建設ITガイド

トップ >> 特集記事 >> 新潟県中山間地域発!建設DXチャレンジ事例雪深い地域の受注の半数が下請け工事である小さな会社が進める建設DXとは? 特集記事

書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

新潟県中山間地域発!建設DXチャレンジ事例雪深い地域の受注の半数が下請け工事である小さな会社が進める建設DXとは?

2024年7月17日

はじめに

会社紹介

当社は、新潟県上越市浦川原区に事務所を置く社員が32名の小さな会社で、令和6年で創業70年を迎えます。
事業内容は、土木一式工事であり、主な受注先は、国土交通省、新潟県、上越市であります。
その年の受注状況により変動はあるものの、おおよそ5割近くが新潟県の工事であり、残りの5割近くが公共工事の下請けとなる、いわゆる地方の中小企業です。
 

建設DXへの取り組み

建設DXとは、さまざまなデジタル技術を複合的に活用することで、業務プロセスをあらゆる角度から変革し、建設生産プロセス全体を最適化することで新たな強みを生み出す取り組みとのことですが、さらに突っ込んだ言い方をすれば、建設産業そのものの在り方を根本から改革的に変えることと言えます。
とはいえ、では何をどうすれば良いのかということですが、これについては正解がなく、企業ごとに違いがあって当然であると思われます。
大手ゼネコンや準大手ゼネコンといった大企業は、独自の取り組みを既に行っておりますが、中小企業にとっては、独自に取り組むことはハードルが高く、建設DXに対してどのように取り組むべきかと悩むところだと思われます。
 
そこで当社ではまず、対象と目的をはっきりさせるために3つの基本方針を立てました。
 
 

①現場における生産性の向上

1つ目が現場における生産性の向上「現場の建設DXについて」です。
図-1に示すのが、当社が現在行っている建設DX全体のイメージです。
技術者、ワーカー、それから現場情報や本社にある情報をクラウド活用により常に情報共有し、効率化を図れることを考え、実施しています。
また、われわれの地域では、今で言う建設ディレクターに似たような職種が古くから活躍しているため、竣工書類の7割弱を技術者以外の女性職員や総務にて作成するバックアップ体制が整っていることが特長の一つとなっています。

図-1 当社の建設DX全体のイメージ
図-1 当社の建設DX全体のイメージ

 

工事の3Dデータ化

令和4年より全ての工事において3D化を徹底することとし、実施に移行しています。
特に、3D起工測量と3D施工データを作成することで、例えば現状に合った縦横断図を簡単に作成できたり、土量計算を簡単に行えたりと作業の効率化が図れることを実感しており、3D化することを当たり前の作業として技術者に捉えていただけるよう努めています。

図-2 3D施工データ
図-2 3D施工データ

 

3D施工データの活用

3D施工データの作成が平準化となると、必ず3D施工データがあるため、このデータを建設システム社(KENTEM)の「快測ナビ」に入力することで現場における丁張設置作業の効率化が劇的に変わります。
どの断面においてもリアルタイムにて確認できることが可能となるので非常に便利です。

図-3 現場の建設DXのイメージ
図-3 現場の建設DXのイメージ

 

EARTH BRAINアプリの活用

EARTH BRAIN社のアプリケーションを導入し、「土工の見える化」や「ダンプの動態管理による位置情報の見える化」「過積載防止の見える化」を図り、ここで得た情報を有効に活用することで現場全体の効率化を図っています。
令和2年からは全ての現場でこのアプリケーションを導入しており、冬場にはダンプではなく、除雪車の動態管理としても活用しています。

図-4 SCFleetによるダンプ動態管理の概要
図-4 SCFleetによるダンプ動態管理の概要
図-5 ペイロードメーターによる過積載防止の概要
図-5 ペイロードメーターによる過積載防止の概要

 

クラウドサービスの活用

KENTEMの「電子小黒板 Site-Box 」と「KSデータバンク」を活用することで、現場で撮影した写真がクラウドを通じた同期によりあらかじめ用意されたフォルダに自動振り分けされるシステムにより、事務所での写真の共有と写真整理の効率化を実現しています。
また、Dropbox社のクラウドサービスにて設計書などのデジタルデータをいつでもどこでもスマホやタブレット、PCにて閲覧、編集、作成できるシステムとしています。
それから、Microsoft社のTeamsの活用により、チャットや共同作業はもちろん、リモートワークとしても活用できるようにしています。
 

ネットワークカメラの活用

ネットワークカメラを各現場に設置し、「現場の見える化」に努めています。
これについては、特に河川工事や地すべり対策工事や除雪のパトロールなどに活用すると非常に便利です。

図-6 ネットワークカメラ

 

Web会議の実施

現場とオフィスを結び、毎日13:00より現場代理人との打合せを行っています。
また、現場にて緊急事態などが発生した場合にもすぐにWeb会議を行うことができるようになったため、現場状況を把握して、的確な指示がオフィスよりすぐに行えることで、初期対応までの時間の大幅な短縮にもつながることが期待できます。

図-7 Web会議室
図-7 Web会議室

 
 

②ワーカーへの情報伝達の効率化

2つ目がワーカーへの情報伝達の効率化と環境整備「ワーカーへの建設DXについて」です。
 

クラウドサービスの活用

これも①同様にクラウドサービスを活用した情報提供を実施しています。
主に人員配置や工事情報、施工上の留意点や工法動画などの当社オリジナルの情報がワーカーのスマホにて閲覧できます(図-8)。
また、ブラウザでも簡単に当社オリジナルの情報が閲覧できるようなシステムを作成し、使用しています(図-9)。
これらは既に実施済みですが、これらの情報をワーカーがどのように活用するか、現在検討しています。
これらの情報を現場入場前の予習として活用できるようになると作業効率の向上も期待できるため、ここを当たり前のように捉えていただけるよう努めています。

図-8 ワーカーへの建設DXのイメージ
図-8 ワーカーへの建設DXのイメージ
図-9 社員専用サイトの一部
図-9 社員専用サイトの一部

 
 

③オフィスと現場をつなぐデジタル技術

3つ目がオフィスと現場とをデジタル技術でつなぎ、さらなる効率化を図る「オフィスの建設DXについて」です。
 
建設業ですので、どうしても現場で働く技術者やワーカーにスポットが当てられがちです。
またそこでの結果は生産性に直結するため当然のことですが、オフィス環境についてあらためて目を向けると、現在の働き方に合っていない部分に気付かされます。
そこで計画したのがスマートオフィスです。
 

スマートオフィスの導入

スマートオフィスとは、オフィスで働く従業員が快適に、効率良く、そして室内の温度や湿度、照度などのオフィス環境を自動制御することで省エネを実現したオフィスを言うようですが、当社では単純に環境に優しく、時代に合った賢いオフィスと捉えています。
従来のデジタル機器の能力をさらに強化し、高度な処理能力と通信機能を持つオフィスとなるように改築を行い、令和4年4月より活用しています。

図-10 スマートオフィス内部
図-10 スマートオフィス内部

 

最先端ミーティングルームの設置

スマートオフィス導入において非常にこだわったのが、このミーティングルームです。
このミーティングルームにインタラクティブボードを導入し、質の高い会議が効率良くできるよう防音機能を完備しています。
また、災害などの発生により電力を失っても、3日間72時間は発電機によって、通常どおりに稼働できる電気設備を別系統にて完備していることが最大の特長です。
こうした取り組みにより、新たなICT技術にも対応でき、さらに緊急時でも対応できるオフィス、つまり危機管理サテライトオフィスとしても対応ができるよう工夫をしています。

 

集中できる個室の設置

3D施工データの作成や点群処理、 BIM/CIMの作成など容量の大きいデータを作成する機会が今後さらに増えることが想定できるため、作成時の負担軽減を図る目的で高性能スペックのパソコンを設置し、今後増えるWeb 会議にも対応した防音設備を完備した、作業に集中できる個室を2部屋、新たに設置しました。
なかなかスポットの当たらないところですし、効果が見えづらいところではありますが、集中できる個室の増設で、技術者の負担軽減、さらには作業効率の向上につながってほしいと考えております。
 
 

当社が進める建設DXまとめ

当社が考え、現在実施している建設DXの内容が図-11の通りです。
取りあえず、いわゆるデジタル化についてはある程度できていますが、問題はこのデジタルデータをどう生かすかということです。
まだまだDXとは言えないため、これらのデータをどう活用するかが非常に重要であると考えています。
とはいえ、正直な話、われわれ規模の建設業における建設DXについて、参考にできる事例がほぼないというのも現状であるため、今後についても常に社会や行政の動向を注視して取り組んでいきたいと思っております。

図-11 当社の考える建設DXのまとめ
図-11 当社の考える建設DXのまとめ

 
 

おわりに

今現在、ICT技術やBIM/CIMなど非常に覚えることが多く、技術者にとってまさに過渡期であり、大きな負担となっていると感じていますが、将来的にこれらの技術の導入により、技術者の負担が少なくなり、ワクワクするような魅力ある建設産業となってほしいと思います。
 
ホームページ
http://www.k-fujimura.co.jp
Instagram
fujimuragumi_joetsu
YouTube
@fujimuragumi_joetsu
 
 
 

株式会社郷土建設藤村組 代表取締役
藤村 英明

 
 
【出典】


建設ITガイド 2024
特集1 建設DX、BIM/CIM
建設ITガイド2024


 

最終更新日:2024-07-26



 


新製品ニュース

DX「JUCORE 見積(ジュコア みつもり)」にプレカット部材対応の新機能追加DX「JUCORE 見積(ジュコア みつもり)」にプレカット部材対応の新機能追加


建設ITガイド 電子書籍 2024版
建設ITガイド2024のご購入はこちら

サイト内検索

掲載メーカー様ログインページ



  掲載をご希望の方へ


  土木・建築資材・工法カタログ請求サイト

  けんせつPlaza

  積算資料ポケット版WEB

  BookけんせつPlaza

  建設マネジメント技術

  一般財団法人 経済調査会