2023年9月14日
概要実務設計におけるBIMの効果と可能性は非常に大きい。 実務者へBIM教育実務での課題BIM設計はこれまでの設計の仕方とは大きく異なります。 効率の低下が経営損失を産むそのため設計効率が一時的に低下。 図-3 BIMを求められていないBIMに移行しなくても仕事ができる状況がある場合、無理して移行する必要がありません。
2Dを超える効率化は可能ただし、BIM設計でも準備が事前にできていれば、まるで線を引くかのように壁を書くだけで、属性情報も立体情報も全て含んだ状態で配置されるので、設計が非常に効率化されます。
意識を変えられないもう一つ、設計の仕方が変わることへの意識的な抵抗です。
結局は教育正しいBIM設計の方法習得による経営損失の圧縮、BIMによる効果・メリットの周知しBIMを求められる環境にする、そして設計者自身の意識の改革、これらを可能にするのは、結局のところ実務者、経営者、そしてクライアント等含め教育しかありません。
失敗から始まるここで私たちの失敗についてお話しします。
BIM設計は総合的な設計手法分かったのは、BIM設計は総合的な設計手法で、断片的な機能習得ではその効果をわずかしか発揮できないということです。
3つの疑問に立ち返るではどこから教えたらよいのか、そこでもう一度自分たちがBIM導入時に思ったことを思い出してみました。 どう始めればよいの?自由はハードルを上げる私たちがこの事業を始める前はVectorworksの世界では「それぞれが自由にやる」という風潮がありました。
簡単さが必要ハードルが上がっている、ここに課題があると気付きました。
VectorworksBIMスターターパックの誕生そして、開発したのがVectorworksBIMスターターパックです。
予想以上の高い評価を受ける完成後、このVectorworksBIMスターターパックを実際に触ってもらい、その可 何が正解なの?基準がない状態で答えは出ないVectorworksBIMスターターパックを開発した時、困ったのが、これ正解なの?と、何をやるにつけても問いが出てくることです。
エレガントな連携状態そのような状況の中、以前、数学では「エレガント」という考えがあるというのを聞いたのを思い出しました。
行き着いたのはプラットフォームこの考えがブレークスルーとなっていきます。 Vectorworks BIMプラットフォーム構想の有効性それは生物の生き残り戦略と似ています。
一つの正しさそのような多様性を担保できる共通基盤=プラットフォームがあるのなら、まずはそこにある基準を使うことが正解となります。 誰か助けてくれないの?これまでのやり方ではうまくいかない私自身の話ですが、BIM設計を始めようとした時、解説本を読んだり、ネットで調べたりしたのですが、実際の仕事でうまくいきませんでした。 何が問題かが分からないまずはなぜうまくいかないのか、ソフトのせいなのか、操作のせいなのか問題が切り分けられず、ただ無駄に時間を浪費していく。 共通言語が存在しないなぜ存在しないのか。
単なる技術教育は失敗するそうなると、共通するのはどうしてもソフトに依存する機能だけということになります。
高度なことは覚えてくれないまた、高度なBIM機能をいきなり教えようとしても、高度なことができるのは、時間があり、高いスキルを持った人だけです。
自己流はリスクを大きくする自己流ではこの複雑なBIMを俯瞰し切れることは難しく、どうしても抜けが出てしまい効率や効果を上げ切れません。
自力で習得時代の終焉これは自力で克服する時代の終焉を意味しています。 Vectorworks BIMスターターパックとVectorworks BIMプラットフォームが変える実務者教育Vectorworks BIMスターターパックとVectorworks BIMプラットフォームがもたらすのは、BIMを簡単に始められる方法と安心してBIM設計を行える共通基盤です。
基礎から応用まで実効性の高い教育を提供まず、基礎段階では、詳しい機能などに触れることなく、簡単かつ効率的にBIM設計を教えることが可能になります。
教育は技術や方法のその先へ導くこの考え方では、例えば高度なシミュレーション技術があったとしても基礎レベルの利用者はその内部構造を知らなくてもいいということになります。 資産を継承しボトムアップするこれが意味するのはBIM設計においてさまざまな成果がこれまでとは比較にならないほど簡単に再利用可能になるということです。
実務教育は効率性から創造性へこのようにしていけば設計者は難しいことを覚えることなく、BIMで何を作りたいか、それだけに集中できます。 フローワークス合同会社 代表
横関 浩
建設ITガイド 2023 特集2 建築BIM |
2023年9月11日
はじめに(1)Society5.0の社会へデジタル技術がもたらす社会像として「Society5.0」があります。 (2)i- Constructionの推進わが国は、現在、人口減少社会における働き手の減少への対応や潜在的な成長力の向上、産業の担い手の確保・育成などに向けた働き方改革の推進などの観点から、生産性の向上が求められています。 建築BIM推進会議の設置と令和3年度までの取り組み状況(1)建築BIM推進会議の設置(令和元年6月)国土交通省では、前述の「成長戦略フォローアップ」に基づき、建築物のライフサイクルにおいて、BIMを通じデジタル情報が一貫して活用される仕組みの構築を図り、建築分野での生産性向上を図るため、官民が一体となって「建築BIM推進会議」(以下、推進会議)を令和元年6月に設置しました。 (2)「建築BIMの将来像と工程表」の策定(令和元年9月)令和元年6月に第1回推進会議が開催され、同年9月の第3回の推進会議において、「建築BIMの将来像と工程表」が了承されました。
特に1点目の役割分担に留意し、①のワークフローの検討など、さまざまな業界間の調整が必要な部分については国が主体的に事務局を行う部会「建築BIM環境整備部会」(以下、環境整備部会)を設置することとし、②~⑤については既に民間の関係団体などにおいて検討が進められていることから、それらの各団体の活動を部会と位置付け、個別課題に対する検討などを進めることとされました(令和元年10月~)。 (3)ガイドライン(第1版)の策定(令和2年3月)①の検討を行う環境整備部会は、志手一哉芝浦工業大学建築学部建築学科教授を部会長とし、推進会議と同様に幅広い関係団体などにより構成されています。
(4)モデル事業の実施・ガイドラインの改訂(令和2~3年度)令和2年度から、第1版であるガイドラインの実証などを行うため、ガイドラインに沿って試行的にBIMを導入し、コスト削減・生産性向上などのメリットの定量的把握・検証や、運用上の課題抽出を行う、「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」(以下、モデル事業)を実施しています。 令和4年度の取り組みと今後の展開・展望(1)将来像と工程表の改訂令和4年6月に閣議決定された新しい資本主義実行計画グランドデザイン・フォローアップ(令和4年6月7日閣議決定)において、ガイドライン(第2版)に基づき官民が発注する建築設計・工事などにBIMを試行的に導入するとともに、建築物のライフサイクルを通じたBIMデータの利用拡大に向けて、2022年度中にロードマップを取りまとめるとされました。
(2)モデル事業の実施など(令和4年度)令和4年度も、令和3年度までの成果などを踏まえ、「先導事業者型」、「パートナー事業者型」、「中小事業者BIM試行型」の3つの枠に分けて募集を行い、「先導事業者型」は、8件、「パートナー事業者型」は3件、「中小事業者BIM試行型」は4件を採択しました。
(3)建築BIM加速化事業の実施(令和4年度第二次補正予算)「建築分野のBIMの活用・普及状況の実態調査」(令和3年1月国土交通省調べ)によると、1,000人以上の企業におけるBIM導入率は7割以上である一方、10人以下の企業では3割以下となっており、特に中小事業者にとっては、導入・運用に係る初期投資や習熟人材の不足といった課題がBIM導入の障壁として挙げられます。 (4)今後の展開・展望建築BIMの推進においては、官民一体となって個別課題に対する検討などを進めるとともに、共通する課題に横断的に取り組むことが重要となります。 国土交通省 住宅局 建築指導課
建設ITガイド 2023 特集2 建築BIM |
2023年9月7日
BIM教育の一例BIM教育に対する考え方芝浦工業大学のBIM教育は、旧工学部建築工学科で故木本健二先生が「オブジェクトCAD演習(2018年度よりBIM演習に改称)」を開講した2008年に遡る。
BIM教育のフロー当学建築学科の都市・建築コースでは、2年次後期にBIMソフトの操作を修得する「BIM演習1」、3年次前期にパラメータ利用やCDE環境を演習する「BIM演習2」、PMBOK(Project management body of knowledge)をベースとした BIMを用いた見積りゼミ当学科では、3年次後期に、建築学科の全教員が自身の専門分野に関連したテーマで開催するゼミに学生が参加する
モデリングの概要モデリングは、2~3名のグループでワークシェアリングを用いた共同作業である。 積算の概要積算の項目は、「公共建築工事内訳書標準書式」の細目に若干の追記をしたものを、各自が選択した建物と照らし合わせて判断する。 BIMを用いた見積り演習の意義このように手間のかかる方法で、それなりに本格的な見積書を作成するのだが、この苦労がBIMを学ぶ学生にとって重要な経験である。 BIMの高度人材教育に向けて学部生は、BIMソフトウエアの操作教育、BIMを用いた見積り演習、卒業研究ゼミを通じて、BIMソフトウエアのオペレーション技術を修得し、BIMはオブジェクトベースで物事を考えることであることを理解する。
BIMの理論を学ぶ授業授業はBIMの理論を体系的に学習することができるように、構成を模索しているところである。
修士ゼミ修士ゼミは、各大学院生が取り組んでいるBIMに関する専門分野の研究について大学院生相互で議論を重ねることで、BIMに関する知識と理解をより深くより広範に会得することが目的である。
国際交流2016年から、マレーシアのトゥンク・アブドゥル・ラーマン大学(UTAR)のコンストラクションマネジメント学科(Department of Construction Management)とPBL(Project Based Learning)のエクスチェンジプログラムを実施している。 英国の大学院における BIMコースBIMコースの概要2022 年11月に、知人が留学している英国の西イングランド大学ブリストル校の大学院BIMコース( MSc BIM in Design Construc tion and Opera tions )を訪問した。 日本のBIM教育との比較日本では、大学でBIM教育を行っているとしても、個人で努力や工夫をできる範囲であり、組織的な対応ができていない。 まとめ日本のBIM元年とされる2009年から2022年で13年の月日が経過した。 芝浦工業大学 建築学部建築学科 教授
志手 一哉
建設ITガイド 2023 特集2 建築BIM |
建築デザイン学科の歴史広島工業大学の建築系学科は、工学部につくられた建築学科に始まり、同学部で発展した建設工学科と、環境学部の環境デザイン学科に派生している。 カリキュラムの新たな柱建築デザイン学科では、「建築」を軸とし、「インテリア・木工」と「デジタルデザイン」を新たな柱として加えた。 手でつくることから建築を学ぶ「インテリア・木工」ではこれまでの伝統的なものつくりを学ぶために、本格的な木工機械を取り揃えた「木工房」を整備し、そこで1年生の最初の設計演習として「デザインワークショップ」をスタートする。 世界との溝を埋めるデジタルデザイン教育本学科のデジタルデザイン教育は、「コンピュテーショナルデザイン(1年後期)」「デジタルファブリケーション実習(2年前期)」「BIM実習(2年後期)」の3つの授業が中心となっている。 多角的な視点から学科全体で設計演習にトライするまた3年前期の研究室配属以降、研究室ごとに専門的な学びを深めている3年生最後の設計演習として「デザインスタジオ」がある。 設計教育の設計ここまで、わが学科の方針や主要科目について概説したが、「設計の科目は?」と思われた方もいると思う。 ΗΕΛΙΟΣアカデミック版を活用したコストプランニング教育建築教育においてコストプランニングの教育が非常に遅れていることは周知の事実である。 さいごに建築デザイン学科では、従来の設計演習における設計対象を拡大し、展開する全ての設計演習において「リアル」というキーワードを大切に教育に取り組んでいる。
杉田 洋 Hiroshi Sugita広島工業大学教授/1971年広島生まれ。 杉田 宗 So Sugita広島工業大学准教授/1979年広島生まれ。 広島工業大学 環境学部 建築デザイン学科
教授 杉田 洋
准教授 杉田 宗
建設ITガイド 2023 特集2 建築BIM |
長谷工版BIMモデルの活用長谷工では、BIMに取り組み始めた当初から“BIMはCADの代替えではない”という方針で、BIMデータを設計・施工・サプライチェーンで活用することをテーマに取り組んできた。 施工情報の入ったBIMモデル設計段階から施工段階で活用できる精度の高いBIMモデルを作成することで、着工前にDynamoによるコンクリート数量拾いが可能となった。
Dynamoを活用した積算長谷工版BIMモデルからコンクリート数量拾いに必要な情報だけを表示したBIMモデルビューを作成し、Dynamoで平面図上の範囲の指定と高さを入力するだけで、数十秒後には計算結果が表示され数量拾いが完了する。 実施数量との比較実際に発注シーンで活用するためには、作業所で実際に使用される数量との差異をいかに少なくできるかが重要となる。 活用状況施工計画の際や、作業所でのそれぞれの実務に合わせ、打ち継ぎ位置や高さ方向の範囲を指定して数量拾いを活用している。 まとめ今回の長谷工版BIMモデルを用いたコンクリート数量拾いが活用できている一番の要因は、BIMモデル自体の精度が高いことが挙げられる。 今後の展開設計図書や施工図を出力している長谷工版BIMモデルには、設計や施工に関わるさまざまな情報が入力されている。 株式会社長谷工コーポレーション 建設部門 建設BIM推進部
原 英文
建設ITガイド 2023 特集2 建築BIM |