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成功事例集

建設ソフトやハードウェアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

KAPシステムの展望

清水建設株式会社

建築鉄骨専用CAD「KAPシステム」

清水建設株式会社
所在地:東京都中央区
創業:1804年
資本金:743億6,500万円
従業員数:10,949名(2024年3月31日現在)
主な事業内容:建築・土木など建設工事の請負(総合建設業)
https://www.shimz.co.jp/
 
大越 潤 氏
 

清水建設株式会社では、建築鉄骨専用CADソフト「KAPシステム」の活用を通じて、鉄骨数量算出や作業効率化を実現している。
Revitとのデータ連携により、鉄骨の詳細部材を迅速に作成し、見積り段階から実施工までのプロセスをスムーズに連携。
また、KAPシステムは大型案件にも対応可能で、鉄骨詳細の検討を効率化。
今後はさらに技術革新を進め、情報一元化による作業効率化が期待されている。
 

はじめに

現在清水建設では、Autodesk社のRevitをBIMの基幹ソフトとして考え、設計・施工・製作などさまざまな建設プロセスに対し、BIMに関するデジタル情報活用を進めている。
鉄骨に関しては、現在RevitとKAPシステムをデータ連携することで、鉄骨数量算出を行っている。
これは、構造モデルに入力された鋼材の情報に、溶接仕様や継手などの接合部の仕様を加えることにより、プレートやボルトなどの詳細部材が作成可能となり、手作業による数量拾いに比べ、短時間での数量把握が可能となるため、特に見積り段階での活用に有効と考えている。
 
KAPとRevitの連携は、KAPforRevit(K4R)と呼ばれるRevitのアドオン機能により連携を可能としている。
これは、RevitからKAPの演算機能を呼び出し、Revit上に詳細部材を作成する機能となっている。
その後、社内ではRevitによる作業を行うことになるが、同時にKAPに物件を作成するため、このデータを利用することで、鉄骨製作会社側でもKAPの利用が可能になる。
 
K4RはKAPと同様、日々機能改善を行っており、複雑形状の建物に対しても数量算出を可能としている。
一方で、K4Rは残念ながら現在、社外に公開されておらず、2025年度内のリリースを目指して社内で調整を進めている。
 

鉄骨情報の一元管理

建築工事は近年大型化が進み、超高層や工場など鉄骨製作会社1社では賄えないことが多く、工区を分割し各社が製作を担う環境にある。
また、鉄骨製作会社では、異なる専用CAD環境では工区境の取り合い確認が行えないことから、擦り合わせの作業のために、同じ専用CADを利用する必要があった。
これは、鉄骨製作会社では複数の鉄骨専用CADを整備することを意味する。
一方、鉄骨製作会社の規模や得意とする分野により、習熟したソフトウエア環境は各社によって異なることから、各社が得意な専用CADを使い擦り合わせができるようになると、費用や作業の側面から効率的な環境になると考えられる。
 
鉄骨専用CAD間連携は、ソフトウエアごとの開発ポリシーが異なることから、なかなか実現できていないものの、buildingSMART Japan(bSJ)によりリリースされたST-Bridge Ver.2.1では、鉄骨仕様に関する情報が実装されており、この対応が鉄骨専用CADで進むことにより、取り合い検討が容易になることが期待される。
これにより、元請け側でも各専用CADデータをRevitに取り込み、鉄骨詳細を確認するなどの作業が効率的になると考えられ、早期の実装が望まれる。
 
また、現在ST-Bridgeに実装された鉄骨仕様に関する情報は、構造BIMに入力されていないことがほとんどのため、専用CADに実装された場合でも、現在は手入力を必要とすることが明白であることから、構造BIMを起点にした情報連携に向けた検討が必要である。
仕様情報のデジタル化は、鉄骨に限った話ではなく、躯体関連全般に影響を及ぼす。
現在この検討は、国土交通省や日本建築構造技術者協会(JSCA)で議論が進んでおり、今後の情報連携に期待が持てる。
Revitモデル、Revit→KAPへ変換
         Revitモデル                 Revit→KAPへ変換

KAPモデル
         KAPモデル

K4Rモデル
         K4Rモデル

KAPシステムの効果

KAPシステムは、建築工事の大型化に対応した専用CADとして、元請け側の作業効率化に貢献している。
大型工事の場合、外壁受けなど主架構以外の付帯鉄骨も含めると、相当数の部材を扱う必要があり、どうしても画面表示において動作が遅くなる問題が発生する。
 
大型工事に関係する課題に対して、KAPシステムでは極力遅延をさせないための配慮をシステム的に行っている。
このため、1万トン以上の大型案件においても動作を可能としており、モデルを統合的に扱うことができる。
これにより、Revitでは難しい詳細な納まり検討をKAPシステムで実施し、その後Revit上で施工検討など計画業務に詳細モデルを使用することが可能になる。
KAPシステムは、一定規模以上の鉄骨BIMを扱う元請けにとって、鉄骨詳細を検討する上でまさに必須のシステムと言える。
 
Revitモデル、Revit→KAPへ変換
         Revitモデル                  Revit→KAPへ変換

KAPモデル
         KAPモデル

K4Rモデル
         K4Rモデル
 

KAPシステムの将来像

KAPシステムは、開発が開始されてから既に50年が経過しているにも関わらず、継続的なメンテナンスを行うことで、今日でも使用され続けている極めてまれなソフトウエアである。
一方で、今後のメンテナンス性などの懸念材料もいくつか考えられる。
例えば、情報技術は現在までの間に大変な進化を遂げており、一部の機能が陳腐化していることも否めない。
また、引き続き30年、50年と継続的に利用するためには、開発言語やソフトウエアを作る側の世代交代を含め、さまざまな対応が必要になることが考えられる。
 
このように、現在の情報技術によるリニューアルを行うことが、この先の将来に向けた取り組みになり、今からその対応を行ってもらいたいと考えている。
例えば、専用CADは専用メニューと自動作図により、効率化を行ってきたと考えられる。
一方、同時編集や現寸作業に対する適応が進んでおらず、どうしても汎用CADを利用せざるを得ない環境であったと言える。
 
汎用CADを利用せず、専用CADだけで完結する仕組みになることで、情報の一元化が可能となり、管理が簡素化される。
現在は汎用CADで行った変更は、専用CAD側に全て反映する仕組みにはなっていない。
このため、設計変更などによりひとたび汎用CADで作業を行ってしまうと、情報の一元化ができず、その後専用CADと汎用CAD双方で平行作業が必要になるなど、難しい環境と言えた。
これが一つのデータ群として管理可能になることで、作業効率が改善される。
情報を集約することでデータ分析が容易になることから、さらに鉄骨専用CADの価値が向上することに期待したい。


最終更新日:2025-05-28




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