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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

現場に重点を置いたBIM推進策-現場作業に直結した講習会と3Dモデルの提供による効率化-

2025年6月18日

松村組のBIM推進を担う大阪支店に取材

株式会社松村組は、1894年の創業から130年の歴史を刻む建設会社。
パナソニック株式会社、トヨタ自動車株式会社、三井物産株式会社の出資で設立されたプライム ライフ テクノロジーズ株式会社のグループ企業の建設会社として、「これまでにないまちづくり」を担う。
 
今回取材したのは、同社大阪本店。
同社のBIM推進の中核となって活動する建築部BIM推進課の3名(小松 哲幸・大阪本店建築部建築課担当課長兼BIM推進課担当課長、東田 雅夫・同見積課担当課長兼BIM推進課、中西 裕輝子・建築部BIM推進課)に、これまでの経緯と課題について伺った。
 
 

時代の流れを捉えたBIM推進課の創設

同社では2017年に大阪本店建築部建築課および設計課にてBIM導入を開始。
当初はパースの作成や仮設計画などにArchicadを使用していた。
 
BIM推進課の創設は2022(令和4)年、国土交通省が直轄の業務・工事でのBIM/CIMの原則適用を開始する前年で、BIM推進の流れが業界全体でますます高まっていた。
そうした流れに乗るため、BIMの本格活用を進めるべく設置された。
現在、大阪本店が専属2名と兼務による7名体制。
東京本店も専属と兼務を合わせて7名、これとは別に建築本部に3名が在籍する。
兼務でBIMに携わる人員がいることで、各部署でのBIM活用に波及することも考えられている。
大阪本店は、本店内での浸透はもちろん、建築課と連携することで特に現場でのBIM活用に重点を置いて活動中だ。

松村組におけるBIM推進体制の変遷
松村組におけるBIM推進体制の変遷

 
 

現場に直結したテーマでBIM講習会を実施

BIM推進課の主な役割は、現場でのBIM活用の推進と、業務サポートによる現場作業の省力化や現場監督の負担軽減である。
 
現場でのBIM活用を進めるには、まずその操作を知ってもらう必要がある。
そのためにスタートしたのが講習会だ。
その内容は、「Archicad」の基本操作に始まり、仮設計画をはじめ現場寄りのテーマを掲げる。
小松課長は「受講のみを目的に強制する のではなく、例えば現場で掘削が始まる前に掘削工事計画図の描き方を学ぶとか、コンクリート打設前にBIMでコンクリートの数量を拾ってみるなど、実際の現場の工程に合わせて実施し実効性を高めるのを狙いとしています。やはり必要に迫られないと覚えないですからね。まずは基本操作の5プログラムの受講を目標に、具体的な現場を想定して講習テーマを設定しています」と語る。
 
中西氏は「Archicad」の活用が進まなかった時期に、「Archicad」経験者として途中入社した。
実は現場管理の経験はないのだが、他業務を行いながら現在は講師も務める。
 
「最初は、初心者のための入門書『Archicad Magic』を使って行っていたのですが、現場で使われる操作に結び付きにくいため単なる勉強会のようになって、関心の高まりを感じられませんでした。
そこで課内で相談し現場寄りの方針に変更しました。
 
例えば『smartCON Planner』を使って『こんな足場が置けて、立面・断面も見られる』と提示し、次に実際に操作してもらうことで興味を持ってもらい、さらには今動いている現場で実際に使ってもらうことで、より実務的なスキルに磨きをかけてもらう3ステップをイメージして行っています。
そのため練習用のモデルではなく、現場に即したモデルで行うのが必須になります」
 
講習会の効果は、入社4~5年の若手社員を中心に徐々に表れている。
現場でBIMを活用し、それで得た成果や疑問を先輩社員にぶつけてみる動きも見られるようになった。
講習を受けた社員から、中西氏に質問が寄せられるケースも多く、確かな反響を感じている。
 
「やはり『1回、講習が終わってノルマ完了』のように思われては困りますし、逆に週1回の講習会で操作を自分のものにするのは困難です。
従って講習後に訪れる実作業を逃さず『すぐに現場で使って覚えて、分からない点はどんどん聞いてください』と伝えています。
 
現場作業と講習テーマを合致させながら行うので、定期的に開催できない課題があるが、確かな手応えも感じている。
小松課長は「講習会開始当初は、『忙しいから、できない』という声もありましたし、現場所長 が『どんどん使って覚えろ』と言ってくれる現場と、そうでない現場との差が生じていました。
でも現在は、現場所長もBIMの存在は認識しているので、現場間の格差もなくなりつつあります。
最近は『色決めしたいから、パースを作って』など、現場からの依頼も多くなっていて、当初と比べれば着実に理解は進んできていますね」と語る。
これを受けて中西氏は「『Archicad』の講習も、若手社員にはしっかりと操作方法を身に付けてほしいのですが、中堅以上のキャリアの社員は基本操作や全体の仕組みを理解してもらった上で部下に指示したり、課の方にBIMモデルを依頼したりできるようになるなど、階層別に講習内容を変えてもいいと思っています」と構想を語る。
 
現場へのBIM理解の推進には、まだまだ試行錯誤が続くが、現場からの反応が浸透度を実感させてくれている。

BIM講習会の変遷
BIM講習会の変遷
BIM講習会の様子
BIM講習会の様子
BIM講習会で使用したモデル(掘削)
BIM講習会で使用したモデル(掘削)
BIM講習会で使用したモデル(鉄骨建方)
BIM講習会で使用したモデル(鉄骨建方)

 
 

AI StructureとBI Structureの連携

一方、現場の業務サポートには課題もある。
 
「3Dモデルを現場に提供するスピードがなかなか間に合わないのが実情です。
施工の案件では、BIMモデルを提供するのが理想なのですが、専属が2名という状況の中で、なかなか思うようにできていません」と小松課長は語る。
 
そこでスピードアップという課題の解決に向けて期待を寄せるのが、株式会社U‘s Factoryの「AI Structure」と「BI Structure」だ。
実際に業務で使用する中西氏は、その利便性を次のように語る。
 
「構造3Dモデル(RC・S・SRC)を作成する専用ツールである『BI Structure』を使っていたのですが、まず部材を定義するために部材リストの鉄筋径・本数などを手打ちで行う作業をしなければならず、かなりストレスを感じていました。
『AI Structure 』を使えるようになってからは、PDFの図面データの配筋リストなどを、AIが自動的に読み取ってくれるので、手作業の時間が約3分の1以下に削減されました。
そのまま『BI Structure 』で統合して鉄筋モデルを作成できるので、現在は仮に見積り案件であっても最初から『AI Structure 』で情報を読み取って簡単に『Archicad 』に変換して提出することが多いです。
受注できればそれ以降もスムーズに進行できます。
 
U’s Factoryのプレゼンテーション時に『簡単に使いこなせます』と言われていて、『それなら活用しなければ』と思ったのですが、神経を使っていた図面を読み込む作業も減って実際その通りだなと思います」前述の通り、建築現場経験のない中西 氏であるが、操作を覚えるだけで3Dモデルが作成できる「AI Structure」のメリットを十分に感じている。
 
それだけでなく、「AI Structure」と「BI Structure」「BI for ac」の連携が業務になくてはならない利便性を生んでいる背景には明らかな差別化があるからだ。
小松課長は他ソフトとの違いを次のように語る。
「いま分かっている範囲では、鉄筋の仕様や本数が自動で正確に出せるのは『BI for ac』だけです。
同種の他社ソフトでは結局、部材リストを見ながら梁1本1本を入力し、定着も自動で出ないので、自分で計算する必要があるなど手間もかかりますね。
また、一度『BI for ac』でBIMモデルを作成すればライセンスをたくさん持たなくても「Archicad」によって共有できるので、その点でも活用しやすいです」

AI StructureとBI Structureの連携 「AI」が図面内容を読み取り自動で部材定義作業を行ってくれるため、手作業の時間が半分以下に短縮
AI StructureとBI Structureの連携
「AI」が図面内容を読み取り自動で部材定義作業を行ってくれるため、手作業の時間が半分以下に短縮
BI for acとの連携 AI Structureが自動作成したデータはBIにインポートされ、さらにBI for acで鉄筋を自動発生させることができる
BI for acとの連携
AI Structureが自動作成したデータはBIにインポートされ、
さらにBI for acで鉄筋を自動発生させることができる

 
 

「BI for ac」も現場サポートで活用

BIM推進課創設時には、設計から見積り、施工までBIMによる一気通貫が話題に上がっていたと言うが、現在は目標を一つひとつ設定しながら進んでいる状況だ。
見積り作業には、今のところ「BI for ac」を使用するに至っていない。
東田課長に、その理由を伺った。
 
「『BI for ac』はどちらかと言えば、現場の施工寄りのソフトで、施工用の実施数量が正確に出てくるのですが、見積り用に使用する以上に細部まで計算し過ぎてしまっているため、再度見直す必要も生じてしまうのです。
ただし、部材の発注時など現場での見積りには有効であろうと考えています」小松課長は、見積り業務の仮設計画に関連して「仮設の配置は『smartCON Planner』が、課内ではこのほか「BI for ac」も活用しています」と述べた。
中西氏に現場サポートでの活用状況について聞いた。
 
「現在使用しているソフトではライセンスがないと3Dモデルが見られなかったのですが、『BI for ac』は『Archicad』で3Dモデルを出せば現場に送って共有できる点が便利です。
ライセンスは現在、一つしかないので操作は課内でしかできませんが、操作性の面でも『Archicad』で一からモデリングするよりはスムーズなのでスピードアップにもつながります。
ただ、本来は現場で配筋検討ができる施工図が望ましいのですが、現在は図面を3D化して現場に渡している段階ですね。
まずはできる範囲で、構造図ベースのモデルを全現場に提供するという目標を立てています」。
これに対し小松課長は「3D化することで干渉している箇所がチェックできるので手戻りも減ります」と現段階での効果を語った。
 
 

着実な成果を踏まえてさらなるBIM活用へ

「BI for ac」をはじめとするBIMソフトに対する要望も聞いた。
最も使用する立場にある中西氏は、次のような体験を語る。
 
「現場からの掘削図の依頼に、どう出せばいいのか分からず自動発生させた寸法で作図して送ったところ寸法を全てチェックされて返ってきました。
依頼者に確認すると『その寸法は必要なかったのです。そのために私が図面を修正しました』と言われてしまったことがあります。
私の建築知識の不足もありますが、仕様をカスタマイズできる機能があればと思いました」
東田課長も「現在、非常に多くの機能が搭載されているのですが、例えば簡単なモデリングで足りる人もいれば、詳細なモデルが欲しい人もいる。
何が欲しいかユーザー側のニーズやレベルが違うので、不要な機能を排除したシンプルなメニューがあるといいですね」と、やはり使う側の選択肢が増えることを希望した。
 
発足からの2年間でさまざまな試みを行い、BIM推進課の活動が大阪本店のBIM活用を徐々に広げている。
小松課長に次の目標について聞いた。
 
「効率化を見据えながら、これまで進めてきた成果を伸ばしていくことはもちろん、全現場でのBIMデータ活用による現場効率化を目指します」
松村組大阪本店のBIM活用は着実に進化していく。

 
 
【出典】


建設ITガイド2025
建設ITガイド2025



脱炭素化に向けた積算データの活用について-BIM対応建築積算システム「ΗΕΛΙΟΣ」の新たな挑戦-

2025年6月16日

はじめに

株式会社日積サーベイでは、BIM対応建築積算システム「ΗΕΛΙΟΣ(ヘリオス)」を開発・提供しており、2024年12月には、最新版「ΗΕΛΙΟΣ 2025」をリリースした。
この「ΗΕΛΙΟΣ 2025」では、「高速化・省力化・新機能」を3本柱として全25項目の機能追加・機能改良を実装している。
主に「高速化」では、「PDFデータ取り込みの高速化」、「起動時の高速化」、「Excel出力時の高速化」の3つを改良している。
次に「省力化」では、「自動計上項目の追加」をはじめ、操作性の向上を目的とした「初期値設定機能」、「ショートカットキーの追加」、「範囲配置機能の追加」を実装している。
最後に「新機能」として、ペーパーレス化に向けた取り組みの一つとして「PenPlus」との連携機能(オプション機能)、今回の主題となる「One Click LCA」との連携機能を実装している。
ここで「PenPlus」とは、株式会社プラスソフトが開発・販売しているソフトウエアである。
今回の連携は、このソフトウエア上で、PDFデータの計測を行い、計測したデータをΗΕΛΙΟΣへ取り込む機能になる。
「PenPlus」の主な特長として、動きが軽く、操作性に優れている点、複数ページ含まれているPDFファイルに対して計測作業が可能である点である。
次に、「One Click LCA」とは、住友林業株式会社が2021年にフィンランドのOne Click LCA社と日本市場における単独販売代理店契約を締結した、建物が一生涯に排出するCO2などを見える化するソフトウエアである。
今回、住友林業株式会社が提供する「One Click LCA日本版」との連携を実現している。
 
 

「One Click LCA」との連携に至った背景

今回の連携に至った主な背景として、CO2排出量の算定において、内訳書を基に資材数量を把握していることから積算業務との親和性が高い点、CO2排出量の算定を今後、積算技術者が担うことが想定される点である。
また、国土交通省が2022年12月に「ゼロカーボンビル推進会議」を設置、2023年5月の報告書にて、「2030年エンボディドカーボン算定義務化」について言及したこともあり、建設時CO2排出量の算定に向けた取り組みも今後増えてくることが想定される。
 
 

エンボディドカーボン算定とは?

現在、世界のCO2の約37%が建設セクターから排出されている。
建設セクターの内訳として、約70%が居住時・使用時に発生する(オペレーショナルカーボン)、約30%が一連の建設プロセスで発生する(エンボディドカーボン)になる(図-1)。
 
オペレーショナルカーボンについては、ZEHやZEBにより削減が進んでいるが、エンボディドカーボンの削減については今後重視される傾向にある。
そのため、エンボディドカーボンの算定が必要になる(図-2)。

図-1 出典:住友林業株式会社提供資料
図-1
出典:住友林業株式会社提供資料
図-2 出典:住友林業株式会社提供資料
図-2
出典:住友林業株式会社提供資料

 
 

「One Click LCA」の特長

「One Click LCA」は世界170カ国以上で導入され、11カ国語に対応しているソフトウエアである。
主な特長として、「CO2排出量の精緻な算定を実現」、「国際認証との高い適合性」、「効率的なデータ算定が可能」の3点である。
「CO2排出量の精緻な算定を実現」では、ISO準拠の汎用データ、環境認証ラベルEPD、プライベートデータの利用が可能であり、輸送・施工など実データに基づき算定し、さまざまな企業努力を結果に反映することが可能である。
「国際認証との高い適合性」では、国際規格ISOや70以上の世界のグリーンビルディング認証に適合している。
「効率的なデータ算定が可能」では、資材データはBIMをはじめ、Excelから取り込むことが可能であり、ライフステージごとのCO2を自動計算で効率よく算定できる。
 
 

「One Click LCA連携」の全体図

「One Click LCA連携」の流れとしては、まず、住友林業株式会社が提供している原単位コード一覧表をΗΕΛΙΟΣへ取り込む。
 
次に、従来どおりΗΕΛΙΟΣで数量算出を行い、ΗΕΛΙΟΣの内訳書内で原単位コードの仕分け作業、単位換算作業を行う。
最後に「One Click LCA取込用フォーマット」に出力を行い、「One Click LCA」に取り込むことでCO2を見える化することが可能になる(図-3)。

図-3
図-3

 
 

「One Click LCA連携」機能の特長

今回の機能の特長として、「原単位コードの仕分け作業の省力化」、「単位換算作業の省力化」、「出力除外設定機能」の3点になる。
「原単位コードの仕分け作業の省力化」では、原単位コードを検索する機能をはじめ(図-4)、科目に応じた可能性のある原単位コードを初期表示する機能を実装している。

図-4
図-4

また、原単位コードとして「コンクリート」を選択する場合において、摘要表現からコンクリート強度を取得し、可能性の高い原単位コードを初期表示する機能も併せて実装している(図-5)。

図-5
図-5

次に「単位換算作業の省力化」では、明細上の単位「ton」、原単位コードの単位「kg 」の場合に換算値を自動入力する機能、ΗΕΛΙΟΣで数量算出を行っている場合において、建具本体のW寸法、H寸法を換算値として自動入力する機能を実装している(図-6)。

図-6
図-6

最後に「出力除外設定機能」では、「One Click LCA取込用フォーマット」へ出力したくない項目(CO2算定除外項目)について、科目単位、明細項目単位で設定できる機能も実装している。
 
 

CO2算定における今後の展開

「One Click LCA連携」においては、「原単位コードの仕分け作業」、「単位換算作業」の省力化につながる機能開発を進める予定である。
「原単位コードの自動入力機能」を最終目標として、今後も継続して取り組みたいと考えている。
また、別ツール製品との連携も状況に応じて前向きに検討していきたい。
「One Click LCA」でのCO2算定業務の際には、ぜひこの「One Click LCA連携」機能をご利用いただきたい。
 
 
会社概要
会社名:株式会社日積サーベイ
所在地:大阪市中央区大手前1-4-12大阪天満橋ビル8F
創業:1964年(昭和39年)10月
URL:https://www.nisseki-survey.co.jp/
資本金:2,000万円
従業員数:47名(2024年4月現在)
主な事業内容:建築積算、コスト算出、コンピューターシステムの開発
 
 
 

株式会社日積サーベイ システム開発部
田川 彰

 
 
【出典】


建設ITガイド2025
建設ITガイド2025



i-Construction 2.0をはじめとしたインフラ分野のDX展開の取り組み

2025年6月9日

i-Construction 2.0、インフラ分野のDXの経緯

国土交通省では、2016年4月にi-Construction委員会(委員長:小宮山宏 株式会社三菱総合研究所理事長)から「i-Construction ~建設現場の生産性革命~」を提言いただき、建設現場の生産性向上の取り組みとして、ICT建設機械や無人航空機(UAV)等を活用したICT施工、設計・施工におけるデジタル技術の積極的な活用など、i-Constructionを進めてきました。
 
2020年からは、「国土交通省インフラ分野のDX推進本部」(本部長:国土交通省技監)を設置し、i-Constructionの目的である建設現場の生産性向上に加え、インフラ関連の情報提供やサービスを含めて、デジタル技術を活用し働き方を変革するインフラ分野のDXを推進、業務、組織、プロセス、文化・風土や働き方の変革を目的として取り組みを進めてきました。
2022年3月には国土交通省の取り組みを「インフラ分野のDXアクションプラン」として取りまとめて公表し、2023年8月に第2版(以下、インフラDXアクションプラン2)を公表しました。
 
インフラDXアクションプラン2においては、目指す姿として、建設現場を含めた20~30年後の将来の社会イメージを示すとともに、「インフラの作り方の変革」、「インフラの使い方の変革」、「データの活かし方の変革」という3つの観点で分野網羅的、組織横断的に取り組みを進めることとしています(図-1)。

図-1 建設現場の将来の社会イメージ
図-1 建設現場の将来の社会イメージ

 
「インフラの作り方の変革」ともいえるi-Constructionに着手して以降、社会資本整備を巡る状況は大きく変化してきています。
生産年齢人口の減少や高齢化により、特に地方都市において暮らしを支える各種サービス提供機能の低下・損失が懸念される中、気候変動の影響による自然災害の激甚化・頻発化、高度成長期以降に集中的に建設されたインフラの老朽化が進行しています。
 
一方で、AI、5G、クラウド等に至る革新的なデジタル技術の開発・社会実装も進んでおり、国土交通省においても、i-Constructionの取り組み以降、3次元データやICT建設機械などのデジタル技術の活用が一般化しつつあります。
2023年度からは、直轄土木業務・工事において、建設事業で取り扱う情報をデジタル化し、建設生産プロセス全体の効率化を図るBIM/CIM(Building/ Construction Information Modeling、 Management )に取り組むことを原則化するなど、データやデジタル技術を活用し、業務のあり方を変革していく体制は整ってきています。
 
このため、i-Constructionの取り組みを加速し抜本的な省人化対策を進める時と捉え、「施工のオートメーション化」、「データ連携のオートメーション化」、「施工管理のオートメーション化」を3本の柱とし、少ない人数で、安全に、快適な環境で働く生産性の高い建設現場の実現を目指し建設現場のオートメーション化に、2024年4月より、i-Construction 2.0として取り組むこととしました。
 
i-Construction 2.0の取り組みは、インフラDXアクションプラン2で定めた建設現場の将来の社会イメージに向けた取り組みともいえます。
 
本稿ではインフラ分野のDXにおける取り組みの方向性を説明した後に、「インフラの使い方の変革」として、 i-Construction 2.0の取り組みや、「データの活かし方の変革」として、国土交通データプラットフォームの取り組みについて説明します。
 
 

インフラ分野のDXの方向性

インフラ分野のDXの方向性として、インフラに関わるあらゆる分野で網羅的に変革する、「分野網羅的な取り組み」という視点を掲げています。
 
分野網羅的な取り組みを進めるに当たり、①インフラの作り方、②インフラの使い方、③データの活かし方という3分野に分類し、DX(変革)を進めることとしています(図-2)。

図-2 インフラ分野のDXにおける3分野
図-2 インフラ分野のDXにおける3分野

 
①「インフラの作り方の変革」は、インフラの建設生産プロセスを変革する取り組みが対象となります。
データとデジタル技術を活用し、建設生産、管理プロセスをより良いものにしていく取り組みです。
i-Construction 2.0の取り組みも、この中に含まれています。
 
②「インフラの使い方の変革」では、インフラの「運用」と「保全」の観点が対象となります。
「運用」では、インフラ利用申請のオンライン化や書類の簡素化に加え、デジタル技術を駆使して利用者目線でインフラの潜在的な機能を最大限に引き出すことなどが挙げられます。
「保全」では、最先端の技術等を駆使した、効率的・効果的な維持管理などが挙げられます。
これらの取り組みを通じて、賢く(Smart )かつ安全(Safe)で、持続可能(Sustainable)なインフラ管理の実現(3S)を目指します。
 
③「データの活かし方の変革」は、上記2つはフィジカル空間を対象としている一方で、「データの活かし方の変革」はサイバー空間を対象とした変革です。
インフラまわりのデータを活かすことにより、仕事の進め方、民間投資、技術開発が促進される社会の実現を目指します。
具体的には、 IoTデバイス等の機器の普及により、フィジカル空間で取得したデータを大量にサイバー空間に移すことが可能となりました。
これらのデータをサイバー空間において予測や検証を行い、フィジカル空間にフィードバックすることで新たな価値を創出するという考え方です。
取り組みの一つとして、国土交通省では、国土交通データプラットフォームをハブに国土に関するデータの収集・蓄積・連携を進め、そのユースケースの創出を進めています。
 
 

i -Construction 2.0が目指す目標と取り組み

Construction 2.0では、デジタル技術を最大限活用し、建設現場のあらゆる生産プロセスのオートメーション化に取り組み、今よりも少ない人数で、安全に、できる限り屋内など快適な環境で働く生産性の高い建設現場を実現することを目指しています。
 
具体的には2040年度までに、建設現場の省人化を少なくとも3割、すなわち生産性を1.5倍以上に向上することを目指します。
省人化3割とは、2040年度には生産年齢人口が約2割減少するという予測がある中で、災害の激甚化・頻発化、インフラ老朽化への対応増などを考慮し、設定したものです(図-3、4)。

図-3 i-Construction 2.0 建設現場のオートメーション化
図-3 i-Construction 2.0 建設現場のオートメーション化
図-4 i-Construction 2.0 目標設定の考え方
図-4 i-Construction 2.0 目標設定の考え方

 
抜本的な省人化対策に取り組むためには、一人で複数台の機械を操作することや、設計・施工の自動化、海上工事における作業船の自動施工など、これまで人が手作業で実施している内容をAIやシステムを活用して自動化し、人はマネジメント業務に特化していくよう変革していく必要があります。
併せて、抜本的な変革が実現するまでの対応として、近年社会全体で進展しているDXの取り組みや、BIM/CIM原則化によるデジタルデータの活用、新型コロナウイルスの感染拡大を契機として急速に進んだリモート技術など、業務の効率化・省人化につながる取り組みを加速していく必要があります。
さらに、省人化対策の推進に当たっては、気候変動に伴い激甚化・頻発化する災害への対応や積雪寒冷環境下のような厳しい現場条件、地域特性も考慮する必要があります。
 
このため、国土交通省ではこれまで進めてきたi-Constructionの取り組みを深化し、さらなる抜本的な建設現場の省人化対策を「i-Construction 2.0」として、「施工のオートメーション化」、「データ連携のオートメーション化」、「施工管理のオートメーション化」に取り組むことで、建設現場のオートメーション化の実現を目指していくこととしています。
 
これらの省人化・生産性向上を通して、建設産業に携わる方々の賃金水準の大幅な向上も期待しています。
 
なお、i-Construction 2.0やインフラ分野のDXを進めていくためには、多様な人材に建設産業に関心を持ってもらうことが重要です。
横軸にインフラまわりの関係者、縦軸に整備や管理の高度化、さらにはインフラ利活用という観点を加えて、次のようなイメージで関係を整理しています(図-5)。

図-5 i-Construction 2.0とインフラ分野のDX
図-5 i-Construction 2.0とインフラ分野のDX

 
 

i-Construction 2.0-3本の柱-

(1) 施工のオートメーション化

現在、建設現場では経験豊富な技術者の指揮の下、施工計画を作成し、工事工程を定めた上で、指示を受けたオペレータが建設機械に搭乗し操作を行っています。
今後、一人当たりの生産能力を向上するため、各種センサーにより現場の情報を取得し、AIなどを活用して自動的に作成された施工計画に基づき、一人のオペレーターが複数の建設機械の動作を管理する「施工のオートメーション化」を推進します。
 
「施工のオートメーション化」に当たっては、自動施工の標準的な安全ルールなどの環境整備や異なるメーカー間の建設機械を制御可能な共通制御信号の策定、人の立ち入らない現場において安全かつ効率的な作業を可能にする遠隔建設機械の普及促進等を実施します。
 
また、さまざまなシステムが活用されている建設現場において、異なる建設機械メーカーであってもリアルタイムの施工データを円滑に取得・共有することで、建設現場のデジタル化・見える化を進め、建設機械の最適配置を瞬時に判断し、効率的な施工を実現します。
さらに、海上工事における作業船の操作の自動化を実現します。
 
「施工のオートメーション化」により、建設現場の省人化に加え、生産年齢人口減少下においても必要な施工能力を確保していきます。
 

(2) データ連携のオートメーション化

(デジタル化・ペーパーレス化)
調査・測量、設計、施工、維持管理といった建設生産プロセス全体をデジタル化、3次元化し、必要な情報を必要な時に加工できる形式で容易に取得できる環境を構築するBIM/CIMなどにより「データ連携のオートメーション化」を推進します。
これにより同じデータを繰り返し手入力することをなくし、不要な調査や問い合わせ、復元作業を削減するとともに、資料を探す手間や待ち時間の削減を進めます。

建設生産プロセスにおいて作成・取得するデータは多量にある一方、現時点ではデータを十分に活用できていないことから、各段階で必要な情報を整理した上で、関係者間で容易に共有できるよう、情報共有基盤を構築し、円滑なデータ連携を進めます。
 
データの活用に当たっては、設計データを施工データとして直接活用することや、デジタルツインの構築による施工計画の効率化など、現場作業に関わる部分の効率化に加え、BIツール等の活用により、紙での書類は作成せず、データを可視化し、分析や判断ができるよう真の意味でのペーパーレス化(ASP(情報共有システム)の拡充といった現場データの活用による書類削減)などバックオフィスの効率化の両面から進めていきます。
 

(3) 施工管理のオートメーション化(リモート化・オフサイト化)

建設現場全体のオートメーション化を進めるためには、施工の自動化やBIM/CIM等によるデジタルデータの活用に加え、部材製作、運搬、設置や監督・検査等あらゆる場面で有用な新技術も積極的に活用しながら「施工管理のオートメーション化」を推進します。
 
これまで立会い、段階確認等の確認行為において活用していた遠隔臨場を検査にも適用するとともに、コンクリート構造物の配筋の出来形確認においては、デジタルカメラで撮影した画像解析による計測技術も適用します。
また、小型構造物や中型構造物を中心に活用していたプレキャスト製品について、大型構造物についてもVFM(Value for Money)の評価手法の確立等を進めながら導入を推進することにより、リモート化・オフサイト化を進めます。
 
 

おわりに

人口減少社会やインフラの老朽化が進む中、社会水準を維持・向上させていくためには、より多くの付加価値を生み出していくことが必要です。
この鍵となるのがデジタル技術(D:Digital)と、日常生活や経済活動の基盤となるインフラを守り、改善し、より良くしていこう、という変革(X:Transformation)であり、この変革には、業務のあり方や働き方も含まれています。
 
将来に当たって建設業は欠くことのできない業界であり、インフラ分野のDXをとおして多様な人材にとって魅力あるものにしてまいりたいと考えています。
 
 
【参考】
本稿の詳細については、国土交通省ホームページなどを参照いただければ幸いです。
1)国土交通省報道発表
「i-Construction2.0」を策定しました~建設現場のオートメーション化による生産性向上
(省人化)~
https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001085.html
2)国土交通省ホームページインフラ分野のDX
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000073.html
 
 
 

国土交通省 大臣官房 参事官(イノベーション)グループ 課長補佐
大谷 彬

 
 
【出典】


建設ITガイド2025
建設ITガイド2025



建築学科における情報技術の教育における課題と展望

2024年9月19日

大学教育と一級建築士の認定におけるカリキュラム上の制約

わが国の大学教育では、1年時に教養科目を設置し、学年が上がるごとに専門教育に切り替えていく方式が主流である。
例えば、早稲田大学建築学科の場合、語学や教養、自然科学などの理工系学部の学生が共通して取得すべき科目として、48単位が設置されている。
これは、一般教育科目と専門教育科目などの分類に分けて設置することを求めた旧大学設置基準の名残である。
旧大学設置基準では一般教育科目36単位、外国語科目8単位、保健体育科目4単位を設置することとなっていた。
なお、1991年の大学設置基準の大綱化と呼ばれる規制改革により、現在ではこのような規制は存在しないが、多くの大学で類似の制度を踏襲している。
 
これに加えて、一級建築士の受験時に求められる単位数が明確に定められているため、建築学科においては、こちらの基準も満たす必要がある。
ここでは、建築設計製図、建築計画、建築環境工学、建築設備、構造力学、建築一般構造、建築材料、建築生産、建築法規の9分類に関して、最低限取得すべき単位数が定められている。
この9つの科目分類の下限の単位の合計が30単位となっている。
なお、一級建築士の受験資格に関連する科目に関しては、シラバスの提出が定期的に求められ、審査を受ける必要がある。
筆者は10年ほど前、構法系の科目でパラメトリックモデリングに関する演習を行うためにプログラミングの基礎を含む演習を取り入れたシラバスにした際に、「建築一般構造の科目としてふさわしくない」という指摘を受け、科目分類を変更したことがある。
このように厳格な審査が存在することもあり、この9つの科目分類の下限の単位の合計が30単位部分に関しては、多くの建築学科で共通のカリキュラムとなる。
なおこれら科目の認定においては、手書き製図である必要はないため、CADやBIMソフトウエアを用いての製図教育に関しては規制されていない。
また、実務経験2年で一級建築士の免許登録を行うためには建築系の専門科目の単位取得数が60単位を超える必要がある。
 
大学の建築学科においては、大学教育に求められる教養を涵養するための共通科目と一級建築士の受験資格を取得するための専門教育という2つの条件を満たす必要がある。
そのため、多くの大学において卒業単位に含められる科目の過半は類似したカリキュラムとなることとなる。
 
このような条件下で情報技術の取得を目指す新たな科目を設置することはかなり難しいと筆者は感じている。
そのため、製図科目を始めとした既存の科目に情報技術の演習を組み込むことが必要になる。
 

早稲田大学建築学科における情報技術教育の状況

本学の建築学科においては、図-1に示すように1年生から4年生まで一貫した製図教育を行っており、全学年で必修の設計系科目が存在する。
このうち、1年時の製図系科目を中心に、授業の一部を3次元CADを用いた演習としている。
表-1に3次元CADやBIMソフトウエアを授業で用いる科目を示す。

図-1 製図教育の構成と3次元データの作成
図-1 製図教育の構成と3次元データの作成
表-1 3次元データの作成に関連するソフトウエアの利用状況
表-1 3次元データの作成に関連するソフトウエアの利用状況

 
通常の製図教育や建築学の専門教育がある中で、多くの回数を3次元CAD教育には避けないことから、自主的に勉強できる環境を構築することを重視している。
そこで、筆者は以下の方針で3次元CADなどの情報教育を実施している。
 
(1)できるだけ入学直後に3次元CADなどに触れさせる
(2)学生所有のPCにソフトウエアをインストールさせ、自宅でも自習できるようにする
(3)操作例などのオンデマンド動画を用意し、それぞれのペースで学べるようにする
(4)友人とソフトウエア操作を教え合える環境を用意する
 
この4つの方針を満たすために、1年生が全員受講する製図科目である建築表現Ⅰの2回目の講義において、Rhino7を用いた演習科目を実施している(図-2)。
ここでは、建築学科で購入したRhino7アカデミックライセンスを学生に付与した上で、自分のノートPCへのインストール、Rhino7を使った3次元モデルの演習を行っている。
ここでは、MacやWindowsなどOSが不統一のノートPCとなり、PCスペックも異なるため、インストールにかかる時間に大きく差が出ることとなる。

図-2 学生の自主学習ページの例
図-2 学生の自主学習ページの例

そこで、全ての学生にノートPCを持参させ、MacユーザーとWindowsユーザーで座席を分けた上で、学生に座席を詰めて座らせることで、隣り合う学生同士、話がしやすい状況を作り出している。
また、インストールが早めに終わった学生には、先に演習に進めるようにオンデマンド動画を用意し、Rhino7を使った3次元モデルの作成方法を教室内で自習できるようにした。
 
これにより、入学後、早期に最低限の3次元CAD操作を行えるようにしている。
次頁の図-3は入学後、3週目の授業において提出を求める3次元モデルである。

図-3 1年生の初めの演習で作成する3次元モデル
図-3 1年生の初めの演習で作成する3次元モデル

 
このほか、いくつかの授業で数回、3次元CADを用いる科目を設置している。
また、全学生が3次元CADを用いる課題は、以下の課題も含め、前期1課題、後期1課題の全2課題となっている。
 
 

継続的な利用状況

前述のように1年生の初めにRhino7を中心とした演習を経験した上で、その後の利用は学生の自主性に任せている。
ただ、入学直後に3次元CADに触れさせ、学生のノートPCにソフトウエアをインストールさせることは、情報リテラシーの涵養において良い効果があると感じている。
 
図-4は、ある年度の3年生のRhino7の利用状況である。
フローティングライセンスの契約としたため、建築学科で保有するライセンスの範囲内であれば授業外でも全学生が利用を行える。
また、契約ライセンス数の利用となるため、アクティブ化されたRhino7の数が確認できるようになっている。
2年生以降の科目ではCADソフトウエアを指定して用いる科目は存在しないため、コンピューターを用いた表現も手書きや模型による表現も学生の判断で変更できるようになっている。
そのため、Rhino7を用いた演習科目は特に設定されていないが、自主的に利用している学生が一定数、存在することが確認できる。

図-4 ある年度の3年生のRhino7の利用状況
図-4 ある年度の3年生のRhino7の利用状況

 
学生の進路や関心の範囲によりBIMソフトウエアや3次元CADの重要度が変わるため、建築学科の学生全員がこれらスキルを収める必要は必ずしもない。
一方で、このような情報技術群を習得して社会で活躍することを目指す学生も数多く存在する。
そのため、それぞれの学生が自分のPCでこれらソフトウエアを利用できるような環境を構築するとともに、背中を一押しすることが重要だと感じている。
 
 
 

早稲田大学 理工学術院 創造理工学部 建築学科 准教授
石田 航星

 
 
【出典】


建設ITガイド 2024
特集2 建築BIM
建設ITガイド2024


 



BIMで積算が変わる!-BIM連携積算への取り組みと双方向連携への実現に向けて-

2024年9月10日

はじめに

株式会社日積サーベイでは、BIMを活用した積算の普及を目指し、BIM対応建築積算システム「ΗΕΛΙΟΣ(ヘリオス)」を開発・提供しており、2023年12月には、最新版「ΗΕΛΙΟΣ 2024」をリリースした(図-1)。
 
この「ΗΕΛΙΟΣ 2024」では、イメージ入力・3次元表示のスピードアップ、配置画面などを大きくして確認できる拡大鏡、複雑な計算式をポップアップで直感的に作成する補助機能など、全26項目において機能改良を実装している。
 
また、このΗΕΛΙΟΣは、各種BIMソフトとの連携として、2011年にはIFCファイルを中間ファイルとした「IFC連携」を、2016年にはBIMソフトのデータを直接ΗΕΛΙΟΣのデータ形式に変換する「ダイレクト連携」を実現している。
これらのBIM連携機能をリリースして以降、多くの方々に活用いただいており、弊社でもBIMを活用した積算業務を行っている。
 
さらに2022年1月には、BIMソフト上で利用可能なアドイン概算システム「COST-CLIP(コストクリップ)」を販売開始し、2024年2月にはバージョン3.0をリリース予定である。
 
今回は、国土交通省官庁営繕部が2023年度から試行したBIM連携積算に伴う弊社の取り組みと、現在開発を進めている各種BIMソフトとの双方向連携への挑戦を紹介する(図-1)。

図-1 ΗΕΛΙΟΣ 2024
図-1 ΗΕΛΙΟΣ 2024

 
 

国土交通省BIM試行に伴う弊社の取り組み

ご存じの方も多いかと思われるが、本年4月「官庁営繕のBIM連携積算、試行業務を複数件発注」と題する記事が掲載された。
近年、大手ゼネコンを中心に、BIMモデルを積算業務に活用する動きが活発化しているが、今回の施行により、さらにΗΕΛΙΟΣでのΒΙΜ活用に関するお問い合わせを多くいただくようにもなった。
 
そこで、弊社では8月31日に「BIM連携積算セミナー」と題してWebセミナーを実施。
その中で、BIM連携積算の概要や、始め方・取り組み方法、今までの積算との違いなどを説明した。
特に、BIM連携積算のワークフローとして、BIMを全く知らない方でも理解できるように弊社なりの図解を付け加えて丁寧に説明するように心掛けた(図-2)。
 
その結果、600名以上もの方が視聴され、大きな反響をいただいた。
またアンケートにおいても、多くのお客様からBIM連携積算への支援を望まれる声をいただいている。
弊社では、これからもBIM連携積算に関する情報を発信していき、BIM活用に関する相談にも積極的に対応していく予定である。

図-2 BIM連携積算のワークフロー
図-2 BIM連携積算のワークフロー

 
 

双方向連携へのニーズ

そんな中、今度はΗΕΛΙΟΣから各種BIMソフトに戻す案が浮上した。
これはデータ連携を双方向にさせることにより、さらなる業務負担を減らして生産性を向上させる狙いがある。
つまり、積算システム側でのモデルの修正や補正作業を設計ツール側にも生かすことで、設計モデルそのものの精度向上につなげられると考えた。
近年、積算業務における設計者への質疑や訂正作業は年々増加傾向にあり、積算工程へ流れてくる図面や設計モデルは完成版ではない場合が多い。
逆に積算者が扱うモデルは、質疑や変更を盛り込まれた最終形態であるため、より正確なモデルであると言える。
当然であるが、そのモデルを戻してほしいというニーズは自然な流れである。
 
また、この積算者が扱うモデルは施工図にも利用可能と考える。
特に、躯体のフカシや増し打ちに関しては、設計段階ではまだまだ考慮されていないこともあり、設計者が扱うモデルより積算者が扱うモデルの方が、施工図として利用するには、より正確で現実的だと考えられる(図-3)。

図-3 双方向連携の運用イメージ
図-3 双方向連携の運用イメージ

 
 

双方向連携の開発

そこで、弊社では、まずはオートデスク社のBIMツール「Revit」に絞り、ΗΕΛΙΟΣのデータを戻せないか、2022年から研究開発を実施してきた。
「Revit」では、ぶつかり合う部材同士のレベルが合わないなど、整合性が取れていないだけでエラーが表示されてしまうこともあり、試行錯誤の連続ではあったが、ようやくリリースできうるレベルにこぎ付けた。
当機能は、2024年春リリース予定の「HeliosLink2024」に搭載予定。
ただし、この機能はあくまでも初弾であり、柱・梁・壁・スラブ・基礎・建具に限られる。
また、配筋情報もマッピングテーブルを利用して変換させることも可能である(図-4)。
 
弊社では、今後もこの機能を継続的に開発し、グラフィソフト社「Archicad」、福井コンピュータ社「GLOOBE」にも展開させる予定。
また、対象部位に関しても前述の部材だけでなく、部屋や間仕切壁などにも順次対応させていく。
さらには、現在提供中の連携機能と組み合わせて、差分連携にもつなげられるよう模索中である。

図-4 逆変換のイメージ図
図-4 逆変換のイメージ図

 
 

今後の展開

2019年に国土交通省が設置した「建築BIM推進会議」では、BIMを活用した概算やコストマネジメントが、主要なテーマに位置付けられており、「BIM活用概算/積算」の流れは広まりつつある。
弊社もそれに呼応し続けていくことが重要であり、今後もΗΕΛΙΟΣのBIM連携を拡張させていくことは言うまでもない(図-5)。
 
また、今回の双方向連携に関しては、積算事務所側にとっても大きな付加価値を生み出せるツールになり得ると考える。
従来、積算事務所からの成果物は積算結果だけであったが、その積算結果を算出させるために使用した積算モデルも価値のある成果物と言える。
ただし、この成果物はΗΕΛΙΟΣの配置(モデリング)拾いを使用した場合のみに限られ、現在、表形式による拾い方(ΗΕΛΙΟΣでは個別拾いと呼ぶ)をされている積算事務所様には、ぜひ配置およびこのBIM連携機能をご使用していただきたい。

図-5 HELIOSのBIM連携図
図-5 HELIOSのBIM連携図

 
 

会社概要

会社名:株式会社日積サーベイ
所在地:大阪市中央区大手前1-4-12大阪天満橋ビル8F
創業:1964年(昭和39年)10月
URL:https://www.nisseki-survey.co.jp/
資本金:2,000万円
従業員数:43名(2023年4月現在)
主な事業内容:建築積算、コスト算出、コンピューターシステムの開発
 
 
 

株式会社日積サーベイ システム開発部
辻尾 勇人

 
 
【出典】


建設ITガイド 2024
特集2 建築BIM
建設ITガイド2024


 



 


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