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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

BIMデータを活用した建築確認申請について

2021年9月27日

 

はじめに

2016年度の政府成長戦略でi-constructionが掲げられ、主に公共土木建築の中でBIM/CIMの推進が進められてきた。その後、2018年度にはデータ駆動型社会、Society 5.0の施策が示され、民間公共問わず建築分野のBIM推進が位置付けられたことを受け、2019年4月、建築BIM推進会議がこの目標を達成するために設置された。また、2019年6月に閣議決定された、成長戦略実行計画の中の「令和元年度革新的事業活動に関する実行計画」では、図-1に示すように、建築確認審査に対しても、2022~2025年度に「BIMによる建築確認申請の推進」が位置付けられ、BIMによる建築確認の実現が必須となった。このようなBIM推進に対応する施策が続々と打ち出される中、あらためてBIMデータを活用した建築確認申請の開発の現状と展望について説明したい。
 

令和元年度革新的事業活動に関する実行計画

図-1 令和元年度革新的事業活動に関する実行計画
(令和元年6月21日閣議決定)におけるBIM/CIM等の普及拡大の工程表 1)


 
 

成長戦略におけるロードマップとその対応

建築確認におけるBIMの活用は、日本建築行政会議指定機関委員会を事務局とする「建築確認におけるBIM活用推進協議会」(以下、協議会)で検討が進められており、建築BIM推進会議における「BIMを活用した建築確認検査の実施検討部会(部会3)」に位置付いている。
 
具体的な検討内容は、協議会の事業計画の中で次の3つを定めている。
 
(1)BIMモデルを利用して作成する確認申請図面の標準化を図るため、BIMモデルから作成する建築確認に必要な図面表現の標準(以下、「確認図面の表現標準」という)の作成と、種々のBIMソフトウエアにおいて確認図面の表現標準を作成するために必要な入出力情報を定めるための解説書(以下、「解説書」という)の作成を行い、それらの普及を推進する。
 
(2)BIMモデルデータを建築確認の事前審査の際に利用する場合に、審査者が使用する、確認審査に適したBIMビューアーソフトウエアの仕様(機能、性能等を定めたもの。以下同じ)を策定し、その円滑な開発に向けた環境を整える。
 
(3)上記(1)、(2)のほか、これらの共通事項として、法令改正等に伴う解説書・BIMビューアーソフトウエア仕様の見直しなどの継続的運用の確保や、国際情勢の把握と日本の情報発信による国際協調の推進などを行う。
 
このうち(1)は、建築設計のBIM作業環境における、確認申請図書の作成基準の確立を目指すものである。これは、シンガポール政府の建築確認における業務標準(Code of Practice)に相当するものであり、BIMによる確認申請図書の作成が一定の規範に基づいて作成できることを担保することで、申請者側が確認審査図書作成の追加的な作業を強いることがないようにするとともに、BIMソフトウエアに確認審査図書作成のための付加的機能を装備されることを期待することで、確認審査手続きがBIM普及の支障とならないようにするという期待が込められている。
 
2019年度は、協議会の前身である、「BIMを活用した建築確認における課題検討委員会」(委員長 松村秀一東京大学大学院特任教授)の成果を拡張し、建物用途の異なる3つの建築設計によるBIMモデルを作成し、確認図面の表現標準、および、確認図面の表現標準の作成に必要な入出力情報(意匠、構造、設備)の整理とその解説書を作成した。解説書については、確認図面を構成する図書ごと、部位ごとに必要とされる入出力情報と必要な表現を得るためにBIMソフトウエアの機能を使って表現できたかどうかについても整理を行い、表-1に示す、「審査項目別のBIM活用課題一覧表」にまとめた。さらに、その内容の理解を深めることを目的として意匠・構造・設備の分野ごとにテーマを設定し、図-2のような、「課題別検証シート」としてまとめた 2)
 

審査項目別のBIM活用課題一覧表

表-1 審査項目別のBIM活用課題一覧表 2)


 
課題別検証シートの例(意匠 課題1、3、4)

図-2 課題別検証シートの例(意匠 課題①、③、④) 2)

 
審査項目別のBIM活用課題一覧表は、BIMソフトウエアを用いて確認図書を作成する際に、加筆や表現方法の工夫を必要とするといった、共通の課題となるテーマが抽出されたものである。各課題に対する表現、とりわけ、BIMの特性を生かした「BIMならでは」の表現方法の具体的な解決方法について、課題別検証シートに整理されている。
 
2019年度の協議会成果が想定する技術段階は、図-3の開発ステップでStep1+に相当するものとなる。BIMを活用した確認図書の作成については、図書作成上の課題と各課題に対する表現方法を、一覧表やシートにより理解を深めることで、これからBIMを活用して確認図書を作成する方に対する一助となること、あるいは、BIMソフトウエアに、これらの課題を解決するような機能等の搭載を期待したい。

 

BIM建築確認の開発ステップ概要

図-3 BIM建築確認の開発ステップ概要(建築研究所2015) 3)


 
 

確認審査におけるBIMデータの活用

しかし、Step1+は、BIMによる設計環境下で、効率的に作成された、従前の申請図書を審査者が審査することを示しており、在来審査のBIM対応の水準にとどまると言える。2019年度の協議会の検証においても、確認の試審査は、BIMソフトウエアから出図した図書イメージであり、審査者としては、申請者側が「BIMならでは」の作図をしていることについて意識していないため、分かりやすい図書の表現をしている設計者側の意図が十分伝わっていないという指摘がなされている。言い換えれば、図書の生成元となる、BIMデータから出図されているという背景の理解の不足が、設計側の図書表現の意図の理解の支障となっているということである。
 
このような状況を打開し、BIMによる確認図書の作成をより効果的にするために、協議会では、2020年度に、前述の事業計画の(2)に当たる課題について、審査者のBIMモデルと申請図書の供覧による理解度の変化、事前相談における確認審査のBIMビューアーソフトウエアの仕様の検討を行うこととしている。
 
また、BIMによる設計が、属性情報の活用などにより合理化が進められるに従い、BIMモデルが内包する数的情報を活用して、審査対象項目を漏れなく抽出し表現する、あるいは、算式による法適合の判定を自動で行い、審査に活用したいという申請者側のニーズが生じることとなる。諸外国のBIM建築確認の発展の過程を見ていると、建築許可、建築確認においてBIMを試行する段階で、起こりがちな状況のようである。このような状況において、審査者側は、「BIMは本当に信用に足るのか?」という疑念を持つこととなる。図-4は、buildingSMARTの法 規 部門(Regulatory Room)の議論に供されたものであるが、申請者側はBIM利用が増えるにつれ申請作業を一元化したい要求が強くなる一方、審査者側(規制側)とすると、「信用のおけない技術導入に向けた規制緩和はけしからん」、というわけである。しかし、設計者側が持つ、効率化の体験を審査者側で追体験し、一種の成功体験を経ることにより、BIMの活用に向かうものと理解されている。
 

申請者と審査者(規制側)との間のBIMの意識の違い

図-4 申請者と審査者(規制側)との間のBIMの意識の違い 4)

 
わが国においてもその状況は変わらず、事前相談段階におけるBIMモデルの供覧は、一種の成功体験を醸成するものとして期待されるが、BIMデータを活用した建築確認申請に至るためには、Step2+やStep3-、3のBIMデータに直接アクセスする審査が実現されなければならないが、「法適合判定がモデルのデータを使って確認ができれば良い」というだけでは審査実務に適用するには不十分である。
 
 

BIMデータの活用に向けた課題

まず、現行の建築確認審査においては、設計者が建築基準法施行規則に従って表現した明示すべき事項を図に表現し、その表現を基に、審査者側は、規則により申請者が審査項目の内容について明示した事項について、審査者側はその内容について確認処分を行うものであるのに対し、BIMデータによる審査の場合は、明示すべき事項が容易に確認することができず、BIMデータから審査者が審査項目に当たるデータを能動的に検索して、その内容の確認処分をすることとなる。つまり、BIMデータによる審査の場合に、申請者側の明示義務を果たすこととなるかという懸念である。これについては、私見ではあるが、BIMモデル閲覧における明示すべき事項の要件と、当該事項の有無や内容の確認にかかる確認処分行為の業務方法について規定を定め、コンセンサスを得ることで対応しうるのではないかと考えている。
 
また、審査後のデータの取り扱いについても、申請用データの検証性や真正性などを確保する技術が必須である。特に、確認審査手続きで審査機関側に求められる15年間の図書保存に対して、BIMデータの見読性や検証性を担保できる技術的裏付けが現時点でないのが実情である。
 
長期にわたる検証性を確保するためには、データフォーマットが規格等で定義されていて、仮にデータ作成時の規格が古いものとなった場合にでも、旧の規格に基づいてそのデータの確からしさが検証できることが望まれる。Step1+の場合、図面データはISOで定義されるPDFとして保存することでその要件を満たすことができる。そのため、Step2+以降でBIMデータを取り扱うためには、ISOで定義されるIFCによることが想定される。建築確認審査でBIMデータを取り扱うためには、全ての情報をIFCとして受領することはすぐには難しく、データとして審査する内容をIFC、その他の図面表現により審査する内容をPDFとして、双方を併せて確認するケースが想定される。その場合、審査の対象となるデータファイルがIFCとPDFと分離するため、相互の整合を確認するために、PDF図面表現とIFCモデルビューを重ね合わせる技術の開発が必要となる。
 
データの真正性確保の考え方については、建築確認手続きで提出する図書の押印が廃止される運びとなっているが、真正性の内の本人性の確認手段が、電子署名に代わる方法で行って良いということであり、長期にわたるデータの完全性や原本性について、電子署名あるいはタイムスタンプといった措置を不要とするものではないと考えている。PDFについては、すでに電子申請のファイルとして電子署名に対応しているが、IFCについては、XMLファイルに対する電子署名が応用できると見込まれているが、取り扱うIFCファイルのサイズに対して、署名の処理時間が実用的であるかなど、その知見がまだ不足しており、検証が必要である。また、BIMデータを、審査機関で取り扱うための基盤のあり方についても、検討が必要である。BIMのデータマネジメント手法については、ISO19650で定めるCDE(共通データ環境)の方法に準拠することが望ましいと考えられる。
 
 

建築確認BIMデータの活用の将来

確認審査時にBIMデータを受領して建築確認を行った場合、提出されたBIMデータは正本としての位置付けとなると考えられ、着工後の中間工程検査、完了時検査において、正本としてのデータに対して検査が行われることが考えられる。例えばStep3のような、BIMデータのみで確認がされている場合、確認済みのBIMデータに対して施工の結果を検査することになるということである。その場合、確認済みBIMデータと遠隔臨場技術と組み合わせたリモート検査の実現など、withコロナ時代に対応する新しい検査の方法の開発も近い将来に開発されるかもしれない。
 
また、実際の建築物の形状や性能を高精度でBIMモデルに表現し、建築物のオンデマンドあるいはリアルタイムの制御をBIMモデルで行おうとする、Digital Twinの議論が活発となっているが、少なくとも、オンデマンドの法適合確認ができるようなモデリング手法の開発も行われることになるだろう。
 
欧米では、図-5のような、建築許可の段階で、地理情報(GIS)と連携したデータの取り扱いが行われており、Virtual Cityへの展開など、ビッグデータとして活用する取り組みも現れてきている。わが国においても、単に審査機関のみの情報基盤というだけでなく、構造計算適合判定や消防同意などの外部の審査・同意行為との連携や、建築確認概要書等の特定行政庁へのデータ連携など、データによる審査の効率化、Smart City構築につながるような、データの高度利用のためのプラットフォームとして機能するための設計も必要であろう。
 

ノルウェーのBygglett(簡易な建築許可)

図5 ノルウェーのBygglett(簡易な建築許可)システムデモ画面 5)




 
 


図表出典、参考資料等
1)令和元年度革新的事業活動に関する実行計画(令和元年6月21日閣議決定)、p36
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/ps2019.pdf
 
2)建築確認におけるBIM活用推進協議会HP
https://www.kakunin-bim.org/
 
3)武藤正樹:「BIMと建築確認検査業務への応用」、 えぴすとら73号、 2016.4、建築研究所
https://www.kenken.go.jp/japanese/contents/publications/epistura/pdf/73.pdf
 
4)Ma s aki MUTO: e-submissioncommon guidelines for introduce BIM to building process、 Fig.10 Difference in consciousness of BIM between applicant and regulators、 p12、 buildingSMART International Technical Report No. RR-2020-1015-TR、 2020.10
https://www.buildingsmart.org/standards/bsi-standards/standards-library/#reports
 
5)https://bygglett.catenda.com/
 
 

国立研究開発法人建築研究所 上席研究員 武藤 正樹

 
 
【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年


 
 
 



課題解決に向けたBIM活用の取り組み

 

はじめに

日本郵政グループでは、数千を超える施設を所有している。内訳としては約95%が郵便施設であり、その他にはオフィスビル、宿泊施設、集合住宅(社宅)、データセンターと多岐にわたっている。日本郵政施設部は、持株会社である日本郵政株式会社内の一級建築士事務所として、郵政グループ所有施設の企画・設計から工事発注・工事監理、維持・保全、中長期保全計画の策定までを業務の対象とし、いわば建築物のライフサイクル全般にわたる業務を行っている。
本稿では、これまでのBIMへの取り組み状況と、インハウスの設計事務所として発注者に寄り添った視点からのBIMの活用方法について紹介する。
 
 

BIMの導入

日本郵政グループは、2012年の東京駅前JPタワーを皮切りに不動産事業を経営の柱の一つとして力を入れ始め、駅前にある比較的規模の大きな郵便局、社宅跡地などを対象とし、コンバージョン・建て替えなどの不動産施設を再活用する検討を開始した。
 
弊社ではそれら多数の検討案件に対応するため、企画提案の可視化や比較、容積率や法規などの技術的なチェックに適したBIMソフトウエアを導入することとし、2014年度よりBIMの活用検討を開始した。具体的には、検討する内容を「部内の活用・普及促進」、「ソフトウエア間の連携」、「ガイドライン作成」、「維持・保全業務に活用する手法」の4つのパートに分け、設計、工事監理、維持保全の各部署において検討を進めた。
 
またBIMソフトウエアの選定条件としては、容積率等の法規チェックの機能があること、さらに基本計画まで作成ができること、BIMに不慣れな社員でも直感的に操作できること、などが挙げられた。
 
国内外の複数のソフトウエアを検証した結果、国内法規対応に優れ、容積率チェックも比較的容易に行うことが可能な福井コンピュータアーキテクト株式会社の「GLOOBE」を採用することとした。
 
以来、福井コンピュータアーキテクト社には、新入社員のBIM研修や、新機能の説明会の実施、また、実装してほしい機能についての要望・提案を行い、国内のソフトウエアならではのきめ細かいサポートを頂いている。

 
 

BIMの活用方針

BIMの特徴と弊社の業務範囲を踏まえ、新築設計時とファシリティマネジメントの2分野に対し、それぞれBIMの活用方針を掲げることとした。特にファシリティマネジメントの分野では、BIMモデルの属性情報をデータベースの一つとして位置付け、各種のファシリティマネジメントツールと連携させることで、紙図面と設備機器台帳で行っている従来の維持管理業務をデジタル化し、BPRを進め、業務の高精度化と高効率化の検討を行うこととした(図-1)。
 

図-1 BIM活用の方針




 

設計上の課題と解決策

(1)設計プロセスの変化

新築プロジェクトの企画からBIMにより設計を進めるプロセスは、今までのCADによる2次元での設計プロセスとは大きく異なることが分かった。
 
BIMによる設計では、企画の初期段階からある程度の精度を持った3次元モデルを作成するため、設備スペースやダクトルートの確保等、従来よりも早い段階から設備担当を巻き込んだフロントヘビーな業務にならざるを得ない。従来の設計プロセスに合わせて組織した人員配分のままプロジェクトを進捗させた場合、初期段階の設計時間が増大し、意匠設計者以外の社員に大きな負荷がかかることとなった(図-2)。
 

図-2 設計ツールの変化による設計プロセスの違い(イメージ)




 

(2)BIMモデルの詳細度

いくつかの新築案件でBIMモデルを企画・設計の初期段階から試行作成した結果、設計進捗の各段階においてBIMモデルに求められるデータ量および種類が異なることが判明した。よって、それぞれの設計段階における入力データ詳細度とデータ分類の整理が必要なことが分かった。
 

(3)課題の解決策

フロントヘビーの問題は、それと引き換えに享受できるメリットも大きいことが分かった。
 
①法令規制内のボリューム検討、複数プランの作成と概略コストの比較、完成イメージなどがおのおの連動した形で可視化され、発注者とのイメージ共有が早期に可能な分、意思疎通不足による後戻りが少なくなり、迅速な関係者間の合意形成・意思決定がなされた。
 
②意匠・構造と設備の調整が上流段階で整理がつくため、基本設計以降の調整がスムーズに移行するなど、従来の設計手法では下流側で明るみになるようなメンテナンスを含む設備スペース確保などの諸問題を初期段階で解決でき、プロジェクト全体における検討時間の余裕が生まれ、より品質の高い設計となった。
 
問題の解決としては、設計プロセスの変化に追従する形で、設計に携わる社員に対し全体最適への理解を求め、組織形態を徐々に変化させていくこと。また、実践には時間を要するが、将来的にはOne Modelによるコンカレントエンジニアリングを実現し、多様なワークスタイルを取り入れ、効率の良い設計業務体制を確立したいと考えている。

 
 

維持管理上の課題と解決策

(1)維持管理で使用するBIMモデルの課題

いくつかの新築物件において、維持管理で使用するBIMモデルを作成するプロセスを試行した。設計BIM・施工BIMをもとに、施工段階で変更される建具位置や取り合い、メーカー、仕様、機器型番等、維持管理に役立つと考えられる情報を維持管理用BIMモデルへ入力したところ、情報量が過多となり、起動に時間がかかることに加え、スムーズに欲しい情報にたどり着かない「維持管理業務に使えないBIMモデル」となってしまった。そこで設備機器の表現や曲面部分を簡素化するなど、維持管理上では不要な部分の簡略化を試みたが、実質的にモデルの作り直しになってしまい、非常に時間と手間がかかった。
 
この教訓から、維持管理で使用するBIMモデルは、「維持管理に使う」という目的を明確にし、モデルをどのように作り、どのような情報を持たせるのか、作成初期から決める必要があることが分かった。また維持管理業務は、BIMモデルが手元に存在しない現状でもビジネスとして成立しており、BIMモデルが追加導入されることで、モデルの構築費など、その投資に見合うだけの業務品質の向上・省コスト化が図れるのか、という問題も挙げられた。
 

(2)課題の解決策

①情報レベルの明確化
維持管理業務で必要となる設備機器表、中長期保全計画の策定、改修工事プランの策定など、おのおのの業務目的により必要なBIMデータの詳細度が異なること、また、建物の種類により必要な部材・設備項目が異なることから、「目的」、「建物種類」、「情報が必要なタイミング」の観点で、モデルに搭載すべき「BIMモデル搭載情報(150項目程度)」を整理した。
 
この150項目は、施設を問わず共通的に使われる基本的な部材・設備であり、設計から維持管理業務まで現状の業務で使用する情報になるため、業務遂行のための最低限必要な情報として、設計BIMモデルの段階からジェネリックモデル等の簡易モデルとして表現するルールとした。
 
その後、施工段階で建築部材、設備メーカー等の仕様が決定された際、BIMモデルへ部材情報を付加することにより、実際の建物とBIMモデルの情報が合致し、完成後の維持管理業務で生かされることになる。
 
一方、150項目以外の情報は、施設の特徴や目的に合わせ、適宜追加するオプション情報の位置付けとし、必要に応じ項目数を増やすこととした(図-3)。
 

図-3 BIMモデル搭載情報の例




 
②FM-BIM?モデルの定義
BIMモデルの使用を設計から維持保全業務まで拡大すること、使用する端末上でストレスなく動作することを目的として、上記の「BIMモデル搭載情報」に従い、維持保全業務に必要十分なデータ詳細度に抑えたFM-BIM?モデルを定義した。
 
前述の「BIMの活用方針」を時系列的に表したイメージグラフ(図-4)をもとに、FM-BIM?モデルの作成手法とメリットを以下に示す。
 

図-4 JP-BIM?モデルの定義




設計時のBIMモデルを有効に活用するため、設計が進捗し、実施設計時点のある地点から発注コスト算出用とは別に、維持管理に使用するモデルとしてBIMモデルを分岐・派生させておく。そして施工段階で決まる建設情報のうち、維持管理業務に関連する情報をFM-BIM?モデルへ付加する。竣工後は、このFM-BIM?モデルを活用し、維持保全業務を行うこととする。この作成手法により、設計段階から維持管理段階へ途切れなくBIMモデルを活用でき、維持管理用BIMを新たに構築する手間・コストが縮小される。
 
 

検証

(1)維持管理用BIMモデル検証

2018年度より、上記に示す維持管理で使用するBIMモデルの課題について各種検証に取り組んでいるが、2020年6月に国土交通省が主催する建築BIM推進会議における「令和2年度 BIMを活用した建築生産維持管理プロセス円滑化モデル事業」の一環である連携事業に、「維持管理BIMモデルの維持管理業務への効果検証・課題分析」と題し、参画している。
 
本事業における検証のポイントは、①既存建物の維持管理用BIMモデルの提案、②維持管理業務へのBIMモデル活用検証、③維持管理業務を行う際の「使いやすいBIM」にするためのBIMモデル構築ルールの策定、という3点である。
 
築45年を経過している事務所ビルを題材として検証しており、いずれのポイントも維持管理業務にBIMモデルを導入する際の課題解決策として、建物を複数所有されている企業や団体がBIMを導入・活用する際の参考になると考える(図-5)。
 

図-5 国土交通省モデル事業(連携事業)の概要



(2)データ連携

今回の連携事業で力を入れている項目は、BIMモデルの格納情報と中長期保全計画の連携である。
 
維持管理用BIMモデルに搭載した情報から、仕様および数量データを抽出し、中長期保全計画策定ツールへ情報を取り込むことで、精度の高い中長期保全計画を策定できると考えている。
 
BIMモデルの各種データを中長期保全計画策定ツールへ取り込む際、中長期保全計画の各項目に、BIMモデルのデータを適切な単位と部材の組み合わせで取り込めるよう、BIMモデルの部材情報と中長期保全計画の項目とをひも付ける辞書(BIM-FMコンバートツール[(株)FMシステム])を用意し、自動的にBIMモデルの部材・数量情報が中長期保全計画策定ツールへ取り込めるようにした。連携の仕組みを示す(図-6)。
 

図-6 BIMモデルとFMツールの連携の仕組み



2020年10月の時点では、建物基準階部分の建築・電気設備・空調衛生設備統合モデルの作成と同時に、刊行物単価を参考にした単価一覧表データを作成している。この部分的なBIMモデルを用い、BIM-FMコンバートツールにて連携IDで突合し、単価・数量一覧の精度を検証したところ、比較的良い数値が出ており、年度末の報告に向け、全体的なBIMモデルにて検証を行う予定である。

 
 

さいごに

BIMを導入し6年が経過したが、ようやく社内的にも若い世代を中心に理解と習熟が進み、「まずはBIMでモデルを作ってみる」、「BIMの方が事業者との合意形成が早い」というような声が聞こえてくるようになった。また、国土交通省連携事業への参画は、ファシリティマネジメント分野のBIM活用の事例として注目される良いきっかけとなっている。
 
新築案件へのBIM活用はもとより既存建物へのBIM活用に対し、若い世代のマインドチェンジと国土交通省の連携事業の成果をうまく軌道に乗せ、将来的には数千を超える施設ごとに作成したFM-BIM?モデルを維持保全に活用し、既存建物への付加価値向上と維持保全業務の効率化を目標としたい。
 

日本郵政株式会社 施設部 担当部長 土田 真一郎

 
 
【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年


 
 
 



わが国の建築BIM推進会議における検討状況について

 

はじめに

(1)Society5.0の社会へ

デジタル技術がもたらす社会像として「Society 5.0」があります。
「Society 5.0」は、内閣府の第5期科学技術基本計画において、わが国が目指すべき未来社会の姿として平成28年に提唱されたものです。これまでの狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」とされています。
 
Society 5.0で実現する社会では、「IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり、さまざまな知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服します。また、人工知能(AI)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動走行車などの技術で、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題が克服されます。社会の変革(イノベーション)を通じて、これまでの閉塞感を打破し、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重し合える社会、一人一人が快適で活躍できる社会となります。」とあり、AI、IoT化といったデジタル化の進展による全体最適の結果、社会課題解決や新たな価値創造をもたらす可能性について提唱されています。

(2)i-Constructionの推進

わが国は、現在、人口減少社会を迎えており、潜在的な成長力を高めるとともに、働き手の減少を上回る生産性の向上が求められています。また、産業の中長期的な担い手の確保・育成等に向けて、働き方改革を進めることも重要であり、この点からも生産性の向上が求められています。
 
こうした観点から、国土交通省では、平成28年を「生産性革命元年」と位置付け、社会全体の生産性向上につながるストック効果の高い社会資本の整備・活用や、関連産業の生産性向上、新市場の開拓を支える取り組みを加速化し、生産性革命プロジェクトを実施してきました。この生産性革命プロジェクトの中にICTの活用等により調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新までのあらゆる建設生産プロセスにおいて抜本的な生産性向上を目指す「i-Construction」の取り組みを進めています。
 
「成長戦略フォローアップ」(令和元年6月21日閣議決定)では、i-Constructionの貫徹やBIMを国・地方公共団体が発注する建築工事で横展開し、民間発注工事へ波及拡大させていくこと、BIMによる建築確認申請の普及に向けた検討、国・地方公共団体、建設業者、設計者、建物所有者などの広範な関係者による協議の場を設置し、直面する課題とその対策や官民の役割分担、工程表等を2019年度中に取りまとめることが盛り込まれました。
 
これを踏まえ、i-Constructionのエンジンとして平成30年度から先行して土木分野で重要な役割を担ってきた「BIM/CIM推進委員会」において、令和元年度から建築分野のBIMについて拡充を図るため、BIM/CIM推進委員会の下にWGとして、後述する「建築BIM推進会議」を設置し、建築分野におけるBIM活用に向けた市場環境の整備について具体的な検討が開始されました。

 
 

建築分野におけるBIMの活用状況と課題

現在、諸外国では土木分野だけでなく、建築分野においてもBIMの活用が進んでいますが、わが国での建築分野におけるBIMの活用については、設計、施工の各分野がそれぞれのプロセスの最適化を目指して活用する段階に止まっており、さらなる生産性向上等のポテンシャルがあると考えられる、各プロセス間で連係した建築物のライフサイクルを通じたBIMの活用が進んでいない状況にあります。この結果、維持管理段階のBIMの活用は低調となり、またBIMの利用効果も限定的となっています。
 
また、国土交通省が平成29年12月~平成30年2月の期間で設計や施工の関係団体に対して調査したところ、設計分野でBIMの導入実績がある建築士事務所は3割程度ですが、半数以上の事務所がBIMの導入に関心をあることが示されています。しかし、特に設備設計事務所でのBIMの活用はかなり限定的で、導入に興味を持つ事務所も少ない状況です。施工分野については、大手ゼネコン等においてBIMは相当程度活用されていますが、中小建設会社ではほとんど使われていない状況です。
 
 

建築BIM推進会議の設置(令和元年6月)

国土交通省では、前述の「成長戦略フォローアップ」に基づき、建築物のライフサイクルにおいて、BIMを通じデジタル情報が一貫して活用される仕組みの構築を図り、建築分野での生産性向上を図るため、官民が一体となって「建築BIM推進会議」(以下「推進会議」という。)を令和元年6月に設置しました。
 
推進会議では、官民が連携し、建築業界全体が一丸となって今後の建築BIMの活用・推進について幅広く議論し、対応方策をとりまとめていくラウンドテーブルとなり、次の1~4の順で検討が進められました。
①各分野におけるBIMの検討状況の共有
②BIMの活用による建築物の生産・維持管理プロセスやBIMのもたらす周辺環境の「将来像」の検討・策定
③当該「将来像」を実現するための「ロードマップ」(官民の役割分担と工程表等)の検討・策定
④当該「ロードマップ」に基づく官民それぞれでの検討
なお、推進会議は、松村秀一東京大学大学院工学系研究科特任教授を委員長とし、学識者のほか、建築分野の設計、施工、維持管理、発注者、調査研究、情報システム・国際標準に係る幅広い関係団体により構成されています。国土交通省においても、住宅局建築指導課、不動産・建設経済局建設業課、大臣官房官庁営繕部整備課の3課で事務局を務めています。

 
 

「建築BIMの将来像と工程表」の策定(令和元年9月)

令和元年6月13日に第1回推進会議が開催され、国および関係団体等におけるBIMの活用・推進に係る検討状況等の報告・確認(①)が行われた後、7月に第2回、9月に第3回の推進会議が開催され、「建築BIMの将来像と工程表」(②・③)が了承されました。
 
特に「将来像」として、「いいものが」(高品質・高精度な建築生産・維持管理の実現)、「無駄なく、速く」(高効率なライフサイクルの実現)、「建物にも、データにも価値が」(社会資産としての建築物の価値の拡大)、の3つの視点で整理されるとともに、その将来像を実現するための「ロードマップ」が、次の(1)~(7)の7項目に整理されました。
 
(1)BIMを活用した建築生産・維持管理に係るワークフローの整備
(2)BIMモデルの形状と属性情報の標準化
(3)BIMを活用した建築確認検査の実施
(4)BIMによる積算の標準化
(5)BIMの情報共有基盤の整備
(6)人材育成、中小事業者の活用促進
(7)ビックデータ化、インフラプラットフォームとの連携
 
これら7項目については、それぞれ連携しつつ検討していくこととしています。また、これらに取り組む基本的な戦略として、以下の3点を掲げています。
 
・マーケットの機能を生かしながら、官・民が適切な役割分担の下で協調して進める
・先行的な取り組みを進め、その後に一般化を図る(PDCAサイクルによる精度の向上)
・可能な限り国際標準・基準に沿って進める
 
特に1点目の役割分担に留意し、(1)のワークフローの検討など、さまざまな業界間の調整が必要な部分については国が主体的に事務局を行う部会「建築BIM環境整備部会」を設置することとし、(2)~(5)については既に民間の関係団体等において検討が進められていることから、それらの各団体の活動を部会と位置づけ、個別課題に対する検討等を進めることとされました。(令和元年10月~)
 
なお、当面は(6)と(7)を念頭に置きながら、(1)~(5)の取り組みを先行して行うこととされています。
 
今後、これら部会においてさらに官民が一体となってBIMに関する議論が深まることが期待されます(図-1)。
 

建築BIMの将来像と工程表

図-1 「建築BIMの将来像と工程表」~7つの取組と工程表~

 
 

建築BIM環境整備部会の設置(令和元年10月)とガイドライン(第1版)の策定(令和2年3月)

(1)の検討を行う「建築BIM環境整備部会」は、志手一哉芝浦工業大学建築学部建築学科教授を部会長とし、推進会議と同様に幅広い関係団体等により構成されています。
 
特に、令和元年10月から、年度内に計4回の部会を開催し、BIMのプロセス横断的な活用に向け、関係者の役割・責任分担等の明確化等をするため、標準ワークフロー、BIMデータの受け渡しルール、想定されるメリット等を内容とする「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)」(以下「ガイドライン」という)の案の検討が行われました。
 
ガイドラインは建築BIM推進会議での承認を経て、令和2年3月に策定、公表されましたが、「第1版」として、今後新たな内容の追加も検討しつつ、継続的な見直しを前提としています。
 
特にガイドラインでは、「維持管理BIM作成業務」と「ライフサイクルコンサルティング業務」の2つについて言及されています。
 
維持管理BIM作成業務は、設計段階のBIMをベースとしつつ、施工段階で決まる設備施工情報や設備機器の品番、耐用年数等の必要な情報を入力・情報管理し、竣工後、維持管理段階にBIMを引き継ぐ役割です。
 
また、ライフサイクルコンサルティング業務は、維持管理段階に必要と想定されるBIMおよびそのモデリング・入力ルールを、設計者との契約前に事前に検討し、設計者・維持管理BIM作成者・施工者に共有する業務です。
 
これら業務を組み合わせることで、設計、施工、維持管理段階をBIMで効率的につなげ、デジタル情報を一貫して活用することが可能となるとしています(図-2)。
 

建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン

図-2 建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン

 
 

モデル事業の実施等(令和2年4月~)

令和2年度においては、第1版であるガイドラインの実証等を行うため、ガイドラインに沿って試行的にBIMを導入し、コスト削減・生産性向上等のメリットの定量的把握・検証や、運用上の課題抽出を行う、「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」を実施しています。本事業では、ガイドラインの実証だけでなく、BIMを活用した場合の具体的メリットを明らかにするとともに、BIM実行計画書(BEP(BIMExecution Plan))、BIM発 注 者 情報要(EIR(Employer’s InformaionRequirements))を含む検討の成果物を公表することとしています。
 
本事業は令和2年4月27日から6月1日にかけて募集を行い、40件の応募の中から、8件を「採択事業」に選定し、6月30日に公表しました。これら採択事業については、建築BIM環境整備部会において、検討の進捗状況や成果について報告いただき、議論いただく予定です(令和2年度は既に8月、11月に同部会を開催)。
 
また、試行的な建築プロジェクトにおけるBIM導入の効果等を検証する取り組みをさらに拡大するため、「連携事業」14件を選定し、6月10日に公表を行いました。これは、モデル事業に採択されなかった提案のうち、推進会議と連携し検討内容の熟度を高めることで、今後成果物が公表された場合
に当該成果物の発展性・波及性等が見込まれるものとして学識経験者等により評価されたものです。これら連係事業についても、採択事業と同様、建築BIM環境整備WGにおいて、検討の進捗状況や成果について報告いただき、議論いただく予定です(令和2年度は既に10月に同部会を開催)。
 
さらに、官庁営繕事業でも、BIMの活用拡大に向け、試行、課題の整理、対応方策の検討等が行われる予定です。
 
今年度は、これら官民の事業が推進会議と連携し、同会議において検討内容が議論・公表されることで、さらにBIMの検討が加速することが期待されます。
 
なお、前述の「採択事業」および「連係事業」については、今年度末に報告書が広く公表されるだけでなく、成果報告会を開催する予定です(図-3)。
 

BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業

図-3 BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業

 
 

各部会のさらなる連携(令和2年6月~)

令和元年度においては、既に民間の関係団体等において進められていた検討を部会と位置付け、個別に検討を進めてきましたが、令和2年度においては、それらの部会間の連携をさらに深め、共通する課題への取り組みをさらに進めていきます。
 
部会間での連携の内容と連携時期をとりまとめ、令和2年6月に公表したほか、7月より、部会間の連携を図る連絡会議を開催し、共有を図ることとしました。
 
また、各部会だけでなく、例えば設計三団体((公社)日本建築士会連合会、(一社)日本建築士事務所協会連合会、(公社)日本建築家協会)では、設計プロセスについてさらに深掘りした「設計BIM標準ワークフローガイドライン(案)」を策定すべく検討する等、建築BIM推進会議に参加している各団体もガイドラインを踏まえ、検討を進めています。
 
これら各部会・関係団体の活動について、引き続き建築BIM推進会議の下で適切に連携を図ってまいります(建築BIM推進会議は令和2年度は12月に既に開催、次回は年度末を予定)(図-4)。
 

建築BIM推進会議と連携する事業(連携事業)について

図-4 建築BIM推進会議と連携する事業(連携事業)について

 
 

今後の展開と展望

「成長戦略フォローアップ」(令和2年7月17日閣議決定)では、「官民が発注する建築設計・工事に試行的にBIMを導入し、効果検証や運用上の課題抽出等、BIMの普及に向けた方策の検討を進める」旨規定されています。
 
今後、推進会議では、前述の官民の事業を進めつつ、部会間・関係団体間で連携し、官民一体となってさらに検討が行われる予定です。
 
特に建築BIM環境整備部会では今後、BEP・EIRの策定、竣工モデルの定義、部品メーカーとのかかわり方の整理、契約や業務報酬、著作権等について盛り込むべく検討が行われる予定です。
 
こうした継続的な取り組みにより、マーケットのさまざまな事業でBIMが広く活用され、関係団体の検証も進み、将来的にはさまざまな人材の育成や幅広い事業者への普及、さらにはビッグデータ化、インフラプラットフォームとの連携等に広がっていくことを期待します。
 
 

国土交通省 住宅局 建築指導課

 
 
【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年


 
 
 



令和元年東日本台風(台風第19号)災害復旧業務での取り組み

2021年9月21日

 

はじめに

弊社では、現場での測量調査の作業効率向上を図るため2017年から地上レーザースキャナーを導入しました。これと同時に社内のi-Constructionへの取り組みを加速させるため「i-Conプロジェクト委員会」が中心となり、積極的に地上レーザースキャナーやドローン等を業務に取り入れて、活用方法を模索しています。日頃の取り組みの中から災害復旧での事例を紹介します。
 
 

令和元年台風第19号における災害復旧業務

2019年10月12日、本州に上陸した台風第19号による記録的な豪雨により長野県内の多くの河川で氾濫が発生しました。弊社は、災害復旧を迅速に行うために、長野県上田市の一級河川 神川において地上レーザースキャナーを活用して被災箇所の現地測量を実施しました。
 
 

被災の状況

信濃川水系一級河川 神川は幅15~20m、高さ5~15mの谷状地形を流下しており、高さ5mのブロック張りや石張り護岸で流路を保護しています。台風第19号の大雨による増水により延長800mにわたり約3~4mの河床洗堀が生じたことで、護岸工基礎の露出および崩壊が発生しました(図-1、2)。
 

河床洗掘による護岸基礎の崩壊

図-1 河床洗掘による護岸基礎の崩壊(1)




河床洗掘による護岸基礎の崩壊

図-2 河床洗掘による護岸基礎の崩壊(2)



 
 

安全かつ少人数での現地立ち入り

現地踏査で被災状況を確認する際は、安全第一を優先し護岸崩壊等による二次災害に注意しながら行う必要がありました。被災箇所の見落としを防止するための工夫として360°カメラによる全周囲撮影を行い、近接できない箇所は10mまで伸縮可能な自撮り棒を使用して撮影することで安全に配慮しました。
 
これにより、被災箇所の特定と測量範囲を迅速に発注者と協議ができました。現地踏査の結果、被災を受けた箇所は洗堀により護岸の裏込材が吸い出され崩壊の危険があること、測量のために近づくことが難しく被災範囲が広いので測量に要する期間と人員が多くか
かることが分かりました。当時、長野県内の複数地域における同時災害対応により、現地に入る社員の数が限られており、この問題を解決するため地上レーザースキャナーの採用により、点群データから設計に必要な図面を作成することに切り替えました。
 
 

地上レーザースキャナーによる計測

点群データから詳細設計に必要な図面を作成するために、従来の測量精度と同等またはそれ以上の精度確保を目標としました。
 
そのため、点群データの品質は、地上レーザースキャナーで用いる標定点の観測に、基準点測量および水準測量を用いて精度管理をしました。
 
 

約200カ所の据え替え

詳細な図面を作成するために、河川構造物の被災状況を把握しながら、隅々まで計測を行う必要があります。現地作業において苦労した点は、死角による計測漏れを防ぐために、スキャナーの設置箇所を考えながら作業を行ったことです。最終的に約200カ所にスキャナを据え替えての観測になりました(図-3)。
 

地上レーザースキャナーによる作業

図-3 地上レーザースキャナーによる作業



 

河床(水中部)の計測

弊社保有の地上レーザースキャナーでは水中部の計測はできないため、河床の計測には従来のトータルステーションを用い、横断方向2m×縦断方向4mの間隔で上流側から河床を計測し、水中部の点群データを補完しました。幸い作業時の水深は50cm程度ではありましたが、水難事故防止のため水中部の作業時にはフローティングベストおよびドライスーツを着用し安全対策を行いました。
 
 

点群データからの平面図作成

点群データから自動で平面図を作成することは、弊社の技術では難しいため、現地踏査で撮影した360°画像と、3D点群処理システムを用い、手作業での平面図作成を行いました。
 
作成方法は、従来の地形測量と同様に、構造物や変化点など観測点を結線していきますが、数十億点という点群データを基に結線していくので、従来の測量では計測できない急斜面の地形や、複雑な形状の地物を忠実に表現することが可能となりました。大容量の点群データはストレスになります。ストレスなく処理するために高性能パソコンにより作業速度を速めました(図-4)。
 
点群データからの平面図作成



 

河川線形および縦横断図の作成

平面図と点群データのコントロールポイントを基に現況の河川線形と復旧延長をパソコン上にて検討を行い決定しました。
 
点群データの利活用における最大のメリットとして、どの箇所でも自由に断面が切れるところです。今回の災害現場においては、河床洗掘により不安定な河川構造物や、護岸が崩壊している箇所など多数の被災箇所があり、多くの断面図が必要になりました。しかし、平面図作成と同様に、点群データを用いて全てパソコン上にて図面の作成が行え、計測漏れによる現場での追加作業は生じませんでした(図-5、6)。
 
架橋位置は横断図の本数が多く、通常の測量では時間と人員を費やしますが、今回は容易に作図できました(図-7)。
 

コントロールポイントの抽出

図-5 コントロールポイントの抽出




河川線形の検討

図-6 河川線形の検討




 
点群データからの横断図作成


 

従来調査と地上レーザースキャナー活用の比較

作業期間の短縮効果を、作業項目ごとのトータル日数と人工により従来調査との比較を行いました。
 
なお、従来調査は、これまでの経験から本現場状況に当てはめた想定であり、現場状況に応じて作業効率も変わるため、ご注意願います。
 
本事例では従来調査に比べ、地上レーザースキャナー活用による調査が、9日間の短縮25人工の削減の効果があり、迅速な災害復旧対応の実現と、作業従事者の負担軽減が図られる結果が得られました(図-8)。
 

従来調査と地上レーザースキャナー活用の比較

図-8 従来調査と地上レーザースキャナー活用の比較



おわりに

今回、広範囲での詳細な点群データの計測を実施した結果、当初の想定を上回る生産性の向上が見られました。スキャナーの設置回数が多くなる現場では、スキャナー本体が小型かつ軽量であるほど効率が増すことも分かりました。
 
災害復旧では迅速な対応が必要となるため、現場作業での機動力と対応力が重要となってきます。ドローンや地上レーザースキャナー等の計測技術の向上により現場作業が容易になると言われていますが、災害などの緊急時に保有機材を使いこなせるかは、通常業務での活用による実績が決め手と考えます。
 
現在、私たちは、建設コンサルタントとして本格的なBIM/CIM運用を目指し、新技術の普段使いに取り組んでいます。
 
これからも向上心と好奇心をなくさぬよう努めてまいります。
 

BIM/CIM業務での社内ミーティング

BIM/CIM業務での社内ミーティング



株式会社 フジテック 技術部 小田切 裕弥

 
 
【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年


 
 
 



土木設計における生産性改革−パラメトリックモデルによる設計の取り組みについて−

2021年9月13日

 

パラメトリック設計の概要

(1)はじめに

本稿は、土木設計分野における新たなBIMCIMソリューションによる生産性改革の取り組みについて報告するものである。土木構造物の設計は、自動車などの製造業とは異なり、ある設計に対して条件はさまざまであり、単品生産のオーダーメード設計を強いられるものである。このことは、生産性に対して非常に不利であり、われわれコンサルの特徴であり足かせであった。特に、橋梁などの構造物設計にとって、設計計算、作図や数量計算は膨大な量であり、自動化は最重要課題である。また、初期段階における条件確定の持つ意味は大きい。条件変更による損失は工程が遅いほど甚大である。工程的に検討する内部的なフロントローディングを早急にできれば、このリスクを減らし生産性と設計の妥当性向上に寄与すると考えている。そこで、パラメトリックCADによる自動化が解決の糸口と考え導入を進め始めている。

(2)パラメトリックモデルの特徴

入力条件をパラメトリック(変数)とし、3Dモデルを出力できるCADをパラメトリックCADとするならば、3Dモデルの自動化もパラメトリックモデルの一種として考えてよいだろう(図-1)。

InfraWorksの橋梁計画の例

図-1 InfraWorksの橋梁計画の例




■オートデスク株式会社のCivil3D、Revit、InfraWorks
■川田テクノシステム株式会社のV-nasClair
■株式会社三英技研のSTRAXcube
 
これらは、線形条件・下部工設計条件・躯体寸法条件などの変数を自在に変更して、3Dモデルを自動に出力する自動設計タイプのパラメトリックCADである。しかし、そのロジックは各ベンダーの用意した変数に限られたものであり、詳細設計の場合や特殊事情全てに対応しているわけではない。汎用であるため、適用外の場合は手動で修正や作り直しになる場合がある。設計精度が低い計画段階や比較設計レベルでは問題とされないが、詳細レベルでは、従来のように3DCADによる積み上げ作業が主な手段となることが多い。
 
■ダッソー・システムズ株式会社 3D EXPERIENCE(CATIA)
 
このCADシステムは、パラメトリックCADの中では、汎用性を追求したもので、作図機能・コマンドそのものをプログラミングしていくこともできる。例えば、高さ20cmで直径が5cm肉厚1cmのコップを作る場合に5cmの円を高さ20cmに押し出して、肉厚が1cmを残して削るというロジック(論理構造)と入力変数を記憶できるのである。また、複雑な計算プログラム(VBA、C+、C#など)が組み込め、返り値を変数として用いることができる。よって、橋台の天端勾配を途中で切り替えたいなど、汎用ソフトではできなかったものでも、自由度が極めて広く応用が利くものである。さらには、応力度計算を組み込めば許容応力度を満足する部材厚さを返り値とした作図が可能であり、構造のシミュレーションに大きく貢献するものである。CATIAは、万能な究極のエンジニアツールであるが、使用には、多くの知識(幾何構造・プログラミング・エンジニアの資質)が必要であり習熟に多くの時間と投資が必要になる。しかしながらその恩恵は大きく、膨大な収束作業が必要な業務を省力化できるものである。また、類似業務に再利用が可能で生産性向上への効果が非常に大きい。
 

(3)BIM/CIM技術および自動化の取り組みの目的

これらの自動設計を含むパラメトリックCADのメリットは以下である。
 
①計画・設計プロセスを改善⇒膨大な積み上げ式の設計プロセスの改善。
 
②シミュレーション・フロントローディングが容易である。⇒3次元モデルの作成・変更が素早くでき、分かりやすく表現できるため合意形成が円滑に行える。環境・景観、使用性、施工方法、警察・河川協議の合意が迅速に行える。
 
③ミスを防止できる。⇒フロントローディングの効果により早くミスに気が付く⇒ミスしても早く修正できる。43次元モデルから2Dを切り出すことから縦横断・平面図と数量の不整合が生じない。
 
当社では、オートデスク社のAECC、ダッソー・システムズ社のCATIA、川田テクノシステム社のV-nasClair、三英技研社のSTRAXcubeなどのCADソフトを導入し、これらのソフトの互換性の検証と合わせ、さまざまな技術活用場面、顧客ニーズに応じた使い分けを実践している。また、3次元化と併行してCAD、設計計算と連携した自動化にも取り組んでいるところである。取り組みにおける一義の目的は、作業の効率化と働き方改革、生産性改革である。過去の経験的かつ段階的な設計ステップを全て見直し、新たな設計ステップを作り上げるとともに、生産性の向上を図ることを目指している。また、効率化にとどまらず、技術力の向上、コストパフォーマンスの向上の三位一体を目指している。
 
 

パラメトリック3Dシステムの導入

ダッソー・システムズ社とMOU(覚書)を締結し、パラメトリックによる設計、テンプレートの作成などを実施している。また、令和元年10月には「3DEXPERIENCE FORUM Japan2019」にて、砂防堰堤および橋梁の高度なシミュレーション能力や高い信頼性と生産性能力などの成果を公表した。

(1)砂防分野における活用

砂防分野では、計画および予備設計段階での砂防堰堤配置計画のパラメトリックによるテンプレートを作成し活用している。地形を作成し、砂防堰堤を任意の位置に設置し砂防堰堤のコンクリート体積、堆積土砂量を自動計算できる。
 
また、砂防堰堤の高さを任意に変化させることで堆積土砂量を再計算でき、さらに、堆積土砂量を設定し、自動的に土砂量に応じた任意の位置での砂防堰堤高を計算できる(図-2 ~7)。
 

砂防ダムの高さ変更計算の例

図-2 砂防ダムの高さ変更計算の例




砂防ダムの根入れ自動計算例

図-3 砂防ダムの根入れ自動計算例




堆積土砂量から堤体規模を逆算の例

図-4 堆積土砂量から堤体規模を逆算の例




収束自動計算例

図-5 収束自動計算例




副堰堤・水叩・側壁護岸の自動計算例

図-6 副堰堤・水叩・側壁護岸の自動計算例




工事用道路の入力例

図-7 工事用道路の入力例



従来、この検討は河川線形に対して20mピッチの横断図を作成して、平均断面法にて算出するが堤体の位置や高さが変数となるため、その解は収束計算となり手間が非常に多く1カ月かかる検討である。この方法であれば数日程度でまとめることが可能であり、計画および予備設計段階での効率化に寄与している。
 

(2)橋梁分野における活用

橋梁分野では、詳細度500レベル(例えば、上部工では構造詳細、下部工では配筋レベルまで)のパラメトリックによる上部工(鋼およびコンクリート)、下部工(橋台、橋脚、杭)のテンプレートを作成している。形状の変更に伴い、上部工では、線形要素、桁本数、桁間隔、配筋、防護柵、下部工では、形状に追随して配筋などを自動で再配置することが可能となっている。数量などの属性情報は、CATIAが標準として実装している機能で自動計算される(図-8~12)。

 

曲線鋼歩道橋の例

図-8 曲線鋼歩道橋の例(その1)




曲線鋼歩道橋の例

図-9 曲線鋼歩道橋の例(その2)




基礎フーチングの例

図-10 基礎フーチングの例(その1)




基礎フーチングの例

図-11 基礎フーチングの例(その2)




LOD400の橋梁詳細モデル

図-12 LOD400の橋梁詳細モデル



(3)実施体制

社員および関係会社の人材育成を図るとともに、海外の協力会社の技術者、ダッソー・システムズ社の協力のもと、CATIA活用を推進している。
 
 

3Dによる設計の自動化

当社では、自社開発した橋梁一次選定プログラムと連動する川田テクノシステ ム 社V-nasClair、STRKit、下部工詳細設計計算ソフトを利用した自動設計に取り組んでいる。V-nasClairは、昨今、国土交通省の地方整備局でも導入され始めており、当社においても導入し活用を推進している(図-13、14)。
 

V-nasClair、STR_Kitと連動した自動設計の概要

図-13 V-nasClair、STR_Kitと連動した自動設計の概要




STR_Kitによる橋梁下部工モデル

図-14 STR_Kitによる橋梁下部工モデル

 
 

技術分野における活用と実施体制

V-nasClairとSTR Kitの組み合わせにより、橋梁分野では、先行して自動設計の仕組みを構築し、設計段階での活用を開始している。また、河川分野では、V-nasClairとRiver Kitの組み合わせによる3次元図面作成の試行を開始している。なお、他分野では、顧客のニーズに合わせてV-nasClairを利用している。設計計算に関わる事項は、全社の橋梁系技術者、河川系技術者で利用しており、また、3次元図面作成は、オペレーターを中心に取り組んでいる。
 
 

i-Construction、BIM/CIM推進の課題

働き方改革や生産性改革の推進などを基本として、社内におけるBIM/CIMに精通したさらなる人材の育成が急務である。また、国内では、設計段階からBIM/CIM対応することが可能な協力会社が不足している。複数のBIM/CIM対応ソフトの導入、BIM/CIM対応ハードウエアへの更新などを考慮すると、初期段階では多くの投資が必要となる。
 
 

おわりに

パラメトリックデザインによる3次元設計を本格導入することで精度が高く、高度なシミュレーション・フロントローディングが可能である。その根幹となる変数とロジックからなる「数的論理構造」が重要なカギとなる。これらの蓄積はAI技術への応用が可能であり、将来の革新技術として期待されている。また、「数的論理構造」の蓄積を新人教育に導入することでエンジニアとしての資質向上に非常に有益であると同時に、若いエンジニアの自信や誇りにつながると感じており、技術の空洞化問題に対する一つの解決策でもあると考えている。
 
同様に、社外も視野に入れた早急な人材育成を推進するとともに、今後は、設計段階での活用にとどまらず、計画段階からのBIM/CIM技術の応用やデジタルツインによる維持・管理、運用への応用を目指している。
 
近年のIT技術は日進月歩であり、i-Constructionはさらに加速するだろう。このスピードと高度化に対応するためには、新しい技術に真摯に向き合い、より広い視野を持つことが必要と考える。業界の個別要素技術はもとより、通信技術や情報処理技術分野などの広い知見・技術がさらに必要になってきている。
 
 

パシフィックコンサルタンツ株式会社 品質技術開発部 i-Con推進センター 伊東 靖

 
 
【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年


 
 
 



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