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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

地方発!地場ゼネコンこそBIM導入を

2018年9月7日

 

はじめに

わが社は沖縄県に本社を置く総合建設業、いわゆる地場ゼネコンである。年間の売上が140億と、中小建設業の部類に入る企業である。
 
数年前より躯体積算ソフトとしてJ-BIM施工図CADを使用していた。今後多様化する業界を見据えて、工事部長によるトップダウンで施工BIMの導入に踏み切った。
 
導入ソフトは、操作性よりも、充実したバックアップ体制が見込めるかを基準に選定した。結果、沖縄県に代理店があるグラフィソフトジャパン株式会社のARCHICADを導入した。
 
導入の目的は下記のとおり。
 
①事業計画の迅速化
②施工計画の効率UP
③繕計画に活用
 
 

BIM推進の体制について

わが社では、BIM推進部等の専門の部署はなく、主に積算業務を行う工務部をメインに、工事部と共同で本業と兼ねて対応している。
 
私が指示をし、女性3名でモデリングを行っている(図-1)。躯体積算は100%、施工検討は約70%の物件でモデリングを行っている。
 

図-1 モデリングのメンバー




 
積算と現場支援業務からスタートしたこともあり、主に概算の初期計画時の検討に活用している。
 
 

導入事例

2016年7月の導入からの1年半、17物件でモデリングを行い、企画段階の事業計画や施工検討に役立てることができた。
 
その中から3物件の取り組みを紹介する。
 
1.少ない情報から敷地形状をモデリング。精度の高い概算見積が実現。
 
本物件はホテル新築計画で、概算見積もり用図面しかなく、情報が不足していた。計画地は高低差があり、造成検討が困難だった。
造成検討を目的に、敷地形状のモデリングを行った。まず2D図面の等高線に高さを与えた。そこに計画建物を配置すると、必要な擁壁、切盛土が明確となる。モデリングの情報から、必要擁壁数量、土量数量が算出でき、精度の高い見積りを行うことができた。(図-2)
 

図-2




 
2.基礎工事のステップ図をモデリング。施工計画の見える化により手戻り作業を防止。
 
本物件は商業施設の新築工事で、建物の幅・奥行きとも100m程度あり、施工の順序を誤ると手戻りになる恐れがあった。
 

施工手順の見える化を目的に、基礎工事ステップ図のモデリングを行った(図-3)。現場で打合せを行い、反時計回りの施工順序が決定した。手順に合わせた基礎ステップを作成し、現場で活用した。結果、元請、各職長、全作業員が作業手順を理解し、手戻りなく基礎施工を行うことができた(図-4)。
 

図-3




 

図-4




 
事着手後に現場から業務依頼を受けた。内容は外部足場の申請で、提出期限が2週間後という短期間での業務であった。
 
建物形状がいびつで、仮設業者が作成した2D図面は使い物にならなかった。元々鉄骨FABが作成した鉄骨BIMデータがあったので、そのデータを元に外壁をモデリング。出来上がった建物に外部足場のモデリングを行った。
 
仮設計画は現場の意見が反映されていないと使い物にならない。そこで、モデリングしたBIMデータを現場に提出し意見を出してもらった。BIMの特色である「見える化」により、現場からさまざまな意見が上がった。それを反映した修正BIMデータを現場に提出する(図-5)。
 

図-5




 
このやりとりを繰り返したことにより、短期間での作図が可能となり、期間内での申請を行うことができた。
 
今回の業務は特にBIMの効果を感じることができた。
 
①イメージの見える化
②問題の早期発見
③確実な指示の実現
 
以上により施工計画の効率をアップすることができた。
 
 

今後の課題

施工BIMを導入し、主にフロントローディングとして活用し、1年足らずでさまざまな効果を上げることができた。
 
今後の課題として、下記の項目がある。
 
①現場技術員への導入
②施工図への展開
 
今後、現場でBIMを活用できるようにし、計画の見える化、より高度な施工検討を実現したい。
 
 

まとめ

BIM導入による効果として、下記の3項目がある。
 
1. まず、やってみる
わが社のような中小建設業がBIMを活用するには、「まず、やってみる」姿勢が重要である。やれば分かる。案ずるより産むが易しである。
 
2. 分かりやすい計画の実現
3Dモデルにより、分かりやすい計画が実現でき、現場の若手・ベテラン技術者、施主、設計監理者、職人など関係者が同じビジョンを共有できる。
 
3. 問題の早期発見
迅速なモデリングにより、問題の早期発見ができた。結果、着手前に問題を解決することができる。
 
 

最後に

BIMを導入した中で、失敗に終わった物件もある。モデリングしたにもかかわらず、問題の対策ができずに現場に負担を強いる結果となり、BIMを用いたコミュニケーションがいかに大事であるかを痛感した。
 
物件規模の小さな、小回りがきく地場ゼネコンこそBIMを活用し、効率化を図り、地域に根差した進化を目指すべきではないかと考えている。
 
 

金秀建設株式会社 工務部 大木 篤史

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2018
特集1「i-Construction×CIM」



 



IPD体制で挑むBIMプロジェクト-FM利用を前提とした施工BIMの現状-

2018年9月5日

 

はじめに

日本国内でBIMが注目され始めたBIM元年(2009年)から10年を迎える。現在は、生産性向上というテーマが注目され、BIMによる建築生産プロセスを効率化すべく建設各社が取り組みを進めている。一方、発注者のBIM認知度はまだ低く、建設ライフサイクル全体でBIMを活用していくスタイルには至っておらず、ましてや建物オーナーが中心となり維持管理プロセスまでBIMを組み込んでいる事例はほとんどない。
 
今回は発注者主導のIPD(Integrated Project Delivery)体制で取り組んだ維持管理での利用を前提としたBIMプロジェクトの事例を紹介する。
 
 

プロジェクトの概要

本プロジェクトの建物用途はデータセンターである。本施設の完成後は国内最高レベルのデータセンター(図-1)として稼働する予定である。ここには各企業のサーバーマシンなどミッションクリティカルなICT機器が集まるため、安定した電源設備、空調設備、通信設備を備え、かつ高いセキュリティレベルが求められる建物仕様になっている(表-1)。
 

図-1 建物完成予想図




 

表-1 プロジェクト概要




 
本プロジェクトへのBIM導入目的は、発注者が竣工後の建物運営において、BIMを継続的に活用することにある。発注者はBIMの3次元的な要素のみならず、属性情報の活用に一番期待しており、それは施工業者選定時の発注条件として明記されている(表-2)。
 

表-2 BIM導入の目的




 
 

IPDによるBIMの組織運営

IPDとは建設プロジェクトに関わるステークホルダー(利害関係者)が課題を共有し、早期の解決を実現する協業形態である。本プロジェクトではIPD体制を組み、発注者がプロジェクトのスタート時から積極的に関与し、進捗状況を把握しながら課題を共有している。
 
BIMのプロジェクトを成功裏に導くために、本プロジェクトでは施工業者選定直後にIPDのBIM分科会がスタートしている。このBIM分科会は施工中の意思決定機関として機能を発揮するための位置付けとなっている(図-2)。
 

図-2 BIM分科会の位置付け




 
本プロジェクトでは関係者のBIM経験値にばらつきがあったため、BIMマネージャー主導のもと、着工まで2カ月間をかけてBIM実施計画書(以下、BEP)をまとめながら、メンバーの思いやゴールイメージについて共有を図っている。着工後は月に1回、BEPの見直しを含め、進捗の確認や技術的な課題について解決する場としてBIM評価会議を開催するなど工夫しながら組織運営に当たっている(図-3)。
 

図-3 BIMの組織運営スケジュール




 

仮想引き渡しの実施と目的

本プロジェクトの最大の特長は仮想引き渡し(Virtual Handover:以下、VHO)の実施にある。VHOとは、建築、設備、電気で調整された施工図レベルのBIMモデルを施工前に発注者に引き渡すことである。発注者はVHOモデルを自由に閲覧し、建物の使い勝手や竣工後の運営・維持管理プロセスについて利用者目線でチェックする。いわば竣工検査の前倒しとも言えるが、発注者のBIMを事業活用したい強い思いがあるからこそVHOは成立し、メリットを最大限に生かすことができるのである。
 
本プロジェクトのVHOは2つのフェーズで計画されている。第1フェーズの目的はVHOモデルで空間的な建築仕様を確認すること。第2フェーズの目的は発注者が運用している施設管理DBへBIMモデルの属性情報を受け渡すフォーマットの確認である。
 
 

VHOのプロセス

第1フェーズのVHOモデルは、建物全体でなくモノ決めの優先度を考慮しながら、フロアやエリアで分割して作成している。VHOの実施手順は以下のとおりである(図-4)。
 

図-4 VHOのプロセス




 
①施工者が総合図調整の終わったBIMモデルをNavisworks形式で、VHOモデルとしてクラウド上の共有フォルダにアップロードする。
②発注者はそのVHOモデルをダウンロードし、施設管理者目線でチェックする確認会を実施する。
③発注者は指摘事項をNavisworks内に直接コメントとして残し、VHOモデルを共有フォルダに戻す。
④施工者がコメントの入ったVHOモデルを確認する。
⑤施工者が設計者と対応方針を協議して決定し、BIMモデルに反映する。
 
この①~⑤のプロセスをBIMモデルで合意するまで繰り返す。従来の図面チェックプロセスなら、紙に印刷したドキュメントでやり取りしがちであるが、発注者からNavisworksを活用したいという提案があり、スピーディーなVHOプロセスを実現できている。
 
 

VHOの効果

VHOを実施することは、発注者にとって施設運営・保守の方針および計画の前倒しにつながるだけでなく、これまで施設運営で苦労している点を改善できるチャンスでもある。今回発注者から指摘や質問として挙げられた項目数は100近くあったが(図-5)、全て施工前に解決ができている。それは施工者にとっては時間制約がある中で大変な労力であるが、竣工検査で指摘されて手直しをする手間とコストを考えれば、メリットも十分にある。
 

図-5 VHOでの発注者コメント例




 
VHOはIPD体制で取り組むBIMプロジェクトにおいて、関係者がWin-Winになる結果を導き出す必須手法であると感じている。
 
 

竣工に向けて

本原稿を執筆している現時点で、プロジェクトは進行中であり、終盤の追い込み体制に入ったところである。今回は残念ながら全ての成果を紹介できないことをご了承いただきたい。
 
次のステップは、第2フェーズのVHOを実施し、BIMの属性情報を発注者の施設管理DBへ渡すためのプロセスを構築することである。ここでBIMを正とした建物情報の一元管理ができれば、今後発生する追加工事、保守工事においてもBIMモデルが更新されていくことになり、建物のライフサイクル全体を通してBIMを活用していくワークフローが確立されることになる。発注者にとってのBIMプロジェクトの価値を示せる事例になると信じている。
 
 

株式会社 NTTデータ、株式会社 NTTファシリティーズ、 
株式会社 フジタ、新菱冷熱工業株式会社、株式会社 協和エクシオ

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2018
特集1「i-Construction×CIM」



 



施工BIMの○と×

2018年9月4日

 

施工BIMのはじまりはいつか。

日本ではBIMを始めた時期を示す境目が明確でない。
 
私が会社のミッションとして東京の本店に出てきてBIMに取り組み始めた2003年頃は、業界内では「3D-CAD」や「3次元CAD」と言われていた。取り組みの基本的なスタンスは「設計から施工そして維持管理まで一気通貫でデータを活用すること」を目指しており、今振り返ってみてもBIMそのものである。まさしく当時の取り組みは、創成期のBIMであった。
 
そのため建設会社に所属する私のような施工系の人間は、設計者のBIMを施工系の立場から支援した。設計段階において施工で活用できるBIMモデルを作成し、そのまま施工で活用することを目指していたからである。
 
2005年頃には欧米を中心としてBIMが言われ始め、2007年頃になると国際コンペにおいて発注者の強い意向で、BIMの活用を義務付ける案件などが出てきた。世界的にもBIMの推進が加速し始めた時期であった。
 
日本国内に目を向けると、2009年頃には海外でのBIMの取り組み内容や目的に関する最新情報の輪郭がだんだんと明らかとなり、それらを反映した雑誌や書籍が本屋さんの建築関係の棚に並び始めた。例えば『BIM・Japan vol.1 建設技術革新の現在進行形-がんばれ、ニッポンの建築。』⑴(2008.12)、『業界が一変するBIM建設革命』⑵(2009.01)、『BIM元年―広がるデザインの可能性』⑶(2009.08)、などがその代表格といえるだろう。
 

1.「施工BIM元年」は2015年。

このような動きから、2009年は「BIM元年」といわれる。
 
当時の取り組み内容をよく見ると、まだまだ設計段階のBIMが中心といえる。施工段階のBIMは一部の先進的なゼネコンの設計施工案件での一気通貫における試行(図-1)や複雑な納まりを部分的に検討するような施工支援的な業務(図-2)の域を出ていなかった。そして試行は試行で終わり、実務への定着は見られなかった。
 

図-1 建築と設備の統合(2004年)




 

図-2 PCa部材の配筋検討(2004年)




 
その後、国土交通省が「官庁営繕事業におけるBIM導入プロジェクトの開始について」(2010.03)を発表し、設計段階のBIMの試行を始め、それを追いかけるようにJIA(日本建築家協会)が『BIMガイドライン』(2012.07)を、国土交通省も『BIMガイドライン』(2014.03)を策定、発表している。いずれも設計段階のBIMに関する記述が多いことから、施工段階のBIMのスタートを2009年にすることには少し違和感がある。
 
まだまだ施工段階のBIMは、設計段階のBIMの延長線上にあり、建設現場に関わる人たちがBIMを活用する主人公になるには遠い存在でしかなかった。
 
そのような取り組み経緯の中で、施工段階のBIM(以下、施工BIM)が本格的に始まったきっかけがあるのかと問われれば、その答えははっきりとしている。
 
それは2014年12月。
 
日本建設業連合会(以下、日建連)が『施工BIMのスタイル 施工段階における元請と専門工事会社の連携手引き2014』(以下、『手引き』)を発表した時にリスタートされたと言っていい(写真-1)。
 
今でこそBIMに関係する多くの人たちが当たり前のように「施工BIM」と言っているが、『手引き』が発表された当時は、設計段階のBIMモデルがなければ施工BIMは成り立たない、という風潮が根強かった。施工段階からBIMを始めても良いという考え方は一般的ではなかったのだ。それを業界としてちゃんと命名することで、施工BIMを真剣に考えた国内初のガイドブックとなった。
 

写真-1 『施工BIMのスタイル』(2014年)




 
『手引き』は工事現場で働くゼネコン職員や専門工事会社の設計・工事担当者こそがお互いに連携して取り組みの目的を共有し、自らの業務を効率化するところに施工BIMを活用すべきだ、と宣言している。また『手引き』が革新的であった点は、「設計段階のBIMは施工BIMに必要不可欠なものではない。施工段階からBIMを始めても効果が出る」と今までのBIMのアプローチ手法を変えたことであった。
 

2. BIMは工事現場でこそ活用すべき。

もちろん一気通貫のBIMは理想論として残っている。
 
施工側が「設計段階のBIMは施工段階で活用できない」から施工BIMに取り組まない、というように理由を他責にするのではなく、施工系のBIM担当者が施工BIMを活用する道筋を自ら示すことで、施工側から設計側へ一気通貫を実現させようとする逆説的な新たなBIMのアプローチの始まりでもあった。
 
この頃になると海外と国内での工事の発注形態の違いから海外でのBIMの活用方法をそのままトレースすることは難しいことも周知の事実になりつつあった。生産性を向上させる、という万国共通の命題があったとしても、海外では発注者や設計者がBIMを活用する目的が、工程遅延や工事コスト増に関するリスク回避にあった。
 
そのため海外の考え方をそのまま国内に移植する難しさが表面化してきた。日本ではそのようなリスクをゼネコンが一式請負として背負っているのだ。日本では発注者や設計者はBIMがなくても困っていない場合が多い。彼らはBIMに取り組むインセンティブ(動機づけ)が見つけられないのである。
 
『手引き』の発表以降、施工系のBIM担当者は堰を切ったように怒涛のごとく施工BIMを語り始めた。例えば2015年から3年連続して開催されたセミナー「施工BIMのインパクト」(主催:日刊建設通信新聞社)の主人公は、実際に工事を担当するゼネコンのBIM担当者であり、専門工事会社のBIM窓口だ(写真-2)。
 

写真-2 「施工BIMのインパクト」開催状況(2017年)




 
ここで発表された事例の多くが、設計段階において施工者が施工BIMモデルの作成を設計者と連携して始めており、逆説的なBIMの一気通貫のアプローチが現実的な取り組みであることを確認できる⑷。
 
時代の流れも施工BIMを後押しした。
 
政府が平成29年3月28日に「働き方改革実行計画」を策定し、建設業界全体も改革に取り組まなければいけない時代となった。今後の取り組みは「適正な工期設定」、「週休2日の推進」以外にも「全面的なICTの活用」による生産性向上もテーマのひとつだ。ゼネコンでは改革を実現するツール(道具)として施工BIMの適用などを考え始めている。
 
日建連は2016年4月に「当面5年程度で、建設工事に携わる会員企業全社における施工BIMの適用を目指す」と宣言した⑸。
 
このような背景からゼネコンでは、ここ数年の間に施工BIMを担当する部署の設立などの組織改編が進む。施工BIMを推進する担当部門の大半が、施工系の部門に設置されていることからも、建設現場での働き方改革の実現に向けて施工BIMに取り組もうとする意気込みを感じることができるだろう。
 
 

施工BIMを概観する。

『手引き』が発表された2015年以降は、各ゼネコンにおいて施工BIMに特化した取り組みが始まった。それに呼応するように専門工事会社においても取り組みが加速し始めている。ここ数年の間にもお互いが連携した施工BIMの実例が増えたことで、ゼネコン、専門工事会社や設計者にとって良い点や課題点もあらためて整理されてきた。
 
そこで施工BIMの適用による新たな効果として考えられることを【○】、課題が残ることを【×】、経験値を重ねつつもう少し工夫が欲しいところを【△】で評価し、近年の施工BIMの取り組みを概観してみよう。
 
施工BIMの取り組みメニューは、おおむね以下の項目にまとめることができる。
 
① 工事関係者(発注者、設計者、元請、専門工事会社) 間の合意形成
② 干渉チェック・納まり確認(図-3)
③ 施工性検討・施工シミュレーション(図-4)
④ 施工図・製作図の作成(図-5)
⑤ BIMモデル合意(BIMによる調整会議の開催)(写真-3)
⑥ 数量把握
⑦ その他(BIMによる自動施工など)
 

図-3 干渉チェック・納まり確認




 

図-4 施工シミュレーション(鉄骨建て方手順)




 

図-5 3次元施工図




 

写真-3 BIM調整会議




 
上記① ~ ⑦の取り組みで共通して言えることは、施工BIMの活用により工事関係者間の施工図・製作図の打合せ(コミュニケーション)の進め方が大きく変わったことだ。そこで以下では打合せスタイルの変革について詳しく取り上げてみたい。
 

1. 施工BIMを活用した打合せは【○】だ。

打合せスタイルの変革は圧倒的に【○】。
 
ただしゼネコン側では今までとは違う打合せの進め方に配慮する必要がある。特に前ページの取り組みメニュー①、④、⑤に大きく関係する。
 
BIMを活用した今までの打合せは、正しい最新情報が2次元の図面上にあることが多かった。BIMは図面を分かりやすくする脇役でしかなくぞんざいに扱われていた。それを施工BIMでは考え方を真逆にする。BIMを「正」とし、2次元図面をBIMの副産物にすることを徹底するのだ。
 
専門工事会社は自社の工事範囲のBIMを用意し、作業所に提出する。作業所は各社のBIMモデルを統合し、事前に課題の抽出を行い、参加者にそれらの項目を伝える。参加者は会議前に議題を確認し、対応方針を決めて打合せに参加する。これによりゼネコンのBIM担当者、専門工事会社のBIM窓口、設計者が参画するBIMによる施工図・製作図に関する調整会議(以下、BIM調整会議)が成り立つようになった(写真-3)。
 
BIM調整会議では、BIMモデルで確認された「検討課題リスト(図-6)」が議題となり、そのまま議事録になる。
 
工事に関係する全ての方々が一堂に集まり、施工BIMの目的(ゴール)を明確にしてBIMに取り組むようになったことは【○】にしてもいいだろう。
 

図-6 検討課題リスト(部分)




 
特にS造の場合では、工事着手時から鉄骨製作図の承諾に向けて工程がタイトになる傾向にあり、図面担当者の業務が一気にピークとなってしまう。図面担当者は集まった図面をチェックし、変更の指示を個別に各社に返しながら、図面の承諾工程も管理する(写真-4)。
 

写真-4 施工図の進捗状況を貼り出して共有している




 
BIM調整会議は工事に関係する各社が一堂に集まり、その場で参加者が同じ議論を共有し、そして方向性を出し、ゼネコン側は一気に関係者に指示を出す。専門工事会社もみんなのいる前で懸案事項をぶつけられるため調整段階での未確定事項の先送りが低減しやすい。そのためお互いの精神状態はすこぶる良い。
 
施工図の検討時に図面担当者が工事中に発生しそうな不具合に気が付かないと、それがそのまま工事が進む現場内で同じ事象が発生する。これらを施工BIMにより先行して検討することで工事中の不具合も低減できることは、施工BIMに取り組んだ関係者が口をそろえて実感したと言っている。工事中の不具合低減は施工BIMの効果として大きな【○】にできる。
 
施工BIMが進んでもしばらく2次元図面は残ると思われる。工場の製造工程や現場での部材取り付けには仕様や寸法などが必要であり、今すぐなくすわけにはいかないからだ。しかしBIM調整会議により専門工事会社は、ゼネコンから要求される2次元検討図の作図業務や図面出図後の訂正作業が激減した。
 
ゼネコン側は検討図面を作成しなくても、BIMモデルで検討できるし、専門工事会社は検討に漏れが少ないことからその後の図面修正作業も低減するのである。このような会議の進め方はゼネコン、専門工事会社とも【○】である。
 

2. BIM調整会議では方向性を出すことが重要。

しかし、今現在全ての工種が施工BIMに取り組んでいるわけではない。特に外部仕上げ(外壁、金属製品など)や内部仕上げ(間仕切りなど)ではいまだに2次元対応が多い。彼らはBIM調整会議自体には参加しているが、肝心なBIMモデルが元請に提供されないがゆえに、その部分の取り合い調整が2次元図面で始まってしまい、異工種間の調整作業の足並みが揃わない。すべての工種が施工BIMに参加できていない現状は【△】だ。
 
そうはいっても施工BIMに取り組む作業所では、作業所長が調達部門と連携して業者選定を早めるなど、社内での動きも目に見えて変わってきているのは特筆すべきであろう。
 
ただし、どの案件でも同じように動けるかと言われれば、それは受注形態に依存する。どの作業所でも施工BIMを工事着工と同時に進めることができないのは【×】。もう少し施工BIMが一般的になるまで待たなければいけない。
 
BIM調整会議をうまく進めるためには、その場で方向性を出すことだ。施工BIMの取り組み成果を大きく左右する。ところが、今までの慣習で「後で検討しよう」が始まり、その次の会議でも結論が出ていないと、図面承諾までの作業工程が圧迫され、「かえって手間がかかる」となってしまう。
 
特にゼネコン側の図面担当者には「答えを先送りさせない」という強い意志が要求される。まだまだ認識が甘い場合が見受けられるため、もう少し工夫が欲しい。
 
BIMにより意思決定が早くなる、はBIMというより担当者の人間系の認識が切り替わらない限り【△】となる。
 
BIM調整会議で使用する「検討課題リスト」は、干渉箇所や離隔距離が確保できていない箇所のリストだ。ところが屋外鉄骨階段の手すりデザイン(図-7)などのように、BIMモデルでは納まっているが、デザイン的に検討を要する部分は、リストに自動的に記載されない場合が多い。このような箇所は施工BIMでは設計図通りに進んでいるため、施工側としては検討課題との認識は持ちにくい。
 

図-7 屋外階段の手すり




 
設計者がデザイン変更したいと思うのなら、BIM調整会議の早い段階での意思表示が欲しい。「図面が出てこないと検討できない」などと言い始めるとBIM調整会議のメリットは半減してしまう。業者としてはいつまでたっても製作に必要な図面がまとまらないからだ。
 
デザイン検討は設計BIM的な要素が大きいし、人間系で解決しない限りいまだ有効な解決策は見当たらない。
 
デザイン検討はどちらかというと【△】に近い。昔からの伝統というのか課題であるが、今後、施工者と設計者が連携してBIMによる生産性向上を追求するのに避けては通れないテーマの一つであり、BIMによる新たなワークフローを構築する必要がある。
 

3. 施工計画のBIM化は取り組みやすい。

施工BIMは先の取り組みメニューで示したように、施工図・製作図の検討を効率化する「BIMモデル合意」が全てではない。作業所における初めての施工BIMは、施工計画のBIMによる「見える化」が効果を期待できる。施工計画への取り組みは【○】になる。
 
しかし2次元設計図をBIM化して、そこに外部足場やクレーンを配置するだけではイメージの共有としてしか活用できない。施工BIMの初心者はここから始めることになるのだが、次のステップとしてはBIM調整会議でBIMモデル合意した施工図・製作図レベルのBIMに外部足場などを配置して、より現場に近い環境をつくり施工BIMを活用することが今後は求められるだろう(図-8)。ただし、今業界として足場材やクレーンなどのライブラリーが整備されていないのは痛い。施工計画のライブラリーの不足は【×】であるが、近いうちに整備されることを期待したい。
 

図-8 施工BIMによる外部足場計画




 
 

今後の展開

建設業における生産性向上の実現は、もう待ったなし、である。BIMをはじめとしたICTなどを活用した仕事の進め方を本気で考える時期である。まさしく「今でしょ!」なのだ。そこにはツール(道具)の進歩だけでなく、建設業界で働く全てのヒトのマインドも大きく変化しなければいけない。
 
ゼネコン各社では、新たにAI(人工知能)や自動施工などの技術開発が進んでいると聞く。このような技術開発を昔のように試行で終わらせないためには、最新版の情報管理をヒト系からデジタル系に変えるような新たな建設業界の慣習をつくっていかなければならない。施工BIMにおいてBIMモデルを「正」とした運用を始めているのは、これを意識している。
 
今後は設計者、施工者と発注者が、例えばBIMというツールなどを介して同じ土俵でお互いがメリットを享受するようなシステム確立が待たれる。そこには法整備、発注形態の変化や契約における責任範囲の考え方などと同時並行での検討も必要だ。精神論やツールに頼るだけでは実現は難しい。
 
建設現場における生産性向上は、このシステムが実現した時に確立される。
 
 
⑴『BIM・Japan vol.1 建設技術革新の現在進行形-がんばれ、ニッポンの建築。』、エクスナレッジ、2008.12
⑵『業界が一変する BIM建設革命』、山梨知彦、日本実業出版社、2009.01
⑶『BIM元年―広がるデザインの可能性』(a+u 2009年8月臨時増刊)、新建築社、2009.08
⑷『BIM活用効果最大化へ水平展開』、日刊建設通信新聞社、2017.09.04(掲載紙面は日建連「施工BIMのスタイル」ホームページからダウンロードできます)
⑸『生産性向上推進要綱』、日本建設業連合会、2016.04
 
 

前田建設工業株式会社 建築技術部 TPM推進グループ長 曽根 巨充

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2018
特集1「i-Construction×CIM」



 



モーションキャプチャを活用した没入型安全教育システムの開発

2018年8月10日

 

はじめに

建設産業の労働災害は、業界の懸命な努力により死傷者数、死亡者数とも長期的視点では減少傾向を示しているものの、2016 年も1年間で15,000名超の死傷者が発生している。これら労働災害の原因要素分析を行うと、労働災害は、複数の原因が重なり合って発生している傾向にあり、その原因には必ず当該作業関係者の不安全行動が含まれている。この不安全行動を防止するため、建設現場では「人間がエラーすることを前提とした対策」、「人間のエラー発生を抑止する対策」などさまざまを講じるものの、さらなる「対策の不備」や「想定外のエラー」の発生は否めない。これらに対し、当該作業関係者の「作業に潜む危険」への「気づき」があれば、「対策の不備」や「想定外のエラー」を補完でき、労働災害を大幅に減少させることができる。この「気づき」は、知識や体験から生まれるものであり、その根源は、現場における「ヒヤリハット」である場合も多い。この「ヒヤリハット」を安全にかつ数多く体験し、「気づく能力」を身に着ける仕組みとして「モーションキャプチャを活用した没入型安全教育システム」を開発した。本稿では、この安全教育システムについて報告する。
 
 

没入型安全教育システムという新しい試み

従来より労働災害を防止するため、安全教育が実施されてきた。この安全教育は、定期開催に加えて、雇い入れ時、送り出し時、新規入場時などさまざまな局面で実施されている。一般には、講師による当該現場に相応する過去の災害事例や映像を用いた一方通行型教育が主流である。一方通行型教育の特徴として、同時に多数の受講者に教育を実施できるが、その理解度は受講に臨む個人の意欲や能力差の影響を受ける。また教育による理解度を測り、学習効果の検証を実施していないのが一般的である。一方、グループ学習などで写真や図面を見ながら安全上問題となる点などをグループで意見交換を行う相互通行型教育も実施されている。しかしグループ学習では、グループ内の誰かが解答すれば他の参加者は何もすることなく済む場合が多く、結果として限られた参加者のみが学習しているにすぎない。これらの現象の背景には、教材として用いる災害事例への受講者の「当事者感の欠落」や受講者のモチベーションを向上させない「教育方法の恒常化」などが考えられる。これらに対し、いかに受講者の集中力を高め、学習効果を得るかが重要である。本開発は、安全教育の教材にバーチャルリアリティ(VR)に関する技術を導入し、安全教育受講者に労働災害の当事者として体験させることで従来型安全教育の課題を解決することを目的としている。
 
 

モーションキャプチャの導入

1 没入体験により集中力を向上させる
 
モーションキャプチャとは、現実の人物や物体の動きをデジタル的に記録する技術である。このモーションキャプチャを活用することで、VR被験者の行動を仮想空間内で瞬時に再現できるようになる(図-1)。
 

図-1 安全教育システム「リアルハット」の体験状況




 
これにより人間の脳は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)で展開される仮想空間内の出来事を現実として捉え、VR被験者自身がその仮想空間内にあるように錯覚する。その際、VR被験者は仮想空間内で再現される映像や音に集中し、その世界に浸った感覚となっている(図-2)。
 

図-2 思わず避けるVR被験者




 
この体験を「没入体験」という。この「没入体験」を伴う「新しい教育方法」により、VR被験者すなわち安全教育受講者の集中力を高め、学習教材に取り組む環境を整えることができた。
 
 
2「気づき」を引き出す
 
「気づき」は、自分を取り囲む環境内でそれまで意識しなかった事柄に注意が向き、その事柄を問題として認識することである。人間は、この「気づき」を得た後、認識した問題(気づいた事柄)に自分なりの価値観を設定(評価)し、その価値観に基づく行動を起こす。よって、教育には「気づき」を引き出すことが重要であり、より多くの「気づき」を引き出せる安全教育システムを構築できれば、不安全行動の抑止に大いに貢献できる。そこで、本安全教育システムの開発と履修に当たっては、効果的に「気づき」が得られるよう内省・洞察できる仕掛け(イベント)を盛り込んでいる。またVRは、画像と言語や文章によるあいまいな説明を受けるよりも直感的に理解できる特徴がある。さまざまな視点から何度でも繰り返し体験することで「気づく力」を鍛え、その結果、作業に携わる関係者の自主的、自発的な安全行動を誘発できる。
 
 

「モーションキャプチャを活用した没入型安全教育システム」の概要

1「気づき」を引き出すためには
 
本システムは、VR被験者が仮想空間で労働災害を体験することで自然に「気づき」が得られる仕組みではあるが、効果的な安全教育を実施するためにシラバス作成とそのシラバスに適合したVRシナリオ作成を行っている(図- 3)。
 

図-3 安全教育システム「リアルハット」のコンテンツ




 
バックホウ編では、労働災害が発生する前に講師がVR被験者に対し「ここを安全に通行するには何をしたらよいか?」と声をかける(図-4)。
 

図-4 講師による声掛け




 
するとVR被験者は、さまざまな行動を試し被災を繰り返しながらも、最終的に「安全に通行する」ために必ずしなければいけない事柄に気づく。仮想空間の中で「気づき」を実践することで労働災害を回避し、終了する仕組みとした(図-5)。
 

図-5 バックホウ編のスタート画面




 
一方、クレーン編では、労働災害の概要説明を行った後、VR被験者に対し「被災者のあなたは、周囲を見て労働災害が発生した理由に気づかないか?」などの問いを与える(図-6)。
 

図-6 「気づき」の指導




 
これに対しVR被験者は、キョロキョロと周囲を見渡したり(図-7)、自らが仮想空間の中を移動して「死角の存在」「合図員の立哨位置」など複数の労働災害発生要因に気づく(図- 8)。
 

図-7 被災場所から望む




 

図-8 関係者の立場で被災場所を望む




 
さらに講師は「では、どうすれば回避できただろうか?」とさらに声をかけ、VR被験者に具体的な対策を考えさせ、深い「気づき」に至らせる。
 
本システムでは、仮想空間の中でVR被験者が労働災害の被災者となって労働災害を体験できることに加えて、労働災害発生時の関係者に立場を変えて被災状況を第三者的に見ることもできる機能を持たせた。被災者から関係者へと立場を変えて複数回体験することで、VR被験者は、労働災害の発生状況を俯瞰的に感じつつ、「被災者の私は、相手側にこう見えるのであれば、こう配慮しよう」「関係者の私は、このようなところにも気をつけながら作業の進捗を監視しよう」などと多くの「気づき」を得ることができる。
 
シラバスと適合したVRシナリオによりVR被験者の「気づき」を容易に引き出すことが可能となった一方で、被災体験の反復による精神的外傷の発生が懸念された。このため、被災時の映像表現は、過度にならぬよう配慮した。また、本システムで構築した仮想空間は、実際に発生した災害事例を再現している。これは労働災害の発生状況にリアリティを持たせ、多くの「気づき」を誘発させるためである。この試みにより、風化させたくない労働災害を新鮮な形で記録するという副産物も生み出した。
 
 
2「気づき」「学び」「成長」のスパイラル方式
 
VR体験は、VR被験者にとって最初の体験が最も新鮮かつ衝撃的である。同VRシナリオを繰り返し体験することで、その新鮮さや衝撃度は急速に失われ、「気づき」を得ることは難しくなる。こうしたシステムでは、頻繁なVRシナリオの更新や追加が必要とされるため、開発費が膨大に膨らむことが予想され、長く使用できる教材としての価値を失うこととなる。そこで、これらの課題に対し、VRシナリオに階層性を設けた「スパイラル方式」を導入している(図-9)。
 

図-9 スパイラル方式の概念




 
「スパイラル方式」は、①作業員を対象とした「危険を基本的に理解できるレベル」、②現場管理者を対象とした「安全の法規を含めて理解できるレベル」、③事業者を対象とした「総合的な安全対策を理解できるレベル」の複数段階に設定している。ひとつのVRシナリオにおいて作業員個人が安全対策を行える、職長クラスが安全対策を指導できる、元請会社が安全パトロールできる状況に対応させている。
 
足場点検編では、仮想空間に設置された足場をVR被験者が点検するシチュエーションとなっている。点検する足場には異なる難易度のイベント(安全対策違反)が多数設定されており、VR被験者は実際の安全点検と同様に仮想空間内をウロウロしながら、隠されたイベントを探す(図-10、11)。
 

図-10 仮想空間内で足場点検




 

図-11 仮想空間で寸法計測




 
VRシナリオの中に、異なる難易度のイベントを構築することにより、VR被験者の能力に応じた「気づき」を得ることができる上に、反復体験することで新たなる「気づき」を得、「学び」「成長」へとスパイラルアップすることができる。特に難易度の異なるイベントは、階層ごとに解答集としてまとめているため、学習効果の確認も容易にできる。さらに、足場点検編では、体験型教材も製作した。この体験型教材は、安全帯(胴ベルト・ハーネス)で宙づりになったという設定で、救助者が到着するまでの間、自分でできるレスキュー訓練を行うものである(図-12)。
 

図-12 体験型教材「レスキュー体験」




 
不幸にも宙づりとなってしまった場合、宙づり時間が長くなると安全帯によって締め付けられた体は、呼吸困難、血栓障害等を発症する。これら体の異常を緩和するためのレスキュー動作を、体験することができる。
 
 
3 使用するシステム機器の構成 
 
本システムでは、立体映像処理と3次元インターフェース等を用いることで、従来よりもリアル感を体験できるVRを実現するシステムを構築している。
 
(1)ワークステーションの構築
ワークステーションは、下記の仕様によるシステムで構築している。通常のPCでは動作性が乏しくなるため、最低限以下のスペックが必要となる(表- 1)。
 



 
(2)ヘッドマウントセットの選定
現在、ヘッドマウントセットは数種類販売されているが、プログラム映像への没入感や仮想空間における自由度を重視し、「HTC VIVE(以下、「VIVE」)」を選定した。
 
VIVEは、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)・コントローラー・ベースステーションにより構成されている(図- 13)。
 

図-13 ヘッドマウントセットの構成




 
①HMD
VIVEのHMDは非透過型であり、外部の視覚情報を遮断し、HMD特有の高解像度グラフィックスで見ることで、一瞬にして“没入する体験”が可能である。タイムレスかつ自分の意思で360度周囲を見渡すことができる。
 
②コントローラー
コントローラーはワイヤレスであり、VR用に特別に設計されていることから、リアルな触覚フィードバックが可能となる。
 
③ベースステーション
2つのベースステーションを設置することにより、体験者を360度動作追跡し、優れた没入感が得られる。また、ベースステーションの設置範囲を設定することで、シャペロンガイダンスシステム(プレイエリア外に出そうになると警告される)により、設定された
範囲内で安全に教育を受講することができる。
 
 

VR技術の活用時における課題と今後の方向

今回、「モーションキャプチャを活用した没入型安全教育」の開発をおこなったことで、従来型安全教育の課題を解決できたと考える。しかしその一方で、VR技術を採用するがゆえの課題が明確となった。安全教育を実施する場合、一般的には工事現場の作業を一時中断させて教育会場に大人数を集めて実施する。これは、コストや工事工程を理由としたものであり、これらの実施方法にも対応する必要がある。しかし、現在のVR技術では、複数の被験者による同時体験は難しい。VR技術を活用した教育手法の学習効果がいかに高くとも、大人数の受講者を効率よくさばくことができなければ、その価値は高まらない。よって今後は、複数の被験者が同時に仮想空間の中で労働災害を体験できるソフトやデータの開発が必要である。また、土木建築工事において多く発生しやすい労働災害をモデルとした教材や専門工事向けの教材の作成も必要である。さらに、本システムでは、「気づき」を引き出す講師の存在が極めて重要である。この「気づき」を引き出す講師育成を行うため、 シラバスの充実、運用DVDの作成などを実施しなければならない。
 
 

西武建設株式会社

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2018
特集3「建設ITの最新動向」



 



施工BIMの今-大林組のBIM・米国グループ会社との比較の観点から-

2018年8月5日

 

はじめに

施工BIMと一口に言っても、日本の施工BIMと諸外国のそれとでは異なっている点が多々ある。ツールとしてのBIMは、やがては進んでいる方に追い付くように思えるが、文化の違いを反映しがちなマネジメントのプラットフォームとしてのBIMでは、そう簡単ではない。
 
ソフトベンダーやコンサルの方々が成功例として紹介する海外の施工BIMに違和感を覚える人は多いのではないか?「工期が**%短縮された」「費用が**%削減された」と言われてもにわかには信じがたい。比較の元は何?そこをあえて追求しないのは「ま、海外と日本では違うからね」ということであろう。デザインの分野はそこそこインターナショナルだが、施工は規模が大きくても、まだまだ地場産業だということでもある。
 
 

Webcor社

海外の建設会社の事例として、米国のWebcor社を取り上げる。Webcor社はサンフランシスコエリアを中心に事業を展開している建設会社で、2007年に大林グループの一員となった。現在はカリフォルニア州の大手建設会社の一つにまで成長している。興味のある方はホームページ(http://www.webcor.com/)を参照してください。
 
Webcor社は以前から3Dツールの活用に積極的であり、大林組がBIMを正式に導入する2010年以前からBIMを活用していた。導入前にはWebcor社を視察し、導入後には東京にBIM担当者を招きワークショップを開催するなどして交流を図っている。
 
 

自社設計・他社設計・プレコンストラクション

施工BIMの入り口は発注・契約方式によって異なる。
 
設計施工の場合は、社内でフロントローディングが可能である。生産側がコーディネーションミーティング(写真-1)に参加することにより、コンカレントにモデルづくりを協働できる。この場合、施工BIMの入り口は実施設計プロセスの中にある。当社では設計部門と施工部門の協働をよりスムーズに行うために、2017年11月からBIMマネジメント課を本支店に設置し、設計BIMマネージャーと、施工BIMマネージャーを配属した。BIMマネージャーは設計・施工合わせて65名が認定され、BIMの活用方針の策定と運用の監視に当たることにした。
 

写真-1 コーディネーションミーティング




 
設計施工分離の場合、設計が完了してから施工が始まるという従来型のプロセスとなり、施工BIMの入り口は着工時である。この時に設計側から使えるBIMモデルが提供されれば問題ないが現状それは難しい。使えるという条件の一つは、モデルファーストで設計図面がBIMモデルから切り出されているということである。
 
BIMソフトを使って設計する設計事務所は増えてはいるが、それは設計行為に留まっており、BIMモデルが存在していても多くはレファレンスの域を出ない。確認申請にBIMモデル提出を義務化しているシンガポールでも、設計モデルの整合性が保証されているわけではなく、現段階では施工側にとって設計モデルを作り直して使うより、一から施工モデルを作った方が効率的という報告1)もある。
 
海外では設計施工分離の場合、その協働を促すために、プレコンストラクションというプロセスがあることは珍しくない。これは実際の施工が始まる前に、設計事務所と協働して工期や予算を発注者の要望に合わせて実施設計を行うプロセスで、フロントローディングという行為が契約の形を取っている。日本では公共工事の発注で時折見られるECI方式がこれに近い。
 
Webcor社では戦略的に、プレコンストラクション付きのプロジェクトに力を入れている。米国では一般的なことであるが、Webcor社は施工専門会社であり、設計部門を持っていない。また、日本のゼネコンが行う生産設計は設計の範疇である。従ってWebcor社では3Dモデルの作成は行わず、プレコンストラクションにおいても、施工側の要望を盛り込んだBIMモデルを設計側が作成する。モデルは設計事務所やサブコンが作るもので、当社をはじめ日本のゼネコンが工夫して作成している生産設計モデルやその図面化は、基本的に彼らの課題ではない。
 
 

施工におけるBIMの活用

専門業者との協業が進んでいる分野は設備工事で、これは洋の東西を問わぬところである。設備サブコンの参加しないBIMは価値が半減する。当社でも建築モデルと設備モデルの統合や、免震層のチェックなどは施工BIMの定番メニューである。また、属性を付与された設備モデルは維持管理段階の主役となるので、これを見据えた施工BIMのありようが研究開発のテーマとなっている。
 
Webcor社においても設備BIMに重点を置いており、一定規模以上のプロジェクトについては、建築モデルと設備モデルの統合・整合性の確保は必ず実施している。図-1は天井内の設備モデルである。モデルが確定しサブコンの承認を得た後、現場ではモデルから位置情報を取得し、天井インサートやスリーブ、箱抜きの位置出し(写真-2)に利用している。写真-3はノルウェーの例であるがBIMデータから座標情報を取り込み、後打ちインサートを施工するロボットも開発されている。
 

図-1 天井内設備モデル




 

写真-2 天井インサート等の位置出し




 

写真-3 天井インサート施工ロボ




 
躯体工事では、鉄骨ファブとのデータ連携が課題の一つである。固い部品の集まりである鉄骨はBIMとよくなじむので、鉄骨ファブが使用している鉄骨専用CADに対して、構造設計モデルとのデータ連携が可能である。現状、条件次第で鉄骨生産モデルを使い関係者の合意を得て、一般図や単品図が生成可能なところにきている(図-2)。
 

図-2 鉄骨生産モデル




 
一方、Webcor社ではRC躯体工事での3Dモデル活用が盛んである。Webcor社にはself-performing workの伝統があり、社内にRC躯体工事専門部署を持っていることも、これを後押ししている。RC造の多くはコア部分とフラットスラブ+独立柱部分で構成されており、構造要素が合理化、単純化されている(写真-4)。そのため、PC工法でなくとも1フロア最短3日の施工サイクルを可能にしている。1フロア2週間はかかる日本の在来工法と比べると驚きの速さである。躯体の形状が合理化、単純化されていることは、型枠支保工もシステム化が容易であり、すなわちモデル化が容易であるということでもある(図-3)。
 

写真-4 RC建築物の施工




 

図-3 型枠支保工モデル




 
仕上げ工事のデータ連携も製作までつながることが望まれる。当面のターゲットは複雑な形状をしたカーテンウォールや金属パネルなどである(図-4)。製作工場では以前から図面からデータを読み取り、人力でNC機械に入力し加工することは行われているが、BIMモデルからのデータ一貫利用の事例は限られている。加工機の機能の問題もあるが、前提として、信頼のおける建築モデルを提供する必要がある。
 

図-4 カーテンウォール製作用モデル




 
Webcor社の例としてサンフランシスコ近代美術館(SFMoMA)の外装パネルを挙げる(写真-5)。このパネルはFRP製で波打った表面が特徴である。BIMモデルで作成した形状データを使い、FRPパネル製作のための型枠をNC機械で製作した。
 

写真-5 SFMoMAの外装パネル




 

施工BIMとICT技術

近年、IoT、点群、画像認識、VR/MR/ARなどのICT技術の開発が進んでいる。これらとの連携はBIMの価値を大きく高めることになるため、当社でも社内外のリソースを活用し積極的に取り組んでいる。特に施工フェーズでは改修工事を中心に、点群利用の機会が増加している。2016年の熊本大地震で被災した熊本城飯田丸五階櫓の緊急倒壊防止工事では、石垣に接近することなく3Dレーザースキャナーを使って現況を測量し、一刻を争う工事計画の立案に大いに貢献した。
 
ICT技術の活用フィールドの多くはバーチャル空間の建築物である。ICT技術があっても、建物モデルがなければ使えず、そのためだけにモデルを作るのは無駄である。施工BIMをあまねく普及させることが肝要といえる。
 
 
参考文献
1)田村、金多、Deng、古阪:シンガポールでのBIM導入の現状に関する一考察、日本建築学会大会学術講演梗概集(九州)、2016年8月
 
 

株式会社 大林組 建築本部 PDセンター所長 宮川 宏

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2018
特集1「i-Construction×CIM」



 



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