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2014年2月20日
一般財団法人 日本建設情報総合センター 研究開発部 建設ICT推進グループ
主任研究員 富岡 光敏 グループ長 元永 秀 主任研究員 影山 輝彰 CIMCIMのキックオフ平成24年4月13日、JACICでは、基本構想の15年を振り返るとともに、建設生産システムのイノベーションに向けた新たなステージを展望するため「CALSの15年を振り返り、新たなステージへ~建設生産システムのイノベーションに向けて~」と題したセミナーを開催した。国土交通省技監の佐藤直良氏は基調講演の中で、建築分野で活用されている3次元データの建物モデルに部材等の属性情報を盛り込んだBIM(Building Information Modeling)の効果や、新宿労働総合庁舎へのBIM導入事例を紹介し、建設生産システムにおける建築と土木のBIMを総称する言葉としてCIMを提言され、建設産業の生産性を高めるためにはCIMの積極的な活用が重要であるとの内容であった。 CIM (Construction Information Modeling)とはCIMについては「建設現場において、企画から調査、計画、設計、施工、維持管理の一連の過程における関連情報の統合・融合により、施工段階における品質や施工性の向上、維持管理段階における管理の高度化といった、新しい建設管理システムの構築」と述べられている。さらに、CIMの導入には①対象物の三次元の空間形状に加え、時間・コストの基本的な情報、②対象物の属性情報、③維持管理を考慮した計測機器の組み込み等の高度化の3つの要素が重要であると述べられている。 CIMに繋がるBCPサポートシステムBCPサポートシステムプロジェクトの成果(具体的な利用状況とCIMへの手応え)2012年11月現在、東北地方整備局の北上川下流河川事務所をはじめとした6現場で、モバイル機器としてタブレット端末やクラウドサービス等を活用して、どのような業務改善や品質確保の効果があるのか計測を開始し、一定のデータが整理できたところである。計測項目は、移動時間や移動距離、作業時間や保管スペース等に加え、タイムリーに判断を可能とする資料や図面が速やかに検索できるか等を調査した。 具体的な利用例は、図面や管理台帳および各種基準類をPDFデータとして電子図書館に登録し、現地での確認や打ち合わせ時にタブレット端末により閲覧したり、現地調査や巡回点検時に現地で撮影した写真をクラウドサーバにアップし即時情報共有を行うこと等である。このようにクラウドサーバとタブレット端末の連携およびタブレット端末自体の有効性が確認できた。また、現場ではよく利用されており、便利であるとの声をいただいている。さらに、受注者側でも同様にタブレット端末を利用して、既済検査時に写真を印刷せず、タブレット端末で確認をしている現場の事例も見られた。 検証の結果、BCPサポートシステムの効果としては、現場確認、打ち合わせ時のお互いの理解度の向上、時間短縮、手戻り防止などがあり、これらは当初想定していたBPRに有効である。これらの効果は、電子図書館をデータモデルと捉え、そのデータ(情報)を関係者間でいつでもどこでも共有し、業務の品質向上を図る点において、CIMの目指す効果につながるものである。なお、現場の事例であるが、修正等が容易である電子データでも、あまりにも修正頻度が高い場合は電子図書館への登録が追い付かない状況もでてきている。これは復興関係の工事において図面の修正が相当多いためである。この課題は、今後CIMのデータモデルを利用することにより、解決していけるものと考えられる。 また、数字には表れないが現場での対応に関して相当の効果があり、現場技術力(品質を見抜く力、施工・管理場面での判断力等)の向上支援等、今後の可能性は大きい。 なお、今回の検討では点検等維持管理業務への適用の可能性が高いことがわかった。図-9にイメージを示す。またタブレット端末(電子図書館サービス)、写真管理サービスの現場の利用状況を図-10、11に示す。 今後の展開とCIMサポートプロジェクト現在、6つの現場でBCPサポータとして寄り添い、日々の業務をサポートすることから取り組んでいる。各現場では、現場のニーズを出発点にしたアイデアや工夫が生まれている。その一例としては現地にタブレット端末を持参し、簡易TV会議と写真管理サービスを併用した正確な情報伝達や、録音アプリケーションの利用による議事録作成の補助等である。またICTは日々進化しており、CIMの核である3次元モデリングのソフト関係も整備されてきている。 建設ITガイド 2013 特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」 ![]() |
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一般財団法人 日本建設情報総合センター 研究開発部 建設ICT推進グループ
主任研究員 富岡 光敏 グループ長 元永 秀 主任研究員 影山 輝彰
はじめに「建設CALS整備基本構想」(以降、基本構想という)が平成8年4月に策定され、公共事業におけるCALSがスタートし15年が経過した。建設生産システム全体を対象として、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を用いたBPR (Business Process Reengineering:業務改善)を推進することを目指していた。 BCPサポートシステムプロジェクトBCPサポートシステムの概要今回のBCP サポートシステムは、新たにシステムを開発し、そのシステムを試行し、普及・展開するものではない。日々進展するICTを最大限に活用し、既に存在する公共事業に関する複数のシステムの機能を、人<BCPサポータ>によってつなげ、ワンストップサービスとして提供することで、BPRの推進を図ることを目指したプロジェクトである。本プロジェクトでのBCP対象期間は災害発生段階のみではなく、復旧・復興段階も含むものとした。 BCPサポートシステムプロジェクトの検討内容BCP サポートシステムプロジェクトは、BCPサポータが受発注者の担当者に現地で寄り添い、担当者の新たな業務の増加にならないよう、日々の業務をサポートすることを通じて、公共事業におけるICTを用いたBPRの推進についてニーズを把握し、診断を行い、具体的な支援事項について提案を行うものである。そして提案するシステムを利用していただくことで、現在の業務がどのように変わるかを、受発注者の担当者に手にとって実感していただくことを目指している。 平成23年6月および7月に被災地の現地調査を行ったが、情報通信インフラについては、モバイル機器の無線通信環境は概ね良好であった。設備等の復旧に時間を要する有線通信より、無線通信の方が迅速で柔軟な対応が可能であり有効であった。また、CALSが取り組んできた各事項の具体的な効果事例として、名取川の工事現場で津波により現場事務所が流出したが、工事の情報共有システムを導入していたためデータの復元が可能となり、その後の出来高確認や支払いを円滑に進めることができた事例が確認された。 これらの事象からBCPサポートシステムのメニューとして、クラウドサーバを利用した工事の「情報共有システム」をベースに電子成果品や電子情報を利活用するための「電子図書館サービス」、日々発生する膨大な現場写真を効率的に整理・管理するための「写真管理サービス」の検討を行った。 これらはクラウドサーバとモバイル機器(タブレット端末)とを組み合わせたシステムによるサービスである。また、タブレット端末による簡易版TV会議システム等による現場の可視化等の検討を行った。BCPサポートシステム、電子図書館サービス、写真管理サービスのイメージを図-2、3、4に示す。 CALSのレビューBCPサポートシステムのメニューを検討するきっかけとなった、名取川の工事現場における工事の情報共有システムの導入事例のように、CALSの成果を最大限生かすために、JACICはCALSのレビューを行ってきている。その中で、分水路整備の設計検討でのICT活用事例は、データモデルと情報共有ツールを利用し、ICTを駆使して短期間に景観に配慮した事業を実施したCALSの成果事例である。この事例は、JACICの助成研究において熊本大学小林教授の空間情報デザイン研究室が実施した研究である。(図-5、6、7) 平成18年7月鹿児島県川内川流域で記録的豪雨が発生し、河川激甚災害対策特別緊急事業(激特事業)の一環として、奇岩奇石の豊な自然環境が広がる曽木の滝公園地で、外水氾濫を防ぐための分水路整備事業が計画された。従来の激特事業では時間的余裕がないため、景観に配慮した設計は困難であった。しかし、3次元モデルとコミニュケーションツール(情報共有システム)を利用して、短期間で景観を保全した事業を実施した。 ![]() 具体的には、3次元モデルを用いた設計により、景観検討に水理計算をフィードバックさせ、その結果の景観を3次元モデルにより確認することを繰り返し、最終案を決定した。併せてコミニュケーションツール(情報共有システム)を利用し、産官学の各関係者が時間と距離の壁を越えて協議を進め、短期間での合意形成により事業を推進した。 この事例において利用している3次元モデルとコミニュケーションツール(情報共有システム)は、CIMの重要なツールである。 《後編》へ 【出典】 建設ITガイド 2013 特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」 ![]() |
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2014年2月7日
社団法人 日本建設業連合会 土木本部 公共工事委員会ICT部会 情報共有専門部会長
株式会社 大林組 杉浦 伸哉 施工CIMの課題今までは施工に利用するための事例を述べたが、CIMの本質は何かを理解せずに、施工で利用する方法ばかり考えても、あまり意味はない。 CIMの行方CIMという概念を土木業界に根付かせるために新たな取り組みがスタートしたわけであるが、これからのCIMの行方はどうなるのであろうか。 建設ITガイド 2013 特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」 ![]() |
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社団法人 日本建設業連合会 土木本部 公共工事委員会ICT部会 情報共有専門部会長
株式会社 大林組 杉浦 伸哉 施工でのCIMモデルの活用方法では、CIMモデルを実際に施工で活用する場合の方法について、一例ではあるが、実例を交えて見ていこう。今回は地下躯体を構築する工事で、実際にCIMモデルを取り入れてみた。 建設ITガイド 2013 特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」 ![]() |
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社団法人 日本建設業連合会 土木本部 公共工事委員会ICT部会 情報共有専門部会長
株式会社 大林組 杉浦 伸哉
はじめにBIM(Building Information Modeling)という言葉が建設業界で使い始められ、あっと言う間に建築業界で普及した。建築の世界のことだと思っていたわれわれ土木関係者は、2012年、真っ只中に置かれてしまった。国土交通省から提唱されたCIM(Construction Information Modeling)が2012年7月から本格的な検討に入ったのだ。 BIMとCIMの違いBIMの概要が説明される時、よく目にする資料を以下に拝借した。この図で分かるように、設計段階において、実物大の3次元モデルを設計段階で構築することにより、意匠や構造といった構成要素ごとに検討を行うことが可能であることから、建築ではBIMの効果をいち早く認め、設計段階での効果的な活用を見出してきた。 土木分野においても、調査・設計・施工・維持管理という建設プロセスの中で、BIMと考えを同じにするならば、特に設計分野におけるCIMの適用については十分検討に値すると思われる。 ![]() しかし、BIMがここまで進んだのは、「建物プロダクトモデル」というものがあるからではないだろうか。 ここで「プロダクトモデル」という言葉について、このレポートでは「プロダクトモデル=建物の構成要素」と定義したい。 建物というのは、その利用用途として、商業ビル、マンション、病院、住宅、工場などの種類があるが、これらの種類は全て、建物があっての話である。 BIMソフトがお手元にある方は見ていただきたい。どのBIMソフトにも、必ず「柱」「梁」「壁」などの部材がすでに用意されている。 ではこの考え方を土木に適用するとどうなるか。土木構造物は建築構造物と違って、「建物」という1つのプロダクトモデルで表現できるだろうか。 土木構造物は、トンネル・ダム・橋梁・港湾・タンク・地下躯体など、さまざまな「建物」が存在する。ここに土木がCIMを進めていく上での難しさがある。 ![]() トンネル・ダム・橋梁・港湾・タンク・地下躯体などのそれぞれの建物=プロダクトモデルが存在するため、BIMと同じように、簡単にできるといった感覚を持って進めてみると、3次元モデルをBIMソフトで表現するだけでも難しいことが分かる。 特に自由変形断面などといった土木構造物を表現する時の難しさは困難を極める。 つまり、BIMとCIMの違いは、プロダクトモデルの多さにあった。 従って、CIMの適用はBIMの数倍の難しさを伴う作業であることをご理解いただきたい ゼネコン目線のCIM「施工CIMの行方」《その1》 ゼネコン目線のCIM「施工CIMの行方」《その2》 ゼネコン目線のCIM「施工CIMの行方」《その3》 【出典】 建設ITガイド 2013 特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」 ![]() |
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