建設ITガイド

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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

施工BIMのワークフローとロードマップ

2022年10月2日

はじめに

一般社団法人日本建設業連合会(以下、日建連)のBIM部会は、前身のBIM専門部会時代から『施工BIMのスタイル』シリーズの発刊などを通じて施工BIMに関する情報の公開を進め、基盤づくりの一つを担ってきた。
 
2021年3月には、建築生産プロセス内でBIMモデルを活用する業務の進め方(以下、ワークフロー)やBIM部会が考えるロードマップに着目した『施工BIMのスタイル施工段階におけるBIMのワークフローに関する手引き2020』(※1)(以下、『スタイル2020』)を発表し、施工BIMに関する最新情報を公開した(図-1)。
本文ではBIMの動向や基本的な考え方などを網羅しており、施工BIMの教科書として活用いただくことも想定している。
 
本稿では『スタイル2020』で取り上げた項目の中から施工BIMのワークフローの考え方と施工BIMのロードマップの概要を紹介することで、今後の施工BIMの方向性を考えたい。

施工BIMのスタイル2020



 

ワークフローの必要性

BIMの基盤づくりは3分野に整理できる。
一つはBIMモデルの作成を標準化する分野、もう一つはBIMを活用するワークフローを標準化する分野、そして最後は標準化された業務を展開する人材を育成する分野である。
これら3分野は密接なつながりがあり、どれひとつ欠けてはいけない。
 
BIMを単に可視化させる目的の場合では、ワークフローをそれほど意識しなくてもよいが、実際の生産プロセス内で専門工事会社とデータ連携して施工図・製作図の調整業務を効率化する「BIMモデル合意」などに取り組むと、いやが上にもワークフローを意識した計画立案が必要不可欠となる。
 
ワークフローの確立は、言うことは簡単だが、実現を目指そうとすると案外難しい。
工事内容などに合わせた目的設定や体制構築などを決めるスタート地点から、想定した最終成果を享受するゴール地点までを、どのコースを選択してどのような技を繰り出すのかを決めるのである。
コースの選択には、綿密な計画と不測事態における判断力が必要だ。
そのため、BIMの取り組みのハードルがたちまち上がってしまい、推進のスピード感や享受する成果が滞る場面も多くなるだろう。
 
現在の施工BIMはこの壁を乗り越える時期にきているのではないか。
『スタイル2020』の執筆では、施工BIMのワークフローを再検討することから着手したのは、このような背景がある。

 
 

ワークフローの考え方

施工BIM全体のワークフローは、工事工程とBIM実施作業工程の関係性を理解し、計画することから始まる。
『スタイル2020』では「施工BIM取組み内容・実施作業工程」のイメージを共有するために、施工BIMの活用目的を以下に示す7項目に分類し、仮想の工事工程にプロットを試みた(図-2)。
 
1. 事前準備
2. 施工計画BIM
3. 施工図BIM
4. 製作図BIM
5. 総合図・プロットBIM
6. ICT建築土工
7. 周辺技術(3D計測、xR)
 
プロットした活用目的は、さらに細分化して17パターンのワークフローとして具体的に解説をしている。
その中から鉄骨関連の製作図BIMのワークフローを示す(図-3)。
ポイントは一般図の作成段階で鉄骨専用CADを使用し、設備専門工事会社や外装仕上材、ACW、鉄骨階段、エレベーターなどから受領したBIMモデルを統合、または重ね合わせることで、設備スリーブや各専門工事会社の施工図・製作図の整合調整を完了させるワークフローとした。

施工BIMの目的別ワークフロー


製作図BIMのワークフロー



 

ロードマップが示す将来像

『スタイル2020』の冒頭には図-4に示すBIM部会が考える「施工BIMのロードマップ」を3分野(①施工計画、②施工管理、③啓蒙活動)に分けて掲載し、総合建設会社と専門工事会社の視点からそれぞれの将来像を示した。

施工BIMのロードマップ


①施工計画分野の取り組み

『スタイル2014』において「BIMモデル合意」の手法が提示されたことにより、製作図の調整業務は効率的になってきた。
しかし、承認・承諾行為がいまだ図面であるため、調整作業の途中から最新情報の更新はBIMモデルではなく図面になってしまう傾向が見られる。
これではBIMによる正しい生産情報が流通しなくなるため、デジタル化された生産情報の価値を見つけにくい。
そのため、正しく作成されたBIMモデルの座標情報や属性情報を活用して、図面を補助的に運用する「BIMモデル承認」の検討を元請け側が主に図面作成している躯体図から検討を開始する(※2)。
 
一方、元請けと専門工事会社間でデータ連携をしてお互いメリットを享受する視点を忘れてはいけない。
専門工事会社は元請けにBIMモデルのデータを提供するだけの受け身では労力を費やす割に効果は出にくい。
正しいBIMモデルが流通する時代が来る前に、例えば属性情報を製造につなげる取り組みなどを準備する時期にきていると言えよう。
「BIMモデル承認」の取り組みは、施工側だけでなく設計側の参画も必要不可欠ではあるが、まずは施工側から取り組みの可能性を考え始めた意義は大きい。

②施工管理分野の取り組み

施工BIMの適用範囲を拡大する上で取りこぼしてはいけない視点である。
施工BIMは工務部門(図面や計画)を中心として推進が進んだため、工事部門(施工管理)が現場のフィールドでBIMを活用する事例はいまだ少ないと思われる。
そのためBIMの属性情報を工程管理や品質管理などのソフトウエアと連携して活用することも視野に入れておきたい。
工事現場でのBIMの活用は、携帯情報端末でBIMモデルを閲覧して、情報共有することから始まる場面が多いが、所長から若手の技術者までの立場により活用したい目的が異なる。
BIM部会では工事現場の役職に合わせた活用方法の体系化も進める予定だ。

③啓蒙活動の取り組み

日建連BIMセミナーや会員企業における動向調査、BIM事例発表会などを通じてBIMの周知活動を進め、建設業界として人材教育や育成の一端を担う計画である。
本年度は6月30日に『スタイル2020』を解説するWEBセミナーを開催し、日建連会員企業内外から493名が受講し、参加者の約9割がセミナー内容に満足をしていただいた。
参加者からは事例を知りたい、などの意見が寄せられており、次回以降の企画の参考にさせていただき、実務に近いBIMに関する情報を引き続き発信する予定である。

 
 

おわりに

本稿では『スタイル2020』で解説した施工BIMのワークフローとロードマップの一部を紹介した。
詳細な内容は『スタイル2020』をぜひご一読いただければ幸いである。
施工BIMの取り組みが多様化するにともない、ますます実務での活用に準拠したBIMモデルの作成手順や作業のワークフローを整備することが急務となってきた。
今回、建築業界として初めて施工BIMの活用目的別にワークフローの体系化を試みたが、検討作業は緒に就いたばかりだ。
正しいBIMモデルの情報が当たり前に流通する先には、データを活用した自動化やロボット分野との連携が視野に入ってくるだろう。
 
今後は施工BIMに関する情報発信に加え、設計施工一貫発注における設計BIMから維持管理BIMまでを包含したワークフローやロードマップについても検討を進め、情報を開示する予定である。

 
 


(※1)日建連BIM部会のホームページにおいて入手方法を案内している(有償配布)。
https://www.nikkenren.com/kenchiku/bim/zuhan.html
(※2)BIMモデル承認の検討プロセスは活動成果として、日建連BIM部会のホームページにおいて公開している(無償)。
https://www.nikkenren.com/kenchiku/bim/pdf/report_bmsswg_202103.pdf
 
 
 

 

国土交通省 大臣官房技術調査課 工事監視官
栗原 和彦

 
 
【出典】


建設ITガイド 2022
特集2 建築BIM
建設ITガイド_2022年


 



設備BIMにおけるIFC活用-ワークフローを変革する7つのポイント-

はじめに

2021年度、建築推進会議の発足から標準化の取り組みが加速して本年で3年目です。
モデル事業が採択されて各チームで標準化に向けた取り組みのレポートを作成している段階です。
 
今回、モデル事業における設備分野でも、設備の情報や設備のプレイヤーが建設業界全体に果たす役割が非常に大きなものであることがクローズアップされました。
建築分野における施工技術コンサルタントもしくはBIMマネジャーの職能に設備のナレッジがどうしても必要であると期待され、多方面で展開されています。
 
今回、設備環境小委員会では、これまでのIFC設備利用標準の策定のみならず、ワークフローの策定にも取り組みました。
その特定項目として7分野を定め、設備セミナーイベントで情報公開しております。
本編では、その7つの特定項目の目的と成果を簡単にお示ししたいと思います。

 
 

設備設計におけるIFCなどBIM活用

設備設計におけるBIM活用と、どのようなシーンでIFCが活用されているか

設備設計のBIMにおいては、従来のモデルを3Dで入れるという活用から、情報をつなぎ渡すことにより、業務のフロー改善を図る段階に入っている。
 
設備システムの多様化、建築形状の複雑化・大規模化・超高層化に伴い設備設計はますます複雑となっており、設備設計には高い調整能力と手間がかかっている。

BIMワークフローの重要性
BIMワークフローの重要性



 

一般的にBIM連携するとは、モデルとモデルの交換によるコーディネーションであり、建物の形状だけではなく建物情報の交換や循環がどのように行うのかが求められる。
 
形状以外にも、お互いにどのような情報が必要で、どのようなタイミングで受け渡しを行うのかを設計初期に決めておく必要がある。
受け取りのルールを早期に決めておくのがとても重要になる。
 
これらを実現する手法の検討として、各関係者でBIMが持つ共有すべき情報を外部のデータベース(Excelなど)で連携させ、必要な情報の構築を行うことである。
現在、BIMツールは前回からどこが変更されたかの差分伝達がしづらい状況だが、外部データベースを使用し時系列で差分の見える化ができる。
設計プロセスにおいて、どの段階でどのように内容が変わっていったかを将来的にトレーサビリティできると、より信憑性が高くなる。
 

 
 

空間と設備、スペースと設備を構成するもの

概要

近年のBIM活用では、企画・設計・施工・維持管理など各関係者がデジタルで情報を取り扱い、他分野にまたがるデジタル情報の活用がなされている。
 
共同設計アプローチにおいては、他工種・他工程の利用するスペースをデジタル化して情報共有する必要がある。
建築・設備の取り合い、工事スペース、メンテスペースなどに必要な空間の割り当てを確保しておくことを「空間利用のデジタル化を空間予約する」という。
 
今までは空間情報を意味する同様なIFCエンティティ(Ifc Space、Ifc Zone)はあったが、空間予約(割り当て)には適さない。
今回IFC4でIfc Spatial Zoneが規定されて、部屋とは区別できる空間情報(ゾーン)が表現可能となり、Ifc Space、Ifc Zoneとさまざまな空間定義と併用して活用することによって設計段階における他分野とのデジタルコラボレーションや効率的な計画の実現が期待できるようになった。

BIMワークフローの重要性
BIMワークフローの重要性


プロジェクトの取り組み

取り組み内容について、IFCのベストプラクティスの共有、ソフトウエアベンダーによる実装状況や事例紹介の実施予定、ワークショップと並行して設計初期段階のユースケースの整理を行っていく。
最終的にはIfc Spatial Zoneの活用方法やユースケースを整理して、使用する際のガイドラインの提供を行い、プロジェクトが進展していく際は、内容発信も行っていく。

Ifc Spatial Zoneの活用案(想定活用事例)

(1)施工計画想定の例
(2)資材管理想定の例
(3)特定機能(貫通)への対応例
(4)照明制御のゾーニング例
(5)セキュリティゾーンの例
(6)無線電波の空間予約の例
 
空間予約は、さまざまなシーンでの活用があり、今後ユースケースをまとめていく段階で有効な情報については適宜、発信する。

Ifc Spatial Zoneは、設計者から施工者への活用伝達

施工者間での取り合い、施工計画調整、設計者・施工者から維持管理者への情報伝達など、さまざまな場面での活用が期待できると見込まれるbSIのプロジェクト活動を通して、IFCを活用するメリットやそれに当たってのガイドラインの情報提供によるIfc Spatial Zoneの認知向上や利用拡大を継続する。

BIMワークフローの重要性



 

オブジェクト標準とIFC4によるストックデータ整備に向けて~意構設連携を見据えて~

BLCJオブジェクト標準

属性項目一覧やカテゴリー別パラメータ一覧を基に、ジェネリックオブジェクトのサンプル作成やメーカーオブジェクトの確認を2018年度からプリズムを活用して実施している。
 
2020年度はサンプルオブジェクトを使用して、実際にジェネリックオブジェクトやメーカーオブジェクトがBIMソフトにどのように取り込まれ振る舞うのか、オブジェクト標準がどの程度反映できているのかの検証を行った。

RUGの取り組み

Revit User GroupはAutodeskと連携して、各部会で標準化されたパラメータや意匠構造設備で最低限共通化を図るパラメータをRevitで対応できるように整備を進めている。
 
RUGの取り組み:ファミリ仕様書
RUGの取り組み:MEPテンプレート
RUGの取り組み:意構設連携

BIMワークフローの重要性


タスクフォース活動

RUGでは、意匠・構造・設計間における連携活動も活発に進められている。
 
一例として、設備構造間連携では、設備荷重の情報の受け渡し(MEP→S)、貼り感通貨の範囲(S→MEP)、梁貫通情報(MEP→S)をRevitで直接受け渡す手法の検証を行い、具現化を図っている。

将来を見据えたストックデータ整備に向けて

未定義のものから整備をしていき、IFC4として社会基盤データ構築を含め、国内のBIM普及を進めていくべきではないかとの問いかけがある。

 
 
 

IFC4で広げる建築設備設計

IFCとは

IFCはbuildingSMARTInternationalが策定したBIMの規格となり、2013年に国際標準化された。
IFCの目的として建設・FMのデータ共有となっている。
現在では、ISOの審査の元2018年にIFC4.3がリリースされた。

空調ダクトシステムにおける設備要素のIFCデータ構成、属性情報およびシステムの解析手順

IFCの技術仕様書はbSIの公式のHPで確認でき、全てのエンティティと各エンティティの定義と属性などが記されている。
 
空調設備IFCクラス定義がIFC2x3とIFC4では、表現がより具体的に設備の要素が定義されていると考える。
 
昨年の論文で使用した空調ダクトシステムのBIMモデルは、ダクトをIfc Duct Segment、制気口はIfcFlow Segment、継手はIfc Duct Fitting、として定義される。その他消音ボックスダンパなどはIfcBuilding Element ProxyではなくIfc Energy Conversion Deviceと定義されIFC4の仕様と一致している。
 
IFCではIfcPropertySetという属性定義がされ、BIMソフトからはそれら属性は簡単に出力できる。
例えばダクトの属性としてサイズや動圧、流量、風速、圧力損失を出力でき、これらのIFC属性を利用してダクトの設計結果を出すことができる。

空調ダクトシステムにおける設備要素のIFCデータ構成、属性情報およびシステムの解析手順
空調ダクトシステムにおける設備要素のIFCデータ構成、属性情報およびシステムの解析手順


空調ダクトシステムにおける設備要素のIFCデータ構成、属性情報およびシステムの解析手順


IFCデータビューアの開発

ダクトシステムの情報解析、活用研究、そしてPythonを使用してIFCスキーマーを解析しながらIFCWebExploreを共同開発した。
IFC4/IFC2x3両方対応する。
特長としてスキーマーファイルはツールの中で解析、属性の表示でシステムのつながりの確認ができ、Python、Flask、JavaScriptで構成されたWebアプリとなる。

IFCデータビューアの開発


IFCを用いた設備設計

BIMモデルとダクトシステムの圧力変化を連携できるIFC Pressure Viewerも開発中。
このツールでは、システムごとのダクトやメイン経路の表示、圧力損失が確認できる。
 
IFCはBIMデータの国際標準となっているが建築設備設計への活用はまだかと思う。
これからはIFC4の応用を広げていき、ユーザーの利便性について向上させる取り組みになると思われる。

 
 
 

スマートシティへのIFC活用へ向けて:IFCとIoTデータモデル連携の可能性

デジタルツイン・スマートシティに関する動向~IFCとIoT(建物OS・都市OS)データモデルの関係

都市OS・建物OSは共通のデータ連携が可能となり、屋内屋外情報を活用してBIMで高度な都市デジタルツインのインフラ構築が実現可能となる。
 
国内外における、建設デジタルツインが推し進められ、bSIとデジタルコンソーシアムの協調活動や内閣府からスマートシティ活用のためのホワイトペーパーが公開された。
 
3D都市モデル構築に関しては、ヘルシンキの3Dモデルがセマンティック(属性有)3D都市モデルへと進化している。
属性情報を有するモデルは、IoTやロボット、AIなどがより理解しやすいものとなり、機械化属性の高いアセットとなる。
 
国内においても国土交通省が3D都市モデルPLATEAUプロジェクトにおいて、都市空間情報をオープンデータとして公開している。

デジタルツイン・スマートシティに関する動向~IFCとIoT(建物OS・都市OS)データモデルの関係
デジタルツイン・スマートシティに関する動向~IFCとIoT(建物OS・都市OS)データモデルの関係


都市デジタルツインについて:IFCと都市OSに共通なMVD策定へ

都市デジタルツインを構築するには、IFCで示す都市空間情報とスマート化に必要な連携情報が課題の一つとなる。
 
都市OS・建物OSに関連するFIWARENGSIやAzure Digitalなどを含む空間データ情報をIFCに連携させるためスマートシティ対応したMVDの策定が今後の進む方向と考える。

都市デジタルツインについて:IFCと都市OSに共通なMVD策定へ


スマート化に対応したIDM検討に関する報告

スマート化に対応した技術連携委員会・PFI協会との連携活動、施設をスマート化する際、どのようなBIMデータを構築すればいいのか、IDM案としてプロセスマップと情報交換要件のたたき台を検討した。
今後は各小委員会やWGで検証改定をしていきたい。
 
建物運用フェーズにおける都市OS・建物OSに必要なAIM資産情報モデルの内容は、発注者側が要件定義をしていく必要がある。
 
今回のIDMの策定について、スマート化が必要な場面において、どのような空間情報・設備情報をAIMへ渡せばいいのかがとても重要と考える。

スマート化に対応したIDM検討に関する報告


スマート化IDM案-スマート化のデータ連携シナリオ-

発注者・受注者、建物OS都市OS、スマート化アプリケーションの提供者、維持管理フェーズにおける各種データ連携に関わるシナリオとなる。
 
今回のIDMスコープは赤い枠となる。
検証・議論をして整理をしていく。
 
今後もIFCとIoT、スマートシティの活動について各小委員会とWGで活性化させていきたい。

スマート化IDM案-スマート化のデータ連携シナリオ-



 

bSJにおける設備分野の検定

国内における設備IFCデータ交換の実現まで

BIMの活用には、データ自体の信憑性が問われる。
オーサリングツールから他のオーサリングツールへとBIM運用を行う背景がある。
 
2010年初めに海外でのIFC活用事例紹介から2010年頃に建築IFC提供が可能となり設備CADが読込対応を開始した。
 
同じ年に設備FM分科会(現設備環境小委員会)で海外設備CADのIFC出力の調査を行った。
設備CAD間での互換性が取れていないため、2011年に設備FM分科会で「設備IFCデータ利用標準」というIFCの扱い方の標準化を行った。
 
設備CAD3社でデータ交換実証試験を実施、そして2014年にIAI(現bSJ)のIFC検定第一号として検定を実施した。

国際的な認証の経緯

IFCの認証や検定に関しては国際的にはかなり前から行われており、2001年から2002年IFCR2.0認証ワークショップ、2002年から2009年IFC2x認証、2010年から国際IFC認証という、意匠・構造・設備設計のBIMモデル間の調整を主目的としたMVDをベースに認証を行ってきた。
現在はIFC4対応の認証ソフトも出ている。
これらの結果は、BSIのサイトに公開されている。
 
IFCR2.0認証ワークショップをIAI日本支部主催で2002年10月27日から28日で開催し、4社8プロダクトがIFCR2.0対応のアプリケーションとして国際認証を得た。

本年度より開始した新たな実施内容について紹介

IFCによって目的に応じた情報連携が可能なソフトウエアの検証とその技術的内容の公開、日本の建設業界における情報連携による業務効率化、ソフトウエアのIFCデータ取り扱いに関する機能の品質向上。

本年度より開始した新たな実施内容について紹介


《出力検定について》
MVD検定は、提供したMVDコンセプトに対応した出力ができているかを確認する。
図形・座標検定は、検定課題で指示されてサイズ、位置が正しいかを確認する属性検定は、設備IFC利用標準の属性項目に合致していることを確認する。

入出力共通課題について

図面が提供されて、受験するCADベンダーは自社ソフトでモデルの形や位置に従って入力する。
入力した結果モデルからIFCを出力して、出力検定を受ける。
 
《入力検定について》
検定側がモデルを作成し、出力したIFCのモデルを受検者に提供し、ソフトウエアで読み込み、それぞれのオブジェクトが機能しているか確認する。
 
2021年度の検定については「IFC検定ガイドライン」に対応した検定とする。
IDMに基づいた課題作成・検定を行い、出力・入力検定を実施する。
積算可能な情報の入出力を行う。
 
今後の検定に向けて、検定作業の自動化促進や多用途へのIFC利用拡大への対応をする。

入出力共通課題について



 

設備BIMにおける属性データ利用の現状と課題

建設業界では、以前から生産性が悪いと言われてきた。
それを改善するためにデジタル技術を利用すること。
IFCデータもデジタル技術を利用する一つの形態である。
 
IFCデータを有効に活用することで、建設業務のプロセスを大幅に効率化することが期待されている。
 

設備の設計・施工・運用・他業種連携に関わる計算、計画や実施などあらゆる業務の必要とする情報を定義し、全ての関係者がIFCを利用することで総合性の高い情報交換を可能にすることを目指している。
 

設備BIMにおける属性データ利用の現状と課題


積算における課題

積算を対象とした検定課題を作成する過程でIFCからの自動積算の可能性を検討した結果、多くの課題があることが明らかになっている。

積算における課題


IFCデータ活用の現状とあるべき姿のギャップをどのように解決していくのか~今後の取り組みとして~

CAD以外のソフトウエア(積算、技術計算、FMなど)との連携強化をしていく。
具体的には、未定義部材への対応とIFC4への移行を進めていくこととなる。
未定義部材の整備と分類コードの拡張により、対応可能な部材を増やし網羅性を向上させる。
 
IFCの対応としては、「2×3」から「4」に移行して、拡張された系統やゾーンなどの空間情報の活用を検討していく。
 
手法については、アジャイル開発手法を参考にプロセスの優先順位を決め、小さな開発を繰り返しながら順次リリースしていく。
 
必要に応じてBE-Bridgeの中の仕様を拡張して他団体との連携を強化していく。
さらには、積算情報を含むIFCデータを見える化するツール開発を検討している。

まとめ

オープンなBIMフォーマットであるIFCを中核としたデータ連携により、建設業界の業務効率化を推進していきたい。
そのために、bSJ設備環境小委員会では、IFCデータ活用の現状とあるべき姿のギャップを解決していく。

 
 

おわりに

以上7つの特定項目をご覧いただくと、BIMの中で一番効率化が図られる分野は、設備が多く絡んでいるという声をいただきます。
ご覧いただいたように、建築と設備の分野を横断して統合されたソリューションの動き、もしくはその中に設備のナレッジを持った人たちがどのような役割を果たすのかが非常に重要なことは読み取れるような内容であったと思います。
 
設備環境小委員会としては、今回の取り組みをさらに加速させ、建築BIM推進会議全般の中、そして建築ワークフローの中で有用なIFCの利用標準と標準ワークフローの策定に関与できるべく、各活動を継続していきたいと思っております。
活動にご協力いただいた皆さんに感謝いたしまして、2021年度の報告とさせていただきます。

 
 

【設備BIMセミナー】
https://www.youtube.com/playlist?list=PLdIXDBW_lzCY3gXMng9KKbV-UBT0xr1QN※YouTubeにて2022年3月までの限定公開

設備BIMセミナー



 

【オープンBIM基礎講座】
https://www.youtube.com/channel/UCiczHK3X-zuDsoioADWZbiw

オープンBIM基礎講座



 

 

一般社団法人 buildingSMART Japan 設備環境小委員会
谷内 秀敬

 
 
【出典】


建設ITガイド 2022
特集2 建築BIM
建設ITガイド_2022年


 



地方における建設DXの実現を目指して-地域のネットワークを活用したBIM活用への取り組み-

2022年10月1日

はじめに

ブレンスタッフは、山形県鶴岡市を拠点とする総合設計会社として、30年にわたり活動を続けてきました。
建設業界の人材不足が深刻化する中、地方においても従来の建築プロセスやビジネスモデルを変革し、建設DXを実現することが重要であると考えます。
 
私たちは、建設DXに不可欠なBIMをいち早く導入することでの地域のネットワークを生かす協働モデルを推進してまいりました。
これまでの弊社の取り組みと、地方におけるBIM活用推進についてご紹介します。

 
 

BIMの導入と社内体制

2015年に内閣府の地方創生事業「先端的建築設計(BIM)拠点化事業」として山形県庄内町とともにBIMを導入しました。
少子高齢化の急速な進展に危機感を持つ庄内町と、建設業界の高齢化による担い手不足や技術の継承、建設コストの増加などの課題解決に向けたアプローチとして、建築プロセスにおけるBIMの早期普及を目指す弊社提案がつながり、実現したものです。
 
BIM導入初期は、外部講師を社内に招いての講習会や外部の研修会に参加する機会を多く設けました。
また、当初よりIT・デジタルに関するスキルを有する人材は欠かせない専門分野と考えていたため、BIM導入とともにIT人材を採用配置しました。
 
現在は、BIMソフトウエア操作の基礎的なトレーニングをはじめ、社内アプリケーションの開発から社外向けのトレーニング(RevitおよびDynamoforRevit)まで可能になり、新人およびBIM初級者の研修を社内で実施しています。
OFF-JTで学んだことを実案件業務のOJTで実践し、大手ゼネコンからのBIMモデリング業務やBIMを活用するパイロット事業への参加により経験を積んできました。
 
最近では大手建築事業者のBIMモデリング業務やアプリケーションを活用する機会が増加し、BIMスキルのさらなる向上とともに活用場面が拡大する一方、弊社設計案件でのBIM活用による課題の把握や解決に至る経緯そのものが大きな財産になっています(図-1)。

Revit研修風景

図-1 Revit研修風景



 

BIMの活用

導入初期から現在に至るまで、弊社設計案件でBIMを活用し、試行錯誤しながらステップアップしてきました。
導入初期は設計終了後にBIMモデルを作成することで施工事業者との合意形成の円滑化を進め、次のステップとして、施工前に専門工事事業者を含む工事事業者からの情報をBIMモデルに反映し、施工工程での設計BIMモデルの活用方法に関する課題検証を行いました。
また、工事監理業務における施工事業者とのBIM活用など、従来からの業界慣習や設計事務所の役割に捉われることなく、施工から維持管理までをも見通したBIM活用に取り組んでいます。
 
山形県遊佐町役場新庁舎建設事業では、実施設計段階からBIMを導入し、遊佐町全職員を対象に新庁舎BIMモデルのVR体験会を行いました。
将来を担う若手職員の意見を取り入れることは町の設計指針であったため、BIM活用により円滑な意思疎通と合意形成ができたことを大きく評価していただきました。
施工工程においては設計者・工事監理者として、意匠・構造・設備の干渉チェックや納まりの確認にBIMを活用し効率化を図ることができました。
 
社内においても、双方向・共有の考えが根本にあるBIMを活用することにより、意匠・構造エンジニアのコミュニケーションが円滑化し、設計品質の向上につながっています(図-2、3)。

打合せ風景

図-2 打合せ風景

Revit研修風景

図-3 遊佐町役場新庁舎



 

庄内BIM研究会の発足

BIMへの理解を深め、BIMを円滑に導入するための環境整備と情報共有を目的として、2020年2月に庄内BIM研究会を発足しました。
 
山形県庄内地方の有力総合建設事業者四社と弊社が発起人となり、設計事務所、総合建設業、専門事業者69社が参加しています。
地方におけるBIMの普及を図るため、研究会での情報共有、パイロット事業の実施、地方公共団体へのアプローチにより課題を顕在化し、その解決に向けて活動を行っています。
 
国土交通省所管のBIM推進会議によるBIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業において、令和2年度連携事業「BIMモデリング活用による設計・施工業務効率化の検証」、令和3年度中小事業者BIM試行型「庄内BIM研究会におけるBIM活性化に向けたケースメソッドとワークフローへのアプローチ」が採択されました。
 
令和2年度の事業では、BIMモデルからの二次元施工図作成において、モデリングを効率的に進めるための社内ルールと一定以上のモデリング技術を整えることで、二次元設計図から二次元施工図を作成する従来型業務と比較して、40%程度の工数削減が可能な試算結果を報告しております。
 
令和3年度の事業では、地方の多くの建築プロジェクトにおいて、地方ゼネコンがBIMモデルデータを利活用することが、専門工事業者を含む業界全体のBIM活用活性化の起点であり、地方のBIM活用促進に必須の条件と設定の上、山形県鶴岡市が発注する設計案件「鶴岡市先端研究産業支援センター増築工事」の設計BIMモデルを土台として、地方の施工事業者が施工で活用しやすいBIMモデルとワークフロー構築の検討を進めています。
中規模以下の建築プロジェクトにおけるBIMモデルデータの活用方法の例を示すことにより、他の地域にも共通する問題・課題に対してのアプローチを提言したいと考えています(図-4~6)。

庄内BIM研究会設立総会

図-4 庄内BIM研究会設立総会



 

令和3年度中小事業者BIM 試行型(概要)

図-5 令和3年度中小事業者BIM 試行型(概要)

令和3年度中小事業者BIM 試行型(実施手順)

図-6 令和3年度中小事業者BIM 試行型(実施手順)



 

おわりに

建築業界では分業化が進み、それぞれが枠組みの中で業務を行っています。
専門領域を極め、合理的である一方、専門外の業務に関する知識や建築関係者とのコミュニケーションの欠如を招くリスクがあります。
お客さまにとって最良の建物を建てるためには、これまでの枠組みを超え、従来の建築プロセスを変革する必要があると考えます。
また、事業主をはじめとする建築関係者の間に立ってマネジメントを行うことにより、BIMを活用したフロントローディングに必要な情報を適切な時期に共有し、生産性向上とともに次世代を担う若者たちが魅力を持ち続ける業界づくりにつながる建築プロセス変革を目標にしております。
 
BIMに関わる人材育成や従来のビジネスモデルの変革は容易なことではありませんが、一企業では難しくても、関係する多くの企業がそれぞれ知恵を出し合えば、不可能ではないと思います。
地方の中小事業者こそ、建設DXに取り組む必要があります。
今後も地域の建設関係者と連携してBIM活用を推進し、地方における建設DXの実現を目指してまいります。

 

 

ブレンスタッフ株式会社 代表取締役
仲川 昌夫

 
 
【出典】


建設ITガイド 2022
特集2 建築BIM
建設ITガイド_2022年


 



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