2024年7月2日
BIM利用技術者試験創設の意義大手ゼネコンやハウスメーカーを中心に、即戦力となるBIM人材の需要が高まってはいますが、社内における人材育成には時間がかかり、教育環境を整えるのは企業にとって大きな負担となります。 第一歩は「建築系の3次元CAD試験」ACSPが建築系の3次元試験の検討を始めたのは、2005年のことです。 建築系3次元試験の創設建築系3次元CADの試験化が具体的に動き出したのは、国土交通省が「官庁営繕事業におけるBIM導入プロジェクトの開始」を宣言した2010年のことです。 いよいよ「BIM」の検定試験創設へ2011年に「建築3Dパース検定」を立ち上げ実施していく中で、建築系の3次元が「BIM」という新たな概念で進化し、「BIMソフト」なるものが市場に出てきたことは認識していました。 コロナ禍からの再始動、そして試験体系の構築へ2020年度は、CADの試験制度創設以来初めて全国一斉で試験を中止とするなど、前例のない状況に戸惑うばかりの1年でした。 知識試験(2級試験)への取り組み2級=知識試験を検討するに当たりまず取り組んだのは、BIMの知識を体系化し、学習用のテキストを用意することでした。 「BIMらしさ」をどう実技試験へ盛り込むか?2級試験の準備が着々と進む中、実技試験である1級・準1級の準備は困難を極めました。 長いトンネルの先に見えたもの複数ソフトによる実技試験の実現という難題をようやく克服し、なんとか形を作り上げましたが、試験の運用方法については、まだまだ検討すべき事項が残っています。 「BIM」を担う技術者の育成に向けて本試験にはCAD利用技術者試験の「建築版」を立ち上げるところから関わらせていただいており、当時は「BIM」という言葉もなかったと思いますが、そのときに目指していたものが形となって現れ始めたのを見ると感慨深いものがあります。 BIM利用技術者試験委員会委員長 木村 謙 氏 エーアンドエー株式会社プロダクト本部 本部長 一般社団法人BIM教育普及機構 理事 2次元CAD利用技術者試験 1級(建築)試験委員会 委員長 一般社団法人 コンピュータ教育振興協会(ACSP)
建設ITガイド 2024 特集2 建築BIM |
はじめに官庁施設(国家機関の建築物)には、庁舎をはじめ、研究施設、図書館、博物館、社会福祉施設など、さまざまなものがあります。 これまでの取り組み官庁営繕部では、2010年度から新営設計業務においてBIMの試行に着手し、試行を通じて得られた知見を踏まえ、「官庁営繕事業におけるBIMモデルの作成および利用に関するガイドライン」(以下、BIMガイドライン)を2014年3月に策定・公表しました。 2023年度の取り組み2023年度は、これまでの取り組みを踏まえ、全ての新営設計業務および新営工事に、BIMに関する発注仕様書であるEIR(Employer’s Information Requirements)を原則適用し、本格運用に向けた取り組みを開始しました(図-1)。 3,000m²以上の設計業務では赤字の2項目、基本設計の外観・内観の提示、実施設計の一般図などの作成を指定項目とし、それ以外では表に掲げる項目を推奨項目として設定しています。 おわりに官庁営繕部では、業界団体とも連携し、引き続きBIM活用を推進することで、設計業務および工事の品質確保および事業円滑化を図っていく予定です。 国土交通省 大臣官房 官庁営繕部 整備課施設評価室
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はじめに近年、BIM積算の相談や業務が増加しており、関心の高まりと期待の大きさを感じます。 標準化への動き2023年度に、国土交通省が「官庁営繕事業におけるBIMデータを活用した積算業務」の試行を開始し、BIMデータの積算活用について効果検証を行うことを発表しました。 なぜ標準化が必要なのか2023年3月に国土交通省が提示した「建築BIMの将来像と工程表」では、「横断的活用の円滑化による協働の実現」として、「属性情報の標準化」や「BIM積算手法の策定」といった具体的な取り組みが明示されています。 無秩序なデータベースを体系化するBIMデータは、建築物の形状や仕様などの膨大な属性情報を集約した「データベース」です。
モデリングガイドラインの動向では、BIMの標準化はどこまで進んでいるのでしょうか。 BIM積算の方法次に、現状行われているBIM積算の具体的な方法について見ていきます。
BIMモデルを利用して数量算出を行う場合、BIMソフトウェアの自動算出機能を利用する方法のほか、BIMモデルのデータ連携によって数量計算の省力化が図れる機能を搭載した積算用ソフトウェアを利用する方法が考えられる。
直接型BIM積算直接型とは、BIMモデルにあるデータを、 BIMソフトウエアの集計機能や出力機能、アドインツールなどを使い、BIMソフトウエアだけで積算する方法です。
連携型BIM積算連携型とは、BIMデータから、積算に必要な部材の属性情報を取り出し、積算ソフトウエアにデータを連携する手法です。 積算手法の選択弊社では、積算を行う際にそのフェーズに適した手法を選択しています。 BIM積算の課題第10回建築BIM推進会議で、「BIMデータを活用した積算業務の取組推進に向けた課題」として4つの課題が提示されました。
[ワークフロー]役割分担の壁いつ、どのタイミングで誰が何を入力するのか、BIM積算のワークフローが確立しておらず、設計者や積算者の対応範囲が定まっていません。 [モデリング・入力ルール]標準化の壁標準化の重要性は前項で述べた通りで、 BIMデータを積算で利用する上で標準化は喫緊の課題です。 [積算基準]積算基準の壁従来の積算では、積算基準に基づいて数量を算出します。 [技術力]人材不足の壁2022年度の国土交通省調べによると、 BIMを導入している積算事務所は35%でした。 BIMモデル精度の壁以上4つの他に、もう一つ加えておきたいのがBIMモデル精度の壁です。 株式会社フジキ建築事務所BIMソリューション部 部長
郡山 恵子
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2024年7月1日
はじめにSociety5.0の社会へデジタル技術がもたらす社会像として「Society5.0」があります。 i-Constructionの推進わが国は、現在、人口減少社会における働き手の減少への対応や潜在的な成長力の向上、産業の担い手の確保・育成などに向けた働き方改革の推進などの観点から、生産性の向上が求められています。 建築BIM推進会議の設置と取り組み状況建築BIM推進会議の設置(令和元年6月)国土交通省では、前述の「成長戦略フォローアップ」に基づき、建築物のライフサイクルにおいて、BIMを通じデジタル情報が一貫して活用される仕組みの構築を図り、建築分野での生産性向上を図るため、官民が一体となって「建築BIM推進会議」(以下、推進会議)を令和元年6月に設置しました。 「建築BIMの将来像と工程表」の策定令和元年6月に第1回推進会議が開催され、同年9月の第3回の推進会議において、「建築BIMの将来像と工程表」が了承されました。
ガイドライン(第1版)の策定(令和2年3月)①の検討を行う「建築BIM環境整備部会」(以下、環境整備部会)は、志手一哉芝浦工業大学建築学部建築学科教授を部会長とし、推進会議と同様に幅広い関係団体などにより構成されています。 モデル事業の実施・ガイドラインの改訂令和2年度から、第1版であるガイドラインの実証などを行うため、ガイドラインに沿って試行的にBIMを導入し、コスト削減・生産性向上などのメリットの定量的把握・検証や、運用上の課題抽出を行う、「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」を実施しました。 令和5年度の取り組みと今後の展開・展望モデル事業の実施など(令和4年度)令和4年度に、昨年度までの成果などを踏まえ、「先導事業者型」、「パートナー事業者型」、「中小事業者BIM試行型」の3つの枠に分けて募集を行い、「先導事業者型」は8件、「パートナー事業者型」は3件、「中小事業者BIM試行型」は4件を採択しました。 将来像と工程表の改定令和4年6月に閣議決定された新しい資本主義実行計画グランドデザイン・フォローアップ(令和4年6月7日閣議決定)において、「ガイドライン(第2版)に基づき官民が発注する建築設計・工事などにBIMを試行的に導入するとともに、建築物のライフサイクルを通じたBIMデータの利用拡大に向けて、2022年度中にロードマップを取りまとめる」とされたことを踏まえ、「建築BIMの将来像と工程表」の改定について、環境整備部会で検討しました。
建築BIM加速化事業の実施(令和4年度第二次補正予算)「建築分野のBIMの活用・普及状況の実態調査」(令和3年1月国土交通省調べ)によると、1,000人以上の企業におけるBIM導入率は7割以上である一方、10人以下の企業では3割以下となっており、特に中小事業者にとっては、導入・運用に係る初期投資や習熟人材の不足といった課題がBIM導入の障壁として挙げられます。 今後の展開・展望建築BIMの推進においては、官民一体となって個別課題に対する検討などを進めるとともに、共通する課題に横断的に取り組むことが重要となります。 国土交通省 住宅局 建築指導課 係長
平牧 奈穂
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2024年6月17日
はじめに国土交通省では、令和5年度より小規模工事を除く全ての公共工事の詳細設計においてBIM/CIM原則適用となった。 これまでの取り組み概要図-2に、これまでのJR東日本におけるBIM/CIMの取り組みの概要を示す。 2016年に受発注者相互の共通データ環境となる「BIMクラウド」を試行開始し、2018年には3Dレーザースキャナーによる地形測量の原則化、JRE-BIM研修をスタートした。 BIMクラウド(環境)BIMクラウドの概要を図-3に示す。
ガイドライン(ルール)ルール面での整備も進めている。 研修(人)研修による社員のスキル向上も図っている(図-5)。
主な活用事例図-6に土木、建築、電気などの系統をまたがる工事での干渉や整合確認への活用事例を示す。 さらなる活用に向けた取り組み(三次元点群クラウドの活用)これまで述べてきたようにBIMモデルの活用は積極的に進めてきたが、BIMモデル作成費に比して得られる効果が十分とは言い難い。 デジタルツインソフトウエア「TRANCITY」の開発と活用さまざまなBIM/CIMの活用を進めていく中で、活用推進を阻害している要因 工事開始時点で作成したBIMモデルは3D地図上に地理座標を付与して配置し、工事完成時などには地上レーザースキャナーなどで作成した点群データと重ねることで設計情報との乖離箇所を視覚的に把握する。
点群による完成検査の推進BIM/CIMの活用の重点的な取り組みのもう一つとして、点群データによる完成検査記録の置き換えを推進している。 究極のBIM/CIMの姿の実現に向けて(3Dプリンティング)BIM/CIMが進んだ究極の姿は、調査・計画、設計、発注、施工、維持管理の全てのフェーズでBIMモデルデータのみで業務が完結することかと思われる。 おわりに以上のように、さまざまなBIM/CIMに関する取り組みを実施してきたが、BIM/CIMを活用して効果を享受するためには、プロジェクトの計画段階でどのようにBIMモデルを活用しようとするかを考えて始めるのが重要だと考えている。 東日本旅客鉄道株式会社 東京建設プロジェクトマネージメントオフィス
企画戦略ユニット マネージャー 井口 重信
建設ITガイド 2024 特集1 建設DX、BIM/CIM |