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設計BIMワークフローにおけるガイドラインの策定

2023年9月18日

はじめに

令和元年建築BIM推進会議が発足し、建築BIM推進会議の建築BIM環境整備部会(部会1)にて「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)」(以下、建築BIM推進会議ガイドライン)が令和2年3月に取りまとめられた。
 
日本建築士会連合会・日本建築士事務所協会連合会・日本建築家協会の三団体(以下、設計三会)から構成される建築設計三会設計BIMワークフロー検討委員会(以下、設計三会検討委員会)では、建築BIM推進会議ガイドラインの「別添参考資料(たたき台)」2)の検証と深度化を行い、「設計BIMワークフローガイドライン設計三会提言」(以下、設計三会BIMガイドライン)をまとめた。
設計三会検討委員会には、設計三会の意匠設計者に加えて構造・電気設備・機械設備の設計者も参加し、設計実務でのBIM活用を見据えた詳細な検証を行った。
 
本稿では建築BIM推進会議ガイドラインの概略と設計三会BIMガイドラインの内容について記述する。
 
 

建築BIM推進会議ガイドライン

建築BIM推進会議ガイドラインについて

「本文」1)と各ステージのBIMによる成果物「別添参考資料(たたき台)」2)から構成されており、BIMを活用するためのワークフローに関わる内容を整理・定義している。
 

業務区分

BIMによる業務では従来のCADなどの作業と異なり、各作業段階でさまざまなデータが混在し、複数関係者が同時並行的に作業するため、業務の手戻りが生じると、従来の作業に比べて影響範囲が大きく、手戻り・修正により多くの時間を費やすことになる。
そこで、世界のBIM先進国の事例も参照しつつ、従来よりも業務区分(ステージ)を細分化しS0~S7までの8つの業務ステージが定められた。
 
BIMの形状と情報の詳細度に応じた業務ステージを図-1のように定義している。
図-1に示されるように従来の実施設計をS3(機能・性能に基づいた一般図(平面、立面、断面)の確定)とS4(工事を的確に行うことが可能な設計図書の作成)に分けた点、維持管理BIM作成業務(維持管理段階に向けたBIMの入力・管理および竣工後の発注者へのBIM引き渡し業務)が定義された点が特徴として挙げられる。
各ステージで行うべき業務が終わったことを確認し、次のステージに進むことで、BIMでの影響が大きい業務の手戻りを防ぐことを狙いとしている。
このため、“成果物”と“オブジェクト別のモデリングガイド”も実務で有用との声がある。

図-1
図-1

 

成果物

「別添参考資料(たたき台)では、BIMを用いた業務における成果物を「BIMデータ(3D形状と属性情報からなるBIMモデルと、BIMから直接書き出した図書※BIM上で2D加筆して作成した2Dおよび図書を含む)」と「2D図書(CADで作成した2Dおよびプレゼンテーションソフトウエアや表計算ソフトウエアなどで作成した図書)」と定義するとともに、各ステージにおける意匠・構造・設備の成果物を示している(図-2)。

図-2
図-2

 

オブジェクト別のモデリングガイド

BIM活用においては、各ステージの業務内容、すなわち、いつ、誰が、どのような詳細度で、どのような情報をBIMに入力し確認すればよいかを整理することが重要となる。
そのため、「別添参考資料(たたき台)」では、各ステージでモデリングする内容の一例をオブジェクト別(空間要素および間仕切壁、設備機器のみを例として)に解説している。
 
 

設計三会BIMガイドライン

ガイドラインの前提

設計三会ガイドラインは、「別添参考資料(たたき台)」を継承しながら、BIM業務のワークフローと必要なルールについて、一つの標準例を示したものである。
いまだBIM業務案件が必ずしも多くはない日本において、「BIM業務のワークフロー」は、人それぞれイメージが異なっていることが多い。
BIMの議論では、議論がかみ合わないということも起こりがちである。
そこで、BIMの標準的なワークフローを考えるに当たっては、告示98号の「標準業務」を参照し、そこにBIM業務ならではのルールを加える形とした。
広く使われている告示98号にできるだけ沿うことにより、BIMの標準的なワークフローに対する共通認識を作りやすいと考えた。
 
そして、ここで言う「標準」は、BIM業務を行う際に、必ずこの「標準」に基づいて行わなければならないという決まりではない。
あくまで案件ごとの調整をする際の目安として機能することを考えている。
この点は、従来の業務においても、告示98号「標準業務」に対して追加的業務を加える、または、一部の業務を省くなど、案件の特性により調整しており、同様に考えていただきたい。
 

ガイドラインの位置付け

設計三会ガイドラインでは、建築BIM推進会議ガイドライン「別添参考資料(たたき台)」の業務区分を継承しながら、各ステージの業務内容と、各ステージで必要となるBIMデータ・図書の内容を検証し、「設計段階で作成したBIMに維持管理BIM 作成業務の実施段階で必要な情報を加えて、維持管理段階での活用に必要かつ十分なBIMを、円滑につくり上げること」を目標として、大きく以下の3点に取り組んだ。
 
1) 各ステージにおける主なオブジェクトの形状情報と属性情報量の整理
2) オブジェクトレベルの整理を基に、設計から施工へ引き渡す具体的な内容と、引渡し時に残すべき具体的内容を整理・検証
3) EIR(BIM業務仕様書)とBEP(BIM実行計画書)のひな型の検討・作成以下、ガイドラインの内容について記述する。
 

オブジェクト別のモデリングガイド

建築BIM推進会議ガイドラインのオブジェクト別モデリングガイドが空間要素および間仕切壁、設備機器を対象としていたのに対し、設計三会ガイドラインでは表-1に示す通り、対象としてプロジェクト情報(建物基本情報)・空間要素・意匠要素・構造要素・電気設備要素・機械設備要素を追加した。

表-1
表-1

 

設計から引き継ぐデータ

プロジェクト情報は、敷地や建物の主要用途・延床面積・構造形式などの建物の基本となる情報である。
設計、施工、維持管理・運用のライフサイクルに渡って必須となる情報で、都市基盤データにつなげる可能性がある情報でもある。
BIMモデルを構成するオブジェクトは、「モデル要素」および「注釈要素」で構成される。
「モデル要素」は、「空間要素」と「意匠要素・構造要素・電気要素・設備要素」に分類される。
「空間要素」は、壁、床、屋根、天井などの要素や境界線に基づいて室を区分する要素である。
例えば、レベル・名前・仕上げ高さ・スラブ高さ・天井高さ・床、壁、天井の仕上げ・下地情報を空間要素の持つ「情報項目(Parameter)」に「情報値(ParameterValue)」入力することで集計機能を使い、内部仕上げ表を作成することが可能となる。
一方、「意匠要素・構造要素・電気要素・設備要素」は、床、壁、天井、ドア、窓など基本的な要素を指し、「形状情報」と「属性情報」から構成される。
3D形状と2D形状を組み合わせてモデル形状と図面表現を可能にする。
情報を変更することで形状を変形させることもできる。
設計三会ガイドラインでは図-3に示すように、いつ、どのような詳細度で情報を入力するかの例を示した。
また、BIMデータ実際に扱う入力者にとっては、さらに細かい「データ入力上の形式」についてもルールが重要である。
そこで、設計三会ガイドラインでは、ルールの標準設定例として「パラメータリスト」を添付している。

図-3
図-3

 

設計から施工、維持管理に引き継ぐBIMデータ

建築分野での生産性向上を図るためには、企画・基本計画から維持管理・運用等を含めた建築物のライフサイクルにおいて、BIMでデジタル情報の一貫性を確保し生産性の向上などにつながるかたちで、設計-施工-維持管理の各プロセス間で必要なデジタル情報を適切に受け渡す仕組みを構築することが求められる。
ただし、BIMモデル構築の目的が異なるため、設計BIMモデルをそのまま施工や維持管理用のBIMモデルに流用できる訳ではないことに留意しておく必要がある。
BIMのデジタル情報は、目的に応じて「設計から維持管理BIM作成、そして維持管理段階に受け渡される流れ」と「設計から施工に受け渡される流れ」の2つがあり、前者は建築物を使うためのデータの流れで、後者は建築物をつくるためのデータの流れになる(図-4)。

図-4
図-4

設計ステージでは、建築物の規模や用途、グレード設定などのプロジェクト情報と、必要諸室や室諸元などを、BIMの空間要素に設定した属性情報として管理し、確認していくことになるが、そうした空間要素の属性情報はそのまま維持管理段階で必要となる情報としてつなげることができる。
この空間要素の属性情報は、壁・窓・ドアなどの建築要素や、空調機器・照明器具などの設備要素の仕様を定める与条件であり、相互に連動しながら定まる。
設計段階で入力された建築要素や設備要素に、施工段階で決まった製造者情報などを反映し、家具や什器などを付け加えれば、これが大まかな、建築物を使うためのデータになる。
前述したようにBIMモデル構築の目的が異なるため、設計段階では、施工方法や納入メーカーを確定できないこともあり、BIMデータの形状情報や属性情報を全て決定できる訳ではなく、BIMデータにはさまざまな形状や属性の情報を組み込めるが故に、そのモデリングや入力方法は如何ようにもカスタマイズ可能である。
また、設計図書とBIMモデルが整合したものになっていないと、設計で作成したBIMデータを施工者が引き継ぐことは難しくなる。
そのため、設計から施工に設計BIMデータを円滑に引き継ぐためには、BIMデータや図書の引き継ぎだけではなく、以下についても併せて整理した上で施工者に伝える必要がある。
 
①図面とBIMモデルの整合性確保
②設計内容として確定している範囲
③BIMのモデリング・入力ルール
設計三会ガイドラインでは、設計から施工に受け渡すBIMデータや図書と、施工者に引き継ぐための①~③の項目について、図-5のような参考例を示している。

図-5
図-5

 

EIRとBEPのひな型

BIM業務仕様書(Employer’s information requirements/EIR)は、プロジェクトにおいて発注者として求める業務委託仕様書の中でBIMに関する業務仕様を定めるもので、BIMを活用するためのスケジュール、目的、システム要件、データ環境、会議体、各ステージで必要なBIMデータの形状と情報の詳細度、契約上の役割分担などを示しBEPの作成を求める発注要件である。
発注者により作成され、受注者選定や契約に先立って受注候補者に提示されるものを指す。
BIM実行計画書(BIM Execution Plan/BEP)はプロジェクトにおいて、受注候補者がEIRに基づき、業務委託仕様書の中で、BIMに
関する業務仕様を提案するもので、BIMを活用するための体制表、スケジュール、目的、システム要件、データ環境、会議体、各ステージで必要なBIMデータの形状と情報の詳細度などを定め文書化するものである。
受注候補者は契約前に発注者とBEPに関する協議を行い、双方合意した上で受注者として契約を締結する。
EIRとBEPは、BIMを活用する上で発注者、受注者間の認識違い、手戻りなどがないよう契約前に発注者、受注者間で合意し取り交わすことが必要となる。
BEPの更新・変更があった場合には、双方協議の上、発注者、受注者間で合意し、再度取り交わすことが必要となる(図-6)。
設計三会ガイドラインでは官庁営繕のBIM試行プロジェクトなどを参考に、標準的なEIRのひな型(案)とBEPのひな型(案)を示している。
現時点では、BIMを活用する業務とBIMを活用しない業務が混在することを考慮し、BIMに関する事項で、業務委託仕様書(共通仕様書)に記載されていない事項をEIR、BEPに記載することにしている。
ひな型は、中規模の業務ビルを想定し、必要最小限の項目とした。
用途や規模、BIM活用に対する目標設定および業務内容に応じ項目を追加して使用する想定である(表-2)。

図-6
図-6
表-2
表-2

 

BIMに係るライフサイクルコンサルティング/維持管理BIM作成業務

設計三会ガイドラインでは、維持管理・運用に必要なデジタル情報を適切につなげていくためのBIMに係る業務(BIMに係るライフコンサルティング業務)および、維持管理用BIMデータ作成のための業務(維持管理BIM作成業務)を整理するとともに、両業務の仕様書(案)を示している。
 
BIMに係るライフコンサルティング業務は、維持管理・運用で必要と想定されるBIMの情報を事前に検討し、設計・施工・維持管理段階のそれぞれで、必要と想定されるBIMおよびそのモデリング・入力ルールを契約前に検討し、EIRとBEP(ひな型)の策定を支援するとともに、各業務の実施者から提出されるEIRに基づいたBEPを確認し、設計BIM、施工BIM、維持管理BIMそれぞれに求められるモデリング・入力ルールを共有(例:詳細な形状情報は不要だが各設備機器の品番・型番は引き継ぐなど)することなどにより、発注者を総合的に支援する業務として整理している。
維持管理BIM作成業務は、EIR・BEPに基づき、プロジェクトのS5・S6段階において、同業務を行う者
(業務区分(ステージ)における「維持管理BIM作成者」)が、維持管理・運用に必要なBIMの成果物を、設計BIMをベースとして入力・情報管理し、竣工後、発注者(維持管理者)に内容を適切に説明し、円滑に受け渡す業務として整理している。
 
 

おわりに

設計三会ガイドラインは、国土交通省、有識者、関係部会、関係団体等における知見などを踏まえて取りまとめたものである。
ガイドラインを実際に活用することにより得られる知見などを、あらためて建築BIM推進会議および建築BIM環境整備部会にフィードバックすることにより、設計者などが具体的に活用できるように、今後も関係部会、団体などとの意見交換、調整を行っていきたいと考えている。
 
 
参考文献
1)建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)本文、国土交通省。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content001351965.pdf
2)建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)別添参考資料、国土交通省。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001351966.pdf
 
 
 

公益社団法人 日本建築家協会 BIM特別委員会

 
 
【出典】


建設ITガイド 2023
特集2 建築BIM
建設ITガイド2023


 

最終更新日:2023-09-18



 


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