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建設DX活用事例

建設ソフトやハードウエアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

顧客に寄り添った暑熱/換気課題の改善 -手厚いサポートで気流解析を使った提案を短時間で実現!-

株式会社中村組

熱流体解析ソフトウエア「FlowDesigner」

株式会社中村組
所在地:静岡県浜松市
設立:1944年
資本金:1億5,500万円
従業員数:193名(令和6年4月現在)
主な事業内容:総合建設業
https://www.nakamura-gumi.co.jp/
 
株式会社中村組
建築部 技術顧問
髙柳 伸英 氏(左)
建築部設計課 主任
本田 水季 氏(右)
 
静岡県浜松市に本社を置く中村組は、地域の製造業を中心とした工場・倉庫建設を長年手掛けてきた地場ゼネコンである。
近年は既設工場での換気や暑熱環境の改善といった相談が増加し、それに対応する提案の必要性が高まっていた。
こうした課題に応えるため、同社ではアドバンスドナレッジ研究所(AKL)の熱流体解析ソフト「FlowDesigner」を導入。
設計・営業双方で活用が進み、工場レイアウトの改善から公共施設の改修提案まで、適用範囲を広げつつある。
本稿では、その導入経緯と実務での活用事例を紹介する。
 
 

製造業地域の課題が導入を後押し

中村組が本社を置く浜松地域は、自動車関連産業を中心に製造業が集積している。
同社では以前から工場や倉庫の設計・施工に携わってきたが、夏の猛暑が厳しさを増す近年は「工場の空調が効かなくて暑い」「換気が悪い」といった相談が急増していた。
 
2025年6月より熱中症対策が義務化されたこともあり、温熱環境や換気といった「目に見えない課題」の解決が急務となる中、社内で気流解析ソフト「FlowDesigner」導入の提案があり、本格運用が始まった。
 
FlowDesignerを高く評価した点として、建築部 技術顧問の髙柳氏は「設計課長の山本による選定です。
専門書籍や大学教授の著書で頻繁に紹介されており、製品名はよく目にしていること、大学での利用実績が豊富な点などが選定の決め手になったと聞いています」と語る。
また、髙柳氏は中村組がBIM活用を本格化するタイミングで、前職でのBIMの経験を評価されて同社に迎えられた。
同氏の主導でBIM環境はグラフィソフト社のArchicadへ刷新されたが、FlowDesignerはそのArchicadとスムーズに連携できる点も採用のポイントとなった。
 
 

使いやすい操作性と手厚いサポートが短期習得を実現

FlowDesigner導入後の習得は想像以上にスムーズだったという。
習得を後押ししたのがAKLのサポート体制。
公式のチュートリアル動画をYouTubeで多数公開しており、「操作や条件設定の疑問は、大抵動画だけで解決しました」と髙柳氏は振り返る。
加えて、海外製の気流解析ソフトが多い中、Flo wDesignerは国産の優位性を生かし、ユーザーからの問い合わせにも迅速に対応できるのが強み。
その支援体制は「驚くほどの丁寧さ」と髙柳氏は太鼓判を押す。
 
また、FlowDesignerは主要BIMとの連携性を高めることを重視している。
建築部で設計を担当する本田氏は、産休明けに社内のBIM環境が刷新された中でFlowDesignerの操作方法も習得することとなったが、「(使い方が)分かりにくいと感じることはありませんでした」と話す。
 
 

気流の“見える化”が営業提案へ波及

中村組ではFlowDesigner導入初期から、工場の暑さ対策・換気改善のほか、冷蔵倉庫の結露リスク、ホテル客室の風の抜け方など、社内でさまざまな物件を解析してきた。
気流を可視化できる効果は、設計部門だけでなく営業の現場にも広がっている。
 
本田氏は「換気は目に見えないので説明が難しいですが、解析動画を見せるとお客さまにも非常に伝わりやすい」と話す。
解析結果を示すことで課題と改善策を直感的に伝えられるため、営業担当者が具体的な改善提案として活用できるようになった点は大きい。
 
「一つ解析すると、お客さまから次々と別の環境改善の相談が来る」という状況も生まれている。
解析を武器にした提案は営業にとっても“話を持っていきやすい材料”となり、顧客との接点拡大にもつながっている。
 
 

多様な案件で成果を上げる解析事例

【解析事例1】
温泉施設の換気不具合と結露メカニズムの解明

(浜松市営温泉施設の浴室木材腐朽部改修工事設計業務)
2024年には、気流解析として初の有償案件となった、浜松市が運営する温泉施設の気流解析を手掛けた。
温泉施設の改修工事設計業務を、浜松市内の設計事務所が受注し、中村組が気流解析で協力したものである。
以下にその詳細を紹介する。
 
2007年竣工の同施設において、浴室天井木部の内部や外部で腐朽が確認され、浜松市が改修工事設計業務を発注。
当初、腐朽の要因は浴室内の湯気や湿気が主因と考えられていたが、現地調査とFlowDesignerを用いた詳細解析の結果、腐朽の主因は「給気が有効に機能していないこと」と「トップライトから流入する低温外気による急冷」であることが明らかになった。
 
現場では、浴室の給気と排気が効果的に機能しておらず、空気の滞留が発生している箇所も確認された。
またトップライトのガラリから冷たい外気が天井裏へ流入し、内部の暖湿気流と混ざることで急激に冷却され、「露点到達→相対湿度100%→結露→木材腐朽」というプロセスが生じていた。
 
FlowDesignerによる気流解析では、「トップライト部からの下降冷気流」「浴槽から立ち上る暖湿気流との干渉」「浴室下部での空気滞留」など、図面だけでは把握しにくい通風・温湿度の実挙動が可視化された。
 
これらを踏まえ、改修計画では「トップライト部の結露受け設置」「屋根裏断熱の追加」「湯気が天井裏へ進入しない納まりの検討」「天井裏換気の新設」「給気口の再配置」など複数の改善案を提示し、それらを基に設計方針の方向付けをすることができた。
 
図面だけでは把握しづらい換気の挙動が、解析によって具体的に可視化でき、 FlowDesignerが劣化原因調査においても効果を発揮した。
また、改修設計では換気シミュレーションにより複数案の比較検証にも役立ち、原因調査と改修案検証で有用なツールとして用いられた事例となった(図-1)。
 
天井内結露発生付近の相対湿度
天井内結露発生付近の相対湿度
 
FlowDesignnerによる気流解析事例
FlowDesignnerによる気流解析事例。
画面右側の内湯上部の上昇気流と左側の気流の滞留および壁沿いの下降気流が確認できることから、換気扇とガラリ位置、下部の給気口の検討の必要性が可視化された。
図-1 温泉施設の事例
 

【解析事例2】
養殖施設水槽の水温変化解析

また興味深い事例として、養殖施設の水槽を対象としたケースが挙げられる。
同施設では、水槽内の水温を一定に保つためにボイラーで加温しているが、燃料費の負担が大きく、節約策として水槽上部をシートで覆う案が検討されていた。
そこで、シート構成の違いによる温度保持性能をFlowDesignerで比較したところ、水温差は0.2℃程度とわずかであったものの、16m四方の水槽が10数基並ぶ施設では、年間の燃料費に数百万単位で大きく影響する可能性が確認された。
こうした社内検証の蓄積が、今後の省エネ・環境改善提案をより高度に支える基盤となっている(図-2)。
 
シート仕様の違いによる水温変化
シート仕様の違いによる水温変化
図-2 養殖施設の事例
 
 

広がる活用領域と今後の期待

ZEB案件でのFlowDesignerの活用も始まっている。
空調や室外機配置、日射条件の検討など、設計初期からFlowDesignerの機能を組み込むことで、効果的な環境設計が可能になる。
同社では、ZEBへの取り組みに関して地域の同規模のゼネコンに後塵を拝していた面もあったというが、「気流解析が出遅れていたZEB対応を補う武器になっている」と髙柳氏は話す。
FlowDesignerに対する満足度は高い一方で、ユーザー側の課題として浮かび上がるのが「気流解析を正しく扱うための知識」である。
例えば、給気量や温湿度、機器の能力値といった入力条件をどう設定するかは、設備や環境に関する理解がないと判断が難しい。
「操作自体は容易ですが、シミュレーションで評価するための仮定、前提条件で結果が大きく変わるため、その見極めが課題になります」と髙柳氏は指摘する。
 
AKLではユーザー向けのセミナーを定期的に開催しているが、2025年からは新たにFlowDesigner利用者が集い情報交換できる「ユーザー会」を開始。
今後はユーザーコミュニティーが形成され、ユーザー間で利用に関する知見が蓄積されていくことが期待される。
 
 
 
この記事は「建設ITガイド」2026に掲載されたものです

公開日:2026-05-26

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