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2021年9月27日
はじめに2016年度の政府成長戦略でi-constructionが掲げられ、主に公共土木建築の中でBIM/CIMの推進が進められてきた。その後、2018年度にはデータ駆動型社会、Society 5.0の施策が示され、民間公共問わず建築分野のBIM推進が位置付けられたことを受け、2019年4月、建築BIM推進会議がこの目標を達成するために設置された。また、2019年6月に閣議決定された、成長戦略実行計画の中の「令和元年度革新的事業活動に関する実行計画」では、図-1に示すように、建築確認審査に対しても、2022~2025年度に「BIMによる建築確認申請の推進」が位置付けられ、BIMによる建築確認の実現が必須となった。このようなBIM推進に対応する施策が続々と打ち出される中、あらためてBIMデータを活用した建築確認申請の開発の現状と展望について説明したい。 成長戦略におけるロードマップとその対応建築確認におけるBIMの活用は、日本建築行政会議指定機関委員会を事務局とする「建築確認におけるBIM活用推進協議会」(以下、協議会)で検討が進められており、建築BIM推進会議における「BIMを活用した建築確認検査の実施検討部会(部会3)」に位置付いている。 確認審査におけるBIMデータの活用しかし、Step1+は、BIMによる設計環境下で、効率的に作成された、従前の申請図書を審査者が審査することを示しており、在来審査のBIM対応の水準にとどまると言える。2019年度の協議会の検証においても、確認の試審査は、BIMソフトウエアから出図した図書イメージであり、審査者としては、申請者側が「BIMならでは」の作図をしていることについて意識していないため、分かりやすい図書の表現をしている設計者側の意図が十分伝わっていないという指摘がなされている。言い換えれば、図書の生成元となる、BIMデータから出図されているという背景の理解の不足が、設計側の図書表現の意図の理解の支障となっているということである。 BIMデータの活用に向けた課題まず、現行の建築確認審査においては、設計者が建築基準法施行規則に従って表現した明示すべき事項を図に表現し、その表現を基に、審査者側は、規則により申請者が審査項目の内容について明示した事項について、審査者側はその内容について確認処分を行うものであるのに対し、BIMデータによる審査の場合は、明示すべき事項が容易に確認することができず、BIMデータから審査者が審査項目に当たるデータを能動的に検索して、その内容の確認処分をすることとなる。つまり、BIMデータによる審査の場合に、申請者側の明示義務を果たすこととなるかという懸念である。これについては、私見ではあるが、BIMモデル閲覧における明示すべき事項の要件と、当該事項の有無や内容の確認にかかる確認処分行為の業務方法について規定を定め、コンセンサスを得ることで対応しうるのではないかと考えている。 建築確認BIMデータの活用の将来確認審査時にBIMデータを受領して建築確認を行った場合、提出されたBIMデータは正本としての位置付けとなると考えられ、着工後の中間工程検査、完了時検査において、正本としてのデータに対して検査が行われることが考えられる。例えばStep3のような、BIMデータのみで確認がされている場合、確認済みのBIMデータに対して施工の結果を検査することになるということである。その場合、確認済みBIMデータと遠隔臨場技術と組み合わせたリモート検査の実現など、withコロナ時代に対応する新しい検査の方法の開発も近い将来に開発されるかもしれない。 図表出典、参考資料等 1)令和元年度革新的事業活動に関する実行計画(令和元年6月21日閣議決定)、p36 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/ps2019.pdf 2)建築確認におけるBIM活用推進協議会HP https://www.kakunin-bim.org/ 3)武藤正樹:「BIMと建築確認検査業務への応用」、 えぴすとら73号、 2016.4、建築研究所 https://www.kenken.go.jp/japanese/contents/publications/epistura/pdf/73.pdf 4)Ma s aki MUTO: e-submissioncommon guidelines for introduce BIM to building process、 Fig.10 Difference in consciousness of BIM between applicant and regulators、 p12、 buildingSMART International Technical Report No. RR-2020-1015-TR、 2020.10 https://www.buildingsmart.org/standards/bsi-standards/standards-library/#reports 5)https://bygglett.catenda.com/ 国立研究開発法人建築研究所 上席研究員 武藤 正樹
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はじめに日本郵政グループでは、数千を超える施設を所有している。内訳としては約95%が郵便施設であり、その他にはオフィスビル、宿泊施設、集合住宅(社宅)、データセンターと多岐にわたっている。日本郵政施設部は、持株会社である日本郵政株式会社内の一級建築士事務所として、郵政グループ所有施設の企画・設計から工事発注・工事監理、維持・保全、中長期保全計画の策定までを業務の対象とし、いわば建築物のライフサイクル全般にわたる業務を行っている。 BIMの導入日本郵政グループは、2012年の東京駅前JPタワーを皮切りに不動産事業を経営の柱の一つとして力を入れ始め、駅前にある比較的規模の大きな郵便局、社宅跡地などを対象とし、コンバージョン・建て替えなどの不動産施設を再活用する検討を開始した。 BIMの活用方針BIMの特徴と弊社の業務範囲を踏まえ、新築設計時とファシリティマネジメントの2分野に対し、それぞれBIMの活用方針を掲げることとした。特にファシリティマネジメントの分野では、BIMモデルの属性情報をデータベースの一つとして位置付け、各種のファシリティマネジメントツールと連携させることで、紙図面と設備機器台帳で行っている従来の維持管理業務をデジタル化し、BPRを進め、業務の高精度化と高効率化の検討を行うこととした(図-1)。 設計上の課題と解決策(1)設計プロセスの変化新築プロジェクトの企画からBIMにより設計を進めるプロセスは、今までのCADによる2次元での設計プロセスとは大きく異なることが分かった。 (2)BIMモデルの詳細度いくつかの新築案件でBIMモデルを企画・設計の初期段階から試行作成した結果、設計進捗の各段階においてBIMモデルに求められるデータ量および種類が異なることが判明した。よって、それぞれの設計段階における入力データ詳細度とデータ分類の整理が必要なことが分かった。 (3)課題の解決策フロントヘビーの問題は、それと引き換えに享受できるメリットも大きいことが分かった。 維持管理上の課題と解決策(1)維持管理で使用するBIMモデルの課題いくつかの新築物件において、維持管理で使用するBIMモデルを作成するプロセスを試行した。設計BIM・施工BIMをもとに、施工段階で変更される建具位置や取り合い、メーカー、仕様、機器型番等、維持管理に役立つと考えられる情報を維持管理用BIMモデルへ入力したところ、情報量が過多となり、起動に時間がかかることに加え、スムーズに欲しい情報にたどり着かない「維持管理業務に使えないBIMモデル」となってしまった。そこで設備機器の表現や曲面部分を簡素化するなど、維持管理上では不要な部分の簡略化を試みたが、実質的にモデルの作り直しになってしまい、非常に時間と手間がかかった。 (2)課題の解決策①情報レベルの明確化 ②FM-BIM®モデルの定義 BIMモデルの使用を設計から維持保全業務まで拡大すること、使用する端末上でストレスなく動作することを目的として、上記の「BIMモデル搭載情報」に従い、維持保全業務に必要十分なデータ詳細度に抑えたFM-BIM®モデルを定義した。 前述の「BIMの活用方針」を時系列的に表したイメージグラフ(図-4)をもとに、FM-BIM®モデルの作成手法とメリットを以下に示す。 設計時のBIMモデルを有効に活用するため、設計が進捗し、実施設計時点のある地点から発注コスト算出用とは別に、維持管理に使用するモデルとしてBIMモデルを分岐・派生させておく。そして施工段階で決まる建設情報のうち、維持管理業務に関連する情報をFM-BIM®モデルへ付加する。竣工後は、このFM-BIM®モデルを活用し、維持保全業務を行うこととする。この作成手法により、設計段階から維持管理段階へ途切れなくBIMモデルを活用でき、維持管理用BIMを新たに構築する手間・コストが縮小される。 検証(1)維持管理用BIMモデル検証2018年度より、上記に示す維持管理で使用するBIMモデルの課題について各種検証に取り組んでいるが、2020年6月に国土交通省が主催する建築BIM推進会議における「令和2年度 BIMを活用した建築生産維持管理プロセス円滑化モデル事業」の一環である連携事業に、「維持管理BIMモデルの維持管理業務への効果検証・課題分析」と題し、参画している。 (2)データ連携今回の連携事業で力を入れている項目は、BIMモデルの格納情報と中長期保全計画の連携である。 2020年10月の時点では、建物基準階部分の建築・電気設備・空調衛生設備統合モデルの作成と同時に、刊行物単価を参考にした単価一覧表データを作成している。この部分的なBIMモデルを用い、BIM-FMコンバートツールにて連携IDで突合し、単価・数量一覧の精度を検証したところ、比較的良い数値が出ており、年度末の報告に向け、全体的なBIMモデルにて検証を行う予定である。 さいごにBIMを導入し6年が経過したが、ようやく社内的にも若い世代を中心に理解と習熟が進み、「まずはBIMでモデルを作ってみる」、「BIMの方が事業者との合意形成が早い」というような声が聞こえてくるようになった。また、国土交通省連携事業への参画は、ファシリティマネジメント分野のBIM活用の事例として注目される良いきっかけとなっている。 日本郵政株式会社 施設部 担当部長 土田 真一郎
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はじめに(1)Society5.0の社会へデジタル技術がもたらす社会像として「Society 5.0」があります。 (2)i-Constructionの推進わが国は、現在、人口減少社会を迎えており、潜在的な成長力を高めるとともに、働き手の減少を上回る生産性の向上が求められています。また、産業の中長期的な担い手の確保・育成等に向けて、働き方改革を進めることも重要であり、この点からも生産性の向上が求められています。 建築分野におけるBIMの活用状況と課題現在、諸外国では土木分野だけでなく、建築分野においてもBIMの活用が進んでいますが、わが国での建築分野におけるBIMの活用については、設計、施工の各分野がそれぞれのプロセスの最適化を目指して活用する段階に止まっており、さらなる生産性向上等のポテンシャルがあると考えられる、各プロセス間で連係した建築物のライフサイクルを通じたBIMの活用が進んでいない状況にあります。この結果、維持管理段階のBIMの活用は低調となり、またBIMの利用効果も限定的となっています。 建築BIM推進会議の設置(令和元年6月)国土交通省では、前述の「成長戦略フォローアップ」に基づき、建築物のライフサイクルにおいて、BIMを通じデジタル情報が一貫して活用される仕組みの構築を図り、建築分野での生産性向上を図るため、官民が一体となって「建築BIM推進会議」(以下「推進会議」という。)を令和元年6月に設置しました。 「建築BIMの将来像と工程表」の策定(令和元年9月)令和元年6月13日に第1回推進会議が開催され、国および関係団体等におけるBIMの活用・推進に係る検討状況等の報告・確認(①)が行われた後、7月に第2回、9月に第3回の推進会議が開催され、「建築BIMの将来像と工程表」(②・③)が了承されました。 建築BIM環境整備部会の設置(令和元年10月)とガイドライン(第1版)の策定(令和2年3月)(1)の検討を行う「建築BIM環境整備部会」は、志手一哉芝浦工業大学建築学部建築学科教授を部会長とし、推進会議と同様に幅広い関係団体等により構成されています。 モデル事業の実施等(令和2年4月~)令和2年度においては、第1版であるガイドラインの実証等を行うため、ガイドラインに沿って試行的にBIMを導入し、コスト削減・生産性向上等のメリットの定量的把握・検証や、運用上の課題抽出を行う、「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」を実施しています。本事業では、ガイドラインの実証だけでなく、BIMを活用した場合の具体的メリットを明らかにするとともに、BIM実行計画書(BEP(BIMExecution Plan))、BIM発 注 者 情報要(EIR(Employer’s InformaionRequirements))を含む検討の成果物を公表することとしています。 各部会のさらなる連携(令和2年6月~)令和元年度においては、既に民間の関係団体等において進められていた検討を部会と位置付け、個別に検討を進めてきましたが、令和2年度においては、それらの部会間の連携をさらに深め、共通する課題への取り組みをさらに進めていきます。 今後の展開と展望「成長戦略フォローアップ」(令和2年7月17日閣議決定)では、「官民が発注する建築設計・工事に試行的にBIMを導入し、効果検証や運用上の課題抽出等、BIMの普及に向けた方策の検討を進める」旨規定されています。 国土交通省 住宅局 建築指導課
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2021年9月21日
はじめに弊社では、現場での測量調査の作業効率向上を図るため2017年から地上レーザースキャナーを導入しました。これと同時に社内のi-Constructionへの取り組みを加速させるため「i-Conプロジェクト委員会」が中心となり、積極的に地上レーザースキャナーやドローン等を業務に取り入れて、活用方法を模索しています。日頃の取り組みの中から災害復旧での事例を紹介します。 令和元年台風第19号における災害復旧業務2019年10月12日、本州に上陸した台風第19号による記録的な豪雨により長野県内の多くの河川で氾濫が発生しました。弊社は、災害復旧を迅速に行うために、長野県上田市の一級河川 神川において地上レーザースキャナーを活用して被災箇所の現地測量を実施しました。 被災の状況信濃川水系一級河川 神川は幅15~20m、高さ5~15mの谷状地形を流下しており、高さ5mのブロック張りや石張り護岸で流路を保護しています。台風第19号の大雨による増水により延長800mにわたり約3~4mの河床洗堀が生じたことで、護岸工基礎の露出および崩壊が発生しました(図-1、2)。 安全かつ少人数での現地立ち入り現地踏査で被災状況を確認する際は、安全第一を優先し護岸崩壊等による二次災害に注意しながら行う必要がありました。被災箇所の見落としを防止するための工夫として360°カメラによる全周囲撮影を行い、近接できない箇所は10mまで伸縮可能な自撮り棒を使用して撮影することで安全に配慮しました。 地上レーザースキャナーによる計測点群データから詳細設計に必要な図面を作成するために、従来の測量精度と同等またはそれ以上の精度確保を目標としました。 約200カ所の据え替え詳細な図面を作成するために、河川構造物の被災状況を把握しながら、隅々まで計測を行う必要があります。現地作業において苦労した点は、死角による計測漏れを防ぐために、スキャナーの設置箇所を考えながら作業を行ったことです。最終的に約200カ所にスキャナを据え替えての観測になりました(図-3)。
河床(水中部)の計測弊社保有の地上レーザースキャナーでは水中部の計測はできないため、河床の計測には従来のトータルステーションを用い、横断方向2m×縦断方向4mの間隔で上流側から河床を計測し、水中部の点群データを補完しました。幸い作業時の水深は50cm程度ではありましたが、水難事故防止のため水中部の作業時にはフローティングベストおよびドライスーツを着用し安全対策を行いました。 点群データからの平面図作成点群データから自動で平面図を作成することは、弊社の技術では難しいため、現地踏査で撮影した360°画像と、3D点群処理システムを用い、手作業での平面図作成を行いました。
河川線形および縦横断図の作成平面図と点群データのコントロールポイントを基に現況の河川線形と復旧延長をパソコン上にて検討を行い決定しました。 ![]() 従来調査と地上レーザースキャナー活用の比較作業期間の短縮効果を、作業項目ごとのトータル日数と人工により従来調査との比較を行いました。 おわりに今回、広範囲での詳細な点群データの計測を実施した結果、当初の想定を上回る生産性の向上が見られました。スキャナーの設置回数が多くなる現場では、スキャナー本体が小型かつ軽量であるほど効率が増すことも分かりました。 株式会社 フジテック 技術部 小田切 裕弥
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2021年9月13日
パラメトリック設計の概要(1)はじめに本稿は、土木設計分野における新たなBIMCIMソリューションによる生産性改革の取り組みについて報告するものである。土木構造物の設計は、自動車などの製造業とは異なり、ある設計に対して条件はさまざまであり、単品生産のオーダーメード設計を強いられるものである。このことは、生産性に対して非常に不利であり、われわれコンサルの特徴であり足かせであった。特に、橋梁などの構造物設計にとって、設計計算、作図や数量計算は膨大な量であり、自動化は最重要課題である。また、初期段階における条件確定の持つ意味は大きい。条件変更による損失は工程が遅いほど甚大である。工程的に検討する内部的なフロントローディングを早急にできれば、このリスクを減らし生産性と設計の妥当性向上に寄与すると考えている。そこで、パラメトリックCADによる自動化が解決の糸口と考え導入を進め始めている。 (2)パラメトリックモデルの特徴入力条件をパラメトリック(変数)とし、3Dモデルを出力できるCADをパラメトリックCADとするならば、3Dモデルの自動化もパラメトリックモデルの一種として考えてよいだろう(図-1)。 ■オートデスク株式会社のCivil3D、Revit、InfraWorks ■川田テクノシステム株式会社のV-nasClair ■株式会社三英技研のSTRAXcube これらは、線形条件・下部工設計条件・躯体寸法条件などの変数を自在に変更して、3Dモデルを自動に出力する自動設計タイプのパラメトリックCADである。しかし、そのロジックは各ベンダーの用意した変数に限られたものであり、詳細設計の場合や特殊事情全てに対応しているわけではない。汎用であるため、適用外の場合は手動で修正や作り直しになる場合がある。設計精度が低い計画段階や比較設計レベルでは問題とされないが、詳細レベルでは、従来のように3DCADによる積み上げ作業が主な手段となることが多い。 ■ダッソー・システムズ株式会社 3D EXPERIENCE(CATIA) このCADシステムは、パラメトリックCADの中では、汎用性を追求したもので、作図機能・コマンドそのものをプログラミングしていくこともできる。例えば、高さ20cmで直径が5cm肉厚1cmのコップを作る場合に5cmの円を高さ20cmに押し出して、肉厚が1cmを残して削るというロジック(論理構造)と入力変数を記憶できるのである。また、複雑な計算プログラム(VBA、C+、C#など)が組み込め、返り値を変数として用いることができる。よって、橋台の天端勾配を途中で切り替えたいなど、汎用ソフトではできなかったものでも、自由度が極めて広く応用が利くものである。さらには、応力度計算を組み込めば許容応力度を満足する部材厚さを返り値とした作図が可能であり、構造のシミュレーションに大きく貢献するものである。CATIAは、万能な究極のエンジニアツールであるが、使用には、多くの知識(幾何構造・プログラミング・エンジニアの資質)が必要であり習熟に多くの時間と投資が必要になる。しかしながらその恩恵は大きく、膨大な収束作業が必要な業務を省力化できるものである。また、類似業務に再利用が可能で生産性向上への効果が非常に大きい。 (3)BIM/CIM技術および自動化の取り組みの目的これらの自動設計を含むパラメトリックCADのメリットは以下である。 パラメトリック3Dシステムの導入ダッソー・システムズ社とMOU(覚書)を締結し、パラメトリックによる設計、テンプレートの作成などを実施している。また、令和元年10月には「3DEXPERIENCE FORUM Japan2019」にて、砂防堰堤および橋梁の高度なシミュレーション能力や高い信頼性と生産性能力などの成果を公表した。 (1)砂防分野における活用砂防分野では、計画および予備設計段階での砂防堰堤配置計画のパラメトリックによるテンプレートを作成し活用している。地形を作成し、砂防堰堤を任意の位置に設置し砂防堰堤のコンクリート体積、堆積土砂量を自動計算できる。 従来、この検討は河川線形に対して20mピッチの横断図を作成して、平均断面法にて算出するが堤体の位置や高さが変数となるため、その解は収束計算となり手間が非常に多く1カ月かかる検討である。この方法であれば数日程度でまとめることが可能であり、計画および予備設計段階での効率化に寄与している。 (2)橋梁分野における活用橋梁分野では、詳細度500レベル(例えば、上部工では構造詳細、下部工では配筋レベルまで)のパラメトリックによる上部工(鋼およびコンクリート)、下部工(橋台、橋脚、杭)のテンプレートを作成している。形状の変更に伴い、上部工では、線形要素、桁本数、桁間隔、配筋、防護柵、下部工では、形状に追随して配筋などを自動で再配置することが可能となっている。数量などの属性情報は、CATIAが標準として実装している機能で自動計算される(図-8~12)。 (3)実施体制社員および関係会社の人材育成を図るとともに、海外の協力会社の技術者、ダッソー・システムズ社の協力のもと、CATIA活用を推進している。 3Dによる設計の自動化当社では、自社開発した橋梁一次選定プログラムと連動する川田テクノシステ ム 社V-nasClair、STRKit、下部工詳細設計計算ソフトを利用した自動設計に取り組んでいる。V-nasClairは、昨今、国土交通省の地方整備局でも導入され始めており、当社においても導入し活用を推進している(図-13、14)。 技術分野における活用と実施体制V-nasClairとSTR Kitの組み合わせにより、橋梁分野では、先行して自動設計の仕組みを構築し、設計段階での活用を開始している。また、河川分野では、V-nasClairとRiver Kitの組み合わせによる3次元図面作成の試行を開始している。なお、他分野では、顧客のニーズに合わせてV-nasClairを利用している。設計計算に関わる事項は、全社の橋梁系技術者、河川系技術者で利用しており、また、3次元図面作成は、オペレーターを中心に取り組んでいる。 i-Construction、BIM/CIM推進の課題働き方改革や生産性改革の推進などを基本として、社内におけるBIM/CIMに精通したさらなる人材の育成が急務である。また、国内では、設計段階からBIM/CIM対応することが可能な協力会社が不足している。複数のBIM/CIM対応ソフトの導入、BIM/CIM対応ハードウエアへの更新などを考慮すると、初期段階では多くの投資が必要となる。 おわりにパラメトリックデザインによる3次元設計を本格導入することで精度が高く、高度なシミュレーション・フロントローディングが可能である。その根幹となる変数とロジックからなる「数的論理構造」が重要なカギとなる。これらの蓄積はAI技術への応用が可能であり、将来の革新技術として期待されている。また、「数的論理構造」の蓄積を新人教育に導入することでエンジニアとしての資質向上に非常に有益であると同時に、若いエンジニアの自信や誇りにつながると感じており、技術の空洞化問題に対する一つの解決策でもあると考えている。 パシフィックコンサルタンツ株式会社 品質技術開発部 i-Con推進センター 伊東 靖
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