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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

中堅ゼネコンにおけるBIM推進正確に自動化されたシステムがBIM省力化のパートナーに

2024年8月27日

共立建設株式会社は、1956年、公衆電気通信事業を担う電電公社の外郭団体である電気通信共済会の職員宿舎建設・保守・運営事業を請け負う建設会社として誕生。
 
職員宿舎以外に基地局をはじめ電話局舎・庁舎・保養所・病院・集合住宅まで領域を広げている。
 
今回は、より正確でスムーズな工程管理で建設現場の効率化を目指す同社「i-Construction」の取り組みにおけるBIMへの対応について、i-コンストラクション推進室でBIM活用を担う伊東瑠那・課長代理に訊いた。
 
 

現場での打合せにBIMモデルを活用

共立建設株式会社のBIM導入の歴史は、2015(平成27)年、当時の技術部による日本製BIMソフトウエアの使用開始に始まる。
このとき唯一「Archicad」を使える人材だったのが伊東瑠那氏だ。
当時は社内のBIM認知がある程度向上したものの操作性の面では課題があった。
その後、より効果的なBIMの活用を目指した取り組みが継続して行われ、i-コンストラクション推進室の活動につながる。
 
現在は、人員や時間が限られる現場でのBIMモデル作成は行わず、伊東氏が作成して提供し、現場の打合せなどで活用するスタイルを基本としている。
当然ながらBIMの効果は2D図面では表現しきれない内容を分かりやすく立体化することで、設計者と現場はもちろん施主とも完成イメージを共有しやすくなる点にある。
だからこそ伊東氏は「3Dモデルを見ながら打合せを行うだけでも違いが分かるはずなので、そこから現場の担当者が『自分でもやってみたいな』と関心を持ってくれればいいなと思います」と期待する。
一般的に「デスクで腰を据えて建設工事の勉強をしたかったが、現場でずっと作業していては勉強ができない」という思いを抱えている若手社員は多い。
そうした層がBIMを知ることで「自分が現場で学んできたことが、果たして建築の基準に則っているのか確かめたい」というモチベーションになれば、人材の質的向上にも期待できる。
 
 

モデル作成の効率を上げる「BI Structure」

BIM活用を主導する伊東氏の具体的な作業は、受注が決まって図面が来た段階でBIMモデルの作成を開始し、基礎周りの配筋検討と仮設の山留め計画など考えられるモデルを順次、作成していくことにある。
 
「『BI Structure』で入力するのがスタートとなっています。例えば、かぶり厚だけ図面で確認し入力しておけば、勝手に段取り筋まで組み上げてくれて、必ず基準を満たすモデルができます」と伊東氏。
それだけ高い信頼を寄せる「BI Structure」とは、部材配置を行いながら3Dモデルを作成できる「BI for Archicad」内専用の構造モデル作成ツールで、株式会社U’sFactoryが開発・販売する。
 
伊東氏の作業を劇的に変えたのは、その画期的な操作性である。
「配筋検討には時間がかかると言われていますが、『BI Structure』を使うことでBIMモデルの作成が圧倒的にスムーズに、しかも大幅な省力化と時間短縮ができました。これまでは自分が今どの部分の鉄筋を扱っているのか分かりにくかったのですが、例えば2段目の何本目を触っていると把握しながら作業でき、確認と指示操作するだけですぐモデルに反映されます」。
 
i-コンストラクション推進室には現在6名が在籍するが、他の現場支援ソフトも使われていて担当が分かれるため、BIMを進めるのは伊東氏を含め2名(内1名は設備)のみだ(取材時)。
同社全支店をトータルすると年間約30物件が動くので、当然のことながら業務の大幅な省力化や効率化が実現できなければ、とても業務をこなすことはできず、BIM推進も絵に描いた餅で終わってしまう。
配筋検討を行わない場合や躯体の数量検討をしない案件など、外注も適宜行っているが、後述する構造計算データの入力などは、構造計算をある程度理解していないと行えないため自力による作業が中心となる。

 
 

鉄筋専門工の技術を再現する正確性

これまで人間が行っていた面倒な作業が自動化されるメリットも大きい。
「設計変更があった場合は、コンクリートの位置がずれてしまいますが、このとき、コンクリートが動いた箇所を自分で探して鉄筋を動かすとミスが生じてかねません。『BI Structure』では、どのコンクリートから鉄筋が発生しているか全て紐付いていますので、コンクリートの始点と終点に合わせて鉄筋の始点と終点が違う箇所をボタン一つで検索できます。また、同一径だと鉄筋を1本につなげてくれるので、ずれの見落としもありません。これを人間が行うと個人差も生じますしミスの可能性に常に悩まされますが、(鉄筋コンクリート造)配筋指針通りにさえ正しく入力すればコンピュータが行うので間違いがないです」。
ちなみに「BI Structure」には最低限の指針が網羅されているので、現場ごとの状況に合わせて必要な指針の入力だけでよい。
 
伊東氏が“間違いがない”と言い切る正確性は、鉄筋専門工がそのノウハウをもって頭脳をフル回転させて行っていた、言わば目に見えないプログラムコードを書くような作業が、実際にロジカルなプログラムで再現されているからと言えよう。
 
同様に干渉チェックも人間が行う作業に影響を与えそうだ。
伊東氏は「BIMモデルチェックソフトを使うと5~10mm当たっても検知されて多数のチェックリストが挙がってきますが、実際の現場にはほとんど関係ありません。実際の現場ではミリ単位の配筋は難しく、例えば主筋と主筋の間に何本通るかが分かればいいのです。
『BI Structure』はその判断を数字でコントロールし、指定すれば鉄筋を通す位置を示してくれるので干渉チェックも任せられます」と語る。
 
ときに数十人規模で行われる干渉チェック確認会も見かけるが、今後はそのための時間とコストも見直しが図られるかもしれない。
「BI Structure」によるモデルを参考に、鉄筋をかわすための調整を該当する現場の数名で話し合えば解決することになるからだ。
これだけでも相当の業務時間削減や省力化を実現できる。
 
ほとんどの鉄筋施工図ソフトは、フックの位置や継ぐ位置などを大まかな段階で留めている。
これは、あまり詳細にするとデータ量が大きく、重くなるからだが、「BI Structure」は「鉄筋だから全部組み上げるのが当たり前」という思想で、まさに鉄筋専門工が行う精緻な作業まで想定して開発されている。
「以前は鉄筋検討を行う場合、1本1本組み立てていましたが、『BI Structure』を使うと本当に一部分だけの作業で全て行えます。しかも最上階まで作りましたが、データは本当に軽かったです。最初の入力さえ間違わなければ正確なモデルができます」と伊東氏。
そうした正確性が、高い信頼を生み出している。

 
 

手間のかかる構造データ入力作業

構造計算データは提供されるのが当然のように思われているが、実際は提供されない場合の方が多い。
伊東氏は「提供されるまで待つ時間や他者が作業した入力データにある誤りをチェックする手間を考えたら、私が入力した方が速いのです。結局チェックが欠かせないのであれば、自分で入力した方が情報の正確性の担保が取れるので進行してしまいます」と語る。
 
また、BIMを導入すれば作業が簡素化されるという誤解もまだあるが、2次元の構造図からExcelへの入力作業は、相当な労力を要していた。
伊東氏は、その状況を次のように語る。
「構造図のリストを見ながら入力すると自分が今、建物全体のどの階のどの部位を入力しているのか分からず、迷子のような気持ちになってしまうのがストレスでした。また、断面寸法や上端筋などの数値、あるいは鉄筋の本数、通り芯ごとに符号が異なる場合など、一度数字を頭に入れてから入力先を探して入力する煩わしさを常に感じていました。階数によって数字が異なれば1階から最上階まで全て入力しなければならず、どの階を入力したかが分かるように紙へ出力してマーカーで色分けするなど多くの労力を費やしていました」。
 
こうした入力の手間には、1週間程度はかかっていた。
もちろん入力の誤りがないようチェックもしなければならず、物件によっては300行という膨大な入力作業を行うケースもあり、相当な負担となっていた。
 
 

入力作業を大幅に省力化&効率化

多くの時間を占めていた入力作業から伊東氏を解放したのは、同じくU’sFactoryから2023年に発売された「AI Structure」である。
「このソフトを使い始めてから、1週間かかっていた入力作業が15~20分で終わるようになりました。しかもマニュアルすら不要の簡単さでした」と伊東氏は笑顔でその効果を伝えた。
 
「AI Structure」は構造部材リスト図をまず登録し、基礎梁や大梁、柱などがそれぞれ何ページにあるかを登録すれば、直ちにAIが解析し始めて20分弱で入力が完了する。
ラベル表示もあるので作業もスムーズだ。
万が一、読み漏れがある場合はカラー表示で知らせてくれるので、そこだけ手入力すればよい。
その後「BI Structure」へのインポートが可能になっていて、BIMモデルの作成が始められる。
少数精鋭で業務をこなす共立建設にとって、これだけの省力化の実現は非常に重要な要素だ。
また、注目すべきはそのインターフェイスで、紙の帳票で行うのと同じ感覚でオペレーションができる。
同タイプの製品で、いきなり最終画面を出すシステムも見られるが、それでは何が抜け落ちたかは分からないし、そもそもどのデータから抽出されたのかも理解できない。

 
 

おわりに

Archicadのデータをそのまま使って見積書を短時間で作成できる「BI For ARCHICAD」を伊東氏が知ったのが2018年。
このとき以来、U’sFactoryから「BI Structure」「AI Structure」の提供を受けつつ、改善ポイントの要求を送り対応してもらう関係が続いている。
毎日のように更新が行われるU’sFactory社製品は、1週間アクセスしないとそのバージョンアップに頭が追いつけないほどだが、そこに魅力を感じてもいる。
 
現場におけるBIM活用を広げるために、共立建設i-コンストラクション推進室でBIMモデルを作り続ける伊東氏は、誰よりもその効果を知る人の一人でもある。
 
「現場が大事だと言われますが、BIMモデルを作っていても現場の勉強はできるのです。現場経験だけではBIMは扱えないので、むしろ知識量では上回っているのかもしれないとも思います。建築基準法もよく見ますし、配筋指針を見ないと配筋を設定できません。現場に出ていれば分かることも、現場に出なくても自分で調べています。BIMモデルで建築物を一から建てているので、現場に必要な理解はできていると思っています」。
BIMの素晴らしさをこれほど実感している伊東氏は、BIMのより効果的な活用を進めるのに最適な存在だと言えるだろう。

 
 
共立建設株式会社
所在地: 東京都渋谷区
創業:1956年8月
資本金:10億円
事業内容: 建設、土木ならびに附帯設備工事、建築物および附帯設備の修繕・保守ほか
https://www.kyoritsu-con.co.jp/
 
 
 

共立建設株式会社

 
 
【出典】


建設ITガイド 2024
特集2 建築BIM
建設ITガイド2024


 

最終更新日:2024-08-27



 


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