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2025年7月23日
はじめに建設産業全体としてBIMの普及・活用を進めるためには、BIM技術者育成に要する費用だけでなく、教える側の体制や教えるべき知識・技術体系の整備が必要である。 産官学の連携方法BIM技術者育成における産官学連携には、大別すると、学校の教育に対する企業の協力、大学によるBIM導入支援・業務提供、定期的な情報共有と課題への取り組み、BIM活用の環境づくりの4つがある。 学校の教育に対する企業の協力産学の連携として、まず、学校の教育に対する企業の協力が挙げられる。
大学によるBIM導入支援・業務提供次に、大学が実務におけるBIM導入を支援し、業務を提供するという方法がある。
定期的な情報共有と課題への取り組みこれらの産官学連携を継続的に推進するためには、個々の企業・自治体と大学・ BIMセンターの連携だけでなく、産官学連携に関わる組織の横のつながりが必要である。
BIM活用の環境づくり最後に、建設産業全体としてのBIM活用の環境づくりである。 中間的組織としてのBIMセンター本稿で紹介している産官学連携の方法はいずれも特異なものではなく、日本ですでに実践されているものも多い。 大学のBIMセンターの役割3大学のBIMセンターの事例をもとに整理すると、BIMセンターが担う役割は6つある。 図-4、5 国立台湾大学BIM研究センターが発刊しているテキストの例 中間的な組織としてのBIMセンター国立台湾大学のBIMセンターは、設立以来、主として産学連携プロジェクトの資金により運営されてきた。 中間的組織の役割このような中間的な組織はBIMに限らず台湾の大学に多く設置されている。 産官学連携の全体像台湾のBIM技術者育成においては、主に官は公共発注や中間的組織への助成などでBIM活用を奨励し、産は技術者を育成してプロジェクトを実施し、学は直接的・ BIM推進の先へカーボンニュートラルとBIMBIM推進を積極的に進めている自治体の担当者にお話をお聞きしたところ、今後の課題は、長期的な運営管理に関する情報伝達とシステム開発において、世界的なカーボンニュートラルの流れに対応するためにICT技術活用の取り組みを続けることだという。 大学のBIM教育とESG実務分野だけでなく、大学の教育でも同様の問題意識が見られる。 〈参考文献〉
〈写真提供〉図-1・図-3:国立台湾大学BIM研究センター 京都大学大学院工学研究科 准教授
西野 佐弥香
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2025年7月21日
はじめに静岡県静岡市に本社を構える木内建設は、2020年に創業100周年を迎えた地方ゼネコンである。 今までのBIM活用と現在意匠設計を中心に行われていたBIM活用は、主に「事業主との合意形成」や「工事関係者とのイメージ共有」であった。 BIM推進の課題イメージの共有を中心としてBIM推進を行ってきた一方で、それらが関係者の業務の省力化や効率化に直結する成果を生み出していたかといえば、そこまで大きな共感を得るまでには至っていない。 連携の取り組み点群データの活用GNSS付SLAMLiDARハンディスキャナーを用いて計画敷地の点群データを収集し、施工条件の把握をはじめとした施工計画に活用している。
点群データ+BIM取得した点群データのBIM連携活用としては土量の算出を行っている。 協力業者とのデータ重ね合わせ連携これまでのデータの重ね合わせは各工種のモデルをゼネコン側で集め、ゼネコンがSolibriなどのソフトで統合して干渉チェックを行い、チェックの結果共有については、レポートを作成し確認する形式が主流であった。 鉄筋の自動加工鉄筋専門工事業者との連携として、構造設計者が設計段階で作成した構造的に整合性が取れているリアルな鉄筋BIMモデルを活用し、BIMモデルが持っている鉄筋情報から直接鉄筋の自動加工へ結び付けることでデジタルファブリケーションとなるような取り組みを行っている。 今後の展望現在の建設業界を取り巻く大きな問題の一つとして人手不足がある。 木内建設株式会社 建築部 工事課
鈴木 慎太朗
設計部 構造課
佐藤 克弥
設計部 構造課
上野 良樹
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2025年7月18日
はじめに日建連の調査によると、生産性を向上させる取り組みとして「設計施工一貫方式の受注拡大」と「BIM」が上位にある(1)。 構造図のあり方成果物としての実施設計図鉄筋工事に求められる品質は、要求された鉄筋材料を使用し、所定の位置に配筋・組立することである。 半世紀前から指摘されている構造図に記載すべき生産情報日本建築学会の「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説」(2021年3月)の冒頭に掲載されている「まえがき」(昭和54年版/1979)には、「配筋について設計段階から考慮・検討すべき問題が多々あるように見受けられる」と指摘している。 ワークフローの検討BIMとワークフローの関係設計者と施工者がお互いに連携しながら労働生産性を向上させるには、全体最適の考え方でワークフローと役割分担を考えることが肝要である。
鉄筋の納まりを検討する時期全体最適のワークフローを考える際、鉄筋の納まり検討を開始する時期はいつが望ましいだろうか。 武器としてのBIM生産情報の「作成」で効果を発揮鉄筋工事の生産プロセスを図-3に示す。 構造設計者と施工者の共創が必要鉄筋納まりに関する生産情報の「作成」を構造設計者だけに依存するのは分業化が進む今では理想論になりつつある。 鉄筋/配筋BIM(アトアレ)今回は鉄筋工事で使用する生産情報の「作成」を効率的にできるシステムとして、 Revitのアドオン機能で開発を進め、「アトアレ」と名付けた(3)。
(1) 鉄筋の自動配置設計図書を作成する構造計算データを使用して鉄筋BIMモデルを作成する。 (2) 鉄筋の自動干渉回避鉄筋の配置は、設計図書で決められた配筋の規定に基づいて最適な配置位置になるように自動的にシミュレーションをさせていったん確定させる。 (3) 自動干渉回避の結果表示自動干渉回避では最適解を自動で導きだそうとするが、設定された柱や梁の構造寸法では鉄筋の間隔距離が確保できない(主筋が並ばない)、アンカーボルトと鉄筋が干渉する(主筋位置の移動が必要)などの事象が残る。 (4) 鉄筋専用CADとデータ連携鉄筋BIMデータは仮想空間上で正しく配置されたデータである。 (5) 数量を自動算出鉄筋BIMデータから数量を算出する。 (6) 納まり図を自動作図鉄筋BIMモデルや配筋BIMモデルから図面を作図する。 アトアレを適用したワークフロー適用したワークフローの概要アトアレを活用したワークフローを図-5に示す。 おわりに現在、設計施工一貫方式の案件を中心にしてアトアレのワークフローが進行中である。 註(1) 「生産性向上推進要綱2022年度フォローアップ報告書」、p12、日本建設業連合会、 2023年9月 前田建設工業株式会社
曽根 巨充
渡邉 寛也
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2025年7月14日
はじめに2008年の研究開発チーム発足から始まった大林組のBIMの取り組みは、今や全国のプロジェクトにおいて、設計から生産段階までの一貫利用が通常となっている。 大林組のBIMBIMの「あるべき姿」大林組のBIMは、「正しい情報で建設を行う」という基本的な理念に基づき「ワンモデル」を目指して始まった。 大阪・関西万博工事工事の概要大阪・関西万博は2025年、大阪湾を望む夢洲で開催される。 大屋根リングプロミエの活用プロミエはBIMモデルが持つ情報を施工段階で活用するために自社開発したツールである。
製作工場の製作状況管理大屋根リングは109ユニットの木架構を円形につなぐ。
現場施工進捗管理プロミエは、大屋根リングの施工進捗の管理にも活用した。 東ゲート施設デジタルモックアップと合意形成東ゲート施設大屋根部は船底のような形をしており、木製のパネルで構成されている。
BIMを利用した足場数量算出と発注東ゲート施設の形状は場所によって断面形状が異なり、施工用の足場を計画するのは簡単ではなかった。 パナソニックグループパビリオン「ノモの国」Mixed Realityを活用した現地確認パナソニックグループパビリオン「ノモの国」のファサードは、金属繊維をコーティングした布を、蝶の羽のような形をしたパーツに張り付けたものを積み重ねて構成されている。 ウーマンズ パビリオンin collaboration with CartierQRコードを利用した部材の仕分けウーマンズ パビリオンの外装は、2020年ドバイ万博の日本館で使用された組子ファサードを再利用している。
図面チェック時のプロミエ利用ウーマンズ パビリオンの設計データはRhinocerosモデルで提供されており、施工図の整合チェックを行う必要があった。
QRコードを利用した施工進捗記録入力および品質記録作成ノードとチューブを組み立てる際には、ノードの向きや膜取付金物の数と向きを正確に管理する必要があった。 全体統括管理広大な敷地管理に自律飛行ドローンを採用万博工事では約160haという広大な敷地で、数多くの工事会社が個々の工事を担当している。
日々の写真や点群データを取得ドローンは毎日定刻にドックから離陸し、プログラムされたルートに沿って地上を撮影する。 CONNECTIA®による大容量モデルや点群データを重ね合わせ現実世界から収集したさまざまなデータを、双子のようにコンピューター上で再現する技術をデジタルツインと呼ぶ。
CONNECTIAで効率的施工管理を実施このCONNECTIAを用い、敷地モデル上にクレーンやダンプトラックなどの重機モデルを配置し、搬送経路の設定や揚重計画など工事の正確なシミュレーションを実施した。 今後の展望万博後の展開と大林組の未来ウーマンズ パビリオンで使用された組子ファサードは万博終了後さらなる転用が検討されており、今回使用されたQRコードやプロミエ上のデータも再利用が期待されている。 株式会社大林組DX本部iPDセンター制作第三部 制作第二課 主任
小山 洋登
生産デジタル部 生産第一課 副課長
西田 拓也
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はじめに国土交通省では、令和5年度より、BIM/CIMの原則適用(図-1)を進めており、国土交通省職員だけでなく、国土交通省の業務や工事を受注する民間企業などもBIM/CIMを活用できるように環境整備を図っています。 沖縄総合事務局における取り組み状況沖縄総合事務局での取り組みとして、モデル事務所を中心に進めてきましたが、令和5年度より業務・工事でのBIM/CIMの原則適用を受け、管内の他事務所でもBIM/CIMのさらなる活用を図っています。 デジタルツインの作成および活用1)沖縄総合事務局では、令和元年10月に発生した火災により焼失した首里城の復元整備を進めており、それに併せて復元作業の見える化「見せる復興」に取り組んでいます。 フロントローディングの取り組み事例BIM/CIMモデル事務所において、BIM/CIMの原則適用を受け、調査・測量・設計・施工の各段階でのフロントローディングの取り組みを進めています(図-4)。 おわりに建設現場の生産性向上を図るためには、インフラDX、i-Construction、BIM/CIMなどの取り組みを普及・推進することが重要です。 内閣府 沖縄総合事務局 開発建設部 技術管理課
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