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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

積算見積プロセッサ「建築みつも郎12」

2014年5月12日

 
業種・企業規模を選ばない“思考する”積算見積プロセッサ
 
原価と粗利を意識した見積書作成を実現する「建築みつも郎12」は、最大6段階層6万行の書類作成が可能。
資材の品名や単価は名称マスタとして最大6万件まで登録できる。
また、合計金額から明細単価を自動調整する「まるめ機能付き金額調整機能」や、工事内訳の階層構造を登録し、類似する案件の書類作成に活用できる「テンプレート機能」に加え、新搭載の「押印機能」はオーソライズされた書類の提出を可能にする。
 

  • 建築みつも郎12
  • ◆明細入力画面

    ◆明細入力画面

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

専門工事から総合建築工事まで対応可能な余裕のスペック

◆6段階層イメージ

◆6段階層イメージ


積算見積作成に必須の階層による明細入力は最大6段階層まで対応。
また、明細行は最大6万行の入力が可能。
専門工事から総合建築工事まで、受注案件の規模を選ばない積算見積作成環境を提供する。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

修正見積の作成に威力を発揮「金額調整機能」

実行金額を元に粗利金額や粗利率を想定した見積金額の算出や、見積合計金額の調整に便利な「金額調整機能」は、書類全体の他、指定した階層下の明細に反映することもできる。
 
 

オリジナル書式の作成も自由自在「書式レイアウト機能」

書式
編集が自由自在の書式レイアウト機能は、自社ロゴ画像などを貼付したオリジナル書式の作成にも対応。
また、約160種類の標準書式が収録されているので、導入時から即戦力として運用可能。
 
 
 
 
 
 
 

見積書に重要書類としての責任と信頼を与える「押印機能」

◆印鑑設定画面

◆印鑑設定画面


「押印機能」は、作成した印鑑イメージを書類表書きの印鑑欄へドラックアンドドロップするだけで押印済書類の作成が可能。
また、セキュアな電子印鑑システム「パソコン決裁7(シヤチハタ製)」を利用した押印にも対応している。
 
 
 
 
 
 

既存書類の検索に効果的「書類エクスプローラ」

最大1万件までの書類検索に対応した「書類エクスプローラ」は、宛名や担当者名、書類日付などからの検索が可能。
書類検索結果はテキストデータ出力できるので、社内資料の参考データとして活用できる。
 
 

書類データの汎用性を高める多彩な機能

書類内のテキストデータをMicrosoft Excelの各シートへ出力できるExcel出力機能や、PDF作成機能を搭載。
また、一般財団法人経済調査会が販売する積算資料単価データベースファイルを名称マスタとして登録、活用することもできる。
さらに、同一事業所内の複数パソコンでの各種データの共有を可能にするLANパックも用意。
出力した書類のテキストデータは別売の工事台帳管理システム「建設原価ビルダー2」の実行予算データとして活用でき、見積作成から原価管理まで、シームレスなデータフローを実現する。
 
 

積算見積プロセッサ「建築みつも郎12」

標準価格(税別)
80,000円
 
動作環境
OS:日本語Microsoft Windows 8、7、Vista(SP2以上)、XP(SP 3以上)
CPU:1GHz以上
メモリ:1GB以上
HDD空容量:空き容量200MB以上 他に作業領域など別途必要
(ただし、サンプルマスタをインストールする場合には200MB、Microsoft .NET Framework4のインストールには2GB(64bit)もしくは850MB(32bitの空き容量が別途必要)
その他:
※64bit版のOS上では32bit互換モード(wow64)で動作する
※Windows RTおよびWindows XPの64bit版には未対応
※Windows 8ではデスクトップアプリとして稼動する
 
コベック(株)
Tel.078-521-7575
 
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2014
建設ソフト&ハード名鑑
建設ITガイド2014
 
 



土木積算システム ATLUS REAL(アトラス レアル)

 
積算効率と精度を追求した土木積算システム
 
概要図
 
土木積算システム「ATLUS REAL(アトラス レアル)」は、多様化する入札体系への対応と、さらなる積算精度向上と効率化を実現。
積算データ連携による入札~竣工までの業務効率化も可能としている。
 
 

設計書取込・自動解析エンジンを搭載

発注者の設計書データをドラッグ&ドロップで取り込んで積算が可能。
 
搭載する設計書自動解析エンジンにより、取り込んだ設計書の積算条件を設定。
 
内訳書を自動作成し、設計書に記載された歩掛を自動検索し設定。
 
また、一部の設計書では 歩掛条件を解析し確定するので、さらなる積算時間の短縮を実現する。
 
積算結果は発注者と同等な帳票をPDF・Excel形式で出力可能。
 
 

施工パッケージ型積算に対応

施工パッケージ型積算方式は構成(機・労・材)および計算式を確認しながら算出が可能。
また、機・労・材の構成比率の編集や基準単価・標準単価の入替・編集など詳細設定が行え、出力・印刷も可能。
さらに従来、機労材構成表にはない数量を構成比・単価比から参考値として算出が可能。
 
 

直感的な積算が可能

実際の設計書をイメージした画面で積上科目・経費・工事価格まで確認が可能。
また、積み上げと同時に工事価格も算出する。
 
各メニューは、積上・経費・出力ごとによく使用する機能をまとめシンプルで直感的な操作が可能。
 
 

違算防止機能を大幅搭載

発注者/入札日を選べば、最適な歩掛・単価・経費・補正・端数・印刷様式まで自動設定し積算条件誤設定による違算を防止。
 
積上前の歩掛適用範囲・構成や、積上時の積算条件補足説明や計算式の確認機能で、積上ミスを防止。
また、未入力・変更箇所を自動チェックし違算を防止する。
 
 

出典根拠や採用優先単価も表示

歩掛・単価・経費 各データの出典根拠を表示。単価登録時には発注者が優先的に採用する単価を抽出。
 
 

各種シミュレーション

低入札価格調査制度、最低制限価格制度、総合評価方式に対応したシミュレーションが可能。
 
 

各業務へデータ連携

積算データを施工計画・実行予算・原価管理・工程管理・安全管理・CO2排出量管理・文書管理等の各業務に連携し、入札から竣工までの業務効率化を実現。
 
 

安心・充実のサポート

全国に配置した拠点より地域に密着したサポートを提供。
 
最新データのオンラインアップデートやフリーコールによるサポート、リモートサポート等、充実したサポートを提供している。
 
 

土木積算システム ATLUS REAL(アトラス レアル)

標準価格:要問い合わせ
 
動作環境
OS:Windows 8/7/Vista/XP
CPU:Pentium4 3GHz相当以上
メモリ:2GB以上
HDD空容量:5GB以上
 
(株)コンピュータシステム研究所
Tel.022-301-3280
 
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2014
建設ソフト&ハード名鑑
建設ITガイド2014
 
 



土木系CAD V-nasシリーズ V-nasClair(ヴィーナス クレア)

2014年5月11日

 
土木設計の3次元化も本格的に支援する3次元設計&製図ツール
 

土木に特化した専用オペレーション・専用CADシリーズ

V-nasClair (走行シミュレーション.etc)

V-nasClair
(走行シミュレーション.etc)


測量座標系の設定、クロソイド曲線の作図、充実した寸法線機能、マルチページ(1ファイル複数図面管理)といった、建設分野に特化した機能と操作性を標準装備する「V-nas(ヴィーナス)」シリーズは、各種専用CADが充実しているため、業務ごとに最適化されたシステムを選択できる。
 
配筋図・加工図・重量表の情報連動により、作図・編集・チェックといった作業の流れを省力化するRC構造物専用CAD「V-FRC」や、道路・平面縦横断図の概略設計~詳細図作図までサポートする「V-ROAD」、さらには砂防えん堤計画・設計・製図を行う「SABOシリーズ」等、作図のみならず計画・検討~設計・計算~作図・編集のあらゆる段階で使える“設計ツール”として定評がある。
 
 

3次元化、CIMを見据えた「V-nasClair」

中心線、幅員線(縦断線形、横断勾配、拡幅考慮)を3Dライン表示で確認

中心線、幅員線
(縦断線形、横断勾配、拡幅考慮)
を3Dライン表示で確認


汎用的な3次元モデル作成機能に加えて土木設計に不可欠である、「地形」と「線形」をいずれも3次元要素として取り扱うことができる。
 
「地形」に関しては、3次元地形データのインポートはもちろんのこと、2次元地形図を容易に3次元地形モデル化できる各種コマンドを搭載している。
 
建築分野にはない土木特有の概念である「線形」に関しては、従来、平面図・縦断図・横断図の3図面で表現・管理していた情報を「3次元線形要素」として3次元空間上に定義・表現することができる。
 
 
 
 
 
CSVファイルからのモデル化

CSVファイルからのモデル化


 
3次元化された現況地形と中心線・幅員線要素を用いることで、従来の3次元CADによる近似モデルからは得られない任意位置での正確な横断形状の取得や、橋梁などの構造物の正確な配置検討を行うなど3次元CADを土木設計により有効に活用することが可能となった。
 
また、CSVファイルによる自動作図や、スクリプト言語による独自コマンドの作成など、ユーザー自身による機能拡張にも対応している。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

データ互換

SXF仕様(p21,sfc)やAutoCAD(dxf、dwg)データ、JW_CAD(jwc、jww)データ、さらにSIMA形式、DM形式のデータ等、さまざまなファイル形式のデータと互換性を持つ。
 
 

基準適合チェックツール「CADチェッカー」

CAD図面が「CAD製図基準(案)」をはじめとする各種基準に適合しているかをチェックするツール。
V-nasシリーズと組み合わせて使用することにより、不適合箇所の自動修正まで行える。
Ver.8よりレイヤ振り分け機能を搭載。
あらかじめ設定されたフィルター条件(ふるい)により図面のレイヤを自動的に振り分けることが可能。
 
 

土木系CAD V-nasシリーズ V-nasClair(ヴィーナス クレア)

標準価格(税別)
3次元汎用CAD「V-nasClair」:298,000円
 
動作環境
OS:Windows 8/7/Vista
CPU:Pentium4以上(IntelCore2相当以上を推奨)
メモリ:1GB以上(2GB以上を推奨)
HDD空容量:500MB以上の空容量(2GB以上を推奨)
 
川田テクノシステム(株)
Tel.03-5961-7917
 
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2014
建設ソフト&ハード名鑑
建設ITガイド2014
 
 



海外のCIM事情《その1》

2014年4月20日

 

大阪大学 大学院工学研究科
環境・エネルギー工学専攻 教授 矢吹 信喜

 

BIMからCIMと建築と土木

図-1 日本と欧米の土木・建築の分け方の違い

図-1 日本と欧米の土木・建築の分け方の違い

2005年頃から建築分野で世界的にBIM(Building Information Modeling)という言葉が広まり、先進各国で本格的にBIMの導入に取り組んでいる。わが国においても、国土交通省が2010年度からBIMの試行プロジェクトを開始した。一方、土木分野では、2012年度にBIMの土木版であるCIM(Construction Information Modeling)を国土交通省が提唱し、試行プロジェクトを全国で展開している。
 
日本では土木と建築を対象とする構造物ではっきりと分けている。すなわち、道路、鉄道、橋梁、トンネル、河川、港湾などの社会基盤施設が土木分野で、ビルディングや家屋は建築分野となっている。しかし、欧米に目を転ずると、実はCivil EngineeringとArchitectureは日本の土木と建築とは相当に分け方が異なるということに気付く。図-1に示すように、構造物の種類に関わらず、構造、水理、土質、材料、施工、環境、設備といったサイエンスのうち、主に力学(熱力学を含めて)に立脚している学問分野がCivil Engineeringであり、意匠設計や景観といった美学や感覚といった職人的な教育を行うのがArchitectureである。従って、Civil Engineeringの方がより広い範囲をカバーしているため、大体どこの大学にもCivil Engineeringの学科はあるが、Architectureは数多く学科を作ってしまったら就職先がなくなるので少ないだけでなく、工学部の中にはなく、建築学部として独立しているか美術系や生活系の学部に属していることが多い。また、通常の4年教育ではなく、5年教育を課していることがある。
 
筆者は昔、米国のスタンフォード大学のCivil Engineering学科で構造工学の授業を受けた時、ビルディングの構造と基礎に関することばかりだったので大いに面食らったが、欧米では当然ということだった。
 
従って、BIMというのは、欧米の場合、Architectureを学んだ建築設計者とCivil Engineeringを学んだ構造・地盤、設備、生産、施工技術者が、フロントローディング(設計の前倒し)によって、同じ土俵でプロジェクトを進めようとする相当に果敢なチャレンジをしているとも見ることができる(図-2)。
一方、日本の建築分野は意匠設計者も、構造・地盤、設備、生産、施工技術者も建築を一緒に学んだ「仲間」がBIMをやっているという見方もできるのである。

図-2 BIMによる異なる技術者らによる協調的作業

図-2 BIMによる異なる技術者らによる協調的作業

 
日本では土木と建築の区分は極めて強く、構造や土質などはほとんど同じようなことを扱っているのに、会社や役所では縦割りになっている。学の世界でも、多少はクロスオーバーがあっても、土木で使う、死荷重、活荷重、照査などの用語は建築では使っていない。従って、BIMからCIMへの水平展開は、日本の方が欧米よりもハードルが高く、より多くの努力を要するかも知れない。また、CIMというと欧米では、土木建築両方の構造物の施工(Construction)段階のみを対象としていると捉えられる可能性があり、国土交通省が提唱するCIMはBIMを含むという概念には首をかしがれる可能性がある。なお、CIMという言葉は、機械や情報の分野ではComputer Integrated Manufacturing(コンピュータ統合生産)を意味し、あちらの方が歴史があるので使用する際は注意が必要である。
 
しかしながら、筆者は国土交通省がCIMを提唱し、推進していることを非常に喜んでいるのである。なぜなら、3次元モデルを中心としてライフサイクルを通じて上流から下流の技術者が協力しながらプロジェクトを進めていくというビジネスプロセス変革は筆者のライフワークだからである。
 
 
 
 

アジアのCIM事情

写真-1 第8回アジア建設IT円卓会議記念講演会(JACIC撮影)

写真-1 第8回アジア建設IT円卓会議記念講演会(JACIC撮影)

スタンフォードでの構造工学の講義はビルディングの構造と基礎が多かったと前述したが、これは米国の建設事業の8割から8割5分くらいがビルや家屋などで、社会基盤施設の建設は少なかったことに由来する。最近は、オバマ大統領は社会インフラの建設は重要だと力説し、予算も割くようになったので増えているかもしれないが、およそ、先進国は社会インフラの建設はどこかで頭打ちになってしまう。一方、近年、経済発展が著しいアジアの国々では、社会基盤建設は国造りの上で重要であるから、CIM、すなわち「土木版BIM」にどう取り組んでいるかを知ることは価値があると考えらえる。以下、2012年8月に開催されたアジア建設IT円卓会議記念講演会(写真-1)における講演内容とその後の情報収集によって得られた情報を記す。
 

中国

中国は、大規模な社会インフラ建設プロジェクトが数多くあり、今後も広大で未開発な内陸部の開発が済むまでかなり長い期間、建設投資は増え続け、経済をけん引すると予想される。これらの大規模建設プロジェクトを推進していく上で、新技術、イノベーションが要求され、国家技術進歩賞などを目標とするため、行政が企業に対して情報化やBIM推進を要求しているのが現状である。政府の力は非常に強いので、企業は採算度外視で3次元CADや3次元構造解析ソフトウェアの導入や利用を進めている。例えば、2007年に建設部(日本の国土交通省に相当)は、特級ゼネコンに対して、2010年までに、特級として要求される情報化水準を満足しなければ「特級」資質を剥奪すると通達し、264個のゼネコンが情報化を始め、金融危機で2年間延期になったが、ほぼ全て合格したという。
 
「2011-2015建設業情報化発展計画要綱」では、企業情報化管理システムとして、システムの統合化・知能化・自動化、ERP、E-Commerceなど、最新情報技術の適用として、BIM、HPC、VR、自動測量、RFID、SHMなどが、情報化標準として、分類とコーディング、データ交換、電子図面、電子納品などが挙げられている。
 
一方、行政は、計画経済情報化やBIMを推進するために、研究プロジェクトを立ち上げ、研究予算を配分している。国レベルの研究プロジェクトとしては、都市の計画・設計・施工・管理のデジタル化、建設業の情報化、グリーン施工、等がテーマとなっている。こうした研究の成果を実際のプロジェクトに応用することを行政が要求することから、全体として情報化が推進することにつながっている。
 
中国におけるBIMに関する情報は、主に清華大学土木工学科のZhiliang Ma教授によるものである。
 

韓国

韓国では国土海洋部(日本の国土交通省に相当)が2009年に国家BIMロードマップを制定したことから、建築分野においてBIM採用の気運が高くなった。同年に国家BIMガイドラインを、2010年に国家建築BIMガイドを策定した。調達庁では、短期、中期、長期にわたるBIM採用計画を立て、2012年には、調達庁が発注する約34億円(日本円に換算)を超えるターンキー契約(設計・施工一括)のプロジェクトにはBIMを適用させることが義務付けられ、2013年から全ての34億円以上のプロジェクトにBIM採用を指導し、2016年から建築、土木問わず、全ての調達庁発注プロジェクトはBIMを採用する、という計画になっている。
 
BIMは建築分野で採用することは規定路線であるが、公共土木構造物に適用するとなると、便益はあるものの、
BIMに関する知識の不足、ソフトウェアが未対応であること、標準化されたパーツの不足といった障害も予測されている。こうした課題に対して、延世大学土木工学科のSang-Ho Lee教授は、新たにIFCに土木用のエンティティ(部品)を加える方法とは別に、既存のIFCを利用しつつ、属性情報(Property Set)だけ土木用に変更する方法が当面、現実的であると提案している。韓国では、大手建設会社や建設コンサルタント会社では既に実際の公共土木プロジェクトに3次元あるいは4次元モデルを適用させている。
 
以上の情報は、上述のSang-Ho Lee教授の資料によるものである。
 

香港

香港では、2007年に10大インフラストラクチャ・プロジェクトを開始した。これらには香港地域内の鉄道、高速道路や土地開発の他、中国との境界線上の橋梁や道路などが含まれている。特筆すべきなのは、香港では、こうした公共建設工事は、極めて大きな経済効果をもたらし、付加価値が高く、25万人の新たな雇用も生み出す効果もある、と政府が高らかに宣言していることである。日本のように、公共事業というと「無駄」、「箱モノを作っても経済や雇用に効果はない」、「コンクリートより人」などと言っている国とは大違いである。
 
香港でも、建築分野ではBIMに力を入れており、官民双方でBIM化に取り組んでいるが、公共土木工事の方は、意外に保守的でBIM(日本で言うところのCIM)は検討中とのことである。
 
香港は土地が狭く、人口が大きいため、3個の埋立地にゴミなどの廃棄物が捨てられているが、2018年までに順次2年ごとに満杯になってしまうため、廃棄物削減は喫緊の課題となっている。同時に、二酸化炭素(CO2)排出削減も重要な課題である。しかしながら、前述のように大型社会インフラ工事が目白押しであることから、建設廃棄物とCO2排出の増加が懸念されている。そこで、香港では、BIMを使って新しく建設するビルと既設のビルに対して、ライフサイクルを通じて、廃棄物とCO2排出に関する管理を行うこととしている。こうした動きは、土木構造物にも適用されるであろう。
 
以上の情報は、香港科学技術大学土木工学科のJ.S.Kuang教授によるものである。
 

台湾

台湾でも、建築分野でBIMが盛んに採用されつつあるが、中国と異なり、政府はあまり熱心ではなく、むしろ民間会社と国立台湾大学などの産学が各々BIMセンターを2009年から2011年にかけて設立し、BIMを広めようと努力している。
特に国立台湾大学のNTU BIMセンターでは、実習ワークショップ、個別課題短期コース、BIM四半期レビューフォーラム、月例BIM朝食会議などを産業界の技術者らに提供するとともに、各種マニュアルや雑誌を発行している。大学教育においても、国立台湾大学土木工学科では、「工業図学(2単位)」で2次元AutoCADと3次元SketchUp、アニメーションBlenderを教え、「工業情報マネジメント(3単位)」、「BIM技術の応用(3単位)」の各教科目を提供している。
 
政府はBIMに対して戦略的な計画や標準化をしようといった動きも特にないが、研究資金を提供したり、台北市のMRT(地下鉄)プロジェクトにBIMを使うことを認めたりしている。
 
MRTのLG05駅のプロジェクトでは、Sino Tech社がBIMモデルを使うことによって、地下の上下水道配管と地下構造物との干渉チェックや、空調や電気設備の配置検討などを行い、効果を挙げた。
 
これらの情報は、主に国立台湾大学土木工学科のPatrick Hsieh教授によるものである。
 

シンガポール

シンガポールの建設事情は、安全性が第一ということで、ビルディングの構造設計は、政府以外の認定された第三者的な検査技術者によって検定が実施されるとともに、構造設計基準を欧米の状況を見ながら常に最新式のものにしている。第二が生産性であり、BIMによる建設プロジェクトの統合化に官民挙げて取り組んでいる。BIMの戦略については、政府主導で進められ、BIM資金振興、トレーニングなどを展開している。2011年には、BIM 電子納品システムによる3次元モデルデータの政府への提出が始まっている。また、国立シンガポール大学土木環境工学科では、BIMのセミナーを学生に対して提供している。
 
シンガポールも香港同様、国土の面積が小さいこともあり、構造物の解体撤去に伴う廃棄物処理が喫緊の課題になっている。建設廃材を将来的にリサイクルするために、Designed for Disassembly(分解のために設計:DfDと略す)というコンセプトを推進している。DfDを実現するために、このコンセプトに合致する「標準的な」材料、部材、形式(主にプレキャスト部材)などを技術者や建築設計者が熟知する必要があることから、DfDデータベースが提供されている。
 
これらの情報は、国立シンガポール大学土木環境工学科のSomsak教授によるものである。
 
 
 
海外のCIM事情《その1》
海外のCIM事情《その2》
海外のCIM事情《その3》

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」
建設ITガイド2013
 
 



施工者から見たCIMの問題点と対応策《その4》

2014年4月12日

 

株式会社 大林組 技術研究所
主任技師 古屋 弘

 

CIMの課題

これまで述べたように、CIMは建設プロジェクトにおいて有効なツールであり、設計・施工に大きな変革をもたらすものである。
現状では、まだ簡易で安価なシステムであるとは言いきれないが、多くのデータを迅速に処理し、「見える化」への貢献も大きい。
しかし、このような物理的な利点の反面、解決すべき課題も存在する。
 

(1) CIMの概念の共有

CIMに関しては数々の取り組みが2012年度より開始され、一部パイロット的な取り組みも始まりつつある。
しかし、CIMの概念は意外と共有されていないようである。
BIMとの大きな違いは、社会インフラの構築・メンテナンスに適用する点と発注形態にある。
特に後者に関しては、設計施工分離と入札制度に関わる事で、ここで論ずるには大きすぎる課題であるため割愛する。
ここでは前者を考慮した論理モデルを図-7に示すことにより、CIMの概念を少しは明らかなものとしたい。
図-7における重要な点は、Project DatabaseとAsbuild Databaseの分離である。
データは施工中に絶えず変化するものであるが、それらを闇雲に変更することは大いに混乱を招くこととなる。
変更権限の一元化はCIMの運用にあたって重要な点である。
また、3D化を伴う設計・施工データは肥大化することが予想される。
これらの運用にはデータハンドリングを充分考慮したデータベース構築が必要である。
 

図-7 CIMのイメージ

図-7 CIMのイメージ

(2) 品質管理への適用

CIMは3次元データの活用や施工シミュレーション、「見える化」による施工ミスや手戻りの防止などに目を向けられがちであるが、ここでは、CIMを用いることによる施工の高度化のうち、品質管理への適用に関して考察する。
建設現場における品質管理に関しては、例えば鋼材の管理をイメージした図-8(a)に示すような、降伏点があらかじめ分かっていて、それに対する安全率を考慮した許容応力度を設定し、その値を閾値として管理する手法はごく一般的である。
この手法においては、計測とデータ整理・(逆)解析の迅速な処理は非常に重要で、データベースを用いることが必須のCIMは、分析や検討にまさに活躍できる分野である。
近年のセンサネットワークやモニタリングシステムの高度化は、この部分をターゲットとしたものである。
 
一方、図-8(b)に示すような管理基準値が明確でないものに関しては、いくらICTによる多頻度の計測を行い、CIMによるデータベ-スを活用しても、その計測値に対応する基準値が明確でないために、その判断は技術者が担うこととなる。
ところで図-8(b)の左側の図は、一見すると管理基準値を適用して管理できそうであるが、劣化などの判定には、そもそもどのような指標を用いるのかを明確にする必要があり、その意味で管理基準が不明確であるという例示に用いた。
さらに、図-8(b)の右図は、盛土のように材料の性質が安定せず、ばらつきが大きい場合の概念図である。
このような対象物にはどのような管理も一見無意味に思われるが、この場合はICTを用い、多点計測(多くのデータを収集)を行い、その品質の安定化傾向をCauchyカーブなどの非線形性を利用して、安定化傾向を検討し、管理するなどといった方法も考えられる。
 

図-8 品質管理に対するCIM(ICT)の活用で考えなければならないこと

図-8 品質管理に対するCIM(ICT)の活用で考えなければならないこと


以上、CIMの適用に関する課題を施策面以外の点に関しまとめたが、本節の最後にCIMの活用における留意点を示す。
 
●CIMのデータはできるだけ初期に構築しておくことと、施工中はデータの取得、改変のタイミングなどのルールを事前に検討しておく
 
●せっかく取得した情報を有効に活用するために、設計や計測データを現在以上に有効活用し、数々の情報の組み合わせによる評価も考える
 
●新しいデータ、データ取得方法と活用には、新しい解釈や新しい基準値の適用も検討する
 
●データの取捨選択も時には必要:必要なデータ、保存すべきデータを考える(BIMの運用でTB(テラバイト)クラスのデータとなってしまった事例もある)
 
 

終わりに

図-9 情報化施工の進展イメージ

図-9 情報化施工の進展イメージ


建設分野における情報化施工は、CIMにより新たなステージに移行しつつある。
CIMは始まったばかりで課題は存在するものの、施工結果と計画値の定量的な評価、データ分析を多角的により多くのデータから行うことにより、新たな技術的見知の創出も期待される。
図-9には情報化施工の進展のイメージを示した。
計測管理だけでなくICTの活用の歯車が上手く回ってこそCIMへの昇華が達成される。
この時、われわれ技術者は、ICTの単なるユーザーになってはならない。
基本的なICTシステムのみならず工学的な分野のリテラシーの向上も常に心がけなければならない。
ICTに関しては、特にツール(PC、センサー等)や通信技術を中心に施工現場に急速に取り入れられるようになり、技術者にイノベーションをもたらしつつある。CIMも今後多くのアプリケーションやツールが提供されるであろう。
われわれはこれらの利点と考慮すべき点、および導入・運用コストなどを冷静に検討し、合理的な活用を考えていかねばならない。
 
 
 
施工者から見たCIMの問題点と対応策《その1》
施工者から見たCIMの問題点と対応策《その2》
施工者から見たCIMの問題点と対応策《その3》
施工者から見たCIMの問題点と対応策《その4》

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」
建設ITガイド2013
 
 



 


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