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BIM教育機構のビジョン

2023年9月14日

デジタルが変える社会:それを担う人材育成

スマートな社会を支えるデジタル化の動きが活発になってきている。
単純に生産性を高める目的以上に、誰にでもアクセスしやすく、多様な才能が活躍でき、新しい価値やビジネスを生み出す社会を目指すならば、それを支えるデジタルの基盤づくりはさらに加速しなければならない。
しかし、ハードの整備自体は真の目的ではなく、デジタルを有効に活用できる人材づくりこそが重要ではないか。
すでに進行中ではあるが、こうした観点から、義務教育段階でデジタル・リテラシーを確立させ、さまざまな分野の専門教育でデジタル活用を深度化させ、それらを指導できる教員の層を厚くするといった政策が積極化するだろう。
 
一方で、絶え間なく進化するデジタルについて、社会の構成者全てがキャッチアップするための継続学習がさらに重要である。
とりわけ、専門業務に携わる実務者が、向き合っている任務における課題、社会に生じている課題を乗り越え続けるためには、デジタル能力のスキルアップは必須となる。
例えば、近年注目されている「リスキリング」の実行メニューには、<デジタル能力を活用して新しい価値を生み出すことができるよう、能力やスキルを再開発する>ことが重視されている。
おそらく、継続する学び、デジタルの学びは社会全体にも好ましい影響をもたらすのではないだろうか。
 
こうした流れを踏まえて建築実務の現在を見渡すならば、設計から施工に至る建築生産の効率化、カーボンニュートラルに関わる目標の達成、誰にとっても快適で安全な場の実現、建築や都市の維持管理あるいは資産管理といった多様な社会課題解決に対してBIM( Building Information Modeling )への期待は大きなものがある。
そして、それを的確に活用・運用できる実務人材の育成が急務であることは論を俟たない。
その認識に立って、2021年10月に「一般社団法人BIM教育機構」(https://bimeo.or.jp/index.html)が設立されたという次第である。
BIM教育機構は、BIMの普及だけでなく、BIMを活用して業務が社会的な責任を果たすために、その業務の質の向上を支援する団体を標榜している。
活動目標には、<BIM技術者の教育・啓蒙・人材育成等に関する活動およびBIMに関する普及活動を行うことにより、BIMによる建設プロジェクトの質的向上、発展に寄与する>ことを掲げている。
すなわち、一部の限られた人材にとどまらない、BIM人材の層の広がりを展望しつつ、リスキリングの趣旨と重なるレベルアップの活動という趣旨である。

BIM教育機構のビジョン

 
 

BIMの使命、BIM教育機構が目指すもの

さてBIMは、建築生産と維持に関わるさまざまな場面で生成されたデータを統合し、公共目標達成のための活用される使命を有している。
これは、米国でのBIMが2000年代初頭から目指してきた方向である。
今や世界に広がったBIMは、それぞれの地において建築生産改革に不可欠なツール、またグローバルビジネスに有用なツールと認識されるようになってきている。
今後さらにBIMが普及定着することで、より良い社会の構築を支える力となるだろう。
日本においても民間からBIMの活用が始まり、2010年に国土交通省の営繕業務での取り組み開始へと駒が進んだ。
2018年には同省が建築BIM推進会議を設置し、こうしたBIMの胎動を国としてさらに発展させる動きが進んできた。
ここではBIM環境整備、BIMによる確認検査の検討・積算の標準化などの項目での議論を進め、またモデル事業の採択と実施を通じて実効性の検証を行っている。
 
一般社団法人BIM教育機構が最初に取り組んでいるのは、こうした国内外の動きと議論を背景としながらの、BIMの教育基盤づくりと継続的な学習の支援である。
BIMを扱う人材あるいはBIMを支える層が広がってゆく中で、着実・確実にBIMが普及するためには、基礎的な理解がばらばらでは真の基盤にはならない。
BIMを共通の言語で使えるよう体系付け、さらに最新の知識を提供し、そのアクションを通じて業務全体の質を高めてゆく着実さである。
 
そこでBIM教育機構では、専門家一人ひとりの目標、あるいはBIMを活用している組織の目的に対応しながら、BIMの入門からスキルアップ、継続学習、新たな技術の研修など、多様なメニューの提供を目指してゆくこととしている。
一方で、実際の社会課題と向き合うには、建築分野以外の知見も加え、応用力の養成にも力を入れたい。
例えば地域行政における統合的なデータベース構築、不動産業における総合的価値判断、交通事業におけるTODなどといった場面でBIMの活用が期待できるが、建築BIMの能力を備
えた技術者が、大きなテーマのまとめ役として役割を発揮できるよう、単なる教材提供を越えた能力開発をビジョンとしてゆく。
 
 

基盤づくりの取り組み-「BIMの教科書」から研修制度構築へ-

ここからは現在、BIM教育機構が推進している項目について紹介する。
活動は「1.BIMに関する普及事業」、「2.BIMに関する教育・啓発事業」、「3.BIMに関する出版事業」、「4.BIMに関する資格試験の実施・資格認定・資格更新・証明に関する事業」、「5.その他当法人の目的達成のために必要な事業および前各号に付帯または関連する一切の事業」に分かれている。
BIMとは情報共有のツールである、との視点に立てば、あらゆるBIM活用者が基礎を固めて同じ知識レベルに達するのは極めて重要であり、この目的が活動項目1から3に該当する。
この認識は、BIM教育機構の源流として2018年頃から始まったBIM教育研究会の活動で育んできたもので、2020年に成果として「BIMBASICⅠ建築・BIMの教科書」(日刊建設通信新聞社)発刊で結実に至った(図-1、2)。

図-1 『BIM BASIC Ⅰ 建築・BIMの教科書』 
図-1 『BIM BASIC Ⅰ 建築・BIMの教科書』 
図-2  『BIM BASIC Ⅰ 建築・BIMの教科書』の内容例
図-2  『BIM BASIC Ⅰ 建築・BIMの教科書』の内容例

この教科書の継続的な改良・成長を含む「BIMに関する出版」事業は、教科書をテキストとする「BIM研修」事業・「BIM基礎知識診断」事業へと歩みを進めるための、BIM教育機構のゼロマイル・ポストとなっている。
この教科書では、1:BIMの基礎、2:BIMの実践、3:BIMと人材、4:BIMの発展といったカテゴリーに分けて基礎知識を盛り込み、最新のBIMの趨勢を見渡している。
その中で、教科書の巻頭に記した「BIMという道具を使って、私たち一人ひとりが何をするか、何を考えるのかを考える」点は、基本的な主張である。
教科書ではBIMのスペシャリスト育成を一方で目指しながら、技術の健全な理解の上に立つ「ジェネラリスト的視点」を併せて盛り込んでおり、これはBIM教育機構の理念の基調を成している。
この教科書については改訂を進めるとともに、2022年度内には続編「BIM BASICⅡ」の発刊を目指し準備中で、さらに知識を拡充し、業務遂行に資する工夫を加え、最近のBIMの動向についてページを割き、この理念をさらに掘り下げてゆく予定である。
 
この「BIM BASIC Ⅰ 建築・BIMの教科書」を教材にして、2022 年1月から、BIMの知識をどの程度まで身に付けているかを自分自身で診断・確認できるツール、オンラインでの「BIM基礎知識診断」をスタートしている(図-3、4)。
BIMの初学者、すでに業務に活用している人などさまざまな段階・職階に属する人を対象としている。
今後は参加者の意見を加えながら、さらに診断のレベルを少しずつ精緻に分けてゆきたい。
実はこの運営を、後ほど述べる資格制度検定のモデルにつなげようと考えている。

図-3 BIM 基礎知識診断の概要
図-3 BIM 基礎知識診断の概要
図-4 BIM 基礎知識診断の受診の流れ
図-4 BIM 基礎知識診断の受診の流れ

 
併せて、教科書の内容について時間集中型研修や幹部研修などの実施に取り組む計画がある。
対面・オンライン両面でスタートできるよう、最新のセミナースタイルを取り入れながら準備を進めている。
それぞれの組織の目標、具体的なBIM導入計画に即してカスタマイズした研修実施にも取り組んでゆく予定である。
 
 

学習と資格の将来をめぐって

ところで、建築設計3会(日本建築士会連合会・日本建築士事務所協会連合会・日本建築家協会)でも、実務者へのBIMの普及・導入促進に取り組んできた。
3会の共同作業の成果として「設計BIMワークフローガイドライン」があり、団体それぞれも独自の取り組みが行われている(日本建築士事務所協会連合会では、
BIMのポータルサイト「BIMGATE」や、BIM活用のアイデアコンペ運営などを実施)。
それぞれの構成単位が異なることによる角度の違いを生かしながら推進を始めているので、この3会をはじめ国土交通省建築BIM推進会議に加わっている各団体が同じ概念でBIMを使えることが望ましいと考える。
その目的に沿っての「BIMの教科書」や「BIM基礎知識診断」の活用は有効であり、BIM教育機構は多様なアクションを支える基盤の役割を果たしたい。
 
冒頭で述べた基盤づくりについて言えば、教育機関におけるBIM教育課程との連携は重要なテーマである。
現在各大学で進められているBIM教育には、設計能力の育成に資するとともに、建築生産の流れの中でデータを生かすという視点があるが、そこでの深い理解を促すには、機構が有する知恵と情報の教育機関への提供が可能であるし、また卒業後にバトンを受け継いでの継続学習も有効である。
例えば各企業がリスキリングに取り組む中で、機構が大学や大学院と連携したサービス提供も想定できるのではないか。
これからの多様な学びのスタイル、日本ならではの人材育成、産学連携での基盤づくりのモデルとしても検討を進める。
 
またBIM教育機構は、中期的に「BIM資格者」の制定を視野に入れている。
想定するのは「建築生産プロセスのどの分野でもBIMを正しく扱うことができ、それによって公共工事に関する調査や設計などの品質確保に資する技術者資格」との定義である。
BIM教育機構は、当面の目標に向かって活動する中で、あるべき制度の骨組みを組み立ててゆく。
当然ながら、機構が提唱する<継続性のある基盤づくり、人材づくり>という観点に沿って、取得すること自体が目標となる資格というよりも、学習を継続しながらスキルアップしてゆく内実を盛り込むものとしたい。
 
この資格については、国土交通省も資格制定の趣旨には賛同の意を表している。
ただし建築士資格にある「業務独占」の性格よりも、その資格の定着がBIM基盤の強化につながり、BIMを活用する人材の背中を押し、日本国内だけでなく国際的な競争を勝ち抜くモチベーションを高める資格でありたいと考えている。
BIM教育機構の活動をベースにしつつ、国や教育機関との意見交換を進め、国土交通省建築BIM推進会議での検討も呼び掛けてゆく。
スピードを上げて取り組もうと考えており、各方面との意見交換ができれば幸いである。
 
 

最後に BIMデータとともにある未来へ

以上述べたように、デジタルの基盤づくり、とりわけBIMの定着は、設計・施工プロセスをより信頼性を高めるものであり、それを支える人材の育成、あるいは各自の脱皮は急務である。
さらに、データを生かす局面においては、建築に関わるプレーヤーがBIMデータの生かし方を能動的に捉える必要があるだろう。
例えば、竣工後の可変性やフィードバックをどう建築が受け止めてゆくかはBIMデータが鍵となるが、それらの中から設計・施工プロセスや建築のあり方が変わってゆく可能性があるからだ。
 
例えば、スポーツ施設には、高みを目指すアスリートがいる一方で、市民スポーツ、さらに新たなスポーツの創成など、さまざまなありようが背景にある。
コミュニティー施設も似たものだろうか。
これらは利用者の動きと展開によって、竣工後の建築の形態やランドスケープに影響が及ぶことを想定しておく必要がある。
ライブな情報を取り込む建築の作り込みや場のあり方は、BIMを用いることによって、より「民主的な」可能性を切り拓くと言えるかもしれない。
 
しかしながら、こうした想像の先に、建築に関わる全てが自動化してしまう未来が待っているわけではない。
そのような単純な着想では少し危うい印象さえある。
あくまで建築をつくる専門家は、その建築を使うユーザーのためにリーダーシップを取り、BIMデータを能動的に活用する積極性、そして見識を備えているべきなのである。
 
いずれにしても、BIMデータは、建築のプロフェッショナルが建築の価値判断と方針選択を行うために、最良の材料となる。
その観点からBIMを使いこなすための教育基盤づくりと継続的な学習の支援を進めてゆきたい。
 
 
(参考)
「一般社団法人BIM教育機構の目指すもの」
(佐野吉彦、建設マネジメント技術2022年6月号)
「BIM教育機構のミッションとは」
(佐野吉彦、鉄道建築ニュース2022年11月号)
 
 
 

一般社団法人 BIM教育機構 理事長 
佐野 吉彦

 
 
【出典】


建設ITガイド 2023
特集2 建築BIM
建設ITガイド2023


 

最終更新日:2023-09-14



 


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