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2018年5月28日
はじめに中部地方整備局では、i-Construction中部ブロック推進本部を平成28年2月に設置し、建設生産システム全体の生産性向上を目的として、ICT施工やコンクリートの生産性向上等と合わせて、さまざまなシーンでCIMの試行を行い、その効果を検証している。CIMについては、働き方改革を推進するためにも重要なツールと考えており、さまざまな段階での取り組みを検討しているところである。今回、その取り組みの事例と効果について紹介する。 施工段階におけるCIMの事例紹介1)工事概要 ![]() 図-1 橋梁下部工事の概要図 ① 配筋の過密化が顕著であり、鉄筋組立にかかる作業の効率化 ② 過密配筋部への確実なコンクリート充填性の向上 ③ 既設横断歩道橋、共同溝、遮音壁に対し、近接施工を考慮した施工計画 2)CIMの取り組み内容 この工事では、上記の課題に対応するため次のようにCIMを活用している。 (1)CIMデータの作成手順 ① 施工位置を3Dレーザースキャナーで測量 ![]() 図-2 3Dレーザースキャナーで測量 ② 地下構造物(共同溝等)を測量調査により取得 ③ CIMモデルの作成 3Dレーザースキャナーで測量した地形モデルおよび地下構造物の位置情報と橋脚の構造物モデルを組み合わせて、CIMモデルを作成した。 ![]() 図-3 CIMモデルの作成 ④ CIMモデル(3D)に時間軸を付与した4Dモデルを作成 上記のCIMモデル(3D)に時間軸を付与し4Dモデルを作成した。 ![]() 図-4 4Dモデルの作成 (2)CIMの活用効果 この工事において、上記の課題に対するCIMの活用による効果は以下のとおりである。 ① 配筋の過密化が顕著であり、鉄筋組立にかかる作業の効率化 鉄筋の3D可視化により干渉箇所を事前把握し、配筋手順等を事前に計画することで作業の効率化および品質確保が図れた。 ![]() 図-5 鉄筋の干渉状況の把握(杭・下筋・柱筋) ●作業員(鉄筋工)の声 ・事前に不具合箇所が分かり、対策を立てられるため、組立途中に施工を中断することなく継続施工できることは、手戻り回避や作業効率向上につながりました。 ・今までは、鉄筋を組んでみないと分からない部分があったが、3Dデータで可視化することで、組立イメージが鮮明となり作業の効率化につながりました。 ② 過密配筋部への確実なコンクリート充填に関する効果 2D配筋データから3D配筋データに変更活用することで、過密配筋部へのコンクリートの確実な充填を確保するため、コンクリート打設時のホース差込計画に活用でき、品質確保が図れた。 ③ 既設横断歩道橋、共同溝、遮音壁に対し、近接施工を考慮した施工計画 LS測量による正確な既設物(歩道橋・共同溝・遮音壁等)の位置を3D可視化することで、使用機械の選定および作業配置計画を立案し、既設構造物との近接施工時の接触回避などについて、作業員の安全教育で活用することで理解度の向上を図ることができた。 ![]() 図-6 3Dによる重機の配置計画 また、特殊支保工の設置時、現地条件(歩道橋・現道・建築限界)との整合で一般車両への信号機に対する視認性を把握し、通行車両の安全確保ができた。 ![]() 図-7 一般車両からの施工時の視認性確認 ●4D軸の追加 ・従来の2Dでは詳細かつ正確な照査が困難であったケースにおいて、時間軸を追加した4Dの活用により、特定日時および施工ステップが視覚的に把握できるため、工程管理が容易となった。さらに、狭い施工箇所において、安全かつ効率的な資材の仮置き等の計画も行うことができた。 また、新規入場者教育時においても、4D動画を用いた現場説明を実施することにより、作業工程や要点・危険箇所を視覚的に伝達(共有)することが可能となり危険予知活動に有効であった。 中部地方整備局におけるCIM支援活動中部地方整備局では、12月22日に「CIMミーティングin中部」を名古屋市内で開催した。この会議では中部地方整備局における実施方針や、これまでのCIM活用事例などを紹介し、CIMに馴染みの少なかった、または食わず嫌いだった参加者の方たちと、CIMが身近なものであることや、今後の建設業に欠かせないツールであることを共有した。 おわりに今回の事例紹介では、施工段階においてCIMを活用し、主に施工工程の見える化に着目した取り組みを紹介した。CIMは生産性を向上させ、働き方改革を進める上で欠かせないツールであり、未来の魔法ではなく、もう既に手元に届いている道具であることは、これまでの取り組みにおいて、十分実感したところである。一方で、CIMは、活用する場面や効果をよく把握した上で適用することが重要である。今後は、調査・設計段階から維持管理までを見据え、各段階での関係者間の情報共有により建設生産システムにおける受発注者双方の業務効率化、高度化を図るなど、CIM導入の効果がより発揮される方法を引き続き検討していきたいと考えている。 国土交通省 中部地方整備局 企画部 技術管理課 課長補佐 東野 竜哉
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2018年5月24日
はじめに建設現場の生産性向上を図るためには、3次元データを測量・調査段階から導入し、その後の設計、施工、維持管理の各段階において情報を流通・利活用させることが、より一層の生産性向上に不可欠です。2次元図面から3次元データへの移行により、業務変革やフロントローディングがもたらされ、合意形成の迅速化、業務効率化、品質の向上、ひいては生産性の向上等の効果が期待されます。 CIM活用モデル事業で確認された効果と課題国土交通省では、CIMの本格的な導入に向けて、CIM導入効果の把握やルール作りの検討のため、業務については2012 年度より、工事については2013 年度よりCIMの試行を進めており、これまで、設計業務で90 件、工事で196 件の合計286 件で実施しています(表-1、表-2)。 ・ 調査項目:CIMの導入により効率化が図られた利活用項目、CIMの導入に当たっての課題 CIMモデル導入により効率化が図られた項目は、可視化された構造物モデルを活用して住民説明や関係者間協議を実施したり、周辺環境、景観などのシミュレーションの実施結果を活用し発注者等と打合せすることにより「合意形成の迅速化」が図られるという回答が229 件(30%)と最も多く、意思伝達ツールとしての有用性が確認されました。一方で、「監督・検査」では44件(6%)、「数量算出」では30件(4%)、「事業スケジュールの把握」では6件(1%)と、CIMモデルの効果として期待されているものの、その機能が必ずしも生かしきれていない項目もあることが確認されました。 (2)CIMモデルの利活用に当たっての課題(図-2) CIMモデルの利活用に当たっての課題は、モデル作成の手順・手法に関する「基準類、ルールの未整備」が149件(40%)で、今後、速やかに対応することが必要との調査結果となりました。次いで、「費用の増加」が86件(23%)、CIMに対応できる「人材の不足」が55件(14%)、「ソフトウェアの機能不足」等が47件(12%)となっています。 CIM導入ガイドライン等の策定(1)ガイドラインの概要 国土交通省では、これまでのCIM活用モデル事業で得られた知見やソフトウェアの機能水準を踏まえ、現時点でCIMモデルの活用が可能な項目を中心に、受発注者の役割、基本的な作業手順や留意点とともに、CIMモデルの作成指針(目安)、活用方法(事例)を参考として記載した「CIM導入ガイドライン(案)」を2017年3月に策定しました。CIM導入ガイドライン(案)は、公共事業に携わる関係者(発注者、受注者等)がCIMを円滑に導入できることを目的に作成しています。 将来的には2次元図面から3次元モデルへの移行による生産性向上等が期待されるものの、2017年度版では「現行の契約図書に基づく2次元図面による発注・実施・納品」を前提にしています。
ガイドラインは、共通編(第1編)と各分野編(土工編、河川編、ダム編、橋梁編、トンネル編)の全6編で構成されており、各編を組み合わせて使用することを想定しています。なお、土工編(第2編)については「ICT土工」の要領・基準類に基づき、発注者・受注者が行うべき事項を示しています。
CIMおよびCIMモデルの作成・活用の基本的な考え方や、各分野共通で行う測量、地質・土質のモデルの考え方を示しています。 1)CIMモデル詳細度 詳細度とは、CIMを活用する目的、場面、段階等に応じた3次元モデルの形状、属性情報に関する作り込みレベル(目安)を示すものです。CIMモデルをどこまで詳細に作成するかは、CIMモデル作成や活用の目的により異なりますが、詳細度といった指標がない場合には、3次元モデルを構築・納品した際に、作成者ごとにモデルの作り込み内容が異なる等によって、無駄、手戻り等の発生や混乱が生じます。このため、受発注者間で事前に確認協議の上、決定しておく必要があり、本ガイドラインでは共通編および各分野編で各工種の詳細度を示しています(図-3)。 ![]() 図-3 CIMモデルの詳細度(橋梁の例) 2) CIMモデルの定義・構成 CIMモデルとは「対象とする構造物等の形状を3次元で表現した『3次元モデル』と『属性情報』を組み合わせたもの」と定義しています。また、構造物モデル、地形モデル等の各要素単位のCIMモデルと、それらCIMモデルを統合して活用する「統合モデル」の考え方を示しています。 (4)CIM導入ガイドライン(案)各分野編(図-4) ![]() 図-4 CIM導入ガイドラインの目次構成 各分野編では、各段階において発注者、受注者それぞれが取り組むべき内容を示し、作業の流れと対応した目次構成としています。対象は、測量、地質・土質、調査・設計、施工、維持管理までの段階について記載しています。また、別途、各要領・基準等で規定されている作業も含め、受発注者がやるべきことの概略を把握できるようにしています。 3次元データの利活用シーン建設現場の生産性向上を図るためには、3次元データを測量・調査段階から導入し、その後の設計、施工、維持管理の各段階において情報を流通・利活用することが、より一層の生産性向上に不可欠です。 (2)設計段階 (3)施工段階 (4)維持管理段階
維持管理段階においては、3次元化された施工段階の出来形計測データを活用することにより、構造物の変位把握の効率化が可能です。特に災害時に発生した地形等を経年的に計測することにより、変位把握の効率化が可能です。 データの利活用に向けた取り組み建設現場の生産性向上を図るためには、3次元データの普及・拡大が不可欠であることから、今後、以下の取り組みを進めていきます。 推進体制今後、上記の取り組みや目指すべき3次元データの共有方法や利活用ルールについて、「i-Construction推進コンソーシアム」 と「CI M導入推進委員会」が連携しながら議論を継続的に推進します。 おわりに建設現場の生産性向上を図るためには、3次元データ等の導入を国の直轄工事以外にも拡大していくことが必要です。このため、地方自治体に対して、発注関係者の集まる発注者協議会や土木部長会議等の場において、国土交通省における取り組みについて周知を図りつつ、連携して取り組みを進めてまいりたいと考えています。 国土交通省 大臣官房 技術調査課 課長補佐 城澤 道正
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2018年5月21日
はじめにわが国の人口は2008 年の約1億2,800万人をピークに減少に転じ、高齢化が進んでいます。 i-Constructionの推進国土交通省では、建設現場の生産性を向上させるため、調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新までの全ての建設生産プロセスでICTなどを活用する「i-Construction」を推進し、建設現場の生産性を、2025年度までに2割向上させることを目指しています(図-1)。 ![]() 図-1 生産性向上のイメージ 土工やコンクリート工を対象としたのは、直轄の土木工事におけるこれらの割合が約4 割を占めることに加え、建設現場で多く用いられている土工や場所打ちコンクリート工の生産性が30年前とほとんど変わっておらず、改善の余地が大きいからです。 (1)ICTの全面的な活用(ICT土工) ICT土工は、切土、盛土といった土工について、ドローンなどを使った3次元測量を行い、3次元設計データなどによりICT建設機械を自動制御して施工し、再びドローンなどを使って3次元で出来形を検査するといった、各建設プロセスにおいてICTを全面的に活用する工事です。2016 年度は、全国で584件の工事でICT土工を実施しました。 2016年度にICT土工を実施した181件の工事を調査したところ、従来手法で平均123人日かかるところを、ICT施工では平均約89人日と、平均28%の削減効果が確認されました。 また、3次元起工測量やICT施工、出来形管理について、半数以上の施工者が期待していた以上の効果が得られたと評価しています。 さらに、ICT建機は施工図面に合わせて操作を制御してくれるため、施工精度が向上するといった効果や、建機まわりの作業が不要になることから、接触事故の危険がなくなり安全性が向上するといった効果も報告されました。 一方で、ICT導入コスト(ソフト、ICT建機、外注経費)が必要になる、規模の小さい工事では採算が取れない、3次元設計データの作成が負担といった課題も明らかになりました。 そのため、ICT建機の使用割合や日当たり施工量などの実態調査と分析を進め、施工規模によらずに適正な価格により施工ができるよう適宜積算基準等の見直しを行うとともに、地方整備局の技術事務所などによるサポート体制の充実や、ニーズに沿った3次元データの提供などの支援策を順次展開していきます。 また、土工が建設事業の多くを占める地方公共団体工事にICT施工を広めるため、地方公共団体をフィールドとした現場支援型モデル事業を実施しています。 モデル事業では、地方公共団体が設置する支援協議体の下で、工程計画立案支援やICT運用時のマネジメント指導などの支援を行っています。これにより、地方公共団体の発注者のICT活用工事への不安を取り除き、発注者自身のメリットも体感できるようにすることで、ICT活用工事の地方公共団体での一層の普及につながることを期待しています。 (2)全体最適の導入(コンクリート工の規格の標準化など) コンクリート構造物は、現場ごとの一品生産、部分別最適設計であり、工期や品質面で優位な技術を採用することが難しいといった課題があります。 全体最適は、設計、発注、材料の調達、加工、組立などの一連の生産工程や、維持管理を含めたプロセス全体の最適化を図るものです。 2016年度は、機械式鉄筋定着工法などのガイドラインを策定しました。また、コンクリート打設の効率化を図るため、個々の構造物に適したコンクリートを利用できるよう、コンクリートの流動性に関する発注者の規定を見直しました。 今年度も引き続き、橋梁部材などのプレキャスト化やプレハブ鉄筋、埋設型枠などのガイドラインの策定を進め、これらを構造物設計に活用していく予定です。 (3)施工時期の平準化 公共工事は、単年度会計を基本としていることから、年度当初予算の工事発注手続きを行っている第1四半期(4~6月)に工事量が少なく、年度後半に工事が集中するといった特徴があります。施工時期の平準化は、限られた人材を効率的に活用するため、計画的な発注などにより、年間を通して工事量を安定化させるものです(図-2)。 ![]() 図-2 施工時期の平準化 具体的には、これまで単年度で実施していたような工事について、発注時期などを踏まえると年度をまたぐことが適切な工事については、2カ年国債などを活用して平準化を図っています。 2016年度は、2015年度の3倍超になる約700億円の2 カ年国債を活用しましたが、今年度は、さらに2カ年国債を2倍超の約1,500億円に拡大し、加えて約1,400億円のゼロ国債※を当初予算において初めて設定しました(※ゼロ国債とは、初年度の国費の支出がゼロの国債。国費の支出は翌年度だが、年度内に工事契約を行う)。 また、公共工事の約7割の工事量を有する地方公共団体に対しても、総務省とも連携し、平準化の推進について要請しています。 新たな取り組み今年度は、生産性革命「前進の年」として、新たに以下の取り組みを進めています。 ![]() 図-3 ICT舗装工 ②ICT浚渫工 港湾工事の生産性向上を目指して、浚渫工に3次元データによる施工箇所の可視化などのICTを全面的に導入する「ICT浚渫」を2017年4月以降の工事に適用しています。 ③i-Bridge 橋梁事業における調査・測量から設計、施工、検査、維持管理までのあらゆるプロセスにおいてICTを活用し、生産性・安全性を向上させる取り組みです。今年度は、ECI(Early Contractor Involvement)方式を活用した3次元設計・施工や、維持管理分野におけるICTの導入を試行しています。 具体的には、設計の段階から3次元モデルを活用し、3次元モデルによる詳細確認や施工計画など、最適設計を図っています。また、高度な補修・補強を行った場合に、センサー技術を活用し、その補修・補強が目的どおりの効果を発揮しているかをモニタリングすることにより、補修・補強の信頼性を向上させています(図-4)。 ![]() 図-4 3次元データでの設計 ④維持管理分野 法面工や舗装などの修繕工事において、事前測量から施工・検査の各プロセスで3次元データを活用して省力化を図るべく、平成31年までに技術基準を整備します。 また、点検・測量・巡視巡回において先進的なインフラ点検支援技術の利用を検討しており、将来的にはAIによる変状検知機能を組み合わせた効率的な公物管理の実現を目指します。 ⑤建築分野(官庁営繕工事) 民間工事が中心の建築分野において先導的な役割を果たすため、官庁営繕工事において施工合理化技術の導入などを行います。併せてICTなどの活用による遅滞ない合意形成や工程管理の改善、工事関係書類の簡素化などを検討しています。 (2)CIMの導入 CIM(Construction Information Modeling/Management)は、社会資本の調査・測量・設計段階から地形データ・詳細設計などに3次元モデルを導入し、その後の施工、維持管理の各段階においても、施工情報や点検・補修履歴などの情報を充実させながらこれを活用するものです。 併せて、事業全体にわたる関係者間で情報を共有することにより、一連の建設生産システムにおける受発注者双方の業務の効率化・高度化を図ります。 2016年度は、これまでのCIM試行業務・工事における知見を集約し、CIMモデルの作成方法(作成指針、留意点など)や活用事例を記載したCIM導入ガイドラインを策定しました。 2017年度は、CIM試行業務・工事において検討する項目を定め、CIMモデルの本格導入に必要となる課題の抽出と解決方策の検討を行っています。 (3)普及・促進施策の充実 今年度より、各地方整備局などに地方公共団体に対する相談窓口を設置しています。 また、i-Constructionに係る優れた取り組みを表彰する「i-Construction大賞」を創設し、12月に初めての受賞者となる計12団体(国土交通大臣賞2団体、優秀賞10団体)を決定しました。 さらに、i-Constructionのロゴマークを作成するなどし、i-Constructionを広く普及させていきます。 i-Construction推進コンソーシアムi-Construction推進コンソーシアム(以下、「コンソーシアム」という)は、さまざまな分野の産学官が連携して、革新的な技術の現場導入や3次元データの利活用などを進めることで、生産性が高く魅力的な新しい建設現場を創出することを目的として、2017年1月30日に設立しました。 (1)企画委員会 第1回の企画委員会は、2017年3月31日に開催されました。国土交通省から前述した平成28年度の取り組み状況と今年度以降の取り組み方針について報告するとともに、i-Construction推進に向けたロードマップが決定されました。 ロードマップには、ICT活用に向けた取り組みなどについて、平成37年(2025年)までの取り組みとKPIを設定しました(図- 6)。 (2)ワーキンググループ(WG) ①技術開発・導入WG 技術開発・導入WGでは、最新技術の現場導入のための新技術発掘や企業間連携を促進することとしています。 2017年2月には、会員や国土交通省内を対象に建設現場の生産性向上に資する行政ニーズや現場ニーズ、および技術シーズについてアンケート調査を実施し、3月末までに1,700を超えるニーズと200を超えるシーズが寄せられました。 これらのニーズとシーズのマッチングを目指して、4月にアンケート調査の中から代表的な29件のニーズについて説明会を実施し、5月にそれらのニーズなどに対して提案があった13件のシーズについて説明会を実施しました。 その後、ニーズ側とシーズ側の個別相談会などを実施し、10月のマッチング決定会議において、以下の5件の技術のマッチングが成立しました(写真-1)。 ![]() 写真-1 マッチング決定会議の様子 ・コンクリート打音検査にAEセンサを用い、誰でも品質評価ができることを目指す技術 ・高精度レーザースキャナーを用い、これまで把握が難しかった構造物の変状を迅速に発見することを目指す技術 ・建設現場と事務所等をカメラ画像やデータなどを組み合わせてリアルタイムに共有することで、一度に複数の建設現場を管理することを目指す技術 ・スマートフォンやバイタルセンサなどを用い、建設現場の作業員の位置や健康状態を把握し、建設現場の事故ゼロを目指す技術 ・工事の施工データや発注業務データの解析にAIを用い、工事や業務の効率化・円滑化を目指す技術 マッチングが成立した技術は、各現場での試行を行うとともに、引き続き第2回のマッチングに向けて取り組んでいます。 ②3次元データ流通・利活用WG 3次元データ流通・利活用WGでは、3次元データの流通のためのデータ標準やオープンデータ化により、シームレスな3 次元データ利活用環境整備や新たなビジネス創出を目指しています。 本WGにおいても、WG会員を対象としてデータ流通に関する現状と課題、データ利活用に関するデータの保有状況やニーズを把握するためのアンケート調査を実施し、2017年3月に、調査結果などを踏まえて第1回の意見交換会を開催しました。 その後もWG会員の意見を聴取しながら、11月に「3 次元データ利活用方針」をとりまとめました。 ③海外標準WG 海外標準WGでは、上記2つのWGでの検討結果などを踏まえつつ、技術基準、制度などのパッケージ化を行い、i-Constructionの海外展開を図ることとしています。 おわりにi-Constructionの導入により、建設現場に必要な技術の習得に要する時間が短縮されるとともに、危険の伴う作業や厳しい環境で行う作業も減少することが期待されています。また、生産性向上により安定した休暇の取得が可能になることで、建設現場において若者や女性などの多様な人材の活躍が期待されます。 国土交通省 大臣官房 技術調査課 課長補佐 橋本 亮
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2018年5月15日
背 景国土交通省では、建設産業の生産性向上、全体最適化を目的に、i-Constructionにおけるトップランナー施策であるICTの全面的な活用にCIM(Construction Information Modeling/Management)を本格的に平成29年度から導入しつつある。なお、国土交通省では、平成24年度から直轄事業(業務・工事)においてCIMモデル事業に着手しており、平成28年度までに設計業務で90件、工事で196件が実施されている。これに伴い、CIMに関わる国土交通省職員、また調査・設計・工事の受注者など関係者の増加と、その裾野は徐々に広がりつつある。しかしながら、平成25、26年の土木学会CIM講演会参加者へのアンケートを見ると「CIMの内容までよく知っている」が30~40%程度に留まっており、また、CIMを導入する上での課題として、「CIMに関する人材育成・教育」、「CIM知識・技術」が上位を占める状況である。 ![]() 図-1 CIM導入に関する課題(アンケート結果)(※1) このような状況から、CIM導入を円滑に進めていく上で、「3次元モデリングの手法」を中心とした「CIM知識・技術」を効果的に学習できるプログラム・教材の開発が、CIMを活用できる人材の育成のための喫緊のテーマであることが言える。 CIM教育全体像CIMの人材育成・教育については、土木学会CIM講演会、また民間団体等による3 次元CAD講習・研修などの機会とともに、CIMの活用事例、特に一つの事業にCIMを活用した体験事例を通じて、CIMを身近なものとして学んでいくアプローチが必要と考えている。 ![]() 図-2 JACICが考えるCIM教育の全体像 CIM人材育成に関する取り組みJACICでは、CIM人材育成に関して次の3つの取り組みを実施している。 ![]() 写真-1 「CIMを学ぶ」シリーズ (2)セミナー等への講師派遣 JACICではCIMの人材教育活動の一環として、受発注者をはじめ今後わが国を背負う若い担い手となる学生の方々が、CIMへの理解を深めCIM推進のために活躍できるよう、全国各地で開催されるCIMに関する講演会や大学・工業高等専門学校等でのCIMについての講義等に職員を派遣している。平成28年度、平成29年度(10月末現在)での派遣実績は、表-1に示すとおりである。 ![]() 表-1 セミナー・大学等へ講師派遣実績 (3)CIM教育プログラムおよび素材の開発 CIM教育プログラムおよび素材の開発として、CIMSoluthon® (※2)(CIMチャレンジ研修)と命名した研修を平成27 年度から実施している。研修の目的、位置付けは以下のとおりである。 なお、本取り組みについては、次章で詳述する。 ●土木技術者(施工・設計・調査会社、発注者等)が3次元CADソフトをエンジニアリング活動の一環として高度に使いこなせるようになるために、土木技術者のための教材、講義・演習等の教育プログラムを構築 ●3次元CADソフトに対するニーズ、課題等の情報収集機会の提供により、最適な3 次元CADソフトを提供できるようベンダー等業界を支援(図-3参照) ![]() 図-3 CIMSoluthon®(CIMチャレンジ研修)の位置付け CIMSoluthon®(CIMチャレンジ研修)(1)基本構成 ![]() 表-2 研修の構成(概要) (2)入門クラス 入門クラスにおける研修プログラムの基本的な考え方、課題の設定実績は表-3、4、図-4に示すとおりである。 ![]() 表-3 研修プログラムの基本的な考え方(入門クラス) ![]() 表-4 演習課題の設定実績 (入門クラス) ![]() 図-4 入門クラス演習課題事例 (平成29年度 Cコース)※赤い範囲がコントールポイント (3)実務クラス 実務クラスにおける研修プログラムの基本的な考え方は下表に示すとおりであり、入門クラスに対し研修に必要な3 次元CADソフトの機能・操作についての講義・演習の時間を少なくし、実務の現場で直面する課題の演習を通して、より実践的な課題演習に取り組むプログラムとした。 ![]() 表-5 研修プログラムの基本的な考え方(実務クラス) 実務クラスの研修課題については、発注者や(一社)建設コンサルタンツ協会等のメンバーで構成する「CIMチャレンジ研修課題作成委員会」で検討したものである。平成29年度の演習課題は、表-6、図-5のとおりとしている。 ![]() 表-6 平成29年度実務コース演習課題 ![]() 図-5 実務クラス演習課題事例(平成29年度 Bコース)※上部工の作成 今後の展開現在、JACICは演習課題の検討から、設定した演習課題での研修実施まで行っている。今後は、研修については研修機関等へ移管し、JACICは演習課題の充実と蓄積を図ることに注力し、土木技術者が3 次元CADソフトをエンジニア活動の一環として高度に使いこなせるよう、人材育成を支援していくことにしている。 一般財団法人 日本建設情報総合センター 研究開発部 次長 徳重 政志
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