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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

BIMデータで積算できるのか?-BIM-積算のデータ連携について-

2022年10月24日

はじめに

建築の業界で、BIMが普及してきたように感じる昨今ですので、実際に基本計画や、基本設計でBIMを使用して積算までを行えるような仕組みを構築している企業もあるかと思います。
 
しかし、われわれのような積算事務所の立場で行う積算業務においてどれほどBIMを使用しているかと言われると、全体から見ればほんの一握りであるというのが現状だと感じます。
 
設計事務所やゼネコンの設計者からは、「積算に使うのはまだまだ先」「今後は積算につなげたい」「一度実際に検証も行ったが、そこからは進んでいない」といった意見を耳にすることもあれば、積算事務所側においても「BIMで積算は難しい」「BIMデータを利用したとして、数量の責任の所在はどうするのか」などの意見もあり、設計・施工では各社BIM化への取り組みが進んでいる中、積算という分野は取り残された存在になりつつあります。
 
実務でBIMデータを積算に利用するという点では、懐疑的な意見が飛び交うところではありますが、あくまで積算事務所の、そして、積算ソフトのユーザーである立場から「本当にBIMデータで積算はできるのか」にフォーカスを当ててお話しすることとします。

 
 

データ連携

まず従来、建築積算を行うには建築数量積算基準にのっとった数量の算出が必要となり、その作業に特化したものが積算ソフトです。
 
またBIMには集計表などの機能がありますが、それを使用したとしても、基準どおりの数量算出はできません。
 
BIMデータにさまざまな情報が入力され、積算に必要な情報を積算ソフトへ連携できれば、効率化・省力化が十分に図れ、それと同時に設計図書との情報の相違もなくなるため、より精度の高いアウトプットを出すことが期待できます。
 
もちろんBIMが持つ全ての情報を連携することは、現状困難ではありますが、建築モデルからは、仕上・間仕切・建具などの開口情報、構造モデルからは躯体や鉄骨のデータ連携が可能です。
 
設計BIMでは、実施設計までをフルBIM化することは、まだまだ多くはないように感じますが、情報が全て入力されていない段階のBIMモデルであっても、その入力された情報を利用することがBIM積算連携を進める第一歩になると考えます。
 
躯体・鉄骨については、構造計算ソフトや構造モデルから各積算ソフトへのデータ連携がある程度できることが周知されつつあるため、今回は建築モデルの積算データ連携にスポットを当てたいと思います。
 
多くの会社で採用されている代表的なBIMソフトであるRevitとArchicadと、弊社でも採用しているBIM連携積算ソフトであるΗΕΛΙΟΣとのデータ連携について、検証を含めた実例を紹介します。
 
ΗΕΛΙΟΣへのデータ連携では、BIMデータ標準形式であるIFCデータで連携する方法(以下、IFC連携)と、ΗΕΛΙΟΣのローカルファイルであるTSVデータを使用して連携する方法(以下、ダイレクト連携)の2通りの方法が存在します。

 
 

実例(1)Revitモデル

まずは、Revitで作成された延べ床面積が約6,000m²、4階建ての庁舎を実例としてご紹介します。
 
はじめに、標準形式であるIFC連携でのデータ連携を試みました。
 
Revitから出力したIFCデータを読み込むと、「階情報が正しくありません」「処理が正常に終了しませんでした」と表示され、読み込むことすらできませんでした。
 
エラー表示だけでは原因の見当が付かないため、モデリングしている要素(以下、モデル要素)に原因があると仮定し、不具合を起こしていそうな要素から順に削除しながら検証を行いましたが、モデル要素が全て削除された状態であっても読み込むことはできませんでした。
 
残るモデル要素は通り芯のみとなり、通り芯の中で原因となり得そうな箇所を探したところ、この案件では斜めの通り芯が存在し、仮にこの通り芯を削除した結果、読み込みが可能となりました。
 
しかし、通り芯を削除する方法ではBIMデータに影響が起こる可能性もあるため、もう一つの連携方法であるダイレクト連携を使用すると、該当する通り芯を削除することなく連携することができました(図-1)。
 
この後に紹介するモデル要素の連携を一通りIFC連携で行いましたが、不具合が多く、データ変換にかかる時間もダイレクト連携の方が圧倒的に早いことを考慮し、以降はダイレクト連携での検証を紹介します。
 
ダイレクト連携を行った結果、建築モデルのデータがΗΕΛΙΟΣにおおむね連携ができているように見えましたが、一部連携されていない壁があり、その壁をRevitで確認すると、曲面の壁でした。
 
しかし、この他に存在している曲面の壁は連携できていたため、当該の壁との相違点を調べた結果、連携された壁は円弧上に配置されており、連携されていない壁は自由曲面で配置されている壁であることが分かりました(図-2)。
 
自由曲面のように、特殊な形状の壁はBIMソフトで表現することができますが、積算ソフトでは、現状連携は難しいようです。
 
そのため、そういった壁に関しては、連携後に積算ソフト上で配置するなど手を加える必要があります。
 
先ほど取り上げたような特殊な形状の壁などは反映されないため、その壁に面している部屋にも影響があるのではないかと考えましたが、部屋自体は連携されていることが確認できました。しかし、部屋の輪郭線には影響が起きていました。
 
その他のモデル要素として、ドアや窓(以下、建具)を連携させる場合、建具の内法寸法の情報を持つパラメータを出力時に設定し連携を行いましたが、一部連携できていないものが見られました。
 
それらをRevitで確認すると、建具によって異なるパラメータを使用しており、一方ΗΕΛΙΟΣの設定では読み込むパラメータが一種類しか設定ができないためにおこる不具合であることが分かり、連携させるためにはパラメータ名の統一が必須であるということも明らかになりました。
 
ここまでの修正を行ったことで、通り芯、壁、部屋、建具の連携可能な部分について連携することができました。

通り芯のIFC連携とダイレクト連携

図-1 通り芯のIFC連携とダイレクト連携


曲面壁のモデリングによる連携

図-2 曲面壁のモデリングによる連携



 

実例(2)Archicadモデル

では次に、Archicadで作成された延べ床面積が約3,000㎡、9階建ての事務所ビルを実例としてご紹介します。
 
まずはRevit同様に、IFC連携で試みた結果、おおむね読み込むことができましたが、ここでも一部の通り芯が反映されない現象が発生しました。
 
Revitでは、ダイレクト連携を行うことでBIMデータを修正することなく連携できたため、同様にダイレクト連携で行ったところ、こちらも全ての通り芯が反映されました。
そのため、ここからはRevitと同様にダイレクト連携での検証を紹介します。
 
ダイレクト連携を行った結果、Archicadでは円弧の壁が、ΗΕΛΙΟΣではその円弧の始点と終点を結ぶ直線の壁となる現象が発生しました。
そのため連携後に修正するなどの手を加える必要があります。
その他にも位置がずれた状態で反映されている壁がありましたので、Archicadで確認すると、断面形状マネージャを使用して作成した壁であることが分かりました。
 
断面形状マネージャとは、壁などの断面を自在に作成することができるArchicad特有のツールであり、それを使用していると壁芯位置がずれて反映されてしまうことが判明しました(図-3)。
 
Revitと同様に、壁の表現はBIMソフトでの形状をそのまま積算ソフトへ連携できないものが存在します。
 
部屋への影響はArchicadに関しても現れ、連携できない壁に面している部屋自体は連携されましたが、部屋の輪郭線には影響が起きました。
 
建具を連携させる場合、ドアまたは窓ツールで配置されている必要がありますが、このBIMデータは、全てドアまたは窓ツールを使用していたため、問題なく連携されました。
 
ここまでの修正を行ったことで、通り芯、壁、部屋、建具の連携できる部分については連携することができました。
 
 
2つの実例を紹介しましたが、上記の要因のみが連携における主なエラーの原因であるとは言えず、BIMデータはプロジェクトごとにさまざまなツールやソフトを駆使して作成するため、連携のエラーを起こす原因も多岐にわたってしまうことが予想されます。
 
すなわち、BIMデータごとにエラーの原因を究明し、修正・調整を行うことは必然になるといえるでしょう。

断面形状マネージャによる不具合

図-3 断面形状マネージャによる不具合



 

仕上情報について

最後に、仕上情報の連携について紹介します。
 
これまでの実例では、モデル自体の連携を主に紹介しましたが、BIMで最も重要なI(インフォメーション)の部分についても、連携が可能です。
 
まず壁の仕上情報については、Revit、Archicadともに、下地と構造体を一体とした壁(以下、複合壁)を配置することで連携可能です(図-4)。
 
部屋の仕上情報は、Revitなら部屋の「インスタンスパラメータ」、Archicadなら「ゾーンスタンプ」か「分類とプロパティ」に仕上(例えばビニールクロス)の情報を与えることで連携が可能となります。
 
紹介した各モデルはパラメータに仕上情報が設定されており、ダイレクト連携を行うことで、複合壁の構造体のみが間仕
切として連携され、部屋の仕上と複合壁の下地が部屋情報として連携されました(図-5)。
 
積算上、間仕切として計上するのは構造体のみで、下地については部屋の下地として計上することが多いため、このような連携状況は理想的だといえます。
 
BIMモデルは外壁、屋根、建具の仕上情報も持っていましたが、それらの連携は現状ではまだ課題も多いと言わざるを得ません。
 
外壁と屋根を連携するためには、元より積算連携を意識した作成方法をとる必要があることが分かっていますが、これはBIMデータを作成する設計者を含めたモデラー側への足枷となってしまう上に、情報の連携なども不具合が発生しやすく、得られるメリットが小さいと感じます。
 
建具についても、モデリング方法によって員数の相違が発生する場合や、表面仕上などの情報に関しては連携できないといった点も課題が残ります。
 
こちらについては、今後の積算ソフトのバージョンアップなどを期待したい部分です。

複合壁

図-4 複合壁


間仕切と部屋の仕上情報

図-5 間仕切と部屋の仕上情報



 

まとめ

実例を通して、モデル自体の連携や仕上情報の連携について紹介してきましたが、これらのBIMデータを弊社で連携可能な形に調整するために要した時間と、従来の積算業務時間から連携によって削減された時間は相殺され、効率化という点でメリットが劇的にあるとはまだ言い切れません。
 
しかし、情報を正確に積算へつなぐ精度の向上という点においては十分メリットを感じられます。
 
効率化についても、検証事例が増加することでノウハウは確実に蓄積され、エラー要因の傾向をつかむことや、今後の連携精度が向上するとともに大いに期待できるものと考えています。
 
BIMデータに含まれる情報がいかに多くあったとしても、現時点では限定的な範囲での連携にはなりますが、BIMソフトと積算ソフト双方の理解があれば、「BIMデータで積算はできるのか」の問いに対しては、「できる」と答えます。
 
BIMデータごと、プロジェクトごとに連携できる範囲の見極めは必要であり、またその効果も一定には得られないことも多く、あくまで2D図面が正となる現状では、本来のBIMの概念と違うかもしれませんが、それであっても各社で取り組んだBIMデータを積算に活用していくことは必然と考えます。

 
 

今後に向けて

従来のように各社各様のルールで書かれていた設計図書で積算を行っていたように、各社各様のルールでBIMが作られること、同じ社内であっても作成者によって作り方が違うことは問題ではありません。
 
もちろん情報の入れ方、パラメータの命名、使い方やモデリング方法などを、ある程度のルールに基づいて行う方が連携の可能性は高まりますし、国内でBIMの標準化に対する動きが見受けられるので、そちらもさらに進めば、なおデータ連携の可能性は高まることになるでしょう。
 
しかし、BIMを積算のために作成するのではなく、あくまでも本来の目的を変えることなく、その上で積算にもデータ連携を行えるようになることが、本来のBIMのあるべき姿ではないでしょうか。
 
そして、それを実現するためには、連携をスムーズに行うための設計BIMと積算をつなぐ、BIMソフト・積算ソフト双方に精通した橋渡し役の存在が必要不可欠になろうかと考えています。
 
その役目をわれわれが担いモデリングする前段階からの支援、各社で現在まで蓄えられたオブジェクトなどの整理を行えば、BIMデータの有効活用へつながり、これからのさらなるBIM推進および普及の一端を担うことができると考えています。
 

 
 
草苅 秀和
DX推進室長 /1980年兵庫生まれ
一級建築士・建築コスト管理士
近畿大学卒業。入社後、構造積算に従事し、10年以上構造統括マネジャーを経験後、意匠積算へ異動し、プロジェクトマネジャーを経て、2020年11月のDX推進室立ち上げより現職。
 
 
 
 

株式会社 エステム建築事務所 DX推進室長
草苅 秀和

 
 
【出典】


建設ITガイド 2022
特集2 建築BIM
建設ITガイド_2022年


 



 


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