アレリオ橋梁点検
横須賀市
所在地:神奈川県横須賀市
市制施行:1907年2月
市の人口:370,968人(2024年11月1日現在)
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/

横須賀市 建設部 道路整備課 道路施設補修係
係長
牧野 純一郎 氏 林 智貴 氏 石川 健太郎 氏
神奈川県の南東、三浦半島の中央部に位置し、中核都市でもある横須賀市は、幕末以降、日本の近代化や国防の要所として栄え、戦後は、鉄道や自動車専用道路等の交通インフラの整備をもとに、都心や横浜等のベッドタウンとして発展してきた。
今回は、市内151 橋梁の直営点検を実施している同市建設部道路整備課道路施設補修係の方々に、「アレリオ橋梁点検」についてお話を伺った。
直営点検とアレリオ橋梁点検導入の背景
2014年の道路法改正により、道路構造物の5年ごとの定期点検が義務化され、地方自治体にとって重要な業務となった橋梁点検。
2024年には3巡目の点検を迎えている自治体も多い。
点検は近接目視となるため、現場作業の負担はもちろんのこと、それに付随する事務作業の煩雑さは、限られた人員で行政業務を遂行している自治体にとって、決して軽くない。
そういうことからも、現状では直営点検を実施している自治体は必ずしも多くはないが、自治体の管理橋梁のうち約4割を直営点検している横須賀市の取り組みを紹介する。
横須賀市の橋梁点検は建設部道路整備課道路施設補修係が担う。
同係の牧野純一郎係長より橋梁点検の中心的な存在とご紹介いただいた配属5年目の石川健太郎氏に横須賀市での直営点検開始までの経緯をお伺いした。
「横須賀市では現在356橋を管理していますが、当初は全ての橋梁点検を地域一括発注という形で外部機関に委託していました。私が配属となる少し前、点検サイクルが2巡目に入る頃に、国から地方自治体に対して直営点検推進の話が出始めたことを契機に、横須賀市でも直営点検の検討を始めました」
横須賀市は、大きな河川が流れていないという地形的な特性もあり、比較的小規模な橋梁が多い。
これはつまり、自治体職員の手による直営点検が可能である橋梁の割合が高いということになる。
また、外部委託の際の1橋当たりの点検費用はおおむね20~30万円となり、市内全ての橋梁点検にかかる費用は相当な額となるが、一部でも直営点検に切り替えることができれば、コスト削減の効果は目に見えて明らかである。
しかし、直営点検には職員の業務負担増加という問題がついて回る。
そこで、特に膨大な時間を要する点検後の調書作成などの内業作業の負担軽減に着目し、システム導入による作業効率化の可能性を探るべく、数あるシステムの検討から着手した。
「前任者からアレリオ橋梁点検というシステムがあると引き継ぎを受け、その他のシステムと比較検討するところから始めました。他のシステムの多くが大規模な橋梁向きであったのに対し、アレリオ橋梁点検は小規模な橋梁点検に優れた特性があることが分かりました。これはわれわれがやろうする直営点検の規模感と非常にマッチしていました。また、インターネットを必要としないスタンドアロンでの使用が可能という点も市役所の業務遂行に適していると判断し、採用を決めました」と石川氏は話す。
こうして、アレリオ橋梁点検の導入により内業作業の効率化のめどが立った2020年より、横須賀市での直営点検が開始された。
現在では市内365橋のうち約4割に当たる151橋の直営点検を同係の職員3名体制で実施している。

タブレットで損傷の記録を撮影 直感的な操作が可能で、現場での入力も容易
簡単操作で、効率的かつ確実な業務遂行が可能
実際の現場では職員3人がてきぱきと流れるように一つの橋梁を点検していく。
アレリオ橋梁点検がインストールされている専用タブレットで点検内容を次々と記録していくのは配属1年目の林智貴氏だ。
「アレリオ橋梁点検はとてもシンプルにできているので、その場で直感的に操作できます。
私でも簡単に旗揚げ、撮影した写真のひも付けができます。
それだけこのシステムが優秀だということです」と笑う。
そして、現場から帰庁してからがアレリオ橋梁点検の真骨頂。
現場で旗揚げした箇所と撮影した写真画像とが自動でひも付いているため、調書作成という煩雑な作業がいとも簡単に完了できる。
「現場で撮影した写真画像一つ一つを調書のフォーマットにひも付けていく作業だけでも膨大な時間が取られますが、アレリオ橋梁点検を使えばあっという間に完了するので、手作業で行う場合と比べたら作業時間は4分の1以上短縮できています」と石川氏。
続けて、「作業時間の大幅な短縮だけでなく、損傷部のコメントの種類は国土交通省の基準に沿った形で作られているので、選択するだけですぐに調書に反映でき、品質の担保も同時に可能です」とアレリオ橋梁点検を使用することの利点を話してくれた。
もちろん、システムに改良はつきもの。
アレリオ橋梁点検も2023年にバージョン2へとアップデートすることで改良を重ねている。
それについても石川氏は、「例えば、以前のバージョンでは損傷部分のサイズ変更や旗揚げ箇所の移動をタブレット上で行うときの操作性に少し問題があり、システム担当者さんには改善要望として出させてもらっていました。
それも前回のバージョンアップで解消してくれましたし、今のところ特に改善してもらいたい点はありません」と満足している様子だ。


操作画面イメージ
直営点検の意義と未来
直営点検のメリットはもちろん大幅な予算削減である。
横須賀市では現在151橋を直営点検しているが、これを外部委託した場合と比べると費用を10分の1程度に抑制できている。
もちろん、アレリオ橋梁点検の使用料金を含めての抑制率だ。
この事実だけでも市政運営への貢献度の高さはうかがい知れるが、直営点検がもたらす効果はそれだけではない。
「直営点検で職員が実際の現場を自分の目で見て、周辺環境なども理解した上で損傷の原因などを考えられるようになってきた」と牧野係長は評価する。
「これまでは外部委託先から上がってくる報告書だけを見て判断していたが、現場を経験することで、報告内容をより深く考えてみるようになりました。
事後保全が一段落し、今後は予防保全に一層注力していこうとしており、そのためには直営点検で得た経験値は大きな力になる」と石川氏も直営点検による効果と今後の展望を話してくれた。
また、市役所はどうしても異動による人の入れ替えが発生する。
それは横須賀市の道路整備課にとっても同じであるため、「できるだけ多くの人に直営点検に関わってもらっているが、アレリオ橋梁点検というシステムを継続して利用することで画一的な資料作りが可能なのはありがたい」と牧野係長は話す。
加えて「、直営点検作業の手順書を作成し、担当職員が変わっても滞りなく事業が継続できる体制を整えています」と教えてくれた。
この手順書には当然ながらアレリオ橋梁点検システムの使用方法も記載されているという。
「今後の直営点検もアレリオ橋梁点検ありきで構想しています」と石川氏は語り、アレリオ橋梁点検が、横須賀市の橋梁直営点検の現在と未来を支える、まさに架け橋となっている。
最終更新日:2025-05-28
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