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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

地方発!建設DXチャレンジ事例中小企業による次世代のICT施工に向けた展望と取り組み

2024年7月8日

はじめに

i-Constructionがスタートした2016年からICT施工に積極的に取り組み、最初の3年はICT建機による土木施工を行うことを重点に据えていた。
一方でUAV測量から3D設計データの作成、完成時の出来形測定までの一連の作業は外注に頼っていたため、国土交通省が目指す真の意味での生産性向上までは達成することができなかったのが実情である。
 
2020年、次世代のi-Constructionに対応すべく、自社内で3D設計データを作成するDX推進室を立ち上げ、高度な実績を持つ中堅および若手技術者を配置した。
測量会社から点群データを受け取りその点群から、設計変更に伴う2D図面の作成や、受注時に受け取る2D図面の3D設計データ変換やICT建機へのシームレスなデータ連携を自社内で対応できるようになった。
 
近年、BIM/CIM原則適用やICT施工StageⅡが提唱される中、さらなる生産性向上を目指すべく、紙ベースの図面を3Dに置き換え、業務改善による時間の有効活用、若手技術者の現場理解の促進、社内の省力化・省人化に取り組んでいる。
また北陸地方整備局阿賀川河川事務所を巻き込み勉強会の設立を提案、先日、第1回目を開催したところである。
 
 

3D土木技術者の育成

国土交通省による建設DXの推進やBIM/CIM原則適用に対応すべく、請負企業として責任ある施工を確保するために、先述のDX推進室の専属技術者がICT現場のサポートを行えるよう、会社の組織体制を見直した。
 
そもそも、彼らは道路・河川等工事の設計施工を熟知した土木技術者であり、新たに建設DXの技術を身に着けるべく、6カ月にわたり、これまで外注に頼っていたUAV測量、点群データ処理、3D設計、 ICT出来形管理の知識をゼロから習得した(図-1)。
 
これによりDX推進室では、土木工事の点群データの取得・3D設計データの作成・出来形測量まで全て自社内で実施できるレベルになり、利益向上につながった。

図-1
図-1

 
 

新たな時代(BIM/CIM原則適用・ICT施工StageⅡ)に向けて新技術の導入

2021年、株式会社EARTHBRAINとパートナーシップ契約を締結した。
これは国内トップクラスのICT 技術を保有する企業と協働することで、国土交通省が目指す真の意味での生産性・効率性のアップをより短時間で実現するための選択である。
 
 

若手技術者への伝承

これまで熟練技術者が培ってきたノウハウを、若手技術者へ伝えるための取り組みも始めた。
現場条件ごとの適正な機械配置や、ダンプ運行状態などを予測できるデジタルシミュレーション(図-2)を活用し、建機の種類や台数・運行ダンプの台数・ルートなどの諸条件を変えながら、最適な施工計画を確認した。
 
本来は建機や運行ダンプごとのサイクルタイムを計算し、最適な計画を立てるのが一般的であるが、サイクルタイムの予測をゲーム感覚で行え、かつ経験の少ない若手技術者でも最適な計画を検討できることは有意義であった。
普段から、これらの取り組みを進めておくことで、緊急災害時の資材の調達・機械などの選定にも活用できると考えている。

図-2
図-2

 
 

施工段階におけるフロントローディング

ICT建機用の3D設計データ作成においては、これまでのノウハウを生かし、自社内で作成を進めている。
一方、詳細な3Dモデルの作成は、通常の3D設計に加え、それぞれ表現したい構造物などの追加横断図を作成し構造物ごとに連携させる必要がある。
このような追加横断図の作成は、比較的、時間を要する作業となるが、人材育成に投資した結果、自社内での作業が可能となったため、思ったほど労力は必要としていない。
また、表現したいものが、地中の土質(図-3)だったり、補強土壁のように背面に長い部材を設置する構造物(図-4)だったりする場合、入力すると現況地山および隣接する構造物との取り合いが多方向から「見える化」により確認できるので、設計上の不具合・取り合いの問題点(図-4)を現場着手前に確認できる。
結果として問題などが発生した場合でも事務所に戻ったり、図面を確認したりするなどの現場での手戻り作業が軽減できた。

図-3
図-3
図-4
図-4

 
 

3Dモデル活用による課題発見・解決

熟練した技術者でも2D図面から着手前に全ての現場条件を把握し、施工箇所の取り合いなどの不具合を発見するは困難である。
 
昨今、全国の建設会社では中堅技術者が不足している。
そのため、若手技術者を確保、育成している会社がほとんどであると思われる。
 
当社も例に漏れず、中堅の30代後半~40代が極端に少なく、現在職場環境を改善し、若手技術者の確保・育成をしている段階である。
今後はこれらの若手技術者が活躍できるよう、3Dモデルを積極的に活用し、担当工事の着工段階から完成形までを確認でき、その過程で管理する工程、資材の調達、作業員の確保、発注者担当への不具合説明などが容易にできるように、これまで使用していた2D図面から3Dモデルへの変換を図っている。
このようにちょっとしたひと手間をかけることで、若手技術者があたかも熟練技術者のように現場の課題に気付き、説明あるいは解決策を検討することができる点で3Dモデルの活用は非常にメリットが高いと考えている。
 
 

BIM/CIMの取り組み①

:電子データの工事間連携

工事着手時・民間からの見積り依頼時など、現況の地形データがあらかじめ手元にあれば、わざわざ現況測量しなくても、早期に仮設計画・見積り作成対応ができる。
当社では、そのような観点で、現場完了時にICT施工ではない現場でもUAV測量により受注現場を含むエリアを中心に少し広げる形で点群データを取得し、担当工事以外の技術者でも活用できるよう情報共有環境を構築している。
 
今回、阿賀川河川事務所発注工事において、偶然にも隣り合う工事を連続して受注ができ、前工事の点群データ(図-5)を新規工事で取得した点群データと合成(図-6)することで、一部の除草・伐採の作業とUAV測量の簡素化が実現できた。

図-5
図-5
図-6
図-6

 
 

BIM/CIMの取り組み②

:5DViewerによる広域管理

自社で受注している複数の現場状況を日々把握することは困難である。
各現場は、広域に点在しており、数㎞または100㎞程度の離れているため、現場間の移動は有料道路を利用しても1時間以上かかることが常である。
生産性向上の一貫として、この移動時間を軽減すべく、採用したのが5DViewerである。
これは、現場ごとの進捗状況(図-7)、重機の稼働、運行ダンプの走行場所および渋滞状況(図-8)を事務所にいながらパソコンでリアルタイムに把握でき、何か問題や調整事項が発生する場合、現場担当者に改善の指示ができる。
また、各現場の3Dモデルもこのシステムを介して共有でき、別現場での3Dモデルの作成の軽減、いち早く発注者への説明に活用できるなど、移動時間以外にも効果があることが確認できた。

図-7
図-7

 
 

おわりに

建設業は高齢化が進み、有能な作業員・労働者が減る中、社会インフラ、とりわけ地域のインフラ基盤を支えるには弊社のような地場の建設会社の経営力、技術力向上は必須であると考えている。
今回、ご紹介した弊社の取り組みは、各担当者の工数削減という観点では効果が高かったと感じている、今後の持続性のある生産性向上のためには、限りある若手技術者を早急に育て、これまでの慣習にとらわれない、無駄の少ない新しい発想で実施できる建設工事になるように日々創意工夫とチャレンジ精神を持って、取り組んでいく所存である。
 
 
 

会津土建株式会社 DX室長
後藤 健一

 
 
【出典】


建設ITガイド 2024
特集1 建設DX、BIM/CIM
建設ITガイド2024


 

最終更新日:2024-07-12



 


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