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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

維持管理分野からのBIM/CIM

2023年9月1日

はじめに

弊社は東京都江戸川区に事務所を置く社員20 名の小さな会社です。
2005 年に会社設立以来、設計コンサル様や建設会社様より仕事を頂き、橋梁を中心にコンクリートおよび鋼構造物の調査・診断、補修・補強設計などの維持管理関連の仕事を行っております。
そのなかで、三次元処理技術を活用し従来のワークフローの改善に努めております。
本稿では会社紹介と弊社の中での3D 技術の生い立ちについて紹介させていただきます。
 
 

会社紹介

会社設立

会社設立以前、私はショーボンド建設に在籍し、約20 年、諸先輩方から橋の維持管理について指導を頂きました。
独立時はこれからは地場の建設業の皆さまが地元の土木構造物の維持管理を担う時代になると信じ、少しでも役に立てることができればと会社を設立しました。
しかし初めての会社経営であり、経営的センスは全く持ち合わせていなく、社員が徐々に増えるに従い、人を雇用する責任、会社運営方法など回りの方々に助けられながら経営してまいりました。
 
そのような中、中小企業ならではの問題(人材確保、高齢化など)と直面し、藁をもつかむ思いで、技術を探し、試し、判断、運用を繰り返してきました。
その結果が表-1です。
決して時代を先取りしようとするものでなく、目の前に見えている問題に対して、対処してきたという状況です。
このような対処方法も前職での経験があったからこそと今も感謝しております。

表-1
表-1

 
 

会社の基本原則

弊社の特徴は現場第一主義です。
理由は弊社が橋梁の調査、補修・補強設計業務を中心としており、補修・補強設計を行うには、設計の知識もさることながら、現場状況の把握や工事の流れや品質管理などを理解していないと質の良い設計ができないからです。
 
損傷調査では鉄筋探査、はつりやコア採取、断面修復、現場試験、工事現場の調査では、設計照査、墨出し、実寸計測、製作図まで、一貫して自分たちでできることは全て自社で行っています。
当然人によって向き不向きはありますが、まずはさまざまな作業を自分の五感で感じとることが維持管理では重要と考えています。
 
 

維持管理におけるBIM/CIM

新設と維持管理の違い

新設は計画から始まり構造物を造るまでであり、維持管理はその後のお世話かと思います。
お世話というのは非常に息の長い付き合いであり、単なる仕事ではなく、そのものへの愛着がないと適切なお世話はできません。
常に知識と知恵を習得しながら、何度も何度も直接会い相手を理解しながら自分も勉強をする。
これを繰り返すうちに自然と愛着が生まれ、お世話、診断ができるようになります。
 
維持管理では、専門知識も非常に重要ですが、それだけではままならず、日常の点検方法から始まり、定期点検方法、診断、緊急処置の判断、対処方法、施工方法、工事、その後の運用まで、全般にわたる知識やネットワークが必要となってきます。
いくら新設の知識があったとしても、すぐにできるものでもありません。
 
既設橋梁を見たときに、その橋の履歴書をイメージできると面白くなってきます。
また、古い橋梁であればその橋の設計者がどこを大事に設計したかを見抜けるようになると、なお良い設計が行えるようになるかと思います。
 

企画・改善の方針

維持管理業務のなかで、特にソフトウエアなどを開発する場合、私が特に注意することは、最初から全自動を目指さないことです。
前述の新設と維持管理の違いにも含まれますが、新設の場合であれば、当然全自動ソフトを目指します。
維持管理の場合は、橋により条件は全て異なります。
 
いくつかのサンプル橋梁に合わせて全自動を作るとそれらの橋でしか使用できません。
半自動くらいで融通が利くようにしておけば、利用できる橋梁は格段に増えます。
その半自動の部分に今まで人力だけに頼っていた部分や人ではできなかった部分などを自動化し、まずは大変な部分を取り除き、確実に利用でき効果が実感として現れるようにします。
それがワークフローの改善につながります。
いくら新技術と言っても使える対象や人が少なく実務とかけ離れていては、多額の費用を費やした割には利用者がいないなど、全くの採算割れになり生産性向上どころか、継続すら難しいものになります。
私共のような小さな会社では社内での利用価値が上がれば生産性は向上し、開発・改善の効果は顕著に表れます。

表-2
表-2

 

企画・改善の着眼点

維持管理業務の中では、企画・改善項目を見つけ出すことは容易なことです。
維持管理業務の中では今もなお手作業が多くあります。
これは決して怠慢なわけではなく、調査などの仕事をする環境、対象物が千差万別であり、しかも過酷な条件のなかで行わなければなりません。
このような状況の中で、機械化やソフト等による自動化はパターンが多くかなり難しいものとなります。
しかし手作業が多いのは事実であり、その部分を洗い出せば課題は簡単に抽出できます。
また、その際にスーパーマンを目指すのではなく作業者の相棒的存在になるようにしています。

 

維持管理分野だからこそBIM/CIM

先にも申しましたが、既設構造物を扱うのが維持管理です。
既設構造物の3Dデータを取得できれば調査の手間を大幅に削減するだけでなく、後の維持管理にも有効利用でき、将来にわたってのコスト削減が期待できます。
また、維持管理には現状での構造寸法や損傷度合の把握が重要であり、従来はそれらを把握するために全て手作業で調査を行ってきました。
世界のBIMの技術の中には現況を3Dで再現する技術は年々進歩しており、非常に簡単に利用できるまでになっています。
将来、現場では現況のデータ取りに専念し、現場をパソコン上で超リアルに再現し3Dデータ上で点検を行うようになる日は近いものと思います。
維持管理ほど3D 技術の活用範囲が広いものはありません。

 

BIMとCIM

BIMとCIMは一般的に日本では建築と土木での使い分けかと思いますが、両者を比べるとBIMは伸び伸びと自由に活用され確実に進歩、普及しているように見えます。

 

維持管理分野からのBIM/CIM

 
建築では昔から意匠を重視する文化があり、そこに3D 技術がうまくマッチし、仕事の流れの中でも合意形成手段としてや生産性を上げるツールとして有効利用されています。
それは3Dの特徴や利点を自然に理解でき、民間同士の中でメリットさえあれば自由に伸びていく土壌があることが考えられます。
 
CIMはBIMのような土壌がない中で、生産性を向上する手段として選択しました。
この点が両者に差が生じる原因とも思われますが、業界に関わる全ての方が3Dの特徴、利点をよく理解し、従来のワークフローの中に組み入れることにより、生産性向上を目指す必要があるかと思います。
 
 

CIMへの取り組み

きっかけ

2007年より画像処理技術に取り組んできました。
きっかけは、耐震補強工事でのアンカーボルトを定着するためのコンクリートコア削孔を行った位置を計測する業務です。
計測方法としては、コア削孔したコンクリート面の前面に透明のマイラー紙を貼り付け、マジックで削孔穴をマイラーに書き込み、事務所に戻ってからそのマイラー紙を差し金で計測するというものでした。
 
精度も良くなく、新入社員当時から20年も経つのに同じ計測方法に疑問を持ち、良い方法はないか必死に探しました。
そこで出会ったのがNikonの「GS -1画像診断支援ソフト」でした。
写真上でひび割れをプロットして延長が算出できるのなら、ひび割れの代わりに削孔穴をプロットすれば位置を特定できるのではと導入したのが始まりでした。
 
それ以来、Nikonの小出氏とのお付き合いが始まり、画像、赤外線とご指導を頂き、弊社の一番の特徴である画像処理の礎となりました。
 
その後、小出氏にはNikon退職のおり、ご自身の判断でたった10名の弊社を選んでいただき、社会人としてのマナーから始まり、何事にもチャレンジしていく社風にまで成長させていただきました。
 

3Dレーザースキャナーの活用
図-1 点群データ
図-1 点群データ

2012年より3Dレーザースキャナーを運用開始しました。
きっかけは損傷調査を行う際に、まず現地を計測して現況一般図と構造図を復元します。
この作業は経験と知識が必要となる作業であり、弊社の中の経験不足のカバーと効率化が目的で導入しました。
この当時、「レーザースキャナーでデータを 取ってください」という依頼は皆無であり、お客様にも全く興味を持っていただけませんでした。
それでも弊社が関わる案件では必ずスキャンを実施し、点群上で計測し図面を作成しました。
理由としては経験不足による計り忘れを防ぎ、図面を書く際にも非常に便利であり、社内での価値が生み出せたからです。
また、「点群は非常に維持管理には有効なデータ」だと確信し、依頼がなくとも点群としてデータを残していました。
現在では600橋近い点群データを蓄積しています。
 
その後、運用を続けていくうちに、従来の2Dの図面を書く手段として点群を利用することに大きな矛盾を感じ、3Dデータをそのまま3D成果として活用できる方法を模索し始めました。
そこで4D汎用マネジメントソフト(Arena4D)と出会います。
 

4D汎用マネジメントソフト( Arena4D)
図-2 Arena4D画面
図-2 Arena4D画面

2015 年より導入しました。
しかしながら当初3年間は有効利用できませんでした。
Arena4Dは、もともとイギリスのソフトで、マニュアルからソフトまで全て英語であり、後に日本語のマニュアルもでましたが、機能のほんの一部しか理解できない状態でした。
 
そんな状態の中、フィリピンの外注委託先より一人、就労ビザを取得し弊社に迎え入れることができました。
これを機にArena4Dのさまざまな機能を把握し、業務の中での活用が可能となりました。
また、今ある機能だけでは足りず、干渉チェックや差分解析の機能の部分開発に参画しました。
 
Arena4Dは、点群をベースデータとして、その上にさまざまなデータを重ね合わせができるソフトです。
過去に作成した2D-CADデータや撮影したjpegデータなど有効活用ができる上に、時間軸を設定できるため、維持管理においては有効な活用が期待できます。
また、3Dの特性を十分に発揮し、将来を見据えた3D-成果を自由に創作できます。
 

UAVの試行

最初の導入は2011年でした。
その当時UAVは市販されていなく、マニアの方が外国から部品を取り寄せ組み立てており、それを購入しました。
 
きっかけは、橋梁調査を行う際、事前に下見を行います。
山間部の橋梁では橋面は踏査できるのですが、橋下は急峻な斜面であるため降りていくには危険が伴います。
その当時、親綱に一眼レフを縛り付け橋面から宙づりにし、橋下の状況を確認していました。
これもほかに何か良い方法はないか探しUAVに着目しました。
 
しかしながら、最初に飛行を試した際、わずか3秒で墜落してしまいました。
操縦の難しさと安全に関わる知識がないと事故につながると深く反省し断念しました。
 
2018年、UAVが市販され始め、性能も向上したことから、私を筆頭にUAVスクールへ通い操縦資格(民間)を取得しました。
現在では調査員20~60代まで10名が取得しています。
これは全員が操縦するわけではなく、UAV調査時の安全を確保するために、直接、操縦しない者も安全知識を習得するためです。
 
翌年より、UAVに一眼レフ相当のカメラが上向きに搭載できる機種が販売されたのを機に橋梁への適応を始めました。
具体的には床版の詳細調査を行う際に、従来は点検車上から床版を一眼レフで取得した画像から画像診断をしておりました。
この点検車上の作業を軽減および効率化するのが狙いでした。
しかし、UAVが大型機であり一般的な橋梁では飛行空間が狭く危険であることや画質が一眼レフより劣ることから、なかなか活用が進みませんでした。
 

UAVの活用

UAVを本格運用し始めたのは、2021年よりSkydio-J2の運用がきっかけでした。
水を得た魚のように、次々と今までの調査での作業をUAVに置き換えできるようになりました。
これはSkydio-J2が小型であるのと同時に障害物回避機能(ビジュアルスラム)を有し最小離隔50cmでの撮影が可能であり、橋梁点検での狭隘部で損傷確認するための進入性や近接性能に優れるためです。
画角は小さくなるものの画質は一眼レフと同等の画質が確保できることにより、活用範囲は大幅に拡大しました。
 
UAVでは搭載されたカメラで写真もしくは動画を撮るのが簡単な使用方法です。
しかし、写真を撮るだけでは活用範囲が限られます。
その取得した画像をいかに活用するかでUAVの価値が変わります。
SfMなどの技術を組み合わせれば、自在に既設構造物を高繊細画質で3D化が可能となります。
 
例えば、UAVで撮影した画像をSfMソフトにて3D化します。
このデータは点群にも容易に変換できます。
そうすれば用途としては、現橋を高鮮明な3Dデータとしてパソコン上で損傷を把握することが可能となります。
また、点群に変換することにより、構造寸法も用意に計測ができるようになります。
3Dレーザースキャナーと組み合わせれば、3Dレーザースキャナーではデータを取得しにくい箇所をUAVで画像を撮影し3Dデータとし、両者を重ね合わることで、欠損のない3Dデータを作成できます。
 
このように自在に3Dデータを作成することが可能となります。
 

UAV活用の未来を求めて

今年度よりKDDIスマートドローン株式会社様と橋梁分野での業務提携を結びました。
と同時にSkydio2+を提供していただき運用しています。
 
橋梁分野でのさらなる活用や将来へのコスト縮減を目指した提案など、この業界に携わる方々へ分かりやすくかつ利用しやすい環境を整えつつUAV活用を広めていきたいと考えています。
弊社は微力ではありますが、KDDIスマートドローン様よりUAVに関する指導を受けながら努力してまいります。

写真-2 Skydio 2+
写真-2 Skydio 2+

 
 

おわりに

弊社では画像処理に始まり、UAVまでさまざまな技術に取り組んでまいりました。
土木技術者の中にはこれは技術ではなく手段だと思われる方も数多くみえると思います。
私もまったく同様に思います。
ただ、土木の専門知識だけでは成り立たなくなっているのも事実であり、専門外のつながりがないとなかなか本業を全うできなくなってきています。

写真-3 KDDI小山データセンターにて
写真-3 KDDI小山データセンターにて

 
弊社の場合は、新技術を行うことが目的ではなく、会社の本業をいかに精度よく、年齢構成などに関係なく将来にむけて継続させるかの一点でその手段を探してきました。
国の施策には全くと言っていいほど無頓着でした。
補助金なども一度だけ申請したことはありますが、その後は申請したことはありません。
ほぼ自力で行ってきています。
そのような中、専門外の方々と接する機会が増え、業界に固まっていた時と比べ、非常に楽しく仕事ができるようになりました。
 
ただ、私自身は土木出身ですので、いつまでも本業を全うできる技術をこれからも模索していきたいと思います。
また、中小企業間でCIMの活用が推進するよう7年前よりM-CIM研究会を発足し、情報交換や勉強会を行い、弊社が利用している技術も皆が共有できるよう活動をしています。
興味のある方は是非、声をかけていただければと思います。
 
最後に全国の維持管理に携わる方々に少しでも参考になればと切望するとともに、常日頃、ご指導、お世話になっている方々に感謝申し上げます。
 
 
 

株式会社補修技術設計 代表取締役社長
中馬 勝己

 
 
【出典】


建設ITガイド 2023
特集1 建設DX、BIM/CIM
建設ITガイド2023


 



建設コンサルタントにおけるBIM/CIM人材育成- 現状のモデラー育成、人材育成の課題、上級育成に関する所感-

2023年8月28日

弊社の人材育成

メインは新入社員集中研修

弊社におけるBIM/CIM教育のメインは、2014年度以降毎年5月の一カ月で実施している新入社員集中研修です。
一週間ほど、座学・ハンズオン研修を行った後、先輩社員などの指導の下、実業務を題材とした課題を熟すという内容です。
最終日の発表会では、社長賞をはじめとする各賞が用意されていることもあり、指導者も含めて真剣に取り組んでいただいています。
 
私の考える効果は以下の通りです。
 
①やはり若い人の方が向いている。
②同期の間で(仲良くなるので)情報網が形成される。
③(副次的に)土木や2D図面への入り口となる。
 
課題としては、折角学んだノウハウを計画系、環境系では生かす場面が少ないということでした。
これに対して、ICT 技術を含むDX全般に対応する組織「DX推進センター」の2021年度設立を機に、GIS、AI、RPA、XRなども選択可能とすることで、より一層研修への意欲向上が図れています。
 
開始当時は、2D図面の3D化がメインでしたが、その後、4D施工シミュレーション、比較検討、属性付与とステップアップしています。
2022年度のモデリング以外の課題としては「配管byプログラミングツール」「入札図書収集by RPA」「渋滞分析by Vissimn」「AR by VPS技術」などがありました。
 
ただ、私的には毎年5月は何やかんや非常に大変です。
でも、若い人を見て力をもらえているとも感じます。
 

ニーズ対応研修

弊社におけるその他のBIM/CIM教育は、ニーズに応じた1~3日間のハンズオン研修です。
 
対象者は、グループ会社、協力会社などを含む中堅社員、CADオペレーター、(海外からの)出向社員などです。
これらの対象者を区別せずに一緒に研修することはやっていません。
対象者が使用したいソフト、内容をヒアリングした上で適した内容の研修を行っています。
ニーズの例としては「今度入って来るCADオペさんに造成設計検討をフォローしてほしいので、線形の作成や法面の自動生成の方法を教えてあげてほしい」といったもので、「では研修を実施しますので、その前にこの基本操作編を自己学習させておいてください」といった感じです。
ただ、この研修を終えても、バリバリにソフトを使いこなせる方はいませんので「何かあったらいつでも相談してください」といった対応をとっています。
できないところをやってあげるのではなく、できるように教えてあげるといったスタンスです。
 
確かに「定期的に同じ内容の基礎的なハンズオン研修を行って欲しい」というニーズもあります。
「その方が効率的かもしれない」とも思う一方、「その後何割の方が継続してノウハウを生かしてくれるのか」という疑問もあります。
第一、変化のスピードも速いし、何より同じことを繰り返すのは私が面白くないのです。
 

社内BIM/CIM資格

弊社では「モデラー」「インストラクター」「マネージャー」という社内資格を付与しています。
一番最初だけ自ら作成した「モデル」「マニュアル」「BIM/CIM実施計画書・報告書」を審査して資格を付与しました。
その後は、年2回試験を実施しています。
試験は朝9時にメールで問題を配布し「何を見てもよいので回答を12時までに返信して!」というものです。
 
「モデラー」には得意なソフトを申告してもらい、例えば「添付する完成イメージ図を参考とし、添付するCADファイルを基に指示するモデルを作成せよ!」といった感じです。
合格者にはソフトを優先的に使用する権利を与えています。
 
「インストラクター」には、モデラー問題の「回答過程をマニュアルにせよ!」という出題をしますが、合格したとしても名誉以外のインセンティブがないため、受験者はごく少数です。
会社には例えば資格給といったインセンティブ付与をお願いしているのですが実現していません。
 
「マネージャー」にはBIM/CIMに関する広範な知識を求めたいのですが、その知識を把握する出題は難しく、現在はトピックな問題(できないこと)に対して課題(しなければならないこと)と具体的な方策を記述していただく問題としています。
採点がなるべく客観的になるような工夫が肝要です。
モデラー資格を持たないマネージャーもいます。
モデリングできなくても、「どんなことができるか」と「BIM/CIMの本質」を理解していれば、指示ができるはずだと考えています。
 
ただ、変化が激しいので、スキルを保つための方策は模索中です。
 
 

人材育成の課題

上記のような人材育成を現在行っていますが、社内外の人材育成に関する課題について考えてみました。

 

資質はモチベーションの維持で

必要な資質は以下の4つと考えます。

  • パソコンが嫌いじゃないこと
  • 新しもの好きなこと
  • 凝り性なこと
  • できればプログラミングできること

これまで1人だけ新入社員研修中にリタイアした人がいます。
同期を見回して自ら向いていないと烙印を押しちゃったみたいです。
過呼吸という症状も出てしまいました。
厳しい言い方かもしれませんが、スマホは片時も手放さないのに、仕事でパソコンに向かうと頭が痛くなるって、心の問題ですよね。
 
よく言われますが「BIM/CIMはイノベーション」です。
新しいことに興味を持って、既得権益がそれを阻害しているのであれば、それを乗り越えていく意思も欠かせない資質と考えます。
多くのアンチがいる状況では挑む価値も大きいです。
 
「凝り性」であることも重要です。
限られた時間内によりよい結果を出そうという意思は「集中力」とも言えます。

最後に「プログラミング力」。
私にとっても課題です。
しかし、与えられたアプリを使いこなすだけではなく、どうすればもっと良くなるかと考えること、さらに自らそれを実装する力は、これからどんどん求められてくると考えます。
 
これらの資質は結局モチベーションを持てれば醸成されると考えます。
動機は何でもよいです。
不純かもしれないですが「気になるあの人と一緒に仕事がしたい」でも立派な動機となりますし、より高くモチベーションが保てるはずですよね。
逆にどうしてもモチベーションが持てないようなら、BIM/CIMだけが建設コンサルタンツの仕事ではないので、モチベーションを持てる仕事を探した方がよいです。
ただ、これからはBIM/CIMぐらい熟さなくてはという時代になると思いますが…。
 

中級・上級の学習目標達成が課題

国土交通省BIM/CIMポータルサイトの研修コンテンツ内の「教育要領(案)」では、

  • 3次元CADの基本的な操作方法(従来:図面の閲覧 等)を習得する。
  • 『活用ガイドライン』を理解し、自身が担当する実務において活用項目を設定(活用業務・工事単位)することができる。
    また、授受する資料などを確認することができる。

ことを初級(当面の普及目標)としています。
 
これらは、まずビューアで3次元モデル を見てみること、用意されている研修コンテンツを利用することで概ねクリアできると考えます。
ただ漠然と見るだけではなく、さらっとでよいので何回も触れることにより学習効果が上がると考えます。
なお、研修コンテンツについては、随時、追加・改良することも重要と考えます。
 
問題は、

  • 3次元 CAD を利用した操作方法(従来:図面の修正 等)を習得する。
  • 『活用ガイドライン』に従い、自身が担当する実務を効率化することができる。

という中級と

  • 関連する複数の実務を含めて効率化することができる。
  • 適切な指揮、指導を行うことができる。

という上級の学習目標を達成するのは難しいということです。
特に上級の学習目標を達成することが建設コンサルタントにおける人材育成の課題です。

 

共通データ環境(CDE)を意識して

ISO19650とかCDEという言葉をよく耳にします。
CDEの要件を要約すると

  • 図面、モデル、ファイルなどデータが一意に識別できるようにしなさい
  • 国で定義した命名規則を使いなさい
  • 信頼性、正確性、用途が確信できるようにデータを分類しなさい
  • データの版管理をしなさい
  • 承認プロセスを管理しなさい

だと思います。
BIM/CIMの本質は「後工程に必要な情報伝達」だと言われています。
前述の中級・上級ではこれらを意識できる人材でなければなりません。
 
「目的のデータを探し出せない」「いろんなファイル名の付け方があるな~」「このデータは設計協議途中のもの?施工中のもの?」「え~と、最終1つ前のデータはどれ?」「もう発注担当者は承認していたよな~」といったことがないようにしなければなりません。

 

ワークショップの教育環境

教育(学習)方法には次の4つがあると言われます。

  • 自学自習
  • 講義
  • ワークショップ
  • On Job Time (OJT)

社内で初めてBIM/CIMを担うこととなったAさんで想像してみます。
 
まず「何から手を付ければよいのだろう」ということで、ネット検索します。
国土交通省BIM/CIMポータルサイトの研修コンテンツに行き当たり、自学自習します。
 
これだけでは「間違って認識していないかな」という不安があるので、BIM/CIMセミナーなどの講義を聴きます。
 
「そういうことか」と納得すれば、次は「とりあえず、あのソフトを使って3Dモデルを作ってみよう」となり、操作説明を受講し、トレーニング教材で自学自習します。
ここで実務を身近で教えてくれる人がいない、BIM/CIM関連業務がないといった状況なので、他社の集中研修に特別参加することにしました。
ワークショップであり、他者からの刺激を受け、BIM/CIMにより一層取り組む強い動機付けになりました。
 
その後AさんはBIM/CIMを社内拡大するため、自分の経験を基に、OJTだけではなく、なるべくワークショップを絡めた教育環境を就業時間内に確保できるよう経営陣を説得して、今では仲間とともに BIM/CIMに取り組んでいます。
しかし、上級の人材育成については「どうすべきなのか」悩んでいるこの頃です。
 
といった感じになるのかなと思います。
 
 

上級育成についての所感

  • 資質・モチベーションはある
  • 経営層の教育への理解がある

という状況で「CDEで複数の実務を効率化するための適切な指揮、指導を行うことができる」上級人材を育成することについて考えてみました。

 

オーナーをフォローするコンサル

目標は、Society5.0 社会を実現すること、フロントローディングなどでプロジェクトのトータルコストを削減することです。
それをプロジェクトごとにマネジメントするのが上級人材の役割であるとすると、活躍する立場はオーナー側(発注者あるいはPPP/PFI事業の場合には、委託された民間事業者・管理者など)であるべきです。
もしオーナー側に適任者がいなければ、それをフォローするのは発注者と契約を結んだ建設コンサルタントの技術者だと考えます。
ある大学の先生が「それをできるのは調整能力に優れているコンサルの人間」という言葉に触発もされました。

 

経営感覚も必要

建設コンサルタントは「土木建築工事の設計、監理、土木建築に関する調査、企画、立案、助言」を行うサービス業ですので、
専門的知識、調整能力を持った人材がよい技術者と言えますが、プロジェクトをマネジメントするためにはそれに加えて、可視化されたデータから状況を判断し、効率化するための適切な指揮、指導を行うための解析能力、さらには経営感覚といったスキルも必須と言えます。
 
ちょっと変な例かもしれませんが、ソフト間でIFCの相互流通が不完全な今現在
「設計者から施工者にデータが渡らない」問題は、単に両者の使用するソフトウェアが違うから起こっています。
仮に以下の2つの選択肢がある場合、現時点、プロジェクトマネージャーは効果を出すためにはAを選ぶのは当たり前で、IFCが整ったとしても、マネージャーはトータルで効果のあるソフトを選定するだけといった経営を重視したドライな感覚も必要と考えます。
 A:施工者は設計者が使っていたソフト、あるいは相性の良いソフトを使用する
 B:費用をかけて施工者が使っているソフト用のデータを作る

 

育つ環境がないのが問題

このスキルを持った人材はそんなに大量には必要ないとも思いますが、現時点ではオーナー側のプロジェクトマネージャーという立場を経験する環境(機会)が少ないのが、建設コンサルタントが上級人材を育成する上での問題であると考えます。
 

当面どのように育てるか?

将来的にはDXのためデータの整理方法をルール化することは重要です。
また、データの格納場所を確保することも必要ですが、それだけでは先の目標を達成する条件にはなり得ないと考えます。
 
一度に全てが理想的な姿でスタートできない以上、当面、選ばれたプロジェクトで BIM/CIMマネージャーを任命してOJTで経験を積み、成功例の蓄積で理想のマネジメントに近付けていくしかなく、マネージャーを補佐するものがマネージャーに育つといった方法が適していると考えます。
その過程では、各プロジェクトのマネー ジャーが集まってワークショップをし、自主学習、講義につなげるといった機会もあった方がよいです。
 
これをやろうとしているのが、DXデータセンターでの実証実験なのかもしれません。

 

例としての四面会議

マネージャーは、プロジェクトの当初からプロジェクトを計画し、随時更新していく必要があります。
成功例が蓄積していけば将来的にはAIが自動で判断してくれるという夢の世界が来るかもしれませんが、当面はやはり多くを人が担わなければなりませんし、技術の進歩が速すぎても、人が介在しなければならない場面は多く発現すると考えます。
 
そのような合意形成を必要とするプロジェクトの計画立案に有効な合意形成手法の一例として「四面会議」を紹介します。
四面会議という場は、結果として、参加者間の役割分担と包括的で相互連携的な計画案づくりを可能にします。
 
SWOT分析やブレーンストーミング+ KJ法により、役割毎に四面会議図を作成し、ディベートを行うのですが、面白いのは途中でプレーヤーの役割を交換したディベートを行うことです。
これにより当事者以外や外部者の視点からの各分担案の補強(当事者・内部者だけでは見落としがちの論理的・思考的回路の詰め)が可能になり、その分だけ総合的な実行可能性を高めることが期待できます。
 
実は私もまだ経験したことはないのですが、ぜひやってみたい合意形成手法です。
その際、4人の役割を想定すると以下のようになろうかと思います。

  • 役割 プレーヤーA:BIM/CIMマネージャー
  • 役割 プレーヤー B:設計担当
  • 役割 プレーヤー C:施工担当
  • 役割 プレーヤー D:市民

これは先の「各プロジェクトのマネージャーが集まってワークショップ」でも疑似体験として活用できると思います。

 
 

さいごに

今回、これまで携わってきた社内外での人材育成について振り返る機会をいただき感謝しています。
まだまだBIM/CIMに関するベクトルは人によりまちまちで、 BIM/CIMの本質『後工程に必要な情報伝達』実現にはなかなかの難しさを感じていますが、そのベクトルを収束させていくためにも上級人材育成は非常に大事だと改めて感じました。
 
先般、ある大学の大学院生を対象に
「BIM/CIMについて知ろう」というテーマでお話しさせていただきました。
コンサル志望も多く、「今できることは何ですか?」といった質問もいただき、彼ら彼女らが、将来、BIM/CIMをけん引してくれる姿を想像し、楽しみになりました。
 
 
参考資料
国土交通省BIM/CIMポータルサイト
http://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/spec_cons_new.html
四面会議システム解説
https://www.jcca.or.jp/files/achievement/riim_report/vol_06/002report6.pdf

 
 
 

復建調査設計株式会社 DX推進センター BIM/CIM推進室 室長
亀田 雄二

 
 
【出典】


建設ITガイド 2023
特集1 建設DX、BIM/CIM
建設ITガイド2023


 



長野県における信州BIM/CIM推進協議会の取り組みについて

はじめに

BIM/CIMとは、「測量・調査・設計」、「施工(着手前)」、「施工(完成時)」、「維持・管理」の各段階で3次元モデルを導入し、各段階における情報を充実させ、活用を図るとともに、3次元化することで情報共有を容易にし、品質確保と業務の効率化・高度化を目指すものです。
国が示す令和5年の原則適用に向け、建設業界だけでなく地方自治体においても、知識の習得や機器の配備、体制の構築など対応が求められているところであります。
 
今回は、長野県建設部と各建設業界団体、学校関係者などで構成される「信州 BIM/CIM推進協議会」について、ご紹介する機会をいただきましたので、協議会のこれまでの取り組みと令和4年度(11月時点)の活動などについて、寄稿させていただきます。
 
 

信州BIM/CIM推進協議会とは

「信州BIM/CIM推進協議会」は、「民・学・官」の各組織が協力してBIM/CIMについて学び、知識を共有し、技術力の向上を目指すとともに、若手技術者の育成を図ることで、県内建設産業の持続的な発展に資することを目的としております。
 
本協議会は令和元年に発足し、令和3年度までは主に建設コンサルタントを中心として、年数回程度BIM/CIMに関する講習会や研修を開催し、業界全体のスキルアップおよび若手業界関係者の育成に取り組んできました。
 
令和3年度末に参加団体が追加加入してからは、長野県内の建設業に関わる主だった業界団体が揃ったことから、協議会内に各テーマ別の部会を設置し、基準についての勉強や、事例の共有など取り組みを増やし、活動を活発化させております(表-1)。

表-1 BIM/CIM推進協議会体制図
表-1 BIM/CIM推進協議会体制図

 
 

令和3年度までの取り組みについて

令和元年度(設立)

令和元年の発足当初は、外部から講師を招いてBIM/CIMに関する講演を行っていただいたり、6日間に及ぶハンズオン研修会(官・民参加)を開催して、若手技術者の3DCADの操作習熟を図りました。
 

令和2年度

令和2年度からは、国の基準に準じた「BIM/CIM活用業務実施要領(案)(長野県建設部:令和2年4月1日適用)」を発出し、長野県発注業務において、モデル事業として取り組みを開始しました。
 
年度末には、協議会として「成果発表会」を開催し、各建設コンサルタント会社が実際に取り組んだ事例の共有と、実務担当者同士の意見交換を行いました。
この取り組みが盛況であったことから、協議会の中に若手部会(実務者会議)を組織し、実務者同士が交流できる体制を作ることとなりました。

また、このほかにも発注者側で納品成果のチェックなどに対応可能な機器や環境の整備に取り組み、「自治体ネットワークの三層分離」に基づく行政環境の見直しを踏まえ、各部署に個別のインターネット回線を新設し、スタンドアロンで用いる高性能パソコンを配備するなど、発注者側での体制構築を行いました。
 

令和3年度

令和3年度は、令和2年度に引き続き発注者側での体制整備を進めるとともに、県のBIM/CIMモデル事業を強く推進し、見込みを含む取組数が約100 件に上りました(表-2)。

表-2 R03_BIM/CIM取り組み数
表-2 R03_BIM/CIM取り組み数

 
また、協議会の組織改正に先立ち、実務者会議(若手部会)を開催しました。
 
広く参加者を募集した第2回実務者会 議( Web)では、各参加者が感じるBIM/ CIMに関する課題や疑問点について事前アンケート形式で収集し、県の担当が答えられる範囲で個別に回答するほか、会議の中で取り組み事例の紹介を行ったところ、100名を超える多くの方が参加し、好評価をいただくことができました(写真-1)。

写真-1 R03_第2回実務者会議
写真-1 R03_第2回実務者会議

 

令和4年度の取り組み

令和4年度からは、「各部会の活動」が増えたほか、定期的にBIM/CIMや推進協議会に関する話題の共有や話し合いを行 う「信州BIM/CIMトークライブ」、「第3回実務者会議」、「BIM/CIM活用現場見学会」、「県職員向け3DCAD操作研修」など、これまでと比べて多くのイベントを企画・実施しておりますので、各取り組みの具体的な様子について、ご紹介いたします。
 

信州BIM/CIMトークライブ

信州BIM/CIMトークライブは、2週間に1度開催するWeb会議形式の打合せを兼ねた意見交換の場です。
 
当初は、開催頻度が少なく規模の大きい実務者会議や部会に代わり、県と協議会の担当者数名が、次のイベントや協議会の活動についてWeb上で打合せを行うものでしたが、BIM/CIMに関して実用的な意見交換や情報共有が行われていたことから、「どうせならもっといろんな人にも参加してもらって、話題を共有しませんか」との参加者のアイデアで、協議会の参加者に広く案内を送付し開催するようになりました。
 
開催スタイルは「できるだけ参加者と主催者の負担を少なく、希望者の都合がつくときに参加できる緩い感じで」を基本とし、事前の出欠を取らない会議形式としております。
 
メインMCは筆者が務めており、後述する部会や推進委員のメンバーとの意見交換を中心に、既に開催回数が4月から14 回を数えております( R4.11月末時点)(写真-2、表-3)。

写真-2 R04_第5回トークライブ
写真-2 R04_第5回トークライブ
表-3 信州BIM/CIM推進協議会_活動履歴
表-3 信州BIM/CIM推進協議会_活動履歴

 
開催時間はおおむね90 分程度であり、毎回内容をレコーディングの上、議事録と合わせて協議会関係者に共有しております。
 
長野県においては、令和4年7月から NDW(ながのデジタルワークプレイス)として業務体制の改革が行われ、職員の業務データを全てクラウド環境に移し、全職員にMicrosoft 365が適用されました。
これにより「TeamsによるWeb 会議の開催」や「チャット機能による協議会関係者とのグループでのやりとり」、「Outlookのスケジュール機能によるトークライブリンクや資料の共有」など、DXによる各種作業の簡略化が図られ、コロナ禍においても活発に協議会の活動を進める一助となっております。
 
9月からは、協議会で情報共有システム「basepage(川田テクノシステム(株)」を利用しており、クラウド上でトークライブや実務者会議、各部会などの動画や資料の共有を行っております。
「basepage 」は、BIM/CIMに対応したクラウドサービスであるため、今後、実際に作成した BIM/CIM 3次元モデルの事例共有に活用することを検討しております。
 

各部会とBIM/CIM推進委員

前述のとおり、信州BIM/CIM推進協議会では、「測量・設計部会」、「地質部会」、「建設部会」、「データ活用部会」の4つの部会を組織し、各部会において、それぞれのテーマに関する事例の共有や課題の検証を行うこととしております。
 
具体的には、「測量・設計部会」はBIM/CIMに関する取り組みの上流に位置付けられる「測量」や「設計」について、事例や課題の収集・共有を目的とし、「地質部会」は地質調査に伴う3次元モデルの作成などについて、事例や課題の収集・共有を行っております。
 
「建設部会」は、まだBIM/CIMを活用した工事の実施事例がほとんどないため、国の工事や県のICT施工工事からBIM/CIMに関連性の高い取り組みを共有し、BIM/ CIM工事の実施に向けた基準の周知・学習など、実際の工事発注に備えて情報の共有を行っています。
 
「データ活用部会」については、県を主体としたBIM/CIM関連データの取り扱いに関する話題を担当しており、各部会などから共有される事例や課題を基に、県事業における3次元モデルデータの仕様や成果データの取り扱いについて、検討することを目的としております。
 
各部会の構成員については、協議会の各参加団体から横断的に人選しておりますが、それぞれはBIM/CIMに関して詳しいというわけではなく、知識や経験に大きなばらつきがあります。
そのため、部会のみでは活動が停滞してしまう可能性を考慮し、各部会の活動や部会同士の連携をサポートする立場として、「BIM/CIM推進委員」を設けております。
 
BIM/CIM推進委員についても、各参加団体の協会員で構成されていることには変わりませんが、各協会の中でもBIM/CIMに率先して取り組んでいる若い実務者を中心に人材を集めており、協議会のイベント企画や、国や外部でのBIM/CIMに関する話題の共有など、協議会活動に積極的に協力いただける人たちで構成されております。
 
現在の信州BIM/CIM推進協議会の活動は、主にBIM/CIM推進委員のアイデアや協力により成り立っており、今後の協議会においても欠かせない存在となっております(図-1)。

図-1 BIM/CIM推進委員・実務者会議イメージ
図-1 BIM/CIM推進委員・実務者会議イメージ

 
また、協議会におけるBIM/CIM推進委員のほかに、県建設部においても「BIM/ CIM推進員」を設置しております。
 
県BIM/CIM推進員は、県庁と建設部の各現地機関に勤務している技術系職員で構成され、BIM/CIM関連の情報の窓口として定めているものです。
各現地機関におけるBIM/CIMの取り組みの先駆者となるほか、事務所内におけるBIM/CIM関連情報の指導を行える立場となることを期待し、各職員の任意で担っていただいております。
 
現状では、まだ職員や現地機関ごとの温度差が大きく、県職員の知識の習得や技術力向上が課題となっておりますが、今後、県BIM/CIM推進員を軸として、職員全体へBIM/CIMに関する理解が進むよう取り組んでいく予定です。
 

第3回実務者会議

令和4年7月14日に、全体として3回目になる実務者会議を開催しました。
第3回の実務者会議は、全てWeb 参加の会議形式とし、下記のとおり4つの内容を軸として開催しました。
①国や県の状況の共有(図-2)
②県内事例の紹介
③テーマ別意見交換
④事前アンケートと回答の共有

図-2 R04_BIM/CIM取り組み数
図-2 R04_BIM/CIM取り組み数

 
前回の実務者会議の教訓として、「参加者が多くなり、1会場での意見交換では、話題も発言者も限定的になる」ということを踏まえ、会議の途中でWeb 上の会議室を、テーマ別に「施工CIM」、「地質CIM」、「設計、基準関係」の3つに分散させるよう工夫しました(図-3)。

図-3 R04_第3回実務者会議の流れ
図-3 R04_第3回実務者会議の流れ

 
結果、全体として120名以上の参加に対し、30~50人ごとに分散して意見交換を行うことができました。
 
また、Web 会議の各部屋の様子についてもレコーディングし、後から全体と合わせて各部屋の会議状況を見返すことができるようにして、関係者に共有しました。
 

BIM/CIM活用現場見学会

令和4年11月15日に、国土交通省関東地方整備局長野国道事務所協力のもと、 BIM/CIM活用工事現場の見学会を実施いたしました。
 
関東地方整備局長野国道事務所は国土交通省が定めるi-Constructionサポート事務所に位置付けられており、信州BIM/ CIM推進協議会の見学会要望についても、快く引き受けていただきました。
 
長野県では、まだBIM/CIMデータ作成から工事活用に至った現場がなく、今回、上田市内の「国道18 号上田バイパス神川橋上部工事(施工:清水建設(株))」の現場について、BIM/CIM活用を試行する現場として見学いたしました(写真-3)。

写真-3 R04_BIM CIM現場見学会
写真-3 R04_BIM CIM現場見学会

 
見学させていただいた感想として、県発注工事とは規模が桁違いだったこともあり、県としてすぐに同様の取り組みを普及させることは難しいように思えましたが、具体的な取り組み事例としてとても参考になりました。
 

BIM/CIM関連ソフト使用状況アンケート

各部会の活動を開始し、建設業界を横 断的に意見交換するようになって出てきた業者意見の一つに「どんなソフトウエアを使えばよいのか分からない」というものがありました。
 
従来の2次元のCAD利用では、最終的に共通拡張子である「SXFファイル形 式(P21、SFC)」に変換するため、利用ソフトによる差はありませんでしたが、 3DCADソフトでは「地形、線形、土工形状モデル」の共通データ形式「J-landxml」に、作成ソフトによる互換性の課題があり、また、「その他のモデル」については、各3DCADソフトの「オリジナルデータ形式」もしくは、Excel・PDFなど「CAD以外のデータ形式」となってしまうことから、業者間で利用している3DCADソフトに互換性がないと、業者が切り替わる際に既存のデータが活用できなくなってしまう恐れがあります。
 
このような3DCADソフトの互換性に関する問題は、新技術普及の過渡期に起こりうることですが、信州BIM/CIM推進協議会においても、これからBIM/CIMに取り組む業者としては「どんなソフトを導入すべきか」判断材料として関心が高く、県としても建設部で運用している3DCADソフトと他社ソフトとの互換性について認識している必要があり、傾向を把握したい内容でした。
 
そこで、協議会の活動として業界向けに 3DCADなどのBIM/CIM関連ソフトについて、利用状況のアンケートを実施することといたしました。
 
対象者が多いため、回答は任意としておりますが、Webのアンケートフォームを作成し現在回答を収集しております(R4.11月末現在)(図-4)。

図-4 R04_関連ソフト使用状況アンケート
図-4 R04_関連ソフト使用状況アンケート

 
アンケート結果は、協議会の中で共有し、今後各部会のデータ互換に関する検証や、 3DCADソフトの導入を検討している業者の判断材料の一つとして活用を図る予定です。
 

県職員向け3DCAD操作研修

県のBIM/CIMモデル事業が増えていることに伴い、協議会の中で「県担当者によってBIM/CIMに関する知識レベルに大きな差があり、対応に苦慮している」という意見が目立つようになってきました。
 
実務者会議や信州BIM/CIMトークライブによる情報発信は、業者からは好評いただいておりますが、県職員側では「業務多忙」や「3Dに対する職員の苦手意識」が障害となってなかなか浸透していない状況です。
 
これを踏まえ、まずは実務で関わる 3DCADソフトについて、職員自ら3Dデータに触れられるだけのスキルを身に付けることを目標とし、3DCADソフト操作研修を計画しました。
 
研修ソフトは、県の契約している 3DCADソフト「V-nasClair」とし、対面式の実地研修を基本としつつ、昨今の新型コロナウイルス感染症対策などを踏まえ、Web受講併用としました。
また、 Web受講の内容については録画し、アーカイブとして職員に共有する予定です。
 
開催は12月を予定しておりますが、申し込み時点で合計160 名近い職員の受講を予定しております。
 

今後の課題

これまでは、BIM/CIMに関して県内の各業界団体と「①情報を共有」し、「②意見を交換」し、「③課題を整理」できる「④体制づくり」のため、取り組んでまいりました。
 
協議会の体制が構築できた今、実際に 協議会の枠組みを「⑤課題解決に活かす」ことと「⑥継続させる」ことが大きな課題だと考えております。
 
これまでご紹介した取り組みのほとんどは、行政的な企画以上に、協議会に参加している業者の方々の熱意とご協力により成り立っている部分が大きく、筆者を含めた担当者の異動などにより、一気に取り組みが減速してしまうことがないよう、対策を講じる必要があります。
 
 

おわりに

信州BIM/CIM推進協議会は、もうすぐ令和元年の発足から5年を迎えようとしております。
 
国土交通省が令和2年(2020 年)に「令和5年(2023年)のBIM/CIM原則適用」を打ち出してから、いよいよ原則適用の年を迎えようとしておりますが、国の方針に対して地方自治体としてどこまで建設業界の BIM/CIM推進に寄与できるか、協議会のさらなる取り組みについて試行錯誤を続けてまいりたいと思います。
 
最後に、信州BIM/CIM推進協議会の活動にご尽力いただいた全て方々に感謝の意を表するとともに、引き続き県建設業界の発展に向けて取り組んでいきたいと思います。
 
 

長野県 建設部 建設政策課 技術管理室 基準指導班 主任
黒岩 楠央

 
 
【出典】


建設ITガイド 2023
特集1 建設DX、BIM/CIM
建設ITガイド2023


 



近畿地方整備局におけるBIM/CIMの取り組み-令和5年度BIM/CIM原則適用に向けた人材育成について

はじめに

国土交通省では、i-Constructionの取り組みを中核に、データとデジタル技術を活用したインフラ分野のDXの取り組みを進めています。
 
その一環として建設プロセス全体に携わる関係者間で、3次元モデルによるデータ連携を行うことにより、建設生産・管理システムにおける品質確保と受発注者双方の業務効率化・高度化を図るBIM/CIMに取り組んでおり、2023年度より小規模を除く全ての公共工事におけるBIM/CIMの原則適用の目標が設定されています。
 
BIM/CIMの原則適用に向けて、受発注者双方における環境整備の取り組みが進められているところです。
 
BIM/CIMを推進していくためには、環境整備と合わせて、データの重要性を理解し、デジタル技術を活用できる人材の育成が重要となります。
 
今回は近畿地方整備局におけるBIM/CIM活用に向けた人材育成の取り組みについて紹介します。
 
 

人材育成の取り組み

近畿地方整備局では2020 年に「近畿地方整備局インフラ DX 推進本部会議」を設置し、インフラ分野のDXの推進に取り組んでいます。
 
このうちインフラ分野のDXに関する人材育成としては人材育成支援部会を設置し、ICT・無人化施工などと合わせて BIM/CIMに関する各種研修や勉強会などの開催、情報発信を行い人材育成に努めています(図-1)。

図-1 近畿地方整備局インフラ DX推進本部会議の構成
図-1 近畿地方整備局インフラ DX推進本部会議の構成

 

BIM/CIM研修

BIM/CIMによる建設現場の生産性向上について理解を深めるとともに、3次元 CADソフトの基本操作、業務および工事での活用に関する知識を習得することを目的として2021年度から整備局職員、地方自治体職員を対象として実施し、2年間で約350名が研修を受講しています(写真-1)。
 
研修は後述する近畿インフラDX推進センターに設置している高性能PCを用いて 3次元CADソフトを操作し、実際に監督・検査・納品などの各場面での3次元モデルの活用方法を実習形式で習得しました(一部WEB講義も実施)。

写真-1 BIM CIM研修実施状況
写真-1 BIM CIM研修実施状況

 

BIM/CIM施工研修

BIM/CIM研修は整備局、地方自治体などの発注者を対象とした研修でしたが、来年度からのBIM/CIM原則適用に向けて、受注者側の人材育成も必要となることから、施工者、設計者、発注者を対象とした研修を今年度より新たに実施しました。
 
研修では設計段階で作成した設計成果をICT施工に活用するため、3次元モデルの編集方法を習得するとともに、施工、設計など各立場でのBIM/CIMの展望や課題について議論を行い認識の共有に取り組みました。
 

BIM/CIM説明会

BIM/CIM研修は実際の業務において BIM/CIMを活用する職員を対象に研修を実施していますが、2023年度からの原則実施に向けて、広く職員にBIM/CIMに関する取り組みを浸透させる必要があるため、BIM/CIMの施策概要や、3次元CADソフトの基本操作方法を講習する BIM/CIM説明会を開催しています。
昨年度は整備局や地方自治体の職員約 330名、今年度は整備局職員や発注者支援業務の受注者など約350名が聴講しています。
 

豊岡河川国道事務所 BIM/CIMに関する勉強会

i-Constructionモデル事務所となっている豊岡河川国道事務所ではBIM/CIMの普及を促進するため、2019年度より毎年、 BIM/CIMに関する勉強会を開催しています(写真-2)。

写真-2 勉強会開催状況
写真-2 勉強会開催状況

勉強会では事務所近隣の地方自治体職員や地元企業(但馬地方の建設業、測量設計業)を対象に豊岡河川国道事務所におけるBIM/CIM導入の実施事例や、3次元 CADソフト操作の実演、現場見学などを行っています。
 
 

情報発信の取り組み

近畿地方整備局インフラ分野のDXに関する取り組みを情報発信や体験による、整備局をはじめ産官学におけるBIM/CIM活用に向けた人材育成を目的として、インフラDXに関する各種施設を整備しています。
 
各施設とも、随時見学者を受け付けていますので、機会がありましたら、ぜひ体験してみてください。
 
また、シンポジウムや講演会などの機会において、BIM/CIMへの取り組みを発信しています。
 

近畿インフラDX推進センター

(所在地:枚方市山田池町11-1)
2021年4月1日に、インフラ分野のDXの推進に必要不可欠な官民の人材育成や最新技術の情報発信を行う施設として、近畿技術事務所内に近畿インフラDX推進センターを設置しました。
WEB会議ルームや建設機械のオペレーションルームと合わせて、3次元CADソフトを備えた高性能PCを配備した研修ルームなどの整備によりBIM/CIMに限らず、ICT施工の無人化施工に関する研修や、体験型の見学に対応しています(図-2)。

図-2 近畿インフラDX推進センターの概要
図-2 近畿インフラDX推進センターの概要

 

近畿地方整備局DXルーム

(所在地:大阪市中央区大手前3-1-41)
近畿地方整備局は昨年11月に新たに建設された大手前合同庁舎に移転しました。
大手前合同庁舎には来庁者がDXに触れていただけるDXルームを建設段階から設置し、VRや大型モニターを活用したDX体験を行っていただけます。
 

淀川大堰閘門インフォメーションセンター

(所在地:大阪市北区長柄東3-3-25)
淀川大堰では2025年の大阪・関西万博の開催に向けて、淀川での舟運を活用するため、淀川大堰閘門の整備を進めています。

淀川大堰閘門の整備では、厳しい工程や狭隘な現場条件に対して、工事工程監理の高度化や品質の向上を目指して、BIM/CIMを全面的に取り入れています(図-3)。

図-3 淀川大堰閘門の概要
図-3 淀川大堰閘門の概要

 
この取り組みを幅広く建設業界や建設系の学生などへ情報発信する場として、昨年12月、現地にインフォメーションセンターを設置しました。
 
インフォメーションセンターではAR技術を活用し、実際の施工現場と3次元モデルを合成(図-4)させることにより、3 次元モデルの活用方法を視覚的に体験いただけます。

図-4 淀川大堰閘門におけるAR技術の活用事例
図-4 淀川大堰閘門におけるAR技術の活用事例

 

インフラDXシンポジウム

昨年7月6日に開催されましたインフラ DXシンポジウム(日刊建設工業新聞社(、一社)近畿建設協会主催、近畿地方整備局後援)において、約750 名(オンライン参加含む)参加のもと、地域の建設業界の皆さまとBIM/CIM施工への挑戦について意見を交わし、近畿地方整備局における取り組みを紹介するとともに、BIM/CIM活用に向けた課題を共有しました(写真-3)。

写真-3 インフラDXシンポジウムの開催状況
写真-3 インフラDXシンポジウムの開催状況

 
 

おわりに

インフラ分野のDX は、2022 年度を「挑戦の年」に位置付け、官民で果敢な取り組みが進められています。
 
BIM/CIMに関しても、来年度からの原則適用に向けて、人材育成に限らず、産学官の各場面で環境整備の取り組みが進められています。
 
近畿地方整備局においても、今回紹介した人材育成の取り組み以外にも、管内の各事業におけるBIM/CIM活用推進や関連基準類の改定に向けた検討などに取り組んでいます。
 
引き続き、建設生産・管理システム全体の生産性向上のため、BIM/CIM活用に向けた取り組みを推進していきます。
 
 

国土交通省 近畿地方整備局 技術管理課

 
 
【出典】


建設ITガイド 2023
特集1 建設DX、BIM/CIM
建設ITガイド2023


 



関東地方整備局における BIM/CIMの取り組み

はじめに

関東地方整備局では、令和5年度の小規模を除く全ての公共工事についてBIM/ CIM原則適用に向けて、段階的に適用を拡大しているところであるが、原則適用に向けた取り組みについて2点紹介する。
 
 

「関東BIM/CIM 活用(3次元データの作成・活用)ロードマップ」の概要

関東地方整備局では、インフラ分野の DXを推進するため、BIM/CIMの活用による建設現場の生産性向上や働き方改革の促進、3次元データの維持管理への活用などの実現に向け、BIM/CIM活用ロードマップを策定し、令和3年4月に「関東 BIM/CIM活用ロードマップ」を策定したところであるが、BIM/CIM活用対象事業などでは、事業の初期段階からBIM/CIMを活用することで、受発注者双方の業務効率化・高度化が図られることから、事業の上流に位置する測量・地質調査段 階から3次元データの作成・活用を行うことを原則とした「関東BIM/CIM活用(3次元データの作成・活用)ロードマップ」を令和4年6月に公表し、測量・地質調査段階から3次元データを作成・活用を行うこと を位置付けたところである(図-1)。

図-1 関東BIM/CIM活用(3次元データの作成・活用)ロードマップ
図-1 関東BIM/CIM活用(3次元データの作成・活用)ロードマップ

 
「関東BIM/CIM活用(3次元データの作成・活用)ロードマップ」のポイントは次のとおりである。
①河川事業、道路事業のうち、BIM/ CIM活用の効果が高い場合は、事業の初期段階に位置する測量・地質調査段階から3次元データの作成・活用を行うことを原則としている。
②3次元データを作成・活用する業務・工事は、BIM/CIM活用の対象としている。
③測量・地質調査、予備・詳細設計、施工、維持・管理の事業段階ごとにBIM/CIM活用事例や活用効果、活用に必要な要領などを分かりやすく整理している。
 
以上のように、測量・地質調査段階からBIM/CIMモデルを導入し、その後の設計・施工・維持管理の各段階においても、情報を充実させながら活用を図っていくこととしている。
 
 

「3次元出来形計測技術を用いた出来形管理の活用手引き(案)」の概要

情報通信技術(ICT技術)の活用により、土工については、マシンコントロールまたはマシンガイダンスを有するICT建設機械による施工やICT計測技術を用いた3次元出来形管理が一般的になっており建設現場の生産性向上に大きな成果を上げてきている。
国土交通省では、ICT技術の全面的な活用のため、令和4年3月に「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)」(以下、要領(案 )を改定したところであり、この要領(案)を用い、施工段階においてBIM/ CIMによる3次元データを効果的に活用することで、受発注者が建設現場の生産性向上を図ることが求められている。

3次元計測技術を用いた出来形管理の活用 手引き(案)表紙
3次元計測技術を用いた出来形管理の活用 手引き(案)表紙

 
関東地方整備局では、3次元データを効果的に活用するための資料として、この要領(案)を分かりやすく解説した「3次元計測技術を用いた出来形管理の活用手引き(案)」(以下、手引き(案 )を作成したので本項において紹介する。
 
要領(案)は、第1編を総則とし、第2編から第14編まで各工種ごとに3 次元計測技術を用いた出来形計測および出来形管理についてとりまとめられたものであるが、手引き(案)は、発注者および施工業者が要領を活用し、建設現場の生産性向上が図られることを目的として、以下の構成で要領(案)を要約したものである。
手引き(案)の目次を図-2-1に示す。
 

図-2-1 3次元計測技術を用いた出来形管理の活用手引き(案)第1編 共通編より抜粋
図-2-1 3次元計測技術を用いた出来形管理の活用手引き(案)
第1編 共通編より抜粋

第1編では、共通編として、用語の解説、 3次元計測技術を用いた出来形管理の概要のほか、3次元計測技術の概要(図-2-2)として本手引き(案)で対象としている3元計測技術を、工種別に示し、特徴・留意事項などについてとりまとめた。
また、3次元計測技術に求められる精度についても工種別に解説した。

図-2-2 3次元計測技術を用いた出来形管理の活用手引き(案)第1編 共通編より抜粋
図-2-2 3次元計測技術を用いた出来形管理の活用手引き(案)
第1編 共通編より抜粋

 
第2編から第14編は出来形管理編とし、 3次元計測技術を用いた出来形管理方法について、工種ごとに現場条件による計測手法の選択や計測方法、実施フロー、 3次元計測実施の効果や注意点を図解で分かりやすく解説し、現場技術者が3次元出来形計測を実施する際の判断や留意事項を確認する資料として、活用できるものとしている。
 
一例として第4編路面切削工編の出来形管理の概要を示す(図-2-3)。

図-2-3 3次元計測技術を用いた出来形管理の活用手引き(案)第4編 路面切削工編より抜粋
図-2-3 3次元計測技術を用いた出来形管理の活用手引き(案)
第4編 路面切削工編より抜粋

 
路面切削工での出来形管理では、従来、基準高・厚さ・幅を検尺テープなどにより計測して出来形管理を実施していたが、ICT活用工事により3次元計測技術を用いた面管理を実施することで、施工現場の省力化が期待できるほか、出来形管理帳票作成ソフトウエアによる出来高管理資料作成の短縮、歩道や側道から交通規制が不要となり安全性を確保することが可能となる。
さらに、施工履歴データによる出来形管理では、計測作業の大幅な削減と施工サイクルの効率化を図ることができ、平坦性などのデータは維持管理に必要なデータとして引き継ぎが可能となるなどの解説を行っている。
 
本手引き(案)により、3次元データが出来形管理に活用され、建設現場の生産性向上に寄与することを期待する。
 
 

おわりに

関東地方整備局では、受発注者の働き方改革と、建設現場の生産性向上に向け、引き続きBIM/CIM活用に関する取り組みを推進していく。
 
 

国土交通省 関東地方整備局 企画部 技術管理課

 
 
【出典】


建設ITガイド 2023
特集1 建設DX、BIM/CIM
建設ITガイド2023


 



 


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