用(品確法より抜粋)

図-1 情報通信技術の活用(品確法より抜粋)




 

監督検査における情報通信技術の活用の検討

施工データの改ざんなど不正行為を抑制・未然に防ぐとともに、現場での確認作業の効率化に寄与することを期待できるものとして、施工状況の映像記録の保存、施工データの自動計測やクラウド管理等のICT(IoT)の導入を検討している。
 
ビデオ撮影による施工状況を記録・保存することで、見られていることによる不正行為の抑止効果や工事現場の見える化による不安全行動の抑止、さらには、近景での撮影により、映像の解析技術などを併用することで映像記録・保存したデータを出来形確認に活用し、監督・検査業務の効率化へも寄与することが期待できる。
 
これらの技術の導入により「不可視部分の施工状況把握の充実」「不正行為の抑制」「確認作業の効率化」「工事書類の削減」の効果も発揮されると考える。
 
こうした技術の活用に当たり、実現場での試行工事を行い、「映像のみで施工状況を把握する方法」「データ改ざん等を防止する技術の確立」「ICT導入に関する基準類の整備」などの考えられる課題に対応検討していく。
 
また、検証に当たっては政府が科学イノベーションの創出に向けて平成30年度に創設した「官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)」の制度を活用して、建設現場の生産性を飛躍的に向上するプロジェクトにより選定されたコンソーシアムによる建設現場等でのさまざまなICT(IoT)の活用の検証を実施しており、令和2年度においても検証を実施している。
 
 

建設現場における遠隔臨場の試行

『遠隔臨場』とは、ウェアラブルカメラ等による映像と音声の双方向通信を使用して「段階確認」、「材料確認」と「立会」を行うものである。遠隔臨場の効果としては、発注者は事務所・出張所・詰め所等から施工現場への往復の移動時間を削減することができる。また、受注者は監督員の臨場における日程調整や立会待ちによる施工時間のロスを防ぐことができるため、両者にとっての業務効率化に寄与すると考えられる。図-2、3に概要と効果のイメージを示す。
 

遠隔臨場の概要

図-2 遠隔臨場の概要




遠隔臨場の効果

図-3 遠隔臨場の効果




遠隔臨場については、平成29年度から東北地方整備局において一部の工事で試行を開始し、平成30年度からは中部地方整備局においても試行を実施している。その結果、受注者における「段階確認に伴う手待ち時間の削減や確認書類の簡素化」や発注者(監督員)における「現場臨場の削減による効率的な時間の活用」等の有用性が確認されたため(図-4)、令和2年3月に「建設現場の遠隔臨場に関する試行要領(案)」(以下、「試行要領」という)、「建設現場における遠隔臨場に関する監督・検査試行要領(案)」(以下、「監督要領」という)を策定し、直轄土木工事の「段階確認」、「材料確認」と「立会」において、遠隔臨場を試行ができるようにした。
 
本要領は、遠隔臨場を適用するにあたり、受発注者の作業効率化を図るとともに、契約の適正な履行として施工履歴を管理するために、以下の事項について適用範囲や具体的な実施方法と留意点等を示したものである。
・適用の範囲
・遠隔臨場に使用する機器構成と仕様
・遠隔臨場による段階確認等の実施および記録と保管
過年度の遠隔臨場試行における意見

図-4 過年度の遠隔臨場試行における意見



1)適用範囲

遠隔臨場の機器を用いて、『土木工事共通仕様書(案)』に定める「段階確認」、「材料確認」と「立会」を実施する場合に適用する。
 
受注者がウェアラブルカメラ等により撮影した映像と音声を監督職員等へ同時配信を行い、双方向の通信により会話しながら確認し、試行内容に応じて録画するものである。
 
ウェアラブルカメラとは、ヘルメットや体に装着や着用可能(ウェアラブル;Wearable)なデジタルカメラの総称であり使用製品を限定するものではない。一般的なAndroidやi-Phone等のモバイル端末を使用することも可能である。
 
ウェアラブルカメラ等の機器を用いて、映像と音声の同時配信と双方向の通信を行うことにより、監督職員等が確認するのに十分な情報を得ることができた場合に、臨場に代えることができるものとする。監督職員等が十分な情報を得られなかったと判断する場合には、受注者にその旨を伝え、通常どおりの段階確認を実施する。
 
なお、録画を必要とする場合は、確認実施者が現場技術員の場合であり、監督職員が実施する場合は、録画や写真は不要として、提出書類の削減に資する配慮も行っている。 
 
1)適用範囲

2)使用機器と仕様

遠隔臨場に使用するウェアラブルカメラ等の機器は受注者が準備、運用するものとする。
 
(1)映像と音声の「撮影」に関する仕様
本試行に用いるウェアラブルカメラ等による映像と音声の「記録」に関する仕様を次に示す。なお、映像と音声は、別々の機器を使用することができるものとし、夜間施工等における赤外線カメラや水中における防水カメラ等の使用や固定カメラの使用なども妨げるものではない。
 
機器の仕様については試行した現場においてはズーム倍率では画像が粗くなり配筋状況を確認する上からハイスペックを望む声を反映している。ただし、令和2年度の試行工事においては、機器の仕様の運用を一部変更している(後述)。
2)使用機器と仕様
※令和2年度の試行における仕様については「6)令和2年度における遠隔臨場の試行」参照
 
(2)映像と音声の「配信」に関する仕様
ウェアラブルカメラ等にて撮影した映像と音声の「配信」に関する仕様を次に示す。ただし、令和2年度の試行においては、機器の使用と同様に、転送レートの運用を一部変更している。
(2)映像と音声の「配信」に関する仕様
※令和2年度の試行における仕様については「6)令和2年度における遠隔臨場の試行」参照
 

映像と音声を送信しモニターで確認するシステムは、複数の通信機器などのメーカーがクラウドも含めたシステムを構築しているので、受注者がどの会社を選定するかは自由である。また、試行ではウェアラブルカメラと撮影状況の確認用に手元にモニターをセットしている事例がある。

3)実施

段階確認等を行う箇所については、受注者がウェアラブルカメラ等により撮影した映像と音声を監督職員等へ同時配信を行い、双方向の通信により会話しながら監督職員が指定して確認する。
 
受注者は、「工事名」、「工種」、「確認内容」、「設計値」、「測定値」や「使用材料」等の必要な情報について適宜黒板等を用いて表示する。記録に当たり、必要な情報を冒頭で読み上げ、監督職員等による実施項目の確認を得ること。また、終了時には、確認箇所の内容を読み上げ、監督職員等による実施結果の確認を得ること。

4)記録と保存

受注者は、遠隔臨場の映像と音声を配信するのみであり、記録と保存を行う必要はないとして書類の省力化を図っている。
 
ただし、確認実施者が現場技術員の場合は、映像と音声の録画を必要とする。

5)留意事項 

工事記録映像の活用に際しては、画面や音声に移るプライバシーに関しての特有の問題があるので留意する必要がある。
 
・被撮影者である当該工事現場の作業員に対して、撮影の目的、用途等を説明し、承諾を得ること。
・作業員のプライバシーを侵害する音声情報が含まれる場合があるため留意すること。
・施工現場外ができる限り映り込まないように留意すること。
・受注者は、公的ではない建物の内部等見られることが予定されていない場所が映り込み、人物が映っている場合は、人物の特定ができないように留意すること。

6)令和2年度における遠隔臨場の試行

令和2年度においては、遠隔臨場の試行拡大と新型コロナウイルス感染拡大防止のため、遠隔臨場により取り組みやすくなるように「建設現場における遠隔臨場の令和2年度の試行方針」(以下、「令和2年度方針」という)を策定した。
 
令和2年度試行方針においては、試行における費用負担の考え方について、発注者指定型として試行するものについては、試行にかかる費用の全額を技術管理費に積み上げ計上し、発注者が負担することとした。また、新型コロナウイルス感染拡大防止対策として試行する場合は、発注者指定型として試行することとしており、感染症対策としても積極的に試行できるようにした(図-5)。
 

令和2年度における遠隔臨場の費用負担の考え方

図-5 令和2年度における遠隔臨場の費用負担の考え方


 

また、“映像と音声の「撮影」に関する仕様”および“映像と音声の「配信」に関する仕様”については、それぞれ試行要領に示す仕様から変更することを可としており、より試行に取り組みやすくなるようにした(表-1)。

表-1 令和2年度方針における各仕様

表-1 令和2年度方針における各仕様


 

令和2年度においては、全国の直轄工事現場で560件程度の試行工事を実施する予定(令和2年9月末時点)であり、全国的に積極的に、遠隔臨場の試行に取り組まれている。
 

  • 写真-1 監督員の確認状況

    写真-1 監督員の確認状況

  • 写真-2 撮影者

    写真-2 撮影者

  • 写真-3 現場の状況

    写真-3 現場の状況


 

おわりに

令和2年は、新型コロナウイルス感染症に係る緊急事態宣言時に河川や道路などの公物管理、公共工事については事業の継続が求められ、受発注者双方においてテレワークの推進や「三つの密」の回避等の感染防止対策を徹底することとして対応しているが、建設現場におけるリモート・非接触といった視点では、遠隔臨場の活用は有効であり、引き続き積極的な活用を求めている。
 
今後、令和2年度における多くの試行結果を元に試行要領他の内容を見直し、早期の社会実装に向けて取り組んでまいりたい。あわせて、「段階確認」、「材料確認」と「立会」のみでなく、中間検査や完成検査においての活用も見据えて、検討を続けたいと考えている。
 
遠隔臨場の全国的な試行は開始したばかりであり、機器の確保や通信回線、費用負担の考え方等の課題も考えられるが、今後もますますの取り組み拡大により、建設現場の生産性向上・効率化、また感染症改題防止を進めていく。
 
 
 

国土交通省 大臣官房 技術調査課

 
 
【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年


 
 
 



リモートワークをはじめとした働き方改革について

2021年7月12日

 

はじめに

梓設計では新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響を受けて、2020年2月25日から全社員を対象に原則在宅勤務とし、リモートワークを開始した。そして本稿を執筆している現在(2020年12月)も、出社とリモートワークを組み合わせた「ミックスワーク」を推奨中であり、全社の出社率は約4割となっている。コロナ禍以降のリモートワークへの順調な移行については、各方面からの注目も高いが、始まりは、働き方改革の一環として行ったフリーアドレス制の導入からであった。リモートワークをはじめとして、新しい働き方を導入した、幾つかの具体的な事例を挙げながら、これからの働き方についての可能性を考えてみる。
 
 

フリーアドレス制の導入

今から4年ほど前の2016年、本社(当時天王洲)の狭隘化に伴う座席不足を補うため、一部の部署でフリーアドレスを試験的に導入した。当時は個人で保管している紙の図面や書類も多く、設計事務所でフリーアドレスなどはあり得ない、といった空気感であった。しかし、このままでは座席が足りず、別の場所を確保する必要があり、時間的にも別の場所を探す時間もなく、半ば強制的に導入に踏み切った。導入に際しては担当部門の役員自らが先頭に立ち、自らも含めフリーアドレスにするということでスタートした。
 
フリーアドレスの必須アイテムといえばノートPC、無線LAN、個人用ロッカーであるが、当時当社が実施したフリーアドレスは、パソコンはデスクトップPCのまま席に固定、LANは有線のまま、社員が空いている席を見つけて移動するといったスタイルであった。唯一個人用ロッカーのみ設置、自分の持ち物は個人用ロッカー(45cm×50cm)に収まる荷物のみといった運用であった。
 
最初にフリーアドレスの対象となった設備部門の社員からは、「荷物を減さられたうえ、席まで取り上げられて…」といった不平不満の声があがり、これで良かったのだろうかとも思った。しかし数カ月が過ぎ、空いている席に自由に座れる運用や、個人の資料を極力なくし、資料は部内共通とする運用が定着してくると、以前の固定席の時のような書類の山はなくなった。席の周りはいつも整理整頓され、資料が共有化されることで無駄な資料が減り、欲しい資料もすぐに見つけることができるといった良い面が多く出てくるようになった。すると社員の声も変わり、「フリーアドレスなかなかいいね」といった意見に変わってきた。
 
こうなると社長をはじめ、ほかの役員からもフリーアドレスに賛同する意見が多く挙がり3年後に迎える本社移転での全席フリーアドレスのきっかけとなった(写真-1)。
 

フリーアドレス制の導入

写真-1




 

働き方改革の推進と情報環境の整備

フリーアドレスの導入に伴い、情報機器の整備も併せて実施した。全社導入済みであったiPhoneに加えて、フリーアドレスや外出先からの社内システム利用に合わせて希望者にiPadpencilを配布した。するとiPadで資料を持ち運んだり、図面をチェックしたりすることでペーパーレス化が進み、コピーの利用料やコピー用紙が削減されるようになった。また、資料はデータ化されることにより、部内やプロジェクト関係者との共有が進み、業務の効率化が図られるようになった。
 
この頃より育児や家族の介護を行う社員を対象に在宅勤務の試験導入を行った。当初は週2日以内の在宅勤務を原則として始めたが、それぞれの社員の抱えている環境が違い一概に日数を定めるのは在宅勤務のメリットが生かせないことも見えてきた。そのため可能な限り各社員に合わせた利用日数を選択できるようにし利用しやすい環境を整えていった。
 
システム環境についてはノートPCを貸与しVPNから社内ネットワークに接続する仕組みとした。また、BIMデータや動画を扱う場合は光回線でも動きが悪くなることからリモートで社内ハイスペックPCを操作することで対応した(図-1)
 

情報環境の整備を進めていたことで、スムーズにリモートワークへ移行が可能となった

図-1




 

本社移転とさらなる働き方改革

2019年8月、本社を天王洲から羽田に移転。移転とともに働き方が大きく変わった。新しいオフィス(羽田スカイキャンパス:HSC)は約5,300㎡のワンフロアで、社長室も役員室もなく、全社員フリーアドレスで働く空間となった。背景には前段で述べた通りの流れがあったわけだが、加えてコミュニケーションを活性化する狙いがあった。移転前の天王洲オフィスは4フロアの構成で、他に羽田に分室があり社内コミュニケーションが取りにくい環境であった。同じビル内であってもフロアが違うと社員同士知らない人もいたり…といった状況であった。それがワンフロアになったことで顔が見えるようになり、新しいコミュニケーションが生まれるようになり活性化された(図-2、次頁写真-2)。また、移転と同時に全社員にノートPCを配布、無線LANでどこからでも社内ネットワークに接続できる環境とした。ほかにもWeb会議(webex)システムを導入することで、社内はもとより、社外からでも会議に参加できる仕組みを整えた。
 

本社移転とさらなる 働き方改革

図-2




羽田への本社移転は良いことばかりではなく不便になった点もあった。一つは都心までのアクセス時間である。新オフィスから都心に出るには1時間強の時間を要するため、今までのように「都心で打合せを終えてから会社に戻り、また打合せに出て行く」ということをすると、多くの時間が割かれてしまうようになった。これを克服するために取り入れたのが法人会員制のサテライトオフィスである。
 
例えば都心で「次の打合せまで数時間あるがオフィスに戻るには時間が足りない」などといった場合に隙間時間を有効に効率よく働けるようになり、多様な働き方が加速した。
 

一人ひとつの個人ロッカーに荷物をしまう

一人ひとつの個人ロッカーに荷物をしまう

全社員、全席フリーアドレスの開放的なワークスペース

全社員、全席フリーアドレスの開放的なワークスペース

写真-2


 

新型コロナウイルスによるテレワークの推進

多方向から働き方改革を推し進めてきたが、テレワークの本格的実施に関しては、2020年に開催予定だった「2020東京オリンピック・パラリンピック」の際の混雑緩和対策を、一つの目安として準備を進めていた。ところが周知の通り、2020年初めからの新型コロナウイルスの感染拡大により、約半年早い実地に踏みきることとなった。
 
テレワークに関しては、既に実例とフィードバックによる、サーバーへのアクセス強化やPCのスペック改善、マニュアルの整備などを行っていたためかなりスムーズに移行・対応することができた。また、テレビ会議に関してはハード的には整備されていたが、いざ全社員が在宅勤務となり使いこなせるかというとそうではなかった。特に役職が上の社員ほど、会社では若手がテレビ会議の準備をし設定された状態でテレビ会議を行っていたため、突然在宅勤務となり全て自分で設定するのに苦労していたようだ。それでも使い慣れてくると自らWeb飲み会を企画するなど、今では全社員が当たり前のようにテレビ会議システムを使いこなしている。
 
また、緊急事態宣言が発動された4月7日以降は世の中の多くの企業が在宅となり当社も社長指示としてさらなる在宅勤務の徹底を図った。すると新たな問題が浮かび上がってきた。
 
一つはやはりサーバーへの接続である。在宅勤務期間中はスマホでのテザリング機能を使う社員が多く「接続の速度が遅い」、「接続が切れてしまう」といった意見が続出した。同時に通信コストも契約容量を大きく上回り問題点として挙げられた。通信料が最も上がった月は、前年同月で比較して約200万円以上の増加となり、早急な対応が求められた。
 
対策として、自宅に光回線およびWiFiルータの整備がされていない社員については新規導入を支援した。導入にかかる費用負担はもちろんのこと、月額ランニング費用についても既に導入済みの社員を含め毎月3,000円を通信費として会社が負担することとした。その結果、毎月の通信費を総体的に削減することができた。
 
またその他にも在宅で仕事を行う場合の住環境に違いが見受けられた。仕事ができる環境整備のため希望者には会社で利用している椅子や机、大型ディスプレーなどを貸し出すことで対応、極力会社と同じ環境で仕事ができるようにした。
 
5月25日、緊急事態宣言が解除されると今までの「原則在宅勤務」を「在宅主体の働き方」に若干規制を緩めたため少しずつ出社する社員も増え、外出しての打合せも増えてきた。同時にサテライトオフィスの利用を要望する声も上がってきたが、不特定多数が利用する会員制サテライトは感染防止の観点から利用は認めなかった。代わりに神田にある当社の関連会社のフロアを改修し、当社単独で利用できるサテライトオフィスを設置することで感染対策を取っての運用を開始した(写真-3)。
 

神田サテライトオフィス

写真-3 神田サテライトオフィス




 

ミックスワークにおける、未来に向けた働き方

現在は「原則、週に一回以上は出社」という形で、オフィスとリモートのミックスワークを行っている(図-3)。これも自粛期間中の在宅勤務を経験した社員たちからの、意見や要望による新たな働き方改革と言えるだろう。在宅勤務中は外出自粛期間とも重なり、特に独身の社員は他者との接触がほとんどなくなり、業務に関する疑問点や改善点を、先輩や上司にすぐに相談できないストレスや、メンタルに不安を覚える者も増えてきた。そうした社員の精神的なケアも含め、コミュニケーションが取れる環境としての週一回は出社を推奨している。
 
感染予防対策を万全にした上で、近くにいる先輩に質問をする、大事な打合せをリモートではなく対面にするなど、テレワークが抱える「人と直接に会えないストレス」を改善する方向へ持っていくことができた。
 
また、テレワークの仕組み作りやフットワーク軽く働くための環境整備だけではなく、働く社員の健康維持もしっかり対応していければと考えている。今年から当社は健康経営への取り組みも強化した。パフォーマンスを最大限発揮するためには社員の健康は欠かせないからである。その一助として希望者にはApple Watchを配布し、ウオーキング大会を実施する企画案等も出ている。またAIやIoTを利用して社員の健康増進に役立てたいという気風も強い。
 
以上、今回挙げた当社の取り組みは働き方改革のごく一部であり、改善点はまだまだ無限にあるだろうと感じている。これからも社員の働きやすい環境とは何かを考えながらさらなる働き方改革に取り組んでいきたい。
 

10の行動パターン別ガイドライン

図-3




 
 

株式会社 梓設計 執行役員 コーポ―レート部門代表 総務部長 櫻井 康裕

 
 
【出典】


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