2024年8月19日
はじめに建築設計の初期段階では、設計者は複数のデザイン案を用意した上で発注者との合意形成の場に臨むのが一般的である。 設計業務における生成AIへの期待設計業務の分類設計にはさまざまな段階があり、大きく分けると概念設計・基本設計・実施設計に分類できる。 建築設計における生成AI利用の現状2022年を境に生成AIの利用は急速に一般化し始めており、今では話題にならない日はないほどである。 現在の生成AIの課題急激な成長を遂げている生成AIではあるが、現状ではまだ概念設計までの段階が適していると思われる。 本プロジェクトにおける生成AI利用これらの課題は、業務への生成AIの組み込み方によってその影響が大きく変わってくるため、一概に基本設計以降で生成 建築設計アシストAI「AiCorb」開発の経緯大林組は2017年にシリコンバレーにオープンイノベーションを活性化することを目的とした新拠点Obayashi SVVL( Silicon Valley Ventures and Laboratory)を創設し、Obayashi Challengeと称したイベントを実施した ここでは建設業が解決すべき課題に対して現地スタートアップなどからソリューションを募集し、「AIを活用した自動設計」という課題に対して選ばれたのが本プロジェクトである。
AiCorbの使い方本プロジェクトでは、AiCorbと名付けた建築設計アシストAIツールを開発している。 現在構築しているAiCorbを取り入れた設計業務としては、顧客からの要望を受けた後、まずHyparでボリュームスタディーを行う。
AiCorbに期待する効果以上のようなプロセスにより、設計者は効率よくさまざまな案を可視化しながら検証することができ、発注者側も具体的な形として設計案を確認できるようになるため、従来よりも早期に発注者の具体的な要望を引き出すことができる。 実用に向けた課題と今後の展望建築設計利用における生成AIの課題生成AIは急速な発展を遂げており、今後も継続的な性能向上が実現されていくことが予想される。 AiCorbの今後の展望本プロジェクトでは、建築設計特化の生成AIを開発しており、現在のところ特にスケッチからさまざまなデザインを提案することに主眼を置いている。 おわりにChatGPTなど一部の生成AIは既に企業で活用されるまでになったが、画像生成AIに端を発した高性能な生成AIの一般公開は、始まってからまだ1年程度しかたっていない。 株式会社大林組 技術研究所 生産技術研究部 副課長
中林 拓馬
設計本部 アジア建築設計 部長
辻 芳人
建設ITガイド 2024 特集2 建築BIM |
2024年8月13日
欧州グリーンディールグリーンに貢献するということに関してBIMデータの役割と、デジタル技術を活用する行動自体がグリーンに貢献するのではないかと思い、設備に関する話題を紹介します。 IFCをつなぐデータにする建設業というのは、具体的な成果を構築するには、設置場所に資材を運んで、建設資材を組み立て、建築物をつくるという業務で成り立っています。 環境、グリーンに寄与する活動IFCは、Industry Foundation Classインダストリー=産業、建設業ばかりではなく運送業、製造業などと多くのデータをつなげるだけではなく、何に成果を見いだすか?その成果の一つがLCAの評価、これはIFCが流れるからこそ効率的にできると言えます(図-6)。 設備IFCにできることBIMオブジェクトデータを設備の機器・機材から出す、つまり運転も含めたものをLCAとして出せるような仕組みが、設備のIFCを使えばできると思います。 機器メーカーとの連携設備構成において、機器は非常に大きなインパクトがあります。 グリーンなデザインスマートなビジネスを産業として実施してもらいたいとの思いで、日本においては建築BIM推進会議加速化事業が行われています。 一般社団法人buildingSMART Japan設備環境小委員会
谷内 秀敬
建設ITガイド 2024 特集2 建築BIM |
2024年8月5日
なぜBIM/CIMの普及が進展しないのか建築物・構造物(以下、建築物など)の施工後の所有者は、施主と、分譲所有者の集合体という2つの形態が存在する。 BIM/CIM利活用の効果BIM/CIMの利活用に関して、「つくる段階」での短期的かつスポット的な効果としての、建築物などの「見える化」により、関係者間での合意形成が容易となり、設計の効率化が図られることは認識されている。 (1)建築物などの効率的・効果的な{自動・自律的}運営・運用・維持管理長期にわたる総合的な運用コスト削減が、デジタル技術とデジタル機器の付加的な導入によって実現される。
(2)資産価値の向上「アセット・マネジメント(AM:AssetManagement)」、すなわちDCF(Discounted Cash Flow)に関する「資産価値創造のエコシステムの形成・創成」の実現である。 今後の展開国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)において1997年に合意された「京都議定書」は、2015年の「パリ協定」でその具体化が進められ地球温暖化に対する関心が高まり、同年9月に開催された国連総会でのSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の17の国際目標(169の達成基準と232の指標)へと進展することになった。 (1)「新規に必要とするモノ」を「過去に製造したモノ」で代替するリサイクルあるいはサーキュラーエコノミーと呼ばれる資源や部品の再利用・再生利用である。 (2)「新規に必要とするモノ」をデジタル&シェアリングエコノミーによって削減する広義のデジタル化の導入によって、人類は排他的な物理資源の専用利用ではなく、物理資源の共有を行わなかった複数のサービス提供者間で物理資源を共用利用するシェアリングエコノミーを編み出した。 むすびスマートなビル・キャンパス、そしてシティーの実現には、対象物の正確なデジタルツインが必須であり前提となる。 東京大学/デジタル庁
江崎 浩
株式会社竹中工務店/IPA DADC
粕谷 貴司
株式会社日建設計/IPA DADC
中村 公洋
株式会社三菱総合研究所
長谷川 専
株式会社三菱地所設計
石橋 紀幸
株式会社シムックスイニシアティブ
中島 高英
建設ITガイド 2024 特集2 建築BIM |
2024年7月29日
はじめに一般社団法人buildingSMART Japan(以下、bSJ)は、建設業界におけるデータ流通・相互運用の促進を目的として、国際組織buildingSMART International(bSI)の日本支部として1996年に設立され、BIMデータの国際標準規格であるIFC(Industry Foundation Classes)や、BIM推進に関連する標準化活動を、国際標準化機構(ISO)、欧州標準化委員会(CEN)などと協調しながら推進してきている。 bSI Awards 2023bSIでは、IFC、BCF(BIM Collaboration Format)、IDS(Information Delivery Specification)などbuildingSMARTが策定している標準を活用したopenBIMの普及促進を目的に、2014年からbuildingSMART Awardを年一回実施している。
各部門優秀賞9チーム
ISO19650に基づくBIMプロジェクト推進bSI Awardsにおける各チームのプロジェクト推進は、ISO19650に準拠して行うことが基本となる。
ISO19650実現におけるopenBIMの役割ISO19650で規定されているBIMプロ ジェクト推進方法論に従い、各プロジェクトに固有のBIM活用ユースケースを選択してBEPを策定し、BIM推進の効果を最大限に発揮させるのが、BIMマネジメントにおいて重要な要素である。
共通データ環境(CDE)におけるopenBIMの役割共通データ環境CDEは、ISO19650においてBIMライフサイクル全体における情報管理の要とされている概念である。 openBIMとCDEの4つのステータスCDEに格納される情報には①「作業中」、②「共有」、③「公開」、④「アーカイブ」の4つのステータス(状態)が定義されている。 little bim/BIG BIM(リトルBIMとビッグBIM)「little bim」は、BIMプロセスが一つの会社または専門部署(タスクチーム)に限られ、自社・自部署特有の設計プロセスのニーズに合わせてカスタマイズされた手法・ソリューションを活用するBIMプロセスを指す。 Single Source of Truthの実現SSOT(Single Source of Truth:信頼できる唯一の情報源)とは、組織内の全員が同じデータに基づいてビジネスの意思決定を行うことを保証するため、情報の一貫性と正確性を確保する慣習のことを意味する用語である。
重ね合わせモデルの手法についてCDEの「共有」以降のBIMプロセスにおいては、重ね合わせモデル(Federated model)作成をどのように行うかが、BIM総合調整(BIM Coordination)を成功に導く重要な鍵となる。 建築確認におけるIFC活用日本国内では国土交通省が公開した「建築BIMの将来像と工程表(増補版)」において、2025年から「BIMによる確認申請」が位置付けられ、まず「BIM図面審査」が開始され、その後「BIMデータ審査」に発展していく。 海外の建築確認へのIFCとAIの活用bSIサミット会議においても、世界各国のIFC形式のBIMデータを審査対象とする建築確認プロセスへの取り組みが報告されてきている。 シンガポールCORENET X2000年代からBIMの建築確認への活用を行ってきているシンガポールにおいては、2023年中にこれまでの建築確認BIMプラットフォームCORENETを、CORENET Xとして更新し、openBIMに基づく建築確認プロセスに取り組んでいる状況である。
今後の展望本稿では、BIM標準化団体bSIのサミット国際会議における、ISO19650活用事例、建築確認へのIFC活用の動向を紹介し、openBIMがどのようにISO19650と連携しているかについて述べた。 参照情報: 一般社団法人buildingSMART Japan理事(技術フェロー)鹿島建設株式会社
足達 嘉信 博士(工学)
建設ITガイド 2024 特集2 建築BIM |
2024年7月22日
はじめに5年に一度の点検業務も2024年度で3巡目に突入する。 維持管理の方向性=新技術の活用国土交通省では、これからの維持管理について「定期点検における新技術活用の方向性(案)」を2020年に提示している。
新技術の現在地もちろん1巡目、2巡目の間にまったくの技術革新がなかったわけではない。 現在の課題を考えるここで、今までの点検現場に立ち返り、長年点検の現場でその苦労を味わってきた一人としての視点から、どのような課題があったのかを検証してみたい。
熟練でも難しい打音調査このような状況下で、まず現場で特に注意を払われてきた印象が強い作業は、打音調査である。
損傷図作成における落とし穴また現場から帰ってきてからの資料整理も大変な苦労を要する作業だ。 維持管理の未来はこれらの現状に加え、実際にはこれから間違いなく到来する人手不足や点検施設量の増加に伴い、作業面と内業の負担軽減をもたらす新技術の登場が必要なことは明白だ。
新技術の積極的な導入は不可欠新技術はいまだ発展途上にある。 株式会社アイ・エス・ピー 代表取締役
波場 貴士
建設ITガイド 2024 特集1 建設DX、BIM/CIM |