建設ソフトやハードウエアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。
Vectorworksとの出会いとBIM導入
株式会社寺澤雄治アート設計工房
Vectorworks
株式会社寺澤雄治アート設計工房
所在地:長野県長野市
設立:1985年2月
資本金:1,000万円
従業員数:2名
主な事業内容:建築の設計監理

寺澤 彰訓 氏
学生時代のMiniCADとの出会いから始まり、実務での2次元CAD運用、そして自身の設計事務所でのBIM導入へ。
長野市の株式会社寺澤雄治アート設計工房の寺澤彰訓氏は、三度にわたるVectorworksとの再会を通じて、表現力と設計効率の両立を追求してきた。
共同住宅の設計を機に本格的なBIM運用へ踏み出し、標準ツールの活用や自社表現の統一など独自の工夫で実務に最適化。
汎用性に優れた柔軟性を生かしつつ、日常の設計業務に確かな変化をもたらしている。
Vectorworksの導入
一度目のVectorworks
Vectorworksと出会ったのは学生時代になります。
短大の設計室にMacintosh Performaがズラっと並びMiniCADが導入されていました。
当時の私は無知でパソコンはPC-9800一択であったのですごく新鮮に感じたことを覚えています。
その後、就職をして2次元CADを使って仕事をしていました。
就職してから気付いたのですがMacintoshとMiniCADはデザイナーが使うオシャレツールだったようです。
後に社内に2台導入されるのですが、実用性とデザイン性で意見が割れて社内が二分していた記憶があります。
紆余曲折があり、勤めていた設計事務所を退社することになり、その際に奮発してiMacを購入しました。
遅れてMiniCADから名称が変わったVectorworksと、当時は一体ではなく別ソフトだったRenderworksを購入しました。
二度目のVectorworks
再就職した設計事務所は、共同住宅を主に設計する会社でした。
実用性とスピードを考慮して2次元CADを利用していました。
共同住宅以外の案件でパース作成が必要になり、Vectorworksを利用するようになりました。
三度目のVectorworks
改めてまして私は設計事務所の2代目になります。
父の会社に入社した当時は、基本設計・実施設計を2次元CAD、パースをVectorworksで作成していました。
設計の仕事に携わって10年強が経過していて、図面を描く作業に苦痛を感じていました。
この先さらに仕事を続けるには新たな新鮮味が必要と考えました。
そこで、Vectorworksで図面を全て描こうとMacBookを購入し、Vectorworksを最新版にアップデートしました。
BIMでVectorworks
Vectorworksで図面作成を始めてから数年たち、世の中にBIMが認識され、各地で講習会が開催されました。
公益社団法人長野県建築士会が主催したBIM導入講習会の講師にBIMを始めるには何が必要ですか?と質問した際に「いきおい」ですと回答をいただきました。
当時、一人で2,000m2程度の共同住宅を設計していて2次元の限界を感じてBIMの導入を迷っていましたが、回答に感化されその場でBIM導入の決意をしました。
BIMの導入
早速、実施設計中の共同住宅にてBIMへの入れ替え作業を開始、当時は2次元に特化したVectorworks Fundamentalsで入力、初めての作業に時間や労力が非常にかかったことを覚えていています。
その後、BIMに特化したVectorworks Architectへグレードアップを行い、効率が格段に上がりました。
当時のBIMデータ・製本を見ると表現も乏しく、図面としての体裁も悪く事業主の寛大な心に感謝するばかりです。
私はBIMを導入してから以下の項目に意識をしています。
1. 競合他社との差別化
弊社より能力ある設計事務所は、数多く存在します。
その中で勝ち抜いていくには、基本設計段階からパースなどを利用した形状、色彩確認などができるように早期の段階から3Dで入力を行います。
事業主からも大変に評価を受けています(図-1)。

図-1 形状確認のためのパース
2. 標準ツールの流用
カスタムツールは専用に作られているため表現も良く、非常に便利です。
反面、いつ開発が終了するか分かりません。
また、バージョンアップに追従できない可能性もあります。
そこで標準ツールを最大限に理解し、工夫して流用しています。
3. 自社の表現
設計事務所は、表現者でもあります。
設計図書に表現する際に図面枠、方位、通り芯記号と多種にわたり自社のシンボルがあります。
標準ツールにシンボルを組み込んで自社の表現としています。
4. 改修案件もBIM
図面データを2次元でいただくことの多い改修案件では改修部分のみBIM化をします。
シートレイヤで2次元と3次元の合成を行い表現します。
旅館などの改修は部屋ごと実施していきますので、最終的に全体がBIM化されるようにまとめています(図-2)。

図-2 改修案件におけるBIM
5. 簡易BIM
下請け業務の場合は、効率・図面の整合を重視して2次元図面をレイヤで重ね合わせています。
一つのファイルとすることで図面間の相違ミスが発生しないようにしています。
BIMに慣れてしまうと図面間の相違確認が怠りがちになりますので注意をしています。
私は勝手に簡易BIMと名付けています。
6. 全てをBIMで作図しようと思わない
BIMを始めた頃は、どの図面を切り出しても問題ないように全ての入力を考えていました。
しかし、今はBIMは膨大なデータ量になるため修正に手間がかかってしまい、本来の目的を損なう本末転倒な状況にならないよう、必要最低限の入力で必要な図面が作図できるようにしています(図-3、4)。

図-3 必要最低限BIM入力した図面

図-4 必要最低限BIM入力した図面
現在のBIMは、頭の中で整理したものをアプリの中で表現するのが一般的です。
私が就職した頃の設計事務所はでっち奉公時代でしたので、2次元表現が主流でした。
今でも3次元で入力しても2次元で完成形を想像して入力しています。
この先、設計事務所のIT化がさらに進んで2次元で納品することがなくなってしまえば意識していることも変わってくるでしょう。
Vectorworksに望むこと
Vectorworksは、すごい性能を持ったソフトです。
パソコンも同じなのですが、性能が優れていていも使い手次第で変わります。
Vect orworksを利用して絵を描いている方をネット上で拝見をしたことがあります。
ポップな人物画だったと思うのですが、表現力に感心しました。
他社のソフトのように一定のものに特化するのではなく、Vectorworksは何にでも追従できる優れた汎用CADを継続していただければと思います。
反面、汎用過ぎるため、完成形の想像ができない新人建築士にはVectorworksでBIMを開始するのは難しいと思います。
BIMのさらなる躍進のためにも各種学校で専門カリキュラムを組んで社会に出た際に臨機対応ができるような体制づくりをしていただければと思います。
この記事は「建設ITガイド」2026に掲載されたものです
公開日:2026-05-25
ソフト詳細
Vectorworks Architect 2026

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