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2023年9月11日
はじめに(1)Society5.0の社会へデジタル技術がもたらす社会像として「Society5.0」があります。 (2)i- Constructionの推進わが国は、現在、人口減少社会における働き手の減少への対応や潜在的な成長力の向上、産業の担い手の確保・育成などに向けた働き方改革の推進などの観点から、生産性の向上が求められています。 建築BIM推進会議の設置と令和3年度までの取り組み状況(1)建築BIM推進会議の設置(令和元年6月)国土交通省では、前述の「成長戦略フォローアップ」に基づき、建築物のライフサイクルにおいて、BIMを通じデジタル情報が一貫して活用される仕組みの構築を図り、建築分野での生産性向上を図るため、官民が一体となって「建築BIM推進会議」(以下、推進会議)を令和元年6月に設置しました。 (2)「建築BIMの将来像と工程表」の策定(令和元年9月)令和元年6月に第1回推進会議が開催され、同年9月の第3回の推進会議において、「建築BIMの将来像と工程表」が了承されました。
特に1点目の役割分担に留意し、①のワークフローの検討など、さまざまな業界間の調整が必要な部分については国が主体的に事務局を行う部会「建築BIM環境整備部会」(以下、環境整備部会)を設置することとし、②~⑤については既に民間の関係団体などにおいて検討が進められていることから、それらの各団体の活動を部会と位置付け、個別課題に対する検討などを進めることとされました(令和元年10月~)。 (3)ガイドライン(第1版)の策定(令和2年3月)①の検討を行う環境整備部会は、志手一哉芝浦工業大学建築学部建築学科教授を部会長とし、推進会議と同様に幅広い関係団体などにより構成されています。
(4)モデル事業の実施・ガイドラインの改訂(令和2~3年度)令和2年度から、第1版であるガイドラインの実証などを行うため、ガイドラインに沿って試行的にBIMを導入し、コスト削減・生産性向上などのメリットの定量的把握・検証や、運用上の課題抽出を行う、「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」(以下、モデル事業)を実施しています。 令和4年度の取り組みと今後の展開・展望(1)将来像と工程表の改訂令和4年6月に閣議決定された新しい資本主義実行計画グランドデザイン・フォローアップ(令和4年6月7日閣議決定)において、ガイドライン(第2版)に基づき官民が発注する建築設計・工事などにBIMを試行的に導入するとともに、建築物のライフサイクルを通じたBIMデータの利用拡大に向けて、2022年度中にロードマップを取りまとめるとされました。
(2)モデル事業の実施など(令和4年度)令和4年度も、令和3年度までの成果などを踏まえ、「先導事業者型」、「パートナー事業者型」、「中小事業者BIM試行型」の3つの枠に分けて募集を行い、「先導事業者型」は、8件、「パートナー事業者型」は3件、「中小事業者BIM試行型」は4件を採択しました。
(3)建築BIM加速化事業の実施(令和4年度第二次補正予算)「建築分野のBIMの活用・普及状況の実態調査」(令和3年1月国土交通省調べ)によると、1,000人以上の企業におけるBIM導入率は7割以上である一方、10人以下の企業では3割以下となっており、特に中小事業者にとっては、導入・運用に係る初期投資や習熟人材の不足といった課題がBIM導入の障壁として挙げられます。 (4)今後の展開・展望建築BIMの推進においては、官民一体となって個別課題に対する検討などを進めるとともに、共通する課題に横断的に取り組むことが重要となります。 国土交通省 住宅局 建築指導課
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2023年9月7日
BIM教育の一例BIM教育に対する考え方芝浦工業大学のBIM教育は、旧工学部建築工学科で故木本健二先生が「オブジェクトCAD演習(2018年度よりBIM演習に改称)」を開講した2008年に遡る。
BIM教育のフロー当学建築学科の都市・建築コースでは、2年次後期にBIMソフトの操作を修得する「BIM演習1」、3年次前期にパラメータ利用やCDE環境を演習する「BIM演習2」、PMBOK(Project management body of knowledge)をベースとした BIMを用いた見積りゼミ当学科では、3年次後期に、建築学科の全教員が自身の専門分野に関連したテーマで開催するゼミに学生が参加する
モデリングの概要モデリングは、2~3名のグループでワークシェアリングを用いた共同作業である。 積算の概要積算の項目は、「公共建築工事内訳書標準書式」の細目に若干の追記をしたものを、各自が選択した建物と照らし合わせて判断する。 BIMを用いた見積り演習の意義このように手間のかかる方法で、それなりに本格的な見積書を作成するのだが、この苦労がBIMを学ぶ学生にとって重要な経験である。 BIMの高度人材教育に向けて学部生は、BIMソフトウエアの操作教育、BIMを用いた見積り演習、卒業研究ゼミを通じて、BIMソフトウエアのオペレーション技術を修得し、BIMはオブジェクトベースで物事を考えることであることを理解する。
BIMの理論を学ぶ授業授業はBIMの理論を体系的に学習することができるように、構成を模索しているところである。
修士ゼミ修士ゼミは、各大学院生が取り組んでいるBIMに関する専門分野の研究について大学院生相互で議論を重ねることで、BIMに関する知識と理解をより深くより広範に会得することが目的である。
国際交流2016年から、マレーシアのトゥンク・アブドゥル・ラーマン大学(UTAR)のコンストラクションマネジメント学科(Department of Construction Management)とPBL(Project Based Learning)のエクスチェンジプログラムを実施している。 英国の大学院における BIMコースBIMコースの概要2022 年11月に、知人が留学している英国の西イングランド大学ブリストル校の大学院BIMコース( MSc BIM in Design Construc tion and Opera tions )を訪問した。 日本のBIM教育との比較日本では、大学でBIM教育を行っているとしても、個人で努力や工夫をできる範囲であり、組織的な対応ができていない。 まとめ日本のBIM元年とされる2009年から2022年で13年の月日が経過した。 芝浦工業大学 建築学部建築学科 教授
志手 一哉
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建築デザイン学科の歴史広島工業大学の建築系学科は、工学部につくられた建築学科に始まり、同学部で発展した建設工学科と、環境学部の環境デザイン学科に派生している。 カリキュラムの新たな柱建築デザイン学科では、「建築」を軸とし、「インテリア・木工」と「デジタルデザイン」を新たな柱として加えた。 手でつくることから建築を学ぶ「インテリア・木工」ではこれまでの伝統的なものつくりを学ぶために、本格的な木工機械を取り揃えた「木工房」を整備し、そこで1年生の最初の設計演習として「デザインワークショップ」をスタートする。 世界との溝を埋めるデジタルデザイン教育本学科のデジタルデザイン教育は、「コンピュテーショナルデザイン(1年後期)」「デジタルファブリケーション実習(2年前期)」「BIM実習(2年後期)」の3つの授業が中心となっている。 多角的な視点から学科全体で設計演習にトライするまた3年前期の研究室配属以降、研究室ごとに専門的な学びを深めている3年生最後の設計演習として「デザインスタジオ」がある。 設計教育の設計ここまで、わが学科の方針や主要科目について概説したが、「設計の科目は?」と思われた方もいると思う。 ΗΕΛΙΟΣアカデミック版を活用したコストプランニング教育建築教育においてコストプランニングの教育が非常に遅れていることは周知の事実である。 さいごに建築デザイン学科では、従来の設計演習における設計対象を拡大し、展開する全ての設計演習において「リアル」というキーワードを大切に教育に取り組んでいる。
杉田 洋 Hiroshi Sugita広島工業大学教授/1971年広島生まれ。 杉田 宗 So Sugita広島工業大学准教授/1979年広島生まれ。 広島工業大学 環境学部 建築デザイン学科
教授 杉田 洋
准教授 杉田 宗
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長谷工版BIMモデルの活用長谷工では、BIMに取り組み始めた当初から“BIMはCADの代替えではない”という方針で、BIMデータを設計・施工・サプライチェーンで活用することをテーマに取り組んできた。 施工情報の入ったBIMモデル設計段階から施工段階で活用できる精度の高いBIMモデルを作成することで、着工前にDynamoによるコンクリート数量拾いが可能となった。
Dynamoを活用した積算長谷工版BIMモデルからコンクリート数量拾いに必要な情報だけを表示したBIMモデルビューを作成し、Dynamoで平面図上の範囲の指定と高さを入力するだけで、数十秒後には計算結果が表示され数量拾いが完了する。 実施数量との比較実際に発注シーンで活用するためには、作業所で実際に使用される数量との差異をいかに少なくできるかが重要となる。 活用状況施工計画の際や、作業所でのそれぞれの実務に合わせ、打ち継ぎ位置や高さ方向の範囲を指定して数量拾いを活用している。 まとめ今回の長谷工版BIMモデルを用いたコンクリート数量拾いが活用できている一番の要因は、BIMモデル自体の精度が高いことが挙げられる。 今後の展開設計図書や施工図を出力している長谷工版BIMモデルには、設計や施工に関わるさまざまな情報が入力されている。 株式会社長谷工コーポレーション 建設部門 建設BIM推進部
原 英文
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2023年9月5日
はじめにコロナの影響で長らくBIMによる成果の発信がWEB等のデジタル空間での事例説明に限って行われてきた。 全体BIMの体制全体BIMの体制は、合意形成のためにモデリングをした建築モデル、構造モデル、Revitモデルを基に実施設計モデルを行い、確認申請や現場発行時に主要な設計図をモデルから切り出した。 全体工事の把握スタジアムの工事は、屋根スライド工法の採用やガーダー架構の早期構築など全体工程として複雑に組み合わされている一方、調整工事が場内の至るところで絶えず行われているため、工事動線や重機配置など場内計画と合わせた全体の計画を厳密に調整する必要があった。 躯体数量積算Revitの集計機能を利用し、現場打ちのコンクリートとなるエリアにおいては、設計モデルから工区別のパーツモデルを作成し、工区割の妥当性を検討した。 ビジュアル工程管理システム(プロミエ)固定屋根と可動屋根の鉄骨工事を対象とし、現場施工管理者が出来高を管理するのに、大林組開発システムをプラットフォームとして、情報を共有し、連携管理を試行した。 システム連携実例ドローン、点群活用土木班の土量管理と全体工事状況確認を目的に導入し、生成された現況の地盤点群データをRevit上で計画モデルと重ね合わせ、計画・現況の比較や仮設工事の計画に利用した。 4D管理システム実証実験の取り組みとして、4D施工管理支援システムにBIMを活用した。 関係各社に関わる課題解決施工確定には、施工が実現可能な詳細度の作成が必要で、なおかつ、同時並行の限られた時間内で関係各社との課題解決を求められる。
意匠と設備意匠とダクトの納まり確認では、電光掲示版と後ろに設置の設備ダクトをそれぞれに組み込まれている情報を連携しBIM360で確認をした。
揚重機検討・搬入計画Revit建築モデルをCDE・BIM360へリアルタイムで共有していただくことで、信憑性のある建築データを基に、搬入時の揚重機検討、搬入機設置、ルート選定計画が可能となった。
お客様と合意形成テクスチャーというパラメータを用いて、お客様に見せる努力、ISO19650で必要不可欠な承認行為へ活用し、設置をした。
海外設計事務所・他拠点との意思伝達海外の設計事務所や他拠点の意思決定者へBIM360のCDE内でデータを届け、見える化以上の意思決定の活用をした。 ダクトファブリケーション新菱冷熱工業㈱は、BIMモデルから部材を抽出し、製造製作・加工データとして工場に渡すファブリケーションに取り組んだ。 ステータス管理システム現場施工管理者が管理していく上で、オブジェクトの状態を把握することが大切である。 風量測定・制気口リストモデル内に設置している制気口を利用し、現場内検査として必要不可欠な風量測定の利便性向上を試行した。 課題と対策今回の大規模スタジアム建設のBIM活用から生まれた今後の課題と対策について述べる。 今後への期待全体に関わる課題をCDE活用し解決することに関して、ISO19650もしくはEIRに準ずるBIMデータ利用環境により、課題解決を軌道に乗せていきたいと期待する。 おわりに元請建設会社である(株)大林組が準備したCDEの環境が全体最適をもたらし、関係者間で利用をしていこうと提案し、活用していった。 BIMチーム
谷内 秀敬
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