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2024年8月5日
なぜBIM/CIMの普及が進展しないのか建築物・構造物(以下、建築物など)の施工後の所有者は、施主と、分譲所有者の集合体という2つの形態が存在する。 BIM/CIM利活用の効果BIM/CIMの利活用に関して、「つくる段階」での短期的かつスポット的な効果としての、建築物などの「見える化」により、関係者間での合意形成が容易となり、設計の効率化が図られることは認識されている。 (1)建築物などの効率的・効果的な{自動・自律的}運営・運用・維持管理長期にわたる総合的な運用コスト削減が、デジタル技術とデジタル機器の付加的な導入によって実現される。
(2)資産価値の向上「アセット・マネジメント(AM:AssetManagement)」、すなわちDCF(Discounted Cash Flow)に関する「資産価値創造のエコシステムの形成・創成」の実現である。 今後の展開国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)において1997年に合意された「京都議定書」は、2015年の「パリ協定」でその具体化が進められ地球温暖化に対する関心が高まり、同年9月に開催された国連総会でのSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の17の国際目標(169の達成基準と232の指標)へと進展することになった。 (1)「新規に必要とするモノ」を「過去に製造したモノ」で代替するリサイクルあるいはサーキュラーエコノミーと呼ばれる資源や部品の再利用・再生利用である。 (2)「新規に必要とするモノ」をデジタル&シェアリングエコノミーによって削減する広義のデジタル化の導入によって、人類は排他的な物理資源の専用利用ではなく、物理資源の共有を行わなかった複数のサービス提供者間で物理資源を共用利用するシェアリングエコノミーを編み出した。 むすびスマートなビル・キャンパス、そしてシティーの実現には、対象物の正確なデジタルツインが必須であり前提となる。 東京大学/デジタル庁
江崎 浩
株式会社竹中工務店/IPA DADC
粕谷 貴司
株式会社日建設計/IPA DADC
中村 公洋
株式会社三菱総合研究所
長谷川 専
株式会社三菱地所設計
石橋 紀幸
株式会社シムックスイニシアティブ
中島 高英
建設ITガイド 2024 特集2 建築BIM ![]() |
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2024年7月29日
はじめに一般社団法人buildingSMART Japan(以下、bSJ)は、建設業界におけるデータ流通・相互運用の促進を目的として、国際組織buildingSMART International(bSI)の日本支部として1996年に設立され、BIMデータの国際標準規格であるIFC(Industry Foundation Classes)や、BIM推進に関連する標準化活動を、国際標準化機構(ISO)、欧州標準化委員会(CEN)などと協調しながら推進してきている。 bSI Awards 2023bSIでは、IFC、BCF(BIM Collaboration Format)、IDS(Information Delivery Specification)などbuildingSMARTが策定している標準を活用したopenBIMの普及促進を目的に、2014年からbuildingSMART Awardを年一回実施している。
各部門優秀賞9チーム
ISO19650に基づくBIMプロジェクト推進bSI Awardsにおける各チームのプロジェクト推進は、ISO19650に準拠して行うことが基本となる。
ISO19650実現におけるopenBIMの役割ISO19650で規定されているBIMプロ ジェクト推進方法論に従い、各プロジェクトに固有のBIM活用ユースケースを選択してBEPを策定し、BIM推進の効果を最大限に発揮させるのが、BIMマネジメントにおいて重要な要素である。
共通データ環境(CDE)におけるopenBIMの役割共通データ環境CDEは、ISO19650においてBIMライフサイクル全体における情報管理の要とされている概念である。 openBIMとCDEの4つのステータスCDEに格納される情報には①「作業中」、②「共有」、③「公開」、④「アーカイブ」の4つのステータス(状態)が定義されている。 little bim/BIG BIM(リトルBIMとビッグBIM)「little bim」は、BIMプロセスが一つの会社または専門部署(タスクチーム)に限られ、自社・自部署特有の設計プロセスのニーズに合わせてカスタマイズされた手法・ソリューションを活用するBIMプロセスを指す。 Single Source of Truthの実現SSOT(Single Source of Truth:信頼できる唯一の情報源)とは、組織内の全員が同じデータに基づいてビジネスの意思決定を行うことを保証するため、情報の一貫性と正確性を確保する慣習のことを意味する用語である。
重ね合わせモデルの手法についてCDEの「共有」以降のBIMプロセスにおいては、重ね合わせモデル(Federated model)作成をどのように行うかが、BIM総合調整(BIM Coordination)を成功に導く重要な鍵となる。 建築確認におけるIFC活用日本国内では国土交通省が公開した「建築BIMの将来像と工程表(増補版)」において、2025年から「BIMによる確認申請」が位置付けられ、まず「BIM図面審査」が開始され、その後「BIMデータ審査」に発展していく。 海外の建築確認へのIFCとAIの活用bSIサミット会議においても、世界各国のIFC形式のBIMデータを審査対象とする建築確認プロセスへの取り組みが報告されてきている。 シンガポールCORENET X2000年代からBIMの建築確認への活用を行ってきているシンガポールにおいては、2023年中にこれまでの建築確認BIMプラットフォームCORENETを、CORENET Xとして更新し、openBIMに基づく建築確認プロセスに取り組んでいる状況である。
今後の展望本稿では、BIM標準化団体bSIのサミット国際会議における、ISO19650活用事例、建築確認へのIFC活用の動向を紹介し、openBIMがどのようにISO19650と連携しているかについて述べた。 参照情報: 一般社団法人buildingSMART Japan理事(技術フェロー)鹿島建設株式会社
足達 嘉信 博士(工学)
建設ITガイド 2024 特集2 建築BIM ![]() |
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2024年7月22日
はじめに5年に一度の点検業務も2024年度で3巡目に突入する。 維持管理の方向性=新技術の活用国土交通省では、これからの維持管理について「定期点検における新技術活用の方向性(案)」を2020年に提示している。
新技術の現在地もちろん1巡目、2巡目の間にまったくの技術革新がなかったわけではない。 現在の課題を考えるここで、今までの点検現場に立ち返り、長年点検の現場でその苦労を味わってきた一人としての視点から、どのような課題があったのかを検証してみたい。
熟練でも難しい打音調査このような状況下で、まず現場で特に注意を払われてきた印象が強い作業は、打音調査である。
損傷図作成における落とし穴また現場から帰ってきてからの資料整理も大変な苦労を要する作業だ。 維持管理の未来はこれらの現状に加え、実際にはこれから間違いなく到来する人手不足や点検施設量の増加に伴い、作業面と内業の負担軽減をもたらす新技術の登場が必要なことは明白だ。
新技術の積極的な導入は不可欠新技術はいまだ発展途上にある。 株式会社アイ・エス・ピー 代表取締役
波場 貴士
建設ITガイド 2024 特集1 建設DX、BIM/CIM ![]() |
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2024年7月17日
第3次AIブーム現在は、1956年に開催されたダートマス会議で「人工知能(AI)」という言葉が登場して以来3回目のAIブームと言われています。 さらに、2022年には、画像や対話を生成するAIが登場し、今なお大きな話題となっています。 画像認識第3次AIブームの端緒となったのが「畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Networks)」と呼ばれる深層学習の方法を用いた画像認識です。 打音検査・異常検出AIで分類できるのは画像だけではありません。 AIはどこを見ているのかAIはブラックボックスと言われますが、ある程度は、AIの根拠を示すことができます。 大規模言語モデルヒートマップのようにAIが着目している領域の情報を利用するのが、「アテンション(注意機構、Attention)」と呼ばれる方法です。 デジタルトランスフォーメーションに向けてトランスフォーマーは、言語のみならず画像にも適用可能です。 文献(1)Olga Russakovsky,Jia Deng,Hao Su,Jonathan Krause,Sanjeev Satheesh,Sean Ma,Zhiheng Huang,Andrej Karpathy,Aditya Khosla,Michael Bernstein,Alexander C.Berg,Li Fei-Fei:Image Net Large Scale Visual Recognition Challenge 公益社団法人土木学会 構造工学委員会 AI・データサイエンス実践研究小委員会 副委員長
阿部 雅人
建設ITガイド 2024 特集1 建設DX、BIM/CIM ![]() |
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はじめに会社紹介当社は、新潟県上越市浦川原区に事務所を置く社員が32名の小さな会社で、令和6年で創業70年を迎えます。 建設DXへの取り組み建設DXとは、さまざまなデジタル技術を複合的に活用することで、業務プロセスをあらゆる角度から変革し、建設生産プロセス全体を最適化することで新たな強みを生み出す取り組みとのことですが、さらに突っ込んだ言い方をすれば、建設産業そのものの在り方を根本から改革的に変えることと言えます。 ①現場における生産性の向上1つ目が現場における生産性の向上「現場の建設DXについて」です。
工事の3Dデータ化令和4年より全ての工事において3D化を徹底することとし、実施に移行しています。
3D施工データの活用3D施工データの作成が平準化となると、必ず3D施工データがあるため、このデータを建設システム社(KENTEM)の「快測ナビ」に入力することで現場における丁張設置作業の効率化が劇的に変わります。
EARTH BRAINアプリの活用EARTH BRAIN社のアプリケーションを導入し、「土工の見える化」や「ダンプの動態管理による位置情報の見える化」「過積載防止の見える化」を図り、ここで得た情報を有効に活用することで現場全体の効率化を図っています。
クラウドサービスの活用KENTEMの「電子小黒板 Site-Box 」と「KSデータバンク」を活用することで、現場で撮影した写真がクラウドを通じた同期によりあらかじめ用意されたフォルダに自動振り分けされるシステムにより、事務所での写真の共有と写真整理の効率化を実現しています。 ネットワークカメラの活用ネットワークカメラを各現場に設置し、「現場の見える化」に努めています。
Web会議の実施現場とオフィスを結び、毎日13:00より現場代理人との打合せを行っています。 ②ワーカーへの情報伝達の効率化2つ目がワーカーへの情報伝達の効率化と環境整備「ワーカーへの建設DXについて」です。 クラウドサービスの活用これも①同様にクラウドサービスを活用した情報提供を実施しています。 ③オフィスと現場をつなぐデジタル技術3つ目がオフィスと現場とをデジタル技術でつなぎ、さらなる効率化を図る「オフィスの建設DXについて」です。 スマートオフィスの導入スマートオフィスとは、オフィスで働く従業員が快適に、効率良く、そして室内の温度や湿度、照度などのオフィス環境を自動制御することで省エネを実現したオフィスを言うようですが、当社では単純に環境に優しく、時代に合った賢いオフィスと捉えています。
最先端ミーティングルームの設置スマートオフィス導入において非常にこだわったのが、このミーティングルームです。
集中できる個室の設置3D施工データの作成や点群処理、 BIM/CIMの作成など容量の大きいデータを作成する機会が今後さらに増えることが想定できるため、作成時の負担軽減を図る目的で高性能スペックのパソコンを設置し、今後増えるWeb 会議にも対応した防音設備を完備した、作業に集中できる個室を2部屋、新たに設置しました。 当社が進める建設DXまとめ当社が考え、現在実施している建設DXの内容が図-11の通りです。 おわりに今現在、ICT技術やBIM/CIMなど非常に覚えることが多く、技術者にとってまさに過渡期であり、大きな負担となっていると感じていますが、将来的にこれらの技術の導入により、技術者の負担が少なくなり、ワクワクするような魅力ある建設産業となってほしいと思います。 株式会社郷土建設藤村組 代表取締役
藤村 英明
建設ITガイド 2024 特集1 建設DX、BIM/CIM ![]() |
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