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令和元年東日本台風(台風第19号)災害復旧業務での取り組み

2021年9月21日

 

はじめに

弊社では、現場での測量調査の作業効率向上を図るため2017年から地上レーザースキャナーを導入しました。これと同時に社内のi-Constructionへの取り組みを加速させるため「i-Conプロジェクト委員会」が中心となり、積極的に地上レーザースキャナーやドローン等を業務に取り入れて、活用方法を模索しています。日頃の取り組みの中から災害復旧での事例を紹介します。
 
 

令和元年台風第19号における災害復旧業務

2019年10月12日、本州に上陸した台風第19号による記録的な豪雨により長野県内の多くの河川で氾濫が発生しました。弊社は、災害復旧を迅速に行うために、長野県上田市の一級河川 神川において地上レーザースキャナーを活用して被災箇所の現地測量を実施しました。
 
 

被災の状況

信濃川水系一級河川 神川は幅15~20m、高さ5~15mの谷状地形を流下しており、高さ5mのブロック張りや石張り護岸で流路を保護しています。台風第19号の大雨による増水により延長800mにわたり約3~4mの河床洗堀が生じたことで、護岸工基礎の露出および崩壊が発生しました(図-1、2)。
 

河床洗掘による護岸基礎の崩壊

図-1 河床洗掘による護岸基礎の崩壊(1)




河床洗掘による護岸基礎の崩壊

図-2 河床洗掘による護岸基礎の崩壊(2)



 
 

安全かつ少人数での現地立ち入り

現地踏査で被災状況を確認する際は、安全第一を優先し護岸崩壊等による二次災害に注意しながら行う必要がありました。被災箇所の見落としを防止するための工夫として360°カメラによる全周囲撮影を行い、近接できない箇所は10mまで伸縮可能な自撮り棒を使用して撮影することで安全に配慮しました。
 
これにより、被災箇所の特定と測量範囲を迅速に発注者と協議ができました。現地踏査の結果、被災を受けた箇所は洗堀により護岸の裏込材が吸い出され崩壊の危険があること、測量のために近づくことが難しく被災範囲が広いので測量に要する期間と人員が多くか
かることが分かりました。当時、長野県内の複数地域における同時災害対応により、現地に入る社員の数が限られており、この問題を解決するため地上レーザースキャナーの採用により、点群データから設計に必要な図面を作成することに切り替えました。
 
 

地上レーザースキャナーによる計測

点群データから詳細設計に必要な図面を作成するために、従来の測量精度と同等またはそれ以上の精度確保を目標としました。
 
そのため、点群データの品質は、地上レーザースキャナーで用いる標定点の観測に、基準点測量および水準測量を用いて精度管理をしました。
 
 

約200カ所の据え替え

詳細な図面を作成するために、河川構造物の被災状況を把握しながら、隅々まで計測を行う必要があります。現地作業において苦労した点は、死角による計測漏れを防ぐために、スキャナーの設置箇所を考えながら作業を行ったことです。最終的に約200カ所にスキャナを据え替えての観測になりました(図-3)。
 

地上レーザースキャナーによる作業

図-3 地上レーザースキャナーによる作業



 

河床(水中部)の計測

弊社保有の地上レーザースキャナーでは水中部の計測はできないため、河床の計測には従来のトータルステーションを用い、横断方向2m×縦断方向4mの間隔で上流側から河床を計測し、水中部の点群データを補完しました。幸い作業時の水深は50cm程度ではありましたが、水難事故防止のため水中部の作業時にはフローティングベストおよびドライスーツを着用し安全対策を行いました。
 
 

点群データからの平面図作成

点群データから自動で平面図を作成することは、弊社の技術では難しいため、現地踏査で撮影した360°画像と、3D点群処理システムを用い、手作業での平面図作成を行いました。
 
作成方法は、従来の地形測量と同様に、構造物や変化点など観測点を結線していきますが、数十億点という点群データを基に結線していくので、従来の測量では計測できない急斜面の地形や、複雑な形状の地物を忠実に表現することが可能となりました。大容量の点群データはストレスになります。ストレスなく処理するために高性能パソコンにより作業速度を速めました(図-4)。
 
点群データからの平面図作成



 

河川線形および縦横断図の作成

平面図と点群データのコントロールポイントを基に現況の河川線形と復旧延長をパソコン上にて検討を行い決定しました。
 
点群データの利活用における最大のメリットとして、どの箇所でも自由に断面が切れるところです。今回の災害現場においては、河床洗掘により不安定な河川構造物や、護岸が崩壊している箇所など多数の被災箇所があり、多くの断面図が必要になりました。しかし、平面図作成と同様に、点群データを用いて全てパソコン上にて図面の作成が行え、計測漏れによる現場での追加作業は生じませんでした(図-5、6)。
 
架橋位置は横断図の本数が多く、通常の測量では時間と人員を費やしますが、今回は容易に作図できました(図-7)。
 

コントロールポイントの抽出

図-5 コントロールポイントの抽出




河川線形の検討

図-6 河川線形の検討




 
点群データからの横断図作成


 

従来調査と地上レーザースキャナー活用の比較

作業期間の短縮効果を、作業項目ごとのトータル日数と人工により従来調査との比較を行いました。
 
なお、従来調査は、これまでの経験から本現場状況に当てはめた想定であり、現場状況に応じて作業効率も変わるため、ご注意願います。
 
本事例では従来調査に比べ、地上レーザースキャナー活用による調査が、9日間の短縮25人工の削減の効果があり、迅速な災害復旧対応の実現と、作業従事者の負担軽減が図られる結果が得られました(図-8)。
 

従来調査と地上レーザースキャナー活用の比較

図-8 従来調査と地上レーザースキャナー活用の比較



おわりに

今回、広範囲での詳細な点群データの計測を実施した結果、当初の想定を上回る生産性の向上が見られました。スキャナーの設置回数が多くなる現場では、スキャナー本体が小型かつ軽量であるほど効率が増すことも分かりました。
 
災害復旧では迅速な対応が必要となるため、現場作業での機動力と対応力が重要となってきます。ドローンや地上レーザースキャナー等の計測技術の向上により現場作業が容易になると言われていますが、災害などの緊急時に保有機材を使いこなせるかは、通常業務での活用による実績が決め手と考えます。
 
現在、私たちは、建設コンサルタントとして本格的なBIM/CIM運用を目指し、新技術の普段使いに取り組んでいます。
 
これからも向上心と好奇心をなくさぬよう努めてまいります。
 

BIM/CIM業務での社内ミーティング

BIM/CIM業務での社内ミーティング



株式会社 フジテック 技術部 小田切 裕弥

 
 
【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年


 
 
 



土木設計における生産性改革−パラメトリックモデルによる設計の取り組みについて−

2021年9月13日

 

パラメトリック設計の概要

(1)はじめに

本稿は、土木設計分野における新たなBIMCIMソリューションによる生産性改革の取り組みについて報告するものである。土木構造物の設計は、自動車などの製造業とは異なり、ある設計に対して条件はさまざまであり、単品生産のオーダーメード設計を強いられるものである。このことは、生産性に対して非常に不利であり、われわれコンサルの特徴であり足かせであった。特に、橋梁などの構造物設計にとって、設計計算、作図や数量計算は膨大な量であり、自動化は最重要課題である。また、初期段階における条件確定の持つ意味は大きい。条件変更による損失は工程が遅いほど甚大である。工程的に検討する内部的なフロントローディングを早急にできれば、このリスクを減らし生産性と設計の妥当性向上に寄与すると考えている。そこで、パラメトリックCADによる自動化が解決の糸口と考え導入を進め始めている。

(2)パラメトリックモデルの特徴

入力条件をパラメトリック(変数)とし、3Dモデルを出力できるCADをパラメトリックCADとするならば、3Dモデルの自動化もパラメトリックモデルの一種として考えてよいだろう(図-1)。

InfraWorksの橋梁計画の例

図-1 InfraWorksの橋梁計画の例




■オートデスク株式会社のCivil3D、Revit、InfraWorks
■川田テクノシステム株式会社のV-nasClair
■株式会社三英技研のSTRAXcube
 
これらは、線形条件・下部工設計条件・躯体寸法条件などの変数を自在に変更して、3Dモデルを自動に出力する自動設計タイプのパラメトリックCADである。しかし、そのロジックは各ベンダーの用意した変数に限られたものであり、詳細設計の場合や特殊事情全てに対応しているわけではない。汎用であるため、適用外の場合は手動で修正や作り直しになる場合がある。設計精度が低い計画段階や比較設計レベルでは問題とされないが、詳細レベルでは、従来のように3DCADによる積み上げ作業が主な手段となることが多い。
 
■ダッソー・システムズ株式会社 3D EXPERIENCE(CATIA)
 
このCADシステムは、パラメトリックCADの中では、汎用性を追求したもので、作図機能・コマンドそのものをプログラミングしていくこともできる。例えば、高さ20cmで直径が5cm肉厚1cmのコップを作る場合に5cmの円を高さ20cmに押し出して、肉厚が1cmを残して削るというロジック(論理構造)と入力変数を記憶できるのである。また、複雑な計算プログラム(VBA、C+、C#など)が組み込め、返り値を変数として用いることができる。よって、橋台の天端勾配を途中で切り替えたいなど、汎用ソフトではできなかったものでも、自由度が極めて広く応用が利くものである。さらには、応力度計算を組み込めば許容応力度を満足する部材厚さを返り値とした作図が可能であり、構造のシミュレーションに大きく貢献するものである。CATIAは、万能な究極のエンジニアツールであるが、使用には、多くの知識(幾何構造・プログラミング・エンジニアの資質)が必要であり習熟に多くの時間と投資が必要になる。しかしながらその恩恵は大きく、膨大な収束作業が必要な業務を省力化できるものである。また、類似業務に再利用が可能で生産性向上への効果が非常に大きい。
 

(3)BIM/CIM技術および自動化の取り組みの目的

これらの自動設計を含むパラメトリックCADのメリットは以下である。
 
①計画・設計プロセスを改善⇒膨大な積み上げ式の設計プロセスの改善。
 
②シミュレーション・フロントローディングが容易である。⇒3次元モデルの作成・変更が素早くでき、分かりやすく表現できるため合意形成が円滑に行える。環境・景観、使用性、施工方法、警察・河川協議の合意が迅速に行える。
 
③ミスを防止できる。⇒フロントローディングの効果により早くミスに気が付く⇒ミスしても早く修正できる。43次元モデルから2Dを切り出すことから縦横断・平面図と数量の不整合が生じない。
 
当社では、オートデスク社のAECC、ダッソー・システムズ社のCATIA、川田テクノシステム社のV-nasClair、三英技研社のSTRAXcubeなどのCADソフトを導入し、これらのソフトの互換性の検証と合わせ、さまざまな技術活用場面、顧客ニーズに応じた使い分けを実践している。また、3次元化と併行してCAD、設計計算と連携した自動化にも取り組んでいるところである。取り組みにおける一義の目的は、作業の効率化と働き方改革、生産性改革である。過去の経験的かつ段階的な設計ステップを全て見直し、新たな設計ステップを作り上げるとともに、生産性の向上を図ることを目指している。また、効率化にとどまらず、技術力の向上、コストパフォーマンスの向上の三位一体を目指している。
 
 

パラメトリック3Dシステムの導入

ダッソー・システムズ社とMOU(覚書)を締結し、パラメトリックによる設計、テンプレートの作成などを実施している。また、令和元年10月には「3DEXPERIENCE FORUM Japan2019」にて、砂防堰堤および橋梁の高度なシミュレーション能力や高い信頼性と生産性能力などの成果を公表した。

(1)砂防分野における活用

砂防分野では、計画および予備設計段階での砂防堰堤配置計画のパラメトリックによるテンプレートを作成し活用している。地形を作成し、砂防堰堤を任意の位置に設置し砂防堰堤のコンクリート体積、堆積土砂量を自動計算できる。
 
また、砂防堰堤の高さを任意に変化させることで堆積土砂量を再計算でき、さらに、堆積土砂量を設定し、自動的に土砂量に応じた任意の位置での砂防堰堤高を計算できる(図-2 ~7)。
 

砂防ダムの高さ変更計算の例

図-2 砂防ダムの高さ変更計算の例




砂防ダムの根入れ自動計算例

図-3 砂防ダムの根入れ自動計算例




堆積土砂量から堤体規模を逆算の例

図-4 堆積土砂量から堤体規模を逆算の例




収束自動計算例

図-5 収束自動計算例




副堰堤・水叩・側壁護岸の自動計算例

図-6 副堰堤・水叩・側壁護岸の自動計算例




工事用道路の入力例

図-7 工事用道路の入力例



従来、この検討は河川線形に対して20mピッチの横断図を作成して、平均断面法にて算出するが堤体の位置や高さが変数となるため、その解は収束計算となり手間が非常に多く1カ月かかる検討である。この方法であれば数日程度でまとめることが可能であり、計画および予備設計段階での効率化に寄与している。
 

(2)橋梁分野における活用

橋梁分野では、詳細度500レベル(例えば、上部工では構造詳細、下部工では配筋レベルまで)のパラメトリックによる上部工(鋼およびコンクリート)、下部工(橋台、橋脚、杭)のテンプレートを作成している。形状の変更に伴い、上部工では、線形要素、桁本数、桁間隔、配筋、防護柵、下部工では、形状に追随して配筋などを自動で再配置することが可能となっている。数量などの属性情報は、CATIAが標準として実装している機能で自動計算される(図-8~12)。

 

曲線鋼歩道橋の例

図-8 曲線鋼歩道橋の例(その1)




曲線鋼歩道橋の例

図-9 曲線鋼歩道橋の例(その2)




基礎フーチングの例

図-10 基礎フーチングの例(その1)




基礎フーチングの例

図-11 基礎フーチングの例(その2)




LOD400の橋梁詳細モデル

図-12 LOD400の橋梁詳細モデル



(3)実施体制

社員および関係会社の人材育成を図るとともに、海外の協力会社の技術者、ダッソー・システムズ社の協力のもと、CATIA活用を推進している。
 
 

3Dによる設計の自動化

当社では、自社開発した橋梁一次選定プログラムと連動する川田テクノシステ ム 社V-nasClair、STRKit、下部工詳細設計計算ソフトを利用した自動設計に取り組んでいる。V-nasClairは、昨今、国土交通省の地方整備局でも導入され始めており、当社においても導入し活用を推進している(図-13、14)。
 

V-nasClair、STR_Kitと連動した自動設計の概要

図-13 V-nasClair、STR_Kitと連動した自動設計の概要




STR_Kitによる橋梁下部工モデル

図-14 STR_Kitによる橋梁下部工モデル

 
 

技術分野における活用と実施体制

V-nasClairとSTR Kitの組み合わせにより、橋梁分野では、先行して自動設計の仕組みを構築し、設計段階での活用を開始している。また、河川分野では、V-nasClairとRiver Kitの組み合わせによる3次元図面作成の試行を開始している。なお、他分野では、顧客のニーズに合わせてV-nasClairを利用している。設計計算に関わる事項は、全社の橋梁系技術者、河川系技術者で利用しており、また、3次元図面作成は、オペレーターを中心に取り組んでいる。
 
 

i-Construction、BIM/CIM推進の課題

働き方改革や生産性改革の推進などを基本として、社内におけるBIM/CIMに精通したさらなる人材の育成が急務である。また、国内では、設計段階からBIM/CIM対応することが可能な協力会社が不足している。複数のBIM/CIM対応ソフトの導入、BIM/CIM対応ハードウエアへの更新などを考慮すると、初期段階では多くの投資が必要となる。
 
 

おわりに

パラメトリックデザインによる3次元設計を本格導入することで精度が高く、高度なシミュレーション・フロントローディングが可能である。その根幹となる変数とロジックからなる「数的論理構造」が重要なカギとなる。これらの蓄積はAI技術への応用が可能であり、将来の革新技術として期待されている。また、「数的論理構造」の蓄積を新人教育に導入することでエンジニアとしての資質向上に非常に有益であると同時に、若いエンジニアの自信や誇りにつながると感じており、技術の空洞化問題に対する一つの解決策でもあると考えている。
 
同様に、社外も視野に入れた早急な人材育成を推進するとともに、今後は、設計段階での活用にとどまらず、計画段階からのBIM/CIM技術の応用やデジタルツインによる維持・管理、運用への応用を目指している。
 
近年のIT技術は日進月歩であり、i-Constructionはさらに加速するだろう。このスピードと高度化に対応するためには、新しい技術に真摯に向き合い、より広い視野を持つことが必要と考える。業界の個別要素技術はもとより、通信技術や情報処理技術分野などの広い知見・技術がさらに必要になってきている。
 
 

パシフィックコンサルタンツ株式会社 品質技術開発部 i-Con推進センター 伊東 靖

 
 
【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年


 
 
 



いまさら聞けない BIM/CIMの始め方

 

BIM/CIMの状況

周知の通り、国土交通省は令和2年9月の第4回BIM/CIM推進委員会にて、「令和5年度(2023年度)までに小規模を除く全ての詳細設計・工事においBIM/CIMを原則適用」という方針を示しました。
 
また、CIM導入ガイドライン(案)は、「設計業務等共通仕様書」の構成に合わせて、より業務内容との関係性を明確にして参照しやすくするために、BIM/CIM活用ガイドライン(案)への再編が行われ、共通編については、令和2年3月に公開されました。令和3年度には河川編、砂防および地すべり対策編、ダム編、道路編などが公開されます。
 
このようにBIM/CIMの世界は毎年急速にバージョンアップしていますので、常に情報を把握することが重要です。
 
弊社が受託しているBIM/CIMモデル作成の依頼では、昨年度よりモデリング相談が漸増し、本年度はさらに新たな顧客からの相談が急増している状況から、業界全体が大きく変わってきているのが手に取るように分かります。
 
新たな相談の中で最も多いのが、「BIM/CIM活用業務ではないけれど、会社として取り組みをしていきたいが、どうすれば良いでしょうか」という相談です。今までも国土交通省の発表や各種団体のセミナーなどで情報を把握していたけれど、いざ具体的な取り組み方についてとなると経験がないので分からないということです。
 

BIM/CIMの詳細設計・工事への適用のロードマップ(案)

国土交通省 第4回BIM/CIM推進委員会資料より抜粋



弊社もCIMという言葉が出てきた平成24年度あたりの時点では、取組順序も分からず、何が正解かも分からずやってきましたが、さまざまな経験から得たものがあり、今回ここにこれから取り組む際に知っておくべきことを紹介したいと思います。
 
 

まずは3次元データの特徴を把握する

BIM/CIMを始めようとすると、すぐにどのソフトを選定すれば良いかとか、後述するリクワイヤメントを満たすには、どうすれば良いかと考えがちですが、ソフトを買えばできる訳でもなく、単に3次元化するだけでは、自分たちの生産性向上は図ることはできません。
 
まず、初めに必要なのは、土木で利用する3次元データの特徴を把握する必要があります。土木で利用する3次元データには、下記の3種類のデータがあります。3Dポリラインなどの線(ワイヤーフレーム)は今回除いて考えます。
 
・ソリッドモデル
・サーフェスモデル
・点群データ
 
ソリッドモデルは、中身の詰まったデータで、豆腐のようなものです。土木では「構造物」で利用します。単体で体積を算出したり、形状に属性を付与することが可能です。

 
土木で利用する3次元データの特徴


サーフェスモデルは、表面だけのデータで、ブルーシートのようなものとなります。
 
土木では「現況地形」「造成後の法面」などに利用します。
 
単体だと表面積しか算出できませんが、複数のサーフェスデータがあれば、差分計算により土量計算に活用できます。
 
中にはソリッドモデルに見えるサーフェスモデルというものもありますが、今回の解説は省略します。
 
土木で利用する3次元データの特徴

点群データは、集合体で見ると地形や建物が3次元に見えますが、1点につきXYZの座標を持つデータです。
 
点群単体で、「現況」の状況が見えるだけでなく、必要な個所をデータ上で計測が行える他、点群からサーフェスを作成することも可能です。
 
また点群を削除することで、新しい景観を見ることが可能となります。
 
土木で利用する3次元データの特徴

これら3種類のデータは、複合的に利用しても単体で利用してもBIM/CIM活用をしているといえます。ただし、どの工種にも使えるわけではないということに加え、異なる特性のデータなので、扱うソフトウエアが異なるということに、気付いていただきたいのです。
 
対象の工事でどのデータが必要になるかを先に知ることが重要であったりします。
 
例えば、起工測量時に点群をとっておけば、施工計画書作成にも利用できますし、これから施工する3次元モデルを配置する3次元の現況図を別途作成する手間が省けてBIM/CIM活用にもなり、生産性向上にもつなげられたりするからです。
 

土木で利用する3次元データの特徴

福井コンピュータ株式会社提供



工種によるデータの違いとソフトウエア選定

2次元CADもソフトウエアによって特徴がありますが、3次元は次元が増えた分、当然ながら倍以上のソフトウエアの種類や特徴があります。
 
3次元CADは、自動車業界、映像・ゲーム業界、建築業界などで発展してきました。
 
これらの業界では、作成するモデルは自動車業界ならクルマ、建築業界なら建物といったように作るものは一貫性があり、形状が異なるだけなので複数のソフトウエアを利用する必要がありません。
 
一方、土木業界は多種多様な工種があるので、異なる3次元データを混在させたり、使い分けたりする必要があります。
 
では土木業界で必要な3次元モデルは工種によってどのように分類されるのでしょうか。
 
3Dデータと工種のポジショニング

上図のようにサーフェスとソリッド、地形を含む工種と単体で成り立つ構造物で分類すると、多種多様なのが分かります。
 
この図からも分かるように、当然、利用するソフトウエアも異なってきます。
 
・ 地形が絡む工種(現況地形、計画地形、道路、河川)
 
地形が絡む工種(現況地形、計画地形、道路、河川)

・単体で成り立つ工種(構造物、仮設)
単体で成り立つ工種(構造物、仮設)

ここで重要なのは、BIM/CIM対応するためには、数種の3DCADを利用しなければならないことです。
建築と土木は同じ建設業界ですが、考え方が大きく異なることを知っておくべきです。
 
構造物は地形上に存在し、施工段階の状況(土工事や地形なりの構造物)を複合的に表示したりしますので、サーフェスデータとソリッドデータを同じ空間で表示する、いわゆる統合モデルを作成する必要が生じることもあります。
 
上記のような理由から、会社全体で統一したソフトウエアを選定するのではなく、工種ごと(担当部署ごと)に選定し、複数のソフトウエアを組み合わせて利用することを推奨します。
 
 

詳細度によるデータの違い

工種により作成するデータやソフトウエアが異なることを理解しただけでは不十分です。
 
BIM/CIMに対応するためには、詳細度(LOD:Level Of Detailsの略)を考慮したデータを作成する必要があります。
 
詳細度は、LOD100 ~ LOD400まで4段階あり、3次元モデルの利用シーンによって、どこまで詳細に作成すべきかを決めて作成します。
 
3次元をやったことない方が最初に壁となるのは、この詳細度といっても過言ではありません。
 
全ての構造物データを一番詳細なモデルであるLOD400で作成すれば、積算も可能になってきますので(積算については他の問題点もありますが)、これでなければBIM/CIM活用ではないと思っていないでしょうか。
 
図-1のように鋼構造物は重要となる場合がありますが、どのような工種でもいつも必ずその詳細度は必要があるでしょうか?
 

詳細度によるデータの違い

図-1
LOD400の例:オフィスケイワン株式会社提供



例えば、道路工事の場合、L型街渠を1本ずつ作る必要があるでしょうか?そこまではほとんどすることはないので、大げさな話ですが、LODを詳細にすると当然作業時間も膨大になるということです。
 
国土交通省は2023年度までに小規模を除く全ての公共工事でBIM/CIM化と言っていますが、詳細度については指定していません(図-2)。
 

土木分野におけるモデル詳細度標準(案)

図-2
出典:土木分野におけるモデル詳細度標準(案)
【改訂版】平成30年3月 社会基盤情報標準化委員会 特別委員会



詳細度は下図のように定義されていて、BIM/CIMをどのシーンでどのように活用し、どのような効果が得られるのかによってLODを決めてやっていくことも重要なポイントだと思います。3次元から少し離れた話になりますが、地図情報においてこの詳細度について考えてみてください。
 
都道府県を表示している時は主要な道路くらいしか表示されていないのに対し、自分の住んでいる地域を表示している時には主要道路に加え、街区道路や住宅が表示されています。
 

尺度による表示内容の違い

尺度による表示内容の違い:地理院地図より引用



つまりエリアが広範囲の場合は街区道路があっても見えないため、詳細度を下げ、エリアが狭い場合は詳細な情報が必要なため、詳細度が高くなっています。
 
BIM/CIMも同様に利用シーンによって詳細度は変えるべき(常に詳細に作る必要はない)と私は思っています。生産性向上、問題点の解決など、意味のある3次元モデルを作成することを強くお勧めします。
 
 

2次元CADの使い方と異なる点

現在は3次元での設計までは実現できていないことが多く、設計された2次元図面から3次元モデルを作成することがほとんどです。
 
その際に必要な知識としては、2次元図面では1工事単体で図面の役割を成していましたが、土木における3次元の場合は、地理空間上の構造物として管理するために単位を合わせる必要があり、m単位、少数点以下第3位までの管理となります。
 
平面図においては、図面枠内に作成していたのに対し、方位や座標をCADデータそのものに与えることに加え、測地座標系を設定する必要が生じます。
 
そのため、測地座標系は世界測地系(測量成果2011)とし、平面直角座標系を用い、m単位で統一することになります(管理する数値は小数点以下第3位まで)。
 
さらには、基準水準面については、T.P.(東京湾中等潮位)を標準とするので、A.P.やO.P.は変換した高さに変換しなければなりません。
 
構造図の場合は、現状ではmm単位で作図されていることが多いと思いますが、3次元ではm単位で作図して小数点以下第3位の精度でモデリングします。
 
3次元データに取り組む際に、2次元図面の描き方も変化を求められているのです。
 
さらに3次元図面を作図するためには、画面を上から下からまたは左右からと動かしながら作図します。画面表示の変化が激しいため、PCのスペックが乏しいと動かなくなってきます。
 
 

必要なハードの環境

BIM/CIMに取り組む際によく聞かれる項目の一つがPC環境です。そしていつも回答することは、作成する3次元データによって異なるということです。点群を扱う際や3次元モデル作成の範囲が広ければ、情報量が多いため相当なスペックが求められます。単体の構造物で配筋などが入らないLODが低いデータであれば、それほど高スペックでなくても良いこともあります。全員のPCを高スペックにするのではなく、作成するモデルによってPCを使い分けるのも手です。
 
推奨スペックは扱う3Dモデルによって異なります。
・点群処理、広範囲の場合やVRの場合
・単体のモデリング程度の場合
(表-1)
 

BIM/CIMに取り組む際に必要なハードの環境

表-1



人材育成

土木業界では今まで3次元に取り組んでいませんでしたので、BIM/CIM作成ができる人材はほとんどいないのが実情です。他の業界(建築や機械業界)でモデリングできる人を探す方法もありますが、構造物のモデリングはすぐにできるようになる一方、サーフェスモデルは土木の図面を読み取る力が必要なので、特に時間がかかります。メーカー各社の研修を積極的に受講することをお勧めします。
 
 

事例

 

CIM導入ガイドライン 下水道編

CIM導入ガイドライン 下水道編 R1.5 国土交通省抜粋




施工計画の例

施工計画の例:福井コンピュータ株式会社提供




点群活用の例

点群活用の例:株式会社デバイスワークス



要求事項(リクワイヤメント)について

BIM/CIM活用の実施方針として、要求事項(リクワイヤメント)という言葉があります。
 
これは、BIM/CIMモデル作成に関する発注者の要求事項ということですが、必須項目としては、
・CIMモデルの作成・更新
・属性情報の付与
・CIMモデルの照査
・CIMモデルの納品

選択項目としては、表-2から5項目
を選択することになっています。
 

要求事項(リクワイヤメント)選択項目

表-2



要約すると、
・CIMモデルの共有、確認
・情報共有システムによる情報連携
・後工程で活用できる必須項目以外の
属性情報
・施工ステップの確認、工程連携
・モデルからの自動数量抽出
・2次元図面との整合性を確認する3DAモデル作成
・3次元モデルおよび属性を活用した照査
・ICTによる3次元計測と3次元モデルでの検査
・CIMモデルを活用した仮設計画、施工計画
を選択することになっています。
 
リクワイヤメント必須項目で出てくる属性情報について、どんな属性を入れれば良いかという議論が必ず出てきます。
 
例えば、今回の案件が道路設計だとします。
 
道路設計には、サーフェスモデルで作成される道路線形や法面に加え、BOXカルバートのようなソリッドモデルが共存することが多いと思います。
 
ここで重要なのは、リクワイヤメントを対象範囲全体でやる必要はないということです。この例で言えば、属性としては道路の中心線形はJ-LandXMLによって属性情報が入ります。道路線形情報は、施工者側にデータが渡る際に非常に重要な役割を果たしますので、この属性情報を作成すれば良いのです。
 
このデータがあるとMG(マシンガイダンス)で利活用でき、施工者側が生産性向上を図れるのです。BIM/CIMはデータが活用できなければ意味がありません。自分たちが便利になることも重要ですが、業界全体がトータル的に生産性向上に図れるように考えるべきだと思います。
 

構造物モデルは、施工者側でコンクリート打設リフトの情報などの属性を入れるなど完成形状にだけ属性を入れるなど、作業途中の情報を入れることも可能です。
 
BIM/CIMを行うに当たって、見栄えの良い実績となる配筋のモデリングを望む声が多く聞こえます。しかし私は必ずしも重要だと考えていません。設計図どおりに作成すると継ぎ手は重なってしまいますので、干渉チェックをする際にはわざわざ動かしておかなければなりません。
 

継手部分の重なり

継手部分の重なり



確かに数量は算出できますが、2次元図面から作っているだけなので、数量は分かっています。設計ミスを見つけることはできるかもしれませんが、作業ボリュームに対する費用対効果があまりないと思います。
 
鉄筋の取り合い(補強筋など)を確認する箇所だけ作成すれば良いと思います。
 
属性を利用して数量を算出する際に、3次元モデルを作成すれば本数などを計上することができ、効果的になると考えて、鉄筋の属性を入れることが挙げられますが、鉄筋が全て入っていなくても参照による属性管理をすることが許されていますので、参照(リンク)による対応も考える方が得策かもしれません。参照情報のデータベースがあれば積算につなげられますので、3次元モデルとは別途作成して管理することも考えてみてはいかがでしょうか(図-4)。
 

BIM/CIM活用ガイドライン(案)

図-4 BIM/CIM活用ガイドライン(案)共通編 R2.3 国土交通省



鉄筋の例のように、全てを3次元化しようとするのではなく、費用対効果を考えて協議すべき箇所についてBIM/CIM化をすべきだと考えています。
 
BIM/CIMを始める際に、最初から難しいことをやろうと考えると非常に大変です。できるところから取り組んで、そこから飛躍していっていただければ幸いです。
 
最後にBIM/CIMは1年ごとに進展しています。常に最新の情報を取得していくこと
が大切です。
 
国土交通省のBIM/CIMポータルサイトを確認して実施方針やガイドラインを確認するようにしましょう。
http://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/bimcimindex.html
 
 

問い合わせ先

株式会社デバイスワークス
東京都中央区日本橋茅場町2-14-7
日本橋テイユービル1F
03-6661-7771
代表取締役 加賀屋 太郎
Email:consul@deviceworks.co.jp

株式会社 デバイスワークス 代表取締役 加賀屋 太郎

 
 
【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年


 
 
 



中部地方整備局におけるBIM/CIM 活用への転換に向けた取り組み

 

はじめに

国土交通省では、インフラ分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進本部を設置し、2023年度までに小規模なものを除く全ての公共工事において、BIM/CIM活用への転換を実現することとしました。
 
BIM/CIM活用による生産性向上を目指すためには、契約~監督~検査のプロセス全体の3Dモデルによる工事契約手続きが必要になると考えています。本稿では、3Dモデルによる工事契約も見据えた中部地方整備局におけるBIM/CIM活用への転換に向けた取り組みを紹介します。
 
 

中部地方整備局における現場での取り組み

中部地方整備局では、2023年度(令和5年度)までに直轄工事の約9割を受注している「一般土木Cクラス」の受注者が、3Dモデルによる施工プロセス(契約~施工管理~完成図書納品)の対応ができることを目指し、インフラ分野のDX推進のロードマップ(図-1、2)を作成し、以下の取り組みを実施します。
 

中部地整におけるBIM/CIM活用への転換に向けた取り組み

図-1 中部地整におけるBIM/CIM活用への転換に向けた取り組み




令和5年度のBIM/CIM活用に向けたロードマップ

図-2 令和5年度のBIM/CIM活用に向けたロードマップ


 

(1)BIM/CIM活用への転換に向けた具体的な課題の解決を検討

具体的な課題検討を進めるため、分任官の道路新設工事を試行工事(モデル工事)に位置付けて、3Dモデルによる業務執行上の課題抽出、解決案を検討します。
 
課題抽出、解決案検討については、今年度発足した「中部i-Construction研究会」の構成員であるICTアドバイザー(BIM/CIMやICT施工経験のある建設コンサルタント、施工者、ソフトメーカー担当者等)の協力も得ながら、より現実的・実践的な検討を実施していきます。検討された解決案で対応可能なものは随時適用しながら、その結果も踏まえ、次年度以降、他工事へ横展開することで、短期間に多くの工事のBIM/CIM対応能力の底上げを目指します。
 
今年度の試行(モデル)工事として、i-Conサポート事務所でもある紀勢国道事務所の熊野道路における道路建設工事、下部工事を選定しました(図-3)。
 

熊野道路の全体概要

図-3 熊野道路の全体概要


 
今後、試行(モデル)工事による検証を先行させながら、順次、適用事業を拡大していく予定です。

 

(2)i-Constructionモデル事業「新丸 山ダム建設事業」

単一大規模構造物としてBIM/CIM活用効果の高いと考えられる新丸山ダム建設事業(新丸山ダム工事事務所)においてBIM/CIM適用拡大に向けた取り組みを推進します。
 
2020年度には本体工事を発注し、設計段階から施工段階へ移行します。3D統合モデルによって発注者、施工者、設計者との情報共有を推進し、無駄、手戻りのない施工を目指します。
 
本体工事は2D図面を契約図書として工事契約しますが、参考資料として工事受注者に3Dモデル(図-4)を提供し、受注者の協力も得ながら現場での施工効率化、高度化のさまざまな実証を検討していきます。施工情報を付与した3Dモデルは完成図書の一部として納品され、維持管理資料として活用していく予定です。
 

ダム本体モデルのイメージ

図-4 ダム本体モデルのイメージ(設計段階で作成するモデル)


 
今後、ユースケースを想定した3Dモデルを作成し、事業全体の情報共有システムを構築して情報の一元化・共有を強化し生産性向上を目指します。
 
 

DX推進のための人材育成の取り組み

国土交通省、国土技術政策総合研究所等と連携して、2021年度からBIM/CIM活用できる人材育成するための拠点施設として、中部技術事務所に人材育成センターを整備していきます。1階はインフラ分野のDXを進めるさまざまな技術(BIM/CIM、VR、AR、遠隔臨場等)を体験でき、2階は高性能PCを使用できる数十人規模の講義、研修、セミナースペースとする予定です。
 
施設完成後は、さまざまな対象者(国、自治体の発注者、建設コンサルタント、工事施工者、学生等)に対してコンテンツを用意し、インフラ分野のDXによる効果を体感しながら具体的な技術を学ぶ場として活用していく予定です。
 
また、中部地方整備局には、DXルームを整備し、整備局来客者へBIM/CIM活用の紹介、現場フィールド(新丸山ダム)から配信されるリアルデータを用いたバーチャル体感により、DXによる効果を実感していただく予定です。
 
さらに中部地方整備局管内事務所へ複数台の高性能PCを導入し、職員自らが実際の業務・工事で活用できるよう環境整備を進めています。
 
 

おわりに

中部地方整備局では、BIM/CIM活用への転換を目指して、全国に先駆けて3Dモデルを主体とした業務執行にあたっての課題解決を進めていきます。
 
2021年度からは、中部地方整備局内で試行工事(モデル工事)を拡大していくとともに、そこで得られた課題や解決案を他の地方整備局とも共有していく予定です。
 
それにより実務的な課題に対応できるようになると考えており、2023年度には、3Dモデルの契約図書化を含め、3Dモデルを主体とした工事の実施を目標にしています。
 
最後に、中部技術事務所に整備する人材育成センターを活用して、中部地方のインフラ分野のDXをリードする人材の育成をしていくことで、建設業界の生産性向上と働き方改革、新たな生活様式への対応に寄与していきたいと考えています。
 

国土交通省 中部地方整備局 企画部 技術管理課

 
 
【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年


 
 
 



北陸地方整備局における BIM/CIMの取り組み

2021年9月7日

 

はじめに

国土交通省では、建設現場の生産性向上を図るi-Constructionの取り組みにおいて、3次元データを基軸とする建設生産・管理システムを実現するためBIM/CIM(Building/Construction Information Modeling,Management)という概念において産官学一体となってBIM/CIMの取り組みを推進しています。なお、全体的な方針として令和5年度までに小規模構造物を除く全ての公共工事でBIM/CIMを活用することが示されており、北陸地方整備局においても令和2年度の実施方針として、大規模構造物予備設計からBIM/CIMを原則適用、そして前工程で作成した3次元データの成果品がある業務・工事についてもBIM/CIMを原則適用することとしています。
 
また、i-Constructionをより一層促進し、3次元データなどを活用した取り組みをリードする国土交通省直轄事業を実施する「i-Constructionモデル事務所」(全国10事務所)を平成31年3月に決定しており、北陸地方整備局では信濃川河川事務所が指定され、「大河津分水路改修事業」が『3次元情報活用モデル事業』となっています。
 
本稿では「大河津分水路改修事業」でのBIM/CIMの取り組みを紹介します。

 
 

大河津分水路改修事業の概要

大河津分水路は信濃川の洪水から越後平野を守るため、大正11年(1922年)に通水した延長約10kmの放水路です(図-1)。しかし、河口部は洪水を安全に流下させるための断面が不足しており、直近では、令和元年10月の台風19号による出水にて観測史上最高水位を記録し、約10時間にわたり計画高水位を超過するなど、大変危険な状態となっています。また、分水路は建設後90年以上が経過し、施設の老朽化などが進んでいます。
 

大河津分水路改修事業 位置図

図-1 大河津分水路改修事業 位置図




そのため、信濃川水系全体の洪水処理能力を向上させるため、大河津分水路の改修に着手することになりました。大河津分水路の改修に当たっては、課題となっている流下能力向上や河床の安定、老朽化施設の対策として、河口山地部掘削、低水路拡幅、第二床固の改築を実施する計画とし、事業期間は2015年から2032年までの18年間にわたり、全体事業費は1200億円となります(図-2)。
 
統合CIMモデル

統合CIMモデル(完成予想図)



信濃川河川事務所におけるBIM/CIMの取り組み

信濃川河川事務所ではi-Constructionモデル事務所としてさまざまな検討を進めていますが、ここでは大河津分水路改修で取り組んでいる「監督・検査でのBIM/CIMの活用検討」について紹介します。
 

(1)3次元データとVR技術を活用した出来形検査

信濃川河川事務所では対象構造物を3次元レーザースキャナで計測し、統合CIMモデルに取り込み、そのモデル空間にVR技術を活用し、出来形検査の試行を行いました(写真-1、図-3)。
 




バーチャル空間に表示される検査対象の3次元モデル

図-3 バーチャル空間に表示される検査対象の3次元モデル




検査官は事務所内にてVRゴーグルを装着し、ゴーグル内に表示される検査対象構造物の3次元モデルに計測ツールのカーソルを合わせ、出来形を計測することができます。
 
一方で、使用するハードやソフトにも依存する部分ですが、VR機材におけるコントローラーの操作感覚が職員で異なるなど、使用に際し困難な点もあることが確認できました。また、本来であれば一人で対応可能な検査でもパソコンを操作する職員が補助として必要になります。
 
一般化していくには、誰が操作しても同様の品質で成果が出せる必要があり、職員の習熟度の向上に合わせ、ハード・ソフトの機能改善が必要であることが確認できました。
 

(2)ウェアラブルカメラとウェブ会議による遠隔臨場検査

 
現在実施中(R2.10末時点)の工事において、ウェアラブルカメラとWeb会議の併用による法面保護工の遠隔臨場検査を実施しました。
 
現場では、ウェアラブルカメラを装着した受注者が施工個所に赴き、大河津出張所において検査官と受注者が立会のもと、Web会議により検査官指示のもと施工個所の立会検査を行いました(写真-2)。
 

検査官による立会検査の状況

写真-2 検査官による立会検査の状況




これにより検査官は現地で立会うことなく検査を実施できるため、現場への移動時間を削減することができます。
 
一方、受注者は検査に際し、現場を止めることなく検査を受けることができ、さらに立会う人員の抑制や検査時間の抑制が可能となりました。受注者からは、人工、工数でおおむね50%程度の削減効果があったとの報告を受けており、遠隔臨場検査による効果が確認できました。
 

(3)ウェアラブルカメラとMR(複合現実)技術を活用した段階確認

現在実施中(R2.10末時点)の工事において、ウェアラブルカメラとMR技術の一つであるMicrosoft社のHololensを活用して、ICT法面出来形確認を対象とし、遠隔での書類検査と臨場立会の試行を実施しました(写真-3)。
 

新しい協議形態の試行状況

写真-3 新しい協議形態の試行状況(MR技術の活用)




MR技術を活用することで、Holo-lensを装着した複数の担当者が、クラウド上で共有された書類や現地の情報をHololens越しに目の前で閲覧、確認できるため、あたかも臨場しているかのような環境で各種情報を確認することができるようになります。
 
 

おわりに

北陸地方整備局においては、本稿で紹介したi-Constructionモデル事務所の大河津分水路改修事業によるさまざまな取り組みの経験を基に、さらなるBIM/CIMの拡大を図るべく管内各事務所においてもBIM/CIMを活用し、生産性向上の推進を行っていきたいと考えています。
 

北陸地方整備局 企画部 技術管理課

 

【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年


 



 

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