2024年7月17日
第3次AIブーム現在は、1956年に開催されたダートマス会議で「人工知能(AI)」という言葉が登場して以来3回目のAIブームと言われています。 さらに、2022年には、画像や対話を生成するAIが登場し、今なお大きな話題となっています。 画像認識第3次AIブームの端緒となったのが「畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Networks)」と呼ばれる深層学習の方法を用いた画像認識です。 打音検査・異常検出AIで分類できるのは画像だけではありません。 AIはどこを見ているのかAIはブラックボックスと言われますが、ある程度は、AIの根拠を示すことができます。 大規模言語モデルヒートマップのようにAIが着目している領域の情報を利用するのが、「アテンション(注意機構、Attention)」と呼ばれる方法です。 デジタルトランスフォーメーションに向けてトランスフォーマーは、言語のみならず画像にも適用可能です。 文献(1)Olga Russakovsky,Jia Deng,Hao Su,Jonathan Krause,Sanjeev Satheesh,Sean Ma,Zhiheng Huang,Andrej Karpathy,Aditya Khosla,Michael Bernstein,Alexander C.Berg,Li Fei-Fei:Image Net Large Scale Visual Recognition Challenge 公益社団法人土木学会 構造工学委員会 AI・データサイエンス実践研究小委員会 副委員長
阿部 雅人
建設ITガイド 2024 特集1 建設DX、BIM/CIM |
はじめに会社紹介当社は、新潟県上越市浦川原区に事務所を置く社員が32名の小さな会社で、令和6年で創業70年を迎えます。 建設DXへの取り組み建設DXとは、さまざまなデジタル技術を複合的に活用することで、業務プロセスをあらゆる角度から変革し、建設生産プロセス全体を最適化することで新たな強みを生み出す取り組みとのことですが、さらに突っ込んだ言い方をすれば、建設産業そのものの在り方を根本から改革的に変えることと言えます。 ①現場における生産性の向上1つ目が現場における生産性の向上「現場の建設DXについて」です。
工事の3Dデータ化令和4年より全ての工事において3D化を徹底することとし、実施に移行しています。
3D施工データの活用3D施工データの作成が平準化となると、必ず3D施工データがあるため、このデータを建設システム社(KENTEM)の「快測ナビ」に入力することで現場における丁張設置作業の効率化が劇的に変わります。
EARTH BRAINアプリの活用EARTH BRAIN社のアプリケーションを導入し、「土工の見える化」や「ダンプの動態管理による位置情報の見える化」「過積載防止の見える化」を図り、ここで得た情報を有効に活用することで現場全体の効率化を図っています。
クラウドサービスの活用KENTEMの「電子小黒板 Site-Box 」と「KSデータバンク」を活用することで、現場で撮影した写真がクラウドを通じた同期によりあらかじめ用意されたフォルダに自動振り分けされるシステムにより、事務所での写真の共有と写真整理の効率化を実現しています。 ネットワークカメラの活用ネットワークカメラを各現場に設置し、「現場の見える化」に努めています。
Web会議の実施現場とオフィスを結び、毎日13:00より現場代理人との打合せを行っています。 ②ワーカーへの情報伝達の効率化2つ目がワーカーへの情報伝達の効率化と環境整備「ワーカーへの建設DXについて」です。 クラウドサービスの活用これも①同様にクラウドサービスを活用した情報提供を実施しています。 ③オフィスと現場をつなぐデジタル技術3つ目がオフィスと現場とをデジタル技術でつなぎ、さらなる効率化を図る「オフィスの建設DXについて」です。 スマートオフィスの導入スマートオフィスとは、オフィスで働く従業員が快適に、効率良く、そして室内の温度や湿度、照度などのオフィス環境を自動制御することで省エネを実現したオフィスを言うようですが、当社では単純に環境に優しく、時代に合った賢いオフィスと捉えています。
最先端ミーティングルームの設置スマートオフィス導入において非常にこだわったのが、このミーティングルームです。
集中できる個室の設置3D施工データの作成や点群処理、 BIM/CIMの作成など容量の大きいデータを作成する機会が今後さらに増えることが想定できるため、作成時の負担軽減を図る目的で高性能スペックのパソコンを設置し、今後増えるWeb 会議にも対応した防音設備を完備した、作業に集中できる個室を2部屋、新たに設置しました。 当社が進める建設DXまとめ当社が考え、現在実施している建設DXの内容が図-11の通りです。 おわりに今現在、ICT技術やBIM/CIMなど非常に覚えることが多く、技術者にとってまさに過渡期であり、大きな負担となっていると感じていますが、将来的にこれらの技術の導入により、技術者の負担が少なくなり、ワクワクするような魅力ある建設産業となってほしいと思います。 株式会社郷土建設藤村組 代表取締役
藤村 英明
建設ITガイド 2024 特集1 建設DX、BIM/CIM |
2024年7月12日
生産性向上2割を目指すBIM/CIM原則適用国土交通省は2023年から、BIM/CIM原則適用をスタートしました。
BIM/CIMを活用した事業プロセス間連携Malmeから見たBIM/CIM活用の実態建設コンサルタント様や建設会社様より設計・施工BIM/CIMのモデリングや活用検討支援、内製化支援をご協力させていただいています。
設計段階の実態設計段階におけるBIM/CIM活用は、原則化前までは、国土交通省案件や先進的
施工段階の実態施工段階においては、大手建設会社は積極的に活用(デジタルツインや自動施工、シミュレーションなど)されていますが、大半の建設会社は、3次元モデル活用にあまり価値を感じていない印象を受けます。
設計―施工間の連携についてここまでは、個別のプロセスに対する実態を述べましたが、設計―施工間の連携についてはどうでしょうか。 現時点は各プロセスでやるべきことをやるBIM/CIMを活用とした生産性向上については、事業全体でプロセスを見直すことが重要ですが、これまで述べたように、事業プロセス全体でBIM/CIMを活用するには、解決すべき課題や技術がまだまだ多いのが実態です。 設計段階でやるべきこと設計段階で頻発する設計検討や図面作成などの繰り返し作業が多くなるケースにおいては、3次元設計は効果的です。
施工段階でやるべきこと施工段階では、BIM/CIMの活用によって、見えないコストと向き合うことが重要であると考えます。 Autodesk製品はただの図面作成、モデリングソフトではなくなった世界的な動きとして、ISO19650をベースにOpenBIMに向けた製品開発やルール化が進んでいます。 BIM/CIM技術者の育成次に、2つ目の大きな問題である技術者の育成について述べます。
導入が進む会社の共通点導入が進む会社の共通点は以下の通りです。
諸外国の育成事例諸外国や一部の教育機関では、建築学科や土木学科のカリキュラムにBIMが取り込まれており、卒業する頃にはモデリングスキルと一定のプログラミングスキルが備わっています。
内製化に向けた取り組みBIM/CIMを活用できるチームの作り方として、下記の4点が重要であると考えます。
本当に必要なのはBIM/CIMマネージャー今後、より効果的なBIM/CIM活用をプロジェクトに導入していくには、これまで申しているように、プロジェクトにおける正しい目的設定が重要となります。 さいごに以上、設計―施工間のBIM/CIMの実態から、組織内製化の共通点について述べさせていただきました。 株式会社Malme
野田 敏雄
建設ITガイド 2024 特集1 建設DX、BIM/CIM |
2024年7月8日
はじめにi-Constructionがスタートした2016年からICT施工に積極的に取り組み、最初の3年はICT建機による土木施工を行うことを重点に据えていた。 3D土木技術者の育成国土交通省による建設DXの推進やBIM/CIM原則適用に対応すべく、請負企業として責任ある施工を確保するために、先述のDX推進室の専属技術者がICT現場のサポートを行えるよう、会社の組織体制を見直した。 新たな時代(BIM/CIM原則適用・ICT施工StageⅡ)に向けて新技術の導入2021年、株式会社EARTHBRAINとパートナーシップ契約を締結した。 若手技術者への伝承これまで熟練技術者が培ってきたノウハウを、若手技術者へ伝えるための取り組みも始めた。 施工段階におけるフロントローディングICT建機用の3D設計データ作成においては、これまでのノウハウを生かし、自社内で作成を進めている。 3Dモデル活用による課題発見・解決熟練した技術者でも2D図面から着手前に全ての現場条件を把握し、施工箇所の取り合いなどの不具合を発見するは困難である。 BIM/CIMの取り組み①:電子データの工事間連携工事着手時・民間からの見積り依頼時など、現況の地形データがあらかじめ手元にあれば、わざわざ現況測量しなくても、早期に仮設計画・見積り作成対応ができる。 BIM/CIMの取り組み②:5DViewerによる広域管理自社で受注している複数の現場状況を日々把握することは困難である。 おわりに建設業は高齢化が進み、有能な作業員・労働者が減る中、社会インフラ、とりわけ地域のインフラ基盤を支えるには弊社のような地場の建設会社の経営力、技術力向上は必須であると考えている。 会津土建株式会社 DX室長
後藤 健一
建設ITガイド 2024 特集1 建設DX、BIM/CIM |
2024年7月4日
はじめに広島県では、2020年10月に策定した県の総合戦略である「安心▷誇り▷挑戦ひろしまビジョン」において、「県民一人一人が『安心』の土台と『誇り』の高まりにより、夢や希望に『挑戦』できる社会」の実現を目指している。 DoboXの概要DoboXとはDoboXは、公共土木施設等に関するあらゆる情報を一元化・オープンデータ化し、外部システムとのデータ連携を可能とするデータ連携基盤であり、2022年6月に運用を開始した。
DoboX構築のきっかけ広島デジフラ構想における取り組みの方向性を検討する中で、インフラデータの活用に着目した。 DoboX運用開始までの流れDoboXは、広島デジフラ構想に掲げるさまざまな取り組みを進める上で核となる基盤であることから、早期に運用を開始する必要があった。 システム構成などDoboXは、スマートシティリファレンスアーキテクチャの設計に従い、汎用的なオープンソースのソフトウエア(Swagger、laravel、FIWARE、CKAなど)を使ってパブリッククラウド(AWS)環境上にスクラッチで開発しており、拡張性が高い(ベンダロックがかからない)基盤としている。 DoboXの利用状況およびDoboXを活用した新たなサービスの提供DoboXの利用状況DoboXの運用開始後の利用状況(2022/6/28~2023/10/31)として、3Dマップなどの可視化コンテンツの閲覧が16,465回、オープンデータのダウンロードが536,003回となっている。
DoboXを活用した新たなサービスの提供データの利活用を進めるためには、保有データを公開するだけでなく、実際のサービスにつなげていく取り組みを実践することが肝要である。 DoboXを活用した新たなサービスの創出データ利活用の重要性・有用性の発信や次世代を担うデジタル人材の育成などを目的として、DoboXにて公開しているデータを用いて製作した地域課題の解決に有効なアプリケーションやアイデアについて、コンテストを開催し、優秀作品を選考した(作品募集:2023年10月2日~11月30日)。 おわりにDoboXの運用開始後、多くの自治体や民間企業の方からDoboXに関するお問い合わせがあり、本稿でご紹介した内容を中心に、ざっくばらんに情報提供させていただいている。
広島県 土木建築局 建設DX担当 主任
岡本 建人
建設ITガイド 2024 特集1 建設DX、BIM/CIM |