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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

CALSの成果をCIMにつなげるBCPサポートシステムプロジェクト〜東日本大震災の被災地における実証実験〜《後編》

2014年2月20日

 

一般財団法人 日本建設情報総合センター 研究開発部 建設ICT推進グループ
主任研究員 富岡 光敏
グループ長 元永 秀
主任研究員 影山 輝彰

 
 

CIM

CIMのキックオフ

平成24年4月13日、JACICでは、基本構想の15年を振り返るとともに、建設生産システムのイノベーションに向けた新たなステージを展望するため「CALSの15年を振り返り、新たなステージへ〜建設生産システムのイノベーションに向けて〜」と題したセミナーを開催した。国土交通省技監の佐藤直良氏は基調講演の中で、建築分野で活用されている3次元データの建物モデルに部材等の属性情報を盛り込んだBIM(Building Information Modeling)の効果や、新宿労働総合庁舎へのBIM導入事例を紹介し、建設生産システムにおける建築と土木のBIMを総称する言葉としてCIMを提言され、建設産業の生産性を高めるためにはCIMの積極的な活用が重要であるとの内容であった。
 

CIM (Construction Information Modeling)とは

CIMについては「建設現場において、企画から調査、計画、設計、施工、維持管理の一連の過程における関連情報の統合・融合により、施工段階における品質や施工性の向上、維持管理段階における管理の高度化といった、新しい建設管理システムの構築」と述べられている。さらに、CIMの導入には①対象物の三次元の空間形状に加え、時間・コストの基本的な情報、②対象物の属性情報、③維持管理を考慮した計測機器の組み込み等の高度化の3つの要素が重要であると述べられている。
 
CIMの具体的なイメージは、公共事業の計画から調査・設計、施工、維持管理そして更新に至る一連の過程において、ICTを駆使して、設計・施工・協議・維持管理等に係る各情報の一元化および業務改善による一層の効果・効率向上を図り、公共事業の品質確保や環境性能の向上、トータルコストの縮減を目指すものである。
 
次にCIMの核となるデータモデルのイメージを図-8に示す。データモデルはCALSで実現できなかった統合データベース(質+情報)と3次元モデリング(形状+属性)により構築される。これはCIMにおける重要な施策になると考えられる。データモデルでは、データを受け渡しではなく、共通するデータを取りに行くといった発想により、建設生産システムの各フェーズの関係者全てが同一のモデルを同時にイメージすることができる。そのため、設計段階での検討に施工や維持管理の担当者が参画可能となり、高い品質の社会資本とサービスを提供することにつながる。さらに、目的化されることにより、シミュレーション、構造計算、施工等についてフロントローディングを実施することが可能となり、建設生産システム全体の改善につながると考えられる。
 

図-8 CIMデータモデルのイメージ

図-8 CIMデータモデルのイメージ


 
 

CIMに繋がるBCPサポートシステム

BCPサポートシステムプロジェクトの成果(具体的な利用状況とCIMへの手応え)

図-9 維持管理業務への適用可能性(例:道路巡回)

図-9 維持管理業務への適用可能性(例:道路巡回)


2012年11月現在、東北地方整備局の北上川下流河川事務所をはじめとした6現場で、モバイル機器としてタブレット端末やクラウドサービス等を活用して、どのような業務改善や品質確保の効果があるのか計測を開始し、一定のデータが整理できたところである。計測項目は、移動時間や移動距離、作業時間や保管スペース等に加え、タイムリーに判断を可能とする資料や図面が速やかに検索できるか等を調査した。
 
具体的な利用例は、図面や管理台帳および各種基準類をPDFデータとして電子図書館に登録し、現地での確認や打ち合わせ時にタブレット端末により閲覧したり、現地調査や巡回点検時に現地で撮影した写真をクラウドサーバにアップし即時情報共有を行うこと等である。このようにクラウドサーバとタブレット端末の連携およびタブレット端末自体の有効性が確認できた。また、現場ではよく利用されており、便利であるとの声をいただいている。さらに、受注者側でも同様にタブレット端末を利用して、既済検査時に写真を印刷せず、タブレット端末で確認をしている現場の事例も見られた。
 
図-10 タブレット端末の利用状況

図-10 タブレット端末の利用状況


 
検証の結果、BCPサポートシステムの効果としては、現場確認、打ち合わせ時のお互いの理解度の向上、時間短縮、手戻り防止などがあり、これらは当初想定していたBPRに有効である。これらの効果は、電子図書館をデータモデルと捉え、そのデータ(情報)を関係者間でいつでもどこでも共有し、業務の品質向上を図る点において、CIMの目指す効果につながるものである。なお、現場の事例であるが、修正等が容易である電子データでも、あまりにも修正頻度が高い場合は電子図書館への登録が追い付かない状況もでてきている。これは復興関係の工事において図面の修正が相当多いためである。この課題は、今後CIMのデータモデルを利用することにより、解決していけるものと考えられる。
 
また、数字には表れないが現場での対応に関して相当の効果があり、現場技術力(品質を見抜く力、施工・管理場面での判断力等)の向上支援等、今後の可能性は大きい。
図-11 写真管理サービスの利用状況

図-11 写真管理サービスの利用状況


なお、今回の検討では点検等維持管理業務への適用の可能性が高いことがわかった。図-9にイメージを示す。またタブレット端末(電子図書館サービス)、写真管理サービスの現場の利用状況を図-10、11に示す。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

今後の展開とCIMサポートプロジェクト

現在、6つの現場でBCPサポータとして寄り添い、日々の業務をサポートすることから取り組んでいる。各現場では、現場のニーズを出発点にしたアイデアや工夫が生まれている。その一例としては現地にタブレット端末を持参し、簡易TV会議と写真管理サービスを併用した正確な情報伝達や、録音アプリケーションの利用による議事録作成の補助等である。またICTは日々進化しており、CIMの核である3次元モデリングのソフト関係も整備されてきている。
 
今回、最先端のICTを、業務が輻輳し、多忙な作業に追われている被災地の復旧・復興の最前線にあてはめ、多忙な職員の方々自らが取り組み、サポートした結果、業務改善、効率化に明らかな効果を確認した。さらに品質向上を図るためには、最先端のICTを駆使するとともに一人一人の技術者がICTに向き合うことが重要である。これらはCIMが目指すものに通じるものである。
 
現在、国土交通省をはじめとした公共事業の現場では、ICTの導入を阻害する要因が多く、他産業に比べ業務改
善・品質向上は、大きく遅れている。このため、公共事業の現場で、最先端のICTの導入と普及を図り、寄り添った支援を行うCIMサポートプロジェクトを提案し、公共事業の現場においてCIMの積極的な活用をサポートし、業務改善による一層の効果・効率向上を図り、公共事業の品質確保や環境性能の向上、トータルコストの縮減に寄与していきたい。
 
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」
建設ITガイド2013
 
 



CALSの成果をCIMにつなげるBCPサポートシステムプロジェクト〜東日本大震災の被災地における実証実験〜《前編》

 

一般財団法人 日本建設情報総合センター 研究開発部 建設ICT推進グループ
主任研究員 富岡 光敏
グループ長 元永 秀
主任研究員 影山 輝彰

 

はじめに

「建設CALS整備基本構想」(以降、基本構想という)が平成8年4月に策定され、公共事業におけるCALSがスタートし15年が経過した。建設生産システム全体を対象として、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を用いたBPR (Business Process Reengineering:業務改善)を推進することを目指していた。
 
この15年間で大きな成果が得られたが、パーツとしての整備も多く、建設生産システム全体としての活用、展開に課題が残る状況といえる。具体的には、①電子入札は拡大したが、電子契約は未達成、②電子納品はルール化したが成果品の利活用は進んでいない等である。
 
平成23年には災害史上、未曾有の東日本大震災が発生した。現在、関係機関は東日本大震災からの復興等および国民の安全・安心の確保に総力をあげて取り組むとともに、震災を契機としてわが国が抱える諸課題を克服し、わが国の明るい未来を築くため、「持続可能で活力ある国土・地域づくり」を推進している。これらの取り組みの基礎となる建設生産システムのイノベーションには、これまでのCALSの成果をまとめあげ、具体的に実践する新たな方策が不可欠であると考えられた。そこで、JACICでは平成23年度より自主研究事業として、CALSの成果を最大限生かして被災地の復旧・復興の加速に資する「BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)サポートシステムプロジェクト」を立ち上げた。現在、一定の研究成果が整理されてきているが、その成果は国土交通省が今年度導入の検討を開始したCIMの推進に大きくつながるものである。
 
 

BCPサポートシステムプロジェクト

BCPサポートシステムの概要

今回のBCP サポートシステムは、新たにシステムを開発し、そのシステムを試行し、普及・展開するものではない。日々進展するICTを最大限に活用し、既に存在する公共事業に関する複数のシステムの機能を、人<BCPサポータ>によってつなげ、ワンストップサービスとして提供することで、BPRの推進を図ることを目指したプロジェクトである。本プロジェクトでのBCP対象期間は災害発生段階のみではなく、復旧・復興段階も含むものとした。
 
公共事業の各段階である、「計画」、「設計」、「工事」、「管理」そして、再度、「計画」へとつながる「建設生産システムの循環」の全てについて、これまで構築・利用されてきたサービスやシステムを対象とし、ワンストップサービスとして提供することを目指している。特に、被災地では、限られた人員で輻輳する現場を効率的・効果的にマネジメントすることが求められ、そのマネジメントに関わる課題が顕在化していると考えられ、今回提案するBCPサポートシステムを活用することが有効であると考えられる。BCPサポートシステムの概要を図-1に示す。
 

図-1 BCPサポートシステムの概要

図-1 BCPサポートシステムの概要


 

BCPサポートシステムプロジェクトの検討内容

図-2 BCPサポートシステムのイメージ

図-2 BCPサポートシステムのイメージ


BCP サポートシステムプロジェクトは、BCPサポータが受発注者の担当者に現地で寄り添い、担当者の新たな業務の増加にならないよう、日々の業務をサポートすることを通じて、公共事業におけるICTを用いたBPRの推進についてニーズを把握し、診断を行い、具体的な支援事項について提案を行うものである。そして提案するシステムを利用していただくことで、現在の業務がどのように変わるかを、受発注者の担当者に手にとって実感していただくことを目指している。
平成23年6月および7月に被災地の現地調査を行ったが、情報通信インフラについては、モバイル機器の無線通信環境は概ね良好であった。設備等の復旧に時間を要する有線通信より、無線通信の方が迅速で柔軟な対応が可能であり有効であった。また、CALSが取り組んできた各事項の具体的な効果事例として、名取川の工事現場で津波により現場事務所が流出したが、工事の情報共有システムを導入していたためデータの復元が可能となり、その後の出来高確認や支払いを円滑に進めることができた事例が確認された。
 
図-3 電子図書館サービス

図-3 電子図書館サービス


これらの事象からBCPサポートシステムのメニューとして、クラウドサーバを利用した工事の「情報共有システム」をベースに電子成果品や電子情報を利活用するための「電子図書館サービス」、日々発生する膨大な現場写真を効率的に整理・管理するための「写真管理サービス」の検討を行った。
これらはクラウドサーバとモバイル機器(タブレット端末)とを組み合わせたシステムによるサービスである。また、タブレット端末による簡易版TV会議システム等による現場の可視化等の検討を行った。BCPサポートシステム、電子図書館サービス、写真管理サービスのイメージを図-2、3、4に示す。
 
 
 
 
 
 
図-4 写真管理サービス

図-4 写真管理サービス


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

CALSのレビュー

図-5 CALSの成果事例(激特事業に景観を)(1/3枚)

図-5 CALSの成果事例(激特事業に景観を)(1/3枚)


BCPサポートシステムのメニューを検討するきっかけとなった、名取川の工事現場における工事の情報共有システムの導入事例のように、CALSの成果を最大限生かすために、JACICはCALSのレビューを行ってきている。その中で、分水路整備の設計検討でのICT活用事例は、データモデルと情報共有ツールを利用し、ICTを駆使して短期間に景観に配慮した事業を実施したCALSの成果事例である。この事例は、JACICの助成研究において熊本大学小林教授の空間情報デザイン研究室が実施した研究である。(図-5、6、7)
 
平成18年7月鹿児島県川内川流域で記録的豪雨が発生し、河川激甚災害対策特別緊急事業(激特事業)の一環として、奇岩奇石の豊な自然環境が広がる曽木の滝公園地で、外水氾濫を防ぐための分水路整備事業が計画された。従来の激特事業では時間的余裕がないため、景観に配慮した設計は困難であった。しかし、3次元モデルとコミニュケーションツール(情報共有システム)を利用して、短期間で景観を保全した事業を実施した。
 
図-6 CALSの成果事例(激特事業に景観を)(2/3枚)
 
 
 
 
 
 
 
具体的には、3次元モデルを用いた設計により、景観検討に水理計算をフィードバックさせ、その結果の景観を3次元モデルにより確認することを繰り返し、最終案を決定した。併せてコミニュケーションツール(情報共有システム)を利用し、産官学の各関係者が時間と距離の壁を越えて協議を進め、短期間での合意形成により事業を推進した。
 
この事例において利用している3次元モデルとコミニュケーションツール(情報共有システム)は、CIMの重要なツールである。
図-7 CALSの成果事例(激特事業に景観を)(3/3枚)

図-7 CALSの成果事例(激特事業に景観を)(3/3枚)


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
《後編》へ
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」
建設ITガイド2013
 
 



ゼネコン目線のCIM「施工CIMの行方」 《その3》

2014年2月7日

 

社団法人 日本建設業連合会 土木本部 公共工事委員会ICT部会 情報共有専門部会長
株式会社 大林組 杉浦 伸哉

《その2》を読む
 

施工CIMの課題

今までは施工に利用するための事例を述べたが、CIMの本質は何かを理解せずに、施工で利用する方法ばかり考えても、あまり意味はない。
 
以下の模式図を見ていただきたい。
 
模式図1
 
施工「CIMモデル」を利用するのは、建設プロセスの中で「施工部分」だけである。今回のレポートで紹介しているのは、この「施工部分」の活用のさらに「一例」を示しているに過ぎない。数量管理や品質管理・施工管理での利用については、それぞれの施工業者が、自らの生産性向上のために実施する内容であるため、施工での利用方法は多岐にわたる。
 
公共構造物を構築する施工業者としての社会的使命は、長期にわたり、公共構造物としての機能を果たすものを構築することである。
 
長期にわたり、公共構造物としての機能を果たすためには何をすべきか。施工中の品質管理はもちろんのこと、機能を維持するためには、維持管理を行うことが重要である。
 
維持管理を実施するために必要な情報は、われわれ施工業者が施工中に管理している品質記録だといわれているが、本当にそれだけであろうか。
 
今回の施工CIMは、この維持管理に向けた取り組みの一環として見ることも重要ではないかと感じている。
 
模式図2
 
上記のように、施工時には維持管理に必要な情報があり、その部分をCIMで取り扱うことができれば、維持管理への取り組みについてさらに広く活用の範囲が広がるはずである。そのため、「施工CIM」は設計時の不具合確認という部分だけにとどまらず、施工時に実施している計測データとの関連を強化することが、重要ではないかと思っている。実際に施工でモデルを扱ってみて、その可能性を強く感じる。
 
すでに、施工時に計測した情報をモデルとリンクさせ、以後の維持管理に役立てるような取り組みも行われており、今後これらのデータを維持管理に役立てるための取り組みがますます増えていくであろう。
 
 

CIMの行方

CIMという概念を土木業界に根付かせるために新たな取り組みがスタートしたわけであるが、これからのCIMの行方はどうなるのであろうか。
 
CIMは誰にメリットのある仕組みなのか。施工分野は施工者が、設計部分は設計者がメリットを求める従来の方法は、これまでのCALS/ECで効果がないことは明白である。
 
個別最適化を求めると、従前のデータが次のフェーズに引き継がれず、また、データの欠落が生じる。この仕組みの欠陥は何かというと、「データの受け渡し」が問題なのである。これからは受け渡すのではなく、1つのデータをそれぞれのフェーズの関係者で「共有」することが求められているのである。
 
「プロダクトモデル」を「情報共有」し、各フェーズにおいて必要な情報を付加していく
 
「プロダクトモデル」を「情報共有」し、各フェーズにおいて必要な情報を付加していく。これによってCIMという概念が構築される。
 
このCIMという概念をマネジメントするのは誰か。そう、このマネジメントを実施する人こそが公共構造物の構築・維持管理責任者の発注者なのである。
 
そのために国土交通省は2012年7月からCIM制度検討会とCIM技術検討会という2つの検討会を立ち上げ、制度面を中心とした検討と、CIMというデータを効果的に利用するための検討の両面からの対応を視野に入れて検討を始めた。
 
われわれ施工分野に携わる日本建設業連合会は、CIM制度検討会とCIM技術検討会の両検討会に参加し、CIMという概念を成功させるために全体最適化を見据えながら、施工分野における意見を述べている。と同時に、CIMを施工部分における生産性向上にも寄与するものとするため、「プロダクトモデル」の効果的活用と「情報共有」基盤の活用しながら、その有効性をいち早く確認すべく日々試行錯誤を行っている。
 
今回の動きがCALS/ECと同じ轍を踏まぬように、心眼をもって進めていきたい。
 
 
 
 

ゼネコン目線のCIM「施工CIMの行方」《その1》
ゼネコン目線のCIM「施工CIMの行方」《その2》

ゼネコン目線のCIM「施工CIMの行方」《その3》
 
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」
建設ITガイド2013
 
 



ゼネコン目線のCIM「施工CIMの行方」 《その2》

 

社団法人 日本建設業連合会 土木本部 公共工事委員会ICT部会 情報共有専門部会長
株式会社 大林組 杉浦 伸哉

《その1》を読む
 

施工でのCIMモデルの活用方法

では、CIMモデルを実際に施工で活用する場合の方法について、一例ではあるが、実例を交えて見ていこう。今回は地下躯体を構築する工事で、実際にCIMモデルを取り入れてみた。
 
われわれは施工会社であるため、CIMの最大の効果であるといわれている設計段階における効果はあまり恩恵を受けない。
 
また、現状では、発注者から発注図として貸与されるデータは2次元CADデータしかないため、まずは2次元CADデータから3次元のモデルを起こすことから始めた。
 
施工段階で作成したモデルを使い、どのように施工管理を行うかという設計図を構築することにした。
 
CIMプロダクトモデル
 
施工フェーズを中心として、モデルから何ができるかを検討したが、①数量算出、②工程連携、③過密配筋などの干渉チェック、④構築手順モデルを使った施工打合せ、といった実際の施工で役立つ部分からスタートしてみることとした。
 
躯体構造物を2次元CADデータからモデルを約1週間かけ、梁と柱などの属性情報を入れながら作成した。この地下躯体構造物は建築物と似ているので、BIMソフトを活用することで、比較的簡単に作成することができた。土木構造物でも、構築するものによっては、BIMソフトを利用することができる。ただし、構築構造物が「矩形形状」ではないため、端部など躯体形状が矩形でないものは作成に当たって困難を極めた。
 

躯体構造物のモデル作成
躯体構造物のモデル作成

 
さて、作成したモデルを施工時におけるコンクリート打設数量管理に用いる「CIMモデル」に構築するには、躯体同士の重なりがないモデルにしなければならない。
 
BIMソフトにはそのような機能が備わっており、矩形同士の形状であれば対応は簡単だが、曲面など矩形でないもの同士の重なりの場合は、形状を分割しなければならない。それでもBIMソフトの機能を駆使することでなんとか作成できた。また、実際に躯体打設手順通りにモデルを構築しないと、施工管理では利用できないため、モデルの作成段階で実際の施工と同じ打設手順を意識することとなった。ここが今回のモデル作成の大きなポイントであり、従来の3次元モデルをプレゼンレベルで作成していた時との違いである。
 
次の図を見ていただきたい。
 
比較図
 
上は2次元CAD図で、断面図だけを見ると、特に問題ないように見えると思うが、3次元モデルにした時に、上部の梁が地下水を流す斜路の上部にかかり、水量の有効断面が確保できない状況となっているのが分かった例である。
 
このように、2次元図面から施工時に型枠を作り始め、はじめて問題点が明らかになった場合、施工を中断し、その問題点について発注者と協議する必要があるが、3次元モデルを活用した場合は、このような設計図では表現されにくい部分を可視化し、事前に問題点を明確化できるといった機能に長けていることを理解していただけると思う。
 
可視化することのメリットは、経験豊富な土木技術者だけではなく、誰でも同じ問題点を同じ見え方で共有できるということである。
 
また施工で実際に生コン打設をするに当たり、特にハンチのある部分は、ハンチの下で打ち継ぎ目を作るのが一般的である。
 
ところが、単に3次元モデルを作成する場合、往々にして「梁」と「ハンチ」をそれぞれモデル化して合体する方法がよく取られる。しかし、その3次元モデルでは生コン打設のための数量は出せても実際の施工では利用できない。
 
われわれ施工業者が利用する「数量表」というものは、このように施工手順を反映した「数量表」であり、「CIMモデル」にはその考え方が反映されているのが一般的である。
 
見た目が同じでも属性情報が違う
 
これらのことを注意した上で、モデル構築時には属性情報と併せて、今回の構築物に関連した属性情報を付加することにより、モデルから一気に次頁のような数量表が出てくる。
 
この機能を利用し、モデルをさらに分割して管理することで、当日の数量打設量、作業進捗に合わせて数量表を出すことが可能となり、予定数量と実施数量の差を出来形管理することで、精度の高い工程管理を行うことができるようになった。
 
数量管理は、調達管理にもつながるので、調達システムとの連携を行うことにより、その手間の一端を効率化できるようになる。
 
ここまで精緻なモデルを作成した後に、工程とリンクをして、工程管理に利用してみた。
 
工程管理
 
施工で利用する工程表は、土木技術者としては当たり前の工程表ではあるが、慣れていないと、施工手順が分かりづらい。特に若手職員には、この工程を見て全体をイメージすることは至難の業である。一昔前までは、4次元CADと言われ、脚光を浴びたが、当時はハード環境やソフト環境が一般的ではなく、多額のコストとかなりの時間を費やさなければ表現できなかった。しかし、現在は、比較的に簡単に表現できる環境が整い、今回も工程とモデルの連携は1日で完成した。
 
この作成したモデルを基に工程計画などの検討を細部にわたって実施したが、どの時期にどのような工種が行われるのかなど、イメージが分かりやすくなり、このイメージを全員で共有しながら、より効率の良い施工手順を考えることができるようになった。
 
地下躯体を専門に行ってきた熟練職員であれば、特にこのようなツールを利用することは必要ないが、全員が同じイメージを共有して議論を行える環境ができることが重要なのである。
 
作業経過
 
モデルを見せながら作業打合せすると、打合せ時間が大幅に削減できることも確認できた。4次元モデルを使った施工管理において非常に重要な場面になることは間違いない。
 
同様に複雑な配筋構築においては、その手順や段取りなど、協力会社との打合せにも利用でき、施工での活用の可能性を実感できた。
 

作業打ち合わせ風景
作業打ち合わせ資料

 
さらに最近では、タブレット端末でモデルを簡単に閲覧できるツールも登場し、作業所だけでなく実際の施工現場でも、モデルを見ながら打合せを行えるため、作業員とのコミュニケーションツールとして欠かせなくなってきている。
 
タブレット画面
 
今回は地下躯体というプロダクトモデルを中心として、施工での利用を推進したが、トンネルやダム・橋梁といった地下躯体とは別の工種で同じ考えを適用できるか否かは、各工種での実例を増やしていくしかない。
 
配筋手順の打合せや発注者との打合せでモデルを利用するのは、どのような工種でも同じであるが、数量管理や、工程管理との連携などは、何に着目して施工管理を行うかによって、その利用シーンが大きく変わる。
 
よって、実際に土木構造物における施工CIMを考える時は、何に着目して施工管理を行うかという計画を最初に構築し、それに向けた準備が必要である。
 
 
 
 

ゼネコン目線のCIM「施工CIMの行方」《その1》

ゼネコン目線のCIM「施工CIMの行方」《その2》
ゼネコン目線のCIM「施工CIMの行方」《その3》
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」
建設ITガイド2013
 
 



ゼネコン目線のCIM「施工CIMの行方」 《その1》

 

社団法人 日本建設業連合会 土木本部 公共工事委員会ICT部会 情報共有専門部会長
株式会社 大林組 杉浦 伸哉

 

はじめに

BIM(Building Information Modeling)という言葉が建設業界で使い始められ、あっと言う間に建築業界で普及した。建築の世界のことだと思っていたわれわれ土木関係者は、2012年、真っ只中に置かれてしまった。国土交通省から提唱されたCIM(Construction Information Modeling)が2012年7月から本格的な検討に入ったのだ。
 
土木をあまりご存じない方は、「土木」という言葉で全ての公共構造物を表現できると思われている方も多いと思うが、「建築」と「土木」は、具体的に「取り扱うもの」が違うのである。「建物一般」を総称して「建築」と表現するならば、「土木」は何と表現すべきか。ダムとかトンネルとか、思い描いただけでもさまざまな表現方法があり、建築のように一言では表現できない。
 
BIM⇔CIM
 
建築がBIMで成果を挙げているのだから、土木もCIMというものを利用すれば成果を挙げられるはずであると言われる方が多いが、実態はそんなに簡単なものではなく、建築と比較をすれば、営業・設計・施工までの建設プロセスにおける環境の違いや、現時点で利用可能なBIMを表現するための3次元CADソフトの種類などを考えると、土木はまだスタートラインに立ったばかりである。そのような環境の中で、施工でCIMの活用検討を始めてみたものの、何がポイントなのかよくわからないというのが実態であった。しかし、ここ数カ月、施工という観点からCIMの本質をじっくり考えてみたところ、一筋の明かりが見えてきた。
 
ここでは、これらの苦難を乗り換えながら、CIMという概念をうまく活用した事例を紹介し、そこでの利点や今後解決していかなければならない課題を提示したのち、次に進むべき道を示すことができればと思う。
 
今回の報告で重要なキーワードが2つある。「プロダクトモデル」「情報共有」である。このキーワードがなぜ重要なのかを考えながら、以下を読み進めていただきたい。
 
 

BIMとCIMの違い

BIMの概要が説明される時、よく目にする資料を以下に拝借した。この図で分かるように、設計段階において、実物大の3次元モデルを設計段階で構築することにより、意匠や構造といった構成要素ごとに検討を行うことが可能であることから、建築ではBIMの効果をいち早く認め、設計段階での効果的な活用を見出してきた。
 
 

BIMの概要(出典:一般社団法人 IAI日本)

BIMの概要(出典:一般社団法人 IAI日本)


 
土木分野においても、調査・設計・施工・維持管理という建設プロセスの中で、BIMと考えを同じにするならば、特に設計分野におけるCIMの適用については十分検討に値すると思われる。
 
「柱」+「梁」+「壁」
 
しかし、BIMがここまで進んだのは、「建物プロダクトモデル」というものがあるからではないだろうか。
 
ここで「プロダクトモデル」という言葉について、このレポートでは「プロダクトモデル=建物の構成要素」と定義したい。
 
建物というのは、その利用用途として、商業ビル、マンション、病院、住宅、工場などの種類があるが、これらの種類は全て、建物があっての話である。
 
BIMソフトがお手元にある方は見ていただきたい。どのBIMソフトにも、必ず「柱」「梁」「壁」などの部材がすでに用意されている。
 
ではこの考え方を土木に適用するとどうなるか。土木構造物は建築構造物と違って、「建物」という1つのプロダクトモデルで表現できるだろうか。
 
土木構造物は、トンネル・ダム・橋梁・港湾・タンク・地下躯体など、さまざまな「建物」が存在する。ここに土木がCIMを進めていく上での難しさがある。
 
BIMとCIMの違いは、プロダクトモデルの多さ
 
トンネル・ダム・橋梁・港湾・タンク・地下躯体などのそれぞれの建物=プロダクトモデルが存在するため、BIMと同じように、簡単にできるといった感覚を持って進めてみると、3次元モデルをBIMソフトで表現するだけでも難しいことが分かる。
 
特に自由変形断面などといった土木構造物を表現する時の難しさは困難を極める。
 
つまり、BIMとCIMの違いは、プロダクトモデルの多さにあった。
 
従って、CIMの適用はBIMの数倍の難しさを伴う作業であることをご理解いただきたい
 
 
 
 
ゼネコン目線のCIM「施工CIMの行方」《その1》
ゼネコン目線のCIM「施工CIMの行方」《その2》
ゼネコン目線のCIM「施工CIMの行方」《その3》

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2013
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