デザインドラフト
会社概要株式会社竹中工務店
所在地:大阪府大阪市(本社)
資本金:500億円
従業員数:7,570名(2012年1月現在)
事業内容:建築工事および土木工事に関する請負、設計および監理、地域開発、都市開発、エネルギー供給および環境整備等のプロジェクトに関するエンジニアリングおよびマネジメントほか
東京本店 調達部
三戸 英明 氏
竹中工務店で施工した地下1階、地上12階、延べ面積約100,000㎡の免震構造のオフィスビルが2011年11月に竣工した。このプロジェクトでは、設備協力会社体制が14社という多数で構成され、設備工事内容が細分化された。そのため、各社の施工品質を保つように現場をマネジメントすることが大きな課題だった。この課題解決策として、同社が「生産フェーズでのBIM」をどのように取り入れたかを紹介する。
プロジェクト概要
本プロジェクトは地下1階、地上12階、延べ面積約100,000㎡のオフィスビルで、電算センター・宿泊施設・社員食堂・店舗機能を有する複合用途の免震建物。2011年11月に竣工した。設備協力会社は電気設備6社、衛生・消火設備3社、空調設備5社の計14社で構成。
施工計画フェーズでの3DCADとICT
本プロジェクトの設備施工は協力会社の多さと業務の細分化によるコミュニケーションの複雑化が施工検討前から問題として予見された。コミュニケーションや情報の混乱が後工程での手戻りにつながるからである。
その解決策として、以下の3つの解決方針を定義した。
①迅速に情報を共有すること
②問題点を可視化すること
③施工前に問題を解決すること
そしてこれらの解決策を具現化するために施工計画(生産)フェーズからのBIM構築を行った。
具体的には、①は当社と設備協力会社間で共通のICT-Networkを構築することである。これまで、他社とCADデータや設計変更情報、打ち合わせ情報を共有する場合はUSBメモリやファイル交換サーバでのやりとりを行っているが、これに3DCAD情報が追加されるため大容量のデータ転送が可能なICT-Networkを現場作業所内に構築した。これにより全社が同一かつ相互に最新の情報をタイムリーに配信・共有可能となった。
②については共通の3DCADシステムの導入・運用とBIMの構築・活用である。ネットワークを通じてサーバー上のBIMモデルを共有する仕組みを構築し、取り合い状況の確認、不整合箇所の是正の指示、重大な課題の開示が可能となった。
③については各社のコミュニケーションを活性化する意味も含めて、全社合同の確認会を開催した。確認会では、作図検討スケジュールの指示、全社並行しての作図、建築・設備協力会社間で調整の後、重大な不整合や問題についての問題の全体把握と解決策の提示を行い、問題点がなくなるまでこのサイクルを繰り返し行った。
特に確認会はBIMモデルと図面を併用しながら問題箇所の確認と、問題の対処について全体で確認するフェーズと、関係者のみで確認するフェーズに分けて開催することでエンジニアが会議で拘束される時間を削減できた。
また、空間の取り合いに関してはBIMモデルを構築したことにより配置した部材の干渉を静的に行うだけでなく、部材を動かして動的な干渉チェックを行うことが可能であり、より綿密な空間取り合いの実施が可能であった。
例えば本プロジェクトでは「免震クリアランスの確保」を検証するため、3Dモデル上で地球側支持部材と建物側支持部材を要求クリアランス距離だけ変異させた状態で干渉チェックを行い、施工計画段階で取り合い調整を実現した。さらに免震装置の将来搬出入に必要な動線スペースも3Dモデル化し、ケーブルラック・配管・ダクトなどと各々の支持架台も含めたルート調整を行うことで免震装置のメンテナンスルートの確認も実施できている。
竹中工務店と設備14社間における共通の
BIMCADとICT-NETWORKの運用
免震階における取り合いの初期の干渉検出状況
施工フェーズでの3DCAD
3DCADで作成した設備施工図(モデル)はオブジェクト3Dであるため、このデータをBIMとして活用し、各種試験・検査時の記録書の作成を自動化、検査の進捗状況も可視化するシステムを試行・運用した。
設備工事の各検査における検査記録書作成には各担当者が膨大な時間をとられている。タブレットPCで稼働する試験帳票を現場に持ち込み、担当者が入力することで作業の効率化とデータの品質の確保が可能となった。
BIMの活用
このプロジェクトは同規模(約100,000m²)の新築工事に対してゼネコンがこれからの設備生産活動の姿を見据え、マネジメント力を発揮し、BIMツールを用いて施工管理を成功させるとともに全体最適を果たした数少ない事例である。
BIMは、生産プロセスのフロントローディングと、さまざまな意思決定に対するシミュレーションが行えるとともに、コミュニケーションエラーの排除もできる。そして現場作業員の方には、施工後のイメージを掴んでもらうことも可能である。設計フェーズからのBIM化が多く論じられているが、アプローチの方法はその環境に応じていく通りもあり得ると考えられる。生産フェーズ発信型のBIMはこのような可視化により“イメージの膨らみ”が非常に有効なツールであり大きな可能性を秘めている。
単なる3次元表現なのか、属性情報として何を付与するのか、川下で何に活用するのかといった目的を踏まえて、その目的に合致する拡張性・柔軟性の高い手法を選択し、作業所の生産活動に適切な体制で運用推進していくことによりどのような現場においてもBIMツールの活用が可能になると考える。
帳票システムとタブレットPC
最終更新日:2013-02-04
←戻る ↑ページ上へ ↑記事一覧へ